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No.16427の一覧
[0] 【習作】 マブラヴ オルタネイティヴ~我は御剣なり~(現実→オリジナル主人公・チート気味)[あぁ春が一番](2012/08/13 20:03)
[1] 本作歴史年表[あぁ春が一番](2011/07/11 21:36)
[2] 戦術機設定集(簡易)[あぁ春が一番](2011/08/15 13:48)
[3] 兵装・その他の装備設定集(簡易)[あぁ春が一番](2011/08/15 13:47)
[5] プロローグ[あぁ春が一番](2010/03/08 18:31)
[6] 第01話[あぁ春が一番](2010/06/06 12:15)
[7] 第02話[あぁ春が一番](2010/06/06 12:20)
[8] 第03話[あぁ春が一番](2010/07/10 09:03)
[9] 第04話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:07)
[10] 第05話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:24)
[11] 第06話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:35)
[12] 第07話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:45)
[13] 第08話[あぁ春が一番](2010/11/06 23:42)
[14] 第09話[あぁ春が一番](2011/01/27 22:47)
[15] 第10話[あぁ春が一番](2011/04/20 00:59)
[16] 第11話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:17)
[17] 第12話[あぁ春が一番](2010/11/07 22:29)
[18] 第13話[あぁ春が一番](2010/11/07 23:04)
[19] 第14話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:19)
[20] 第15話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:49)
[21] 第16話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:22)
[22] 第17話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:23)
[23] 第18話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:24)
[24] 第19話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:29)
[25] 第20話[あぁ春が一番](2010/11/10 00:41)
[26] 第21話[あぁ春が一番](2010/11/11 00:05)
[27] 第22話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:50)
[28] 第23話[あぁ春が一番](2010/11/11 23:29)
[29] 第24話[あぁ春が一番](2010/12/12 15:48)
[30] 第25話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:51)
[31] 第26話[あぁ春が一番](2010/12/12 15:48)
[32] 第27話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:51)
[33] 第28話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:52)
[34] 第29話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:53)
[35] 第30話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:53)
[36] 第31話[あぁ春が一番](2011/05/15 01:42)
[37] 第32話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:54)
[38] 第33話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:04)
[39] 第34話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:05)
[40] 第35話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:05)
[41] 第36話[あぁ春が一番](2011/07/11 21:25)
[42] 第37話[あぁ春が一番](2011/08/15 13:46)
[43] 第38話[あぁ春が一番](2011/10/24 00:46)
[44] 外伝 TE編・上[あぁ春が一番](2012/07/23 11:57)
[45] 外伝 TE編・中[あぁ春が一番](2012/08/13 20:03)
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[16427] 第11話
Name: あぁ春が一番◆17cd7d65 ID:bc6cc51c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/03 18:17


1996年3月に斯衛軍訓練校を卒業した俺は、直ぐにでも大陸に渡る事になると考え、身辺の整理をしていた。

だが、思わぬ横槍が入り国内でしばらく足止めされる事となる。

足止めされることになった理由の一つ目は、俺用の不知火の調達に時間がかかった事、二つ目は斯衛軍へ任官する事になったからだった。

不知火の調達が間に合わなかった件については、諦めるしか無い事だが、斯衛軍へ任官する件はまったく想定していなかった事態だった。

何でも、斯衛軍訓練校始まって以来の成績で卒業した者が、直接帝国軍に行くことに斯衛軍の上層部及び城内省から物言いがついたらしいのだ。

紆余曲折の末、俺は斯衛軍に任官した後帝国軍技術廠 第13独立戦術機甲試験中隊に出向する事になっていた。

斯衛軍訓練校卒業という看板だけでよしとしていた俺は、こんな茶番に付き合う破目になったことに不満を感じないわけではなかったが、
こちらの方が将来香月博士に対するアドバンテージの一つになるかもしれないと考える事にしたのだった。










俺は国内で足止めされている間に、一度家に戻り正式に大陸に渡る事になったと家族に伝える事にした。

祖父と両親には事前に伝えていたため、それほど驚かれることはなかったが、唯一教えていなかった冥夜は戸惑っている様子を見せていた。

俺は試験中隊がほかと比べると充実した装備で戦える安全な部隊である事を伝え、大陸でどれほどの激戦が行われているかを誤魔化して
冥夜に伝えた。

その話を聞いて、冥夜がどう思ったのかは分からなかったが、その日はここで話題を変え普段の家族の会話に戻っていった。

そして、残された数日間の休暇中は会社の仕事をする事にした。

訓練校にいる間は、あまり時間が取れず簡単な報告書のやり取りが中心になり、セキュリティーや意思疎通の問題上、
重要な案件の決定が難しかったのだ。

俺はこの期間にまとめて様々な報告を受け、提案書の作成をする事にした。

今受けている報告内容は、今まで独立戦術機甲試験中隊で試験を行ってきた、海外の戦術機のリストとその測定データについてだ。

手に入れることができた海外の戦術機は、第1世代機と第2世代機の旧型が殆どで、最新の2.5世代機や第3世代機についてはガードが固く、
機体其の物はおろか情報すら殆ど手に入らない状況となっていた。

また、非公式のルートで手に入れた他国の戦術機については、堂々と実戦での試験を行うことができないので、試験部隊では装甲形状を偽装し、
他の部隊とは離れた場所での試験を行っているようだったが、運用データの不足は否めなかった。

そして、試験データを元に進められていた計画についてだが・・・、現行兵器の改修計画は順調に推移していたが、
新型戦術機の開発は現行の戦術機を大きく上回るものができずにいた。

おそらく国内だけの技術・設計思想では、大きなブレークスルーが得られず、開発が難航しているのだろう。

これらを補助するために行ってきた、他国の戦術機の研究だったんだが・・・。


「そうだ・・・、第3世代機といえば、米国のF-22『ラプター』に敗れた、YF-23『ブラックウィドウⅡ』は入手できないのか?
 運用思想に齟齬があっただけで、機体性能自体は高かったと記憶しているが・・・」


「・・・難しいでしょうね、米国の最高機密に属する装備が満載してありますので・・・。
 最低でもステルス機能と対戦術機電子戦装備は外されることは確実です。
 それに、管制ユニットも抜かれた状態になる可能性も有ります。
 そうなるとあだ名通り『世界一高価な鉄屑』になってしまいますよ。」


会議室の中にいた重役達は、俺の発言の真意がつかめず、ヒソヒソ話に花を咲かせていた。

中には、そんな分かりきったことを・・・等の発言も聞こえてきたのだが、俺はそれを無視して話を続けることにした。


「・・・・・・ブラックウィドウⅡの開発に協力していたマクダエル・ドグラム社だが・・・、
 相次ぐ開発計画の失敗で会社が傾いているのではないのか?
 それに対して、既にボーニング社が買収にやる気を見せているという情報もある・・・。

 そして、開発元のノースロック社もノースロック・グラナン社に成った後、ブラックウィドウⅡを海軍に提案したが、
 A-12『アベンジャー』の優先を理由に断られ、現在は経営資源を他に振っているようだ。」


「そ、そのような情報をどこから手に入れたのです?」


戦術機開発の経過報告をしていた、主任が思わず俺に質問をしてきた。


「俺にも独自の情報ルートはある・・・。」
(業績については調べればなんとなく分かるが、マクダエル・ドグラム社やYF-23に関しては異世界で同じような事例があったしな・・・。)


俺の発言に、重役達は必死に涼しい顔をしようとしているようだったが、気配から動揺が伝わってきた。

どんなことであれ、18歳の若造が経営の手綱を握るには、力を見せておく必要がある。

今回の件で、改めて俺の力が健在であることを示したかったのだ。

俺の発言を受け、マクダエル・ドグラム社買収の話は具体的な内容に移っていく。

マクダエル・ドグラム社は去年制式採用された、F-15E『ストライクイーグル』により若干持ち直してはいるが、
完全に立ち直るのは厳しい状況のようで、おそらくボーニング社との買収合戦に発展すると考えられた。

そしてボーニング社との買収合戦では、ボーニング社側に米国政府が付くことで、御剣財閥によるマクダエル・ドグラム社の完全買収は、
不可能になる可能性が高いため、交渉の中で何を優先的に入手するかに話が切り替わっていった。

俺たちがターゲットにした順番は以下のようになった。

1.YF-23『ブラックウィドウⅡ』
・・・新型戦術機開発の研究材料として入手する。
  YF-23のステルス機能及び対戦術機電子戦装備は入手しなくてもよい、ただし管制ユニット(制御データ)は手に入れたい。
2.マクダエル・ドグラムが携わっていた、極秘プロジェクトの開発データ
・・・米国外に持ち出す事ができる可能性は低いが、米国の戦略方針の転換により重要度が低下している可能性がある。
3.F-4『ファントム』
・・・F-4のバリエーション機開発の目処が立っているので、ライセンスを完全に取得しておきたい。
4.航空機
・・・御剣財閥には航空機部門が存在しないため、ここで技術を入手したい。
  既存の機体のパテントは手放してもいい。
5.F-15C『イーグル』及びF-15E『ストライクイーグル』
・・・表向きは、F-15J『陽炎』で入手したデータを下に、改修を行い準第3戦術機にする計画があると伝える。
 

また、ボーニング社との交渉の際には、一番目以外の順番が逆になるように要求が出されるアイデアが出された。

このアイデアは、米軍の主力になっているイーグルを入手するのは不可能に近いため、イーグルを改修して準第3世代機にするプランを
提示することで本気を見せ、それを餌に本来欲しい技術が入手できるよう、ボーニングに譲歩させるために出されたものだった。

またブラックウィドウⅡについては、米国が手間取っているF-22の開発の為に、基礎技術力が上の米国に対して数少ない日本優位となっている、
第3世代機の運用データを提出することを引き換えにしてでも、入手する方針となった。

正直にいうと、各国の第3世代機開発状況を見るに、今後5年以内に第3世代機の配備が予想されているため、
今が一番第3世代機の運用データを売れる時期だと考えたのが、運用データ提供を考えた一番の理由だった。

それに、こちらにはソフト面でブレークスルーがあり、その情報さえ守り抜ければ大きな損は出ないという判断もあった。

その後、買収の話は各企業及び日本政府との連携についての話となり、そちらについてはマクダエル・ドグラム社から得られる技術や
新型OSの開発状況を説明することで何とかすることになった。

そして、マクダエル・ドグラム社買収の件は、全会一致で可決されることになるのだった。








俺は日本にいる事ができる最後の日に、前々から先延ばしにしていた大切な話を伝えるために、冥夜の部屋を訪ねた。


「冥夜、信綱だ。
 少し話したいことがある、入ってもいいか?」


「どうぞお入り下さい、兄上。」


俺が部屋に入ると、冥夜はなにやら手紙を書いているようだった。


「手紙を書いていたのか・・・、邪魔したか?」


「いいえ、調度書き終えましたので・・・。」


どうやら、冥夜は悠陽への手紙を書いていたらしい、俺が忙しくなってからは、母を介して文通を続けているのだ。

俺が始めに文通を進めたくせに、今は全て母に任せていることに申し訳ない気持ちになる。

しかし、今日はそれよりももっと大切なことがあったので、それを冥夜に伝えることにした。


「冥夜・・・、今日はどうしてもお前に言わなければならないことがある。」


「兄上・・・、どうしたのですか?
 そのように、改まって・・・。」


「今日はとっても真面目な話になるからな・・・。
 冥夜と悠陽の顔が似ている理由についてなんだが・・・。」


俺は、冥夜と悠陽が本当の双子の姉妹であり、煌武院の都合で養子に出されたことを伝えた。

それを聞いた冥夜は、うすうす感じていたと返事を返した。

しかし、ショックは隠せないようで、今にも崩れ落ちそうになっていた。

やはり、俺か母から事実を伝えないと冥夜をしっかりとフォローできないと思ったことは正しかったようだった。

残念だが家を守るという考えにおいて、この件については煌武院の行動に賛成している、祖父や父はまったく役に立ちそうに無いのだ。

俺は肩を落とした冥夜を抱きしめ、俺の思いを伝えることにした。


「冥夜は、決していらないから養子に出された訳じゃない。
 煌武院の都合と、生まれた順番だけで決められた話だ・・・。
 今でも、お前が家に来た日のことを覚えている。
 嬉しくて嬉しくて、厭きもせずに一日中お前を眺めていたよ・・・。」


「あ 兄上・・・。」


「お前は皆に必要とされている・・・。
 それは煌武院の娘だからじゃない。
 お前が御剣 冥夜だからだ。
 日本中が何と言おうとも、俺は冥夜自身のことが大好きだぞ・・・。」


俺の思いを聞いた冥夜は、大粒の涙を瞳に溜め今にも泣き出しそうな表情になっていた。

俺は忙しくて一緒に遊ぶ時間が取れなかったことをわび、静に冥夜を抱きしめた。

すると、冥夜の押し殺したような泣き声が胸に響き、俺は冥夜が泣き止むまで抱きしめ続けることになる。

泣き始めて10分ほどたってから、落ち着きを取り戻した冥夜だったが、服を汚したことを謝ってきた際に、
泣き付かれるのも嬉しいものだと返事を返すと、顔を赤らめて再び顔を俺の胸にうずめる事になった。

その後他愛も無い話をしていると、いつの間にか話題が大陸へ派兵される件になっていた。


「兄上は、どうして大陸に行かれることにしたのですか?」


「・・・俺にはやりたいことがある。
 それをやるためには、世界が平和じゃないといけないらしいんだ。

 だから戦う事にした・・・、冥夜にも何かやりたいことがあるだろ?」


俺の問いかけに、冥夜は首を立てに振って返事を返した。


「兄上ほど立派なものではありませんが、私にもやりたいことがあります。」


「そうか・・・、それを大切にしろよ。
 ・・・目的があれば、人は努力できる・・・か。」


「兄上?」


「冥夜が己の道を見つけたのならそれでいい・・・。
 お前は悠陽の影じゃないのだからな。」











不知火が調達できたと報告を受けた俺は、いよいよ大陸に出立する事になった。

俺は赤い斯衛軍の制服を身に纏うと、再び冥夜の部屋を訪れ俺が書いた悠陽への文を持たせ、今度会ったときに渡してくれと頼んだ。

やはり悠陽にも、俺から真実を伝えたほうがいいと思ったからだ。

そして冥夜に、文を渡すときにたとえ悠陽と冥夜が逆になっていたとしても、俺の思いは変わらないと伝えてくれと頼み、家を後にした。

御剣重工の工場で不知火を受け取るよう指示を受けた俺が工場を訪れると、工場の前では陽炎開発の時から御世話になっている親方が出迎えてくれた。

挨拶もそこそこに、親方は今回調達された帝国陸軍カラーの不知火について、説明を始める。

親方の説明によると、用意された不知火はCPUを中心とした演算ユニットとOS(EXAMシステムver.2),測定用センサー以外は、
本当に普通の不知火と同じらしい。

また、機体のカラーリングが斯衛軍仕様で無く帝国陸軍カラーなのは、不知火が斯衛軍で制式採用されていない事と、
部隊の統一性を出すためと言う事だった。

ただし、精度のいい部品をえりすぐって組み立てたため、僅かながら性能が上がっていると親方は語っていた。

どうも、祖父が手を回して作らせていたとの事で、若干の後ろめたさもあったが俺はありがたく不知火を受け取ることにした。

不知火を受け取った俺は、陸路で博多まで移動し、そこから船で大陸へと渡る事になった。

陸路と船での移動時間は、全て機体の調整に費やすことにした。

不知火に乗るのは久しぶりだったために、少しでも慣れておきたかったからだ。

大陸に渡った俺は、旧満州周辺に展開しモンゴル領ウランバートルハイヴ(18番目のハイヴ)の間引き作戦に参加していた、
第13独立戦術機甲試験中隊に無事合流することができた。


「帝国斯衛軍から出向して参りました、御剣 信綱 少尉です。」


「第13独立戦術機甲試験中隊長、本郷 岳史 大尉だ。
 第13試験中隊 通称『ロンド・ベル』へよく来てくれた、御剣少尉。」


試験中隊設立時に俺が提案した部隊名が、正式に採用されていたことに内心驚いていたが、中隊長から部隊の概要説明があるとの事だったので、
気を引き締めなおして説明を聞く事にした。

第13独立戦術機甲試験中隊が運用している戦術機は、俺が入隊した時点で不知火・斯衛軍仕様試験型が6機、通常の不知火が6機となっている。

この中隊で運用されている不知火・斯衛軍仕様試験型とは、今年より斯衛軍で配備され始めた不知火・壱型丙の実験機で、
斯衛軍の仕様に合わせて改良された不知火である。

特に第13試験中隊が運用している不知火・斯衛軍仕様試験型は、特別な改良が加えられているようだった。

隊長機と突撃前衛長機の2機は、青の色が塗装される機体の装備に準じており、残りの4機は高機動タイプの不知火・斯衛軍仕様試験型となっていたのだ。

現在はさらに衛士からの要望や、各国で採用されている戦術機の機構・パーツの中から、不知火に搭載可能な様々なパーツが取り付けられており、
各隊員が乗る不知火・斯衛軍仕様試験型及び不知火は、殆どの機体が若干異なった外観になっている。

そして、2機だけ残された通常の不知火は、兵装の試験を行った際の基準として使われているようだった。

この独立戦術機甲試験中隊は、複数の企業が出資して作られた部隊のひとつで、帝国軍に所属しているものの独自の裁量権を持っている。

その代わり、常に最前線に出ることが要求され、その多くの場合試作品を装備して戦うことになる。

試験運用前に様々な試験が行われているものの、実際に動作不良によってひやひやさせられたことがあるらしい。

ただ、この様な試験運用はどこかで必要とされることであり、大変重要な任務であると説明を受けた。




中隊の概要説明の後、人員に空きがあったことと訓練校での成績から、突撃前衛小隊に配属が決まった俺は、
突撃前衛小隊の隊員に紹介されることになった。


「こいつが今回配属された、御剣 少尉だ。」


「このたび、第13独立戦術機甲試験中隊 突撃前衛小隊に配属になった、御剣 信綱 少尉です。
 よろしくおねがいいたします。」


俺が挨拶の後敬礼を行うと、小隊の隊員はそれぞれ異なった態度で敬礼を返してくる。

その態度を見ていると、どうやら俺の配属をあまり歓迎していない雰囲気が伝わってきた。


「では、突撃前衛小隊の隊員を紹介しよう。
 南 孝太郎 中尉だ。突撃前衛長を勤めている。」


「突撃前衛長の南 孝太郎 中尉だ。よろしく。」


「次、沖田 宗一郎 少尉だ。南 中尉とエレメントを組んでいる。」


「沖田 宗一郎 少尉です。御剣 少尉。」


「最後に、貴様とエレメントを組むことになる、佐々木 浩二 少尉だ。」


「佐々木 浩二 少尉だ……、中隊長こいつは使えるんですか?
 嫌ですよ、前のように勝手に死んだからって、小言をもらうのは…」


「……使えるかどうかは実戦にならんとわからんが、斯衛軍訓練校での成績は優秀みたいだ。
 死の八分を生き延びれば、それなりにモノになるだろう。」


「ふぅーん、まぁ、よろしく。御剣 少尉。」


各隊員が歓迎していないのは、佐々木 少尉の言った俺に実戦の経験が無い事が理由のようだった。

また、一人だけ色もデザインも違う斯衛軍の軍服を着ていることも、相手が受け入れ難い理由の一つかも知れないと考えた俺は、
少しでも早く部隊に溶け込む為に、着任時に支給された帝国陸軍の軍服を着用する事を心に決める事になる。


「他の小隊は、今は払っているので、後日紹介することになる。
 では、南 中尉後はよろしく頼む。」 


互いの挨拶がすんだ後、俺の実力を見るため突撃前衛の小隊内だけのシミュレーター訓練を行う事になった。

本来は実機で演習をやりたかったらしいのだが、最前線で消耗したパーツと整備の関係からシミュレーターでの訓練が選択されたのだ。

今後自分が乗ることになる不知火を選択した俺は、連携の訓練時間も考え制限時間15分で各隊員と一対一で戦うことになる。




始めに対戦したのは、J-10 殲撃10型に乗った佐々木 少尉だった。

殲撃10型は、実戦に於いて高い機動力,運動性による近接格闘戦で評価の高い、軽量戦術機であるF-16 ファイティング・ファルコンの改良型である。

ファイティング・ファルコンより近接格闘戦を強化された機体は、ローコスト第2世代機ながら高い性能を持っている。

しかし、殲撃10型より高い機動力を持つ第3世代機の不知火なら、距離をとって蜂の巣にすればそれほど脅威となる機体ではない。


「くそやろう! 御剣! 正々堂々、戦わねーか!」


「いえいえ、佐々木 少尉殿。
 機体の性能を活かした、正しい戦い方だと思いますが……?」


俺はそう言って、佐々木 少尉に対して余裕の笑みを浮かべる。


「佐々木! 愚痴を言ってないで、実力でどうにかしろ。
 先任の実力を見せると言って、殲撃を選んだのは貴様だろう。」


「わかりましたよッ! 」


そう言って、佐々木 少尉は弾幕を潜り抜け、一気に距離をつめてくる。

俺はそれに対して距離をとる振りをしていたが、しだいに殲撃10型に距離を詰められていった。

接近した殲撃10型が不知火を長刀の間合いに入る直前……、俺は突撃砲を殲撃10型に向かって放り投げた。

そして、放り投げるための動作がそのまま長刀の抜刀モーションへとつながっていく。

稼動兵装担架システムにより背面から肩越しに移動してきた長刀の柄を握った不知火は、殲撃10型に向かって振り下ろした。

佐々木 少尉は突撃砲を長刀で払いのけた直後、不知火の抜刀に気が付き殲撃10型の上腕部に装備されたカーボンブレードで受け流そうとする。

しかし、不知火の放った斬撃はカーボンブレードごと殲撃10型を切り裂いた。


「くそやろう! いやらしい攻撃ばっかりと思ったら、格闘も上手いじゃないか。」


「ええ、これでも斯衛軍訓練校 衛士課程の首席卒業ですから……。」


「……まあいい、相棒が強いのは良い事だ。
 これからよろしく頼む、御剣。」


「よろしくおねがいします、佐々木 さん。」




次の対戦相手はSu-27 ジュラーブリクに乗った沖田 少尉だった。


「御剣 少尉……、もしかして斬鉄が出来るんじゃないか……。」


「さぁ、どうでしょうね。

 もし、出来るといったらどうします?」
(条件が揃えば、できないことも無いが・・・)


「ふっ……、お前と格闘戦で戦ってみたくなった。
 どうだ、御剣。」


「わかりました。最初から全力で行きます。」


「来い!」


その掛け声と共に、戦闘が開始される。

ジュラーブリクは近接格闘能力に特化した機体で、各部に装備されたカーボンブレードと上腕部に内蔵されたモーターブレードを用い、
他を圧倒する手数を持つ。

そして沖田 少尉は、長刀一本を両手で保持して格闘戦を挑んでくる。

俺もそれに対して、長刀一本で対処する事にした。

始めは軽い打ち合いから始まり、その戦いは次第に激しさを増していった。

俺は長刀の間合いで戦うことで、ジュラーブリクの特性であるカーボンブレードやモーターブレードを用いた、
超接近戦に持ち込まれないように戦っている。

少しでも懐に入られれば、すぐさま敗北することになるからだ。

俺は、ジュラーブリクから繰り出される斬撃を長刀で捌きながら、どうやって対処するかを考えていた。

沖田 少尉の技量とジュラーブリクの性能を考えると、これ以上打ち合ってもジリ貧になるだけだ。

手数で圧倒されるのなら、圧倒される前に相手の得意な間合いの外から一撃で決めるしかない。

そう結論を出し数回長刀を打ち合わせた後、一旦間合いを離し向かい合う状態に持ち込んだ。

そして、俺は長刀を頭部の右側に持って行き、剣先を上に向けた構えを取る。


「…その構え、示現流 蜻蛉の構えに似ているが、どこか違うな。」


「ええ、この構えに名前はありません。
 ただ刀を早く振り下ろそうとしていたら、こんな構えになっていただけですので……。」


「そうか…、一撃で決めるつもりか。だが、易々とやられはせんぞ。」


そう言い、沖田 少尉は長刀を下段に構える。

次の瞬間…、不知火とジュラーブリクは同時に動き出した。

それは互いに跳躍ユニット全開にしての飛び込みとなった。

そして、下段から長刀を振り上げるジュラーブリクだったが、不知火は跳躍ユニット前方に向け噴射をする事で、
急激な減速を行うと同時に上半身を後ろにそらした。

ジュラーブリクの放った斬撃は、不知火には当たらず直ぐ傍をすり抜ける事になり、
間髪いれず不知火が振り下ろした長刀によって、ジュラーブリクは切り裂かれる事になった。




最後の対戦相手は、不知火・斯衛軍仕様試験型に乗った南 中尉となった。


「遊びはなしだ、本気で行かせてもらう。」


南 中尉のこの発言により始まった戦闘だが、始めは距離をとっての銃撃戦を行う事になった。

しかし、射撃の腕は俺の方が高いらしく、少しずつ不知火・斯衛軍仕様試験型の装甲を削っていく事になる。

そして、射撃戦では勝てないと判断した南 中尉が間合いを詰めたため、戦闘は近接格闘戦に移行していった。

接近しての射撃と凄まじい斬り合いをしていたが、相手の機体性能が上のためなかなか攻めきれない状況だった。

EXAMシステムver.2の特性であるキャンセルを使ってフェイントをかけるも、高い運動性のおかげで反応が少し遅れる程度なら対応されてしまう。

近接格闘能力は沖田 少尉の方が上だが、なんと言うか南 中尉は戦うことが上手いのだ。

そのため、沖田 少尉の時のように一撃で決めるような状況に持ち込めない。

結局、15分と決められていた制限時間いっぱいまで、俺と南 中尉は、戦い続ける事になった。


「こんな新人が入隊するとは、俺達は幸運だな…。
 御剣 少尉、これからよろしく頼む。」


この対戦によって、一応の信頼を得ることができた俺は、その後小隊の連携訓練を行う事になり、そこでその日のシミュレーションは終了となった。






シミュレーションの後、俺の特異な戦術機動とEXAMシステムver.2を利用した機動について質問を受けることになる。

どうやら、配備されてから3ヶ月程たった今でも、試験中隊ではver.2を使いこなす段階には至っていないようだった。

特にver.2で搭載したキャンセルは扱いが難しいらしく、キャンセル時に発生する硬直を今までのように、自動姿勢制御システムをオフにして
間接思考制御で機体のバランスをとる事で緩和しようとしているのだが、高速化した動きに衛士が付いていけないため間接思考制御が難しいらしい。

キャンセル時の硬直への対応は、キャンセルされない機動を設定したり、先行入力されたコマンドのみをキャンセルしたりすることで動きをつなげる等、
その時の状況によって対応方法は異なっている。

そして、間接思考制御による硬直の緩和についても、今までと感覚は異なるが一応行うことは可能なのだが・・・。

小隊全員にver.2についての説明をした俺だったが、ここで一番問題なのはしっかりとしたマニュアルが存在しないことである事を実感していた。

マニュアルの作成は、EXAMシステム稼働中の部隊からの情報も取り入れ、富士教導隊と協同で製作中という現状だったため、
俺ができた対応は部隊レベルで情報を共有するという事が精一杯だった。

また、その後の訓練の中、不知火・斯衛軍仕様試験型にシミュレーターで乗る機会があったが、性能の高さよりも稼働時間の低下に不満を抱き、
通常の不知火の方が自分に合っていることを実感した。

上手い戦い方をする者なら、不知火と同等の稼働時間を確保できるが、その衛士が不知火に乗れば、もっと長い時間戦えることは明白だったからだ。

そして、試験中隊に合流してから2週間ほどたったある日、俺はモンゴル領ウランバートルハイヴの間引き作戦に参加し、
そこで初陣を飾ることになるのだった。





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コメント

皆様、ご感想ありがとうございます。
投稿開始から一ヶ月が経過しましたが、だんだんプロットの内容が薄くなってきたため、
話を作るのに時間がかかるようになってきました。
どこまで、毎週投稿が可能かは分かりませんが、いけるところまで行きたいと思います。

そして今回、とんでもない部隊名を採用してしまいました。
これは、私があまりにも名前を決めるのが遅いために行った苦肉の策です。
どこまでが許されるのかは分かりませんが、皆様が受け入れていただけるのでしたらこのまま進めたいと思います。

それと、悠陽と冥夜や他の原作キャラクターの扱いをどうするか、いまだに迷っております。
注意事項7番に『主人公が原作キャラクター(最大で5~6名程度)と恋人関係になる可能性があります。』
と書いたのに、本文を書き始めてから主人公が口説くor惚れられる理由を作る技量が、私に無い事に気が付きました。
注意事項7番…・・・、守れるといいのですが。



返事

前回私が、皆様に質問させていただいた、『グランゾン モドキは超兵器に入るのか?』
に、沢山のご返答をいただき誠にありがとうございます。

皆様のご返答を総合すると、
凄乃皇自体が超兵器だから、凄乃皇の様に制限があるのならグランゾン モドキが出て来ても、何とか許せる。
というご意見と理解していいでしょうか。

前回書いた通り、グランゾン モドキを出すことを考えてなかったのですが、
皆様のご意見を聞き、原作後の話を書くところまで進めば検討してみようと思います。
それと扱いに困っていた、凄乃皇にも何とか光明が見えてきました。
細かな内容は今後考えるとしても、方針が決まっただけでもやりやすくなってきました。
これをヒントに兵器の改良or新開発に励みたいと思います。

また、既存兵器の有効利用や、知識による戦略展開ができないかと私も頭を悩ませているのですが。
いいアイデアが思い浮かびません・・・、主人公は原作開始後からの知識が殆どですし、
使えそうな戦術を考えても、それをするための兵器があるのか分からないため、兵器開発をせざる終えない状況になっています。
私としても、既存兵器が量産できて成果が出るのならそれが最高と考えているのですが・・・。
ただ、兵器開発に偏りすぎたことは反省していますので、現代兵器を勉強してアイデアを考えたいと思います。



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