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No.15918の一覧
[0] フレイムウィンド&ケイオス  (TRPG風 異世界ファンタジー転生物)[ランダム作成者](2010/04/18 12:17)
[1] 1  チュートリアルなど無い[ランダム作成者](2010/04/11 14:23)
[2] 2  『スカベンジャーズ・マンション』 編[ランダム作成者](2010/04/04 11:49)
[3] [ランダム作成者](2010/03/05 19:59)
[4] [ランダム作成者](2010/04/04 10:57)
[5] [ランダム作成者](2011/02/18 06:32)
[6] [ランダム作成者](2010/04/04 10:59)
[7] [ランダム作成者](2010/03/05 20:47)
[8] [ランダム作成者](2010/03/27 12:51)
[9] [ランダム作成者](2011/02/18 06:30)
[10] 10[ランダム作成者](2010/04/11 14:29)
[11] 11  レベルアップ[ランダム作成者](2011/02/13 01:43)
[12] 12[ランダム作成者](2010/04/11 14:35)
[13] 13[ランダム作成者](2010/04/12 10:50)
[14] 14  『エトラーゼの旅立ち』 編[ランダム作成者](2010/04/26 15:42)
[15] 15[ランダム作成者](2011/02/18 06:34)
[16] 16[ランダム作成者](2010/05/09 13:10)
[17] 17  意思ぶつけ作戦[ランダム作成者](2010/05/25 02:19)
[18] 18[ランダム作成者](2011/02/13 02:36)
[19] 19  精神世界の戦い[ランダム作成者](2011/02/13 05:10)
[20] 20  いざ、人生の再スタート      (LV 3にアップ)[ランダム作成者](2011/02/18 22:55)
[21] 20.5  かくして混沌の申し子は放たれた     (主人公以外のステ表記)[ランダム作成者](2011/02/27 14:19)
[22] 21  『帝国からの逃避行』 編     [ランダム作成者](2011/12/07 21:52)
[23] 22[ランダム作成者](2012/03/18 15:13)
[24] 23  リンデン王国を目指して[ランダム作成者](2012/03/19 02:30)
[25] 24  グレーターデーモン     (ティーナのステータス表記)[ランダム作成者](2012/04/05 05:41)
[26] 暫定 キャラクターデータ まとめ[ランダム作成者](2011/02/13 02:00)
[27] 暫定 アイテムデータ まとめ[ランダム作成者](2010/05/20 16:57)
[28] LVや能力値などについての暫定的で適当な概要説明 & サンプルキャラクターズ[ランダム作成者](2011/02/27 14:10)
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[15918]
Name: ランダム作成者◆f9a7ea31 ID:470fdece 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/05 19:59


 ……………………それほど最悪な目覚めってわけでもねえな。


 一体どれくらい横になっていたのか? 時計がないってのは本当に不便でならん。そして非常に不安だ。
 某国の山中をほとんど身一つで彷徨う羽目になった時でも、時計とナイフとライターは肌身離さず持っていたからなあ。たかだか時間が分からねえってだけで、こんなにも心細くなるとは思わなかった。
 癪に障る話だが、この俺にも文明人らしい脆弱さが残ってたって事か……。
 ああ、あと8歳児でも素っ裸でもなかったか。
 そう思うと意外に楽な経験だったような気がしてくるな。あっちにゃ凶暴なネズミもゾンビも擬態して待ち構える捕食者も居なかったわけだし。危険といえば、せいぜいAKで武装した――。

 …………む?

 近付いてくる気配がある。
 この感じはゾンビやネズミじゃねえな。十中八九、人間だ。ってことは、ご同輩か……?
 だとしても、この息遣いの荒さはどういうわけだ?
 興奮している? まあ、無理もねえ状況だが。最悪、正気を失っている場合もあるな。こりゃ不味いかもしれん。
 生半可な化け物よりも中途半端に頭が働く分、そういう手合いの方が遙かに厄介だ。なるべくなら接触は避けたいんだが……牢屋の中じゃ逃げる暇も隠れる所もありゃしねえやな。
 あー、嫌だ嫌だ。
 俺はたっぷり数秒考えて、とりあえず寝たふりを決め込む事にした。

 別に投げたわけじゃねえぞ。今のナリじゃあ、まともな交渉なんかできやしねえと思っただけだ。
 裸のガキが凄んで見せたところで誰も怖がらんだろ。脅しもはったりも効かん。仮に何かネタがあって取り引きに及んだとしても、舐められるのがオチ。拳銃でも突き付けんと成果は望めねえだろうよ。
 物心付いた時から暴力親父にジャンキーのお袋、借金取りや売人や売春目当ての観光客やらを相手にしてきた俺が言うんだ。間違いない。
 例えどんなに頭の回転が速くても、ガキはガキという理由だけで大人と対等のテーブルには着けないように出来ているのである。
 唯一の手段は無力な天使のふりをして相手の保護欲とか良心とかに訴えかける事だが、残念ながら却下と言わざるを得ない。聖職の方々にすら通用しなかったからな。おかげで俺は天国に行けなくなっちまった。
 だからまあ、成るようになれ。

「……おい、起きろ!」

 結局は相手の出方次第ってわけだ。

「起きろクソガキ! 聞こえてんだろ! ぶっ殺すぞ!!」

 うわぁ~~。
 声だけ聞いて駄目だこりゃ。面を拝めば何てこったい。
 鉄格子の向こうに居たのは例によって全裸の、これといった特徴のない男だった。
 しかし、顔つきが酷すぎる。
 万人を不愉快にさせる乱れた呼吸、定まる様子もなく歪み続ける口元、爛々と滾る濁りきった眼。まるで飢えた獣に醜い欲望を塗したかのような興奮状態。
 断言してもいい。こいつはクズだ。
 ここに来るまでに随分と殺したんだろう。そんな自分に酔ってやがる。

 後悔、恐怖、達成感、吐き気に怖気に気持ち良さ。
 殺人を犯して真っ先に込み上げるものってのは人それぞれ。中には何も感じないって奴も居るだろうが、そいつはプロか精神異常者か、相手がよっぽど歪だった場合だけだな。
 犬や猫を殺せば後ろめたい気持ちになるかもしれんが、ゴキブリを潰しても余り気は咎めねえだろ? 殺して平静で居られたなら、そいつは自分にとってゴキブリみたいなもんだったって事だ。
 ――で、目の前の男のケースはというと。まあ、最初の殺しで一番性質の悪い思いに囚われちまったんだろうな。
 それはつまり、万能感だ。
 殺した殺されたってのは人間関係における上下と正否を決める、最も単純で原始的な方法だからな。自分が殺したから正しい、生きている自分の方が偉いって寸法よ。
 まったくもって無法者や野生動物の価値観なわけなんだが、確かに一面の真理ではある。人間も動物だからな。本能が刺激されちまうんだよ。甘い誘惑に理性なんて簡単に吹っ飛んじまう。
 平和な文明社会で育ったからって正気を保てるとは限らない。心が弱かったり、遵法意識や道徳観念が薄かったりすると尚更だ。
 けどまあ、それは別に構わねえと俺は思う。
 そもそも人を殺しておかしくなるなんてのは当たり前の事である。肝心なのは、そこから戻ってこれるかどうか。我に返った後でちゃんと自制できるのかどうかだ。でなきゃあ、戦争で敵を殺した兵隊さんは全員処分せにゃならん。

 ……断っておくが、これは殺人を肯定するとかいった話じゃねえからな。
 道徳や法律を抜きにした、あくまでも人間性についての俺の意見だ。

 要するに、俺が出会ったこのクズ男は人を殺したからクズというわけではなく、人や化け物を殺した事で自分を何だか凄い奴だと思い込み、逸物なんかを漲らせちゃっているからクズなのだ。クズで変態なのだ。殺しでハッスルしたからクズなのではなく、それを引きずり思い上がり、他者に対して傲慢な態度に出るようなクズだからこそクズと言うしかないのだ。ましてや幼児に性的興奮を覚え、その獣性を隠そうともしないなど以ての外。クズ、くず、屑、クズ、人のクズ。生きる価値なし今すぐ消えろ。腰を振るな。鉄格子を揺らすな。盛った猿か、このクズは。

 ………………………………いかんいかんいかん。俺が熱くなってどうするんだ。

 起き抜けにけったいなモノを見せられたせいで頭に血が上っちまったか。冷静になれ、冷静になれ。
 そういうワケで話し合いは不可能。とっとと始末することにした。
 とはいえ、今の俺は力が強いだけの8歳児、このクズも多分、見た目通りの強さではないだろう。慎重にいかねえとな。

「……どちら様でしょうか?」
「どちらさま、じゃねーよ! 早く開けろ! 開けねえと殺すぞ!!」
「お断りします」
「ふざけんな! お前、バカか!? ぶっ殺すぞ!!」

 適当に受け答えしながら、手早く見極めに掛かる。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 ????

 ステータス不明


 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■



 ふむ……怪我はなし、と。じゃあ、クズの身体に付いてるのは全部返り血なのか?
 無傷で敵を倒せるほど経験豊富にゃ見えねえし、何か凄い武器でも隠してるのかね? ……いや、こういうバカチンは得物がありゃ振りかざすもんだ。
 なのに丸腰、丸裸。しかも、明らかに逃げてきたとか虚勢を張っているとかいった雰囲気じゃない。
 ……まさか、素手で切り抜けてきたとか?
 あ、魔法使いって可能性もあるのか。って、こんな知性の欠片もない魔法使いが居て堪るか。俺は認めんぞ。
 じゃあ、やっぱ素手なのか……。クズ野郎め。どんだけ馬鹿げたステータスしてやがんだ?

「ところで貴方、人から『口が臭い』とか言われた事ありませんか? 臭いますよ。……凄く」

 大体掴めたところで挑発開始。
 誘導するために、できるだけ煮込んでおこう。

「っだと、こら!?」

 おお、鉄格子が曲がった。どうやら俺の見立ては正しかったようだな。大した腕力だわ。

「お前、おれが誰だか分かってんのか!? おれが誰だか分かってんのか!!?」

 いやー、さっぱり分からん。
 分かりたくもないが。
 もはや言葉を重ねる必要もない。俺は包み隠さぬ気持ちを込めた冷笑だけで、クズの脳味噌を沸騰させた。

「ブッッッッ殺してやるうううううううううううううううううううううう!!!!!!」

 阿呆、そりゃこっちのセリフだ。安っぽくなるから決して口にはしねえけどよ。
 ベッドから下りた俺は、軽く準備運動を済ませて蜘蛛の歩みの秘薬を飲み…………飲み……………………?

「GOOOLUOUAHOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!」

 うおおおおお!?!? 何じゃこりゃあああああああ!!?
 見る見る内にクズの肌が黒く変色。それと共に身体中から黒い毛が生え、筋肉が盛り上がり、骨格までもが変形していく。
 更に犬歯は伸びるわ、背は伸びるわ、モノはもっと角度を増すわで、まるっきり野獣じゃねえか。
 元々人間じゃなかったのか? 人間以外のご同輩も居るって事でいいのかね? かく言う俺も種族が謎だし。さしずめ、こいつは狼男といったところか。
 格好良く言うと……何だっけ? ワーウルフだったか?
 あ、違った違った。こいつ狼じゃねえ。

「VAAAAAAAAAAAAAAAA────ッ!!!」

 ゴリラだ。
 ってことはワーゴリラ? ワーモンキー? しっくりこねえからワーエイプにしとくか。
 確かにこれなら素手でも平気だわ。高い身体能力、変身で姿を使い分けられる利便性、本人の頭が致命的に悪い点に目を瞑れば非常に恵まれた肉体と言えるだろう。
 まあ、羨ましくはないけどな。類人猿に変身とか如何にも退化したみたいで嫌だし。俺の性に合わん。
 変化しきった太く毛深い腕を叩き付けられ、鉄格子が目に見えて揺らぐ。
 こりゃあ、すぐにぶち破られるな。
 体格とパワーの差は歴然としている。真っ向から挑むのはやめた方がいいだろう。酒瓶でぶん殴ったところで応えるとは思えんし。
 ……とすると、打てる手は一つしかねえやな。

 俺は怯えきった風を装い、壁際に下がった。
 一方、クズゴリラは鉄格子をお釈迦にした事に興奮したのか歯茎を剥き出し、ドラミングなんぞを見せつけてきたりしている。
 いや、そういうのはいいから。早く来いよ。俺もいつまでもお前に構っているほど暇じゃねえんだ。
 圧力を掛けるように、両手を広げてゆっくりと牢屋に入ってくるクズゴリラ。脇をすり抜けられる事だけを警戒してるんだろう。俺としてもその方が有り難い。
 距離は……あと1メートルちょいかな? ワンチャンスだから集中しねえと。
 しかし、こいつの息遣いだけはどうにかならんもんかね? 激しくウホウホ言いやがって耳障りにも程がある。
 これはアレか? 敵を笑わせて動きを封じる戦法なのか? ああ、前世で遭遇してたらなあ。多少の犠牲を払ってでもビッグフットとして世に送り出してやったのに。

 …………よし、間合いは完璧だ。
 素早く背後の壁を駆け上り、クズゴリラの目線へと。
 やっぱり秘薬の事は知らなかったか。常識外の動きをされて見事に固まってやがる。

「ほれ、熱いから気を付けろよ」

「ッッ!? ギャアアアアアアアアアアアアァァアアアアア!!!!」

 俺はその無防備な右目に、取り出した松明の炎を押し付けてやった。力一杯な。
 予め火の付いた松明をアイテム欄に収めていたからこそできた、一瞬の挙動。完全な不意打ち。
 確かに、こういう事態を想定しての仕込みだったわけだが……ここまで綺麗に決まるとはなあ。頭使った甲斐があったってもんだ。
 右目を押さえて悶絶するクズゴリラ。俺は会心の一撃の余韻に浸る間も置かず、天井に移動しながら神ボトルを準備。ボケナスの毛皮によぉ~く染み込むよう、たっぷりとブランデーを注いでやる。
 でもって必殺、火炎ファイヤー!!

「アヂイイイイイイイ!!! アヂイイイイッグゾオオオオォォオオオ!!!!」

 火達磨になったクズゴリラは頭を抱えてゴロゴロと、狭い牢屋の中を縦横無尽に転がり始めた。
 判断を誤ったな。ケツまくって逃げ出しときゃあ、俺もこれ以上の手出しはできなかったってのに。火を消す事を優先させちまった。
 こっちにゃ無限の燃料があるとも知らずによ。
 あとはまあ、煙を吸い込まないよう細心の注意を払いつつ、火力を調節する作業が続いたわけだ。
 焼死は最も辛く、逃れ難い死に方の一つだ。全身に燃料が掛かった状態で引火すれば、どんなに早く消し止めたとしても集中治療を要する重態になる。こんな場所じゃ助かる見込みなんぞありゃしねえ。

「ァァァァァァッァ……………………」

 クズゴリラは異常なしぶとさを見せたが、その足掻きは地獄の苦しみを骨が焼けるまで長引かせただけに過ぎなかった。
 …………あー、焦げ臭せぇ。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 ゴリバルの死体  5/5

 パーソナル マップ (5)
 フォーチュン ダイス (34)
 ケタの干し肉 (14)
 豚肉の塊 (13)
 ナングの卵  (8)


 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■



 見事に食料ばかりだな。
 選んで収納してたのかね。アイテム枠が少ないし、食い意地も張ってそうだったし。俺にとっちゃあ有り難い話だが。
 ん、俺の枠も満杯か。やり繰りしてかんといけねえやな。

 ……さて、秘薬の効果がある内に先へ進むと致しますか。

















 ◆ ケタの干し肉 〈重量 100グラム〉

   詳細: 塩と香辛料を塗布し、天日干しにする事で保存性を高めた食肉。
        一般的に干し肉といえばケタか豚の肉の事である。


 ◆ ナングの卵

   詳細: ???



 天井を歩きながら栄養補給。手に入れたばかりの干し肉を咀嚼する。
 うん、悪くない。ビーフジャーキーよりもあっさりしていて噛み応えがある。酒の肴にするには、ちょいとばかし塩気が足りんが。
 ああ、ケタってのがどんな生き物なのかは気にしない方向で。
 卵の方は……うおっ? でけぇ。
 ダチョウの卵より大きいぞ。ナングってのはジャイアントモアのご親戚ですかい? ……ダチョウもそうか。
 何にせよ、こりゃ生じゃ食えんな。火を通すのも大変そうだ。

 そこから先はかなり長いこと真っ直ぐだったが、ズラリと並ぶ牢屋のおかげで退屈はしなかった。
 正確には中に入っている連中のおかげだな。
 半分近くは空っぽか、あのグールっていう走るゾンビだったんだが、他にも色々と居たんだよ。
 人間以外の種族のゾンビに、馬ぐらいの大きさの蠍の抜け殻、でっかい火を吹くトカゲ、動く雪達磨、お化けカボチャ、蛇みたいな尾っぽの鶏、立派な銀色の角を持つ水牛。閉じ込められて何年経つのかは知らんが、どいつもこいつもまだまだ元気そうだった。
 もちろん近寄ったりなんかしてねえぞ。ガキじゃねえんだから。

 ましてや、手を突っ込んでみようだなんてなあ……。

「いたいぃぃ~~~……ううっ……! いたいよぉぉ~~~!」

 右手を押さえて蹲る、可愛い裸の女の子。
 床には真っ赤な鮮血が滴っている。傷口は見えないが随分と痛そうだ。
 目敏い者でなくても、ほんの少しの想像力があれば見当が付くだろう。彼女は正面の牢の中に居る、凶暴な面構えの犬に手を噛まれたのではないか? 理由はアレだ。無邪気にも撫でようとしたんじゃあないか? ってな。
 馬鹿だなあと呆れつつも、心配せずにはいられない。
 俺が出くわしたのは、そんな人の情ってやつをこの上なく刺激する場面だった。
 出血量から見ても、指の一、二本は食い千切られたのではないだろうか?

「いたいいたいたい、いやいぃぃぃ……!!」

 大変だ! 早く何とかしなければ!
 俺は女の子に向かって駆け出し、そのままダッシュ。全速力で先を急いだ。
 天井に居てよかったよ。アレとすれ違わずに済んだんだからな。
 別に見捨てたわけじゃねえぞ。本来ならしっかり面倒を見てやるのが一人前の男の務めだと思う。いや、本当だって。フロリダじゃあ、ちょっとした足長おじさんだったんですよ、私は。
 そう、見捨てたわけじゃない。
 そもそも、見捨てなきゃならんような存在は最初から居なかったのだ。
 だってアレ、見た目通りの生き物じゃねえだろ! そりゃ姿は完璧だったけどさ! 何で犬の方が怯えてんだってぇ話だよぉぉ、こん畜生!!

「まああぁぁぁあぁぁてえええぇぇぇぇぇ────!!!」

 ほら、来たァ────ッ!!!
 
「くわせろくわせろくわせろくわせろくわせろくわせろくわせろくわせろくわせろくわせろくわせろォ!!!!」

 思った通り、どこも怪我なんかしちゃいねえ。
 本性を顕わにし、堂に入った四足走行で追ってくる見た目幼女。
 顕わにしたといっても、ちょっと口が大きくなって鋭そうな爪と牙が生えたくらいか。ああ、あと眼が怖い。基本的な外見が変わっていないもんだから、恐ろしくて適わん。この世の者とは思えない迫力があった。
 そして速い。
 俺が遅いだけかもしれんが、とにかく速い。50メートルも行かない内に追い付かれ、天井と床で並走しなきゃならんようになっちまった。

「ぐわぜろぉぉぉ────────ッ!!!」

「やなこったああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 何ともワンダフルな追い駆けっこの始まりである。
 しかしやべぇな。そろそろ薬が切れる頃か?
 まだ8本あるとはいえ振り切れなきゃあジリ貧だし、その前に絶対俺のスタミナが尽きるだろうし、こいつは諦めが悪そうだし。……こりゃ逃げるのは無理そうだわ。
 じゃあ、戦うか?
 それも無理だな。今こいつ、三角跳びで俺の背中をかすめやがった。
 走りながらだぞ? 通路の高さは5メートルはあるってのに。
 こんな異次元級の身体能力を持つ相手とガチでなんかやれるか。ライオンと素手で戦う方がまだ勝算があるわ。
 多分、火炎ファイヤーも避けられると思う。さっきからブランデーを浴びせようとしてるんだが、一向に命中してくれんのよ。
 ……不味い、不味いぞ。先のクズゴリラなんぞ問題にならん脅威だ。
 何とかせんと死んでしまう。死んで幼女の糧になっちまう。ゾンビの餌やキノコの養分よりは格段にマシだが、太陽も拝めねえままで死にたくねえんだよ、俺は!

 ……………………待てよ。なるほど、糧か。

「おぉーい! お前、豚肉好きかァ────!!?」

「すき────────ッ!!!」

 いけそうだな。



 ◆ 豚肉の塊 〈重量 1000グラム〉

   詳細: ケタ肉に次いで多くの人々に食されている、一般的な食肉素材。
        これはその、肩ロース肉の塊である。
        牛や山羊は乳を、鶏は卵を、羊はその毛を収穫するために
        養殖しやすい豚とケタよりも食肉にされる割合が少ないのだ。



 試しに放ってみると、フリズビー犬のチャンピオンもかくやといった勢いでキャッチしやがった。
 相当飢えていたんだろう。こんなロクでもない場所を独り、空きっ腹を抱えて彷徨うだなんてなあ。……狙われたのが俺じゃなきゃあ同情できる境遇だったんだが。
 できれば、今度からはネズミやゾンビを獲物にしてくれると有り難い。
 というわけで、じゃあなベイビー! E型肝炎には気を付けろよ!

「もっとよこせええええええぇぇぇぇえぇええ!!!!」

 食うのが早ぇぇ!!
 生の豚肉が1キロだぞ。頼むから少しは味わうとかしてくれや。




 結局、逃げられそうもないので、俺は彼女が満足するまで貴重な食料を提供する羽目になった。
 ツイてねえなあ。……いや、あそこでクズゴリラを殺してなければ一巻の終わりだったろうから、運が良いのか?
 まあ、怪我しなかったから良いって事にしとこうかねえ。













 あとがき


 以上、今回はゴリラと幼女の二本立てでお送りしました。
 展開が遅せぇー!!
 ランダム遭遇はこのくらいにしておきましょう。次にはきっと進展があるはずです。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


 現在の所持品  17/17

 パーソナル マップ  (22) もはや脱落者カウンター
 フォーチュン ダイス  (185) まだまだ増えるよ!
 豊穣神の永遠のボトル  大活躍です
 ヒール ストーン
 ヒール ストーン  それぞれ使用回数が違うからスタックできないんです
 リフレッシュ ストーン
 陽光のカンテラ
 拳大の石  (56)
 冒険者の松明  (73) 火炎ファイヤーで耐久力を削られ1消費
 火の付いた冒険者の松明  立派な武器です。
 麻製のロープ  (44)
 油の入った小瓶  (8) 揚げ物に使うには、まず鍋を探さないといけませんね
 水筒 〈湧き水〉
 蜘蛛の歩みの秘薬  (8) ゴリラ撃退に1消費 飲んだからって安全とは限りません
 ケタの干し肉  (13) 早速の味見で1消費
 豚肉の塊  (6) 幼女が満足するまで与え続けて7消費 (1+1D6)で判定しました
 ナングの卵 (8) 大きい卵にはロマンが詰まっています


 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■



 秘薬の入っていた小瓶は捨てました。早くも枠一杯です。

 思っていたより好意的な感想をいただけて嬉しい限り。これからも精進していきたいと思います。
 感想100になったら暫定データのまとめを載せるよ! きっとだよ! 何も考えてないわけじゃないよ!



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