彼は破壊を求めたわけでは無い。
彼の精神構造はそこまで未熟ではなかった。
あくまでそれは、真の願いが叶えられないものであるが故の代償行為。
彼が欲したのは、おそらくは永遠と呼ばれるもの。
しかし、当然の事ながら彼にそれは与えられなかった。
誰も永遠を生きる事は無い。
古くから歌われる世界の真実に逆らう事は出来ない。
真に麗しく、真に美しきものこそが、なによりも早く滅びへと突き落とされる。
ならばせめてと、自らの手でそれを壊した。
幼稚だったわけでは無い。
真綿で圧殺されるような緩やかな絶望の中、知恵と心を巡らせた彼は、彼自身が最も忌み嫌う世界の一部に自ら組み込まれた。
つまるところ、どうしようも無いほどの、弱虫だっただけか。
―――――――――――――――――――
最悪な目覚めとは、いったいどのような目覚めの事を言うのであろうか。
とある少年は『寝ている最中に足を攣り、その痛みによって目覚める事』だという。
細かい説明を端折り要点のみを掻い摘んで言えば、『爽やかであるべき一日の始まりに、痛みに足を引き攣らせている自分を発見する』という部分に集約されるらしい。
なるほどそれは酷い目覚めだ。少なくとも日常生活の中でそのような目覚めを得たのであれば、そこに何かしらのプラス感情を得る事は不可能だろう。
さて、では『悪夢からの目覚め』というのは最悪な目覚めと言えるだろうか。
一般的な意見を言えば、それは決して悪い目覚めではない。最悪どころか安堵の感情でみたされるのではないだろうか。
少なくとも、目覚めた後に待ち構える現実が、その悪夢よりもましなものであったのならば。
人里離れた山奥の、更に地下深くに存在する大空洞。そこに、幹から枝、葉に至るまで余さず鉄色の鱗に覆われた怪植物が存在している。
怪植物、いや、より正確に言うならば植物の機能を有した怪生物の生態を模した微小機械の塊。
その幹に相当する箇所に、ほぼ球形の瘤が盛り上がっていた。
その瘤が、びきんと音を立て罅割れ、砕ける。
砕けた瘤の中から、輝きを帯びた透明な緩い膿の様な液体がぞるぞると流れ出し、次いで、襟の紅く染まった学生服を着た少女が姿を現す。
満たされていた液体の生み出す浮力により立たせられていた少女は、流れだした液体の水溜りの中に膝をつき倒れこむ。
「う、っげ、お、ぇぇええぇぇぇ」
水溜りに膝をつき手を付き四つん這いのまま、目からは苦悶による涙を流しながら、その口からはびちゃびちゃと、腹の中を満たしていた液体を吐き出す。
今まで決して口にした事の無いような味のそのやや粘性を持った液体は、彼女の胃や肺までを余さず埋め尽くしていたのである。
だが、彼女がその液体を、内臓がひっくり返るような勢いで吐き出しているのはそのせいでは無い。
肩の上、丁度『首の半ば』程で栗色の髪を切り揃えられたその少女は、腹の中から吐き出す物が無くなると同時、何かを確認するように自らの首に掌を当て、指でなぞり、何かの痕を探り出す。
蒼褪めるという表現では生温い、蒼白な顔は恐怖に歪み、歯はガチガチと打ち鳴らされ、傷一つ無い自らの首を確認すると、その場にへたり込んだ。
首に傷痕一つ無い。それはおかしい。
それは、現実と矛盾しているのだ。
「わ、わた、わたし、は」
覚えている。
首を撥ね飛ばされ、地面から逆さまに見た世界を。
意識が途絶える瞬間、確かに見たのだ。
月を天に仰ぎ、『首の無い自分の身体』と、黄銅色の鎧武者の姿を。
思い出す。
一瞬で首を撥ね飛ばされるから痛みは無い、死んだ事にも気がつかないなんて嘘っぱちだ。
思い出す。
あの瞬間、竹林の中で、わたしは確かに感じたのだ。
思い出す。
首の皮を裂き、筋を断ち、神経を貫き、首に侵入してきた刃金の感触を。
「死ん、で……!」
思い出し、何も入っていない腹から再び何かを吐き出しそうになり口元に手をやろうとすると──
「そう、君は確かに死んでいた」
唐突に、頭上から声が掛けられた。
重々しいようでいてどこまでも軽薄で、相手の事を思いやるように軽んじているような不思議な声。
そして、どこか逆らえない雰囲気を滲ませた、頭に、身体の芯に沁み入る様な声。
顔を上げ、声の主の姿を探す。
「だがしかし、一度死んだ君は、俺の手によって黄泉帰った」
声が反響してどこから聞こえてくるのか分からない。
それにこの場所は光が少なく、声の発信源を見つける事が出来たとしてもその姿を目に入れる事は出来ないだろう。
落胆する。
何故だか、いや、命を救って貰ったから当然か、自分はこの声の主に向き合い、礼の言葉を告げたかったのだ。
いや、正直に言おう。
わたしは、この声の主に、頭を垂れて跪きたい。
産まれてこのかた、このような感情を抱いた事は一度たりとも無いというのに、この感情に、気持ちに、疑問を持つ事すら出来ない自分が居る。
「それもただの人間としてでは無い。君は生まれ変わった。生半可な武者にも負けない、無敵の戦士として」
そう、そうだ。
暗闇? 反響? だからなんだ。今のわたしは、そんな物で目を晦ませたりはしない。
よくよく眼を凝らせば、当然の様に闇の中をはっきりと見渡す事が出来る。
音が、空気の振動がどこを何回跳ね返り耳元に届いているかが理解出来る。
主が、自らの『』がどこに居るのかなど、五感に頼るまでも無く理解し終えている!
「テッカマン・ブラスレイターとして!」
顔を上げる。
見える、見えるのだ。
この暗闇の中で、尚暗く、しかし目を焼く程に、黒い太陽の様に眩く光り輝いている!
常人の目には映らぬ域にある波長の光で、この暗闇を照らしている!
此方を見下ろす、その姿を!
それは人で、それは山で、そのどちらでも無く、一言で言い表すならば──
「あ、あぁぁ」
赤子の漏らすような、嗚咽。
ぼろぼろと、見上げる瞳から涙が零れる。
共鳴により、少女の全身に紅い光のラインが走り、その全身を異形の身体へと組み替えていく。
血液中に流れるナノマシン、ペイルホースが汗腺を通じて皮膚上に排出され、空気に触れ崩壊を始める前に互いに結合し、人間の肉体を鋼で鎧う。
体内のペイルホースは筋組織、神経系、心肺との融合を初め、脆く脆弱な肉体を宇宙空間ですら活動可能な強靭な肉体へと作り替えていく。
肉体の組み換えが終わり、ドレスを纏った道化師の様なシルエットを持つ異形、ブラスレイターのタイプ29『アスタロト』へと変じた少女が、跪き、祈りを捧げる様な敬虔さを持って、呟く。
「かみ、さま」
悪夢から目覚めた現実もまた悪夢。
しかし、それを悪夢だと認識しなければ、それは存外に心地よい目覚めなのかもしれない。
―――――――――――――――――――
……………………
…………
……
「ふむ」
再び誰も居なくなった大空洞の中、奇妙な男が一人佇んでいた。
その男は腰から下を金属質の木の幹の様なものにめり込ませ、溶け込むようにしてそこに存在していた。
この大空洞、ここから更に地下へと根を伸ばす巨大な力の塊、それを統括する頭脳として男は組み込まれている。
いや、それも少し違う。巨大な力の中に組み込まれているようでいてその実、その男が主体となってその巨大な力をゆっくりと取り込んでいるのだ。
男は今さっき少女が吐き出された怪植物の残骸を手から伸ばした触手で手繰り寄せながら、少女の消えた天井の穴を見つめて、ぽつりと呟いた。
「あれは、ちょっとキモいな、狂信的過ぎる。やっぱり即席は駄目か」
手繰り寄せた怪植物、総DG細胞造りのラダム樹、テックシステムを弄びながら、下半身を力の塊、金神魔王尊と融合させた男、鳴無卓也は考える。
ラースエイレムで真改の時間を停止させ、首を切断されて死んでいた少女の死体を死亡直後に手に入れ、作中の教授の言葉と次元連結システムのレーダーによって得た情報を元にこの場所にたどり着き、少女の蘇生及び強化を始めたのがトリップ初日。
二日目に魔王尊との融合を開始、完全な取り込みこそ完了していないが一応支配下に置いたのでテストとして、少女を改造中のテックシステムに魔王編ラストで空から降り注いだ光の雨、劒冑の基となる魔王尊の身体の一部を組み込んだ。
そうして三日目の昼に復活した少女、その身体に、命の一部を分け与えられたのが原因と見られる刷り込み染みた崇拝の感情。
それが、死した肉体をブラスレイターとして、テッカマンとして、生体甲冑(リビングアーマー)として修復された少女に与えられた新しい感情だった。
「でもまぁ、これで一人目の救済完了、と」
触手がテックシステムを締め付けると、ガラスの割れる様な音と共にテックシステムが砕け散る。
即興での改造故か、金神の力に耐えきれなかったか、はたまた初期フォーマットから戦闘用テッカマンへのフォーマットまでを僅かに二日弱にまで短縮したが故の負荷故か、テックシステムはその強度を著しく下げていた。
砕けたテックシステムの破片がどろりと液状化し、地面に吸い込まれていく。
死者蘇生に金神の力を付加した場合のデータを回収する為、地下に根を張る卓也の、金神の一部へと還元されたのだ。
地下空洞の地面が、壁面がざわめき、蠢く壁面、地面に無数の顔面が浮かぶ。
苦悶する顔、苦悩する顔、怒りに歪む顔、喜びに染まる顔、慈悲深い仏の様な顔に、無慈悲な悪魔の様な顔。
それらは全て、金神と融合する男、鳴無卓也と全く同じ顔をしていた。
下半身を金神と融合させた卓也が口を開く。
「まだ掛かるか」
大空洞にびっしりと浮かぶ卓也の顔面の幾つかが、下半身を融合させた卓也にぎょろりと眼球を動かし視線を向ける。
「まだまだ」
「今のデータのお陰で半日伸びる」
「救済はおまけだから後廻しにすればいいものを」
「だが脇役を救いたいという理屈は分からんでもない、一回戦敗退とかマジ憐れ」
「生体甲冑でデモニアックでテッカマンとか、データとしては面白いしな」
「まだまだ改良の余地がある。要研究」
「芋サイダー飲みたい」
不機嫌そうに、デレながら、楽しそうに、飽きながら、顔面は口々に言葉を放つ。
これらの顔面もまた全て鳴無卓也、いや、正確にはその複製。
デビルガンダムの自己増殖機能を復活させ作りだした総勢600を超える自己の複製を自らと同時に金神へと埋め込み、金神という巨大な力の塊を御し取り込む為の補助装置としているのである。
埋め込まれた複製、あるいは分体の大半は半ば融合の完了した金神の力を効率良く振るう為の肉体の最適化の為に眠りに付いており、残りの喋る顔面は言わば余裕を持って金神を制御する為の補助装置なのである。
金神を通してこれらの分体は本体と繋がっている為、これらの分体の意見も言わば表に出ない鳴無卓也の本音の一部であり、こうして時たま会話を通して何か見落としが無いかを確認しているのだ。
分体の意見を聞いた本体がぽんと手を打ち頷く。
「そういえばちょっと気になるな、芋サイダー」
「そういうと思って買ってきたよー」
鳴無卓也の声とは異なる、鈴の音の様な少女の声。
何の前触れも無く大空洞の中に現れた少女に、部屋中の視線が一斉に向けられる。
だが、少女はその視線に怯まない。
オリジナルを含め、これほど多くの鳴無卓也の視線に晒されるというのは、少女──鳴無美鳥にとっては堪らなく心地好い状態だからだ。
ワープによりこの地下空洞に現れた美鳥は地面に浮き出る複製卓也の顔を踏まないように宙に浮かび、上半身だけは人の形を保っているオリジナルの卓也にふわふわと近づくと、肩から下げていたクーラーボックスの中から紙パックを取り出す。
「はい、お姉さんのお土産の分確保してきたから、そのついでに」
「いい仕事だ。後で俺の妹をファックしてもいいぞ」
「このやりとりは前もしたような気がするねぇ」
「初期美鳥×今の美鳥とかバリエーション増えたからノーカンだ」
紙パックを受け取った卓也の隣、触手の束の上に美鳥が腰掛ける。
二人並び、紙パックにストローを突き刺し、じゅるじゅると啜り始める。
ちびりちびりと飲みながら、うんうんなるほどと頷き何かに納得している卓也の隣、美鳥が空になった紙パックを畳みながら天井の一点を見つめている。
「これは意外と……、どうした」
「んぁ、あの天井の穴、何?」
地下空洞の天井部、地上へと繋がる細い穴が開いていた。
この金神を取り込むための地下空洞は基本的に鳴無卓也と鳴無美鳥の出入り以外は考慮されていない為、完全に地上とは隔絶されており、空気の通り道すら存在しない。
が、今現在地下空洞の天井には人が丁度一人通れるかどうかという程度の広さの地上への通り道が形成されていた。
「あぁ、あの娘を殺した武者の正体と事情、その武者が今誰を狙っているかを教えたらクラッシュイントルードで飛びだそうとしたから、こっちから出口を作ってやったんだ」
「メメメとかの比じゃないレベルで洗脳されてんだろうに、美しい友情だねぇ。戦闘法は刷り込んであんだっけ?」
「テッカマン同士の戦闘理論と、村正本編で術理解説の人が出てきたシーンのは殆ど、ついでに覚えている限りの劒冑の陰義と、卵を植え付けられた劒冑への対処法。あと──」
「あと?」
言葉を区切った卓也に、美鳥が先を促す。
卓也は天井に空いた穴を見つめながら、ニヤリと笑みを浮かべた。
「決め台詞も、しっかりと組みこんでおいた」
―――――――――――――――――――
……………………
…………
……
日も沈み、夕暮れを過ぎ夜に差し掛かった時刻、鎌倉の街路を二人の男女が早足で並び歩いている。
「で、どうするの? これから」
ややくすんだ紅い髪を肩の辺りまで伸ばした学生服の少女、来栖野小夏は隣を歩く同じ学校の学生服を着こんだ少年に尋ねる。
三日前の夜に行方不明になった二人の(ここに居ないもう一人を入れて三人の)友人である飾馬律の探索についてである。
探索二日目にして見つけた手がかり、自分達と同じく行方不明となった飾馬律の探索を行っている警察署属員である湊斗景明の言によれば、この事件には世間を騒がせる大虐殺犯である武者、銀星号が関わっている。
自分達はそれでも飾馬律の捜索を続けたいが、彼はそれは自分の職務であり、学生の身分である自分達は危険を伴う友人の探索よりも、自分の生命安全を優先すべきだと言う。
大人であるという事実をかさに着て上から押し付ける様に物を言うのであればはねつける事も出来たかもしれないが、湊斗景明の態度はどこまでも誠実で、それを言い聞かせる瞳がどこまでも静穏であった。
行方不明の友人の捜索、決して途中で投げ出せるような事態ではないが、安易に無視出来るような言葉でもないのである。
「決まってんだろ。湊斗さんの言ってることは正しい。だが生憎と、おれたちは正しい事を受け入れられないガキンチョだ」
しかし、そんな道理も気にせず学生服の少年、新田雄飛は鼻息も荒く宣言する。
確かにあの人の言う事は正しい。危険な探索を続けて家族に迷惑を掛けるのはいけない事だし、身よりの無い自分を引き取ってくれた来栖野のおじさんおばさんに迷惑をかける訳にもいかないだろう。
だが、自分達の友人が誘拐組織に浚われているかもしれない、武者に襲われているかもしれないと言うのに、そんな道理で納得して探索を中断することなどできはしない。
「馬鹿なものは馬鹿なんだから仕方ない!」
「うわ、開き直った。タチ悪」
そう、馬鹿はしつこくてタチが悪いものなのだ。諦めて貰うしか無い。
「リツは探し続けるぞ。できれば湊斗さんを探し出して強引にでも協力したい。おれらが無闇に動き回るよりはその方が効率的だ」
「コバンザメみたいな活動方針ね」
「それでわたしが公衆便所に全裸で繋がれて『精液便所膣射精無料』なんて身体に書かれているのを見つけるのを期待してティッシュ持参で探しまわるのね! もう、そこまでいやらしいと弁護士だって付けられませんわ!」
やや呆れを含んだ小夏の言葉に、唐突にもう一つの声が加わる。
甲高く脳を突き抜けるような響き、お嬢様染みた口調に、しかしその口調が究極的にそぐわない脳が腐食しそうな内容の発言。
「えっ」
小夏と夕陽が慌てて声の方向に振り返ると、そこには探していた相手、行方不明になっていた友人である飾馬律が立っていた。
恐る恐る、雄飛が問いかける。
「えっと、リツ?だよな」
行方不明になっていた友人がひょっこりと戻ってきた事に懐疑的になっていた事もあるが、それ以外にも思わず本人かどうかの確認をしてしまった理由はある。
先ずは服装、失踪した当時は制服だった筈だが今は私服だ。
だがまぁこれはいい、夜遊びをする上で補導されないように着替えを用意しておくなんて事は度々あることだろう。
だが、目の前に居る飾馬律は自分達が知る飾馬律とは決定的に違う点がある。髪の長さだ。
背中の肩甲骨の辺りまで伸ばされていた飾馬律自慢の美しい栗色の髪は、肩に届かない程のショートカットになっていたのだ。
度々自慢していた髪を切った事、その理由を遠まわしに訪ねたつもりだったが、彼女は雄飛の言葉をストレートに誰何の言葉と受け取り返答を返す。
「あぁら、数日顔を合わせないだけで顔を忘れられるなんて、ここ数日の雄飛さんの頭の中ではわたし、いったいどんな白目剥いて涎鼻水垂らしまくったアヘ顔で再生されていたのかしら! 妄想と現実の区別をつける為にもちゃんと暇を見て右手の上下運動に励みなさい!」
顎から頬にかけて手の甲を当て、優雅に高笑いを始める飾馬律。
天下の往来で発せられるべきでない品性下劣な発言の数々に、雄飛と小夏は心の底から納得する。
「この口から洩れる今にも発禁喰らいそうな毒電波、間違いなくリツね」
「うへぇ……」
小夏は数日ぶりに聞く友人の元気な怪音波に腕を組み感慨深く頷き、雄飛は二日前に自分が想像したのとほぼ変わりない壮健な彼女の発言に、全身の筋肉の脱力によってげんなりとした自分の感情を表現した。
―――――――――――――――――――
「遠出した帰りに近道を通ったら、崖から転げて動けなかったねぇ」
「へぇー、じゃあ怪我が治るまでその男の人の所で休ませて貰ってたんだ」
「ええ、髪もその時に引っかけて切れてしまってバランスが悪くなってしまいましたから、思いきって短くしてみましたの」
夜の街路を三人並んで歩きながら、雄飛と小夏の二人は律がここ三日何処で何をしていたかの説明を受けていた。
結論から言えば、六波羅の人身販売も銀星号も律の行方不明になった原因とは欠片も関係が無かった。
両親との喧嘩の憂さを晴らす為に派手に夜遊びをしていたら、市街から離れた山道で不慮の事故で怪我を負ってしまい、通りがかった親切な通行人の方に助けて貰ったのだという。
「夜遊びしてたのに山で怪我したとか、まず設定からして無理があると思う」
「リツ、何か隠してない?」
鎌倉の町の中の遊び場、夜遊びが出来そうな場所と律の家の間には数日動けなくなるような怪我が出来そうな山道など皆無に等しく、どんなひねくれ方をしたとしても夜遊びの帰りにそんな場所を通る事はありえない。
当然のごとく雄飛と小夏の二人は律を問い質すが、律はのらりくらりと二人の追及をかわし続け、別れ際に改めて二人に向き直り、常ではありえない程の素直な笑みを浮かべ。
「とはいえ、雄飛さんも小夏さんも、あと忠保さんもそこまで心配してくれていたというのは、ええ、ありがたい話ですわ」
そんな律をまじまじと見詰め、ついで二人が口を開く。
心底相手を気遣っている表情と労わる様な口調で。
「リツ、お前本当に怪我大丈夫なのか? 頭とか」
「明日改めて病院に行った方がいいと思うの。ほら、脳の怪我は後遺症が残り易いって言うし」
「……お二人が普段わたしの事をどういう目で見ているのか、よぉーくわかりました」
頭痛を堪える様な険しい表情で、咽喉から絞り出すように言葉を紡いだ律は、深々と溜息を吐いた。
―――――――――――――――――――
雄飛と小夏の二人と別れ、明かりの少ない街路を歩く少女を、暗い眼差しが見つめている。
武者。
暗雲に覆われ月の見え無い夜の闇の中、民家の天井に屹立し、感情の窺い知れない視線を飾馬律の背中に送っている。
武者、あるいは竜騎兵。
鋼鉄の香りを漂わせ、超常の力を仕手に与える生きた鎧、劒冑を纏い空を駆ける戦場を支配する魔神。
黄銅の甲鉄に身を包んだ魔神が、遠ざかり曲がり角の向こうに姿を消した少女を見つめる。
武者が脚を踏み出す。
鋼の重量を持つ武者の一歩はしかし、簡素で堅牢性に欠ける質素な作りの民家の屋根を揺らす事も無くその身を風と化す。
曲がり角の更に向こうへ、音も無く着地、少女の姿を確認する。
少女の自宅へは未だ遠く、脇路は無く、この通りは空き家が多い。その事を踏まえ、武者は改めて少女の姿を探す。
居ない。慌てたように辺りを見渡す。
居た。しかし街路ではない。
「ごきげんよう、鈴川先生」
民家の屋根。先回りした自分よりも更に先、この住宅街の中で一番の高さを誇る木造建築の一軒家。
自らの存在を誇示するように、少女──飾馬律が自信に満ちた、攻撃的ですらある笑みを浮かべ、腕を組み武者を見下ろしている。
「レディの帰宅を尾行するなんて、品行方正な教師の鑑である先生らしくもありませんわね」
心臓が一つ鼓動を打つよりも早く自分を殺害可能な超力を備えた武者を前にして、飾馬律は何一つ身構える事も無く、気の合う友人と世間話をするかの如き自然体。
まるで、そう振舞う事こそが正しく自然なのだと言わんばかりの威風堂々とした振る舞い。
笑みを深め、まるで舞台の上の演者が決められた台詞を、何度も繰り返し練習した台詞を口にするように、一息分の間を置き、再び武者に向け言葉を紡ぐ。
「わたしに、何か御用でも?」
武者が、無意識の内に一歩後退りをした。
未知なる者への恐怖、超常の力を与える甲鉄を身に纏った武者が、華奢ですらある生身の少女へ向けるには相応しくない感情。
「何故だ、何故」
それを自覚する事も出来ず、武者──飾馬律の担任でもある教職公務員、鈴川令法は、湧き立つ惑いの感情を漏らす。
そう、何故。何故この自分の教え子である、教え子であった少女が自分の目の前に存在しているのか。
この少女は、確かに自分の手で、美しいままに終わらせた筈なのに!
「何故? ふふ、わたしを殺し、あまつさえわたしの友人の命すら狙っておきながら、何故と!」
飾馬律が怒りの表情で袖を払うように腕を一振りすると、袖口から一振りのナイフ飛び出し掌の中に収まる。
柄に小さなクリスタルの嵌め込まれた両刃の短剣。
夜闇の中、律の全身に紅い光のラインが走る。
光のラインが光量を増し全身を覆い尽くしたかと思えば、すでにそこに栗毛の少女の姿は無く、全身を金属質のドレスで鎧った道化師のような異形が存在していた。
「む、武者!?」
自らの劒冑、井上真改の中で鈴川は目を剥いた。
そう、無理矢理に常識に当てはめて考えれば、目の前で自分の教え子が変じた異形は、劒冑を纏った竜騎兵に他ならない。
だが何故、美しいままに、腐らぬ内に殺した教え子が、何故蘇り、何故武者に!
惑いは鈴川から正常な判断力を奪う。武者を前にしながら、即座に逃げるという行動を頭から抜け落ちさせる。
あるいはそれは、一度殺した相手だからこその油断か。
「そう、わたしは黄泉帰った。自らの仇を討つ為に、友を付け狙う悪逆非道の輩を討つ為に」
朗々と、唱える様に宣言し、掌の中のナイフをくるりと回し天に掲げる。
ナイフに埋め込まれたクリスタルを中心に、幻影のようにナイフを包み込む一回り大きいクリスタルが浮かび上がる。
雲が割れ、欠けた月が少女の変じた鋼の道化師を照らす。
「テックセッタァーッ!」
月に照らされたクリスタル──システムボックスから少女の身体にディゼノイドが供給され、体内に充填されたテクスニウムと反応、既に形成されたペイルホース製の外骨格の上に更に強靭な外骨格を形成。
体内に供給されたディゼノイドは更に神経系へと影響を及ぼし、人知を超えた反応速度を与える。
そして、システムボックスに内蔵された光=物質変換機能が二重の外骨格に鍛造雷弾すら耐えうるアーマーと、理論上無限に加速が可能な高機動バーニアを組み込む。
要塞の如き堅牢な防御と戦闘機を遥かに上回る高機動性、ブラスレイターの筋力と回復力、そして金神の神通力を分け与えられた、この世界唯一の『宇宙の騎士』
これがっ! これがっ! これがテッカマン・ブラスレイターだ!
そいつに触れることは、死を意味する!
「さぁ」
少女から道化師に、道化師から騎士へ変じた飾馬律は、眼下で呆ける武者、井上真改の仕手である鈴川令法に向け両手を広げ、身体を横に向け、堂々と片腕を掲げ、銃で射抜く様に指差す。
「あなたの罪を、数えなさい!」
―――――――――――――――――――
騎航する──逃げる様に。
周囲の住人に気取られぬようになどという考えは既に頭には無く、周囲の頑強さに欠ける建築物を破壊する勢いでの急発進。
停止状態から一瞬にして合当理を臨界稼働へ、最短時間で最大推力を確保する、甲鉄の事を考えない無謀な飛翔。
月が照らす蒼黒い夜空を、黄銅の武者が一条の光の矢となって駆け抜ける。
頑健さが売りである真改の甲鉄あってこそ成功したその飛翔はしかし、追いかける様に飛翔する赤い悪魔の様なシルエットの武者を引き離す事が出来ない。
《敵機、二〇〇度上方。距離二四〇。来襲》
真改の統御機能(OS)が無機質な声でこちらに追い縋る武者の位置を知らせる。
そう、迫ってきているのだ。美しいままに、腐る前にその生を終えた筈の教え子が、武者の力を得て自分の事を追い詰めようとしている。
ぞわりと、背筋が凍える。
得体の知れない感情が湧きたち、迫る武者から只管に逃げようと更に合当理を吹かす。
計器類を確認する。高度九百弱、速度はもう八百に迫る。
好奇心から騎航性能を確かめた時に迫る速度、それでもまだ足りない。
加速は続けている、だがこれ以上の速度を出した事が無い、ここから更に加速して甲鉄が持つだろうか。
もう少し性能の上限を調べ体得しておくべきだったかと今更ながらに思う。
だが同時に思う。誰がこんな事態を予測できただろうかと。
自分が死を与え終わらせた相手が、武者となって自分を殺しに来るなど!
振り返りもせずにひた駆ける。このまま逃げ続ければ関東防空圏を踏み越える事態になりかねないが、そんな事を考える余裕は無い。
《尻追い戦(ドッグファイト)なんて、武者にあるまじき行為、猪突戦こそ武者の誉れではありませんの? ──まぁ、わたしは尻追い戦の方が好みですけれど》
兜の内側に敵機の、飾馬の囁きかける様な声が響き、即座。
首筋に冷たい感触、冷えた鉄器を押し付けられるような肌のざわめき。
肉の内から熱が逃げる寒気。
横転、急降下!
「がぁっ!?」
肩口に激しい衝撃。
衝撃は骨を突き抜け肺に達し、こちらの呼吸を阻害する。
肺をローラーにかけられ潰され続けるようなものだ。
劒冑の機能が肺に代わり無理矢理に脳に酸素を送り込み、ようやく思考を纏める事ができた。
劒冑に問う。
「なんだ、やられたのか、何を!?」
《左肩部甲鉄に裂傷、騎航、戦闘に支障無し。敵機の攻撃は甲鉄を砲弾として撃ち出したものと思われる》
「甲鉄を、砲弾として!?」
劒冑を纏い、甲鉄と肉体を融合させる武者にとって、甲鉄とは文字通りの意味で自らの身体の一部。
文字通りの意味で身を削って打ち出される砲弾。一撃毎に身を引きちぎられる苦痛を味わう両刃の刃。
なるほど、武者の甲鉄であれば、同じく武者の甲鉄を破る事も可能だろう。実に理に叶った攻撃だ。
しかも破損箇所の状態から見るにそれは敵を撃ち貫く形を取らず、わざわざ刃の形を取って斬り抉る形を取っている。
かつて自分が首を切り落とした少女が、自分の首を狙って。
何故!? 私はただ、美しいものを、美しいままに留めておきたかっただけなのに。
なぜその美しいものが、自分の命を狙う!
美しいままに終わらせてやったのに、その友人までも美しいままに終わらせてやろうというのに! 美しいままに終わらせてやった恩も忘れて!
……そうだ、まだ、まだ大丈夫だ。
飾馬は友人を助けに来た。蘇ってまで、武者の力を得てまで、美しい友情のあるがままに。
飾馬は、やはり美しいまま。ならば、汚れる前に、美しいままに再び終わりを与えてやらねば。
我が身に課した責務の為に、この手で再び、救いを与えてやらねば!
「真改、敵機の性能で分かった事はあるか」
《敵機は無手にして火砲を持ち、しかしこちらを遥かに上回る機動性を誇る。軽装甲の一撃離脱型と思われる》
対するこちらは重装甲の汎用白兵戦型。
正面切っての斬り合い有利!
旋回し、こちらを見下ろす形で追う紅い武者──飾馬に向き合う。
《距離四〇〇。闘牛形》
「美しき諸々の為に、飾馬、穢れを知り腐る前に、お前も、ここでえぇぇぇぇぇ!」
太刀を振り被り、天目掛け直進する。
合当理を吹かし、最大加速──!
「っっっ!」
衝撃。
天の一点にある風間を視界に入れ、加速を入れて斬りかかろうと思い立った瞬間、木の葉のように吹き飛ばされた。
遅れて体内を駆け巡る冷気と熱気。
鉄の刃の冷たさに、身体から抜け出る血潮の熱さが、痛覚よりも早く正確に身に受けた打撃の深さを知らせる。
《左肩部甲鉄に深刻な損傷。内部骨格に致命的な損傷》
左腕が上がらない。劒冑の守りのお陰か激痛に悩まされるといった事が無いのだけが慰めか。
だが、あれはなんだ。
一撃離脱型とはいえ、武者の強化された視覚で捉えられないどころか『目に映らない』などという事があり得るのか!?
《高度の劣勢、という理屈だけではありませんのよ? それに、理解を深める時間も与えて差し上げません》
「げっ、うごっ」
普段通りを装いながら、隠しきれない冷徹な口調と、奥底から滲み出る様な憤怒の感情の籠った飾馬の声を聞きながら、見えない斬撃に打撃に射撃に滅多打ちにされる。
一つの痛みが丁度弱まるのを見計らったかのようなタイミングで打ち込まれる追加の打撃に意識が朦朧とする。
一撃一撃が酷く冷たく、容赦なく鋭く、感情を叩きつけられている様に重い。
脳を揺さぶられる、血液を流し過ぎ、酸素を脳に送れず、思考ははっきりとした形に纏まらない。
ただ、やはり頭に浮かぶのは『何故』の一言に尽きた。
自分はただ、美しいものを美しいままに終わらせたいだけだというのに。
この腐敗した醜いものの地平に、美しい関係を持つ教え子たちを置き去りにしたくなかっただけだというのに。
美しいものを、この醜い世界から逃がしてやろうとしただけだというのに。
何故、何故自分は──!
「何故、何故、何故だぁぁぁっ!!」
攻撃が途絶え、湧きたつ怒りにより意識がクリアになる。
全身を鎧い交わる劒冑、この身そのものでもある甲鉄へ伸びる神経に感覚を尖らせる。
血と肉と神経と、魂の合一した甲鉄の中、心中に蠢く力の奔流を知覚し認識し掌握する。
呪句(コマンド)の詠唱を持て解放。
「狂意操!」
体内の血流を体液を操作し、戦闘に不要な器官への血流を封じ、戦闘に必要な最低限のパーツだけを残す。
脳へ血液が行き渡り、筋肉に張りが蘇る。
陰義。
古来から伝わる製法により鍛えられた真打劒冑の中でも極上の品だけが操る、世の法則を書き換える異能の術理。
これを自らの身体に行使する事により戦闘に耐えうる身体を取り戻した。
だが、これでは終わらない。終える事は出来ない。
目の前で、殺人という罪を犯し穢れようとしている美しい教え子を救う為に!
力を、もっと、もっと力を!
「曲輪来々包囲狂暮葉紅々刳々刃」
頭に自然に呪句が浮かび上がる。
丹田で──横隔膜の下で──存在していない子宮の中で、有り得ない胎児が、胎児のようなバケモノが、カイブツが暴れ狂う。
泣き叫び我が身を食い破らんとする幻、胎児のイメージを映す力の顕れ。
非実在のカイブツの胎児、誰の目にも映らない妄想の塊。
しかし、その妄想が引き起こす腹を内側から食い破る幻痛が、確かにそこに力が存在する証!
呪句により指向性を与えられた力を収束し硬度を付与し速度を付与し鋭さを与え、眼下でこちらに救いを求める様に見上げる教え子に向け、叩きつける!
「白華欄丹燦禍羅!」
河川から海から噴き上がる水流に呆気なく呑み込まれる武者──飾馬。
あらゆる液体を操る真改の陰義によって生み出された水龍の如き濁流が、死の国の使者の如き様相へ変じた教え子を飲み込んでいった。
飾馬の劒冑は機動性を極端に上げた劒冑、装甲はさして厚くは無い筈。
深海の如き水圧を持った高圧、巨大質量の塊に襲われて無事で済む筈が無い。
友人の命を助けんと蘇った美しき友情の持ち主は、その感情を汚される前に、戦いの中で燃え尽きて死んでいったのだ。
「あぁ、何故、美しいものから散っていかねばならないのか……」
友の為に死の国から蘇った彼女の友情は、何にも代えがたい程の美しさを誇っていた。
だが、その美しさが汚れる前に終わらせるには、戦い殺すという選択しか有り得なかったのだと思う。
しかし、そのお陰で彼女はその熱く美しい友情を胸に秘めたまま散り、思いは永遠になる。
彼女の三人への友誼は美しいままに。
《──否、散ってはいない。方位一五〇度下方、距離三〇〇〇。敵影確認》
「何!?」
信じ難い報告に目を剥き示された方向を見やると、そこには確かに紅い悪魔の様な武者の姿、装甲した飾馬律の姿が。
「あれを受けて無事だというのか!?」
《敵機は我が白華欄丹の直撃を受ける前に磁力による防壁を展開、その効果により致命打を避けた模様》
「磁力による防壁……、つまり磁力操作が飾馬の劒冑の陰義なのか」
《そう推定するのが妥当である》
劒冑の甲鉄を貫く砲弾を撃ち出し、眼に映らない程の速度で駆け、極めつけに陰義すら操る以上、飾馬の劒冑もまた大業物に匹敵する真打劒冑である事は間違いが無い。
いったい何処の誰が飾馬を蘇らせ、更に劒冑など分け与えたのか……。
いや、そんな事を考える時では無い。
如何に防壁で致命傷を防いだとはいえ相手は軽量高機動、無傷で居られる筈が無い。
正面を向いての相対、突撃は砲撃により迎撃される危険があり、あの高機動であれば未だ此方の剣戟を避けきる余裕を残している可能性もある。
白華欄丹で畳みかける!
体内でうねる力を引き寄せ掴み取り、収束──
「あ──?」
できない。
それだけでなく、視界は色を失い、音が遠くに聞こえる。
姿勢が崩れ、速度が落ち、身体から、熱が消える。
寒い、寒い、──寒い!
「真改、なんだこれは、真改!」
《────》
答えは無く、ノイズ染みた雑音だけが僅かに耳に届く。
《あらあら、もう限界が来てしまったようですわね》
兜の中に教え子の声が響く。
「飾馬!これはなんだ、限界とはどういう意味だ!」
一瞬だけ飾馬の劒冑の陰義の作用かとも思ったが、磁力を利用してこの様な状態を作り出せるとは思え無かった。
眼下、色を失った光景の中で、教え子の変じた武者が手に弓の様な、槍の様な武器を携え、呆れた様な仕草で肩を竦める。
《わたしも教えられた程度の事しか知らないのですけれど、それは多分、熱量欠乏と呼ばれる症状ですわ》
「熱量欠乏!?」
叫ぶと同時、ガクンという衝撃と共に下がり続けていた高度が止まる。
何事かと確認してみれば仕掛けは簡単、『飾馬の劒冑の手首から伸ばされた細い糸が自分をからめ取り、もう一方の糸の端が海底に繋がっている』だけのこと。
先ほど白華欄丹を喰らい海に落ちた時に海底に設置していたのだろう。
いや、まて、それはつまり、あそこで白華欄丹を喰らう事すら予定の内という事か?
《劒冑は仕手に超人的な身体能力、騎航能力、超感覚、生命保護、そして陰義を使う時、全ての行動において必ず仕手の熱量を消費するのだとか》
ぴんと張られた糸に捕まった私へ、飾馬は手に提げた弓、槍の矛先を向ける。
《当然、攻撃を受け続けて無理な再生を繰り返したり、限界を超えた大規模な陰義を使うなどの無茶な戦闘を続ければそれだけ熱量の消費も激しくなり、身体に蓄えてある熱量を使いきれば──》
槍を構えた飾馬が、手首から伸びた糸を指先で爪弾くと、だらしなく身体が揺らされる。
身じろぎする事すら出来ない。
《劒冑の機能は停止、仕手の身体もまともに動かない、という事ですわね。聞きかじりの話で申し訳ありませんが》
そんな、そんな事は聞いていない。
酷い、知らなかったのに、こんな事になるまで、誰も教えてくれなかったのに!
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「最後に二つ言っておく事があります。まず一つ、わたしに与えられた陰義は磁力操作ではなく、超光速粒子制御。呪いの劒冑なぞと混同されては堪りませんわ」
超光速粒子、すなわちタキオン粒子と一般的には呼ばれる未発見の粒子を制御することによる固有時間制御(クロックアップ)による超高速戦闘と、簡易型の電磁障壁。
甲鉄を飛ばしたと思われていた砲弾は、金神の影響を受けたペイルホースの光弾に波動化されたタキオン粒子を被せて貫通性と誘導性を与えたモノ。
磁力制御とはまた異なる、しかし別方向に優れた超常の力。
金神の力により強引に陰義として組み込まれた、超常の力で再現される超科学。
「そしてもう一つ」
慈悲無く、淡々と、しかし誇るように、憤りを晴らす様に、テックランサーを構えた律が最早逃げる事すら不可能になった鈴川に告げる。
「穢れ、腐れた程度で無くなる程、わたし達の絆は弱くはありませんの。泥に塗れても、世界の厳しさに挫けても、わたし達が仲間で、楽しくやっていたという事実は曲がらない。だから──」
槍の様に構えられたテックランサーに、レンズ状の発射孔の付いたプレートが展開され、何かをチャージする音と共に光を帯びる。
光──フェルミオン粒子が唸りを上げてプレート、テックランサー付属型の発射孔へ収束し──
「醜いものを見たくないなら、一人で何処へなりと消え失せなさいな!」
解放される!
「ボオォル、テッカアァァァァッッ!!!」
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青い光が迫る。
分かる、私ですら理解できる。
あの破壊的な光の奔流を、真改の甲鉄は──無双無敵の防壁は──決して防ぎ止める事は出来ない。
身体が震える。恐怖に竦み上がる。真改はこの攻撃を防ぐ事が出来ず、仮に身体を動かす事が出来たとしても、『私が』避ける事が出来ない。避けるという行為を許容できない。
そうだ。理解できた。
美しいものを留めたいというのは崇高な使命などではなかった。
美しいものに変って欲しくないというのは、単なる私の我儘に過ぎなかったのだ。
いくら私が愚鈍でも分かる。
救った筈の美しいものに否定されては、認めない訳にはいかない。
私は美しいものに救いを求めていても、美しいものは、救いなど求めてはいなかった。
美しいものは、こんなにも力強く在る事ができるのだから。
《いかで……我が……こころの月を……あらは……して……》
「やみに……まどえる……ひとを……てら…………さ…………」
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爆音。
対消滅により文字通り跡形も無く消滅した鈴川令法──真改。
自分を一度殺した相手、友人の想い人であり自分の担任の教師でもあった者の死に、飾馬律は一瞬だけ想いを馳せ、次の瞬間には全身から力を抜き、深く、深く溜息を吐いた。
新たな命と共に力を与えて貰った。戦う為の知識も与えて貰った。事実として、自分を殺した武者を相手に苦戦する事無く一方的な勝利を掴めた。
だが、それでも生まれて初めての殺し合いというのは、精神的に『くる』ものがあったのも確かだ。
自分を殺した相手という事、更に愉快な友人たちまでもつけ狙っていたという事で怒りにまかせて戦う事は出来た。
怒りにまかせて戦っている間は良かった。頭の中が綺麗に整理整頓され、戦うのに最適な心が動いていた様な、そんな錯覚を覚えるほど綺麗に戦えたと思う。
だが、もう一度同じ事を他の武者相手にやれ、と言われれば間違いなく首を横に振るだろう。こんな事はもうこりごりだ。
腕を振り、海底に引っかけていたテックワイヤーを回収する。
ワイヤーを巻き取る最中に、刀の柄の様なものが引っ掛かっていた。
ちょっとした短刀程の長さもある黒塗りの柄、赤く簡素(シンプル)な作りの柄巻きに、黄金色の蜘蛛の彫物。
多分、これが植え付けられていた銀星号の卵の核、なのだと思う。頭に植え付けて貰った記憶が確かであれば。
『かみさま』に渡すにしても持ち主に返すにしても、取り敢えず暫くはわたし預かりという事で良いだろう。
刀の柄を手に、ランサーを収納してからテックセットを解除する。
このブラスレイター形体での飛行は武者の合当理の様に爆音が響かないから静かに行動する事が出来る、ひっそりと誰にも見つからない様に着陸するには絶好の能力。
拾った柄もどうにかするべきだけど、それはまた明日。
今日はもう家に帰ろう。
雄飛さんや小夏さん、忠保さんも大分心配していた、両親も気を揉んでいる筈。
きっと延々と説教を食らう羽目になるだろうけど、それもまた一興。
親の説教が聴けるのも生きていればこそ、なんて、悟った事を言うつもりは無いけれど、今は何故だか誰もかれも、日常の中の何もかもが恋しくてしょうがない。
未だ熱の残る頭でぼんやりとそんな事を考えながら、手に野太刀の柄を携えた飾馬律は、そのままふらふらと自分の殺された竹林へと降りていった。
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……………………
…………
……
昨日見たリツは幻覚か白昼夢かと悩みもしたのだが、リツのやつは結局あっさりと翌日の昼休みに登校してきた。
欠席に続いて大幅な遅刻、もう意味も無く早く登校してリーダー風を吹かせるつもりは無いのだろうか。
小夏も忠保も昨日までのシリアスな雰囲気は何処へやら、何事も無く小粋な(あるいは俺や忠保を貶める形式の腐食性の強い下劣な内容の)冗句が飛び交う何時もの光景が戻ってきた。
そんな何時もの光景の中、何時もと違う事があるとすれば、リツに続いて担任の鈴川が無断欠勤をした事だろうか。
とはいえ、リツと違いこちらは成人し職を持つ立派な大人、何かしらの事情でやむなくという事もあるだろうし、水泳部顧問として立派な肉体を持つ鈴川がそうそう危険な目に合う事も無いだろう。
鈴川の家には電話の類は存在しなかった筈だし、もしかしたら急病で寝込んでしまい、学校に連絡をする事ができなかっただけなのかもしれない。
……つい昨日までは友人が行方不明になって取り乱しておきながら薄情な、と思われるかもしれないが、いくら治安が悪いからと言ってたかだか一度の無断欠勤で生徒が教師の安否に頭を悩ませるのは筋が違うのだから仕方が無い。
もし万が一鈴川が何事かの事件に巻き込まれているのならともかく、ただ単に病気で寝込んでいるだけなのだとすれば、俺達が、というよりも、脳味噌を納豆菌へと変化させた約一名が押し掛けるのは間違いなく迷惑極まりなく、病状を悪化させかねない。
そう三人がかりで小夏を説き伏せ、それでも完全に説得しきる事の出来なかった俺達は、丁度良く巷の行方不明事件を調査している知人の警察の人に相談する事になった。
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午後の授業が終わり、放課後。俺達はあっさりと湊斗さんを発見した。
周囲の明度ががくんと下がる様な、空気が重々しさを持たされているような、そんなあの人特有の悪目立ちする空気のお陰である。
なんとなく息苦しくなるような空気を追っていたら三十分で見つけてしまった。
「……。自分に近づくのは危険だと、簡潔に御説明したはずです、が」
湊斗さんは口をへの字に曲げ困ったような此方を諌める様な表情で口を開き、口元に柔らかい笑みを浮かべる。
明るさとも快活さとも無縁の、やはり本人の雰囲気そのままの暗さのある笑みだけど、間違いなく心底リツの無事に安堵を感じてくれている笑みだ。
「そちらの方は、飾馬律さんですね? 行方不明の疑いがあるとの事でしたが、御無事だったようで何よりです」
リツを含めた行方不明者の調査をしていた以上は、内一人が行方不明事件とは何も関係無かったのなら無駄脚を踏まされたと憤っても可笑しくないのに、純粋にリツの無事を喜んでくれている。
そんな湊斗さんに向け、リツが腰を折り深々と頭を下げた。
「お手数掛けさせてしまったようで、申し訳ありません」
ぺこりと頭を下げるリツ。
普段から礼儀正しくあり警察関係者、お巡りさんなどの覚えをよくしておけば、夜道で見かけられたとしても『あの礼儀正しい娘に限ってまさかそんな』という理由で見間違いで済まされる可能性が増えると言っていたが、それとはまた別の、ちゃんと誠意の籠った礼に見えた。
こういう場面でお姉さん風を吹かされるのは気恥かしくてたまらないのだが、俺達が迷惑をかけたという理由以外にも、自分を探す手間をかけさせてしまって申し訳ない、という理由があるだろうと分かってしまう為、下手に茶々を入れる事も出来ない。
「お気になさらず、これも職務の一環ですので」
「ありがとうございます。それで、その職務のお話なのですけど──」
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「──なるほど、飾馬さんと入れ違いに、担任の教諭の方が行方不明に」
「あ、いえ、まだ行方不明と決まった訳では無くて、ええと」
納得顔で頷く湊斗さんに小夏が慌てて訂正を入れる。
「まぁただの無断欠勤なんですけど、最近物騒な噂ばかり耳にしますからね。万が一のことを考えて先にお知らせしておいた方がいいかと思いまして」
しどろもどろの小夏を遮り忠保がフォローを入れる。
いくらこう不吉な事が連続して起きているからと言って、鈴川の自宅を訪ねて本当に病欠かどうか調べてください、などと言える筈も無い。
「いえ、丁度こちらも調査に行き詰まっていた処です。情報提供、痛み入ります」
相変わらず本心からの言葉か社交辞令かは分からないが、やはり誠実な人だ。
リツが戻った以上無理やり付いて行って調査に協力させて貰おうとまでは思わないけど、何か俺達で力になれる事があればその時は恩を返したいと、そんな事を思った。
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……………………
…………
……
新田雄飛、来栖野小夏、稲城忠保、飾馬律の四人組と別れてから数時間後、日も沈みかけた夕暮れの中、湊斗景明は鎌倉の街を独り歩いていた。
いや、独りではない。
歩く景明を、巨大な朱の色の肌を持つ蜘蛛が民家の壁を屋根を伝い追いかける。
身の丈6、7尺にも及び、人を抱え込めるほどの長く頑強な節足に、酒樽ほどもありそうな胴体。
甲鉄の肌を持つ大蜘蛛、善悪相殺の呪を宿した劒冑、三世右衛門村正の独立形体。
景明が細く人気の無い路地に入ると、その大蜘蛛は姿を現し、景明に声をかける。
《今日も進展無し、ね》
「いや、そうでもない。昨日の時点で寄生体を見つける事ができた。その寄生体の消滅も」
逆に言えば、銀星号の卵の寄生体が鎌倉に存在『した』ということしか分かっていないのだが、それでも何も無いよりはましと言えるだろう。
寄生体自体には精神汚染能力が存在していないので、村正以外の劒冑でも対処が可能、故に自分以外の武者に討伐される可能性も無いではないのだ。
あの武者が自分たちではなく学生を目標としていた事から考えても、早期に討伐されたのは悪い事ではない。
問題があるとすれば、
《野太刀の破片を回収出来なかったのは痛いわね》
「ああ……」
銀星号に砕かれ、卵の核として組み込まれた自分達の野太刀の破片。
黄銅色の武者との交戦後、不利を感じ撤退した村正は直接その戦闘を見る事は無かった。
銀星号の波動を感じ取る事ができる村正といえども、卵から分離した野太刀の破片を探し当てるのは至難の業なのだ。
今日は行方不明者の捜査と共に、鎌倉中を歩き回り野太刀の破片を探したのだが、結局見つける事は出来なかった。
《まぁ、少なくとも孵化する可能性が無くなった訳だから──》
台詞を途中で切り、村正が音も無く跳び民家と民家の間に隠れる。
村正が隠れてから数秒、人の通る事の少ない路地に一人の少女が足を踏み入れた。
艶のある栗色の髪を短く纏めた活発そうな少女。飾馬律。
彼女は昼間友人とともに景明と相対した時とは違い学校の制服ではなく、少しだけ大人びた印象の私服を身に纏っている。
夕陽を背に現れた少女の表情は景明からははっきりと確認できなかったが、その表情が不敵な笑みであるように見えた。
「……学生の夜間の外出は禁止されている筈ですが」
「ええ、存じておりますわ。でも、昨日の帰り道で落とし物を拾ったのを思い出してしまいましたの。元の持ち主が今も必死で探しているかと思うと、居ても立ってもいられなくて」
そう告げる律の手には、何か細長い物が入った巾着が下げられていた。
「なるほど、では、自分の方でお預かり致しましょう」
「ええ、確かにお預けします」
律は景明に歩み寄り、その手に巾着を渡すとくるりと踵を返し、元来た道を歩き始めた。
律が路地から出るか出ないかという所で、村正の金打声が景明の耳孔を突き抜け脳を揺さぶる。
《御堂、それ、野太刀の破片!》
「何?」
そんな馬鹿な事が、とは思わず景明が受け取った巾着袋を開けると、そこには確かに銀星号に七つに砕かれ奪われていた自分の野太刀の破片、柄が入っていた。
景明は律の背に視線を向け、しかし何と問うべきか迷った。
少女、飾馬律は落し物を拾ったと言っていた。
昨夜の寄生体と謎の武者の戦いをこの目で確認した訳では無いので自分達はその戦闘が何処で行われていたか知らない。
それが下に陸地のある場所で行われていたのならば、確かに彼女がこの破片を拾う可能性が無いでは無い。
だがそれなら、いくら昼間に会ったとはいえ、近場に居る警官ではなくわざわざ自分の事を探してまでこれを届けたのは何の為か。
それも友人三人から聞いた評判から判断したという可能性もあれば、身近にいる警官に良い感情を持っていないが為に自分に渡したとも考えられる。
様々な思考を巡らせている景明に、今まさに路地から表通りに出ようとしていた律が振り返った。
夕陽をバックに、煌めくような眩い笑みを浮かべ、揃えた中指と人差し指を米神に当て、その指先を緩い弧を描きながら振るう。
「アデュウ」
「……ッ……」
息を呑む。
そんな景明を置き、飾馬律は鎌倉の喧騒の中に融ける様に消えていった。
その後ろ姿を、呆っとした、あるいはハッとした表情で見送る景明に、建物の隙間に隠れた村正が恐る恐る金打声をかける。
《御堂、なんで感動してるの……?》
その言葉に我に返った景明は二度三度頭を振り、そして眩いものを見る様な眼はそのままに答える。
「いい、台詞だ……」
《………………御堂、解っているでしょうけど、私達が誰かに好意を抱くという事は》
「いや、そうではない」
呆れの様な感情が混じった沈黙の後に告げられた村正の言葉を遮り、
「本当に、いい台詞だと思っただけ、だ」
どこか遠い眼をした景明は、鎌倉の街に向け、ぼそりと呟いた。
続く
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戦闘パートはオマケでむしろ戦闘前の口上を言わせたいが為の第三部第一話をお送りしました。あとタキシードとかヒットマンリボンズアルマークとか。
戦闘パートはオマケなので読みとばしても今後の展開に一切支障ありません。
むしろ第三部は一話完結で後の話を引き摺らないのでこの話を読みとばしても次の話を問題無く読める新設設計。
でも、竹林で救済なのに原作を知っている人が誰一人律を救済候補に挙げなかった事に驚愕を禁じ得ないです。
いや、人気無いですけど、救済する相手としては妥当じゃないですか……。
まぁこれ以降間違いなく出番は無いですけども。
最後の最後まで再生首ちょんぱの必殺技をボルテッカで通すかライダーシューティングにするかで迷いはした訳ですよ。
あとは変身シーンのエフェクトでコスモスの花びらを舞わせたりしたかったんですが、構造的に金神パワーでもテックシステムでもペイルホースでも説明がつかなかったので諦めました。
デザイン的にはテッカマンデッドとエビルを掛け合せて女性っぽいラインを合わせた様なテッカマンになりますが想像できなくてもあまり問題はありません。髪の毛が伸びたら地球製テッカマンぽく髪が靡いて、とかありますが特につかいません。
しかしこれで一挙に雄飛の命と忠保の目と小夏の四肢と律の命を救った訳ですね。
この介入行動により雄飛が獅子吼に捕まって大鳥の当主として奉りあげられたり、そこで雄飛が獅子吼に稽古をつけて貰って大鳥家当主に代々伝わる劒冑を装着して奈良原ぽくない正調の英雄編とかが始まったり、
改造された律が鎌倉というか日本の危機に立ちあがって進駐軍の横須賀艦隊の日本上陸をボルテッカ無双で阻止したりといったサイドストーリーがあるかもしれませんが、当然後に引き摺らないので書きません。
行間に挟まっていると思うので読みたい方は心眼で読んでみればいいと思います。
しかし、第一話からいきなり原作を知らない人たちからしてみればわけ・わか・らん♪な内容でしたね。シリアス一辺倒ですし。
そもそも今回のトリップ先が年齢制限ありの作品なのもあれですよね。
もし、『この作品しらねぇよバーヤ!』という方がいらっしゃったら申し訳ありません。
多分第四部は年齢制限無い作品にトリップすると思うのでそこまでだらだらと斜め読みしていただければ。
いや、原作知ってる人からも、こんなの俺の知ってる○○じゃねぇ!みたいな事を言われそうですが、そこは皆様改善の為のアドバイスを頂ければ。
しかし次回は大丈夫! 次回はコメディというかいつも通りのグダグダなノリで主人公とサポAIが死ぬ筈だった幼き命を救ったり悪人をサクッと一人蒸発させたりします。
大体あれですよ、色々外道だのレーベンとエーデルを足して割らないだの言われてますけど、さりげなく介入して原作で死んでいる人たちを救うなんてこの主人公第一部でそりゃもうさくさくヤッてしまっている訳で、救済なんておてのものー!ってな訳ですとも。
あとは適当に可哀想な人に心にもない上っ面だけの慰めの言葉をかければいい感じにベタベタの救済物になると思います!テンプレ的に考えて。
さっさと次話を書き始めたいので自問自答コーナーはお休みです、何か不明な点があれば感想欄にどうぞ。
へば、誤字脱字の指摘、分かり難い文章の改善案、設定の矛盾、一行の文字数などのアドバイス全般、そして、短くても長くても一言でもいいので作品を読んでみての感想など、心よりお待ちしております。
次回、
『金神様とリョウメンスクナは誰が何と言おうと冷やしたぬきが大好物』
『暗闇星人、他人の善意の行動で犠牲者を少なく出来た事に喜び顔芸をしながら喉が張り裂けんばかりに絶叫』
の二本立てでお送りします。お楽しみに。