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No.15817の一覧
[0] 【習作】魔術師、還る(銀英伝 逆行)[斗星](2010/01/24 18:13)
[1] プロローグ 『魔術師還る、ただし士官学校に』[斗星](2010/01/27 17:51)
[2] 第一話 『魔術師、いきなり落第危機』[斗星](2010/01/27 17:50)
[3] 第二話 『魔術師、やる気を出す』[斗星](2010/01/27 17:50)
[4] 第三話 『魔術師、大いに悩む』[斗星](2010/01/27 17:49)
[5] 閑話その1 『目覚めよ、ワイドボーン!』[斗星](2010/01/27 17:49)
[6] 第四話 『魔術師、決断の日』[斗星](2010/01/27 17:56)
[7] 第五話 『魔術師、友を巻き込む』[斗星](2010/01/31 11:45)
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[15817] 第四話 『魔術師、決断の日』
Name: 斗星◆ffb53dab ID:2792ad38 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/01/27 17:56
真の友人とは友のことをよく見ているものであり、
そして自分が本当に困っている時にこそ手助けをしてくれるものだ。





第四話 『魔術師、決断の日』




「最近ヤンの様子がおかしい」

ラップが、久しぶりに出会ったジェシカに対して放った一声はこの言葉だった。




この日ラップは相談があると言って、
ジェシカを学校の近くのカフェテラスに連れ出していた。

ジェシカは急な誘いだったので最初断ろうかとも思ったが、
深刻な顔をするラップを見て着いてきていたのだった。






春になり、新たに戦略研究科へと転科となったヤンとラップであったが、
様々な事に日々頭を悩ませるヤンの表情は優れなかった。

そしてそれをヤンは必死で隠そうとする物の、
毎日顔を合わせていたラップからすれば、
一目瞭然なのであった。


「それって戦史研究科が潰れる事になったせいじゃないかしら?」

ジェシカはまず始めに思い浮かんだ理由を口にする。
だが、それに対してラップは即座に反論する。

「確かにヤンがおかしくなったのはその話を聞いた頃からで、
俺も最初はそうじゃないかと思ったのだけど、
新学期が始まる今になるまでずっと引きずってるのはおかしいと思わないか?」

「それは・・・確かにおかしいわね。
むしろヤンだったらそこまで引きずるくらいなら抗議活動の一つでもしてるわね。」

「やっぱりそう思うよなぁ・・・」



以前にも触れたが、転科をどうしようもない物として受け入れたヤンは、
前史と違ってこの時期に一切の抗議活動をして来なかった。

ラップはヤンが何か行動を起こすのならば最後まで付き合うつもりであったが、
何も無かった為に余計に考え込んでしまっていた。



二人はその他にも色々と考えるものの、
どうにも説得力がある考えが思い浮かばずに、
若干表情を暗くしていた。



そんなラップたちの元に声をかけてきた者がいた。


「ありゃ、ラップ先輩。デートですか?」

話しかけてきたのはアッテンボローだった。

アッテンボローはそう口にしながらも、
二人の顔色が優れないことから何かあったものとして声をかけていた。
(本当にデートの様だったら邪魔はしない程度の良識は持っている。
 もっとも相手が今は出会ってないがポプラン等であったら別だったかも知れないが)



「馬鹿言ってるんじゃないよ・・・ちょっと悩み事があってな。」


「・・・ひょっとしてヤン先輩の事ですかね?」


アッテンボローはヤンのことを尊敬していた。

門限破りを見逃してくれた事がきっかけで付き合い始めたと言う縁もあるが、
不本意ながら士官学校に進んだという点が自分と類似しており、
自分の得意な部分では誰にも負けない所等は素直にあこがれていた。

特にワイドボーンに勝ったシミュレーション戦などは、
信じられない様な物を見たと驚愕したものだ。

そして何よりも、他の自称エリート達と比べてそんな所を
まったく誇らないヤンの人間性が何よりも気に入っていた。


前史においてもアッテンボローはヤンのこの辺りに大いに影響を受けていた。

最終的に中将という階級を与えられながらも、
階級的には大分下になるポプラン達と軽口を言いあってる様な点からも判るであろう。
(無論本人の元からの性格による所も大きいのだが)

もっとも、それはかつてのヤン艦隊に所属した者の
ほとんどに対して言えることかもしれないが・・・




話を戻すが、そんなアッテンボローだけに、
ヤンの細かい変化を感じ取っていたのだ。

ラップはアッテンボローに対してもジェシカと同様の説明をするが、
アッテンボローにも思い当たる節が無く、
ともに頭を悩ませるだけであった。


そしてそんな3人の元に新たに一人の男がやって来た。


「お、ラップとアッテンボロ-か、なに不景気な面してるんだ?
エドワーズのお嬢さんを取り合いでもしたのか?」

それは空気を読まない男ワイドボーンであった。

「そう言えばヤンの奴は一緒じゃないんだな?
最近のあいつは全然楽しそうにしないし誘ってやれよ!」

『『『(いや、ヤン(先輩)の事を話してるんだから本人を呼ぶわけには・・・)』』』

三人は心の中で見事に同調した。


だが、ラップはそのワイドボーンの言葉に
思い当たる節がありはっとした。



そう、ヤンは何も楽しめていない様に見えるのだ。



同部屋で同学科のラップはプライベートを含めて、
平日はほぼヤンと一緒に居るといっても過言でない。

そしてそのヤンを思い返すに、何をするにしても楽しんでないように見えるのだ。
それこそヤンの大好きな戦史の授業や、普段テレビを見ている時でもだ。


「ナイスだ、ワイドボーン!」

「・・・なんだなんだ?俺にもわかるように説明しろよ!」

ラップは苦笑しつつも、三度最初から説明するのであった。

「(それにしても、ワイドボーンまでヤンの変化に気づいてるとは意外だったな。)」



・・・

一方のヤンはこの日も一人で考え事をまとめていた。


「よし、ようやく完成したか・・・」

数ヶ月の間に様々なことを考えていたヤンであったが、
その考えがようやく一つにまとまったのであった。



そしてその結論の末に、大きな選択肢を迫られていた。


「どう考えても私一人で何とかなる問題じゃないしなぁ・・・」


そう、それは理想を実現させるための
仲間を集めるかどうかをずっと悩んでいたのだ。



前史においてヤンは決して自分ひとりで全てを抱え込むタイプではなかった。
むしろ真逆と言っても過言ではないであろう。



それは生来の合理主義、
悪く言えば怠け根性が関係していた。

何かを実行するにしてもそれを得意な人物が居れば、
ほぼ丸投げといって良いレベルで裁量をまかせ、
そして何があっても(一部の例外を除き)文句を言わなかった。

門外漢である自分が何かを考えるよりも、
得意な人物に任せたほうが上手くいくし、
何より楽だと・・・





だが、今回ばかりは話が違う。

何せ事は途方も無くでかいことであり、






そして迂闊に人に話せるような内容ではないからだ。





もし、ヤンが帝国を完全に滅ぼすことを考えていたのなら、
こんなにも悩まなかったであろう。


何故ならそれは同盟においてごく一般的な考え方であるからだ。


前史において第11艦隊指令のホーランドは、
艦隊戦の最中というごく公的な場所で『皇帝を処刑する』とまで言ってのけた。

この時の周囲の反応は冷やかなものがあったが、
果たしてその中の幾人が一度でも同様の考えを持ったことが無いと言えるだろうか?


少なくとも軍人である以上、国家を守るためには敵国に勝たねばならないし、
その終着点は間違いなく皇帝の打倒であるのだから。





だが、ヤンの理想は前話でも触れたとおりに
「自由惑星同盟の存続」と「講和による一時的な平和」である。


別に誰に話しても問題ないのではと思う方も多数居られるかと思うが、
よくよく考えていただきたい。


帝国が同盟のことを叛乱軍と称しているように、
同盟も専制主義国家の存在を認めていないのだ。


もちろんこれは建前であり、本音が別の所にある事は子供でも判ることである。


だが、建前であっても無視出来ないことはある。




何故なら、それを利用して人を陥れようとする者は数限りなく居るのだから。




そしてこのヤンの思考は人によっては『利敵行為』、
もしくは『敗北主義者』と捕らえるのではないだろうか?



それは今現在は気にするほどの事ではないことかもしれない。
学生の戯言として聞き流される様な内容であるからだ。









だが、もしも今後ヤンが出世した後に引き合いに出されたらどうなるだろうか?







前史においては敵であるラインハルトよりも
味方のはずの人々の方にこそ足を引っ張られたヤンである。
この辺りは慎重になっても当然なのである。


もちろんヤンの中で、すでに相談しても良いのではと思っている人物は多数居る。


かつて最後まで仲間であった『アッテンボロー』や『キャゼルヌ』

人に難題ばかり押し付けて来たものの、人格や能力には疑いの無い『シトレ』

そして親友の『ラップ』・・・






『ワイドボーン』は・・・まぁ置いておくとして





だが、彼らに話をするとして何処から何処までを話せばいいのかも悩む。

少なくとも『自分が未来から来た』などとは絶対に言えない。



そんな事を言えば精神病の疑いを持たれて病院に放り込まれかねない。


もっともこれに付いては未来に起こることを自分が当てて見せることで
信用させると言う方法が無いわけではない。



だが、それは大きなリスクを伴うのだ。

何故なら『本当にそれが未来に起ることである確信が無い』と言う事であり、

それに伴って『未来の情報を当てにしては大きな失敗をする』である。



はっきり言ってしまえばヤンが歴史を変えると決めた時点で
すでに歴史は変わっているのだ。


仮に自分が如何にかつてと同じ道を歩もうとした所で、
世界は自分一人で回って入るのではないのだから・・・




ここでまたアスターテ会戦を引き合いに出して説明しよう。

仮に前話で仮定したとおりに同盟が三個艦隊を集中運用したとして、
それであっさりラインハルトが倒せるであろうか?


答えはやはり否である。


ラインハルトが兵力の集中と迅速を持って戦ったのは、
ひとえに同盟の艦隊が3方に分散していたからであって、
もし同盟側が集中していたのであればそれ相応の戦術を取ったであろうし、

間違っても兵力差がある中での正面決戦などは取らないであろう。

そうなればその時点でヤンの未来知識は無駄になると言うものだ。
(もっとも、兵力分散の愚を犯さなかった時点で当然被害は減るので
 まったくの無駄なわけはないが)




この様に何かを変えれば当然周りの人間の動きも変わるわけであり、
自分が未来で起こると思っていることが必ずしも起こるとは限らない。




それに何より起こって欲しくない未来は変えたいものなのだから・・・



以上のことから、ヤンは自分が逆行したことだけは
生涯を通して誰にも言うつもりがなかった。




ならば、代わりに自分の理想を語るに当たって
説得力がある事を考えなければならない。

ヤンがこの日まで永い間考えていたのにはそう言った理由があり、
そしてそれが文書にまとまったのがこの日であった。

そしてそれは・・・




Prrrrr・・・

ピッ

『ヤン、すまないがちょっと話したいことがあるんだが今暇か?』

「あぁラップ、私も君に話したいことがあったんだ。
 電話じゃアレなんで部屋に戻ってきてくれないか?」



奇しくもラップがジェシカ達とヤンについて相談した日であったのだ。











後にこの日の事がヤン達を特集する番組に置いてこう評された。





『その時、歴史が動いた』と。




---------------
後書き
文書の内容は次回に。
最後の一文は私の趣味です。

なお作者は説明厨です。
自分の考えを事細かに説明するのが大好きです(死)

そしてここまで読めば判ると思いますが、
本作ではキャラの思考を説明する文がやたらと多いですが、
自重はしません、そういう作品だとあきらめて下さい(爆)

まぁ元々ヤンに関してはすぐに考えにふけるキャラだと思ってますが・・・


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