様々な小説に感化されて、自分も小説を書いてみました。
至らない点があるかもしれません。誤字脱字があるかもしれません。完結できるかわかりません。
ですが、時間の空いた時に執筆はしたいと思います。
ちなみにこの小説は原作基準ではありません。
そのことをご理解の上、よろしくお願いします。
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「―――やあ、君の名前は?」
目の前で嬉々として、さりとて偽りだと確信出来る笑みを浮かべて女は言った。正直、この女と会話するのは嫌だった。
今でも感じる背筋の悪寒。断崖絶壁を背にじりじりと命を刈り取られてしまいそうな恐怖。自然と俺は目を細める。
嫌悪感を露にする。しかし女はニヤニヤと笑っている。
初見だったならば、初対面だったならば、初会話だったならば、美人だと公言していただろう。それほどまでに、女は美しい容姿をしている。
「―――失せろ、と言っただろうが」
「ボクは君に興味があるんだ。ねえ、教えてよ」
「失せろ」
「―――全く君も相変わらずだね。………そうだ。じゃあ、最初から。またボクが自己紹介するね?」
俺の了解を得ずに女は時計のように淡々と、今なお変わらない訊いてきた台詞を一語一句正確に話す。
とっさに耳を塞ぐ。逃げられないのならば、と小さな抵抗。
無駄なのは判っている。塞いだ手を貫いて聞こえてくる声に泣きたくなる。
「ボクは―――ネギ。ネギ・スプリングフィールド。君が欲しい、女性だよ」
正直、こんな世の中が嫌になりそうだった。
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『真っ赤』。極端に表せばこの言葉だった。夕焼けより醜悪で、朝日より残酷過ぎた色。
何もかも分からなかった。
心臓の拍動がうるさい。血液の脈動がうるさい。身体の鼓動がうるさい。脳の躍動がうるさい。何もかもがうるさい。
蝋のように動かなかった足が動きだす。目指すは自身が育った村へ。大好きな人がいる場所へ。地獄が生まれたその場所へ。
「―――う、ああ、あぁぁ―――」
どんなに望んでいてもそこは地獄以外何物でもない。悪魔によって潰された村。家は燃え、地面は抉り、木々は裂け、人が―――石になっていた。脳裏に焼きつく。知っている人が杖を持ち果敢に挑もうとしている、まるで彫刻のような物が大勢転がっている。
「……おじさん? どうしたの、皆も……ねえ、なんで、なんで、なん……」
戯言が止まる。視界の隅に見てはいけないものが近付く。不意に見てしまい後悔する。それは、悪魔だった。村を破壊し、人々を石化させ、生き延びた者に害悪をもたらす人間とは根本的に違う異形。声の主を視界に収め、唸り声にも似ている喉を鳴らせば声の主は目尻に涙を溜めて、必死に杖を傷ついている悪魔に向けている。
悪魔にすればそれは児戯に等しい。その者から感じる魔力は膨大だが、扱いを知らない。これは好機だ。悪魔にすれば絶好の機会。何せ子供だ、まだまだ成長するし魔力も豊富、何より―――“人間になれる”。
「……ごめんね」
「えっ?」
直後、傷ついた悪魔は杖の主に襲いかかる。
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これが、人間“ネギ”と悪魔■■■の出会い。ネギは新たな人格(ちしき)を得て、悪魔は人間(ちから)を得た。今まで訊かされて判ってしまった。俺は激しく後悔する。その、悪魔ってのが―――俺の家にいた悪魔だった。
訊いた当初は驚愕ものだ。座敷わらしだと思っていたのが、悪魔で、ネギの村を襲い、ネギと一つになっている。それが、それこそが、俺に嫌悪を与えている証拠なのかもしれない。
「今だったら判るよ。ボクが、私が、こうして一つになれたのも君のおかげだってね」
「理由がおかしいだろ」
「おかしくなんかないよ。こうしてボクがボクでいて、私になれた。私が私でいて、ボクになれた。全部、君に対する想いがあるからなんだ。……まあ、サウザンドマスターが目の前にいた時は生きた心地がしなかったけど、ね?」
小首を傾げながら微笑むネギに俺は目を反らす。嫌悪を抱く相手が例え美人だとしても、受け付ける訳がないだろう。それに講じて悪魔? 魔法使い? どこのおとぎ話だよそりゃあ。信じる要素が何一つないだろう。
いきなり現れて抱きつけられて、愛の告白を受けて、人と悪魔の融合体で、魔法使いときた。
「別に信じなくていいよ。ただ、理解してくれればいいだけ」
「理解したって俺が現にこうして嫌ってるんだ。好きな相手が嫌がっているんだから身を引けよ」
「それはイヤ」
……どうして。
「ボクは識ったんだ。この人こそが運命の人だってね。感じたんだよ、悪魔の身でね。笑っちゃうだろ? ネギのことを無視しても人間になりたかったんだ」
「―――お前は、人一人の人生を狂わしたんだぞ! そんな奴に、俺が靡く訳がないだろうが!!」
当たり前のことだ。怒号を乗せてネギに浴びせる。だがまるで効いていないかのように、むしろ教授しているしぐさを見せている。両手を広げ、表情を恍惚に染め上げ、身を震わせる。変態だと思った俺は悪くない。
「い・い・の。だって、ボクも君が好きになっちゃったなだから」
「は……」
一体何を―――、
「この姿は幻術の姿だけど、本当はまだ10歳なんだ。別にボクは君がどんな性癖でも構わないもん。一目ぼれだから、ね?」
う、そだ……ろ?
「ちなみにボクはここの女子中学の先生になったんだ。場所は違うけど、逢いに行くからね。料理、自信があるんだぁ。ふふふ」
は、ははは……。ふざけんな。
「よろしくね……ご主人さま?」
俺は一目散に逃げ出した。
何でしょう、これ。続くのかな?