俺は今、アラスカのユーコン平原に来ていた。
俺はある機体のコックピットの中で眺めていた。
俺の眼下にはアラスカの寒々とした世界が広がっていた。
4月なのに寒さを感じさせる世界は正に極寒の地と呼ぶに相応しい。
リアード温泉が俺の世界では有名だった。
温泉か……入りたいな……
遅ればせながら俺の乗っている機体を紹介しよう。
ヤクトドーガだ。
改良点はファンネルを地上で使えるようにしたのと、シールドにアンチレーザーコーティ
ングを施した。
後、オプションパーツとしてミノフスキーフライトを装備した。
それ以外はノーマルの無改造機に近い。
何故、俺が愛機たるHi-νに乗らず、ヤクトドーガに乗っているかと言えば、コレをユー
コン基地への土産とするためだ。
俺はアームレイカーを操作しながら、アラスカの寒々とした空を舞った。
ユーコン基地……
警報は高らかに鳴り響き、辺りで怒号を響かせながら多くの衛士達は大急ぎで自分の乗機
に乗り込んでいく。
「所属不明機が接近しているだと!? 何処の国だ!?」
「アンノンウン!? 識別不明だと!?」
「ここを国連管理下の施設と知っての狼藉か!?」
「早く発進させろ!! なんとしても基地に近づけさせるな!!」
コード911のアラームを聞きつけてジョージ・プレストン准将が作戦司令室に駆け込
んでくる。
「何事か!? 状況を説明しろ!!」
その声にオペレーターが現状報告を行う。
「現在、所属不明戦術機が当基地に接近中!! その数1機!! 機種特定不明!!」
オペレーターの回答に命令を下す。
「所属不明機に警告しろ!!」
「今、行っています!! ……待って下さい!! 所属不明機より通信来ました!! オ
ープンチャンネルで回線を開いています!!」
オペレーターの返答にプレストン准将が命令する。
「つなげろ」
「了解!!」
オペレーターは慌てて回線を繋いだ。
画面には20代前半の東洋系の顔で、髪と目は黒、整った顔立ちの男が映し出された。
男は静かに口を開いた。
『突然の訪問、失礼する。私は国連軍の手塚 在都少将である』
男のその出鱈目に有名な名は作戦司令室を震撼させるに十分だった。
「な!? アルト・テヅカだと!?」
「姿を消していたテヅカが何故!?」
「アレが!? 世界最強の衛士!?」
プレストンは場の喧騒を落ち着かせると、落ち着いて質問を投げかけた。
「そのテヅカ少将がどの様な御用向きで当基地へ?」
在都は落ち着きながら答える。
『国連事務総長の命により、国連軍再編計画及び、戦術機開発の技術協力のため参上した。
ユーコン基地への着陸許可願う』
プレストンは少し考え、口を開いた。
「了解した。此方の指示に従って、着陸していただきたい」
『了解した』
ヴァジリー・アターエフサイド
突如、ユーコン基地に信じられない有名な珍客が現れた。
その名は、アルト・テヅカ……我がソ連でも知らぬ者がいない程の有名人だ。
資本主義の犬たるアメリカの太平洋艦隊を僅か3分で殲滅し、大いに私を喜ばせたのは記
憶に新しい。
その、アルト・テヅカが突如国連軍再編計画と戦術機開発の為にこの基地に訪れた。
私はこれをチャンスと捉えた。
これを機会にテヅカから技術を盗み、我が祖国の戦術機開発を先んじることが出来る。
それに……アルト・テヅカならП3計画の発展の為に盗める技術があるかもしれない……
俺は基地に着陸して、誘導の指示に従いながらハンガーに辿り着いた。
そこには、国連軍の軍服を着ているが手にはコルトM4A1カービンを持ったMPが続々と
集まっていた。
国連の正式採用小銃はIMIのタボールだが、どうやらここではアメリカ軍の影響が強いら
しい。
俺はコックピットハッチを開き、ワイヤーラダーで下りる。
MPは一斉に此方にM4の銃口を向けた。
俺は地上に降り立ち、敬礼をする。
「国連軍の手塚 在都だ。この基地の責任者の所まで案内していただきたい」
俺はMPに伴われ、司令室まで案内された。
ユウヤサイド
俺は不貞腐れながら昼食をフォークで突付いていた。
PXは本来、騒がしい所だが今日は輪をかけて騒がしい。
「ユウヤ、聞いたか?」
ヴィンセントが少し興奮しながら聞いてきた。
「何が……?」
ヴィンセントは呆れながらも少し興奮しながら言う。
「“何が?”じゃねえよ! Fairy Taleのアルト・テヅカがこの基地に来てるんだぜ! あ
の“国連軍の白い悪魔”が!」
一々、言わなくても解ってる事を言うなよ……
俺はフォークでソーセージを突き刺し、それを口に運ぶ。
ヴァレリオはパンを掴み口に運びながら言う。
「“国連の白い流星”なんてのもいわれているな確か……」
クリスカはスプーンでスープをすくいながらこう言う。
「確か、“白き戦場の支配者”とも言われているな……」
唯依はマグカップを口元までもって行きながら言う。
「私が聞いたところでは、最高の戦術機開発者だとか……」
タリサは背もたれに身を預けながらボヤク。
「何だソリャ? 異名だらけじゃない?」
ステラは口を拭きながら言う。
「それだけ活躍していると言う事なんでしょう」
亦菲は鼻を鳴らしながら言う。
「ハン! 伝説だか、英雄だか知らないけど、政治的に敗北、雲隠れした負け犬でしょ所詮」
その時だった……PXの空気が一斉に静まり返ったのは……
何事かと思い、皆が見ている方向に目を向けるとアルト・テヅカがいた……
何だ……この身が締め付けられる、息苦しい感覚は……!!
アイツがいる……唯其れだけでここまで……!!
あの亦菲すら固まって、冷や汗をかいている……
何てプレッシャーだ!? クソ!!
これがアルト……テヅカ……
俺はこれから世話になる基地内を見学していた。PXに入った時、騒がしかった場の空気が何時の間にか引き締まった。
おかしい……普段道理にしていたはずなのだが……
俺はふと自分がカナリ、プレッシャーを放っていた事を認識した。
どうやら、敵陣と言う事もあり、気付かぬ内に臨戦態勢を取っていたらしい……
俺は案内が終わると訓練場を見学する事にした。
訓練場には戦術機が訓練をしていた。
どうやら使われているのはジャイブスか……
俺は訓練を見ながらある事を思いつく。
チョット、驚かすか……
俺はヤクトドーガに乗り込んだ。
ユウヤサイド
俺達が訓練をしている時、突如、テヅカが乗ってきた機体が見えた。
何だ?
俺がそう思った瞬間、イブラヒム・ドーゥル中尉から通信が入る。
『少将殿が訓練に参加したいそうだ。相手は……』
ドールル中尉が割り振りを言おうとした時、テヅカが割ってはいる。
『ここにいる全員で来い。時間が短縮できる。それと作戦会議の為に10分後に開始しよう』
俺はこの言葉にカチンと来た……
舐めやがって……
馬鹿にされてる……
上等だ!!
ここまで馬鹿にされて黙っているほどお人よしでもない。
通信越しに全員の顔を見ると全員怒っていた。
之だけハッパをかければ十分か……
さて……どれだけ戦えるか見ものだな……
テストパイロットの実力、見せてもらうぞ。
10分後、彼等は来た。
なるほど……身にまとうプレッシャーが違う。
ハッパをかけたのは正解だったな……
『演習開始まで1分』
俺は目を瞑りながらその時を待つ。
『演習開始!!』
俺はその合図と共に目を見開き、アームレイカーを操作する。
まず近くにいた、ジェガンモドキにビームライフルを構え、撃ちぬく。
『タリサ機、コックピット貫通、致命的損傷、大破』
次!!
俺はアームレイカーを操作し、相手の撃ってきたビームライフルをかわしながら、シール
ドについている4連装メガ粒子砲を撃ち込む。
メガ粒子はザクモドキとウィンダムモドキに当たる。
『ステラ機、胸部破損致命的損傷、ヴァレリオ機コックピット貫通致命的損傷、両機大破』
まだまだ!!
しかし、Hi-νと違って遅すぎる……
眠ってしまいそうな反応速度だ……
はあ……Hi-νに乗りたい……
俺はアームレイカーを操作しながら次の敵を狩りに行った。
唯依サイド
強い……いや……強すぎる……
次元が違いすぎる……
射撃が正確すぎる、接近戦の技量もずば抜けている、まるで後ろに目があるみたいな反応の仕方……そして、何よりもあの速度……
人間が操縦できる速度ではない。
「アレが……国連の白い悪魔……」
ここまで自分達と次元が違うと如何戦っていいのか解らなくなる。
その時、突如、警報が鳴り響いた。
「何事だ!?」
『演習は中止だ!! テロリストが戦術機を使い当基地を襲撃! 直ちに之を排除せ
よ!! 繰り返す!! テロリストが戦術機を使い当基地を襲撃! 直ちに之を排除せよ!!』
俺はジャイブスをカットし、即座に戦闘モードに切り替える。
俺は即座にテリストの戦術機の場所を見た。
「なるほど……アメリカ側から来ているな……」
俺は言うが早いかヤクトドーガのセンサーを拡張させる。
「アメリカ軍が展開している……インフィニティーズか……」
ちぃ!! アメリカめ……
しかし……何が狙いだ……アメリカ……
まさか……アメリカはここでテロをおこしそれを制圧、テロの防衛の為として、軍を派遣する気か……
戦後世界を睨んでソ連との国境に合法的に軍を増強できかつ俺の技術を独占する気だろう。
気に入らんな……
破綻させてやる。
俺はアームレイカーを操作し、テロリスト達の殲滅を開始した。
暫く飛んでいると見つけた。
F4に乗ったテロリスト共が……
しかし、ファントムの手にはビームライフルが握られていた。
「ハン、テロ屋の癖に随分贅沢な武装を持っているな! オイ!」
俺はビームライフルを撃ち込む。
1機のファントムに当たり爆散した。
テロリスト共は味方がやられるや否や即座に散開した。
これで確定した。少なくとも訓練を受けた軍人の動きだ。
素人なら、ここで俺目掛けて乱射するはずだからだ。
「落とさせて貰う!! ファンネル!!」
俺は6機のファンネルを飛ばし、相手を撃ち落していく。
しかし、2機はビームライフルを乱射しながらファンネルを落とそうとした。
しかし、甘い。
「甘いんだよ!!」
俺はファンネルを操作しながら相手の弾幕をかわし、相手を落とした。
なるほど……対ファンネル戦の訓練は積んでいる様だ……
その証拠に最後の1機が俺に接近戦を挑んできた。
「甘いと言っている!!」
俺はビームサーベルを抜き放ち、相手を横薙ぎにした。
テロの制圧は完了した。
全く……アメリカがチョッカイをしてきたか……
しかし……アメリカ現政権がこんな事するヤツはいなかったはず……
一体誰が……
俺は基地に戻る傍らそんな事を考えていた。
アラスカは夕日に照らされていた。
この世界とは関係が無いと言いたそうに……