「BETAとの意志疎通、そなたならば可能ですか」
「あー。俺も人型なんで。BETAは資源掘削機であり、BETAの所じゃ炭素生命体は機械って位置付で、BETAも作られた物なんです。だから、人間も生命体と認識できないんですね。炭素生命体は機械。この常識を覆す程複雑なAIを持っちゃいないんですよ。所詮資源掘削機ですから。恐らく、精々ベルモアレベルでしょうね」
「ならば、BETAを作りだした者は探せないのですか……?」
「見つけるのはすげー難しそうですね。もう滅びてるかも。BETAの繁殖は凄まじいみたいですから。ありゃ明らかに繁殖しすぎです。本当に資源が届いてるのかも不明ですね。そういう意味じゃ、ストッパーが無いって事で不良品です。一応、主と同じ生命体が繁殖している星では機能停止する様ですが。プログラムの書き換えは無理ってか怖いかな。繁殖力があり過ぎる上にネットワークが広いんでどういう結果になるか……。そういう意味でも、共存よりも絶滅させるしかない物ですね」
「魔王とも……?」
「ありゃ互いに兎とライオンの関係なんでどうしようもないです」
「そなた、どれくらいにどれほどの鉱石を食すのです? 他人の体を手に入れても、なお食さないと生きていけないのですか?」
「あー。俺らの生態については黙秘します。ただ、どんなに大変でも代替物を探すつもりもないもんで、食べなくても生きていけるように……とか、そう言った事はノーサンキューで。そういう生態だと思って下さい」
「例えいつか飢えても?」
「そんときゃそんときの奴らが考えますよ」
「先ほど、BETAがベルモアレベルと言いましたが、私には随分と違うように見えます。開発者の違いでしょうか。ベルモアは、そなたの種族が? それとも、そなたの種族が放浪する過程で手に入れた物ですか」
「あー。それも黙秘で。ただ、ベルモアは兵器ですからね。開発理念としては、自律兵器だからこそ、愛が必要なのだ、だそうです。でなければ、血も涙もない化け物が産まれてしまう。それに戦場は任せられないと」
ベルモアシリーズの博士に言われた。「お前ら人間だから許されてるんであって、機械じゃったら即刻処分対象じゃから。人間と機械の差はそんだけでかいんじゃよ」と。あれはどういう意味だったのだろう……。
まあ、俺みたいな奴らが戦場に投入されて、停戦命令出されても止まりっこないので、俺達が魔王相手みたいな玉砕殲滅戦にしか向いてない事は認める。
「兵器だからこそ、愛が必要……良い言葉ですね」
「ベルモアには酷だと思いますがね。優しい人間が戦場に放り出されているようなもんだ。まあ、機械だからどうでもいいんですが。……これだけ情報収集すれば十分でしょう。俺は一刻も早く魔王を倒さないといけません。四天王の鉱石を」
「仲間は呼ばぬのですか?」
「誰が手柄をやるか……やりますか。手出しは無用です。俺が死んでも代わりが来るので、まず魔王は問題ありません。BETAは皆さんの手でどうにかして下さい」
「うむ……どうにかします」
「は?」
「貴方は魔王を。私達は、BETAを。私達は、手に手を取って行けるはずですね?」
「あー。手出し無用にございます」
「共同作戦がなった暁には、四天王の鉱石とやらをお礼として授けましょう」
すこし、得意そうにする悠陽様。なんというニンジン。
「ずるいですよ、それ……」
「魔王を倒したら、そなたは帰るのですか?」
「んー。一応、親孝行義務を果たせば帰ってもいいと言われていますが、今回のような場合の帰還って、恐らく俺達の崇める神様の心証が良くなりそうもないんですよね。苦労している両親や周囲を見捨てるのかーって。魔王を倒したら大人しく死ぬまで休暇取ります」
「……神はいますか」
「当たり前でしょう。……さて、俺が待てるのは一週間が限度です。通信機を渡すので、準備が出来たら呼んで下さい」
「滞在して行かないのですか」
「BETAの中心部以外にも魔王軍はいるはずです。それを探して殲滅してます。何より……体がうずく」
だって魔力の塊である鉱石食ったからな! ちょっとむちゃだったかもしれん……。
俺は、トントンと二段跳びに下がって窓から飛び降りた。箒で飛んでその場を離れていく。
うー、話し過ぎたかも。
大丈夫、意地でも世界って単語は出さなかったし。
香月博士も、この世界では因果律量子理論を完成させなかったはずだ。
パラレルワールドと異世界はまた違うし。
名前と名字が同じだから、異世界って事はばれてたかもしれないけどな。
魔王軍を殲滅しながら、ぐだぐだと考えて、その考えを頭を振ると共に振り払う。
何も考えずに、魔王を狩ればいい。
俺は、強力な気配が5つもする町へと向かった。
四天王クラスがもう十数個も手に入っている。豊作である。
「来ましたか……ヒラミネ」
「ゲヒヒヒヒ! 罠に掛かった! 罠に掛かった!」
「引っかかったのではない……ですよね、ヒラミネ。貴方は、私達がここに集結している事を知っていた。知っていた上で来た。舐められたものですよねぇぇぇぇぇぇ!!」
二体の魔物が掛かってくる。後ろに動く、三つの気配。
俺は口角を釣りあげて、笑って応戦した。
肩を貫かれる。俺は止まらない。
足を貫かれる。俺は止まらない
顔を殴られる。俺は止まらない。
俺を両断しようと刃が迫る。それでも俺は止まらない。
「ビーっ」
ベルモアが飛びかかってきて、代わりに切られた。もちろん想定済みだ。
よってきたベルモアを盾に使いながら、俺は応戦する。
「ベルモアー!」
お付きのベルモアが壊された市民の皆さんが絶叫する。
「ちっ壁になるのが遅い、役立たずめ。四天王ごときの攻撃を食らっただろ」
俺はベルモアを踏みつける。
市民の皆さんは、BETAより残酷な物を見たという顔で俺を見る。
なんだよ、ベルモアは所詮機械だろうが。
俺は応戦を続け、ようやく四天王を下した。
「ははははははははははははは!! 四天王の鉱石が5つ。たまんねぇな!」
いそいそと鉱石を収納する俺。
そこに、幼女がつかつかとやってきて、俺の頬をはたいた。
「さいてーよ!」
そんな目に涙を溜めて言われても。
一週間後、俺は戦術機達と合流した。何故か皆の視線が冷たい。
ベルモアシリーズへの俺らの対応がばれた後はいつもこうだ。
そして、女の子っぽい何かが俺に抱きついて来た。
「マスター! ベルモア00です! 香月博士に体と頭脳と名前を与えてもらいました!」
!?
とりあえずベルモア00への心配の眼差しと俺への嫉妬の眼差しが痛い。