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No.15817の一覧
[0] 【習作】魔術師、還る(銀英伝 逆行)[斗星](2010/01/24 18:13)
[1] プロローグ 『魔術師還る、ただし士官学校に』[斗星](2010/01/27 17:51)
[2] 第一話 『魔術師、いきなり落第危機』[斗星](2010/01/27 17:50)
[3] 第二話 『魔術師、やる気を出す』[斗星](2010/01/27 17:50)
[4] 第三話 『魔術師、大いに悩む』[斗星](2010/01/27 17:49)
[5] 閑話その1 『目覚めよ、ワイドボーン!』[斗星](2010/01/27 17:49)
[6] 第四話 『魔術師、決断の日』[斗星](2010/01/27 17:56)
[7] 第五話 『魔術師、友を巻き込む』[斗星](2010/01/31 11:45)
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[15817] 第三話 『魔術師、大いに悩む』
Name: 斗星◆52051aa0 ID:876a2a6f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/01/27 17:49
人は何かの犠牲なしに何も得ることはできない。
何かを得るためには同等の代価が必要になる。





第三話 『魔術師、大いに悩む』




その日、ヤンは一人でPCを前に自分の考えをまとめていた。


だが、未来を変えることに若干のやる気を見せたヤンではあったが、
考えれば考えるほどにその困難さに顔を顰め、
彼本来のやる気のなさが顔を出しそうになっていた。


何故ならば未来を知っていると言う事が、
絶対的なアドバンテージとはなり得ないからである。


まず最初に考えたのは如何にして同盟の命脈を永らえさせるかである。
前史では同盟を(ある意味)見捨ててエル・ファシルへ落ち延びたヤンではあるが、
最終的に民主主義の灯を消さない為には同盟の存続は不可欠と言っても良い。


ヤンはかつてイゼルローンを攻略する前にこう言った。


『要するに、私の希望はたかだかこの先何十年かの平和なんだ』


勿論これは本心であり、今も根本が変わることはない。




だが、この時はラインハルトが皇帝となって同盟を侵略する事も、
自由惑星同盟が滅ぶ事も考えていなかった。
(ヤンがこの事を思索したのはアムリッツァの大敗後が始めてである)


何だかんだ言ってもヤンは民主主義の国に生まれた事を誇りに思っており、
一方で専制主義を嫌っている節はある。

何故ならヤンがこの先何十年かの平和を何より優先させるなら、




ヴァーミリオンでラインハルトを討つべきだったのであるから。




この一点だけを省みても、ヤンは自分と周りの者の平穏と同等程度に、
民主主義の精神を尊重していると言えるであろう。


そして民主主義の国家を存続させる上でエル・ファシルやイゼルローンでは如何にも頼りない。


仮に前史に置いて皇帝ラインハルトとの講和を成功させていれば、
彼の生存中は決して約定を違えなかったであろう。


だが、彼の後継者や周りの者はどうであろうか?


例えばオーベルシュタイン等であれば気を見て潰しにかかるのではないか?


そしてその時に対抗できるだけの力が無くてはまずい。
だからこそ同盟の存続が不可欠であると考えるのだ。


そして同盟の存続するための条件はただの2点。

『同盟の世論が不戦に向かうこと』

『同盟の国力を上げること』


現在の同盟の国力では、どう考えてもいずれ経済が崩壊する。

前史の様な軍事的な大敗が無かったとしても、
軍隊は維持するだけで金を食うものである。

同盟が戦争を止めて国力を蓄えなければ同盟の未来は暗いのである。


だが、これこそが如何にも難しい事なのである。

何故ならばこの2点に関しては、
どう考えても軍人(現在は候補生だが)である自分の領分からは外れるからであるからだ。



・ ・・

ヤンは同盟に関してはひとまず置いておいて、別のことを考える。


それは、ラインハルトに関してである。

この先の未来が変わらないとして、
彼が帝国に出現した時に自分はどうすれば良いのだろうか?



ヤンはラインハルトと直接対峙する事となったアスターテ会戦を引き合いに出して考えてみた。


前史では敗戦直前で初めて対峙する事となった二人であるが、
仮にヤンが開始時点である程度の裁量を持てるだけの位置、
具体的には艦隊司令官であったとする。

そこでパストーレとムーアを何とか説得して、
前史とは違って三個艦隊を集中してラインハルトに対するとしよう。


この時点でヤンはラインハルトに勝って万々歳となるだろうか?


答えは否である。


ヤンは決してラインハルトを過小評価しない。

ヴァーミリオンやイゼルローンでの戦いでは何とかなったが、
何れも自分が負けていてもおかしくなかった。


アスターテでパエッタの位置を自分に置き換えたとして、
自分は彼に勝てるのであろうか?


艦隊の数は確かにこちらのが上である。
だが相手はラインハルトであり、
しかも後で知ったことではあるがメルカッツやファーレンハイトも帯同していたらしい。

大してこちらの味方はパストーレとムーアである。

闘士としては決して無能ではないが、幾つか問題がある。


その一つにこの仮定ではヤンと彼らは同格の艦隊司令官だと言う事だ。


ヤンが彼らの艦隊まである程度自由に動かせるのならばラインハルトに勝つ自信もある。
だが、同格でしかも年少のヤンが彼らを差し置いて全体の指揮を取るのは無理であろう。


そこまで考えてヤンは更に重要な事に気づいた。


アスターテ会戦は国防委員長(トリューニヒト)が個人的に武勲をたてさせたい艦隊を選んだと言う事実に。



「何てこった、これじゃ仮定すること自体が無意味じゃないか・・・」



ヤンはすかさず新たに考え直す。



先ほどのような裏事情を抜きに考えれば、
アスターテでのラインハルトの艦隊は2万程度であり、
通常ならば二個艦隊で迎撃に出るのが普通であろう。

2万対2万4千

同数程度の相手な上に味方の艦隊が誰になるかは判らない。
仮にウランフやボロディンでも勝てるだろうか・・・


それにラインハルトはこの時点では自分の大望をなしえていない。
敗戦色が濃くなれば逃げる事もいとわないであろう。

そうなってはこの時点でラインハルトを殺すのは至難の技である。




そう、ラインハルトを打倒するにはアスターテでは早くて遅いのである。






ここまでの考えをまとめた上で、新たに一つの考えが思い浮かぶ。


自分はここまで如何にしてラインハルトを倒すかを前提に考えていたのだが・・・




「皇帝ラインハルトを早いタイミングで殺してしまっては不味いのではないか?」




ヴァーミリオンの時にラインハルトを倒すのが条件と言ったのは
あくまでも彼が皇帝であったからである。


もしもアスターテなどで彼を打倒したとして、
その後には戦争が継続するだけではないのか?


ラインハルトが死ねば門閥貴族は倒れずに、
ゴールデンバウム王朝が続く。
(あるいはロイエンタール辺りが代わって立つ可能性はあるが、
帝国の将官をそこまで詳しく知らないヤンには判らない)



そしてゴールデンバウム王朝と同盟が講和する可能性は低い。



かつてイゼルローンを落とした後に講和を結ぶと言う事を考えたヤンだが、
その結果はより一層の主戦への傾倒であった。


と言うのもまず一つに長年積もりに積もったゴールデンバウム王朝への恨みと言うものがある。

同盟の世論を変える事が重要だと言ったが、
ゴールデンバウム王朝が相手ではまずそれ自体が難しいのである。


だからこそ、ラインハルトを倒してしまうと戦争が継続するのだ。



それに帝国側からすればラインハルトの死は悪夢でしか無いだろう。

かつてユリアンに『戦っている相手国の民衆なんてどうなってもいい、などという考えかただけはしないでくれ』と諭したヤンである。

心情的にはラインハルトに死んで欲しくないと言う部分も多分にあるのだ。






あるいはラインハルトさえ居なければ、
帝国を完全に打倒する事も適うのではとも考えたが・・・

「はぁ、柄じゃないし・・・それに面倒くさそうだ」

疾風ウォルフやロイエンタールらを相手に連戦連勝する事が、
如何に困難であるかを考えて溜め息をつくのであった。



同盟と自分の幸せのために、
同盟を内部から変革し、
ラインハルトを打倒せずに、
ラインハルトと講和をする。

「やれやれ、どうして第二の人生までこうして軍人の思考をしなくてはならないのだか・・・」

自分の理想の困難さにヤンは頭を抱えるばかりであった。


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後書き
最初に記してあります通り、
この話は如何にして同盟が帝国に勝つかを私が考えた物語です。

作中のキャラ(主にヤン)には私と同程度に頭を悩ませて貰う事になります(爆)
そしてヤンの目標は同盟の存続と数十年の平和です。

ラインハルトの生死に関しては賛否あるかと思いますが、
ラインハルトを生かして講和を結ぶのと、
ラインハルトを殺して帝国を打倒するまで戦い続けるのと。
この二択ならばヤンは前者を選ぶと思いこの様になりました。


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