銀座。
未来において大いなる発展を遂げ、日本有数の都市となる街。
そこへのっそりと現れた数体の脇侍。
手には妙な装置を持ち、あたりをきょろきょろしながらも進んでいく。
ズシン・・・ズシン・・・
現在は深夜の2時を過ぎた頃。そのため周辺には誰も存在していない。
そう、『人』ならば。
シューーーーン・・・ヴヴヴヴヴヴ・・・
小さい羽音で映像を送り続ける追尾君の存在があった。
「よし・・・敵はどうやら行動を開始した直後みてぇだな」
翔鯨丸に搭乗し、作戦室から映像を受信しているのは帝国華撃団・花組の面々。
降下可能地域の手前まで進んだ所で、大神へ紅蘭からの通信が入った。
『大神はん、大神はん』
「あ?佐藤じゃねぇか。何か問題でもあるんか?」
『・・・あ~、名前については戦闘後にじっくり追及したるわ。そうやなくてやな、あの脇侍が持っとる装置なんやけど』
シュンッ
紅蘭の指摘に倣い、映像が拡大される。
脇侍2体が1組となって装置1つを運び、それが5組。
そして。
『良く見てみるとやな、違う装置を持っとるんや・・・多い方のは分かるで?この前使っとった転送装置や。でももう1組が持っとる楔みたいなものは・・・』
「・・・あぁ。これは何か別の用途があるって考えたほうが良さそうだな」
『もしかしてあいつらの武器だったりしてな!』
カンナが珍しく口を挟む。その表情はいかにもその脇侍との戦いを望んでいるかのようだ。
「桐島、もしそうだったら迷い無くお前ぇをぶつけるから安心しろ」
『やりぃっ!!』
『あ~、カンナはんはそれで良いとしてや、もしそれ以外の用途やったら・・・』
「おう、先に潰す。只でさえこちらは向こうの目的が分かっていねぇんだ。事を起こされる前に潰すのが基本だわな。他の奴らも良いか?」
『はいっ』
『ま、わたくしの手にかかればぺぺぺのぺー!ですわ』
『アイリスもがんばる~』
『よっしゃあ!燃えてきたぜ~!』
『ウチの発明品のお披露目や!』
「・・?タチバナ、どうした」
一人だけ顔を曇らせたまま返事をしないマリアに、大神が通信を入れる。
『少尉。ずっと考えてきたのですが・・・このまま、帝国華撃団花組の隊長をやってもらえないでしょうか?』
「はあ?」
『もちろん、私としましても全力をもって少尉を補佐するつもりです。どうか・・・』
悩みに悩んで、そして結論を出したのであろう。マリアの表情からは影が無い。
だが。
「断る」
『『『『『『な!?』』』』』』
たった一言の拒否の返事に、全員から驚愕の言葉が漏れる。
「言っただろう?オレは隊長なんて柄じゃねぇ。確かに最初はお前ぇらが戦争に素人だって事で引き受けた。だがな」
ここで一区切り置いて、再び話し出す。
「普通戦場に1回でも行って生きて戻ってきたのであれば、そいつは戦場経験が無くて知識だけある新兵や将校よりも上だ。タチバナ、オレはお前ぇを推薦するのは前歴も含む、今までの戦い方、そして成長だ」
『少尉・・・』
「それにな、オレのような前衛特化には隊長は向いてねぇ。あくまでも後衛に座し、戦場を広く見渡せる視野を持つ者・・・それが小隊長、いや花組の隊長をやる条件だ」
大神は、特殊能力を除けばただ只管刀を振るうもしくは『●●●』のみ。それに対し、マリアは後衛から指揮及び援護射撃を行い、補助する役割に長けている。特性だけならば紅蘭やアイリスもその範疇に入るのだが、如何せん経験が浅く、そして幼年すぎる。
それを大神は指摘した。
「だが、今回に限りオレが指揮を執る。佐藤を含んだ6人での戦闘はまだやってねぇからな。タチバナ、お前ぇはじっくりと観察しろ。そしてオレが執った指揮で問題点を見つけるくらいのことはやって見せろ。今なら出来るはずだ」
『・・・分かりました。ではじっくりと観察させていただきます』
《銀座上空まで後二〇〇〇》
「・・・そろそろだ。各員降下及び戦闘準備!」
『『『『『『了解!!』』』』』』
銀座・一番街中央通り。その土地は古くから伝わる霊地として、広大な地域に稲荷神社が佇む異地。
ザシュッ・・・ザシュッ・・・
ブゥン・・・
脇侍が運んできた楔。それが今、地面に打ち込まれようとした。が、その時。
「うおりゃああああああ!!」
ザンッ!
『ギィッ!?』
月夜に映える、月光浴びて白銀に輝く機体。
光武。脇侍が持っていた楔を、腕ごと斬り飛ばす。
「よっしゃ、もらったぜ!」
「桐島、ソイツをぶっ壊せ!!」
「言われるまでもねぇぜ!!だりゃあああ!!」
ズガンッ!!
橙色の光武が拳を突き出し、楔に内部衝撃を与える。
ビィィイイイイン・・・ピシィッ
楔全体が震え、打撃部から薄っすらと罅が走る。
そこへ。
「ぶっそうなモンは・・・消し飛んでまえ!!」
バシュゥッ ズッ・・・ドオォォォォン・・・
緑色の光武が放った1発の誘導弾。それが楔を木っ端微塵に消し飛ばした。
そして数秒遅れて
ザンッ ザンッ ザンッ ザンッ
桃色、紫色、黄色、そして漆黒の光武が降り立つ。
「「「「「「「帝国華撃団、参上!」」」」」」」
【マリア】
なるほど、戦場へ突入の際にはこういうやり方もある、ということなの。
大神少尉は、敵の戦力を分析し、そして一撃目の突入を最低限に絞った。
その編成も納得がいく。
最初に攻撃力に特に優れた少尉、カンナ、そして中距離援護射撃が出来る紅蘭を1組目。
そしていざと言う時の備え、もしくは弐撃目の突入・交戦班として私、さくら、すみれ、アイリスの2組目。
特にアイリスの治癒能力を考慮し、一撃に失敗したときの為の保険としての配慮も、切羽詰った状態ではなかなか頭が回らないものだ。
これは少尉の経験からなるもの、か。
やはり私としては、少尉が隊長に就くのが最善のように思う。だが、それは私が素人としての考えということなのだろうか。
私では、一瞬の判断が必要な場合に上手く指揮できる自信が未だに無い・・・そう、あのロシアでの苦い経験が壁となっているんだわ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・ん?
おかしい・・・何か・・・違和感がある。
頭が・・・以前とは全然違う・・・閃く。
まるで、上空から戦場全体を見たような感じ。
これは・・・
『全ての霊気は沈静の助け!力を引き出す一助となれ!『林』発動!!』
しょ、少尉?まさかこの状態は少尉が!?
先の戦いの時に感じた、まるで守られているような感覚とは違う。
まるで・・・頭からつま先まで、寝ていたところを起こされたような・・・もどかしくも心地よい感覚。
『タチバナ!オレは能力の発動で動けねぇ。お前ぇはオレの側で戦場を見渡せ!んで良い時機を見計らって射撃援護だ!』
「りょ、了解!」
『真宮寺!敵は少数だ、佐藤と組んで左陣を撃破しろ!』
「了解!」「了解やで!ほな行くで?さくらはん」
『桐島!神崎!お前ぇらの阿吽の呼吸には雑魚共はついてこれねぇ!右陣を撃破だ!』
「了解ですわ~。カンナさん、足を引っ張らないでくださいね?」「へっ!言ってろ、お前ぇこそしくじるなよ!?」
『幼女!お前ぇは霊気を戦場全体に行き渡らせ、『山』の指向を訓練だ!僚機を把握し、それを包むような感覚でやってみろ!』
「う、うん!アイリス、やってみる」
お、驚いた。まさか実戦の中でアイリスの訓練まで思いつくとは。
あの座禅の訓練。あの時、一番少尉の霊力に感応していたのがアイリスだったわ。
それだけ自分の真の霊力に目覚め始めている証拠になる。
霊気の指向。それは段階的にはかなり上に位置していたはず。
それをさせたということは・・・
『タチバナ!ボーッとしてんじゃねぇ!転送装置が新たに設置された!狙撃できるか?』
「・・!っく、やります!」
大丈夫、今の私の感覚ならば普段以上の集中・狙撃ができるはず!
「そこぉっ!!!」ドゥンッ!!!ドゥンッ!!!ドゥンッ!!!
狙撃三連射。狙い外さず目標中央着弾。そして撃破。
よし、この状態ならば・・・!
「素晴らしい指揮です!少尉!!」
Side out
一方、今回出陣の紅蘭と言えば。
「あっはっはっはっは!見える、見えるでぇ~!」
バシュッ バシュッ バシュッ
さくらが斬り進む道を開けるため、只管誘導弾を連射していた。
目標は既に設置されてしまっていた転送装置なのだが、脇侍が次から次へと現れる為、脇侍に向けてのオーバーキルを繰り返していた。
そして、大神の『林』発動で後衛型特有の観察眼が強化され、そして体から湧き上がる霊気に酔いしれていた。
ここで紅蘭の弱点がさらけ出される。
先にも記述したが、紅蘭は初陣なのだ。よって、自分の立場がどんなに有利であろうが、次の瞬間には逆転されるかもしれないことを知らないのである。
「っ!紅蘭、後ろ!?」
「へっ!?」
『ギイッ!?』
最早動くことさえままならない状態の脇侍が立ち上がり、最後の力とばかりに錆刀を振りかぶっていたのだ。
マリアはその時、カンナとすみれの援護射撃に向いていて気づいていない。
「どわあっ!?」ザシュゥッ
脇侍の一閃は、紅蘭の光武の右肩についている誘導弾発射筒を斬り捨てていた。
『林』の効果で、瞬発力も少しながら上昇していたのが命拾いとなった。
ゴトッ・・・
それを見て、紅蘭の興奮していた感情が一気に冷却される。
「ウチ・・・何やっとるんや」
ゴスゥッ!!
再び動こうとしていた脇侍を、紅蘭の光武が拳で止めを刺す。
「きゃああああっ!?」
「!?さくらはん?」
呆然としていた紅蘭が後ろを振り返ると、間隙を縫って出現してきた脇侍10数体がさくらを攻撃しようとしていた。しかも前左右の三方から。
「はあああああ!!!」ザシュウッ!!ザシュッ
ドコォッ!ドカァッ!!
「けほっ・・・」
立て続けに右と前から来た脇侍2体を斬り伏せたさくらであったが、左の脇侍から蹴りを入れられ、そして続けて前から接近してきた脇侍に組み伏せられてしまう。
立て続けにハプニングが発生し、紅蘭の頭の中は真っ白となった。
「さ、さくらはん・・・」
『佐藤ぅっ!!!ボケっとしてんじゃねぇ!!』
「大神はん・・・」
『くっ、やはり『林』は早すぎたか!『林』解除!続けて『山』発動!』
僚機の気配を把握しているからこその指向変換。
いくら『林』と言えど、一回混乱してしまえば役に立たなくなる。あくまでも、平静さを上昇させ、混乱させにくくするだけなのだ。そこで防御力上昇の『山』に切り替える。
「幼女!佐藤を瞬間移動で回収、ここに連れて来い!」
「わ、分かった!!」
そして『山』の訓練をしていたアイリスに、紅蘭を救助するよう命令を出す。
『タチバナ!真宮寺の方へ向き直れ、奴の支援だけに徹しろ!』
『了解!』
『桐島、神崎!お前ぇらだけでそっちはいけるか!?』
『おお、余裕だぜ!』
『右に同じ、ですわ!』
『よし、ならば右陣は二人に任せる!』
『『了解!』』
シュンッ!
『おにいちゃん、紅蘭連れてきたよ?』
『よし、ならばお前ぇは引き続き『山』の発動訓練に移れ、そして時機が来たならば真宮寺機をこちらに移動させて回復する。準備しとけ!』
『りょうかいだよ、おにいちゃん!』
紅蘭を除くメンバーに命令を終えた大神。
そして未だに放心状態である紅蘭機に向きを変える。
『よう・・・どうだ、一人の慢心でひっくり返った戦況を見るのは』
『ウチは・・・ウチは・・・』
『まぁ、確かに戦闘経験の無ぇお前ぇを連れてきたのはこちらにも非はある。だがよ』
『・・・・・・』
まだ俯いている紅蘭に、大神の檄が飛ぶ。
『いつまで呆けてやがるんだ!!!ここは戦場だ、余ったれてんじゃねぇ!!!』
『っ!!!』
ビクリと体を揺らす紅蘭。モニター越しではあるが、かなりの衝撃を受けているようだ。
『いいか、オレ達・・・いや違う。お前ぇ達はこういう時の為に集められたはずだ!藤枝の年増から聞いてたんだろうが!そして今、お前ぇはどういう状況であろうと戦場に立った!それとも何か、お前ぇは遊びでここにいるのか!?』
今度は、睨みつけるように大神の顔を凝視する紅蘭。
『ちょっとは覇気が戻ったようだな・・・で、冷静に見てみろ。お前ぇの周りを』
『・・・・・・』
言われた通り、周りをモニターに映す。
『せいっ!!やあっ!!』
『さくら、あまり突っ込みすぎよ!一度後退して!!』
『くそったれ、何だか敵の数が増えてきてやがるぜ!?』
『あぁもう!!うっとおしいんですわ~~~~!!!ハァッ!!!』
『さくら、あと2かい攻撃もらっちゃったら連れていくよ?』
そして目の前の大神を見やる。すると。
『お、大神はん!?その汗・・・尋常やないで!?・・・はっ、まさか!?』
『こら佐藤。あんまくっちゃべんじゃねぇ・・・オレも軍人だ、これしきでどうにかなると思ってんのか』
大神の顔からはひっきりなしに汗が流れ、そして放出されている霊気にもわずかながらの揺らぎを感じるほどだ。明らかに異常状態が大神の身を蝕んでいるのだ。
『せ、せやかて』
『オレのことはいい。お前ぇがどうするか、だ。・・・いいか、お前ぇは命拾いした今、選択することが出来る。一つ・・・花組を抜け、後方支援に徹すること。二つ・・・この場で気を持ち直して戦闘を継続すること。どちらを選択するにせよ、誰も文句は言わねぇ・・・寧ろオレが言わせねぇ。・・・どうだ』
『・・・・・・』
『・・・じっくり考えろ。それで自分自身で答えを出せ。・・・ちっ、あと2つの転送装置を破壊できていねぇ、か・・・。しかも狙撃させようにも、装置の前に脇侍が重なって立ちふさがってやがる・・・『山』も解除してオレが出るべきか』
『大神はん』
『お?』
大神を真正面から見つめる紅蘭。その眼には脅えはあったが、迷いが無い。
『・・・結論が出たみてぇだな』
『もちろんや。ウチ、どうかしとったみたいや・・・冷静に、ウチの光武なら何ができるか・・・それを考えたら!!』
ジャコンッ!
紅蘭の光武の背中にあるパックが口を開く。
『こんなこともあろうかと!!一○式蒸気爆弾を元に発明したウチの芸術品のお披露目やで~~!!出でよ、重鎮爆弾~~~!!』
『げっ!?花組全員に告ぐ!!至急現在地から離脱だ!!急げ!!佐藤、離脱まで待て!!』
ドシュウッ!!!
紅蘭の光武から放たれた爆弾。光武の霊気を噴射剤として使用、推型の弾道を描き、遥か上空から脇侍が密集している中心地へと投下される。
『って馬鹿!!変な方向に立ち直ってどうすんだ佐藤~~~!!!』
『きゃ~~~!!!』
『みんな、アイリスの側に近寄って!テレポートするからぁ!』
『わ、分かったわ!』
『あ、あのバカ紅蘭・・・ここであの癖を出しやがって・・・!』
『少しでも油断していたわたくしがバカでしたわ~!!』
『テレポート!!!』
そして5機の光武が姿を消した直後・・・
ちゅど~~~~~~~~ん!!!!!
『くっ!?『山』最大開放!!』
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
爆心地には何も無くなった。そう、何も・・・
『どや!ウチの発明品の威力は!』
ビシィッと光武の指を指し、爆心地に向けて啖呵を切る紅蘭。
だが、紅蘭の傍らでぼこっと盛り上がる土。煤けた白銀の光武が出てきた。
もちろん、大神である。
『さ、佐藤ぉ~~~~~・・・』
『ひぃっ!?大神はん?』
出現を確認するや否や、くるりと方向変換しダッシュを始める紅蘭機。
ガシャンガシャンガシャンガシャン・・・・
『こら逃げんじゃねぇ!!』
『ひぃ~~~、大神はん堪忍やでぇ~』
『誰が許すかボケぇ!しこたま拳骨と説教確定だコラぁ!』
『『・・・・・・』』
翔鯨丸では、米田が呆然とし、あやめが危険な笑みを浮かべていた。
「やれやれ・・・最後は何とかなったが・・・どうにも危なっかしいのは変わってねぇな、紅蘭のやつ・・・ってうおっ!?あ、あやめくん?」
「ふふふふふふ・・・大神君たら、あんな大きな声で私のことを愚弄するなんて・・・ヤキ入れて欲しいのかしら・・・ふふふ・・・あははははは」
「「「ヒイッ」」」
あやめの笑みを極力視界に入れないようにしながら翔鯨丸の操縦をする風組3人娘。
視線を合わせたら確実にしわ寄せが来る。それだけは勘弁だ。
「うふふふふふふ・・・」
あやめの低い笑い声は、大神と対面するまで続いた。
一方、紅蘭を捕まえて拳骨を一発落とす大神。
「あいたたたた・・・ひどいわ、大神はん・・・」
「ちっ、今日のところはこれくらいで勘弁してやらぁ。時間があればもうちょっと説教したかったが・・・だが敵が動いているのはここだけじゃねぇし、とにかく翔鯨丸に戻るぞ」
「「「「「「了解」」」」」」
「はぁ・・・ほんますいません・・・頭が上がらんわ~・・・」
翔鯨丸に回収され、ようやくの落ち着きを見せた紅蘭はようやく事の大変さに気がついた。それもそのはず、自分が『勢いで』打ち込んだ爆弾で仲間が死ぬかもしれなかったからだ。
「ま、まあまあ、結果的には敵を殲滅できてみんな帰還できたんですし・・・」
「さくらさん、あなた本当に甘いですこと!あんな威力の爆弾をわたくし達の頭上に落とされかけたのですよ!?」
「おぉ・・・思い出しただけで震えがくらぁ・・・」
「少尉はあれくらいで済ませてくれたけど・・・紅蘭、あなたがしたことは一歩間違えれば味方の命まで落としてしまうかもしれなかったのよ?」
「アイリス、こんないっぱいの人数でテレポートしたの、初めてだったから不安だったんだよ?」
「・・・ごめんなさい・・・」
口々に出る言葉に、紅蘭の頭が次第に下がっていく。
が、
パンパン
「よし、もうその辺でいいだろ・・・佐藤、次あんな真似しやがったら独房にでもぶちこむからな、そのつもりでいろ・・・いいな?」
「はい・・・」
ここで黙って聞いていた大神が打ち切るように手を叩き、紅蘭に釘を刺す。
「今は帝都上空を哨戒中だ・・・今のところ妖気反応は1箇所残ってるんだからな・・・今のを忘れて、とは言わねぇが気持ちを切り替えろ。いいか?」
「「「「「「了解」」」」」」
そこへ米田と、大神と顔を合わすなり般若の顔となり凍結の笑みをくれたあやめがやってきた。
「おぉ、ちょうどいいところに。これからお前ぇ達の所に行こうと思ってたんだ」
「何でわざわざ?呼んでくれればこっちから行くぜ?」
「ふふ、戦闘待機はもう解かれたわ・・・実はさっきの紅蘭の起こした爆発でね・・・?」
「爆発」という言葉で、ビクリとする紅蘭。
それを見ながら、あやめは言葉を続ける。
「妖気反応が急に不安定になり始めて次の瞬間には消えていたの・・・そして追尾君でしばらくの間哨戒させていたのだけど、異常なしという結論が出たわ」
あやめの言葉に、花組の表情が緩む。
「まぁ今回は紅蘭の暴走があったが、結果として2箇所の要所から妖気反応を消すことができた。浅草の方は油断はできねぇが、追尾君が居る限り先手を打たれることは無ぇだろ・・・お?どうした、紅蘭」
言葉の途中で、手を挙げてきた紅蘭に米田が促す。
「今回のことはホンマにウチの責任です。結果的にどうであれ、ウチのしたことは許されない行為や・・・せやから」
ここで紅蘭は言葉を切り、全員を見渡す。
「せやから、戦場に不慣れなウチを、これからみなさんでしごいてください。もちろん、光武の整備は最優先でやります。どうか・・・お願いします」
そう言って頭を下げる紅蘭。
どんなことを言われようが、許されるまで頭を上げるつもりは無い。
この決意で表情は引き締まっていた。
「佐藤」
「っ」
「しおらしいなんて珍しいじゃねぇか。とてもオレの犬神号を爆破したヤツとは思えねぇぞ?」
「なっ・・・それは話が別や・・・って・・・あ」
バッと頭を上げればそこには、先ほどまでの怒りの表情ではなく、みんなが微笑んでいた。
「これが花組全員の答えだ。・・・どうだ、文句あるか?」
呆ける紅蘭をさくらが抱きしめ。「紅蘭・・・もう無茶したらダメよ?」
すみれが頭を軽くはたき。「ま、あなたでしたらこのようなことも織り込み済みですわ」
カンナが肩をもみ。「爆発は芸術って紅蘭の口癖だったもんな~」
マリアが優しく見守り。「紅蘭、貴方は花組の大事な一員よ・・・諌めるのも仲間だわ」
アイリスが満面の笑みを見せる。「でも良かったね、紅蘭」
「あ・・・」
「分かったか?間違いは大なり小なり誰にでもあらぁ。ましてや初陣だったんだ。さっきは戦場だったから言い方が悪くなったが・・・頑張ったな」
「大神はん・・・」
「だが!お前ぇを鍛えなおすってのは賛成だ。劇場に着くまでの間、この前の続きをやれ!いいか?」
「「「「「「了解!!」」」」」」
「あ~、お前ぇら。ちょっと待てや」
戦闘後にも関わらず、元気に出て行こうとする6人。
それを米田が止める。
「さくら、お前ぇが言いだしっぺにしちゃあ考えが鈍ってんな?『アレ』、やってから行けや」
「あ・・・」
心得たとばかりに、さくらの表情がパァッと笑顔になる。
「それじゃあ紅蘭?音頭を取ってね?」
「ウ、ウチが?・・・ん~・・・ゴホン。それでは、いくで~?」
「「「「「「「「「勝利のポーズ、決めっ!!!」」」」」」」」」
※※※
「ゴホッ・・・ゴホッ・・・」
黒之巣会の活動が鳴りを潜め、帝都に束の間の平和が訪れる。
それぞれに与えられる休日。
ここぞとばかりに重なる思惑。そして・・・。
次回、サクラ大戦『帝都の休日』
大正桜に浪漫の嵐!!
あとがき:どうにも紅蘭が扱いにくい・・・戦闘の描写では尚更ですね^^;これも私の文才と発想が足りない為・・・これからも鋭意努力してまいります^^
前回に引き続き、またしてもかなりの時間が空いてしまいました。
仕事の方がハプニングが続き、それに対応していたらいつの間にか、という感じです^^;
妻しぼりでも紹介しましたとおり、交互に投稿していく予定ですので更に時間がかかる可能性があります。飽きずご愛読してもらえれば嬉しいです。
18禁SSは、あまりにもダメ出しが多かった為、編集するまでお蔵入りとなっている状態です。こちらも気長に待っていただければ^^;
これからもよろしくお願いします。