<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.14793の一覧
[0] 【習作】根暗男とハルケギニア【転生物、ゼロの使い魔】[bb](2011/05/14 23:14)
[1] 根暗男の転生[bb](2010/05/02 13:17)
[2] 夢のような日々[bb](2010/05/02 13:17)
[3] 夢のような日々2[bb](2010/05/02 13:17)
[4] 夢のほころび[bb](2010/05/02 13:17)
[5] 夢の終り、物語の目覚め(前)[bb](2010/05/02 13:17)
[6] 夢の終り、物語の目覚め(後)[bb](2010/05/02 13:17)
[7] 新しい日常[bb](2010/05/02 13:17)
[8] ラルフとキュルケの冒険(1)[bb](2010/05/02 13:17)
[9] ラルフとキュルケの冒険(2)[bb](2010/05/02 13:04)
[10] ラルフとキュルケの冒険(3)[bb](2010/07/14 12:44)
[11] 微妙な日常[bb](2010/10/15 12:23)
[12] 風の剣士たち(前)[bb](2011/02/06 04:10)
[13] 風の剣士たち(後)[bb](2011/02/06 04:34)
[14] 魔法と成長[bb](2011/02/07 05:41)
[15] フォン・ツェルプストー嬢の観察[bb](2011/05/31 21:46)
[16] 移ろいゆく世界[bb](2011/05/23 20:13)
[17] 決闘は、スポーツだ!(1)[bb](2011/05/26 22:02)
[18] 決闘は、スポーツだ!(2)[bb](2011/05/29 15:31)
[19] 決闘は、スポーツだ!(3)[bb](2011/05/31 22:29)
[20] 傭兵の週末、週末の傭兵[bb](2011/06/03 20:13)
[21] 狩りと情熱[bb](2011/06/08 22:10)
[22] あなたの胸に情熱の火を(1)[bb](2011/06/16 22:30)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[14793] 根暗男の転生
Name: bb◆145d5e40 ID:5ca4e63a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/02 13:17
 ゲルマニア。

 メイジ。

 平民。

 ガリア。

 トリステイン。




 それらのごく普通の単語が、前世で読んだ小説『ゼロの使い魔』にあったことに思い当たったのは、2年前のことだった。
 本や創作物に自分のいるこの世界のことが書かれている、というのはちょっとした恐怖だったが、自分は自分で、『彼』は『彼』だ。もう、一度死んだ彼ではなく、自分は生まれ変わったのだ。
 書物の内容がこの世界で起こることだとは限らないし、そんなに都合よく何もかもがうまくいくとは思えなかった。未来に起こることがわかっているというなら、今の自分は何だというのだ。ここにいる自分は確かに人間で、物語の人物なんかでは、ない。


 だから、この自分、ラルフ・フォン・マテウスは、以前の『彼』とは違う人間だ。


 そう、割り切ることにした。

「けどなあ」

 事実上、同一人物であるといっていい。








根暗男の転生








 『彼』であった頃の記憶を思い出したのは、ちょっとした事故で頭を強く打ったときだった。それからというもの、考えみるほどに俺と『彼』は同一人物だ。新しい人生を歩み始めて、違った環境で育って、なのにほぼ同じような人間になりつつある。

 マイナス思考、自己嫌悪、考えすぎ、無気力、消極主義。

 『彼』の欠点を、ほぼそのまま受け継いでしまっている。まだ3歳だというのに、既にそういう人間になりかけていたのだ。そして現在、5歳にしてほぼ完全にその性質を開花させつつある。

「はぁ……」

 思わずため息が漏れる。


 このハルケギニアという世界には、『貴族』と『平民』というはっきりとした身分の区別がある。そんな中で俺は貴族として生まれた。これは非常に幸運なことだっと言えるだろう。ゲルマニアというメイジ――魔法を使える人間――の比率が小さい国にあって、親は子爵とはいえ貴族であるし、武功こそほとんど無いものの非常に優秀なメイジとしての血をこの体に残してくれている。
 父は『風』のトライアングル、母は『火』のスクウェアである。
 メイジにはクラスという概念がある。四つの属性『土』『水』『火』『風』をいくつかけあわせることが出来るのか、それがメイジとしての基本的な力を見る目安になる。一つならドット、二つならライン、三つならトライアングル―――と言った具合に。加えて、この世界で信仰を集める始祖が使ったという『虚無』という伝説の系統が存在する。
 トライアングルである父はかなり上位のメイジであるということになるのだが、この先も上に行こうという気概はないらしい。マテウス家領は『物語』の中にも出てきたツェルプストー領のすぐ傍にあり、おこぼれとも言える繁栄が自領にもあるため、現状に満足しているらしい。いざというときにはやれる人間、と思いたいが、そもそも『いざというとき』が来ないように生きる人間であるためか、そんな機会は無いように見える。
 そして母は火のスクウェア。天才的な『火』の才能を持ちながらも穏やかな性質で、メイジとしての功など、文字通り皆無である。もちろん戦場に立ったこともない。喧嘩すらしたことがないんじゃないのかと思う。スクウェアのメイジだと知っているのも、学生時代の友人か家族、一部の使用人くらいだという。父はあまり母を表に出したくないらしく、メイジとしての能力についてもあまり話が広まらないように手を回しているらしい。
 血だけは優秀だ。だが性格的にも、両親の消極的な性格が自分にも受け継がれているようで、嫌になってくる。穏やかで、愛情豊かな家庭であり、そういう意味ではすばらしい。だからその幸福を噛み締めていればいい、とも思う。

「坊ちゃま、まもなく夕食の時間でございます」
「あ、はい」

 文字の書き取り練習帳を閉じ、夕食へと向かった。家族は、暖かい。暖かいのはいいんだが、どうもな……。




「最近はどうなんだ、魔法のほうは?」

夕食の席では、毎日のように魔法のことを聞かれる。やはり貴族は魔法ができてなんぼなのである。

「順調ですよ、お父さん。今日も爺やに褒められました」

 実際、魔法の習得は順調に進んでいる。今年の5歳の誕生日に杖をもらい、その後三ヶ月もたたないうちにラインになった。年齢を考えればのびしろはありすぎるほどあるだろう。少なくとも、いつかは必ずトライアングルにはなれるだろう。両親の才能を見事に受け継いだらしく、『風』にも『火』にも高い適性がある。
 算学などはほとんど習う必要もないため、午前は文字や詩歌、午後は魔法の練習が主となっている。苦労しているのは詩歌と文字の書き取りのほうで、魔法は自分の興味もあって非常に順調に進んでいる。両親や教師は天才と誉めそやすが、まあ、これは血と興味の産物だ。
 魔法使いなんて、不意の拳銃一発でおしまいである。この世界にはちゃんとした拳銃なんてないけれど。そして作れるはずもないが。しかし、銃弾を防げるシールド系の魔法は絶対覚えようと思う。

「そうかそうか、さすがだなラルフは。私たちもラルフほど早くラインになったものは知らないしな、本当にすばらしい」
「そうねえ。私も早熟だなんてよく言われたけれど、ラルフはそれ以上ですものね」

 これである。何かと言えば早熟、天才、すばらしい。なんだかもう馬鹿らしくなってしまう。素晴らしい血を継いだ肉体に、年齢に見合わない精神。これで早熟だの天才だのと言われても、気分が悪い。

「まだまだですよ。それよりも父さん、勉強のほうなんですが、読み書きはもう終わっています。そろそろ勉強も減らしてもらいたいんですが」
「そうか。まあ、ラルフなら大丈夫だろうな。勉強を減らして、何をしたいんだね?」

 実際、読み書きは普通に出来る。ただ、字があまりうまく書けないだけで。子供の体と言うのは不便なもので、どうも字が崩れていけない。が、そんなことは時間が解決してくれるだろう。詩歌のほうは才能がないとはっきり感じる。時間の無駄と言うものだ。

「はい、何か武器の扱いを覚えてみたいです」
「ほお? どうしたんだ、急に」

 まあ、強くなりたい! といった衝動も少しくらいはないではない。しかし今は何より、

「体を動かしたいんです。勉強に魔法に、動かないことばかりで退屈なんです。遊ぶよりは、剣か何かをやってみたいので」
「なるほど。私も剣なら心得があるが……」

 思わず嘘でしょ、という言葉が口をつきそうになる。

「まあ、さすがに稽古をする時間もないだろうな。軍などでは剣術が主流だが、ラルフも剣を使いたいのか?」
「それが、よくわからないので。槍や剣、いろいろありますからね。何をやればいいか、一度誰かに聞いてみたいとは思っていたのですが」
「ふむ。考えておこう。ラルフも何か思いついたら言いなさい」

 一体何がいいのか。剣、は何か面白くない気がする。槍。面白そうではある。いっそ、棒。それとも、弓。長刀。短刀。ナイフ。銃。ハルケギニアにも、武器は色々ある。それとも、いっそ格闘技なんかでもいいかもしれない。
 魔法は大きな力ではあるが、メイジだからといっても平民よりも体力や戦闘力で劣れば負ける。斬られれば血も出る。斬られないための技術は必要だろう。

「いっそ、メイジ殺しのような高い技術を持つ傭兵を雇って、全部教えてもらうなんてのもいいですね。剣から槍、銃、ナイフまで」

 さすがにメイジ殺しはたとえが悪かったのか、父が嫌そうな顔になった。

「まあ、傭兵にいろいろと習うと言うのは面白いな。ラルフは軍人になりたいのか?」
「いえ、そういうわけではないですが……。いや、そうなのかもしれませんね。まだ、よくわかりませんが」

 軍人になりたい、とでも言っておいたほうが良かろう、こういう場合は。そのほうが話が早いと言うものだ。

「そうか。まあ、私のほうでも考えておくから、少しの間我慢していなさい。軍に行くなら、武の素養はあればあるほど良いからな」

 わかりました、と簡単に答える。天才児扱いは本当にやめて欲しい。なんだか空しくなってくる。だって、実力じゃないだろう、こんなのは。血統だ、血統。





 これから、どうするべきなのか。それが毎晩の課題である。昼間は文字の練習やら魔法の練習やらがあるため、一人でじっくり考える時間は、寝る前のこの時間しかない。

 『物語』どおりの事件が起きるなどという仮定は胸糞が悪いが、『物語』のとおりの物事が起き、今も起きているというなら、この知識だってバカにしたものではない。まず、物事が知識どおりであった場合を仮定して――つまり『最悪』を仮定して――方針を考えてみる。何も起きないなら、それでいいのだから。

 確か、主人公がトリステインの虚無に召喚される。それから、盗賊やなんかと戦い、アルビオンで紛争があり、彼らが大活躍をおさめる。その後何故かガリアが悪いということになり、ガリアの王が虚無で、だが彼も何か悲しい過去があるとかいった話があり、その後今度はロマリアが悪いということになり、ロマリアの教皇も虚無で、しかも何故か主人公たちも聖地奪回戦争に加わることになり、エルフが……。

 考えてみれば実に抜けの多い知識である。せいぜい『彼』が一度通して読んだ程度のものなのだ。しかもこちとら一度死んでいる。あの気分を味わえば、手慰みに読んだ薄っぺらい小説の内容なんて吹っ飛んでしまう。だというのに、今度はこの世界で生きていかねばならない。まさにジレンマという奴だ。何が起こるか、ではなく、何を最終的な目標にするのか、から始めた方が良いだろう。
 自分が幸福に生きるためには、ぶっちゃけた話『現状維持』であることが望ましい。時代が大きく動くなんてのは、迷惑なだけの話というものだ。そしてそれは、全ての貴族、多くの平民にとっても同じことだと思う。
 例えば、現状の『剣と魔法の世界』である日、戦車や戦闘機が使われる。ここまでは一応、『物語』で語られたことだ。まずここからおかしい。こんな中世世界でそんなものが出回ってたまるか。
 もっと最悪な形を考えれば、このハルケギニアと『向こう側の世界』とが繋がる。これだと、こちらの世界の秩序はあっという間に崩れ去ってしまうだろう。向こう側の世界も同様だ。つながった先に、ある日突如として魔法という力をもった人間が現れる。―――間違いなく、ろくなことにならないと言い切れる。
 この世界も、いずれは『彼』の世界のように科学技術は発展していくだろう。その証拠に、こちらでも銃は開発されている――何十年、何百年かかるかわからないが、この世界も、じっくりと発展してゆけばいい。

 なんにせよ、聖地奪回戦争なんてものはそもそも起きないことがもっとも望ましい。ロマリアやトリステインの『場違いな工芸品』だったか、科学兵器も全て無い方がいい。レコン・キスタなんてのは問題外もいいところだ。ハルケギニア中が巻き込まれてのエルフとのもめごとなんてのも御免だし、住むところがなくなるのも御免だ。要するに、あんな物語は綺麗さっぱりすべて御免だ。
 王権は確かに国家に光を照らし、その光に照らされて貴族は誇りと武力でもって領民を守り、領民は健やかに―――、これが一番いい。それでこそ平穏な一生が送れるというもの。
 しかし、これはゲルマニアの小貴族の子女ごときがどうこう出来る内容ではない。それなら、俺はいったい何をどうすればいいというのだ?
 わからないならば、とにかく自分の身を守ることだ。そのために必要なものは? 一言で言えば、力だ。戦力でも、魔法の力でも、財力でもいい。何らかの力を手に入れておくべきだ。自分の身と現在地を守り抜ける程度の力。


 例えば、戦力なら。

 よくある話だが、『あちらの世界』の武器を再現。――没。
 自分がアイデアを出し、職人やメイジを雇って10年くらい研究開発すれば、『あちらの世界』の拳銃に近いものくらいならきっと出来るだろう。だが、それを作ってどうなる。今度は自分がそれで狙われる番になる。そもそも時間がかかりすぎる。10年という見込みだって、かなり楽観的な推量である。人生をかける覚悟が必要だと思う。そもそもそんなものを作り出せば、この社会全体への劇薬となってしまう。混乱の種となるのは必定だし、ハルケギニア中のメイジから猛烈ににらまれることになるだろう。
 自分専用でという前提なら、一丁くらい回転式拳銃(リボルバー)のようなものがあればいいかもしれない。自分で作れればだが。銃の知識なんてほとんど無いし、多分無理だ。

 自分ひとりの個人戦力の増強。――まあ、これは必要ではある。
 自分個人に関して言えば、力はあればあるほどいい。魔法は当然のこと、武術なども修めて損はない。ただ、それで何ができるのかといえば、せいぜい戦場の華になる程度のこと。絶対に必要ではあるが、それだけでは何も出来ない。
 ただ、いざとなったら虚無やらガンダールヴやら、もしくはエルフといった連中を力で叩き伏せるくらいのことができると言うのが望ましい。難しいのだろうが、血統的には優秀なのだし、不可能だとは思わないほうがいいだろう。

 政治力。―――これは駄目だ。話にならない。
 そもそもこのゲルマニアで政治力をつけ、たとえ宰相や皇帝になったとしても問題は解決しない。何とかしなくてはならないのはトリステイン・アルビオン・ガリア・ロマリアであって、このゲルマニアではないのだ。政治力というなら、他所の国の政治力が必要なのだが……これはどう考えても不可能というものだろう。
 なにより、これが一番重要なことだが、俺はそんな立場に立つのは嫌だ。


 内政を地道に行い、『物語』の人物達と関わらず、自領にこもって何もしない。
 これは大いにありだ。一通りハルケギニア世界の混乱が治まるのを待ち、静かにすごす。仮にも貴族の家であり、嫡男でもある。基本的に何もしないでもいいはずなのだ。自領の内政に勤め、領民を守り領地の発展に尽くす。同時に財力など家の力を蓄える。金というのはいつの世にも通用する大きな力だ。エキュー金貨で取引がなされるこの世界では、インフレーションなどの危惧もそう大したものではないだろう。これが一番確実なようにも思う。よき領主として生涯を過ごせそうである。領民に慕われる領主という形なら、立場を守ることも容易だろう。平民を虐げるつもりはさらさらないが、せっかく貴族に生まれたのだ。その立場くらい守りたい。
 しかし、どうやって、という問題がある。はっきり言って俺は金を稼ぐことは下手だと思う。僅かな交易と農民からの税で成り立つ、このそう大きくもない領地で何をして金を生み出せばいいのか、さっぱりわからない。それに、こういったことには今ひとつ気が乗らない。俺は自分でこういった目標設定をするのが苦手なのだ。与えられた目標を適当にこなしていればいい、というのが一番楽で、面倒がない。




 やれやれ、どんな人生を歩めばいいのか何時まで経っても見えてこないのは、どうしたものなのか。



前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.035523176193237