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No.15817の一覧
[0] 【習作】魔術師、還る(銀英伝 逆行)[斗星](2010/01/24 18:13)
[1] プロローグ 『魔術師還る、ただし士官学校に』[斗星](2010/01/27 17:51)
[2] 第一話 『魔術師、いきなり落第危機』[斗星](2010/01/27 17:50)
[3] 第二話 『魔術師、やる気を出す』[斗星](2010/01/27 17:50)
[4] 第三話 『魔術師、大いに悩む』[斗星](2010/01/27 17:49)
[5] 閑話その1 『目覚めよ、ワイドボーン!』[斗星](2010/01/27 17:49)
[6] 第四話 『魔術師、決断の日』[斗星](2010/01/27 17:56)
[7] 第五話 『魔術師、友を巻き込む』[斗星](2010/01/31 11:45)
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[15817] 第五話 『魔術師、友を巻き込む』
Name: 斗星◆52051aa0 ID:876a2a6f 前を表示する
Date: 2010/01/31 11:45
かつてこの国には新進気鋭の若手将校たちの一つの集団があった。
それは士官学校の同窓生達の集まりであり、
帝国に対して次々と大きな戦果を上げる彼らの事を、
民衆は熱狂してこう呼んだのであった。


そう、『730年マフィア』と。


そして時は流れ宇宙暦786年、
後に『730年マフィア』と比較されるようになる者達が結束しようとしていた。






第五話 『魔術師、友を巻き込む』



「話は聞かせてもらった、このままじゃ同盟は滅ぶ!」

「な、なんだってぇ!!」








「・・・何をしているんだ、ワイドボーンとアッテンボロー?」

「いやぁ、このヤン先輩の文書で、
一番大事なところは何処かってワイドボーン先輩と議論になりまして・・・」




ヤンは何故こんな状況になっているのか困惑していた。



そう、この状況を一言で言うのならば



『まずラップに相談するつもりが、何故かアッテンボローと
おまけにワイドボーンまで付いてきて、なし崩しに話すことになった』である。

ラップが帰ってきた時にすぐに説明するために、
例の文書を印刷した上に手に持っていたのは迂闊としか言い表せないだろう。
(ちなみにジェシカはここが男性寮なので着いてこなかった)



「それで、実の所はどう思うだろうか?率直な意見を聞かせてほしい。」

ヤンは少々まじめに切り出すと、まずラップが口を開いた。

「正直な話、論文としては良く書けていると思う。
 俺からすればこの意見に反論する事は何一つ出来そうに無いよ」

「だけど、これは少し話しが飛びすぎてやいませんかね?
 なにせ20年以内に同盟が滅ぶ可能性があるだなんて・・・」

ラップは全面的に肯定するが、
話の大きさからアッテンボローはむしろ戸惑いのほうが大きかった。


「しかし実際に『戦士研究科の廃止理由』には説得力があるし、
『軍人の家で戦災孤児を養育する法』と言うのも
ニュースで確か法案にかけられてると言ってたはずだ」

そう答えたのはワイドボーン。
彼は秀才と言われるだけあって社会の動きなどもよく見ていた。




最近の言動からは想像も出来ないかもしれないが・・・



「そうだ。経済的な不安の兆候はすでに出ていて、
そしてそれはやがて社会的なインフラにまで及ぶだろう。」

「そしてその原因は150年にも及ぶ戦争・・・ですか。
先輩は経済学者としてもやってけるんじゃないですかね?」

ヤンの言葉にアッテンボローがそう言うのだが、
「私には向いてないさ」とヤンはあっさりと否定する。

ヤンの文書の内容は実際に15年後を見てきただけに、
アッテンボローがそう言うだけの説得力はあるが、
ヤンからすればそれはカンニングをしたような物で、
そちらの方に褒められてもその様にしか思えないのであった。




ここでヤンの文書について書こう

後に『ヤンの決起状』とも呼ばれるこの文書であるが、
その内容は大きく分けて4つに分かれていた。


まず頭の内容は『戦史研究科の廃止に見られる経済と人材の危機』である。

始めにこの内容を持ってきたのは、
もちろん自分がこの文書を書いたことに説得力を含めるためである。

はっきり言えば、『自分が望まぬ事を強いられたので、
それに関して深く考えてみました』と言う事だ。

そしてその内容はさらに大きく二点に分けられる。

『戦史の研究に金を出せる余裕が政府に無くなった』と、

『軍に置いて階級はピラミッドである必要がある為に士官学校の門を狭めた』である。

前者においては以前にも触れたので、
後者についてのみ少々説明しよう。

一つの艦を操るのに必要な人員を例にとるが、
(艦の種類によって違うが)一艦辺りに必要な人員は約200~300人である。

この中で一般的に仕官と呼ばれる人間がどれだけいるだろうか?



答えは10人にも満たないのである。
(無論艦隊の司令部などがある場合は別)

大抵の場合は艦長と副艦長が仕官(尉官以上)にあたり、
各セクションの責任者でも下士官(曹長など)である。
まぁ空母においては若干話はかわるがここは置いておこう。

つまりは一つの艦を動かすにあたって2人の仕官に対して
298人の下士官・兵が必要だと言い換えてもよい。

これが軍の階級がピラミッドである必要があると言う事だ。



無論、優秀な士官は兵よりも貴重なものである。

だが、戦史研究科は落ちこぼれが集まる科であり、
中には『どうせ徴兵されるなら仕官で』と言う思いから入学するものもおり、
戦時の仕官としては覚悟も能力も足らない者を増やすばかりである。
(なおヤンの存在は例外中の例外である)

しかしそんな彼らでも仕官である以上は給料も、
そして遺族に対する一時金や年金も下士官や兵より高いのだ。



さて、話をまとめるが、

様は『不要な仕官は最初から切捨て、徴兵したほうが良い』
と言う思惑が含まれているという内容なのである。

一つの学科を廃止したくらいで何が変わると思う方もいるだろうが、
年間数百人辺りが今後毎年変ることを考えれば
事の大きさが少しは理解していただけると思う。
(現に士官学校の卒業生はヤンの代で4000人強であり、
 一つの学科辺りの人数はそれほど居るのである。)



さて、ヤンの文書において続いて書かれたのは
『トラバース法に見る更なる社会経済の不安』である。

これに付いては懸命な方ならば言わずもがなであろうが、


こんな法案がまかり通る社会はもはや末期なのである。


年々戦災孤児は増え、その為の施設はパンパン。
そしてその解決策が『軍人の家庭で孤児を引き取る』・・・

政府からすれば施設を作る金を削れ、
孤児にたいする養育費も削れ、(施設だと人を雇わなければならないし)
そして身内が軍人である事から日常的な英才教育を期待でき、
しかも、軍人もしくは軍関係者にならない場合は養育費の返還が必要だ。


この法案が果たしてまともであると言えるであろうか?




これは断じて否である。




何よりもまともじゃないのは、
実の親を戦争で亡くした子供が、



今度は育ての親が戦争で亡くなる危機に常に晒されているのだ。




しかも対象となる軍人はある程度の基準で選ばれており、
(キャゼルヌがトラバース法を管理する職に居たことからもわかるだろう)
親を亡くした子供のことをみな可愛がってくれただろう。




そんな中で2度も親を亡くした子供が、
果たして戦争の相手国を憎まずに居られる事ができるであろうか?





はっきり言おう。



悪質な洗脳と大差ないと。






次に記載されているのは『徴兵による社会的人材の不安』であるが、
これに関してはヤンは前史の経験から記載していた。

かつて単純なミスから交通網が麻痺したり、
官舎の電気が停電した事等を思い返しただけである。
(詳細に関しては割愛するので、気になる人は原作を読み返そう)



そして最後に書かれたのが、
『戦争による今後の社会経済の悪化と戦争の早期終結に向けて講和の可能性』

この部分が冒頭でアッテンボローとワイドボーンが言った
『20年以内に同盟が滅ぶ可能性』に関してである。

そしてここも前の項に続いて、
前史の記憶から記入された内容である。

その内容は『帝国領侵攻作戦』(アムリッツァ前哨)の経験から、
敵国への侵攻の難しさと、敵が焦土作戦を取った場合の危険性。
そしてリスクを避けて国力を貯める為の講和と言う選択肢である。



・・・そしてそれが為されないのであれば、
同盟は社会から崩壊して行くと書かれていたのだ。









ラップはこの文書を読んで軽く冷や汗をかいていた。



そう、この内容は一人で考えるのには重過ぎる



だが安易に人に言えないのだ。


「(おそらく、ヤンは戦史研究科廃止を反対する為にこれを考え始めたのだろう)」

そう考えるとヤンの今日までの様子が全て納得できた。


始めは戦史研究科の存続の為に問題をあげていたが、
考えれば考えるほどに問題が出てくる。



そしてその問題を検証するに、途方も無い事実に当たったのだと・・・


「ヤン、これは発表できる類のものじゃないな。」

ラップのその言葉にヤンとワイトボーンは頷くが、
アッテンボローは一人判らないと言った風であった。

「え?どうしてですか先輩方。」

アッテンボローからすれば父親の影響から
駄目なものはハッキリ駄目だと言うものだと思っている。
それに前史では『伊達と酔狂』で戦争をした革命家である。


だからこそ何故この論文が発表できないのかが疑問であった。


「アッテンボロー、この文書の内容ははっきり言ってしまえば政府批判なんだ。
 言論の自由なんて建前はあるが・・・有害と認定されて黙殺されるのが落ちさ。
 それにこの文書を書いたのが私であるのが不味い。」

「へ?先輩が書くと何か不味い事でもあるんですか?」

アッテンボローはヤンの言葉に納得しつつも、
後の一言の意味が判らずに聞き返した。

「わからんか?俺達は士官学校に入った時点から軍人扱いなんだぞ?」

「あ・・・」

答えたのはワイドボーンだったが、その言葉に今度こそ納得がいく。

民主国家の軍隊は文民統制である事が当然なのだ。
その軍人が政府を批判すると言うことは非常に拙い事と受け取られかねない。
(場合によってはクーデターの恐れありとして、国家反逆罪と取られてもおかしくない)

「そう、だから此れは発表できないと言っているんだ。」

「「「・・・」」」

そう、ラップが締めると、四人の間に沈黙が下りた。





「それで、これを俺達に見せて如何しようと言うんだヤン?」


意を決して確信に触れたラップに対して、
ヤンは静かに語り始めた。


「・・・私はこの文の通りに帝国とはどこかで落とし所を付けるべきだと思っている。
 だが現在の同盟の世論はそれを許しはしないだろう。」


三人はそれに一様に頷く



「何よりそう言う話をする為にはまず発言力が必要だし、
 一人では何を言っても多数の意見によって黙殺される。」

「「「!?」」」



この言葉に三人は驚きの顔をあらわにする。


発言力と言う物は一般的に地位の高さに比例して上がるものだ。
当然それは軍においても変わらないものである。


それは遠まわしには言っているが、
ある意味では誰もが考えること。



だが、それを語っているのは
常日頃から軍人よりも歴史家になりたいと言っており、
そんな事を考えるとは思えない男だ。






「そう、まずは軍部の意見が統一されないようでは駄目だと言うことさ。」



その言葉に更にハッとなる。







そう、そうなのだ。



ヤンはこれを自分達に相談している。




・・・ならば




「かつて、730年マフィアは戦に勝つことによって
 軍人として最高の地位を独占して、
 ・・・そして民衆に絶大な支持を得た。」


引き合いに出されたの730年マフィア。



彼らは士官学校の同窓生である。


・・・それが意味するのは




「つまり・・・私と一緒に軍人としての上を目指して欲しいんだ」


この一言より、歴史は加速する。



---------------
後書き
ヤン『アッシュビーに出来たことが私に不可能だと思うかい?』

アッテン『先輩、それはキャラが違うっす』

はい、十分にヤンらしくないかも知れません(死)
『ヤンの決起状』と合わせて相当な賛否があると覚悟しています。

前史で散々後悔したことと、やる気のせいだと思ってください。

あとはっきり言いますが
作者は『730年マフィア』が大好きです。
(特にアッシュビーと行進曲ジャスパーが)

同盟を勝たせる為に考えの一つとして本作『ヤンの逆行モノ』ではなく、
『アッシュビーの転生モノ』を書こうか迷ったくらい好きです(爆)

ヤンと転生アッシュビーがコンビを組んで帝国に立ち向かう。
何とも心が躍る展開じゃないですか!

・・・誰か書いてくれないかなぁ。


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