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No.16303の一覧
[0] 【習作】サクラ大戦再構成[く~が](2010/11/06 20:40)
[1] 第2話[く~が](2010/02/09 01:20)
[2] 第3話[く~が](2010/02/09 19:37)
[3] 第4話・通常シーン[く~が](2010/02/11 23:16)
[4] 第4話・戦闘シーン[く~が](2010/02/11 23:13)
[5] 幕間(4,5話)[く~が](2010/02/14 20:28)
[6] 第5話・通常シーン[く~が](2010/02/16 20:57)
[7] 第5話・戦闘シーン[く~が](2010/02/21 01:55)
[8] 幕間(5,5話)[く~が](2010/11/06 21:45)
[9] 第6話・通常シーン(上)[く~が](2010/03/03 00:52)
[10] 第6話・通常シーン(中)[く~が](2010/03/10 10:46)
[11] 第6話・通常シーン(下)[く~が](2010/03/11 22:39)
[12] 第6話・戦闘シーン[く~が](2010/04/10 23:15)
[13] 幕間(6,5話)[く~が](2010/04/11 23:21)
[14] 第7話・通常シーン(上)[く~が](2010/04/18 23:07)
[15] 第7話・通常シーン(中)[く~が](2010/04/18 19:27)
[16] 第7話・通常シーン(下)[く~が](2010/07/15 22:51)
[17] 第7話・戦闘シーン[く~が](2010/09/29 21:11)
[18] 幕間(7,5話)[く~が](2010/11/06 21:47)
[19] 第8話・アイリスVer.【大幅加筆】[く~が](2011/01/05 16:29)
[20] 第8話・マリアVer.[く~が](2011/01/05 16:31)
[21] 第8話・カンナVer.[く~が](2011/02/13 22:14)
[22] 第8話・かすみVer.[く~が](2011/05/07 19:45)
[23] 第8話・さくら・紅蘭Ver.[く~が](2011/05/15 23:32)
[24] 第8話・あやめ回想[く~が](2011/06/21 23:17)
[25] 40000PV記念ネタ的SS[く~が](2010/03/12 11:04)
[26] 80000PV記念ネタ的SS[く~が](2010/11/20 22:36)
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[16303] 第6話・通常シーン(中)
Name: く~が◆9b59c775 ID:0d200646 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/10 10:46
帝国劇場。

その関係者の中で、誰が一番単細胞かという質問をした場合、概ね二つに分かれるだろう。

まず大半の人間が決を取るであろう人物、桐島カンナ。
南国沖縄で育った空手家にして、小さい頃から『黒は黒、白は白』という単純極まりない
教えを受け、すくすくと育ってきた。
今や二十歳にまで成長しているが、『三つ子の魂百まで』を地でいく女傑である。

そして、その対抗馬として挙げられるであろう人物、大神一郎。
だが、大神の場合は気を抜く時と真剣な時で激しい差が出てくる。
軍人モードであるとき、そして普段(モギリ)モードで居る時。
口調は全く変わらなく正直な底面も変わることは無いのだが、スイッチが切り替わったかのように
冷静な判断を下すのだ。
それは正に、指揮官としての才能に溢れているといって過言ではあるまい。


更にここで一つ。
片方を慕い、片方を嫌悪とまでは行かないがウマの合わない苦手としている人物。

神崎すみれ。

すみれは元々、神崎重工の社長である父と舞台スタァである母を持つ、箱入り娘。
すみれからしてみれば、自分自身以上の者が周りに居ない状態で幼い頃から大事に育て
られてきたので、カンナみたいな己自身に対して罵詈雑言をただ言ってきてちょっかいを
かけてくるのは非常に腹立たしいものであった。

一方で、大神の方も初見のときは同じだ。自分の事を『露出狂』とまで呼び下し、あまつさえ
帝劇のスタァであることすら疑う目線をくれて来た。
だが、大神に対する嫌悪感もすぐに霧散する。
共に戦場で駆け巡った時の一体感。
そして大神の瞳の奥に見え隠れする底深き情念。

カンナと大神。
すみれにとって違いと言えばこの点だったのだ。

大神が来る前に、総合演習で陸軍相手取り模擬戦闘を行ったことがあるのだが、あの時は
それぞれがバラバラの行動を取るだけであった。

それが、大神が来たことによって改善された各々の戦闘に対する認識。
連帯行動の重要性を知った今、すみれとカンナの関係がどうなっていくのか。
それは、全てこれからの舞台稽古にかかってくると言っても過言ではない。


だが。


「何してやがんだこのアバズレ!そこはあたいが攻撃する場面だろ!?」
「何おっしゃってますのこのお猿さんは!?ここはわたくしが華麗に攻撃した方が映える
というものですわ!」


さっそく罵り合いを始めた二人。
それを見て、さくらが間に入って止めようとする。


「ちょ、ちょっとカンナさん?すみれさんも落ち着いて・・・ほら、もう一回最初から・・・」
「さくらぁ、おめぇどっちの味方なんだ?」
「さくらさん?ぽっと出のあなたにも参考までに聞きたいですわ」

「え・・・えぇ!?そ、そんな・・・」


間に入ったさくらさえも巻き込んで過熱する口喧嘩。
おろおろするだけのさくらだが、カンナがすみれにつかみかかろうとした所ではじきとばされ、
体勢をくずしてしまう。


「あ・・・あららら・・・!?」


ドンガラガッシャ~~ン・・・

崩した方向には背景を彩るセットが。
そこに突っ込み、滅茶苦茶に壊れてしまう。


「「「「・・・・・・」」」」

シーンとなる舞台。


「すみれ、おめぇの所為で壊れちまったじゃねぇか!?」
「何を言ってますの、あなたが掴みかかろうとしたのがさくらさんに当たったからですわ!」
「大体おめぇが台本どおりにやらねえから・・・」
「わたくしは舞台をよりよくするために・・・」


いつしか口喧嘩から頬の張り合い、そして掴みかかってのケンカが始まる。


「あわわ・・・すみれさんもカンナさんも落ち着いて・・・」

「アイリス、もう手がつけられないわ。大神少尉を呼んできて」

「うん、分かった~」


黙ってこれらを見ていたマリアも、ため息を付きつつこの醜態を収めるだけの力を持った
人物を呼んでくるため、アイリスに頼む。
そして己自身も、さくらを手伝う為カンナの方へ歩いていく。


「さくら、すみれを抑えて頂戴。私はカンナを」

「あ、マリアさん。分かりました!」


同時に背後に回りこみ、引きずって離れさせる。

当の二人はまだどつき足りないのか、足や手をジタバタとさせてうなり声を挙げる。


「あ~あ、こんなに滅茶苦茶になって・・・これじゃあお稽古どころの話じゃないわね、
しばらく修理にかかりきりになるわ・・・」


マリアがカンナを抑えたまま、舞台装置を見てこう呟く。


「はぁ・・・しょうがないですね・・・あの、私が壊したんですし私が頑張って」
「御放しなさい、さくらさん!このお猿を躾けてやりますわ!」
「ちょ、ちょっとすみれさん!?」


一瞬の隙を突いたのか、すみれがさくらの抑えを解いてカンナに襲い掛かる。
だが。


スパコ~ン!!
「あうっ!?」


売店の方に置いてあったスリッパがすみれの後頭部に命中する。


「何やってんだこのメス共が・・・」
「良かった、間に合ったよおにいちゃん」


大神一郎、そしてアイリス。

この二人がいつの間にか舞台袖まで姿を現していた。









【大神】

まったく、こいつら何やってんだ?
せっかく雑用の仕事で売店の売り物の運搬作業をやっていたのによぅ。
その途中で幼女が急に現れやがった。

このくそ幼女、この現れ方は心臓に悪いからすんなってあれ程言ってたのによ。
まぁ心の広いオレは幼女の頬を限界まで引っ張ってグリグリするだけで許してやったが。

おいこら、そんな目でオレを見るんじゃねぇ幼女。


そして幼女はまたオレを捕まえ、瞬間移動しやがった。
着いたところは舞台脇。舞台からやかましい声が響いていた。
・・・大体の状況が読めてきたな。
大方、露出か食欲のどちらかがどちらかにケンカ吹っかけたんだろう。

そう思ってオレは運搬途中だったこの・・・スリッパって言ったっけ。
こいつをぶん投げた。

スパ~ン!!「あうっ!?」

おぉ、いい音がしやがる。こいつぁ常に一つ持っとくべきか。


「何やってやがんだこのメス共が・・・」

「ちょっ!?それはあまりにも酷いですよ!?」


小娘が。現実を見ろってんだ。


「あ?見てみろやあの二人のツラをよ。引っかき傷に青アザ、まさに野生じゃねぇか。
んな奴らはメスで充分だ」

「ひ、ひどい・・・」

「少尉、それよりもこの状況を収拾していただけませんか?」


ん?吊り目が何か言ってやがる。


「何でオレが。隊長のおめぇがやればいいじゃねぇか」

「ぐっ・・・お言葉ですが、私には過去にあの二人のいがみ合いの収拾をつけたことは
あっても、お互いの確執を無くすまでにはいたらなかったのです。そこで是非少尉に・・・」


普段と違い、神妙にお願いしてくる吊り目。
成る程、収拾とは言ったもんだがこいつらには昔から手を焼いてるわけだ。
それで少しばかりの期待をオレに、って訳か
しょうがねぇ、ちったぁ協力してやっか。


「はぁ・・・分ぁったよ。ったく、只でさえ搬入作業が滞ってんのにこいつらの世話まで
やらにゃいかんのか・・・ほれほれ、ここはオレに任せてお前らは部屋に戻れ!この惨状が
直るまではお前らには仕事が無ぇんだ、今のうちに休んどけ!」

とりあえずはこの惨状をどうにかしねえとな。


side out










「なあ、少尉。あたいはどうしたらいいんだ?」


各々が部屋に帰る中、カンナが大神に俯き加減で聞いてくる。
今の惨状を作った原因として、何とかしたいという意思がありありと表情に浮かんでいる。


「おめぇも部屋に帰れ。神崎とのケンカについてぁ追及しない」

「な、何でだよ!?」


食い下がるカンナに、大神は言い聞かせるかのように説明していく。


「いいか?最初からウマが合わない奴とは無視するか、ケンカするか、酔っ払って
話し合うことでようやく修正が少しずつされていくもんだ。おめぇらについては
口喧嘩から取っ組み合いまでやってんだろ?んならオレがとやかく言う問題じゃねぇ。
ほれ、いいからここはオレに任せな。何かあったら呼び出して指示すっからよ」

「少尉・・・」


まだ納得がいかないカンナを手を振って追い払い、現状を改めて認識する。


「えーっと、背後の絵に関してはオレぁ何もできねぇな・・・確か事務所に業者への連絡
先があったからそれに任せて・・・あとは大道具関係か。こいつぁ修理すりゃあ使えるか。
これはオレがやるとして。えっと次は・・・」


ぶつぶつと独り言を言いながらも段取りを頭の中で組み立てていく大神。


「よっし、こんなもんだ。となれば・・・道具箱は確か小道具室にあったっけ。取って
くっか」


小道具室へ向かう大神。
それを見つめる1対の瞳。


「大神さん・・・うん、私も何か役に立てれば・・・待っててくださいね、大神さん」





トンカントンカントンカン・・・
ガンガンガンガン・・・

キュッ・・・キュッ・・・


誰も居ない舞台に、修理の音が響く。

そこにいるのは大神一郎ただ一人。
マリア、アイリスも気になって様子を見に来たが、大神はその度にあしらった。

修理をしながらも大神は先ほどのことを思い返していた。
どうしたらまるで水と油のような、正反対の二人を修正できるか。

軍隊では、上官が「黒」と言えば配下は「黒」と考えるしかない
命令は絶対なのだ。。
だがこの場合、すみれとカンナに「仲良くしろ」と言えばそれで終わりなのだが、あいにくここは
乙女が集う帝国劇場。軍隊ではないのだ。
ましてや、年頃の少女達である。繊細な心変わりなど分かるはずが無い。

そして、この手のことに関して全く知識がない大神は、半ば丸投げ状態でいた。


考えてもしょうがない。
状況を見てその都度洗脳に近い精神誘導をしていくしかない。
誰にも気づかれること無く。

そう結論付けていたのだ。


このような物騒な考えをまるで見抜いたかのように、一人の女性が大神に近づく。


「ふふっ、苦労しているわね。大神君」

「あ?」


声をかけられる前から察知していた大神は、驚くことなく振り返りその相手を見つめる。


藤枝あやめ。
当帝国劇場での先任女性。
今の彼女達の心情を最も熟知しているであろう人物のお出ましだった。


【あやめ】

ふう、マリアから事情は聞いたけどまさかここまで確執があるなんてね。
数年前に劇場に招集され、そしてその間ずっとその関係を是正できなかったのだから
自信が薄れるのも分かるわ。

でも、加山君が持ってきた情報によれば、今回の敵は数年前の降魔戦争と匹敵するくらい
危険だということ。
今は小康状態を保っているから良いようなものの、このままの未熟な連携では蹴散らされる
のが見えてるわ。

だから敢えて、マリアに前もって言っておいた。


『もし二人が前回と同様に険悪な状態になったならば大神君に相談しなさい』


その助言は、マリアの誇りを少し傷つけたみたいね。
私に報告してきたときのマリアの表情は痛々しいものがあった。


でもね?


「ふふっ、苦労しているわね。大神君」

「あ?」


この不機嫌さを隠さないまるで子供みたいな反応。
誰にでもズケズケと本心を明かす素直さ。
何だかんだ言って、周りをよく見ている注意深さ。
そしていざと言う時の信頼感。

この相反する素質を持っている大神君には・・・何かこう、絶対的な強さを感じる。

だから・・・


「いい?大神君。あの二人はね・・・」


これくらいの助言で、大神君なら何倍にも成果を現してくれる。

そして。


「さくらさん、大神君のこと、お願いね?」

「あ、あやめさん!?気づいていらっしゃったのですか?」

「愚問ね、大神君はとっくに気づいていたわよ?」

「あぅ・・・私って・・・」


彼の周りの女性達が支えてくれる。
そう信じているから。

Side out









大神が修理を終えたのは翌朝になってからだった。
派手に壊れたセットを持ち前の器用さで直していき、何とか仕上げた。
もちろん、背後の絵に関しては業者を呼んで新しく張り替えるよう由里にも頼んでおいた。


「はぁ~・・・やっと終わったか」

「あ、大神さん。ちょうどいいところに」

「んあ?」


舞台から出て食堂の方向へと歩いていった大神だが、かすみに呼ばれ歩を止める。


「米田支配人がお呼びでしたよ?すぐに支配人室へ来てくれって」

「あのおっさん、今度は何企んでやがんだ・・・?」


どことなく不穏な予感がした大神は、頭を掻きながら支配人室へと歩いていった。









「よう、大神。遅かったじゃねぇか」

「てめぇ・・・ケンカ売ってやがんのかおっさん」


大神が入室すると同時に投げかけられた言葉に、大神の額に青筋が浮く。
只でさえ徹夜作業していて気が短くなっているのだ。
米田の返答次第では本当に殴りかねない雰囲気を醸し出していた。


「はっは、あまり怒るんじゃねぇよ。あやめ君から報告はされている。ご苦労だったな」

「始めからそう言え、クソ親父。んで?何で神崎と桐島までいやがるんだ?」


そう、室内には既にすみれとカンナの姿があったのだ。
双方の表情を見るに、未だに昨日のことが根に残っているみたいだ。


「おう、おめぇら3人にやってもらいてぇことがあってよ」

「やってもらいたいこと?」

「あぁ。実はよ、とある筋から脇侍が盛んに活動してるって情報が入った。何を企んで
いるかは未だ不明だが、おめぇ達にそれを調べてきてもらいてぇんだ」


今回の米田からの指令は、『偵察』。
大神の脳裏に、士官学校での偵察訓練の時の様子が甦る。


「おっさん、オレの資料読んでなかったか?オレぁ独断専行で周りを置いていくくらいの
行動しかできねぇぞ?只でさえ偵察ってのは面倒くさい上に時間が貴重なんだ、
数人で行って行動を遅延するくらいなら単独で動くぜ」


その大神の言葉に、すみれとカンナが反応する。


「あ~ら、少尉。わたくしならば少尉の足手まといにはなりませんわよ?それよりもこの
お猿さんを連れて行くっていうのが納得いかないですわ」

「けっ、そいつぁあたいのセリフだぜ。おめぇみてぇな癇癪女がいたらすぐに敵に
バレちまう。あたいこそ納得できないな」

「何ですって!?」
「何だよ!?」


再びいがみ合う二人。

それを見た大神はツカツカと二人に近寄り。


ゴツン!!!!!×2


「きゃあああ!?」
「どぁいたああ!?」


拳骨を思い切り二人の頭に叩き落した。


「うっせぇえんだよてめぇら二人はよぉ!?米田のおっさんから下された命令は言わば
上官命令だぁ!!二人とも特殊部隊にいる割に全っ然立場を分かっちゃいねぇんだな~?
いい度胸だ、お前ら二人共オレの手でその首叩き落してやらぁ!!・・・米田のおっさん、
こいつ借りるぜ」


帝国劇場に来てからの初めての『ガチ切れ』。
その表情は修羅の如く、そして体から昇る霊気は殺気を帯び。

大神は米田の後ろに飾られている刀を取り、その白刃を抜き放つ。


「ちょっ・・・待て、大神!?」

「おっさんは黙ってくれねぇか。こいつらがズレた認識を叩きなおすには死ぬしかねえ」


米田の制止もなんのその、大神は右手にその刀を硬く握り締めいつでも首をなぎ払える
ように刃を返す。
刀も、大神の霊気に応えるかのように青白く淡い光を灯す。


あまりにもの巨大な霊気。
そしてそれに帯びる殺気。

この二つは、二人の心をへし折るには充分すぎた。


「しょ・・・少尉・・・ほ、本気で・・・」
「ばっきゃろう、まだ感じてねぇのか!?少尉のあの殺気を!?」


一歩ずつ、一歩ずつ・・・大神はまるで小動物を隅に追い詰めるように近づく。


『三歩破軍』。

最初の一歩(一過程)で相手の機先を制し、
次の一歩でその精神をも絶ち、
そして最後の一歩で、相手の命を奪うが如く。

これこそ大神が身に付けた技の中で基本とも言える動き。


真の殺気に中てられ、すみれとカンナの精神は限界近くまで追い詰められた。


「さぁ・・・もう一回聞く・・・どうすんだ・・・命令どおり二人で付いてくんのか・・・
それともオレの手で矯正されるのか・・・どっちだ・・・あ?」


「「つ・・・付いていきます、二人で!!」」


大神の問答に、二人声を合わせて同時に答える。

スゥ・・・


二人を縛っていた大神の霊気が消える。
と同時に、二人の体の緊張が解ける。


「「あ・・・」」

「んじゃあ準備が整い次第出るぜ。相手はあの化け物共だ、油断するんじゃねぇぞ?」

「「りょ、了解!!」」

「おっさん、悪かったな。こいつぁ返すぜ。・・・にしてもアンタも持ってたんだな・・・」

「・・・・・・」

「まぁ詳しいことは言ってくれるまで聞かねぇよ。誰にもほじられたくねぇ過去があんだからな」

「・・・悪ぃな、大神」

「・・・別に・・・」


大神が支配人室を出て行く。

残された二人は自然に顔を合わせる。


「・・・おい、すみれ。少尉って怒ると怖いんだな」

「・・・わたくしも初めて見ましたわ、少尉がお怒りになっているのを」

「ふふっ、それは少し違うわね」

「あやめさん?」


隣室から入ってきたあやめ。
その表情はいつものように笑顔を作っている。


「昨日ね、大神君の所に助言がてら様子を見に行ったの。心配していたわよ?あなた達二人の
仲違いが戦場でどれだけ影響が大きいのかを」

「少尉が・・・」
「あたい達のことを・・・?」

「そうよ。それに気づいている?大神君はあなた達のケンカを止めてるわけじゃないわ。
むしろやれって言っていることを。それがあなた達の意思の疎通の取り方だって
理解しているからよ?もちろん正解かどうかは分からないけどね」


クスッと笑って話すあやめに、すみれとカンナも苦笑いを零す。


「・・・そうですわね・・・わたくしとしたことが、任務の前に己の感情は二の次以下
だってことを・・・いつの間にか忘れていたみたいですわね」

「・・・おう、あたいもだ。考えてみればおめぇとはこれからも腐れ縁が続きそうだし、
ケンカなんていつでもできるってことだ!」

「そっくりそのままお返ししますわ、カンナさん」

「「ふふふふふふふ・・・」」

「あ~・・・お前ぇら。水を差して悪ぃんだが・・・大神、待ってんじゃねぇか?」

「「あ」」


米田に突っ込まれ、気の抜けた声が出る二人。

慌てて支配人室を辞し、自分の部屋に準備をする為に戻る。
そして二人を待っていたのは、劇場出口で般若の表情で仁王立ち、両手にスリッパを装備
した大神の姿だった。









「やれやれ・・・行ったか」

「えぇ。それにしても大神君たら、あんなに感情を出すなんて」

「・・・むしろすみれとカンナが可哀想すぎて危うく止めちまうところだったぜ」

「あれが大神君なりの『心配』の形、なんでしょうね。言わば厳父。娘達に嫌われようが
その命を飽くまで守り通し、表に出さないけどその成長を楽しみにする姿。大神君は良い
両親に育てられたみたいですわね」

「・・・・・・」

「米田支配人?」

「あぁ、何でも無ぇ。そうだな、厳父・・・か。さくら達が知ったらどうなるやら」

「それも含めて、大神君に期待、ですわね」

「違ぇねぇな」


途中で米田が無表情になるが、それも一瞬のこと。

支配人室には、台風通過後の穏やかな空気が流れた。









あとがき:かなり間が空いてしまいましたね。その割にストーリーが全然まとまって
いないという出来損ない振り・・・本当に土下座っす^^;


今回は舞台稽古から偵察に出かける前までで締めました。
少々大神の行動が短絡的とも思えますが、他の展開を考えたら選択肢がコレにw
偵察前に一喝されたことで、これからの偵察行動にどう影響を与えてくるか、
それは次話にご期待ください。


感想掲示板、いつの間にか30超え、そしてPVは30000を^^
愛読いただき、ありがとうございます。

この場面を乗り切れば、明るい展開。そう、紅蘭のお出ましとなります。
それまでは少々シリアスな空気が流れますがよろしくです^^


※指摘に基づき、修正(俊さん感謝です^^)


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