可愛い女の子を二人も侍らせて、きゃっきゃっうふふの楽しげなショッピング。ああ、自分が幸せ過ぎて怖いv・・・・・・なぁんて、思ってた時期が俺にもありました。「明日菜、明日菜っ、これなんてどうえ?」「うーん・・・・・・それならさっきのワンピの方が・・・・・・」「そうけ? んー、結構いい線行ってると思たんやけどなぁ」こんな感じでかれこれ二時間だぜ?しかも、二人ともまだ一着も服を買ってないと来た。正直何が楽しいのか俺にはさっぱりだ!!まぁ、着飾ってる女の子を見るのは楽しいし。試着してた木乃香と明日菜はそりゃあ可愛かったよ?けどさ・・・・・・けどさっ!!イマドキの女の子服なんて分かんない俺は完全に蚊帳の外ですよ!?木乃香よ、何で俺を買い物に誘ったし!!これなら荷物持ちも不要だったくねぇ!?「・・・・・・コタ君? もしかして、退屈やった?」「全然そんなことあらへんで(キリッ)」「ホンマに? 良かったぁ、女の子の買いもんに付き合うん、男の人は結構退屈やって聞いてたから、心配やったんよ」そう言って嬉しそうにはにかむ木乃香。こんな無垢な笑顔を、無為に奪える人間がどこにいると言うのだ。そんな感じで、脊髄反射のようにイイ顔で返事してしまう自分の女好き加減が恨めしい。まぁいいさ。俺の退屈を代償に、木乃香のこんなに可愛い笑顔が見られるなら安いもんだ。・・・・・・俺、将来絶対尻に敷かれるタイプだな。結局、三時間が経過し、店を5件回ったところで、軽くお茶をしようと明日菜が提案するまで、その謎の苦行は続いた。「へぇ~、それじゃ、コタ君が剣道始めたんはせっちゃんと会うてからやったんや?」注文したチャイを啜りながら、木乃香が以外そうな声を上げた。明日菜の提案に乗っ取り、俺たちは現在、駅前のド○ールで茶などしばいている。ちなみに、俺はアイスコーヒー(ブレンド)を明日菜はミルクティーをそれぞれ注文した。昼食も兼ねているので3人ともそれぞれセットで軽食を頼んでたが、正直俺の腹はこんなもんじゃ満たされない。まぁ空気読まないのもアレだし、後でまた何か買い食いでもしよう。「剣道やのうて、剣術な。もともと俺は剣術やのうて体術、格闘技みたいなんやってたからな」「へぇ、それじゃあ何、あんた結構喧嘩とか強いの?」感心したように明日菜が呟いた。「女の子が真っ先に喧嘩て・・・・・・まぁ、そこそこは強いけど、そんな望んではせぇへんよ?」「あはは、そんなの当たり前じゃない」何バカなこと言ってんのよ、と明日菜が呆れたように笑う。・・・・・・この一週間で11件、述べ26名を病院送りにしたことは死んでも言えんな。「それやったら、せっちゃんとはどっちが強いん?」木乃香が核心に触れるような質問を投げかける。毒気の無い顔して、なかなかに答えづらいことを聞いてくるな・・・・・・。「そうやなぁ・・・・・・最後に手合わせしたときは俺が勝ったけど、実際は五分五分っちゅうのが妥当やな」「は!? その桜咲さんて、女の子なんでしょ!?」驚いた声を上げる明日菜。あ、明日菜には刹那のことについて木乃香が軽く説明してくれてたみたいだ。こんなとこでも微妙に原作を歪めているようで心苦しいが、今更そんな細かいことは気にしないようにする。「剣術も体術も大局的に見れば戦術やからな。力の強弱、技術の高低だけで勝負が付く訳とちゃう」それでも、剣術そのものは刹那のが強いけどね。「そ、そういうもんなの? けど、女の子が男子と五分五分に強いって・・・・・・桜咲さんて、どんな屈強な体つきを・・・・・・」「あ、明日菜・・・・・・せっちゃんはかなり可愛いえ」恐らく、刹那に対して結構失礼な想像を膨らませていたであろう明日菜に、木乃香が苦笑いを浮かべながら言った。「そうやで? こう、肌なんか雪みたいに白ぉてな。ホンマ、同し生きもんとは思えへんというか・・・・・・」「やけに褒めるのね。・・・・・・もしかして、その桜咲さんのこと好きだったりして?」「ええ!? コタ君、そうなんっ!?」『!?(がたんっばたんっ)』明日菜の爆弾発言に、木乃香までもが目を爛々と輝かせて身を乗り出してくる。本当にこれくらいの歳の女の子って、そういう話題に目がないというか。しかし、後ろの方の客がやたら騒いでたな。カップでも落としたか?「そりゃあ、好きか嫌いかで言われたら大好きや」『@*$#&%=~~~~~!!!?(がたがたっばたんっっ)』オイオイ!? 本当に大丈夫か後ろの客!? 何か持病の発作でも起こしてるんじゃないのか!?それはさておき、俺の答えに木乃香は顔を真っ赤に、明日菜はきょとんとしてフリーズしていた。「え? ま、マジで?」「キャーーーー!! コタ君、大胆やぁ!」「盛り上がってるところ悪いけど、多分自分らの思とる意味とちゃうからな・・・・・・」もちろん、刹那のことは可愛いと思うし、女性としての魅力も感じてる。事故とはいえ裸を見てしまった時なんて、正直鼻血出そうだったし。しかしまぁ、彼女は今、己の腕を磨くことにいっぱいいっぱいで、色恋なんて目にも入ってないだろう。俺のことも、修行相手とは認識していても、そういう対象として見たことはないんじゃなかろうか?第一、俺自身彼女と剣を交え過ぎて、今までそういう関係になれたら、なんて想像すらしたこと無かったからな。「何よそれ。友達として好きってこと?」「まぁ、そういうことやな。というか、俺は可愛い女の子はすべからく大好きやで?」「コタ君・・・・・・それ多分、堂々と言うこととちゃうと思うえ?」「そうか? ともかく、刹那のことは可愛いと思うけど、それ以上に尊敬やら感謝やらの気持ちが、今は多いっちゅうのが本音や」「ふぅん・・・・・・幼馴染ってそういうもんなのかしら?」「さぁな。けどま、刹那のこと大好きってのは本当やな。あいつほど、今の俺に気心知れたダチはおらへん」『・・・・・・』それは間違いなく、俺の本心から出た言葉だった。俺がここまで強くなれたのも、故郷を失った後、自暴自棄にもならず、自身の弱さと向き合えたのも、常に直向きな彼女と出逢えたおかげだ。照れ臭くて、なかなか本人には言えないが、刹那には感謝してもし足りない。お、そう言えば後ろの客、急に落ち着いたな。やっぱ持病か何かだったのか?「ほな、そろそろ出よか? あんまり長居しても、お店の人に悪いえ?」「それもそうね。面白い話も聞けたし、案外あんたがついてきたの正解だったかも」「って、やっぱりついて来るの反対やったんかい・・・・・・」がやがやと、明日菜と不毛な良い争いをしながら、俺たちは店を後にするのだった。「さて、と・・・・・・結構まだ時間あるわね」「ホンマやな。採寸10分くらいで終わってもうたもんな」明日菜の言う通り、時計の針はまだ2時を回ったばかりで日も高い。これからまたあの買い物地獄に付き合わされるかと思うと正直鬱だ。・・・・・・離脱するなら今しかないか?なんて、卑怯なことを考えていた罰が当たったのかも知れない。『そっちからぶつかって来たんじゃん!?』そんな、悲鳴染みた女の子の声が聞こえて来たのは。「? 何やろ? 大きい声やなぁ」「こんな往来で、誰か喧嘩でもしてんのかしら?」「・・・・・・」おおおい、マジかよ?よりによって、次やらかしたらOSHIOKI☆決定だというのに、こんなときに荒事には関わりたくないぞ?けど今の声・・・・・・聞き覚えがあったんだよなぁ。気のせいだと良いんだけど、こういうときの俺の悪寒って当たるからなぁ・・・・・・。「うーん、何か女の子の声してたし、一応警察とか呼んだ方がええんかな?」「先にどんな様子か確認した方が良くない?」「それもそやね」「・・・・・・うそん」ほるぅああああっ!!何か、俺が知らぬ間に見に行ってみよう☆的な流れになってるし!!本当、次喧嘩したらヤバいんだって!!しかし、明日菜と木乃香を放っておくわけにもいかず、俺は自らの保身も許されないまま、二人の後を追うしかなかった。「あ、あそこみたい」明日菜が指差した方を見ると、そこには俺たちと同世代と思しき女の子が、性質の悪そうな男4人と何やら良い争いを繰り広げていた。というか、やっぱり俺の悪寒は的中してたか・・・・・・。よりによって絡まれてる4人、バッチリネギクラスのメンバーじゃねぇか・・・・・・。背の高いポニーテールは、大河内アキラ。活発そうなサイドテールは、明石祐奈。色素の薄い髪でおどおどしてるのは、和泉亜子。同じように涙目になってるのは、佐々木まき絵で間違いないだろう。よりにもよってこんなときに絡まれてんじゃねぇよ・・・・・・。まぁ彼女たちに非は無いんでしょうがね。「だから、お嬢ちゃんたちがぶつかってきたのが悪いんだろ?」「そうそう。大人しく付いてくるだけで許してやるってんだから、感謝して欲しいくらいだよな?」あー・・・・・・随分面倒臭い手合いに絡まれたな。普通にナンパしてくる奴らより、ああいう輩の方がしつこいんだよなぁ。頑張って祐奈が食ってかかってるけど、あれじゃ暖簾に腕押しだろう。「ああもう! 見てらんない! 木乃香、ここで待ってて!! あいつらの鼻っ柱へし折って来るから!!」「あ、明日菜!! 危ないえ!!」木乃香の制止も聞かずに、ナンパ4人衆にずかずかと突貫しようとする明日菜。はぁ・・・・・・やっぱりこうなるわな。俺は、彼女の手を掴んで、無理やりに引き留めることにする。「待て待て。ちょうど荒事向きなんがここにおるんや。ここは大人しゅう俺に任せとき」「小太郎・・・・・・」「それに、可愛い顔に傷でも付いたら大事や」「んなっ!? ば、バカなこと言っていないで、行くならさっさと行って来なさいよ!?」「あいよ」耳まで真っ赤にして大声を上げる明日菜。今ので観衆の何人かはこっちに視線を奪われてる。しかし・・・・・・くくっ、やっぱりからかい甲斐のあるやつだ。さぁて、そいじゃあさくっと、運動部4人組を助けるとしますかね?「なぁ、兄ちゃん達」「あん? 何だてめぇ」「んー、通りすがりの中学生ってとこやな」厳密に言えば、まだ小学生ですけどー。まぁ俺の身長じゃあそうは思われないだろ。そして予想通り、こっちに敵意全開の視線をぶつけて来る4人衆。タカミチの言う通り、俺一人なら逃げ切ることは容易い。というか、こんな恰好だけの一般人になんぞ一生掛かっても追いつかれない自信がある。しかし、彼女たちを助けるとなると話は別だ。かといって、話し合いで解決できそうな手合いじゃないしなぁ・・・・・・。気は進まないけど、あの手で行くしかないか。俺は一番先頭にいた祐奈に目配せをした。「え?」しっしっ、と追っ払うかのように手を振る。もっともこの場合、その行動に込められてる意味は『俺のことは気にせんと、さっさと逃げぇや』だったりする。伝わってくれていることを信じながら、俺は男たちに向き直った。「別に立ち聞きする気はなかってんけど、たまたま聞こえてな。兄ちゃん達、この子らにぶつかられて頭に来とるんやろ?」「何だ、分かってんじゃねぇか? だったら、さっさと失せな!!」「まぁまぁ、落ち着きぃ。せやったら、この子らのことは見逃してくれへん?」「あぁん!? 何トチ狂ったこと言ってやがる!?」「その変わりと言っちゃあ何やけど、俺のこと好きなだけ殴ってもらって構へんから」一般人に殴られたって、大したダメージは無いしな。よしんば口の中を切ったとしても、翌日には治るだろ。それに、俺から手を出さなければ、喧嘩じゃないしな。タカミチからお咎めを受けることはないだろう。あとは、こいつらが食いついてくれるかどうかという、ギャンブルみたいな作戦だが・・・・・・。男たちは一様にいやらしい笑みを浮かべていた。「はっ! 坊主、いい度胸してるじゃねぇか?」「本当に好きなだけ殴っていいんだな?」「さぁて、何発もつかな?」「ぎゃははっ! ちゃんと俺まで回せよ?」何だ、単に何かしらでストレスを発散したいだけの手合いか。俺は安堵に胸を撫で下ろし、4人を庇うようにして割り込むと両手を広げた。公衆の面前で殴られるのは抵抗があったが、それで彼女たちが助かるなら安いものだろう。「よっしゃ、どっからでもええで?」ぱっと見では分からない程度に、気で全身を強化し終えると、俺は殺気立つ男たちを促した。「はん、肝が据わってんじゃねぇか? ほんじゃ、俺から行く、ぜっ!!」―――――ばきっ「・・・・・・」・・・・・・なんじゃこりゃ?放たれた男の拳は、ものの見事に俺の顎へと吸い込まれて行った。うん、直撃だった、はずだ。だと言うのに、何だこのダメージの無さは!?別に気で強化する必要なかったんじゃねぇか!?こいつら本当に恰好だけのヤンキーかよ・・・・・・。ちょっと殺気ぶつけるだけで『お話合い』になったんじゃなかろうかと、一瞬後悔したがもう遅い。男たちは次々に俺へと拳やら蹴りやらを見舞ってきた。―――――どかっ、ばきっ、ばきっ「おっ・・・・・・あたっ・・・・・・ととっ」対して痛くはないが、この程度の強化じゃ慣性までは誤魔化せないか。俺は男たちの打撃によって、前後左右に身体を揺さぶられていた。・・・・・・これって、傍から見てたら、かなり痛々しそうな光景になってるんではなかろうか?「も、もう止めたってっ!!」やっぱりですか。相当痛々しそうに見えたらしく、両目に涙いっぱい溜めた亜子が俺を殴っていた男の一人の腕にしがみ付いた。あーあ、逃げろって言ったのに。君らが逃げてくれないと、俺殴られ損ですよ?まぁ、これだけ殴れば、彼らも気が済んだことでしょう。そろそろ一言謝れば許してもらえ・・・・・・「うっせぇ!! 引っ込んでろっ!!」―――――どんっ「きゃっ!?」・・・・・・なんて思っていたが止めだ。この野郎、今何をしやがった?自分より一回り以上小さい女、しかも無抵抗な人間に手を上げやがっただと?幸い、亜子は大した外傷はないようだが、尻もちをついて痛そうにお尻をさすっていた。アキラがそれを助け起こそうとしたところまで視界の隅で確認して、俺の思考は完全に真っ赤になっていた。人前だということも忘れて、瞬動を使い、亜子を突き飛ばした男の鼻先に移動する。「お前っ!? いつのまに゛っ!!!?」男が驚愕のあまり何かを叫ぼうとしていたが、それを最後まで聞かずに、その暑苦しい顔面を鷲掴みにする。「よぉ自分・・・・・・この世で一番大事にせなあかんもんって何か知っとるか?」「ふ、ふがっ!?」俺の問い掛けに、男は苦しそうに呻くだけだった。ああ、そう言えば、俺が口ごと顔を掴んでるんだったか。まぁ、そんなことどうでもいい。こいつには、身体に叩きこんでおく必要がありそうだからな。「それはな・・・・・・可愛い女の子や。二度と忘れんよお・・・・・・身体に刻み込んどけ」―――――ぎりぎりぎりぎりぎりっ「ぎ、ぎゃああああああああっ・・・・・・!!!?」俺が指に力を入れると、男は10秒と持たずに口から泡を吹いて意識を手放してしまった。まぁ、頭蓋骨にヒビが入るほどはやってないし、痛みに精神が耐えられなかったんだろう。本当に外見だけの野郎だったか。俺は動かなくなった男を放り捨てると、残りの連中に向き直った。女に手を上げるような野郎の連れだ。最早容赦してやる謂れはなかろう。「お、おいっ!? トシ君!?」「しゃ、洒落になんねぇぞっ!? あのガキ、今何しやがった!?」「何慌てとんのん? ちょこっとその栄養の足りてなさそうな頭をマッサージしたっただけやん?」そう言って、口元を釣り上げる俺。頭の中では、既に数十に及ぶ抹殺方法が繰り広げられていた。しかしながら、タカミチに釘を刺されているしな。ここは一思いにマウントに沈めてやるとしよう。ただし・・・・・・二度と悪さをする気が起きないような、エグい一撃でな。「お、おいっ!? こ、このガキ、もしかしてっ!?」「あ、ああ、学ランに長髪、オマケに殺人鬼みたいな目つき!!」「最近噂になってる、30人近い不良を一週間足らずで病院送りにしたっていう、麻帆中の狂犬っ・・・・・・!?」男たちが何か喚いていたが、最早俺の耳には届いていなかった。「―――――さぁ、OSHIOKIの時間や・・・・・・」『『『ぎ、ぎゃああああああああああああああああっ・・・・・・!!!!!?』』』白昼の街中に、野太い男たちの断末魔が響き渡った。「ふんっ、口ほどにも無いわ」所要時間5秒で残りの3人を叩きのめして、俺はぱんぱんっ、と手を払った。こっちが穏便に済ませてやろうと思ったら、調子に乗りやがって。ぴくぴく、と断続的に痙攣を繰り返す死に体の男どもを尻目に、俺は亜子へと慌てて駆け寄った。「自分、大丈夫か!? 怪我とかしてへん!?」「え? えぇっ!? う、ウチは大丈夫ですけどっ!?」「あ、あなたの方こそ、その、大丈夫なんですか?」亜子を心配する俺に対して、アキラが珍しい生き物でも見るような目でそう言った。まぁあれだけ殴られてりゃ当然の疑問だな。「おう。あんなへなちょこパンチ何発喰らっても平気や」俺は会心の笑みでそう答えてやった。いや、でないと俺相当目つき悪いらしいから怖がられそうだしね。その心遣いが通じたかは定かでないが、亜子はほっと、安堵の溜息を零していた。「ホンマに、危ないところを助けてもろて、何てお礼を言ってええか・・・・・・」「いやいや、大したことはしてへんよ?」「そんなことないですよ。・・・・・・本当にありがとうございました」そう言って二人から頭を下げられる。な、何んか照れくさいぞ? 喧嘩して人に褒められるのって変な感じだ。「お兄さん強いねー? 格闘技とかしてるの???」「いや、本当に凄かったわ。最後の方とか、何やったのか全然分かんなかったし」続いてまき絵と祐奈が俺の技に賞賛を浴びせて来る。いやぁ、一般人に弱冠反則臭い技使ったんで正直後味はよろしくないんですけどね。あとまき絵や、俺はお兄さんやのうて同級生や。「こ、小太郎っ!!」「コタ君っ!!」4人に囲まれて、わいわい言ってると、慌てた様子で明日菜と木乃香が駆け寄ってきた。ああ、そう言えば遠巻きにこいつらも見てたんだったか。余計な心配を掛けちまったな・・・・・・。「あ、あ、あんたっ!? 何けろっとしてんのよ!?」「大丈夫かえ!? 痛いとこあらへん!? どこ怪我したん!?」「ちょっ、ちょっ、ちょ!? 落ち着けや二人とも!! ほら見てみぃ!! 俺は怪我一つしとらん、無傷や!!」「う、嘘!? だって、あんなに殴られてたのに・・・・・・」「・・・・・・ホンマや。傷どころか、赤くすらなってへんよ?」これで安心して貰えただろうか?最初に殴られても平気ってことは言っておくべきだったかな?「明日菜と木乃香じゃん? この強い兄ちゃん、もしかして二人の連れだった?」二人を見た祐奈が、そんなあっけらかんとしたことを聞いた。「い、一応・・・・・・私たちもこんなに強いなんて知らなかったけど」「コタ君、凄かったえ! 正義の味方みたいやったよ!!」「マジでか!?」やったね☆ これで悪人から卒業だな!!・・・・・・目つきが変わった訳じゃございませんが。「あ、それから、こいつこれでも私たちと同級生だから」「ええっ!? そ、そうだったの? てっきり年上かと思ってたよ!!」そう言われて、まき絵が驚きの声を上げる。というか、運動部4人組は全員俺がタメだとは思ってなかったらしい。皆一様に目を点にしていた。「今年から麻帆中男子部に通う、犬上 小太郎や。 よろしゅうな」俺がそう名乗ると、4人娘も一人ずつ丁寧に自己紹介をしてくれた。うんうん、やっぱ第一印象って大事ね。明日菜の時とは違って、4人は皆俺のことをヒーローを見るかのような熱い視線で見てくれていた。ちょ、ちょっと照れるぜっ。「それはそうと、小太郎。あんなに強いなら、何で最初から本気出さなかったのよ?」「そやそや。うちら、心臓が止まるかと思うたんやえ?」明日菜がもっともな疑問を口にして、木乃香がそれに便乗する。うーむ、それは本当に申し訳ないことをしたな・・・・・・。「いやぁ、最初はやり返すつもりなかってんけどな。亜子がこかされたん見てカチンと来てもうた」「そ、そそそんな、いきなり呼び捨てやなんてっ!?」「あ、スマン。嫌やったか?」「そ、そんなことっ、あれへんけど・・・・・・」「そら良かったわ。あ、皆も俺のこと小太郎て呼んでんか」「こら、話が逸れたわよ? 何でやり返す気がなかったのよ?」おお、明日菜め、バカレッドの癖に意外としっかりしてんじゃないか。と言う訳で、俺は明日菜に喧嘩をしたくなかった事情を話そうとして・・・・・・―――――ぞくり「―――――っっっ!?」見動きが取れなくなった。急に動かなくなった俺を、明日菜たちが訝しげな顔で覗き込む。今まで感じたことの無い恐怖に、全身から滝のような汗が噴き出していた。じょ、冗談じゃない!! 俺は手合わせとは言え、こんな化け者を相手にしていたのか!?「ちょっと? どうしたのよ小太郎? な、何か凄い汗だけど・・・・・・」「あ、あかん・・・・・・もうおしまいや・・・・・・」こいつらは、このプレッシャーに何も感じないと言うのか?それもそのはず。ヤツは、俺一人を標的に、この身も凍るような殺気をぶつけているのだから。ぎぎぎ、と、油切れのロボットのような動きで後ろを振り返ると、そこにはスーツ姿の鬼神が立っていた。「た、高畑先生っ!?」どうやら明日菜も彼の存在に気が付いたらしい。しかし、もう一つ気が付いてほしい。彼の纏っている雰囲気が、平時とは比べ物にならないほどに禍々しいことに!!「やぁ明日菜君に皆。それに小太郎君も・・・・・・5時間ぶりってところかな?」「そ、そうです、ね・・・・・・」「君が麻帆中の学ランを着ていてくれて助かったよ。目撃した人が、学校に連絡をくれてね」タカミチの口調は穏やかだったが、そこに込められた闘気は隠しようがないほどに膨れ上がっていて、彼が言葉を発するたびに、バカみたいな気がバンバンと俺に突き刺さるようだった。「さて小太郎君? 僕はさっき、君になんて言ったかな?」「え、ええと・・・・・・見逃すのは、今回、限り・・・・・・?」「正解だ。じゃあ、僕が何を言いたいか、分かるよね?」「あ、あはははは・・・・・・情状酌量の余地は?」「無い」ぐわしっ、と、タカミチは俺の学ランの詰襟部分を掴むと、ずるずると連行を開始した。「ご、後生や!! 堪忍してくれぇっ!!!!」「男が言い訳するのは見苦しいよ? 大人しく罰を受けること」「い、嫌やぁ!! 封印処置は絶対に嫌やぁっ!!!!」タカミチは、恐らく咸卦法でも使っているのだろう。俺が暴れるのをものとせず、ずんずんと突き進んでいた。「―――――だ、誰かっ、助けてくれえええええええええええええっ!!!!!!」白昼の街中に、二度目の断末魔が響き渡ったのだった。「・・・・・・ちくせう」―――――ぶちっ、ぶちっ俺は一人ごちながらも、せっせっとグラウンドの草抜きに精を出すのだった。あの後、再び女子部の生徒指導室に連行された俺だったが、明日菜や木乃香、運動部4人組が事情を説明しに来てくれたおかげで、どうにか封印処置と反省文は免れた。しかしながら、約束は約束ということで、こうして一人第3グランドの草抜きを命じられてしまったわけだが・・・・・・。「こんなん一人で終わるわけあれへんやろ・・・・・・」広すぎるわ!!あーあ、絶対日暮れまでに間に合わねぇ・・・・・・。既に時刻は4時を回っており、日は完全に西へと傾きつつあった。―――――ぐうぅぅぅ胃袋までが抗議の声を上げ始めた。そういえば、買い食いしようと思ってたんだったか。あんな騒ぎになったせいで、完っ全に忘れてたわ。はぁ~~~~・・・・・・何で俺がこんな目に・・・・・・。「よぉ。えらい景気の悪い面しとんな?」「んあ?」何か言った覚えのある台詞で呼びかけられて振り返ると、そこには悪戯が成功した子どものように微笑む木乃香の姿があった。なして?「どないしたんや? ぼちぼち寮の門限とちゃうかったか?」「えへへ、コタ君、お昼少なかったみたいやから、お腹空かしてへんかなぁ思て。ほい、差し入れ」そう言って、木乃香が差し出してくれたのは、綺麗に握られたおにぎりだった。―――――ぐうぅぅぅ再び、俺の腹が自己主張を開始する。そんなことがどうでもいいくらいに、俺の胸はもう感動で一杯だった。「こ、木乃香~~~~~!!」感極まって木乃香に抱きつこうとする俺、その瞬間だった。「調子に乗るなっ!!」「調子に乗らないでくださいっ!!」―――――どかっ「ぐぇっ!?」息ぴったりのダブルドロップキックが、ノーガードだった俺の脇腹に突き刺さったのは。「な、何や!? 敵襲かっ!?」「何が敵襲よ!? どさくさに紛れて木乃香に何しようとしてんのよっ!?」「言っておいたはずですが? お嬢様に手を出したら、どうなるかと・・・・・・」「あ、明日菜に、刹那まで!? ど、どないしたんや!?」俺は夢でも見てると言うのか!?差し入れを持ってきてくれた木乃香はともかく、彼女たちにはこんなところに用は無いはずなのに。「ま、まぁ、あんたをけしかけたことは、私にも責任があるからね。一人でこんなだだっ広いグランドの草抜きは可哀そうだと思ってさ」「ま、まさか・・・・・・手伝ってくれるんか!?」「な、何よ? 悪い?」大歓迎です!!前世から数えて30年。果たして女の子にこんなに優しくして貰ったことがあっただろうか。もう俺、泣いてもいいんじゃね?「あなたがああいう行動に出ると分かっていて、止められなかった私にも落ち度がありますからね。少しくらい助太刀しますよ」「せ、刹那ぁ・・・・・・」っていうか、あなたやっぱり木乃香のことスト―キングしてたんですね。「あ、あなたが桜咲さん?」「・・・・・・(ぺこっ)」刹那は静かにお辞儀をすると、俺たちとは反対側の隅へと向かっていってしまった。「な、何か、怖そうな人だったわね・・・・・・」「き、気を取り直して、さくっと終わらせてまおう!!」俺は慌てて、刹那のフォローをしておく。まぁそれ以上に、さっさと終わらせて、木乃香のおにぎりに有りつきたいというのが本音だった。「よーし、ウチも手伝うえ。さっさと終わらせんと門限に遅れてまうしな」「それもそうね。それじゃあ、早速・・・・・・」『おーい!! 小太郎ー!! 明日菜―!! 木乃香ー!!』明日菜が手近な草に手を伸ばした瞬間、少し遠くから聞き覚えのある元気な声が響いた。「祐奈? それに、まき絵やアキラ、亜子まで!?」「おーう!! やっとるね? アタシらも助っ人に来たよ!」「えへへっ、皆でやった方がきっと早く終わるよ?」「もとはと言えば、私たちを助けてくれた所為だし、私たちが手伝うのは当然だと思って」「え、えと、よろしゅうお願いしますっ!!」・・・・・・何て、良い子たちなんだ。あ、あれ? 変だな? 悲しくないのに、おじさん、涙が出てきちゃったよ・・・・・・。「・・・・・・(ふるふるふるふる)」「コタ君? どないしたん? どっか具合でも悪いん?」「えぇっ!? こ、小太郎君、やっぱりどっか痛めてたんっ!?」「た、たいへんっ! 早く保健室にっ!?」俯いて黙り込んでいると、木乃香と亜子、アキラが心配そうに声を上げた。もう・・・・・・もう、俺の胸は君たちへの愛でいっぱいだ!!!!「・・・・・・みんなっ!! 俺、みんなのことが大好きやあっ!!!!」―――――ぴょーーーーんっ「だからっ!! 調子に乗るなっつってんでしょうがっ!!!!」―――――べきぃっ「ぎゃふんっ!!!?」「あははっ、コタ君変な声や」あ、明日菜・・・・・・良い蹴りだったぜ。そ、その足ならきっと、世界も狙える・・・・・・。地面とキスする俺を見て、皆が楽しそうに笑い声を上げた。もちろん、顔は少し痛んだが、それでも俺は、どこか満ち足りた気分になって、釣られたように笑みを浮かべていた。SIDE Takamichi......「やれやれ・・・・・・手伝って貰ったら、罰にならないんだけどね」がやがやと、楽しそうに談笑する彼らを遠目に見つめながら、僕は胸ポケットに入れてあった箱から、煙草を一本取り出した。「まぁ、今回は止むに止まれぬ事情があったようだし、これで大目に見てあげるとしよう」―――――しゅぼっふぅ・・・・・・しかし、ああやって仲間と笑っている姿を見ると、ナギ、本当にあなたを思い出しますよ。何が特別と言う訳でもないのに、人を惹きつけて已まなかったあの人。そんなあの人に、彼はどこか分からないけれど、良く似ている。そして、誰かのために自分の身を犠牲にしようとする、そんなところまで。「ふぅ・・・・・・早く君に会わせてあげたいよ、ネギ君・・・・・・」吐き出した煙は、すぐに風に揉まれて見えなくなってしまった。SIDE Takamichi OUT......あとがききょ、今日もなんとか日付変更線またがずに済んだんDAZE☆・・・・・・さ、さすがに焦った;つーか、今回の話は長過ぎた;自分でも途中何が言いたかったのかわからなかったし;あ、でも今回は女の子たくさん出たよ!!とくに亜子たんはお気に入りだから超嬉しいv亜子たんマジ亜子たん!!ちなみに、次回からは再びちょっとシリアス、というかバトル要素含むお話になります。ネギ君の出番?・・・・・・作者だって早くネギ書きたいよ!!(orzと、いうわけで、また次回。次の更新も、サービスサービスぅ☆ノシ