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☆異光を放つライトセイバー《久遠の落日》(2d6)
それは水晶で出来ている
それは(2d6)のダメージを与える(貫通率100%)
それは首狩りを発動する****
それは筋力を維持する
それは感覚を維持する
それは魅力を維持する
それは剣術への理解を深める**
それは槍術への理解を深める*
それは周りの時間を遅くする***
それは稀に時を止める*****+
それは魔力を12上げる
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永遠なる光子銃《終わりの無双》(2d20+11)(3)
それはエーテルで出来ている
それは攻撃修正に3を加え(2d20+11)のダメージを与える(貫通率5%)
それは炎では燃えない
それは酸では錆びない
それは魔法属性の追加ダメージを与える*****+
それは耐久を維持する
それは感覚を維持する
それは魔力を維持する
それは魅力を維持する
それは射撃への理解を深める*
それは体力回復を強化する**
それはマナ回復を強化する*
それは周りの時間を遅くする*
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☆赤く煌くパワードスーツ《紫金のうめき》[12,81]
それはルビーで出来ている
それはDVを12あげ、PVを81上昇させる
それは炎では燃えない
それは酸では錆びない
それは筋力を維持する
それは耐久を維持する
それは感覚を維持する
それは炎への耐性を強める*****+
それは冷気への耐性を強める**
それは雷への耐性を強める****
それは盲目を無効化する
それは毒を無効化する
それは麻痺を無効化する
それは筋力を31上げる
それは生命を3上げる
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チートな商品に目を通しつつ、考える。
ミュレンさんとの付き合いは短い。
何しろ会ったのは昨日であるのだし、ここでミュレンさんを渡したところでそれほど……いやいや待て。
会ったのは確かに昨日だけれど、こんな風に一緒に潜ってみないかと誘われたのは彼女からの好意であるし、迷宮への心得なんかも教えてもらった。
そんな親切にしてくれた彼女へと悪意溢れる行為で返すのは如何なものだろう。
しかし、この武具は欲しい。なんというかこうジェダイなりマスターチーフなり、そんな武具を身につけるのは男の浪漫であって。
にしてもライトセイバーやらレーザーガンやらパワードスーツやらそんなSFチックな装備品もあるのだなぁと感動すること暫し。
「少しお聞きしたいのですが」
俺は考えつつ言った。
「何かね?」
「この商品とミュレンさん……俺の仲間は釣り合ってるのですか?」
「さて、そうだな」
商売の神が言った。
「お前の仲間の冒険者としての強さ、純粋な能力、受けているギフト、それに魅力の高さ。性別。様々な要因はあるが―――」
口元を歪め、続けた。
「私がそこに何らかの価値を見出したとして、それがお前の価値と結びつくとは限るまい。
これは取引だ。もし私が提示した商品がお前の持つ商品に比べ魅力的に思うのなら、応じるのは吝かではないと思うのだが」
「確かに」
俺は頷いた。言っていることは悪魔ちっくな誘いではある。しかし、蜜はとても甘そうだ。
もし渡したとしてどうなるか。俺は考える。
ミュレンさんの行方を尋ねられるかもしれない。例えばあの可愛らしい主教様はミュレンさんと俺が今日一緒に潜ったことを知っている。
それを問い詰められたら……いや、考えすぎかな。
第一、俺は職に就いたばかりの一般人であったのだし、そんな俺がミュレンさんをどうこうできるとかは思われないだろう。
別れた後は知りませんと、とぼければ、特に何というわけでもなく誤魔化すことができそうではある。
そんな事を考えつつ、俺は尋ねた。
「ちなみにこの首輪の使い方は? 見た感じでは、止め具とかついてなさそうですが」
「使い方は簡単だ。相手の首に掛け締まれと思うだけで良い」
商売の神が言った。
「成程、簡単ですね」
俺は頷いた。それならちょっと冗談めかせば掛けることもそう難しいことでもない。
にしてもこんなことを考えてる自分は我ながら酷いやつだなとかそんなことをふと思いつつ。
「もし失敗した場合は? 例えば首輪を取り上げられてしまったり、誤って紛失してしまった場合とか」
「有り得る事柄ではあるな。その場合はその首輪の補填分として、我が元で働いてもらうことになるが」
「働く……ですか。ちなみにどのような?」
「そう難しいことでもない」
ニヤリと笑って商売の神が言った。
「私が渡す商品をお前に売ってきてもらうだけだ」
そこには何処と無く不安めいた要素があったのだけれど。
しかしその条件は特にデメリットを感じさせないものであって。
「どうかね? 決して悪い条件ではないと思うのだが」
商売の神が言った。
俺は頷いた。
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クエスト 仲間売買 を受注しました。
武器商人の神ドルーグから取引を持ちかけられた。
もしも今現在組んでいる仲間に支配の首輪を装備させ、
引き渡してくれるなら提示されている商品の一つを褒章として貰えるという。
このクエストを受けますか? Y/N
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確かにその通りである。
条件は破格と言ってもいいくらいだ。
『Y』へと俺は指を近づけ、
「だが断る」
そういつかは言ってみたかった台詞を言って、俺は『N』を押した。
迷宮世界
「ふむ」
商売の神が唸った。
「理由を聞いても?」
「いや、そのですね」
俺は苦笑しながら商売の神へと言った。
「実は俺はこの世界にきて日が浅いのですが」
そう言いつつ、商売の神を見る。赤く光る眼光が俺を射抜く。俺は目を逸らして続けた。
「……で、その、ここまでの案内だとか全部ミュレンさんに任せてたのですよ。
まぁ帰る方角は特に問題ないと思いますけど、ここまで借りた馬で来たわけなのでして。
で、その借りた馬をどこに返せばいいのかも良くわかりませんし、何より一番重要なのは」
コホンと俺は気まずげに咳払いをして、言った。
「俺馬に乗れないので、ここまでミュレンさんが馬を操ってきたわけで。……で、ミュレンさんを渡しちゃうと…その…帰るの面倒になるなって」
「クッ」
と、商売の神が笑った。
「クククッ。成程。確かにそれは由々しき問題だな」
俺は曖昧な笑みで応じた。特に面白いことを言ったつもりはなかったのだけど。
いやまぁ、大体ああいう風に親切にしてくれた人を売るとかそんな非道な真似ができる筈もないのであって。
ほんのちょっとだけ心が揺れたのもまた事実ではあるけれど。
「仕方あるまい。君と私の商品の価値観が同じであったことは少し残念ではあるが」
笑いを抑え、特に残念そうでもなく商売の神は言った。
いや別にミュレンさんの方が商品価値が高いとかそういうつもりで断ったわけではないのだが。
そんなことを思いつつ、
「では取引は終わりだ。次に遭うことを楽しみにしているよ」
そう言って右手をあげ、
「おっと忘れていた」
そんな言葉と共に、俺の持っていた支配の首輪はスルリと手から飛び出し、「うむ」と商売の神が呟き、ピタリと空中に静止する。
「にしてもお前には中々センスがある。これも何かの縁だ。我が信徒となり商売の片棒を担ってみる気はないかね?
承諾してもらえるならこの支配の首輪は君に差し上げるが」
商売には人手が要るからな、と商売の神。
俺は苦笑しつつ、何度か言った台詞を言おうとして、待てよ、と思い直す。
神を信仰するというのは特にデメリットがあるわけでは無い。
だとするならばここは承諾し、あの首輪を得ておいた方がいいのではないか。
そんなことを考えつつ、
「ギフトや恩恵など、詳しい概要をお聞きしても?」
俺は尋ねた。
「そうこなくては」
若干嬉しそうに商売の神が言った。
* * *
「えーじさん」
ふと呼びかけられた声に、はっと意識を取り戻す。
「もう、焦ったじゃないですか。結構探し回ったんですからね」
気がつくと、俺は先ほどの部屋に戻っていた。
燭台に灯る火が揺らめき、目の前には何時の間にやらミュレンさんがちょっと怒った顔でこちらを見ている。
「すいません」
俺はもーっていう顔で文句を言うミュレンさんを少し可愛いなと思いつつ謝った。
「いえ、こちらこそ交信の邪魔をしてすいません。……ご無事で何よりでした」
そしてぐるりと見渡す。
「うん、でもこんな場所を見つけたえーじさんの手柄に免じて帳消しにしますね」
「手柄ですか」
俺は苦笑した。
「お手柄です。隠し部屋を含んだ地図の奉納点は通常と比べて随分高くなるので」
嬉しそうに弾んだ声でミュレンさんが言った。
「あれ?そういえばミュレンさんはここすぐわかったんですか?」
まぁ、真っ暗な中での明かりは結構目立つものなのかもしれないが。
「いえ。えーじさんがここに居ましたから」
と、ミュレンさん。
「ナヴィ様の恩恵を得ていると仲間の位置も地図で教えてくれるんですよー。探索済みの場所限定ですけど。
実を言うと、私ちょっとだけぐるぐる回っちゃいました。えーじさんの印は出ているのにその場所に行けずーって感じで」
そんな茶化したようなミュレンさんの言葉に、俺はあはっと笑ってしまう。
うん、やっぱりこんな人を売るとかできる筈もない。しかも美人だし。
ふと、考えてみればナヴィの恩恵を得ていた方がよかったかもしれないなとちょっとだけ思う。
「そういえば」
俺は尋ねた。
「ナヴィ神の恩恵ってどんな感じなのですか?」
「あら、えーじさん興味が?」
少しだけ嬉しそうにミュレンさん。
「えっと、まぁ」
俺は目を伏せつつ答える。
「そうですね。あのー、能力への恩恵はえと習得と感覚があがるだけですけど」
ミュレンさんは一指し指で軽く虚空を叩きながら言った。
「ギフトとして得られるスキルは素晴らしいものがありますよ。
地図の詳細データや逸れてしまった時の仲間への位置。迷宮や食事処や施設などの条件検索。
えと、後は……あ、自分の能力に応じた迷宮の検索なんてのも出来るみたいですね」
「随分と便利なのですね」
迷宮内だけでなく、日常生活にも悪くなさそうだなと思うこと暫し。
「便利です。後、信仰が深くなると迷宮内の階段の位置や敵、それにアイテムの位置もわかるらしいのですけど……
私はまだそこまでは至っていません」
「成程」
俺は感心しつつ頷く。予想以上に便利なスキルを得られる神様だったようで。
「で、どうですか?」
ミュレンさんが尋ねる。
「そうですね。もう少し考えます」
俺は答えた。流石に今さっき信仰する神を決めたとは言えないわけで。
にしてもなんでしっぽが可愛い美人の女神様じゃなくて、あんな神を信仰してしまったのかって決まってるよな。
俺は支配の首輪のことを思い浮かべた。
「しかしドルーグの祭壇とは……この迷宮が踏破済みであることが少し惜しいです」
と、少し残念そうにミュレンさん。
「どうしてですか?」
と、俺は尋ねた。
「ドルーグ神の扱う商品は強力なものが多いと聞きます。高いことでも有名ですが」
僅かに首を傾げ、
「その強力な武具を得るために熟練の冒険者、あるいは大金持ちなんかが交信できる場を求めていることが多いのですよ。
その情報を売りつければ多少のお金にはなりますし」
成程、と俺は頷く。
「ただ残念なことにこの迷宮はもう、入り口は消えているでしょうね」
「それじゃ入れないわけだ……って俺達はどうやって帰るんだ?」
そんな俺の驚いた声に、
「それ、えーじさんの素ですか? 不思議と男言葉合いますね」
くすりと笑いながらミュレンさんが言った。
「どうやって帰るんですか?」
俺は言い直した。
「言い直さなくても」
ミュレンさんが笑った。
「大丈夫です。もう入れないというだけで、戻ることはちゃんとできますから」
そういうものなのかと俺は少し安心しつつ。
ミュレンさんがドルーグの祭壇を見つめ、
「でも一応見るだけ見てきます」
そう言って、祭壇前へと歩き、跪く。
一瞬ぽわっと祭壇が煌く。
そして数分も経たないうちにミュレンさんが立ち上がった。
「高い」
「ですよね」
俺は同意した。
* * *
隠し部屋を出て、ミュレンさんと共に洞窟を歩く。
何か忘れてるようなと少し頭を捻りつつ、ああ、そうだと思い出し、
「時にミュレンさん」
俺はバックパックからランタンを取り出して言った。
「はい?」
こちらへと首を動かしたミュレンさんを確認しつつ、ランタンを右手で上に放り投げる。
明るい光が洞窟を照らし始める。
その光の強さは、もう一つのランタンと比べるまでもなく。
「はー……成程。これがアイテム師の能力なのですね」
感心したように言って、ミュレンさんが自身のランタンへと手を伸ばす。
ランタンは高度を下げ、ミュレンさんの手へと収まり、明かりを消した。
「結構用途広そうですね」
「そのようです」
俺は頷き、立ち止まる。
どうやらその先は行き止まりだったようで。
くるりとミュレンさんが引き返し、俺も後へ続く。
「うん、とりあえず一層は全部埋まりましたんで、次行きましょう」
「はい」
と、俺は頷き、ミュレンさんの先導の元、階段を目指した。
後書き
ちなみにクエスト承諾ルートも考えたんだけど、気がついたらえーじがミュレンさんを脱がしていた。
何を言ってるのかわからねーと思うが……ってそうでも無いか。
もっともプロット自体に影響は無い(どちらにしても売ることは無い)のですけど、
ミュレンさん支配すると後の話が非常に作りにくくなるなと感じたため没になりました。