くっ悔しい! 朝なのに更新する物が何もない(ビクンビクン)!
二度寝しちゃったミケの馬鹿馬鹿! 何かないものか→以前没にした話のプロローグがあったよー(・▽・)ノ
……業が深いです。これは怒られても仕方のないレベル。
多分続かない短編集なので許して下さい。
色鮮やかな深紅の髪が風にたなびく。剣が、神の力を受けて眩く輝く。神に愛されし、麗しき青年。掲げる称号は、勇者。
その青年に襲いかかる、夜の闇のような漆黒のドラゴン。またの名を、魔王。
勇者が切り裂けば魔王は尻尾で薙ぎ払い、魔王が黒炎を吐けば勇者がその炎を切り裂く。
その動きは洗練されていて、その動きは目にもとまらぬ速さでありながらどこかゆったりとしている。
激しいながらも品のある、美しい戦い。
物語から出て来たようなそれは、魔界の軍と人間の軍が真正面から激突する、血生臭く、どこまでも現実的な戦の果てに行われていた。
どれほど戦いが続いたろうか。出会い頭に切り合った一人と一匹は、どちらからともなく一つ息を吐いて離れた。
「魔王サンゴット、それほどまでに太陽が欲しいのか。その為だけに地上全てを滅ぼそうと言うのか」
勇者の言葉は、無意味であった。でなくば、魔界の門を開き、軍を率いて地上に攻め上がるはずがない。それでも、勇者は問わずにはいられなかった。
「勇者レイス、忌々しき神の愛し子、全てを与えられし栄えある成功作よ。それは持てる者のたわごとだ」
魔王が吐き捨てる。
かつて、神々は様々な生き物を作った。猛々しいドラゴンを作った。淫猥なサキュパスを作った。麗しい魔族を作った。しかし、最終的に神々が愛したのは、か弱き人であった。
そして、神は人と幾ばくかの生き物を地上の楽園へと放し、いらなくなったその他の生き物は、殺すのを惜しがり、人を害するのを厭い、地下へと封じた。
人は神の愛しむ成功作であり、他の全ての種族は人の為にあるか、失敗作に過ぎないかのどちらかで、それは純然たる事実であった。
事実、今も勇者の剣には明らかな愛の証、神の加護が煌めいている。
「人を不幸にして得た富で、幸せを得られる事はないよ」
「それもまた、恵まれた者の戯言だ。終わりにしよう、勇者レイス。貴様の言葉を聞いていると虫唾が走る」
魔王は、ちらりと太陽を見る。輝かしき太陽、全ての命を育む太陽。
太陽があれば、魔界の植物も育ち、より多くの魔物の腹を満たしてくれるだろう。
何よりも、その美しさが魔王を奮起させた。
魔王がおのれの全てを込めてブレスを吐く。
その時、勇者の剣が激しく輝いた。
剣は全てを切り裂く。空間すらも。
そして、魔王は袈裟がけに切られて、裂けた空間の切れ目へと堕ちていく。
「魔王様!」
腹心の部下、サキュパスのビューティが飛んできて、魔王の巨体に抱きついた。
サキュパスの名に恥じぬ、豊満な胸による柔らかい感触が魔王へと伝わる。
その翼はボロボロで、その身は血で濡れていた。
腰まである長い黒髪が魔王の鱗を撫でる。
「魔王様!」
蠱惑的な、耳をくすぐる様な声は、こんな時ですら健在だった。
裂けた空間が閉じていく。魔王とビューティは、時空の狭間へと
魔王は、太陽へと手を伸ばす。
「その光を、我が手に!」
文字通り命を掛けた、魔力を込めた言葉。
その叫びが時空の狭間に響いた瞬間、魔王は確かに聞いた。
言葉にならない言葉。テレパシー。それをあえて言葉に直せば、それはこう言っていた。
『捨てられたなら拾っても良いでしょう。太陽を求め、太陽の神という名を持つ者よ。おいで。我が元へ』
時空が裂ける。上空からの落下。迫りくる地上。体の芯から熱くなり、体が弾けそうになる。
翼は勇者に切り裂かれて役に立たない。痛みと熱で、動かす事すら難しかった。とっさにビューティを庇い、落下し、そして魔王サンゴッドは絶命した。
――魔界の栄光への道は、皮肉にも魔王が破れる事により、開かれたのだった。