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No.14989の一覧
[0] [習作]胡蝶の現世(旧題・島の星の物語 オリジナル異世界 現実からの転生もの)[うみねこ](2010/09/25 11:57)
[1] プロローグ[うみねこ](2010/05/24 22:56)
[2] 第一話 [うみねこ](2010/05/24 22:59)
[3] 第二話[うみねこ](2010/05/24 23:02)
[4] 第三話[うみねこ](2010/05/24 23:05)
[5] 第四話[うみねこ](2010/05/24 23:07)
[6] 幕間その1 「古代史」[うみねこ](2010/04/18 21:17)
[7] 第一章 第一話[うみねこ](2010/05/24 23:11)
[8] 第一章 第二話[うみねこ](2010/05/24 23:14)
[9] 第一章 第三話[うみねこ](2010/05/24 23:19)
[10] 第一章 第四話[うみねこ](2010/05/24 23:22)
[11] 第一章 第五話[うみねこ](2010/05/16 02:12)
[12] 第一章 第六話[うみねこ](2010/05/24 23:29)
[13] 第一章 第七話[うみねこ](2010/06/11 22:53)
[14] 第一章 第八話[うみねこ](2010/09/25 11:56)
[15] 第一章 第九話[うみねこ](2010/07/23 23:52)
[16] 第一章 第十話[うみねこ](2010/08/02 13:54)
[17] 第一章 第十一話前編[うみねこ](2010/08/29 00:28)
[18] 第一章 第十一話後編 [うみねこ](2010/09/24 22:30)
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[14989] 第一章 第一話
Name: うみねこ◆4d97b01e ID:a3a6038c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/24 23:11
                                                              第一章 「成果と対価」


















「天に二つの 日は照らず」  ――ハワイ大海戦 軍歌

「父母を敬い、これを親しみ、その心に従うべし」  ――日々の教え 福沢諭吉著






 










                                                帝国暦618年 一月十日 帝国立セント・アルマーダギー学園初等部

 




 この世界の暦は、地球と良く似ていた。

 具体的には、一年は360日の12ヶ月。つまり一ヶ月30日。時間は、こちらも二十四時間で地球と一緒。

 であるからこそ、僕はこの世界に転生してから未だに若干迷うところがある。月と季節の関係だ。

 この世界、前述したとおり地球に酷似した暦のくせして、若干月と季節の配置が違うんだ。例えば、日本ならば成人の日のはずである今日、僕が。
 

 「――でありますから、えー、皆さんも伝統ある当校と帝国の栄えある一員となったことを自覚し、これからの、えー、学校生活に――」


 入学式をやっていたりとかだ。

 思わず出そうになったあくびを噛み殺した。流石に入学式早々に粗相をするのはまずい。特別学級は一番前のほうの列なんだから、たとえ後ろ盾にバースラーさん――いやマリウスさんがいるのだとしても体面的に少々拙い。と言うか、あの人の性格的にそんな馬鹿な事やったらむしろ説教地獄を味わされる事になるから尚更か。

 この世界は、新年の到達が春の到来と同じだ。一月は地球、こと日本で言えば三月と同じくらいの気候で、もう一月もすれば本格的に暖かくなってくるはずだった。

 但し、じゃあ何で日本で言う三月に入学式をするのかと訊かれれば「さぁ?」と答える以外に無い。この世界では一年度と一年が同じように扱われている所為だろうけど、ここら辺は考え方の違いみたいだから地球と比べようが無いのかもしれない。大体、地球ですらアメリカの入学式は九月ごろの筈なんだから。

 とはいえ、いきなりそんな状況に放り込まれれば混乱もする。今だって時々、「本格的に寒くなり始める月は?」と尋ねられて11月と答え、赤っ恥をかく事もある(ちなみに、気候的な問題でこの国の本格的な寒さの訪れは九月ごろだ)。

 と言うわけで。両親と新年祝い兼入学のための暫しの別れを済まして(ハンカチ持った?なにか忘れ物は?と言うやりとりを三日三晩繰り広げてたのはいい思い出にして置こう)から十日と経たずに入学式と言うのは結構辛い。想像以上に新年祭って言うのは疲れるんだ。ちなみに、新年祭って言うのは新年の幸運を願ってドンチャン騒ぎする、日本の新年近辺の風習をもうちょっと厳かでなくしたような雰囲気に近い祭り、平たく言えば忘年会とか新年会とかそういう類だ。


 「――――新入生起立!」


 多分学園の生活指導担当の教師なんだと思う。それが、右手を筒のようにして大声で叫んだ。もちろん、マイクも拡声器も無いんだから仕方がない。

 僕も、なるべく他の同級生――にこれからなる連中に合わせて起立する。うん、何と言うか、流石は特別学級。六歳には思えないね。

 結局マリウスさんの勧めで受験したこの特別学級枠に見事合格――と言ってもやったことはと言えば簡単な足し算、引き算、掛け算とあと読み書きだけだったから合格して無いとへこんでたけど――した僕は、今このセント・アルマーダギー学園初等部特別学級の一員となった。この時の僕の胸は期待に満ち溢れていた。この学園でこの世界についてきっちり学んで、地球での記憶を応用してこの海を我が物のように扱ってやる!まぁ、所謂異世界転生物オリ主を夢見てたって言うのが一番的確な表現だったかな。

 




セント・アルマーダギー学園は、リージョナ環礁内の<アルマーダギー>島を丸々使って建てられている学園で、だからこそかなりの敷地面積がある。

 なんでそんなに広い面積が必要かといえば、この学園は初等部から高等部、更には学園院――地球で言えば大学と大学院が混ざったような教育施設に、各種研究機関が併設されているからだ。

 と言うわけで、そんな広大な学園だけれども、それは高等部以上の人たちの話。

 人族帝国は義務教育制を採用していないから、普通初等部中等部に子供を入学させる者は少ない。大抵は、生まれ育った土地で初等ないし中等教育を受けてから、高等部に入学って言うのが一般形式だ。つまり、広大な敷地面積に比べて、初等・中等部の校舎はかなり狭い。まぁ、それにしたって大きかったけど。

 つまり、この学園の初等部に通う生徒とって言うのは将来高等部・学園院を卒業させたい金持ちの親達が入れさせた、少なくとも家柄はいいことが確かな子供たちなのだ。

 ただ、何事にも例外はあったりする。例えば、僕が入った特別学級。これは、帝国全土から集められた支配階級・リージョナ族の中でもとりわけ高貴な身分のものとか、種族を問わず秀でた才能を持つものとかを集めている。

 と言うことは、特別学級に入るって事必然的に変人に極めて近い天才とか、或いは貴族の坊ちゃんやらお嬢様やらとご一緒するって事で。つまりは面倒ごとに巻き込まれる可能性がかなり高くなるってことでもあって。


 「それで、お前はなぜこの学校に入ったのだ?」


 明らかな上から目線であった。しかも、クラスの連中は全員遠くを取り巻いていた。何でだかは知らないし、知りたくもない。ただ、問題がひとつだけあるとすると上から目線で話しかけられているのが僕だと言うことかな。

 クラス発表(特別学級は一つだけだけど、他の初等部一年を合わせると三クラス程にはなる)の後、良くある一番初めの学級会を終え、大半が寮に戻ろうとする中、隣の席に座っていた少女、いや幼女がいきなり僕に対して突っかかってきた。事実だけ述べようとするとそうなる。

 容姿は、まぁほとんど人間と変わらない子だ。顔も、多分この頃の子供にしては「可愛い」と言うより「美人」に分類されるのだと思う。あと、猫耳と尻尾。

 ……さらりと言ってみたけど、猫耳と尻尾。もちろん、可愛い装飾品じゃあない。実物――というか、本物と言うべきか。とりあえず、遺伝的な特徴ではあると思う。

 目の前のこの子のこの容姿から判別できること。つまり、どう見てもこの子はこの国の支配階級・リージョナ族の一員です。本当にありがとうございました。

 ………。

 




 この、島が無数にある世界は、一つ一つの島に固有の文化が多数ある。例えば、人族、つまり地球で言う人間は比較的数は多いものの、文化的にはばらばらだし、肌の色もばらばら。と言うのが隣り合う島同士でも発生するくらいの状況だ。

 と同時に、この世界で誕生した種族の内、獣人族と呼ばれる種族は、肌の色こそ変わず殆んどが白か、あって黄色なものの、代わりに色々な種族が存在する。

 例えば、犬に似たボロワカ族。兎に似たアーベルヌ族にリスに似たエル・シャード族エトセトラエトセトラ……。つまり、人間における肌の色や身体的特徴の違いが、獣人族では耳やら尻尾やらに出てくるって事だ。

 その中でも、リージョナによる人族帝国は、リージョナ環礁のリージョナリア島で誕生したリージョナ族主体の国家だった。少なくとも、歴史家たちはそう主張している。

 話を戻して何を言いたいのかと言えば、猫耳っ子=お偉いさんと言う恒等式が成立すると言うことが言いたかったわけ。だから、この状況の猫耳っ子のところに、目の前の女の子を代入してやれば、この子が一体どんな身分なのかって言うのはすぐに判る訳で。


 「どうなのだ?」


 済ました顔でそう訊いてくる目の前の女の子に僕はどう回答すればいいんだろうか。

 僕は必死に頭を回転させる。取り入って腰巾着になる――って言うのは僕の趣味には合わない。うん。楽そうだけどそれは厭だな。

 ってことは、ぺこぺこしたように話しかけるって言うのは論外。頭の外に追いやろう。じゃあ、どう対応するよ。

 僕は少女の顔をちらと一瞬だけ見た。冷めたような目だったけど、さっきの怜悧でそれでいて綺麗な発音から瞬時に考察した。

 つまりは、かなりの上級貴族ってことかもしれない。発音が上手いって事はそれだけ話すのに、それも家族のじゃれあいではなくきちんとした会話に慣れているってことだ。大方家庭教師辺りがずっと付いていたんだろう。ちなみに、この世界ではまだ幼稚園・保育園の類は存在していないから端から考慮には入れない。

 そして冷めたような目。つまり、僕に対する軽蔑なのか? でも、恨みを買うような覚えもない。

 と言うことは自身の優越を信じきっているってことか?


 「え、ええっと、君は何で?」


 僕は探りを入れてみた。すると。


 「……私が聞いているのだ。まずお前が答えるのが先だろう」


 これが彼女の返答だった。

 嫌な話だけど、僕の考察は大当たりだったらしい。どこかの貴族の令嬢か何かなんだろう。

 ただ。ただ、少しカチンと来た。何と言うか、高圧的な物腰に。

 多分、理由なんてものは無い感情だったんだとは思う。あえて理由をつけるとするなら、日本でそんな経験をすることなく過ごすって言う、いまから考えればものすごく幸運な生活を送れて居たからかな。ともかく、若干頭に血が上ってしまった。

 だけど、後に僕はどうしてあの時「下手に貴族に目をつけられると困る」って言う思考を行えなかったのか悔やんでみたりすることになる。

 ともかく。


 「へぇ、どうして? なんで僕が先に答えなきゃいけないのかな」


 僕はやってしまった。

 少女は明らかに動揺していた。猫耳がひくついている。多分、今までこんな風に返されたことなんか無かったんだろう。


 「そ、それは、こうきな者は先に訪ねることができると言う……」

 「ああ、そうでしたか。ごめんなさい、自己紹介も無かったからそうとは思わなくて」 


 悪びれず言ってみる。内心でやっちまったかとか思ってはいるけど、もう後には引けない。

 少女は、僕の言葉を理解するやいなや顔を真赤にして言った。


 「じ、自己紹介がまだとは何だ! そもそも、この耳を見ればどのような立場のものか判るだろ「ああ、同級生ですね」う……へ?」


 目を白黒させる少女に、反論する間を与えぬまま僕は続けた。


 「学ぼうとする意志を持って入学した同志ですよね。少なくとも初代皇帝陛下は学園を建てるときにそう仰ったそうですよ? なら、身分の高い低いもないんじゃないですか?」


 何故だかは分からない――いや、まず間違いなく僕が少女を言い負かしたからだろう。教室の温度が軽く十度は下がったような気がした。ついさっきまでぽつりぽつりと漏れていた話し声が消え去っている。

 少女は噛み付くような目で僕を見た。その瞳には若干涙が……涙?

 ここでようやく、僕は先ほどから感じていた何かをやってしまった感に説明を付ける事が出来た。


 一、確かに貴族の令嬢だとは言え、まだ六歳の女の子。

 一、勝気な彼女を思いっきり言い負かした。

 一、意地悪されたと感じた幼女の末路、よもや分からぬわけある無いな?


 ……わかりませんでした、サー。

 やべ、僕もしかして泣かせた!? 確実に泣かせたよな!? うわ、まだ入学初日だぜ? って言うか思い出した。僕この子が貴族の家柄だって考察してたよね?

 嫌がらせとかされたら……。

 やばいよね。潰れるよね、父さんの商会。


 「………」


 無言のままの少女。おそらく急激に蒼くなった顔をそれでも少女から逸らさない。ここで謝ってももう無駄なんだ。ええい、毒を喰らわば皿までだ!

 と、僕が悲壮な覚悟――正しく自業自得だったけど――を固めていると。

 だだだっと少女は涙を隠すようにして、扉の近くで固まっていた哀れなクラスメイトを押しのけ、走り去って行った。

 ………。

 さて、帰るか。


 「おい、おまえ」


 内心冷や汗たらたらで、鞄を引っつかんで自室に行こうとした刹那。後ろから話しかけられ、思わず体がびくっと反応する。


 「え、ええっと、君は?」

 「ヘルムート・ダン・レンスキー。さっき俺はさっき自己しょーかいしただろ?」


 ああ、レンスキー君か。さっきの学級会で同じ部屋に割り振られたって自己紹介された。


 「しっかし、おまえ勇気あるよなぁ」


 こちらは少女とはうって変わって親しげで、少し乱雑な口調。平たく言えばごくごく普通の六歳児の口調だ。


 「勇気って……さっきの女の子?」

 「っ! ば、ばか! 気安くそう呼ぶな、後でどうなるかわかんねーぞ?」


 顔を一気に蒼くして、目の前の少年が言った。


 「……そんな大貴族の子供だったの?」

 「………おまえ、まさかあのお方のこと知らねぇのか?」


 御方って言うのもまた。豪い尊敬表現だな。


 「うん。僕は誰だかわからなかったけど」

 「……おまえ、ほんとにこのクラスの生徒なのか?」


 信じられないと言わんばかりの表情で少年は言った。それは言いすぎだろう、とこの時の僕は思った。


 「……あのお方は貴族じゃねぇよ」

 「? じゃあ一体」


 貴族じゃないのに高貴な身分? と僕は思わず聞き返したのだけど。


 「帝族」


 レンスキー君の一言で凍りついた。……帝族?


 「帝国第四皇女殿下、マフィータ・ダン・リージョナリアさまだよ」


 ほぉ、帝国第四皇女殿下ねぇ。




 ………。




 ………………。





 ………………………。






 やっちまったああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
















後書き

 主人公、早速面倒事を起こすの巻。
 どうも、作者です。ようやくネコミミの登場ですが、まだあまり目立ってませんね。
 一応無難に纏めようと思って書き上げてみたんですか、如何ですかねぇ。若干無理があるって言われても仕方ないようなところもあったり……。と言うか、むしろ反論する主人公の方が子どもっぽいか?
 まぁ、それはそれとして。実はこの話、最初のプロットでは始めっから喧嘩って言うふうにはなってなかったんですよね。
 主人公がマフィータ皇女の事を知らないって言うのは共通なんですが、それで気軽に名前で呼んでしまい、それが縁で興味を持たれて……。
 はい、どうしてボツになったかお分かりいただけましたね。このままじゃインスパイアどころか丸パクリになると言う事実に愕然として、学園最初の段階でのプロット大幅に考え直す羽目になったのはいい思い出です。
 それでは以下レス返しです。

 >>ヒーヌ氏

 この世界の島々の閉鎖性ですが、他の地域はさておき列強が存在する地域では大半が強引に政治・経済ブロックに取り込まれるか、悪くすれば文化の押し付けなども起こっている時代が主人公の体感で言えば結構前にあったので、差し当たって問題になるほどの状況には至っていません。

 >>磁器氏

 ありがとうございます、ありがとうございます(大事なことなので(ry

 >>TOY氏

 うーん、どうなんでしょうか。
 確かに、現実生活が忙しくなってきているので一回あたりの文量を増すと投稿間隔がかなりあいてしまうんですよね。
 ただ、だからと言って文量少なめで良いやとか思うと、スキル<怠け癖>が発動してみるみる内に文量が雀の涙位になると言う未来が頭の中に浮かぶので、なるべく多めを心がけていくつもりではあるんですが。

 最後に、今回は前回とかなり時間があいてしまって申し訳ありませんでした。
 多分、今後は投稿間隔がもっと不規則かつ長期化するとは思うんですが、投げ出すつもりだけはありませんので、今後もよろしくお願いします。


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