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No.15007の一覧
[0] 【ゼロ魔習作】海を讃えよ、だがおまえは大地にしっかり立っていろ(現実→ゼロ魔)[カルロ・ゼン](2010/08/05 01:35)
[1] プロローグ1[カルロ・ゼン](2009/12/29 16:28)
[2] 第一話 漂流者ロバート・コクラン (旧第1~第4話を編集してまとめました。)[カルロ・ゼン](2010/02/21 20:49)
[3] 第二話 誤解とロバート・コクラン (旧第5話と断章1をまとめました。)[カルロ・ゼン](2010/01/30 22:55)
[4] 第三話 ロバート・コクランの俘虜日記 (旧第6話~第11話+断章2をまとめました。)[カルロ・ゼン](2010/01/30 23:29)
[5] 第四話 ロバート・コクランの出仕  (旧第12話~第16話を編集してまとめました)[カルロ・ゼン](2010/02/21 20:47)
[6] 第五話 ロバート・コクランと流通改革 (旧第17話~第19話+断章3を編集してまとめました)[カルロ・ゼン](2010/02/25 01:53)
[7] 第六話 新領総督ロバート・コクラン (旧第20話~第24話を編集してまとめました)[カルロ・ゼン](2010/03/28 00:14)
[8] 断章4 ゲルマニア改革案 廃棄済み提言第一号「国教会」[カルロ・ゼン](2009/12/30 15:29)
[9] 第七話 巡礼者ロバート・コクラン (旧第25話~第30話+断章5を編集してまとめました。)[カルロ・ゼン](2010/07/25 23:08)
[10] 第八話 辺境伯ロバート・コクラン (旧第31話~第35話+断章6を編集してまとめました。)[カルロ・ゼン](2010/07/27 23:55)
[11] 歴史事象1 第一次トリステイン膺懲戦[カルロ・ゼン](2010/01/08 16:30)
[12] 第九話 辺境伯ロバート・コクラン従軍記1 (旧第36話~第39話を編集してまとめました。)[カルロ・ゼン](2010/07/28 00:18)
[13] 第十話 辺境伯ロバート・コクラン従軍記2 (旧第40話~第43話+断章7を編集してまとめました。)[カルロ・ゼン](2010/07/28 23:24)
[14] 第十一話 参事ロバート・コクラン (旧第44話~第49話を編集してまとめました。)[カルロ・ゼン](2010/09/17 21:15)
[15] 断章8 とある貴族の優雅な生活及びそれに付随する諸問題[カルロ・ゼン](2010/03/28 00:30)
[16] 第五十話 参事ロバート・コクラン 謀略戦1[カルロ・ゼン](2010/03/28 19:58)
[17] 第五十一話 参事ロバート・コクラン 謀略戦2[カルロ・ゼン](2010/03/30 17:19)
[18] 第五十二話 参事ロバート・コクラン 謀略戦3[カルロ・ゼン](2010/04/02 14:34)
[19] 第五十三話 参事ロバート・コクラン 謀略戦4[カルロ・ゼン](2010/07/29 00:45)
[20] 第五十四話 参事ロバート・コクラン 謀略戦5[カルロ・ゼン](2010/07/29 13:00)
[21] 第五十五話 参事ロバート・コクラン 謀略戦6[カルロ・ゼン](2010/08/02 18:17)
[22] 第五十六話 参事ロバート・コクラン 謀略戦7[カルロ・ゼン](2010/08/03 18:40)
[23] 外伝? ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド伝 [カルロ・ゼン](2010/08/04 03:10)
[24] 第五十七話 会議は踊る、されど進まず1[カルロ・ゼン](2010/08/17 05:56)
[25] 第五十八話 会議は踊る、されど進まず2[カルロ・ゼン](2010/08/19 03:05)
[70] 第五十九話 会議は踊る、されど進まず3[カルロ・ゼン](2010/08/19 12:59)
[71] 外伝? ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド伝2(会議は踊る、されど進まず異聞)[カルロ・ゼン](2010/08/28 00:18)
[72] 外伝? ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド伝3(会議は踊る、されど進まず異聞)[カルロ・ゼン](2010/09/01 23:42)
[73] 第六十話 会議は踊る、されど進まず4[カルロ・ゼン](2010/09/04 12:52)
[74] 第六十一話 会議は踊る、されど進まず5[カルロ・ゼン](2010/09/08 00:06)
[75] 第六十二話 会議は踊る、されど進まず6[カルロ・ゼン](2010/09/13 07:03)
[76] 第六十三話 会議は踊る、されど進まず7[カルロ・ゼン](2010/09/14 16:19)
[77] 第六十四話 会議は踊る、されど進まず8[カルロ・ゼン](2010/09/18 03:13)
[78] 第六十五話 会議は踊る、されど進まず9[カルロ・ゼン](2010/09/23 06:43)
[79] 第六十六話 平和と友情への道のり 1[カルロ・ゼン](2010/10/02 07:17)
[80] 第六十七話 平和と友情への道のり 2[カルロ・ゼン](2010/10/03 21:09)
[81] 第六十八話 平和と友情への道のり 3[カルロ・ゼン](2010/10/14 01:29)
[82] 第六十九話 平和と友情への道のり 4[カルロ・ゼン](2010/10/17 23:50)
[83] 第七十話 平和と友情への道のり 5[カルロ・ゼン](2010/11/03 04:02)
[84] 第七十一話 平和と友情への道のり 6[カルロ・ゼン](2010/11/08 02:46)
[85] 第七十二話 平和と友情への道のり 7[カルロ・ゼン](2010/11/14 15:46)
[86] 第七十三話 平和と友情への道のり 8[カルロ・ゼン](2010/11/18 19:45)
[87] 第七十四話 美しき平和 1[カルロ・ゼン](2010/12/16 05:58)
[88] 第七十五話 美しき平和 2[カルロ・ゼン](2011/01/14 22:53)
[89] 第七十六話 美しき平和 3[カルロ・ゼン](2011/01/22 03:25)
[90] 外伝? ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド伝4(美しき平和 異聞)[カルロ・ゼン](2011/01/29 05:07)
[91] 第七十七話 美しき平和 4[カルロ・ゼン](2011/02/24 21:03)
[92] 第七十八話 美しき平和 5[カルロ・ゼン](2011/03/06 18:45)
[93] 第七十九話 美しき平和 6[カルロ・ゼン](2011/03/16 02:31)
[94] 外伝 とある幕開け前の時代1[カルロ・ゼン](2011/03/24 12:49)
[95] 第八十話 彼女たちの始まり[カルロ・ゼン](2011/04/06 01:43)
[96] 第八十一話 彼女たちの始まり2[カルロ・ゼン](2011/04/11 23:04)
[97] 第八十二話 彼女たちの始まり3[カルロ・ゼン](2011/04/17 23:55)
[98] 第八十三話 彼女たちの始まり4[カルロ・ゼン](2011/04/28 23:45)
[99] 第八十四話 彼女たちの始まり5[カルロ・ゼン](2011/05/08 07:23)
[100] 第八十五話 彼女たちの始まり6[カルロ・ゼン](2011/05/14 20:34)
[101] 第八十六話 彼女たちの始まり7[カルロ・ゼン](2011/05/27 20:39)
[102] 第八十七話 彼女たちの始まり8[カルロ・ゼン](2011/06/03 21:59)
[103] 断章9 レコンキスタ運動時代の考察-ヴァルネーグノートより。[カルロ・ゼン](2011/06/04 01:53)
[104] 第八十八話 宣戦布告なき大戦1[カルロ・ゼン](2011/06/19 12:17)
[105] 第八十九話 宣戦布告なき大戦2[カルロ・ゼン](2011/07/02 23:53)
[106] 第九〇話 宣戦布告なき大戦3[カルロ・ゼン](2011/07/06 20:24)
[107] 第九一話 宣戦布告なき大戦4[カルロ・ゼン](2011/10/17 23:41)
[108] 第九二話 宣戦布告なき大戦5[カルロ・ゼン](2011/11/21 00:18)
[109] 第九三話 宣戦布告なき大戦6[カルロ・ゼン](2013/10/14 17:15)
[110] 第九四話 宣戦布告なき大戦7[カルロ・ゼン](2013/10/17 01:32)
[111] 第九十五話 言葉のチカラ1[カルロ・ゼン](2013/12/12 07:14)
[112] 第九十六話 言葉のチカラ2[カルロ・ゼン](2013/12/17 22:00)
[113] おしらせ[カルロ・ゼン](2013/10/14 13:21)
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[15007] 第八十九話 宣戦布告なき大戦2
Name: カルロ・ゼン◆ae1c9415 ID:ed47b356 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/07/02 23:53
ゲルマニア軍使が退室した軍営で、大公国の面々は頭を抱えていた。
相手方の要求は実に単純明快。要するに、旗幟を示せ。
旗幟を鮮明にしたくば、ゲルマニアの部隊同様に、働いて見せよ。
言ってしまえば、それだけだ。難しい話ではない。
問題は、ゲルマニアと同規模の損害を被った場合だ。
確かに、クルデンホルフ大公国は豊かな国である。
トリステインの貴族どころか、各国に金を貸せるほどに。
とは言え、規模で言えば小国でしかない。
何代にもわたって品種改良された龍と、その乗り手。
これを一度失うと、補充するのは並大抵の苦労ではない。

確かに、その費用ならば十分に賄えるだろう。
だが、訓練された人員の補充は金では不可能。
まして、何より重要な信頼のおける譜代はあまりにも少ない。
故に、大公国の軍事ドクトリンは損耗抑制ドクトリンとなる。
そうせざるを得ない。大公国は、人員を大国のように浪費できないのだ。
極言すればだからこその、少数精鋭。
龍騎士隊では有数の練度を誇る空中装甲騎士団。
それは、大公国の抱える矛盾の象徴的な存在だ。

「参りましたな。前提条件が異なりすぎている。」

派遣される当時の前提では、損害はそれほど想定されていない。
だからこそ、最精鋭の空中装甲騎士団が派遣されたのだ。
中途半端な戦力を出しても消耗するだけだろう。
それよりは、重装の騎士団をだすことで、無用な犠牲を避けよう、と。
付け加えるならば、増援として政治的に大きな意味を持たせることをも考慮されていた。

ベアトリス殿下の従軍。
政治的にみれば、大公国が旗幟を示したに等しい。
これで、ゲルマニアへ如何に味方しているかを理屈で示す。
同時に、派遣された精鋭部隊はベアトリス殿下の護衛とできる。
つまり、実戦にはせいぜい象徴的な参加に留まるという見込み。
その全てが、全面的かつ本格的な戦闘行動によって覆されてしまっている。

「恩を売る程度の心構えが、気がつけば全面戦闘だ。」

部隊の覚悟としては、元より覚悟していたこと。
ここに至っては戦闘行動への積極参加もやむなし、と考えればよい。
だが、本国の希望にそぐわないというのもまた事実。
当然、問題はどの程度まで奮戦するかに収斂される。
言い換えれば、どの程度の損害までは許容できるかということだ。
部隊の損耗を恐れる本国は、最小限に留めることを切望している。
派遣軍にしてみれば、損害を出さずに戦果をあげろと言われるに等しい。
ある意味、悪夢以外の何物でもない事態だ。
しかし、こんな状況に陥っても、なお甘受せねばならない。

「いかがします?このままでは、蝙蝠呼ばわりどころでは済みませんぞ。」

下手に手を抜いた戦闘をすれば、間違いなくゲルマニアの猜疑心を刺激する。
ここは乗り切れても、また次があるだろう。踏み絵で躊躇は危険だ。
より大きな犠牲を払うよりはここで旗幟を鮮明にするほかにない。
そうでなければ、納得が得られない。信頼されぬのだ。
だが、だからといって玉砕は到底許容できかねる。
なにより、精鋭の戦力はあまりにも貴重。大公国には、替えが無いのだ。
むざむざと使い潰せるものではない。
多少なりとも戦功を稼ぎつつ、損害を抑える。
どうしても、矛盾する二つの要素を同時に満たさねばならないのだ。

だが、それはあまりにも難しい。

それを理解した居並ぶ軍人たちの顔色は、最悪だ。
まるで、初陣の恐怖におびえる新兵並みに青ざめたものとならざるを得ない。
広げられた戦局を書きこむ地図を見詰める眼差し。
それらは、ことごとく懸命に活路を模索している。
机の上におかれた水差しとワインには、眼もくれずに全員が思考に没入。
だれもが、頭を振りしぼり、思案に暮れてやまないでいた。

「我々の派遣された目的を履き違えてはならない。」

そう、元々大公国の生存をより強固なものとするための増援だ。
間違っても、大公国を危うい立場におく為のそれではない。
つまり、間違ってもゲルマニアの猜疑心をこちらに向けては駄目。
彼の国の信頼を損なうのは得策とは言えぬ。

「ゲルマニアに政治的な恩を売る。そのための派兵だったのでは?」

だから、ゲルマニアが周辺国の動向を勘ぐっている時の派兵。
真っ先に部隊の派遣を申し出した。もちろん、建前上は友誼によって。
だが、実際には大公国なりの思惑あってのこと。
情勢を考えた結果として旗幟を鮮明にしたつもりなのだ。
言い換えれば、これで手打ちにしたかった。
『旗を揃えるので、杖は勘弁してくれ。』というのが、本音と言って良い。
そのためにわざわざ、ベアトリス殿下の派遣まで行ったのだ。
本来であれば政治的配慮が、存分になされていたと言える。

だが、事態は当初の想定を大幅に覆された。
よりにもよってゲルマニアが苦戦しているのだ。
そして、悪いことは重なる。ゲルマニアの猜疑心を刺激するには十分なくらいに。
これまでに、一連の戦闘で大公国軍は戦闘を経ていないのだ。
つまるところ、損害皆無で戦果も皆無ということになる。
通常であれば、それでも良いのだろう。
だが、彼らは援軍であり、踏み込んで言えばゲルマニアの援護義務があった。
もちろん、援護といっても任意のものである。
敵対しなければそれで良いと当初は見なされていたほどなのだ。
余裕がゲルマニアあれば、それで良かった。
問題は、ゲルマニアに全く余裕がなくなり、猜疑心が肥大化していることにある。

「その通り。我々は、基本的に援軍として派遣されている。」

だが、本質的には援軍である以上、戦果を上げねばならないのも道理。
本来は、配慮された見せ場が用意されるはずだった。
ゲルマニアに余裕があれば、そのような見せ場も用意されただろう。
大公国の見込みは、ゲルマニアが後退を強いられる時点で崩壊した。
もはや、事態は名目上の援軍としてあることを最早許容しないだろう。
文字通りの援軍となるか、信頼を損なうかの二択しかない。
大公国にしてみれば、実に望ましくないことではある。
だが損耗を許容するほかにない。そして、最低限に留めねばならないのだ。

軍事的な方針は、損耗抑制。

それは、大公国の戦略故にそうなっている。
まず前提として大公国の軍はどこの国家にも全面戦争では勝てない。
だが、戦術面で見た場合は別だ。
大公国軍は極めて優れた部隊を抱え、激烈な抵抗を計画する。
つまりは、ハリネズミだ。誰だってハリネズミを殴りたくはない。
盛大に振りおろされた拳。なるほど、ハリネズミを叩き潰すことはできる。
だが、ハリネズミを叩き潰したならば、拳とて激しく傷つかざるを得ないだろう。
それは、大国にしてみれば、損でしかない。
だから、ハリネズミが無害である限り、手出しされない。
こうして、周辺諸国に損得計算の上で大公国を許容させるという方針である。
その身を守るハリとして、軍があるのだ。
針の抜けたネズミなど、猫に駆られるのが眼に見えてしまう。

「いまや、覚悟を決めて文字通りゲルマニアと轡を並べ、杖を掲げるほかにありますまい。」

老騎士の呟き。

長くを生きてきた者達は、事態をよく理解している。
彼らは、もはやのっぴきならない事態に陥っていることを悟り、覚悟した。
溜息と諦観を込めて呟かれた言葉。
そこには、もはや選択肢がないことを悟った人間特有の潔さすら込められている。

「そうである以上、武人として恥じることのないように我らの力を示す。そういうものだ。」

先ほどの老騎士に応え、覚悟のほどを示すように杖剣が掲げられる。
その杖剣の主は騎士団長であった。
躊躇を切り捨てる様に、忸怩たる思いを振り払い、彼もまた決断する。
もはや、後は無い。旗幟を鮮明にするべき時が来てしまった。
故に杖を取るしかないのだと。

「ですが、消耗を避けるようにとの命令が。そもそも、我々は案山子として派遣されたはずだ。」

だが、泡を喰ったように中堅の参謀が制止にかかる。
元々、彼は政治的な意図をよく解するという意味において選抜された身。
軍務についても、龍騎士母艦で補給や兵站といった事象を扱ってきた。
それだけに本国の事情もよく理解している。故に、彼は躊躇する。
周囲を大国に囲まれた祖国だ。しかも、金を持っている。
ここの部隊が消えた瞬間に、祖国の受ける脅威はどうなるか。
即座に、計り知れない規模に膨れ上がるだろう。
そうなれば、祖国の独立はもはや望めない。
ましてや、この派兵はそもそも見せ球でしかない筈だった。

「きらびやかな精兵に、ベアトリス殿下という玉。政治的な効果だけを考えれば、これ以上の要求は本国と検討すべきです。」

泥がつくことなど想定されていない玉なのだ。
ゲルマニアの意図は理解するが、かといって潔くここで彼らが討ち死など許容できない。
ましてや、ゲルマニア側の言い分は大国の傲慢さすら含んでいるのだ。
旗幟を鮮明にしなければ、踏みにじると。横暴と言えば、あまりに横暴。
そのような要請という名の踏み絵に応じられるか?
加えて、大公国が軽んじられるのも危険な兆候である。

故に、彼は反発せざるを得ない。

「時間が間に合わないのは、わかったうえでの発言か?」

騎士団長の鋭い眼光にたじろぎつつも、彼は頷く。
他にどうせよというのか、と言わんばかりに。

「我々は、消耗を前提としているわけではないのです。無論、本国に留守部隊はありましょう。」

主力の派遣をさけつつも、恩を売るために最大限効果的な派兵。
だから、本国に留守部隊は確かに存在する。
故に、ここで大公国派遣部隊が損耗しようとも、全滅ではない。
つまり、極端なことを言えば短期的には許容できるかもしれない。
だが、長期的には?
精鋭中の精鋭を失えば、質的優位は崩壊せざるを得ない。
補充には時間がかかる上に、質を量で補うことも難しい。
そうなれば、質的優位故に手出しを他国が自重していた状況が崩壊するのだ。
望ましくはないだろう。大公国は数で戦争ができる国家ではない。規模が違う。
なにより、本国の部隊は比較的補充が容易な傭兵を主軸とした歩兵だ。
無論、メイジも少なからずいるが質的には劣らざるを得ない。
質と数で劣れば、戦争では先が見える。

「ですが、メイジを最も多く抱える龍騎士隊の損害は、最も回避せざるを得ないのも御存じでしょう!」

まして、艦隊戦力で劣る大公国に龍騎士隊は欠かせない。
制空権を確保するためには、どうしても龍騎士隊が必要なのだ。
そのための、そのためだけの空中装甲騎士団である。
むざむざと、これを失えば、残った戦力とて一方的に空から叩かれる。
それは、断じて避けねばならないのだ。これは、至上命題に等しい。
なにしろ空からの支援を欠いた地上部隊など、今日では脆弱極まる。
戦訓を勘案すれば、絶対にだ。

「どうされるおつもりですか?無論、我ら空中装甲騎士団、臆することなどありえませんが。」

だが、先ほどの老騎士たちはすでに諦観している。
命を安く扱うつもりはないが、損害はすでに考慮の外部だ。
なるほど、後のことを心配する必要もあるだろう。
しかし、目の前の問題を解決してから悩む他にないのだ。
せいぜい、損害が出ないように各自が留意。これが限界だろう。
奮戦こそがこの局面における唯一の道だ。彼らは、そう悟っている。

「逸るな。我らは大公国の貴重な戦力なのだ。確かにむざむざと討ち死にが許される身ではない。」

手を掲げ、其れを制する騎士団長。決意をしたとは言え、彼は指揮官。
彼とて部隊を率いる責任は重々理解している。
少なくとも戦力の浪費は避けねばならないと。損害を最小限度に留めねば、と。
しかし、彼は一方で損害を許容せざるを得ないこともよく理解している。
もとより、彼は杖を大公国に捧げる人物なのだ。
不本意とはいえ、大公国が命運をゲルマニアとすごすと決めたならばそれに従う。
単純に、損害を抑えたいというのは軍政の問題。つまりは、軍人の分野。
故に、損害を抑えながらも国家の方針には従わざるを得ない。

「どちらにせよ、このままではゲルマニアに政治的な恩を売るどころか、抗議を受けかねぬ。動くしかなければ、いかにするか。」

だから矛盾する二つの命題を迫られた時彼に裁量権が与えられているのだ。

「今は、まだ遅延戦闘で指揮権もこちらが任意に行動することを容認しています。」

そして、部下もまたよくそのジレンマを理解する。
そのために、彼らは損害を抑えつつもゲルマニアの意図に適う案を練る。
前提となるのは、ゲルマニアは別段大公国に死ねとは言わないことだ。
つまるところ、効果的な援護を望んでいるという事。
だからこそ、遅延戦闘において指揮権は残っている。

「条件の悪化を見る前に行動すべきではないでしょうか。」

故に、条件が悪化する前に行動すべきだ。
裁量の余地があるのであれば、大公国にとって一番ましな選択ができる。

「・・・可能な限り消耗を避けつつオーク鬼を討つと?」

だが、そのましな選択肢とて無理難題に等しい。
オーク鬼をメイジが相手にするのは、そう難しくはない。
或いは、少数の精鋭で一方的に群れを倒すことも可能かもしれない程である。
だが、オーク鬼の軍隊を相手にするとなれば、全く話が違う。
現在進行形で各部隊が苦戦しているのを見れば、如何に無茶かよくわかるというもの。

「空中からの支援に徹しているゲルマニア軍龍騎士隊にはさしたる被害は出ていません。」

希望となるのはゲルマニア軍龍騎士隊の損耗率。
幸か不幸か、彼らは酷使されていながらも損害はさほどでもない。
まあ、オーク鬼が戦線の突破を優先し、空中から損害に無頓着だからなのだが。
そして、その意味するところは損害を無視できるだけの物量である。

「幸い、派遣戦力には空中部隊のみ。支援に徹すればよろしいかと。」

故に、ゲルマニア軍を援護するという目的は案外用意に見えなくもない。
実際に空から一方的に攻撃するだけならば、そこまで難しくもないだろう。
当然ではあるが、そこまで簡単であればなにもここまで彼らが悩む必要もない。

「支援は、まあ良い。だが、問題は空での戦いだ。」

だが、実際には対地戦闘だけでなく対空戦闘も当然考慮する必要がある。
確かにオーク鬼は空を飛ばない。故に、龍騎士にとってはまだましな相手だ。
まあ、稀に何かの間違いで例外的に飛ぶのがいたとしても問題ではない。
しかしながら、敵はオーク鬼だけではないのだ。

ごくまれに散見される程度とはいえ、アルビオンから『造反』したという戦隊がいる。
当然ながら、アルビオンの空海軍ご自慢である戦列艦を含む部隊だ。
航続距離の短い空中装甲騎士団では、逃げるのも一苦労だろう。
なにしろ、空中装甲騎士団は本土迎撃戦を想定して編成されている。
最大の任務は、侵攻してくる敵艦隊の迎撃なのだ。
足の短さを補うために、龍騎士母艦を活用し、遠征にも対応してはいる。
だが、逆に言えば龍騎士母艦が落とされたら帰るに帰れない。

「左様。実際の問題は、アルビオン系の戦隊だ。」

そして、龍騎士母艦は撃たれ弱い。フリゲートでも出てくれば致命的なほどである。
元々、装甲空中騎士団を運ぶためのフネに近いのだ。
一応軍用のフネではあるが、せいぜい武装コルベット程度の戦闘力。
アルビオンの快速から逃れられるか?正直怪しいだろう。

「・・・ベアトリス殿下の乗られた龍騎士母艦が落とされたら事だぞ。」

そして、誠に厄介なことにこのフネはベアトリス殿下の御座艦である。
落とされるわけには、断じていかないフネなのだ。
前線に運ぶこと自体、できれば避けねばならぬほどに問題は山積している。

「わかっている。其れは何としても避けたい。」

「いっそ、ゲルマニアの増援と呼応しますか?」

フリゲートを含む戦隊なれば、龍騎士隊の力量を存分に発揮し得るだろう。
なにより、ゲルマニアの増援と共闘するというのは、政治的に悪くない。
杖を共にという点でも、増援部隊という性質からもだ。

「確かに増援戦隊と合流すれば、一応の戦力になりますが指揮権は?」

ただ、問題は指揮権。
別の組織と、別の軍隊と、別個の指揮権など許される話ではない。
統一されない指揮権ならば、ないのと同じなのだ。
そして、大公国派遣部隊の指揮官はベアトリス殿下。
名目上とはいえ、ゲルマニア諸候の下には入りにくい。

「ベアトリス殿下の部隊から、分遣という形式を踏む。」

故にベアトリス指揮下の部隊から支隊を出す、という方式になる。
それならば、ベアトリス殿下よりも下級の指揮官というのは自明。
だから、ベアトリス殿下と戦隊指揮官の階級問題は回避できる。
だが、逆に言えばベアトリス殿下の護衛を減らすということでもある。

「信ずるほかにあるまい。我らもゲルマニアも争う理由はない。」


ああ、人の世はままならないものだ。

栄達を極めた公爵様。

最大諸侯にして、筆頭諸候。

王家の血を引く高貴な一族の長にして、名誉にも栄光にも不足の無いお方。

しかし、彼のお方は常に苦労なされる。

ああ、無情。

あるいは、皇帝閣下。

ご本人は、恐れ多くも評するならば、とにかく御有能。

部下の方々を見渡しても、軍事に、内政に、外交に、全て人を得ておられる。

強大な国家の主にして、並ぶものなき栄光を有される覇者。

しかして、常に彼の御仁は誰かに妨害される。

ああ、不毛な事態。

無能どもに付き合わされるとは、何たる不毛。


意味するところは明瞭。

始祖は、何人に対しても才に見合った苦労を欲するのである。

「ふざけるな!いくら卿といえども、限度がある!」

常日頃、冷静さを崩さないことを自慢にしているブリテン貴族。
その矜持故に、極力平常心を保とうという努力もむなしく、コクラン卿は叫んでいた。
手にした命令書に書かれているのは、対トリステイン戦への従軍命令。
それも、単なる従軍ではない。
面倒極まるトリステイン戦線の指揮命令。
極言すれば、赤字確定の骨を折れというに等しい。

「コクラン卿、そこをまげてお願いしたい。」

「ラムド卿のお言葉といえども、承服しかねる。」

従軍命令ならば、まだ艦隊を率いて従軍する事も考えられた。
だが、艦隊を対ガリアに残し、単身でトリステイン方面へというのは承服できない。
自分の育て上げた艦隊を残し、提督が不慣れな地上戦をやらされるのだ。
不快感や筋違いといった感情は全く故なしという物ではない。

「地上戦など、筋違いもよいところ。ハルデンベルグ卿が適任のはずだ。」

まして、新参の指揮官。権威よりも実力で黙らせるほかにない。
それが管轄の違う軍の指揮権を用意に掌握し、戦力発揮させるのは至難の業だ。
ロバートには空海軍ならばともかく陸の実績など何もない。
そして、軍というのは、本質的に身内以外の口出しを嫌う。
それが、上官として赴任したからといって変わるかと言えば別だ。全く別なのだ。
なにより、これまで指揮をとっていた辺境伯の面子を考慮すれば厳しい。

「そもそもいったい、何故私に話が来ることに?」

「落とし所を探すため、と。卿なら理解できるはず。」

だが、ラムド伯とて退くわけにはいかない。
彼の様な外務を司る面々にしてみれば、現地に安心できる人物が必要。
そして、ある程度政治を理解しつつも軍務を知悉していることが条件である。
言うまでもなく、ヴィンドボナが信用できることも不可欠。

そんな人間が選抜される仕事である。
絶対に無理難題を処理させられる仕事なのは、言を待たない。
ましてや、軍人でありながら政治家に近いことが求められるのだ。
艦隊を愛する提督から、艦隊を取り上げて政治を与える?

交渉事が仕事とはいえ、これほど気分が乗らない仕事もないだろう。
ラムド伯は緊張を誤魔化すために、紅茶を流し込むと一気にまくしたてる。

「有体に言えば、ヴィンドボナの意向を理解できる人物が必要なのだ。」

「卿も理解されよう。卿が赴かれよ。」

眉を顰めつつ、ロバートは手に取った書類をつき返す。
そして、丁寧ながらも、断固たる拒絶の言葉。
彼の表情は、雄弁に碌でもないことを押し付ける友人への不満を物語る。

「私は、法衣貴族故に軍務には疎い。」

もちろん、その表情が読めないわけではない。
だが、ここでたじろぐ程ラムド伯とて素人ではない。
厄介事を持ちかけ、はいそうですかと下がれるならばそもそも持ちかけない。

「卿ならば軍務にも精通しているではないか。」

ヴィンドボナにしてみれば、中央の意向を解する事が不可欠。
其れと同じくらいに、軍事について知悉していることも求められている。
コクラン卿ならば、と中央の連中が判断したのはそういう背景からだ。
ラムド伯自身、悪い人選ではないと思う。
だからこそ、説得にも力がこもる。

「私は、艦隊が専門だ。陸戦など、そこらの中隊長の方がまだましかもしれん。」

だが、ロバートにしてみれば陸戦の指揮など論外だ。
海兵隊の指揮程度ならばまだ類似した仕事かもしれない。
だが、陸の戦闘など全く別物の種類になる。
陸戦ならば、専門家に任せるべきだ、と彼は信じていた。

「辺境伯らは陸戦をよく解する。彼らが補佐すれば、問題はない。」

「なら、卿が補佐をうけるか、彼らに任せればよい。」

「それは、できぬ。」

無論、専門家に任せるべきというのはラムド伯にしたところで理解している。
だからこそ軍事については、現地部隊に一任してきた。

「交渉をするにしても、勝たねばならないのだ。卿なら解するだろう。」

ヴィンドボナが求めているのは、軍人による勝利。
極端に言えば、軍事力を侮られるわけにはいかないという事情がある。
亜人との戦闘で、ゲルマニア軍が敗北し交渉を求めたと解釈される人事はできない。
ラムド伯以下、外交を専門とする人間は誤って解釈されかねないのだ。
軍事的勝利を基盤とした交渉。
ゲルマニアにしてみれば、後始末のためにも勝利が不可欠。
そして、内外にその意思を示すためには軍人の派遣しかない。

「ならば、なおさらハルデンベルグ卿が適任だ。」

そして、その事情を踏まえた上でロバ―トはハルデンベルグ卿を推薦する。
ゲルマニア軍部の重鎮であると同時に、諸候としても有数の力量を持つ人物だ。
このような難局で難しい指揮を執るならば、権威は絶対に欠かせない。

なればこそ、とロバートは思う。

自分は、新参者として慎重であらねばならないのだと自制しているのだ。

軍という既存秩序を何より重視する組織で、新参者が我がもの顔で振舞えるわけがない。
なるほど、ハルデンベルグ卿はロバートという個人を認めているだろう。
だから、個人的に見た場合ロバートの派遣も歓迎してくれる。
本質的には武人であるのだから、武勇を賞賛すらすることあるかもしれない。
だが、個人の承認が組織の中において絶対を意味するかと言えば、全く違う。

「いささか、口にするのも恥ずかしいが私は新参者に過ぎない。」

心外だ、とばかりに口を挟もうとするラムド伯を制止。
ロバートは、淡々と言葉を紡ぐ。
彼とて、思うところはあるが現実を直視する程度には現実的なのだ。

「新参者を指揮官として仰げるほど、ゲルマニアは統制が効くとは思えない。」

そして、ゲルマニアは中央の意向というものが絶対的ではない。
確かに命令すれば艦隊は動くだろう。それは、艦隊がロバートを認めているからだ。
だが、陸軍にしてみればロバートは艦隊の提督という程度。
軍全体に重きをなすかと言えば、彼は所詮新参の新興貴族としかみられていない。

「だから、ハルデンベルグ卿を推薦する。あの方ならば、軍に睨みも効くだろう。」

「睨みが効き過ぎるのだ。あの方は武人だが、同時に諸候でもあるのだぞ。」

ハルデンベルク侯爵はゲルマニア軍ににらみの効く重鎮。
それは、ラムド伯とて十分に理解している。それくらいヴィンドボナでは常識だろう。
だが、同時に中央集権派からしてみれば微妙な存在でもあるのだ、と思わざるを得ない。
武人として潔いとはいえ、彼は諸候だ。それも、軍系貴族の強力な一派である。

「選帝侯らに比べれば、まだましだが個人としては強力に過ぎる。」

「・・・だから、排除すると?ノブレス・オブリージュを解する方だが。」

一気に怪訝な表情から、反対だという顔に一変したロバート。
其れに対して、ラムド伯は誤解だとばかりに強く頭を振る。
彼とて、ハルデンベルク侯爵個人に含むところは無いのだ。
それでも、中央官僚以外の強力な軍権保持という事態は受入られない。
コクラン卿は強大な権限を持つ独立貴族に類似しているが本質は、官僚である。
彼の権限は中央の裏付けによるものであり、血縁でも地縁でもないのだ。

「排除するとまではいかない。だが、バランスを取らねばならないのだ。」

だが、ハルデンベルク侯爵は歴代のゲルマニア帝室に匹敵する歴史を誇ってきた貴族の中の貴族。
確かにヴィンドボナよりであったとしても、本質的には権限の縮小を望まないだろう。
そういう意味で、中央集権に対して穏健とはいえ反対派に属する。
そして、そのような人物に無理難題であるトリステイン問題で影響力を拡大されるのは困るのだ。
少なくとも、ゲルマニア中央集権派は。

「・・・なるほど、積極的に軍権を私に任せたのはそういうことか。」

その意図を理解したロバートは呟かざるを得ない。
確かに、厚遇されていたのは間違いない。封建世界と考えれば新参者であるにもかかわらず、だ。
結局のところその意図は明瞭である。あからさまだと言っても良い。
血縁・地縁が綺麗であり有能な軍人の確保と中央集権への助力。
どこまで考えていたのかは知らないが、アルブレヒト三世はなかなか策士だ。

「だが、それでも難しい。こういっては悪いが、私は陸戦など素人に等しいぞ。」

狩り程度の認識ならば、獲物を追いかける要領で亜人討伐もできる。
だが、遺憾ながらトリステイン方面の亜人は軍隊とみるほかにない。
そうなれば、ロバートの手には余る。補佐を受けても、無能を補える程度だ。
最初から専門の陸戦について知悉した軍人を置いた方がよほどまともだろう。

「一応、案は無いこともない。」

だが、ラムド伯にしてみれば相手の態度がわずかなりとも変化すれば十分。
ヴィンドボナとて問題の厄介さを理解しており、本格的な介入の意思すらある。
そして、その検討段階で制度上の課題も検討されているのだ。

「コクラン卿、卿の任務である北部開発、これは一段落したと聞くが。」

「ああ、初期の目標は達した。」

報告書を見れば、確かにダンドナルド近隣の発展は目覚ましい。
実際のところ、制度上の設計はほぼ完了したといってよい。
新領の大半は、ヴィンドボナ派遣代官との引き継ぎも始まっている。

「ならば、トリステイン方面の総督職はどうか?」

「総督?いや、待たれよ。それは、どういうことか。」

コクラン卿は興味を持ったのだろうか?
まあ、どちらにしても悪い兆候とも思えない。
そう判断したラムド伯は続ける。

「卿が指揮権を委託すればよい。実質的には政治と財政が卿の職務だ。」

「・・・つまり、私はツェルプストー辺境伯を指揮下におくと?」

意味するところは、同格の辺境伯を職制上の部下にするという事。
同時に、実質的な軍の指揮権には干渉しないことで、現状を維持できる。
言い換えれば、現場の混乱は必要最小限に留まるだろう。

「そうなる。そして、複雑な彼の地を統制することが望まれているのだ。」

名目上は戦闘の指揮だが、実際はトリステイン問題解決のために派遣されるのだ。
問題とは、厄介なリッシュモンら旧トリステイン貴族や匪賊対策も含む。
究極的には問題が起こらないように、予防策を構築するのが目的になるだろう。

「卿は、いや、ヴィンドボナは私にそれをやれと?」

それほどの人事だ。
皇帝の意向がストレートに反映されていないほうがおかしい。
なにより、これほどの内示がされるということは、すでに根回しがあっただろう。

「そうだ。ヴィンドボナは卿に期待している。」

軍事的な勝利の演出。
政治的ごたごたの処理。
外交上の問題防止。
これらを、個人に処理させようというのだ。

「卿には率直に言うが、気乗りしない。厄介事でしかないではないか。」

故に、そう簡単に拒否できる人事命令ではないがロバートにしれみれば歓迎できない。
私的なことを言えば、ようやくキツネ狩りが楽しめそうなのだ。
それは、もはや英国貴族の生きがいに等しいにもかかわらず、取り上げると?
そして、公的に見た場合複雑怪奇な問題を処理することになるのだ。

我慢強い性格だとしても、うんざりするような仕事が相場だろう。

「心よりご同情申し上げる。だが、申し訳ないが行ってもらいたい。」

「・・・あいわかった。しかし、やる以上は私に任せてもらいたい。」

「元よりそのつもり。期待さしてもらいたいですな。トリステイン総督?」

万感の思いがこもったコクラン卿の溜息。
ラムド伯はその肩を叩き、持参したワインを差し出す
交渉がひと段落したという安堵と、若干の申し訳なさと共に。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
あとがき

①読みにくいというご指摘により、改善を試みました。
 あんまり、変わっていないですが(-_-;)
②ロバート:北部で隠居など許されません。
⇒厄介事最前線に放り込みました。
③大公国の憂鬱
⇒いつの時代も小国は苦労します。
悲哀というか、頑張れ。超頑張れ。
名前も覚えてもらえないくらいマイナーな国じゃないと示すのだ。
(クルデンホルフ大公国と入力するのが面倒なので略してますが。)
④更新の遅延
⇒ごめんなさい。


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