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No.15918の一覧
[0] フレイムウィンド&ケイオス  (TRPG風 異世界ファンタジー転生物)[ランダム作成者](2010/04/18 12:17)
[1] 1  チュートリアルなど無い[ランダム作成者](2010/04/11 14:23)
[2] 2  『スカベンジャーズ・マンション』 編[ランダム作成者](2010/04/04 11:49)
[3] [ランダム作成者](2010/03/05 19:59)
[4] [ランダム作成者](2010/04/04 10:57)
[5] [ランダム作成者](2011/02/18 06:32)
[6] [ランダム作成者](2010/04/04 10:59)
[7] [ランダム作成者](2010/03/05 20:47)
[8] [ランダム作成者](2010/03/27 12:51)
[9] [ランダム作成者](2011/02/18 06:30)
[10] 10[ランダム作成者](2010/04/11 14:29)
[11] 11  レベルアップ[ランダム作成者](2011/02/13 01:43)
[12] 12[ランダム作成者](2010/04/11 14:35)
[13] 13[ランダム作成者](2010/04/12 10:50)
[14] 14  『エトラーゼの旅立ち』 編[ランダム作成者](2010/04/26 15:42)
[15] 15[ランダム作成者](2011/02/18 06:34)
[16] 16[ランダム作成者](2010/05/09 13:10)
[17] 17  意思ぶつけ作戦[ランダム作成者](2010/05/25 02:19)
[18] 18[ランダム作成者](2011/02/13 02:36)
[19] 19  精神世界の戦い[ランダム作成者](2011/02/13 05:10)
[20] 20  いざ、人生の再スタート      (LV 3にアップ)[ランダム作成者](2011/02/18 22:55)
[21] 20.5  かくして混沌の申し子は放たれた     (主人公以外のステ表記)[ランダム作成者](2011/02/27 14:19)
[22] 21  『帝国からの逃避行』 編     [ランダム作成者](2011/12/07 21:52)
[23] 22[ランダム作成者](2012/03/18 15:13)
[24] 23  リンデン王国を目指して[ランダム作成者](2012/03/19 02:30)
[25] 24  グレーターデーモン     (ティーナのステータス表記)[ランダム作成者](2012/04/05 05:41)
[26] 暫定 キャラクターデータ まとめ[ランダム作成者](2011/02/13 02:00)
[27] 暫定 アイテムデータ まとめ[ランダム作成者](2010/05/20 16:57)
[28] LVや能力値などについての暫定的で適当な概要説明 & サンプルキャラクターズ[ランダム作成者](2011/02/27 14:10)
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[15918]
Name: ランダム作成者◆f9a7ea31 ID:470fdece 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/04 10:59

 シニガミとやらの追撃を逃れてから数時間後。俺と幼女モドキはウェッジとの合流地点を目指して短い足を動かしていた。

 お互いに何も言わず、ペタペタと歩みを進める。
 どうでもいいが、この数日で足の裏が随分と鍛えられたような気がするな。あれだけ走ったってのに余り痛みを感じない。
 恐らくは【活力の泉】で向上していると思われる回復力が、環境への順応を早めているのだろうが……。いくら何でも早すぎるだろ。その内、角質化して象の皮みたいになっちまうんじゃねえか? 
 順応性が高すぎるというのも不安なものである。
 モドキの奴からシニガミの情報を得ようにも、取り留めのない答えしか返ってきやがらねえし。こりゃあ、ウェッジを拾ったら何が何でも上への道を探すしかねえやな。休息と食事の量を限界まで削ってよ。
 事は拙速を尊ぶ。対策がないのなら、一刻も早くアレの手の届かない所に移動しなければ。俺の勘はやかましいくらいにそう告げていた。
 例え同じ手を使っても、次は無理。絶対に逃げられない。
 不思議とそんな予感がするのだ。
 今、出くわしちまったら…………運がなかったって事にしとこうかねえ。

「……だれかくるのか?」
「みたいだな」

 どうにかなりそうな相手が寄ってくる内は、まだまだ大丈夫だろうけどさ。
 右の通路から揺らめく明かりと複数の気配。どうやら団体さんのお越しのようだ。俺はアイテム欄を確認しながら、何なりとでも即応できる構えを取った。
 俺の足がもっと速かったら逃げてもいいんだけどな。ウェッジの魔法の効き目も切れた今となっちゃあ無理な話よ。……魔法があっても、まだ遅いしな。

「おい、お前ら。どっから来た?」
「目ぇ覚ましたのは、いつ頃だ? 他に仲間はいねえのか?」

 現れたのは五人組のご同輩。どいつもこいつも溜息が出る程の悪人面だ。
 しかも、眼を合わせる事すらしねえで俺達二人を囲んできやがった。
 ……最初っから脅す気満々かよ。ガキ相手だからって油断しすぎだろ。
 もうちょっと用心深く振る舞え。バレねえとでも思ってんのか? 事を有利に運ぶ手段も、逆手に取られりゃ王手の駒だぞ。

「質問なんざする必要ねえだろ。早く浚っちまおうぜ」
「バカ野郎。おめえ、コイツらがアヤトラんとこのガキだったらどうすんだよ?」
「お前こそバカか。服も着てねえのに、んなワケあるかよ」
「そうだったとしても、どうせハグレたガキだろ。関係ねえよ」

 あと、アレだ。囲んだからって目を離すな。

「おう、そうだ。小僧、地図よこしな。ボスに喰われちまっちゃ死体も──!?」

 隙だらけだぞ。話にならん。
 俺は正面のバカの膝に蹴りをぶち込み、返す勢いで松明を持った男にミドルキックを食らわせた。
 ……思いの外スムーズに決まったな。蹴打技能のおかげなのかね? 蹴りにキレと威力がある。これならリーチ以外は昔とそう変わらんぞ。

「なっ!? てめぇ、この!」
「クソガキが!!」

 怒声と共に繰り出された拳骨を躱し、伸びきったそれを素早く引っ張ることで、先に殴ってきた奴の体勢を崩す。
 更に足を引っ掛けてやれば完璧だ。
 後から組み付こうとした連中は、転んだお仲間の身体が邪魔になって行動を封じられる形になった。

「ぐげ……!!」

 そうして俺は悠々と、床とキスした馬鹿の後頭部を踏み付けて踏み付けて踏み付けて始末を付ける。
 最初に蹴った奴も破壊された膝を抱えて悶えていたので、すかさずサッカーボールキック。ドリブルで人生のゴールにまで案内してやった。
 何という弱さか。
 手強いようなら秘薬を使おうかと思ってたんだが、その必要もなさそうだな。
 こいつら連携が拙すぎる。今のに対応できんようじゃ雑魚もいいところだぞ。見た目まんまの強さってどういう事だ。もっと精進しろ。
 もう、練習台にしちまうからな。
 お仲間二人の死を見て固まっていたノロマの股間に跳び蹴りをかまし、下がった頭を抱え込んでの膝地獄。意識を手放した瞬間を見計らって首をへし折る。
 残る二人は……逃げ出したか。
 でも気を付けろよ。モドキが居るぞ。

 爪牙が煌めき、血飛沫の後に悲鳴が上がる。
 一人は四肢切断で出血多量。もう一人は生きたまま腑を引っ掻き出されて、散々泣き叫んだ末に事切れた。
 …………人間相手だと途端に残虐になるな、こいつは。
 獲物を弄んで殺す習性でもあるのだろうか? それとも、幼さから来る暴力性の表れだろうか? ガキは虫とかバラバラにするのが好きだからな。その延長的な感覚でやっているのかもしれん。

「んぅ~~……こいつら、まずい。おいしくない」
「そりゃそうだ。肉は熟成させてから食うもんだからな。血抜きもしてない新鮮な生肉が美味かったら大変だ」

 もちろん、だからといって洒落にはならんが。
 まあ、人肉が不味いと学んでくれたようなので良しとしておこうか。
 俺はモドキに生返事をしながらアイテムの回収と整理に勤しんだ。
 空になった水筒を捨てて……いや、捨てるならカンテラの方か? 小さな袋の一つもあればなあ。もう少し余裕を持って運べるんだが。
 どうにかしてアイテム枠を増やす方法ってのはないもんかね? レベルアップを待てばいいのかもしれんが、一向に上がる気配はなし。敵を倒すだけじゃあ駄目なのか? 色々と疑いたくなるな。

「ふむ…………」
「どした? さき、いかないのか?」
「ああ、もう少しここに居る」

 これだけ無防備晒しても仕掛けてこねえって事は、報告に戻ったんだろうな。ボスがどうとか言ってたし。
 連れてくるか? 大急ぎで? そのつもりで準備しとくか。
 できれば、一網打尽と行きたいところだねえ。








 十数分後、五人組を片付けた現場に新たなご同輩達がやって来た。

 七人か。一人、冗談みたいな体格の奴が居るけど……アレがボスなのか?
 3メートル近い身長に備わった隆々たる筋肉、発達した下顎から突き出す牙、角っぽい突起が生えた禿頭、極め付けは灰色の岩みたいな質感の皮膚と、どう見たって人間じゃねえぞ。
 ビッグフットなクズゴリラにも驚かされたが、こいつに至ってはどう形容していいかすらも分からん。
 敢えて言い表すならファンタジー作品の悪役か? 指輪物語にでも出てきそうな強面だ。……詳しくないので何とも言えんが。
 確かなのは、ブッ殺すにはロケットランチャーか要りそうだって事くらいか。
 ……参ったな。
 こんな岩石巨人、想定外にも程があるぞ。
 単純な大きさ強さの問題じゃない。とにかく火攻めに滅法強そうだってのが大問題なんだよ。

「うわ……ヒデェな」
「本当にこれをガキがやったってのか?」

 無惨に引き裂かれた五人組の死体に松明の明かりをかざし、数人のご同輩が顔をしかめる。
 ジワジワと広がる赤色は、まるで血と臓腑で出来た沼のよう。無機質な眺めが続くだけだった通路の一角は今や正視に耐えかねる、足の踏み場もない有り様になっていた。
 一体、どんな怪物が……?
 この惨状を見た者の多くは、恐怖と共にそんな想いを抱く事だろう。

 まあ、俺がモドキに言ってやらせた事なんだがな。
 ブランデー混じりの血溜まりが不自然にならないように、手っ取り早い方法で偽装を施したってわけだ。
 あと、俺の隠れ場所を作るためにも必要な措置だった。
 昔から言うだろ? 木を隠すには森の中とか何とか。今回のはそれに習って、人を隠すには人の中ってな寸法よ。
 俺くらいのガキだと大人二人分もあれば充分に事足りるし、相手も必要以上には見ないだろうしな。知った顔をした屍肉の塊なんて嫌なモンは。
 問題は精神的な負担がでかいって事くらいかね。少なくとも、まともな神経をした奴の所業じゃない。他に方法があれば、そいつをお勧めするぜ。
 俺の場合は連中をまとめて焼死体にするために、できるだけ近い位置から様子を窺わなくちゃならなかったってだけだからな。M2重機関銃が二丁あったら、そっちの方をお勧めする。暗がりからの十字砲火でクズ肉に変えてやれ。
 ちなみにモドキの奴は通路の奥で、伏せをして待っているはずだ。
 大きな火が熾ったら逃げる連中を八つ裂きにしろ。――と、言い含めておいたんだが…………ん~~む。

「デ、そのガキはドコだ? ドッチに行ったかワカんのか?」

 この岩野郎がなあ……。火で死んでくれるかなあ……?
 外見通りの断熱性だったら最悪だ。正攻法で片を付けにゃあならん。
 神ボトルで敵うかね? 頼みのモドキも、さすがにこいつの相手は荷が重いだろう。
 勝率を上げるための手段はあるが確実とは言えねえし、もしかしたら到底及びも付かないような力の差があるのかもしれねえし。悩むところだな。
 ……ま、実行あるのみか。

「へい、少々お待ちを。今、探ってみますんで」

 この…………何だろうな、こいつは?
 ブラックとオレンジのコントラストが映える、滑らかな肌の……トカゲ人間としか言いようがないな。けど、鱗がないから厳密に言うとトカゲ人間じゃあない。
 不気味さよりも不思議さが先に来る、ユーモラスな姿の持ち主だ。
 あ、もしかしてイモリか?
 そう思って見てみると、何処となくファイアサラマンダーに似ているような気がするな。あっちはブラックとイエローで微妙に色は違うけどよ。
 とにかく、このイモリ野郎を始末するには今しかないわけだからな。もう後には引けん。

 あの時、五人組は明らかな確信あっての急ぎ足で俺達の前に現れた。
 明かりを持たずに気配を殺して進んでいた、角の向こう側に居る俺達の前に、だ。
 一瞬、何故かと頭の中が疑問符で一杯になったが、その後の確認もなしに囲むといったお粗末な動きで大体の想像が付いた。
 俺達の目に見えない偵察役が居たのだ。
 そう考えれば、五人組の不自然な手際の良さにも納得がいくからな。
 だから、敢えて気付かないふりをして不意打ちを誘ってみたり、こうやって息を潜めて待ち構えたりなんて事をしているわけだ。
 透明で気配のケの感じない斥候だぞ? しかもこいつ、吸盤の付いた手足から鑑みるに壁や天井も自在に動けると見た。
 そんな敵、生かしておけるはずがない。
 不安の種そのものだからな。不意打ち闇討ち挟み撃ち、罠に誘導、同士討ち。無限に広がる計略の可能性を見過ごすくらいなら、岩石巨人の相手をする方がまだマシってもんだ。見えるだけマシ。
 

「ボス、何もそんな危ねえガキの後なんざ追わなくても……。アヤトラのとこから浚ってきちまえばいいんじゃねえですかい?」
「そうですよ。連中、大所帯じゃねえですか。リザードの奴に言えば一人や二人、ワケないでしょ?」
「…………お前ラ、オレに死んデほしいのカ?」

 まあ、偵察役なんか居なくて、五人組の中に千里眼的な能力の持ち主が居たってだけの可能性も充分にあったんだが……。その場合は、俺の取り越し苦労の独り相撲で済む話だからな。別にどうでもいいだろ。

「え? いえ、そんなつもりじゃ──」
「ツモリじゃなくてモ、ソウいうコトになるんダヨ! リザードが消えテてもアヤトラは見破れルんダ!! 距離ヲ取って見張る程度ならともかク、チョッカイなんザかけられやしねえんダヨ! ボケが!!」

 実際、見えない偵察役は存在したわけだしな。
 岩野郎から取れた言質で駄目押しの確定だ。イモリ野郎はここで、このチャンスで絶対に抹消する。

「リザードがヤラレたらどうナル!? オレが死ヌ! オレが死ヌだろうガ!? アヤトラに殺さレルダろうガ!!」

 俺は秘薬を一息で飲み干し、ブランデーを撒き散らしながら天井へと駆け上がった。
 七人とも全く反応できていない。イモリ野郎は血溜まりの真ん中。単色の目を見開いて棒立ちになってやがる。
 そして今、取り出した火種が俺の手を離れた。
 死ねや!

「うごぉおおおぉぉお!!?」
「熱ちィイイィイイ────ッ!?」

 炎のカーペットが七人の男を照らし、その内の四人の頭上にまで広がった。
 特にイモリ野郎は一番の火達磨だ。後十秒もすれば立派な黒焼きに──って、逃げるのが早えぇ!?
 全身を包む炎にも関わらず、回避運動に一筋の乱れもない。大した精神力と生存本能だ。
 こりゃあ、ますます見逃せんな。タフで機転の利く透明ストーカーなんぞに付け狙われて堪るかってんだ。

「おうおうおうおうおう!! でかいのいるな! カーリャ、よわいのからねらっていいか!?」
「ああ、いいぞ! そこのイモリを真っ先にやってくれ! でかいのは俺がやる!」

 威勢良く駆け込んできたモドキにイモリ野郎とその他を任せ、俺は岩野郎の拳が届くギリギリの所を駆け回った。

「ガキが! 誰が誰をヤルって!? 生キタまま丸囓りにシテヤルぜ!!」
「俺がお前をだよ! この岩から生まれた孫悟空の出来損ないが!!」
「ボスぅ! 助け──ぎゃうわ!」
「おうおうおう! しねしねしね────ッ!!」

 逃げようとするイモリ野郎を封じられる素早さが、俺にはないからな。この組み合わせがベストなんだよ。
 一人、二人と爪牙に掛けられる三下を横目にしながら、降ってくる岩そのものな拳骨を躱し続ける。
 冷や汗の出る威力だが、それ以上でも以下でもないな。
 恐らく空手かボクシングの経験があるんだろう。正確な狙い、規則正しいリズム、しかしフェイントを織り交ぜる程の器用さはなし。頭は悪くないのかもしれんが、沸点が低い。ついでに言うと歯並びが悪い。
 与しやすい相手だ。
 身の軽さが伴わなくても、避けるだけなら経験則で何とかなる。どんなに巨大で歪だろうと人間の形をしている以上、武術全般における間合いの法則からは逃れられない定めなのだ。
 下手に心得があるとなれば、尚更である。
 もっと出鱈目な殴り方をされたら、やばかったかもしれねえがな。

「テメェ! クソ、こノ! 大人シク喰わレろ!!」

 ふむ、さすがに天井までは届かんか。
 そして思った通り、火炎ファイヤー効果なし。
 もっと高い火力なら通じるのかもしれんが、現状では無理。表面に火を付けるだけじゃどうにもならん。煤で汚す程度の嫌がらせにしかなってねえ。
 はっきりとした決定力不足だ。このままだとジリ貧で、俺が岩野郎の胃袋に収まる羽目になる。
 ……あとは、こいつの効き目次第だな。



 ◆ 蟻の力の秘薬 〈使用回数 1〉〈効果時間 10分間〉

   詳細: 仄かな酸味と爽やかな甘みが特徴的な飲み薬。
        服用すれば立ち所に筋力と耐久力が倍増する。
        尚、副作用の心配は一切ない。



 この間手に入れた、新しい秘薬。ぶっつけ本番だが試させてもらうぜ。
 零さないよう気を付けて飲みながら、ステータスを確認。……おお、上がった上がった。
 STR 30にEND 18か。心なしか身体の芯が熱くなってきたような気がするし、こりゃ期待できるかね?
 天井から下りて速攻、突き出された手をかいくぐって足下へ。
 速度を緩めず神ボトルを振りかぶり、

「どおりゃ!!」

 向こう脛にヒットエンドラン。
 即座に股の間を抜けて、踝辺りに3ベースヒット。
 小指の付け根に大根切り打法!
 どうだ!?

「チョロチョロすんジャネエ! むず痒イダろうガヨ!!」

 …………駄目か。
 手応えは物凄いんだが……武器が悪いんだな。
 絶対に壊れないというお墨付きがあっても、神ボトル自体はただのガラス製の酒瓶。硬度が上がっていたり質量が増していたりするわけじゃねえんだ。本当に壊れないだけなんだよ。
 割れないガラスの塊で岩を殴りつけたらどうなるか? 感覚としてはコンクリートの壁にバスケットボールをぶつけた感じに近いかな? 弾むだけで結局どっちも壊れない。細かな違いはあるが、まあそんなところだ。
 つまり、いくら力が強かろうと神ボトルで与えるダメージには限界があるという事である。
 …………中々、有意義な検証結果だったな。
 クソッタレ! 上がった腕力に見合う武器がねえぞ。

「ミンチだ! ミンチ! ミンチにシテヤル!!」

 まさか、素手で相手するわけにもいかねえしなあ。
 ──って、その体勢から足かよ!?

「うおおおおォォォ────ったわっとあたわた!!!」

 拳の後に来た無茶苦茶な爪先を神ボトルで受け、堪えきれずに石畳の上を弾む俺。
 受け身は取れたが如何せん裸だからな。打ち身と擦り傷が地味に応えるぞ。
 岩野郎の奴はと言うと、無理な動きをしたせいで尻餅を着いてやがる。
 是非とも飛び掛かってマウントを取りたいところだが、まだまだ力に差がある上に体格の差は言わずもがなで、組み付いても一方的にボール扱いにされちまうだろうからな。自重しておくとしよう。
 モドキの方は…………残ったイモリ野郎の粘りが驚異的だな。逃げに徹して避けまくってる。

「ボス! ボスぅぅ! 早く! 早くこっちを頼んますって!」
「ぐおー! しねー! ハラへったああぁぁ!!」

 まあ、あっちが片付いて二対一になったとしても、勝利の望みは薄いだろうけどな。俺に俊足があればイモリを倒して即離脱って手もあったんだが……。無い物ねだりをしても始まらん。
 かなり不安だが、最後の手札を切るとしようかね。
 俺は深く息を吸い込み――特技、使用、【激怒】といった具合に順序立てて強く念じた。

 ………………………………何ともねえな? やり方を間違えたか?

「…………オ゛……ッッ!!?」

 いや、成功だ。
 込み上げる熱量に、思わず声を洩らす。
 しかし凄ぇな……。焼けた鉄でも呑み込んだみたいな熱さと重さだ。それが全身に染み渡って、俺という存在を一匹の獣に変えていく。
 火を吐く魔獣だ。
 荒ぶる神だ。
 炎を纏ったガ=オーだ!!

「オオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ────ッッ!!!!!」

 一体、誰が叫んでいる?
 コヨーテの遠吠えなんざ比較にならねえ。魂奮わす雄叫びだ。意思を持ったハリケーン。風の音、風の音。草木を倒せ! 山野を削れ! 大渓谷を築き上げろ!!
 ガ=オーだ!
 ガ=オーの雄叫びだ!!
 立ち塞がる者、全てを払え! 薙ぎ払え!!

「な、ナンだ、お前!? 気デモ狂ったカ!?」

 逆らう奴は、粉々だ!!!

「グブゥえッッッッ!!!?」

「ハハハハハッハハッハハハハハッッハハハ!!! 粉々ダアァァァァ!!!」

 岩野郎の鳩尾に全力ダッシュのダイビングヘッド。
 そのまま仰向けに倒れた野郎の鼻っ柱に、猛烈なヘッドバットの嵐を浴びせる。

「砕け砕け砕け砕け砕け砕け砕け砕け砕け砕け砕けろ砕けろォ!!!!」

 ────って、俺の頭が砕けるわ!!
 痛みはないが、精神的に物凄く痛い。
 何やってんだ、俺は? いくら激怒つっても怒りすぎだろ。ドアがあったら開けずに突撃しそうなくらいの狂乱ぶりじゃねえか。
 全身に力が漲るのはいいが、理性まで吹っ飛んじまったらお終いだ。制御しろ。抑えるんじゃない。この溶岩流の手綱をしっかりと握るんだ。
 ほら、覚えのある感覚だろ? そうだ。お前の人生の岐路にはいつも怒りがあった。山も谷も何もかも、全部全部、自前のダイナマイトで吹き飛ばしてきた。そうやってお前は乗り越えてきたんだ。
 あの時も、あの時も、あの時も、あの時も、あの時だってそうだった。
 俺はいつでも、この怒りと共に突っ走ってきた。
 呑まれるなんて無様な真似は、とっくの昔に卒業したはずだよな!!?

「よっしゃあああああああァァァ!!!!」

 最後の頭突きをガツンと決めて、自分の身体にブレーキを掛ける。
 脳味噌沸騰、気分爽快! 今の俺は限りなく冷静だ!
 何秒経った? まだ【激怒】の効果は続いているのか? 分からん。目の前が真っ赤だぞ。
 ……ああ、痛みがないからまだ大丈夫か。
 岩野郎は……今にも息を吹き返しそうだな。早いとこ永眠してもらおうかね。
 俺は焦点の定まらない濁った瞳を見下ろし猛り、眼窩に向けて貫けとばかりに両の手刀を突き込んだ。
 巨体が興す悲鳴と痙攣は随分な抵抗力だったが、構わずに奥へ。奥へと力を込める。
 …………これが脳か。中身の方は俺らと大して変わらんな。
 握り締めて引き千切ると、嘘みたいに静かになった。
 勝てたか……。我ながら危ない橋を渡ったもんだ。
 よろめきながら壁に背を預け、盛大に息をつく。痛みが戻ったら厄介だな。早く治さねえと。

 ……そういや、何でこんな事してたんだっけ?

「待ったァァ────────ッ!!!! 降参だ! グラコフが死んだら、もう戦う意味はねえ!
 俺っち、あいつに脅かされてただけなの! 戦意喪失です! だからもうやめて! 殺さないで! お願いします!
 そこの坊ちゃん! お坊ちゃん!! 後生だから、妹さんをけしかけるのをやめてくださぁぁぁい!!!」

 誰が坊ちゃんだ。
 そうだった、そうだった。うん、こいつのせいだ。苦労したよ、まったく。



 ◆ ヒール ストーン 〈使用回数 2D6〉

   詳細: 治癒の力が込められた魔法の石。
        対象が死亡していない限り、あらゆる傷を治す事ができる。



 俺はヒールストーンを取り出し、ダクダクと血が流れ続ける額へと押し当てた。
 別に傷口に充てがう必要はないんだが、気分の問題だな。冷たいから火照った頭に丁度いいわ。
 ……ん、一回じゃ完治しねえのか? 複数回使えるからか、リフレッシュの方より効き目が薄いのかね?
 とにかく治った。治りましたよっと。
 あー、身体が怠い。

「お坊ちゃん!? お坊ちゃん、ちょっと! わたしの話ぃ聞いてますかぁっ!?」
「ああ、聞いてるよ。今からこいつらの荷物を漁る。ゆっくりとな。その後で、もし生き残っていたら……まあ、少しくらいは考えてやらんでもない」
「ひえぇ~~~~~~~~~~~~~!!!」

 この不調が【激怒】の反動なのかね? それほどきついってわけでもねえから、慣れりゃあ何とかなると思うが……本気で切り札にしといた方がいいな、こりゃ。軽々しくは使えんぞ。
 あのハイテンションを毎日体験するってのも御免だしな。
 さて、気を取り直してアイテムアイテム。恒例の死体漁りに入ると致しましょうかね。
 ────っと、何だこりゃ?



 ◆ 丈夫な革製の背負い袋

   詳細: ケタの皮を加工して作られた背負い袋。
        念の入った防水加工が施されているため、雨の日の旅路でも心配は要らない。



 袋か? どう見ても袋だよな。
 まあ、喉から手が出るほど欲しいと思っていた物だから、嬉しいっちゃ嬉しいんだがよ……。
 何で置いてあったんだ?
 いつからあった? いつの間にあった? 何処の誰が置いていきやがった?
 ご同輩の死体からならともかく、何でどうして、さり気なく俺の傍に置かれていたんだよォォ!?
 ……ただ落ちている物を拾うだけの行為が、こんな怖いのは初めてだぞ。


 畜生め! 誰だか知らんが有り難く使ってやるから有り難く思え。
 …………呪われてたりとか、しないよな?
















 あとがき

 お待たせしました。やっと六話目です。
 もう進み具合がどうとかは、考えない事にしました……。
 今回は初の戦闘回みたいなもの、主人公の切り札的特技【激怒】のお披露目です。
 岩石巨人に勝てたのは秘薬との相乗効果で(STR 15×2×2)になっていたからですね。
 秘薬より先に【激怒】を使っていたら、ミンチ肉にされていたことでしょう。

 ちなみにこの世界でのオーガ的な種族の平均STRは(20+2D6)です。
 25あれば、人間の腕くらいは引っこ抜けるかな? って感じの温い目安になっております。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 現在の所持品  17/17

 パーソナル マップ  (72)
 フォーチュン ダイス  (507) 一々サイコロを振るのも億劫な入手量です
 豊穣神の永遠のボトル

 丈夫な革製の背負い袋  どうってことない品ですが、謎です
 入)ヒール ストーン
 入)ヒール ストーン  やっと使えました。
 入)リフレッシュ ストーン (5)
 入)陽光のカンテラ
 入)水筒 〈空〉
 入)丸い水筒 〈湧き水〉
 入)大きめの水筒 〈井戸水〉

 拳大の石  (347)
 冒険者の松明  (243) 今回の血の池火炎地獄で1消費
 火の付いた冒険者の松明
 麻製のロープ  (191)
 蜘蛛の歩みの秘薬  (6) 今回の戦闘で1消費
 蟻の力の秘薬  (6) 初使用で1消費
 ケタの干し肉  (40)
 ケタ肉の塊  (27)
 豚肉の塊  (24)
 月光鱒の切り身  (58) 英語で言うとムーンライト・トラウト
 ナングの卵 (26)
 スマイリー キャベツ  (65)
 オミカン  (39)


 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■



 食べきれません。



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