メディカルルーム内、Dボウイが眠っているベッドの脇でそれぞれ座ったり立ったりしながら情報をまとめる。艦長への報告はこの後だ。
俺が到着した時、既にアームロックしながらのDボウイへの事情聴取(この場合は尋問と言うのが正しいのでは無いか)は終わっており、怪我が治りきっておらずその上アームロックで体力を消耗したDボウイは現状話せる事を全て話して気絶してしまっていた。
「なるほど、つまりこのタカ……ゲフンゲフン、Dボウイはあのラダムとかいうエイリアンと戦っていて、記憶は無いけどあいつらは倒さなければならない敵だということだけは分かっている、と」
「そ。んで、このアイ……ゴホン、ブレー……んっんぅ、Dボウイは自分が地球の人間であると主張してるってわけだ」
「とりあえず、今聞き出せたことだけでもチーフや艦長達に報告しましょう」
「なんだ二人とも、風邪か?」
ついつい名前で言ってみたくなる衝動をこらえきれず、慌てて咳でごまかした俺と美鳥をノアルが気遣う。原作知識持ちでスパロボにトリップした時から覚悟していたが、これはちょっとキツイ。
他にも未知の勢力を何故か知っているプレイとかすごく魅力的だ。前回ラダムと接触した時も危なかったが、あの時は俺と美鳥で、どっちが『あれはラダム!もう地球に侵攻していたのか……』とかやるのかけん制し合っている間に戦闘が始まってうやむやのうちにどうでも良くなってお流れになったが、今回は長い戦いになりそうだ。
Dボウイの本当に記憶喪失のふりをするつもりがあるのか分からない諸々のボケっぷりとかを見ていると、突っ込みと共に名前暴露ぐらいはどっちかが耐えきれずにやってしまうかもしれない。
ま、名前程度は知っていてもおかしくは無い。この世界の宇宙開発系の雑誌『コスモノーツ』の古いバックナンバーにはアルゴス号の特集記事だって書かれていたし乗組員インタビューで全員の顔写真も乗っていた。
むしろここまで突っ込みが無い事の方が奇跡的な気もする。まぁ、謎の魔人と行方不明の宇宙探査船を結びつけることはそう簡単にはいかないのだろうが。
「いや大丈夫、それよりノアルさん、なんでDボウイ?デス?デビル?」
「ディスティニー!じゃなくて、ヘリオポリス入る前から眠りっぱだったし、ドリームのDじゃね?」
それは二作目。俺の問いにノアルは頭を掻きながら困ったような表情で答えた。
「最初に起きていきなりミドリに襲い掛かったから、デンジャラスボウイなんだが……」
ノアルがちらりと美鳥を見る。美鳥は力瘤を作って見せた。
「あたし、素手でボウリングの玉までなら握り潰せるぜ」
「美鳥ちゃん、すごいです」
「ある意味デンジャラスボウイだったわね……」
メメメが無邪気に称賛し、アキさんが冷や汗をかいている。危険な男ではなく、危険な目に遭った男的な意味ですね分かります。システムボックスが無いテッカマンって、無力だな……。
―――――――――――――――――――
△月×日(快晴、というか熱い。アフリカ暑いじゃなくて熱い)
『ダガーさんマジパネェ。マジンガーやらコンバトラーやらエステやらSPTやらからフルボッコにされたのに死ななかった。できそこないのテッカマンでもあの頑丈さ、やはりテックシステムは取り込んでおくべきだろう』
『ダガーさんもラダム獣どもも問題なく倒した俺達ではあったが、群雲の如く湧き出てくる木星蜥蜴の軍勢を前になすすべなく地球に逃げ降りることとなった。ああいう物量で攻めるのは俺の十八番にしようとさえ思っていたのに、屈辱だ』
『だがこれも集団生活に紛れ込む為には必要なこと、今は耐え忍び力を蓄えることが最優先。いつかここで手に入れた機体の技術を継ぎ接ぎした軍団で、どこぞの月の騎士団でも蹂躙して鬱憤を晴らすことにしよう』
『アークエンジェルにつきあって地球のアフリカに降下したナデシコであったが、アークエンジェルの修理につきあう為に足止めを喰らっている。こういう状況になるとナデシコとアークエンジェルに使用されている技術力の差をしみじみと感じる』
『現在はウリバタケさん他ナデシコの優秀な整備班がアークエンジェルの修理を手伝っているが、パイロットは特にやることが無い。そんな訳で、暇なパイロットの一部はスペースナイツのアキさんノアルさんにひっついてラダム樹の森へ調査に向かうのだそうな』
『なんだかんだで俺も付いて行く事になっている。ここでささっとラダム樹を手に入れておけば、テックシステムを解明してテッカマンの能力を取り込む役に立つだろう。いや、テックシステムの原理自体は既に元の世界で調べてあるから、その実証と言ったところだろうか』
『テッカマンは変身する際、フォーマット時に体内に充填された『テクスニウム』(精製する機能も肉体に付与されると思われる)、及びシステムボックスから供給される『ディゼノイド』を化合させることにより、人体表面に強靭な外骨格を形成する』
『この外骨格が形成される際に、外骨格を形成する分とは別に『ディゼノイド』が体内に侵入、ニューロンに特殊な作用を及ぼし、肉体の反応速度をテッカマンの超高速戦闘に耐えられる速度まで急激に加速させるのだ』
『最後に、一番外側のアーマーやブースターなどの機械的なパーツをシステムボックスの『光=物質変換機能』によって形成、外骨格の一部として組み込み、戦闘用テッカマンが誕生する。というのが設定資料集などに書かれているらしい仕組み』
『システムボックスが手に入っている現在、既に外骨格と神経加速以外は真似出来るのだが、それで正式なテッカマンを再現できるかがいささか不安だった。万が一ボルテッカが撃てないなんてなったら余りにも悲し過ぎるしな』
『ラダム樹には人間をテッカマンにフォーマットする機能がある、つまり、ラダム樹及びラダム獣はその体内にテッカマンを作る上で必要な要素をすべて持ち合わせているということになる。現在不足している『テクスニウム』を取り込み、完全なテッカマンを作り取り込む助けになるのは間違い無いだろう』
『そう、変則的な方法ではあるが、地球に降りて早々にテッカマンを手に入れる算段が付いたのだ。幸先のいいスタートを切れた嬉しさに躍り出してしまいそうである』
『興奮気味に書きなぐっていたから気付かなかったが、先ほどからコミュニケの呼び出しがうるさい、どうやらそろそろ出発らしい。ささっとみんなからはぐれてラダム樹を取り込んでしまうとしよう』
―――――――――――――――――――
ラダム樹の森で雑談。地球上とは思えないグロい光景だが開花の時期までは殆ど無害同然だからか、甲児やテニアなど好奇心旺盛な連中はぺたぺたと触ってうぇーきもちわりーとかなんとかやっている。
ここでなんかの間違いで開花してこいつらが取り込まれたら面白いだろうなぁ。完璧に乗り込むタイプの機体ばっかりだからテッカマンになっても何一つ利点は無いが。
「地球をじゃがいも畑にでもする気かもな。今ごろ奴らお空の向こうでじゃがいもの夢でも見てるんじゃないか」
アカツキやカティア、アキさんやアカツキなどと話していたノアルさんが肩を竦めながらジョークを飛ばす。こういうアメリカ人、アメリカ人か?まぁアメリカ人でいいか、アメリカ人はなんで畑と言ったらジャガイモなのか。アメ公的にはトウモロコシとかでもいいと思うのだが。
やはりあれだろうか。この人も古女房とジャガイモはアイダホよりノースカロライナとか訳分からないジョークも飛ばすのだろうか。ジョークのセンスが合わないというのは面倒臭いものだ。
「ジャガイモもいいけど蕎麦もいいぞ?あれは土地が痩せてても取れるからな、知りあいの住んでる田舎も野菜畑やら田圃やら潰して蕎麦畑にしてなぁ」
「へぇ、ソバってのは畑で作るもんなのか。やっぱり本場の人間は違うな」
今ノアルさんの頭の中ではざる蕎麦が畑になっている光景が浮かんでいるような気もするが、外人さんなら誰もが経験する勘違いだ。訂正するのは野暮ってもんだろう。海老の寿司をシャリごと天ぷら粉に付けて油で揚げるような連中にはお似合いの勘違いだと思う。
「食べられるんですか、これ?」
「おいおい、冗談だよ冗談」
ノアルさんが手を振ってメメメのボケを否定するが、森の奥から戻って来た美鳥が茶々を入れる。
「いや、案外蟹みたいな感じで美味しいかもよ?元の外見があんなんだしさぁ。齧ってみれば?」
「うーん、カニってお菓子じゃないですよね。甘く無いならいいです」
甘ければ齧ったのか。アキさんノアルさんが呆れ、カティアやテニアに注意されているメメメを見ていると、美鳥に服の裾を引っ張られ、あっという間に森の奥に連れ込まれた。連れ込まれたが誰にも気づかれない、何時の間にか認識阻害の魔法も掛かっている。
しばし引っ張られるまま歩く。しばらく歩きみんなからそれなりに距離を取り、ナデシコからも死角になっている森の隅まで来てようやく美鳥の歩みが止まった。
「いやー、メメメがボケキャラで助かったよ」
「連中から距離を取るならトイレに行くとかでも良かったと思うけどな」
わざわざメメメに注目を集め、その隙に認識阻害の魔法をかけてその場から離れるなんてしなくてもそれで充分な言い訳になった。いや、便所に行く時複数人数で群れて行きたがるのが女性の習性と言うし、付いてこられては全員の目から逃れられない。
というか、兄妹とはいえ同じタイミングで便所に連れだって行くとか怪しい気もするしな。ここの判断は美鳥のものが正解だったか。
念のために俺も自前で認識阻害の魔法と人避けの結界を張っておく。ブラスレ世界では多様したが、この世界ではあまり使う機会が無い。認識阻害もせいぜい機密扱いの機体に近づく時に少し使う程度。結界なんてそれこそ今までこの世界では使う機会が無かった。
「で、これなんかいいんじゃないかな」
美鳥が一本のラダム樹を掌でぺしぺしと叩いて示す。他の樹と比べてほんの少し幹の太さなどが逞しい気がする。美鳥には先行してもらい、森の中から健康そうなラダム樹を選別させていたのだ。
取り込んだはいいが何らかの不具合があって、人間をテッカマンにフォーマットする機能が付いていない欠陥ラダム樹でしたなんてなったら目も当てられない。
「さて、こいつをどう取り込むか……」
「ラダム獣は散々相手にしたけど、樹になったラダム獣は触れたことがねーしな」
そう、トレーニングルームで大量にラダム獣を解体し磨り潰し貫き蒸発させてきたが、樹になったこいつらを相手にするのはこれが初めて。下手に刺激して暴れ出しました、なんてなったら、いくら結界を張っているとはいえ騒ぎを聞きつけて他の連中がやってきてしまう。
これ以降船を降りて直接ラダム樹の森に近づく機会はそうそう無いし、ここでしっかりと一発で取り込んでおきたい。もう一度周囲を確認、ボディスーツの隙間、右手首から触手を展開する。
「ラダムの本体は潰さなくていいの?」
「あの虫けらか。脳味噌に入って洗脳ってのは面白いよな。取り込んで今後の参考にさせて貰う」
刃物のように薄く鋭い先端の触手を射出、コンッ、と軽い音を立ててラダム樹の表皮に突き刺さった。刺さった先端が内部で釣り針の様な返しに変形、そこをとっかかりに内部に更に深く侵入。
内部に侵入した触手の先端から細い触手が数本新たに生え、内部を抉り進み、更にその触手の先端からより細い触手が生え、掘り進み、器官の隙間を、細胞の隙間を這いずりまわる。
「外道」
「それほどでもない」
謙虚に返したところでラダム樹の全身に触手が、触手型に変形した俺の身体のナノマシンが浸み渡り終えた。ぐじゅ、と全体のフォルムが崩れ、俺の身体の一部に還元される。
久しぶりの感覚、取り込まずに複製するのと取り込んで複製するのではやはり勝手が違う。小さなラダムの本体、その脆弱な肉体を守る発達した外殻。フォーマットの仕組み、システムボックスの組成、製造方法、テクスニウム、ディゼノイド、知識の植え付け、ラダムの知識、ラダムの本能……。
途方も無い、途轍も無い、これがラダム。果て無く広がる宇宙、君臨する、侵略する、支配する、知的生命体。
「お兄さん」
「ん、……大丈夫。この、程度なら、問題な、い」
ペイルホースを取り込んだ時ほどでは無いが、少し眠い。俺の身体を構成するナノマシンが更新されたようだ。肩を貸そうとする美鳥を手で制し、両の頬を平手で叩いて気合いを入れる。
更新内容は、どうだろうか、自力で確認できる部分は少ない。後で美鳥に視て貰うのがいいか、いや、自力でなんとかしてみるのも面白いか。
「じゃあ、戻る、ぞ」
「ホントにだいじょぶ?なんなら背負うけど」
「いい、いらん。ボウライダーに、乗ってからで、いい」
スケールライダーに合体させれば、ナデシコに戻るまでの時間くらいは眠れるだろう。それから降りるまで十数分程度コックピットで眠っても文句は出まい。どうせ整備やらなにやらは殆ど自力でやってるんだし。
目を瞬かせながら元来た道を歩き、いきなり居なくなった俺達を探していたらしい連中に適当に謝罪しながらボウライダーの頭までよじ登る。コックピットへと倒れこむように入り、そこで意識を手放した。
―――――――――――――――――――
△月◆日(初の分岐点はナデシコルートだった。ここは順当かな)
『つつがなくテッカマンの材料を手に入れることに成功し、ラダム獣の掃討を経てデビルガンダムとの初遭遇を終えた。ここでデビルガンダムに近寄れたら一気にDG細胞を採取しようと思っていたのだが、現実はゲームのようには行かないというのが世の常だ』
『拡散粒子弾の嵐を抜けることができずに、結局距離を取って砲撃し続ける程度のことしかできなかった。訓練で回避力を上げるかボウライダーを更に強化するかしないとデビルガンダム相手に接近戦に持ち込む事は不可能だろう』
『代わりと言ってはなんだが、デスアーミーの残骸からDG細胞の一部を入手することに成功した。どこからとっても同じDG細胞じゃないか、なんて疑問に思うかもしれない。しかし取り込んでみて分かることだが、どうもデビルガンダムのDG細胞に比べて三大理論の全ての性能が劣っている』
『Gガンダム本編終了後に世界中のデスアーミーが集結してデビルガンダムjr.になることから考えて、決して三大理論が劣化しているとかそういうのでは無いだろう。デビルガンダムが十分に進化した状態のDG細胞の塊であるとすれば、デスアーミーのDG細胞は生まれたてで殆ど進化していない状態だと言える』
『つまりは進化待ちの状態だ。未熟な三大理論はこの自己進化によって徐々にオリジナルのデビルガンダムに近い物へと進化していってくれる、筈。そもそもDG細胞を取り込んだ時点で俺の身体のナノマシンにも自己進化機能が追加された訳で、放っておいてもじわじわと能力が勝手に向上していくと考えればこれだけでも中々悪くない成果ではないか』
『ではこれ以降無理やりデビルガンダムの懐に飛び込む必要は無いかと言えばそうでもない。いや、厳密にはデビルガンダムに飛び込む必要は無いのだが、懐に飛び込み接近戦を持ちかけるというシチュエーションだけで考えればもっと厄介な相手に挑戦する必要があるかもしれない』
『知っているだろうか。デビルガンダムjr.は脚部の先端にデビルガンダム四天王の能力を備えたビットを装備しているという。これはデビルガンダム四天王の動作のログや機体のスペックデータがDG細胞に記録されていたからこそ再現できたものだろう』
『そう、『動作のログ』を取ることが出来るのだ。そのログを持ったDG細胞を取り込めば、その動作を再現することも可能になる。優れた格闘家の動作を覚える為に、殆ど体術は我流同然の状態でその優れた格闘家に戦いを挑まなければならない』
『矛盾。世界一固い合金の製法を記した巻物を納めた筒を切り中身を得るには、その筒の中の巻物にのみ製法が記されている合金で作った刃物=斬鉄剣を用いなければならない』
『残念な事に俺は斬鉄剣を所持していないが、ここに集まる仲間の力を借りれば何とかなる。何も筒を切るのは俺でなくても構わない、どうせ中身を活用できるのは俺だけ、有効に使わせて貰うのが余のため俺のためというものだろう』
『因みに、このデビルガンダム出現の少し前にフューリーとの接近遭遇もあったらしい。寝過ごしていなければ、ボウライダー内のオルゴンエクストラクターだけでラースエイレムに対抗できるかチェックできたのだが、残念無念』
『次の接触までにサイトロンコントロールのコツを掴めれば心配する必要は無いのだが、まぁ、突発的に偵察任務などで出くわさないことを祈ろう』
―――――――――――――――――――
今日の日記を書き終え、日記帳を閉じ、ペンを机の上に転がす。今日は部屋に誰も来ていない。少しゆっくりしてから格納庫か食堂にでも遊びに行こう。
ふと、肩を叩かれる。室内には誰も入って来ていないと思ったのだが、忍者でも迷い込んだのだろうか。振り返る、そこには洗面所で毎朝毎晩顔を突き合わせている俺が居た。
「よう俺」
「おう俺。格納庫でドモンと忍が口論してるぞ」
「そうか。手が出そうな雰囲気だったか?俺はどう見る」
「放っておいても手は出ないと思うぞ俺。あれでもガンダムファイターとしての矜持はあるだろうからな」
「止めて好印象を得るのもありか?」
「俺と同じ考えだな、流石俺だ」
「――」
「――」
見つめあう。同じ顔で同じ声で同じ服。恐らく今考えていることも同じ。
「自己増殖の機能は封印だな」
「俺もそう提案しようと思っていたよ」
「流石俺、気が合うな」
しかし封印する前にやっておきたいことがある。気づけば目の前の俺の右手には布巾、俺の左手にも布巾。布巾と布巾を合わせ、左右対称に窓を拭く動作を少しして一言。
「「なんだ鏡か」」
お約束を終えた俺と俺は互いに力強く頷きがっしりと握手。同化して一つに戻り、自己増殖の機能を封印、二度と勝手に増えないように念入りに削除した。
―――――――――――――――――――
ナデシコが重力波レールガンにより落とされてしまったのでこれから陸路でナナフシを破壊に向かう。途中でミスリルの増援――つまりフルメタ勢と合流し、そこから陸路で十時間と少しで山岳地帯を抜けカオシュン基地に出る予定。
メインの獲物は他に居るが、ナナフシのマイクロブラックホールを打ち出す重力波レールガンも取り込んでおきたい。マイクロブラックホールの精製は可能なのだが、一山二山超えて打ち込めるとなれば話は違ってくる。
「いつつ……」
ボウライダーのコックピットで出撃準備をしつつ額をさする。忍をドモンの喧嘩を止めようと間に入ったら見事に二人からダブルで拳を貰ったのだ。
よくよく考えたらここのドモンはスパロボJのドモンであって全てが全てGガン原作準拠という訳では無かったんだな、ファイターでも無い相手にこんなに早く手が出るとは。
しかし、忍の拳からはダメージを貰わなかったが、ドモンから喰らった部分は少し痛い気がする。いくら戦闘モードでは無かったとしてもトンでも無いことだ。これは本気で殴られたら多少のダメージは貰ってしまうかもしれない。
流石は生身の状態でビルを蹴り飛ばして持ち上げる男、とても人間とは思え無い。ドモンに殴られた額をさすっているとダンクーガからの通信が入る。
「へっ、人の喧嘩に割り込んでくるからだぜ」
モニタには拳をさすりながらこちらに悪態を飛ばしてくる獣戦機隊のリーダー『藤原忍』、こいつも喧嘩が弱い訳では無い(町で絡んできたチンピラ複数を一人で叩きのめせる程度には強い)のだが、ガンダムファイターにケンカを売るというのはいささか無鉄砲過ぎるのでは無いか。
「やめな忍。悪いね、うちのリーダーは気性が荒くてさ」
で、こっちが同獣戦機隊の『結城沙羅』、真っ赤な髪が特徴で、あとはシャピロの元恋人、だったか。このスパロボJの世界ではあまり心揺れ動いて寝返ったりとかの展開は無いから気にする必要も無し、今後関わることも少ないだろう。
「いやいや、気にしない気にしない。そっちの人のパンチは痛く無かったしな」
「何だとてめぇ!」
がなりたてる忍を無視して考える。このパンチ一発は後で少し手合わせをして貰えるようドモンに交渉する材料になりえるかもしれない。
いや、そもそも殴った事に対して罪悪感を覚えるほど精神的余裕も無いとか、そもそも勝手に割り込んできたのだから気にする奴も居ないというか、この後起こる師匠の裏切りで精神的に追い詰められてそういう事をする気分では無いとか色々問題はありそうだ。
ま、次のステージではマスターガンダムに突っかかって行くだろうし、そこで隙をついて特攻かければドモンに教わるまでもなくマスターガンダムのDG細胞も採取できる筈。
念には念を入れて留守番の美鳥にも指示を出してある。スケールライダーは飛行専用ユニットだから今回はお留守番、部屋にこもって眠っているとでもしておけばさり気無く艦内から居なくなっていてもばれやしないだろう。
その為にはナナフシを撃破する前に、俺の方でも仕込みをしておかなければならないのだが、まぁこれは楽しみでもあるから気合を入れて仕込むとしよう。
未だモニタの向こうで忍が喚いているので通信を切り、整備班の誘導に従って発進シークエンスに入る。
「鳴無卓也、ボウライダー、出るぞー」
「おう!きばってこいよー!」
脚元のウリバタケさんにボウライダーの手を振り、カタパルトから射出された。
―――――――――――――――――――
ナデシコ原作(漫画版ではなくアニメ版のこと)では脚の遅い砲戦フレームに合わせていたのでかなりスローペースだった。しかし今回エステバリス隊は全機陸戦フレーム、ローラーダッシュのお陰でかなりのハイペースで進める……と思っていたのだが、そうは問屋が卸さない。
ローラーダッシュもバッテリをそれなりに食うため多様できず、空を飛ばなければかなり脚の遅いスーパーロボット達も居る。川を渡る際にもある程度の大きさのある機体なら無視して川底を歩けるのだが、水中適正もそれなりにあるはずのエステバリスチームは何故かゴムボート。
遅々として進まない、とまでは言わないが、かなりもどかしい速度での行軍。俺の乗る強化ボウライダーも脚部にパラディンを参考にホイールを組み込んでいる為、浮かばなくともそれなりの速度が出せるのだが、これでは宝の持ち腐れだろう。
まぁ、それでも作戦スケジュールに遅れがある訳では無いから不満を言うのが間違いなのだが、暇な物は暇なのである。時計を確認、時刻は22時30分、この目の前のモアナ平原を抜けたら夜営。やっとコックピットから出られる。
そこで東方不敗と合流する予定。ここでクーロンガンダムに偽装したマスターガンダムを持ってきてくれていれば話は簡単なのだが、そう上手くは行かないだろう。確か生身でデスアーミーを倒したとしか描写も無かったし、マスターガンダムは偽装無しでカオシュンに隠してあると考えるのが妥当か。
匍匐前進で地面にナイフを突き立てつつ地雷を確認するエステを後ろから眺めつつ今後の予定を考えていると、目の前で這いつくばっているエステから通信。
「こぉら鳴無ぃ!てめぇなに人の後ろで楽してやがる!」
目の前で楽しそうに這いつくばって地雷除去していた赤いエステのパイロット、緑髪短髪の少女『スバル・リョーコ』がモニタ越しに怒鳴りつけてきた。
「ボウライダーってそういうナイフっぽいの無いんだよ。適材適所ってやつで勘弁して貰えない?」
肩を竦めて返答すると、既に足下で爆発する地雷を無視して地雷原を抜けていたマジンガーZからも通信、甲児が余計な事を口にする。
「あれ?でも卓也さんの機体ってブレードついてたよな?しかも超合金ニューZ製の」
超合金ニューZ製のブレードをどこから調達したのかという質問をしない辺りに少なからぬ甘さを感じるが、それが何かの救いになる訳でも無い。
「おいおいおい、話が違うんじゃねぇか?なぁにが『ナイフっぽいのは無い』だと?」
「だから、刃物が無いんじゃなくて、ブレードじゃ長さ的にそういう真似は出来ないって話」
「『ナイフっぽいのが無いふ』ふ、ふふふふ」
マキ・イズミのギャグは総スルー。続けてコンバトラーからも通信。なんだ?俺の個別イベントか?やめろ、こっちに注目するな。目立たなかったキャラが急に目立ち出すのは死亡フラグなんだぞ。
「しかも硬い敵が相手の時は超電磁エネルギーを斬撃に利用している形跡もありますね」
しかも喋ったのは説明キャラの小介だ。止めろ、下手にボウライダーの戦力分析とかされると改造しにくくなる。なんとか話を逸らさねば。
「というかだな」
「んだよ、なんか弁解でもあんのか?」
「ボウライダーで匍匐前進をやるやらない以前に、マジンガーとコンバトラーの通った道を歩けば地雷を気にする必要は無いんじゃないか?」
空気が凍った。匍匐前進を止め這いつくばった体勢のまま動かない赤いスバルエステを横目に、ピンクのテンカワエステ(何故か料理用の食材が詰め込まれた風呂敷を背負っている)が地雷の埋められていた平原を平然と歩いていく。当然コンバトラーやマジンガ―が歩いた後だけを狙っている為爆発はしない。
赤いスバルエステがスックと立ち上がり、モニタの向こうでスバル・リョーコが顔をほのかに赤くしながら遅れを取り戻すぞと息巻いている。スケジュール的に遅れては居ないし誤魔化し方が下手だが、上手いことみんなボウライダーの話は忘れてくれたようなので突っ込まないことにした。
ちゃっかりコンバトラーとマジンガーの後ろを歩いていたアマノとマキがリョーコエステの匍匐前進に突っ込みを入れていなかったことにも誰も突っ込みを入れなかったが、これも気付かないふりをするのが大人の対応だろう。
―――――――――――――――――――
「やまーっをこーえってゆーっくよー♪」
焚火を囲んでみんなで合唱。……合唱?なんで歌っているか分からない、林間学校みたいなノリなのだろうか。学生時代も時折こういうイベントがあったが、俺は今一乗りきれなかった。
せめて海がある場所ならいいのだが、山だの川だのは身近にあり過ぎて態々イベントで行こうという気にもならないし、行った処でテンションは中々上がらないものだ。
同じ理由でPS2の『ぼくの夏休み』シリーズも買う気にならない。主人公もお年頃なんだし、夜中に親戚の姉ちゃんの部屋の前で聞き耳を立ててコフコフ興奮したり、せめて村から脱出して隣町の本屋にエロ本立ち読みに行くイベントを入れるべきではないか。
ミスリルから合流した連中は辺りを交代で警戒しているが、クルツに雅人は女性陣と肩を組んでノリ良く歌っている。これはだらけているとかじゃなくオンオフの切り替えがしっかりできている証拠だと思いたい。
用を足しに行くと言い残しその場から抜け出し、対デビルガンダム、対マスターガンダム用の仕込みを済ませる。森の中に入り、辺りを見回し人の気配が無い事を確認、更に人避けの結界も張る。
その上で触手を地面に突き刺し、辺り一帯の地面の中に兵隊を埋め込む準備。数は、500も居れば足りるとは思うが、テストも兼ねているから700ほど複製しておこう。
この辺りはコンバトラーが派手にコケでもしない限り踏まれたりはしないだろうが、念には念を入れて触手をやや深めに埋めて、触手を分岐させて、広げて広げて、地中の土を取り込んでスペースを作りつつ複製。
まずはこれで100。一か所に纏め過ぎるのもなんだし、もうちょい埋める場所をバラけさせるか。少し歩いて辺りを見回し、結界を張り、触手を地面に埋め込み先ほどと同じ工程で複製。以下数回繰り返し。
きっかり700、オマケでもう77ほど複製を作った処で終了。ついでに小も済ませて宣言通り。川で手を洗ってハンカチで手を拭う。
「よし、こんなもんだろう」
「なにがこんなもんなんですか?」
振り返ると、手に焼きマシュマロが大量に刺さった串と、焼きマシュマロをクッキーに挟んだものを両手に持ったメメメが居た。
「そういうのを聞くのは野暮ってもんだから、覚えておくように。そっちこそこんな所で何を?」
それも両手にお菓子持ちっ放しで。月夜の河原で両手にマシュマロを持って立っているという情景は、メメメがそれなり以上の美少女であるという要素を加味してもシュールでしかない。
「あ、はい。マシュマロのお礼を言おうと思ったら居なくなってたから、つい探しに来ちゃいました」
コックピットに持ち込んだお菓子を行軍中に食べきってしまったらしく、なおかつテンカワも流石に甘味系の材料は持ってきていない。統夜に宥められながら涙目で『おかし……』とか呟いて幼児退行していたので、小腹が空いたら食べようと思って持ってきていたと偽ってマシュマロを渡したのだ。
当然このマシュマロも複製。元の世界で買った何の変哲も無い既製品だが、糖分切れを起こしていたメメメと、宥め切れずに困り果てていた統夜には大変感謝された。
今回の行軍では移動スピードがキモとなる。しかも空は飛べないとあって移動力を上げることのできるメメメを乗せてきたらしいが、まさか大きなリュックいっぱいに詰まっていたお菓子を片道の途中で平らげてしまうとは流石の統夜も思ってもいなかったらしい。
そもそもコックピットにお菓子を持ち込む事を容認している時点でおかしいとかリュックいっぱいのお菓子が数時間で腹の中とか突っ込み所は多々あるが、まぁメメメがベルゼルートに乗ってくれるなら特に文句を言うつもりは無い。
今回の出撃で平均的なサイトロンコントロールのデータはほぼ完全に手に入った。できればラースエイレムキャンセラーを機動する時のデータも欲しいのだが、そういう本格的な戦闘の時は機体との相性的にカティアを乗せているだろうからそうそう上手くいかない。
「統夜は?ベルゼルートで待機してなくていいのか?」
「統夜さんはミスリルの傭兵さんと一緒に見張りです。それに、いっつも統夜さんやカティアちゃんやテニアちゃんと一緒に居るわけでもないんですよ?」
これでも年頃の女の子なんですから、とはにかみながら言うメメメ。両手にお菓子を持っていなければそれなりに決まったろうに……。
マシュマロ二刀流で『決まった――!』とでも言いたそうなどや顔をしているメメメにどうリアクションを取ろうかと悩んでいると、向こうから爆発音。東方不敗が登場してデスアーミーを撃破したのだろう。
「トラブルだな、機体に戻るぞ」
「……はぁい、あむ」
何の反応も見せなかった俺に不満げな表情のまま焼きマシュマロに齧り付くメメメを連れ、機体のある夜営地へと向かう。不満げな顔で頬いっぱいにマシュマロを頬張るメメメに問いかける。
「それ、美味いか?」
「普通です……」
しょんぼりするメメメ、それでも無いよりはマシと頬張り続ける。太れ。
「だろうな」
焼きマシュマロは焼きたてが命、長時間持ち歩いて良いことは無いのだ。歩きながら頭の中に直接複製した通信機で美鳥に準備完了の知らせを送る。これから隙を見てナデシコを抜け出すとの返答が返ってきた。
美鳥も変身した状態での移動速度はかなりのもの。今から出ても俺達がカオシュンに到着する頃には合流出来るだろう。
―――――――――――――――――――
……………………
…………
……
その後、夜明けにカオシュン基地に到着した。俺は加速が使えないのでナナフシ一番乗りとは行かなかったが、最悪完全破壊後にでも残骸を取り込んでみればいい。ここはSPを温存しておく。
ナナフシに一番乗りで到着したのはベルゼルートだった。スーパー系とASとエステバリスという移動速度的に微妙なラインナップの中ではまぁまぁ速い方だとは思っていたが、あの移動力は明らかにおかしい。
メメメを乗せた時の移動速度はゲーム換算にして+1、強化パーツで言えばブースター並み。しかし今のベルゼルートの移動力は明らかにブースターではなくメガブースター並み、メメメの性能に変化があるのか、それとも追加パーツでブースターでも付けていたのか。
それはさておき、目の前の状況に思考を切り替えよう。デビルガンダムと、その前に立ちふさがるマスターガンダムに向けてシャイニングガンダムが拳を突き付けている。
「うるさい! 俺の師匠は、こんなことをする男ではない!貴様は師匠の名をかたるニセ者だ! デビルガンダムともども、貴様を倒す!」
シャッフル同盟が空気を読んで後退し、マスターガンダム率いるデビルガンダム軍団との戦いが始まった。デスアーミー軍団は簡単に破壊できるし回避もそれほどではないから良い、デビルガンダムもある程度距離をとれば安心。
金棒型ビームライフルで殴りかかってきたデスアーミーのどてっぱらをレーザーダガーで貫き、そのデスアーミーを盾にビームライフルを防ぎつつ距離を取る。
ある程度デスアーミーの群れから離れたところでダガーに刺しっぱなしの残骸を投げ捨て電磁速射砲でまとめてなぎ払う。流石にジンほど軟らかくは無いので多少撃墜し損ねたヤツも居るが、、あちこちを穴だらけにされ動きが鈍った機体は他の機体が止めを刺してくれる。
そんな風にデスアーミーを片付けつつ、群れの隙間からマスターガンダムに電磁速射砲を当てていく。更にASやエステへの援護攻撃で削りつつ一定の距離を保つ。まだ、まだだ。あと少し、あと少しでチャンスが来る。マスターガンダムに接近戦で一撃を当て、DG細胞を採取するチャンスが。
マジンガー、コンバトラー、ダンクーガはデビルガンダムにかかりきりでマスターの相手は出来ていない。エステやM9、そして俺のボウライダーはマスターガンダム相手では遠距離から援護射撃に専念するのが精いっぱい。
援護付きとはいえ殆どシャイニングとマスターガンダムの一騎打ちのような状況。未だに未熟なままのドモンでは分が悪い。機体性能差(この時点でシャイニングはほぼフル改造済み。改造資金のために匿名でナデシコに金塊を送りつけているのだ)で持ちこたえてはいるが、ごり押し感が大きいのは否めない。
しかしそれでも決着の時は来る。まだ怒りのスーパーモードしか使えない筈のドモン、そのドモンの放つシャイニングフィンガーソードがマスターガンダムの腕を斬り落とした。
「なんと!?ぬぅぅ、よくもやってくれおったな……」
流石にこの場は不利と見たか、マスターガンダムが撤退しようとした、その瞬間、この瞬間、この瞬間が実に良い、この時こそが絶好の機会。攻勢から引く体勢に気持ちを入れ替えるその瞬間が!
「ここは引い、ぬあぁぁぁ!!」
山間からマスターガンダムへ向けて幾条もの光線が降り注ぐ。ギリギリのところで避けようとしたようだが範囲が広すぎたのか回避しきれていない。残ったもう片方の腕も潰され、ブースターは全損、脚部も片方が腿の半ばでひしゃげている。あの状態では歩けるかどうかすら怪しい。
『俺への』増援だ。美鳥が作ってくれた絶好のチャンス、逃す手は無い。レーザーダガーを消し、DG細胞採取用に更なる改造を施したブレードを展開する。デスアーミーはほぼ全滅、遮るものは何もない。
通信から、みんなの驚愕の声が伝わってくる。事情を、からくりを知らない者からすれば絶望的な光景だろう。
「あれは!」
「……うそでしょ」
「そんなの、ありかよ!?」
――――――――――――――――――――
お兄さんからの通信を受けてから数十分後、あたしはようやくお兄さんが仕込みをしたという森に到着した。
抜け出すのに思いのほか手間取ったのが原因。なにやら戦艦の中の待機組はウリバタケのコスプレコレクションで気分を出す……じゃなくて、気を引き締めるとかなんとか言って、しまじろうと一緒に武者鎧を着せられる所だった。
なんとか逃げ切り、しまじろうに『部屋で寝てるから放っておいて』と伝え、コミュニケも外し机に置き、部屋には眠っている私が見える幻影を残し、壁に融合しながらどうにかこうにか外に出て強化マレクレイターに変身、山の中を最短距離でかっ飛ばしてようやくここまでこれたところ。
森の中を歩く。反応を見る限り、円周上にぐるりと数百体の兵隊がポツンポツンと小分けに埋められている。いくらなんでも作り過ぎだよ……。
「お兄さんもあれで派手好きだからなぁー、女の趣味は普通なのに」
でも近親は普通の内に入るのかな。お兄さんとお姉さんの知識だと当然みたいな感じだけど、他の新聞配達の人とか駐在の人の話だとどうも一般的な恋愛では無いらしい。少し自分で情報を集めてみようかなー。
「さて、じゃあ、出撃の準備だ。起きろー」
あたしの命令を受け、地面からぼこりと土を捲り上げながら次々と腕が生えてくる。やがて全身を地上にさらけ出したそいつらは、人間の裸体に金属質の装甲を貼り付けたような身体に、目も鼻も口も耳も無い頭のっぺらぼう。
位階の高いブラスレイターにもなれるあたしとお兄さんの言う事を聞いて働く忠実な僕。総数は777体。ブラスレイター世界でお兄さんが作った継ぎ接ぎの強化デモニアックではなく、見た眼は殆どなんの変哲も無い下級デモニアック。
しかし、777体全てが脇の下にはクリスタル状の組織が埋め込まれており、あるものを首から下げている。簡素な紐で括られた、月光を受けて淡く輝くクリスタルのボックス。
あたしも懐からクリスタルを取り出す。下級デモニアックが持っているものとは違う、お兄さんお手製の強化済みの物。
「ふへへ、お兄さんのお手製、あたしだけの……」
何故だか嬉しい。思わず薄紫のクリスタルにキス。顔がニヤケてしまう。だんだんテンションも上がってきた!ふしぎなちからがみなぎるみなぎる!
「行くぞ下僕どもぉ!」
クリスタルを力いっぱい天に掲げる。あたしの動きに合わせ、下級デモニアックどももクリスタルを手にポーズを取る。
見てろよこの世界のキャラども、見ててよお兄さん。これが、これが!この世界に来てお兄さんが手に入れて、あたしに託した力だ!
「テックセッタぁーッ!」
―――――――――――――――――――
マジンガーが、コンバトラーが、エステ隊が、ベルゼルートが目を奪われている、山の中から駆け降りて、あるいは低空を飛びながら近づいて来るモノ。
紫色の甲冑を着た騎士のようなモノに率いられる、灰色の装甲を身に纏った魔人の軍団。総数数百の――
「テッカマンの、大群!?」
続く
―――――――――――――――――――
続くんです。
言いたいことは分かります。予告の三分の一か三分の二程度しか進んでないのに何故投稿したの?とか言いたいのでしょう。しかも長さ的には前回の半分。
仕方ないのです。だってSS書くなら一度はこういういかにも『次回を待て!』って感じの引きをやってみたくなるものじゃないですか。サポAIのシーンがまさにそんな感じだったのでついついやってしまったのです。
欲望のままに途中で切ったり無駄に伸ばしたりするので長さのばらつきには目をつむって頂ければ幸いです。
セルフ突っ込みタイム。マジンガーやらコンバトラーやらエステやらSPTやらからフルボッコってストライクは?→アークエンジェルに戻って換装してる間にステージクリアです。というか、ナデシコクルーの機体は改造済みですがアークエンジェルには流石に金が行って無いのであまり活躍できませんでした。
資金提供、金塊郵送について。文脈的に味方はある程度改造してある筈なのにマスター相手に苦戦してるのは何故?→資金的には二週目以降、パイロットは一週目といったような状態なので、歴戦の戦士相手に楽勝とはいきません。
精神コマンド、SPについて。主人公の感覚です。なんとなくこれぐらいかなーで残りSPや消費SP量が分かります。使い方に関しては次回。
そんなわけで次回は続き、カオシュン編決着と満を持してゼオライマー登場まで。遅筆なのでゆるりとお待ちください。