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No.16427の一覧
[0] 【習作】 マブラヴ オルタネイティヴ~我は御剣なり~(現実→オリジナル主人公・チート気味)[あぁ春が一番](2012/08/13 20:03)
[1] 本作歴史年表[あぁ春が一番](2011/07/11 21:36)
[2] 戦術機設定集(簡易)[あぁ春が一番](2011/08/15 13:48)
[3] 兵装・その他の装備設定集(簡易)[あぁ春が一番](2011/08/15 13:47)
[5] プロローグ[あぁ春が一番](2010/03/08 18:31)
[6] 第01話[あぁ春が一番](2010/06/06 12:15)
[7] 第02話[あぁ春が一番](2010/06/06 12:20)
[8] 第03話[あぁ春が一番](2010/07/10 09:03)
[9] 第04話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:07)
[10] 第05話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:24)
[11] 第06話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:35)
[12] 第07話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:45)
[13] 第08話[あぁ春が一番](2010/11/06 23:42)
[14] 第09話[あぁ春が一番](2011/01/27 22:47)
[15] 第10話[あぁ春が一番](2011/04/20 00:59)
[16] 第11話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:17)
[17] 第12話[あぁ春が一番](2010/11/07 22:29)
[18] 第13話[あぁ春が一番](2010/11/07 23:04)
[19] 第14話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:19)
[20] 第15話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:49)
[21] 第16話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:22)
[22] 第17話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:23)
[23] 第18話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:24)
[24] 第19話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:29)
[25] 第20話[あぁ春が一番](2010/11/10 00:41)
[26] 第21話[あぁ春が一番](2010/11/11 00:05)
[27] 第22話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:50)
[28] 第23話[あぁ春が一番](2010/11/11 23:29)
[29] 第24話[あぁ春が一番](2010/12/12 15:48)
[30] 第25話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:51)
[31] 第26話[あぁ春が一番](2010/12/12 15:48)
[32] 第27話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:51)
[33] 第28話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:52)
[34] 第29話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:53)
[35] 第30話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:53)
[36] 第31話[あぁ春が一番](2011/05/15 01:42)
[37] 第32話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:54)
[38] 第33話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:04)
[39] 第34話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:05)
[40] 第35話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:05)
[41] 第36話[あぁ春が一番](2011/07/11 21:25)
[42] 第37話[あぁ春が一番](2011/08/15 13:46)
[43] 第38話[あぁ春が一番](2011/10/24 00:46)
[44] 外伝 TE編・上[あぁ春が一番](2012/07/23 11:57)
[45] 外伝 TE編・中[あぁ春が一番](2012/08/13 20:03)
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[16427] 第09話
Name: あぁ春が一番◆17cd7d65 ID:bc6cc51c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/01/27 22:47


2年前から開発が行われてきた不知火の斯衛軍仕様は、帝国軍の不知火の運用報告及び斯衛軍の要求とは別に、
各企業主導で帝国軍に作られた実験部隊から得られる他国の戦術機のデータも取り入れられるかたちで、開発が進められていた。

そして今年に入り、ようやく試験機による実戦テストが行われる段階になった。

不知火・斯衛軍仕様試験型は通常の不知火に対し、以下のような改良が施されている。

機体の即応性向上について
機体主機の換装により、容量の拡大と出力の向上が行われる。
それにより、電磁伸縮炭素帯のレイアウト変更と使用量の拡大が行われる事になった。
また、CPUの換装によりEXAMシステムver.2の搭載が行われたことも、機体の即応性向上に貢献した。
EXAMシステムver.2は先行入力機能に加え、行動のキャンセル機能が追加されたものである。

機体の機動力と運動性向上について
跳躍ユニット主機の高出力化と肩部に姿勢制御用小型スラスターが増設される事になった。
また、戦術機の基本動作及び姿勢制御システムに改良が加えられたEXAMシステムver.2により、頭部にある大型センサーマスト及び、
ナイフシースなどを積極的に制御することが可能になり、空力制御による運動性向上も図られた。

近接格闘用装備の追加
ナイフシースの外装カバーにスーパーカーボン製ブレードを採用し、脛部分の外装にもブレード機能が施された。
また、不知火・吹雪では補助的な役割として搭載された、前腕外側部にある飛び出し式のカーボンブレードは、その有効性が実証されたため、
さらに大型化されることになった。

機体本体の強化
各種改良により機体にかかる負荷が増大したため、それにあわせて基礎フレーム及び各部関節の強化が行われた。
また、稼働時間の低下が予想されたため、バッテリー及び燃料タンクを増設するために外装が一部大型化する事になった。

装甲の改良
この機体には、新開発の対レーザー蒸散塗膜加工装甲が搭載されることになった。
その試験結果を得て、通常の不知火と吹雪にも装備されることになる。
しかし、不知火は重要部分,吹雪はコックピット周りのみに限定で施されているのに対し、青色以上の仕様の機体には全ての装甲に
対レーザー蒸散塗膜加工が施される事になっている。

この様な改良により、不知火という枠の中では、ハード面でこれ以上性能をあげることはできないと言われるほど、突き詰められたものになった。

その機体性能は、総合的な能力で不知火を上回るものになり、接近格闘能力では不知火を圧倒するまでになっていた。

ただし、増設されたバッテリー及び燃料タンクでも稼働時間の低下を補うことはできず、統計的に見て稼働時間が不知火の80%ほどになっている。

さらに、大幅な製造コストの上昇と整備性の悪さや、高い衛士適正を必要とする点も問題とされたため、
現時点では少数精鋭の斯衛軍くらいしか運用する事ができない機体となっている。

この仕様を見た俺は、不知火とマブラヴの世界の武御雷を混ぜたような機体だなという感想を持った。

これは、余談だが不知火・斯衛軍仕様試験型のデータにより、EXAMシステム搭載を前提とした機体開発の必要性が判明し、
新型機の開発に反映される事になるのだった。








斯衛軍訓練校で一年を過ごした俺は、その後の衛士適正試験で過去最高の適正を示し、正式に衛士課程へ進むことになった。

過去何十回も戦術機に乗ったことがあるのに、いまさら適正検査を受ける事に苦笑を禁じえなかったが・・・。

ただ、初めて乗ることになる瑞鶴への対応が上手くいかず、動作教習課程のスコアは思うように伸びなかった。

それでも、他の訓練兵と比べると圧倒的な成績を出してはいるが、瑞鶴を上手く扱っているという感覚が無いのだ。

やはり、高い機動力と運動性が求められた第2世代機の陽炎,第3世代機の不知火・吹雪らと、重装甲で固めた第一世代機の名残が残る1.5世代機の瑞鶴では、
機体の動かし方に大きな隔たりがあるのだろう。
 
不知火では少しのミスは、持ち前の機動力と運動性で誤魔化すことが出来たが、瑞鶴ではそれが出来ない。

小さなミスでも、それがじわじわと傷口を広げて行き、それが結果に大きく響いてくるのだ。


俺のシミュレーターでの成績が思ったほど良くないのを見た教官は、基礎動作訓練終了後嬉々として瑞鶴同士のシミュレーター対戦を挑んできた。

そこで俺は、教官の巧みな操縦について行けず、久しぶりに敗北の味を味わう事になる。

そして、この出来事を切掛けとして、今までの鬱憤を晴らすかのように、毎日の用に入れ替わり立ち代り現れる教官たちとの対戦訓練をするはめとなった。

シミュレーター訓練の最後は、俺が教官と対戦し敗れるというのが日常になっていったのだ。

以前から分かっていたことだったが、シミュレーションでは殺気を感じに難いし、乗り物と認識出来ていないためか、
騎乗(乗り者の乗り方やその能力・特性を理解できる能力)の特殊能力が働く事は無い。

俺は教官の説明,瑞鶴の解説書,小隊内や他の訓練兵との議論を参考にしながら、少しずつ瑞鶴に最適な操縦法と限界性能を学んでいくことになる。





シミュレーターでの訓練が一段落したところで、ようやく実機訓練を行うことになった。

訓練校にある瑞鶴は、小隊での対戦ができるように8機が揃えられていたが、訓練兵の人数と比べると圧倒的に数が足り無いのが現状だった。

俺は、他人の操作記録ログが残っている機体に不満を感じながらも、初めて触れる瑞鶴に狂喜する事となる。

そして、実機に乗り騎乗の能力を発動させた俺は、瑞鶴の操作感覚を掴みそこから更に大きく成績を上げることになった。

訓練の最中に噴射跳躍で空に跳び上がる事を、


「貴様は、光線級の恐ろしさを知らんのか?」


と窘められることがあったが、


「この訓練の設定では光線級の存在は設定されていませんし、
 第三世代機なら光線級の照射を避けることができるため、この訓練は無駄にならないと判断します。」


と返答するなど、教官の指示する以外の訓練も行うようになっていった。

この事は、教官の不評を買い教官と実機を使った一対一対戦に発展していく事になる。

その対戦結果は、シミュレーター対戦とは逆に俺が勝利を収める形となった。

俺は教官の奇襲やトラップを持ち前の勘で察知し、それを逆手にとって不意打ちを喰らわせ、教官を撃破したのだ。

その後、格闘訓練時と同様に幾人かの教官と対戦を行うが、実機対戦では全勝、シミュレーター対戦では5分の成績を収める結果となった。

まともな対戦となれば、一対一で戦う事に慣れている俺に分があり、戦術機の操縦テクニックも8歳からシミュレーター訓練を行ってきた俺に分があるためだ。

教官には、シミュレーター訓練の時でさえ、奇襲やトラップしか有効な選択肢が残されていなかったが、俺の奇抜な機動を捉える事が難しく、
実戦経験の差を見せ付ける事が出来ずにいたのだった。




次に行われたのが、統合仮想情報演習システム『JIVES』を使った、対BETA戦のシミュレーター訓練だった。

今日行われたJIVESでのシミュレーション設定は、小隊での拠点防衛。

午前中に行われたシミュレーター訓練では、多くの小隊が先行する突撃級を処理している間に、要撃級と戦車級に囲まれ、
一度も補給を受けることなく、撃破されていった。

俺が小隊長を務める小隊も同じような経過をたどり、何とか包囲を突破するが拠点にBETAが侵入し、開始30分ほどで終了となっている。

このシミュレーション設定では、BETAは谷のある方向からのみ進行してきており、光線級の存在も設定されていないことから、
こちらに十分な装備と数がそろえば、防衛は可能であると考えられる設定だった。

しかし、支援砲撃も無く小隊規模でトラップの使用が許可されているのみでは、歴代の訓練兵の最長防衛記録が40分程度だという事からも、
現状の瑞鶴の性能ではこの程度の防衛が精一杯であると考えられていた。

午後からも同じ設定でシミュレーター訓練が行われることを聞かされた各小隊は、個別に集まり対策会議を行うこととなる。


「隊長、午後からのシミュレーター訓練どうしましょうか?
 流石の隊長でも、今回は厳しいと思うのですが・・・。」


そう言って、小隊内で俺とエレメントを組んで前衛を務めている、斉藤が話しかけてきた。


「ああ、確かに今回は厳しい状況だ。
 前のように、友軍が湧いてくることは無いしな・・・。」


俺が、軽く斉藤に返事を返し考え込んでいると、後衛を務める二人が話し出した。


「ええ~、隊長に頼めばどこからか増援や超兵器が湧いてくるもんだと・・・・・・。」


「前田、何を言っているんだ、
 隊長がいつもやっているのは、裏技や将棋の盤をひっくり返す類のものだ。
 勝手に援軍が湧いてくるものか。」


「高杉~、もっと夢を持とうぜ夢をよ~。」

 
「ふぅ・・・、二人の希望に沿うかは分からないが、一つアイデアがある・・・。」


そう言って俺が話し出したアイデアとは、機体の設定をいじろうというものだった。

三人は始め、何を言っているのか分からない様子だった。

それは俺が言っている機体をいじるということが、普段行っている個人で許された範囲の制御設定だと勘違いしたためだ。

ここで俺が言いたかった機体をいじるとは、機体の性能自体を変えてしまおうというものだったのだ。

もちろん、ありえない性能に設定するのではJIVESのシステムに弾かれてしまう。

しかし、逆に言えばありえる設定ならば、問題なく動くというという事でもある。

俺はシステムの中に、今の俺たちが乗っている一般向けの瑞鶴以外にも、有力武家や五摂家の者が駆る高機動型の設定が、
裏に隠されている事を知っていた。

さすがに、高機動型の設定をそのまま使うことは問題だが、そのデータを参考に一般向けの瑞鶴のデータを極限まで軽量化し、
機動力を高めた機体設定で、シミュレーター訓練に挑むことを提案したのだ。

その理由とは、今回は拠点防衛という設定ながらも、機動力にものをいわせ積極的に攻勢にでる以外に打開策が見つからなかったからだ。

この軽量化を施した設定では、機動力の向上に反比例して防御力が低下するため撃破される危険性が増すことになる。

したがって、戦力的に他小隊と差はついていないはずである。

この話を聞いた小隊の連中は、また裏技を持ってきやがったと発言するのだが、それを楽しみにしている節があるので、
他の小隊のまじめな雰囲気からはだいぶ離れた連中だった。

その後、機体の設定変更の裏コードとパラメータデータを渡した後、装備の設定・陣形の確認を終え、
午後のシミュレーター訓練に挑むことにした。









「こちら01(御剣)、小隊各機に告ぐ、作戦開始直後より全力で匍匐飛行を行い、一気にBETA群との距離を詰める。
 その後は作戦通りだ、好きに動け! 以上」


「「「了解!」」」 


今回俺たちの小隊が設定した装備は、強襲前衛(87式突撃銃×2,74式接近戦闘長刀×2,65式近接格闘短刀×2)装備が2機に、
制圧支援(87式突撃銃×1,多弾頭ミサイルコンテナ×2,92式多目的追加装甲×1,65式近接格闘短刀×2)装備が2機だ。

制圧支援装備の2機が装備する、多弾頭ミサイルコンテナのミサイルは自立回避をする機能が搭載されていないため、
光線級が存在する地域では無力化されてしまう装備である。

しかし、今回の作戦では光線級の存在が確認されていないため、補給を確保する事ができれば、その威力を大いに発揮する事になるだろう。

俺たちの小隊は、機体の軽量化によって他の小隊を圧倒する速さでBETA群の先鋒まで到達した。

この時点で、教官たちに機体設定をいじっていることがばれてしまったはずだが、特に指摘を受けることは無かった。

こういった設定変更が教官の想定内だったのか、現役の衛士も取る作戦として認識されたのかは分からなかったが、
俺たちは始めの難関を突破したのだった。

BETA群と接触直後、後衛より先行していた前衛の俺と斉藤は、危険とされる空へと舞い上がる・・・、迫り来る突撃級の上を飛び越えたのだ。

そして、突撃級の軟らかい背面を取った二機の瑞鶴は、突撃砲の正射を開始する。

突撃級は、一瞬速度を落とし反転するようなしぐさを見せたが、遅れてやってきた後衛に気づいたからなのだろうか、
面白いようにその背面をさらし続ける事になる。

やがて合流してきた後衛は、前衛と同様に突撃級を飛び越え突撃級の背後を取り、突撃級が反転する前に装備されているミサイルコンテナを全て発射した。

2機から発射された数十発のミサイルは、突撃級の背面に突き刺さり内部に溜め込んだ力を解放する。

ミサイルの放った閃光の後には・・・、無残に骸をさらす数十体の突撃級が残されていた。


「はははっ、凄い凄い、隊長~。
 こういう時、何て言ったらいいんでしたっけ?」


「04(前田)、たしか『汚い花火だ・・・』でよかったはずだ。」


「おお、それだよ高杉~。」


後衛の二人は無駄口を叩きながらも、立ち止まることはなく、撃ち洩らした突撃級への攻撃を続けるのだった。





後衛がミサイルを発射してから2分ほどたった時、中衛にあたる要撃級と戦車級の群れが接近しているという情報を捉える事ができた。

ここで、装備されているミサイルを全て発射していた後衛は、ミサイルコンテナの補給の為に後方の防衛拠点に後退を開始する。


「こちら04(前田)、隊長~後は頼みましたよ~。」


「01(御剣)了解。

 02(斉藤)・・・そろそろ要撃級どもが来るぞ、覚悟はいいな。」


「ええ、隊長の無茶に付き合うのが私の役目ですから。」


斉藤は苦笑しながら、俺の問に答えた。

斉藤が言う無茶とは、これから迫り来るBETA群をたったの2機の戦術機で対応する作戦に対しての発言だった。

幸いにもこの段階で、100体以上いた突撃級はほぼ掃討し終えていた、これなら後衛が補給から戻ってくるまでの残り10分間ほどなら、
持たせることができるはずだ。


「02(斉藤)、無理に倒そうと思うな、落とされなければいい。
 それだけでも、BETAを拘束することはできるんだからな。」


ここに、瑞鶴2機による連隊規模のBETA群に対する遅滞戦闘が行われる事になる。

この一見無謀かと思える作戦も、軽量化された瑞鶴の持つ運動性により、一撃でも貰えばアウトという綱渡りのような状況ながら、
一応の成功を収めることになった。

何とか後衛が合流するまで生存し続け、部隊の合流後は02(斉藤)が補給のため拠点へ後退していく。

その後、俺が囮役を務めることで、制圧支援装備の後衛が乱戦に持ち込まれることが無いようにしながら、遅滞戦闘は続けられていった。

そして、02(斉藤)が補給を終えて合流した直後に、俺と02(斉藤)の立場を入れ替え、俺が補給へ向かうのだった。


作戦では、このローテーションを繰り返し、拠点に到達される前にBETA群を殲滅することになっていた。

俺が補給に向かう途中、大きな花火が上がる。

これは、どうしても俺と02(斉藤)には技量の差が有り、02(斉藤)の支援をするために後衛が俺と組んで戦う時に禁止していた、
ミサイルを使ったためだろう。

そのほかにも戦力を補うため、俺が補給中にBETAが進行してくると予想された地点には、与えられたトラップを配置していた。


この戦い方で、俺は補給と移動に必要な時間の3回分を戦い続ける事になり、他の隊員は2回分の間戦うことになる。

俺が連続で戦う時間が長い事になるが、衛士としての能力差があるので仕方が無い事だった。

尤も、他の隊員が衛士としての能力が劣っていると言う訳ではない、他の小隊と比べても俺の無茶な戦い方についてこられる事からも、
その優秀さが伺える。

しかし、始めは上手く機能していたローテーションも、疲労の蓄積によりミスが目立ち始めトラップが尽きた時、崩壊を始める。

俺が補給をしていた間に囮役をしていた、02(斉藤)が撃破されてしまったのだ。

残りの二機は、その時点で撃ち尽くしたミサイルコンテナを破棄し、運動性を上げる事で何とか持ちこたえることに成功するが、
ここで強力な火力を失うこととなる。

そして、補給を終えた俺が駆けつける寸前、俺の機体の横を光線が通り過ぎ、残りの二機が相次いで撃墜されたことが告げられた。

何と・・・、想定していなかったBETAの増援が出現し、そこには要塞級と光線級も含まれていたのだった。





俺はそれから撃破されるまでの間、最後の足掻きに戦い続ける事になる。

BETAの群れに対応するのは、絶え間なく襲っている訓練兵を相手にしていた、格闘訓練の時と似ている等とくだらないことを考えながら・・・。

何とか光線級を全滅させるまで粘ることができたが、最後は要撃級の攻撃が掠り転倒したところを、戦車級に群がられ呆気なく撃破されることになった。

あのじわじわと瑞鶴の装甲を食い破ってくるシーンは、できることなら二度と見たくは無いものだった。

しかし、俺の望みとは裏腹に、ほぼ100%の確率でこの戦車級に俺は撃破される事になっていく。

他の種類のBETAから致命傷になるダメージを受けることが無いため、何らかの理由で動けなくなった時点で、奴らの餌食になるのだ。

シミュレーター訓練が終わり、外に出た俺たちに教官が声をかけてきた。


「おめでとう。
 要塞級と光線級が出現するまで・・・、つまり防衛開始から一時間超えをした訓練兵の小隊は、貴様らが初だ。」


この教官の発言を聞いた俺たちは、喜ぶよりも攻略の目処が立ってきた作戦が振り出しに戻された事を感じ、肩を落とした。

この日はシミュレーター訓練とはいえ、改めてBETAの物量の恐ろしさを実感する日となったのだった。






衛士課程に進んでから10ヶ月以上が経ち、衛士課程の最終試験に現役部隊を仮想敵とした実機訓練があると噂され始めてから
しばらくたったある日、俺はその噂の全容をつかみ小隊内の対策会議で報告することにした。


「皆、今日は良い話と悪い話が一つずつあるんだが、どっちから聞きたい?」


「では・・・、セオリー通りに、悪い話からお願いします。」


俺は、冷静な斉藤の言葉に促されて話をする事にした。


「最終試験で、噂されていた仮想敵の正体が判明した。

 対戦する相手は・・・、国内最強部隊の富士教導隊だ。」


俺の言葉に、小隊の全員が息を呑むことになった。

富士教導隊とは、現役の衛士を教導するために作られた最精鋭部隊である。

常に他の部隊と演習を繰り返している彼らは、対人戦のエキスパートであると同時に、最新の装備を運用する試験部隊としての側面を持つ。

そして当然のように、運用する戦術機は全てTSF-TYPE92-B/92式戦術歩行戦闘機『不知火』で揃えられているのだった。


「はぁ・・・、隊長~良い話の方も聞かせてください。」

 
「喜べ前田、最終試験二週間前になる明日、訓練兵全員分の瑞鶴が配備される事になった。
 各部隊から提供されて、二週間だけだが初めて自分たち用の戦術機が手に入ることになる。」


「隊長・・・、不知火相手じゃ、余り良い話とは言えませんが?」


「そう言うな高杉、これでもましになったほうだ。

 それと、日本人としては喜ばしいが、富士教導隊と戦う者たちにとって悲しい知らせがある・・・。
 オフレコになるが、近日中に富士教導隊の不知火がCPUを交換し、最新のOSが搭載されると報告を受けた。」


「それは・・・、隊長の家で開発された、戦術機の硬直を無くす事が出来るという噂のOSですか?」


「ああ、それも最新型のver.2だ。
 教導隊の不知火には、硬直がまったく無くなると考えてもらっていいだろう。」


「「「はぁ・・・。」」」


三人は俺の話を聞き、一斉に肩を落とした。

俺はかまわず、話を続けていく。


「今回は、裏技も卓袱台返しも無しのガチンコ勝負だ。
 俺たちは今後、配備される瑞鶴を自分用に慣らしていくことになるだろう。
 上手く瑞鶴を調整する事ができれば、今まで有った他の衛士が残した操作記録ログログによる違和感も無くなるはずだ・・・。

 後は、教導隊を少しでもてこずらせる為に、他の小隊にこの情報を流すことぐらいしかない。」



この会議の後、他の小隊で仮想敵の相手が富士教導隊であることが噂され始める事になった。

そして俺たちは、今まで以上に整備兵と情報交換を行い機体の設定を煮詰めていくのだった。




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コメント

皆様、ご感想ありがとうございます。

皆様の応援のお陰で、今まで最長で1話一年だったのが、ついに2話で一年となりました。

この調子で、原作に追いつく頃には、細かな描写ができるようになっていればいいなと、考えています。


それと、ご感想・ご提案の返事を感想板に書き込むと、作者の投稿で感想板が溢れてしまう可能性があるため、
誠に恐縮ではありますが、ご感想・ご提案の返事は今後、後書きで触る程度にさせていただきたいと思います。

ただし、ご指摘への返事は後書きで書いても感想板を見ない人が楽しめないため、
今まで通り感想板に返信させていただいたいと思います。




本編で書いた教導隊への新OSの配備・・・、どうしましょう?
ますます、将来のイベントが怖くなっていました。
しかし、日本帝国と民間人を守るためには新OSの普及が必要だし、
その過程で、教導隊に配備されないのはおかしいし・・・、
悩みが絶えません。



返事

現段階での設定では、原作の戦術機を少し改良した程度の機体となっております。
この話で出てきた試作機も、その性能で原作武御雷を超えることができていません。
後、何機か戦術機を開発していくと、明確に原作と異なる戦術機となっていくと思います。


それと、おそらく同じ方より二度目の提案があった、二次創作で大人気らしい「世界一高価な鉄屑」の件ですが。
原作ではこの話の五年前の1990年に、鉄屑が決定してしまわれたようです・・・。
ただ、大々的に手を出し鉄屑さんの開発元を儲けさせると、技術が流入しなくて困る国が出てきてしまうかもしれません。
ある国の戦術機も好きな、私としてはどうにかそれは避けたいのです。
また、国内の反発も懸念しています、TEを読むとやはり国粋主義者が多いようですし。

二枚舌交渉でどうにでもなるだろ、とか
米軍撤退前なら何とかなる、
と言われればそれまでではあるのですが・・・。

今後の展開しだいではどうなるかわかりませんので、慎重に検討したいと思います。



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