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No.14434の一覧
[0] 【ネタ・習作・処女作】原作知識持ちチート主人公で多重クロスなトリップを【とりあえず完結】[ここち](2016/12/07 00:03)
[1] 第一話「田舎暮らしと姉弟」[ここち](2009/12/02 07:07)
[2] 第二話「異世界と魔法使い」[ここち](2009/12/07 01:05)
[3] 第三話「未来独逸と悪魔憑き」[ここち](2009/12/18 10:52)
[4] 第四話「独逸の休日と姉もどき」[ここち](2009/12/18 12:36)
[5] 第五話「帰還までの日々と諸々」[ここち](2009/12/25 06:08)
[6] 第六話「故郷と姉弟」[ここち](2009/12/29 22:45)
[7] 第七話「トリップ再開と日記帳」[ここち](2010/01/15 17:49)
[8] 第八話「宇宙戦艦と雇われロボット軍団」[ここち](2010/01/29 06:07)
[9] 第九話「地上と悪魔の細胞」[ここち](2010/02/03 06:54)
[10] 第十話「悪魔の機械と格闘技」[ここち](2011/02/04 20:31)
[11] 第十一話「人質と電子レンジ」[ここち](2010/02/26 13:00)
[12] 第十二話「月の騎士と予知能力」[ここち](2010/03/12 06:51)
[13] 第十三話「アンチボディと黄色軍」[ここち](2010/03/22 12:28)
[14] 第十四話「時間移動と暗躍」[ここち](2010/04/02 08:01)
[15] 第十五話「C武器とマップ兵器」[ここち](2010/04/16 06:28)
[16] 第十六話「雪山と人情」[ここち](2010/04/23 17:06)
[17] 第十七話「凶兆と休養」[ここち](2010/04/23 17:05)
[18] 第十八話「月の軍勢とお別れ」[ここち](2010/05/01 04:41)
[19] 第十九話「フューリーと影」[ここち](2010/05/11 08:55)
[20] 第二十話「操り人形と準備期間」[ここち](2010/05/24 01:13)
[21] 第二十一話「月の悪魔と死者の軍団」[ここち](2011/02/04 20:38)
[22] 第二十二話「正義のロボット軍団と外道無双」[ここち](2010/06/25 00:53)
[23] 第二十三話「私達の平穏と何処かに居るあなた」[ここち](2011/02/04 20:43)
[24] 付録「第二部までのオリキャラとオリ機体設定まとめ」[ここち](2010/08/14 03:06)
[25] 付録「第二部で設定に変更のある原作キャラと機体設定まとめ」[ここち](2010/07/03 13:06)
[26] 第二十四話「正道では無い物と邪道の者」[ここち](2010/07/02 09:14)
[27] 第二十五話「鍛冶と剣の術」[ここち](2010/07/09 18:06)
[28] 第二十六話「火星と外道」[ここち](2010/07/09 18:08)
[29] 第二十七話「遺跡とパンツ」[ここち](2010/07/19 14:03)
[30] 第二十八話「補正とお土産」[ここち](2011/02/04 20:44)
[31] 第二十九話「京の都と大鬼神」[ここち](2013/09/21 14:28)
[32] 第三十話「新たなトリップと救済計画」[ここち](2010/08/27 11:36)
[33] 第三十一話「装甲教師と鉄仮面生徒」[ここち](2010/09/03 19:22)
[34] 第三十二話「現状確認と超善行」[ここち](2010/09/25 09:51)
[35] 第三十三話「早朝電波とがっかりレース」[ここち](2010/09/25 11:06)
[36] 第三十四話「蜘蛛の御尻と魔改造」[ここち](2011/02/04 21:28)
[37] 第三十五話「救済と善悪相殺」[ここち](2010/10/22 11:14)
[38] 第三十六話「古本屋の邪神と長旅の始まり」[ここち](2010/11/18 05:27)
[39] 第三十七話「大混沌時代と大学生」[ここち](2012/12/08 21:22)
[40] 第三十八話「鉄屑の人形と未到達の英雄」[ここち](2011/01/23 15:38)
[41] 第三十九話「ドーナツ屋と魔導書」[ここち](2012/12/08 21:22)
[42] 第四十話「魔を断ちきれない剣と南極大決戦」[ここち](2012/12/08 21:25)
[43] 第四十一話「初逆行と既読スキップ」[ここち](2011/01/21 01:00)
[44] 第四十二話「研究と停滞」[ここち](2011/02/04 23:48)
[45] 第四十三話「息抜きと非生産的な日常」[ここち](2012/12/08 21:25)
[46] 第四十四話「機械の神と地球が燃え尽きる日」[ここち](2011/03/04 01:14)
[47] 第四十五話「続くループと増える回数」[ここち](2012/12/08 21:26)
[48] 第四十六話「拾い者と外来者」[ここち](2012/12/08 21:27)
[49] 第四十七話「居候と一週間」[ここち](2011/04/19 20:16)
[50] 第四十八話「暴君と新しい日常」[ここち](2013/09/21 14:30)
[51] 第四十九話「日ノ本と臍魔術師」[ここち](2011/05/18 22:20)
[52] 第五十話「大導師とはじめて物語」[ここち](2011/06/04 12:39)
[53] 第五十一話「入社と足踏みな時間」[ここち](2012/12/08 21:29)
[54] 第五十二話「策謀と姉弟ポーカー」[ここち](2012/12/08 21:31)
[55] 第五十三話「恋慕と凌辱」[ここち](2012/12/08 21:31)
[56] 第五十四話「進化と馴れ」[ここち](2011/07/31 02:35)
[57] 第五十五話「看病と休業」[ここち](2011/07/30 09:05)
[58] 第五十六話「ラーメンと風神少女」[ここち](2012/12/08 21:33)
[59] 第五十七話「空腹と後輩」[ここち](2012/12/08 21:35)
[60] 第五十八話「カバディと栄養」[ここち](2012/12/08 21:36)
[61] 第五十九話「女学生と魔導書」[ここち](2012/12/08 21:37)
[62] 第六十話「定期収入と修行」[ここち](2011/10/30 00:25)
[63] 第六十一話「蜘蛛男と作為的ご都合主義」[ここち](2012/12/08 21:39)
[64] 第六十二話「ゼリー祭りと蝙蝠野郎」[ここち](2011/11/18 01:17)
[65] 第六十三話「二刀流と恥女」[ここち](2012/12/08 21:41)
[66] 第六十四話「リゾートと酔っ払い」[ここち](2011/12/29 04:21)
[67] 第六十五話「デートと八百長」[ここち](2012/01/19 22:39)
[68] 第六十六話「メランコリックとステージエフェクト」[ここち](2012/03/25 10:11)
[69] 第六十七話「説得と迎撃」[ここち](2012/04/17 22:19)
[70] 第六十八話「さよならとおやすみ」[ここち](2013/09/21 14:32)
[71] 第六十九話「パーティーと急変」[ここち](2013/09/21 14:33)
[72] 第七十話「見えない混沌とそこにある混沌」[ここち](2012/05/26 23:24)
[73] 第七十一話「邪神と裏切り」[ここち](2012/06/23 05:36)
[74] 第七十二話「地球誕生と海産邪神上陸」[ここち](2012/08/15 02:52)
[75] 第七十三話「古代地球史と狩猟生活」[ここち](2012/09/06 23:07)
[76] 第七十四話「覇道鋼造と空打ちマッチポンプ」[ここち](2012/09/27 00:11)
[77] 第七十五話「内心の疑問と自己完結」[ここち](2012/10/29 19:42)
[78] 第七十六話「告白とわたしとあなたの関係性」[ここち](2012/10/29 19:51)
[79] 第七十七話「馴染みのあなたとわたしの故郷」[ここち](2012/11/05 03:02)
[80] 四方山話「転生と拳法と育てゲー」[ここち](2012/12/20 02:07)
[81] 第七十八話「模型と正しい科学技術」[ここち](2012/12/20 02:10)
[82] 第七十九話「基礎学習と仮想敵」[ここち](2013/02/17 09:37)
[83] 第八十話「目覚めの兆しと遭遇戦」[ここち](2013/02/17 11:09)
[84] 第八十一話「押し付けの好意と真の異能」[ここち](2013/05/06 03:59)
[85] 第八十二話「結婚式と恋愛の才能」[ここち](2013/06/20 02:26)
[86] 第八十三話「改竄強化と後悔の先の道」[ここち](2013/09/21 14:40)
[87] 第八十四話「真のスペシャルとおとめ座の流星」[ここち](2014/02/27 03:09)
[88] 第八十五話「先を行く者と未来の話」[ここち](2015/10/31 04:50)
[89] 第八十六話「新たな地平とそれでも続く小旅行」[ここち](2016/12/06 23:57)
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[14434] 第十三話「アンチボディと黄色軍」
Name: ここち◆92520f4f ID:259058e2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/22 12:28
「そうなんですよ。カティアちゃんが『そんなにお菓子ばっかり食べてると太るわよ?』なんて意地悪言うんです」

カティア、テニア、メルアの三人の共同部屋、ベッドの上で通信機を両手で持ちメルアが楽しそうに通信機の向こうの相手に最近のナデシコの動向を伝えている。
ナデシコの動向、といっても現在は月への移動中故に艦内で起こった乗組員同士のトラブルだとかパイロット同士の賭け事だとかが主な内容だ。
そしてそういった話題が終わり、現在は互いのごくごく身近な事件を報告し合っているのだろう。
先ほどもアークエンジェルで鳴無妹が見た最近の鳴無兄の行動を会話内容の誘導で巧みに聞き出していたようで、それをカティアも微笑ましげに横から眺めていたのだが。

(いきなり目のハイライトが消えた時は何事かと思ったけど)

どうにも傭兵兄妹の鳴無妹は隠れブラコンで近親ネタが大好きらしく、女性パイロットの集まりで好みの男性のタイプの暴露大会などを行っても、

『最低限血が繋がってないとエロい気分になれないなー』

などと堂々と言い放っていたりする。
先ほども同じようなネタを迂闊にもメルア相手に使ってしまったようで、笑顔はそのままにレイプ目に移行したメルアのマジ問い詰めが開始されそうになったが、鳴無兄が通信を換わることでなんとか事なきを得た。

横に居るものとしてはとても心臓に悪い状況だ。全員で会話した方がフォローできる分まだ安心できるだろうが、メルアは通信機を手放そうとも設定を変えようともしない。
数日ぶりの鳴無兄との会話にはしゃいでいるのだろうことは表情を見るまでも無く声の調子で分かる。
カティアとて下手な手を打って地雷を踏みたくは無いのだが、このまま放置というのも危ういのではないか。
そんな事を考えている間にもメルアと鳴無兄の会話は続いて行く。

「普通はそこまで心配しませんよね。――え? もう、卓也さんまでそんなこと言うんですか?」

どうにも先日お菓子を食べすぎだと注意した際の事を話しているようで、通信機の向こうの鳴無兄からの注意に唇を尖らせて反駁している。

「全部胸に行くから大丈夫ですよ」

(人体舐めたセリフを――!)

女性陣の過半数を敵に回すようなセリフをサラリと吐いたメルアに戦慄を覚えるカティア。
いや、無駄にスタイルのいい連中ばかりなのでそこまで過剰に反応する者も居ないのかもしれない。
しかし、よくあそこまで露骨に自分の身体的に優位な特徴を口にできるものだ。
仮にも異性が相手なのだからもう少し慎ましやかに行くべきではないか、むしろ身体的にももう少し控えめになるべきではないか。

ふと、通信に嬉しそうに相槌を打つ度に揺れている気がするメルアの胸部に目をやる。
続けて通信に夢中で他に気が回らないメルアの目を盗んで、鳴無兄が置いて行ったお菓子類が入った大型の冷蔵庫を開けごそごそと物色しているテニアの胸部を見て、最後に自らの胸部に手を当てる。
大丈夫、あの二人のサイズがあれなだけで充分平均値は上回っているのだからと自らに言い聞かせ平常心を取り戻し、メルアの通信相手について考え始めた。

──鳴無卓也と鳴無美鳥の傭兵兄妹。自分たちが地球に降りて統夜と出会うとほぼ同じ時期からの付き合いになる二人。
ボウライダーとスケールライダーという出所不明の高性能機を駆り、特に鳴無卓也のボウライダーによる戦闘法は今の統夜の戦闘法のお手本にもなっている。
実際のところ、高威力長射程の速射砲と二種のブレードで遠近共にバランスの取れた構成のボウライダーと遠距離戦特化のベルゼルートでは同じ戦い方は危ういのだが、周囲の援護なども合わさり今のところは上手いこと戦えている。
兄妹共に奇矯な振る舞い(主にメルアに対する餌付け、ブレンに対するセクハラなど)が気になるが、人当たりも良く不思議と警戒心は沸いてこない。
ナデシコが火星に向かう事を目的としていた頃からの付き合い故に慣れたというのもあるのだろう。
兄の方は割と面倒見も良く、統夜が前に出過ぎた時などは積極的にフォローに回り、同じ艦に乗っている間はメルアや自分たちに毎日と言っていいほどお菓子をふるまってくれたりもする、親切なお兄さんといった感じの人だ。

まぁ、顔は十人並みで、いたるところに美男美女の多いナデシコやアークエンジェルでは目立った風貌というほどでもない。
吊りあがりがちな目元を除けば全体的に素朴な作りの穏やかそうな顔で、殺し合いが日常の傭兵というよりも、どこぞで畑でも耕してそうな印象を受ける。
この兄の方にメルアがとても懐いているのだが、どうにも相手側は異性を相手にしているというよりは一般的な兄が幼い妹に対して接するような感覚に見える。
メルアならもう少し良いのを選べるんじゃないかとか、なんで助けてくれた統夜ではなくこの人なのかといった疑問はあるが、そこは個人の好みの問題だろう。

カティアの考えうる限り、鳴無兄を落とす上で最大級の障害になり得るのは鳴無妹だ。
本人が女性陣のなかで自分がガチブラコンであることをカミングアウトしているし、統夜から伝え聞いた鳴無兄の異性の好みは鳴無妹を成長させたものとほぼ合致している。
また、兄妹二人が揃った時の身体の密着具合もかなりのもので、格納庫から食堂に移動する際は大体の場合において手を繋いでいるがこれも腕の半ばまで絡める、俗に言う恋人繋ぎというもの。
艦内スタッフの持っていた女性向け恋愛読本の図解付き初心者向けページにも書いてあったから間違いない。初心者向けのページは何度も繰り返して読んだからほぼ暗記しているので確定だろう。
人目を憚らずに実の兄妹であのような恥ずかしい手のつなぎ方をして、兄妹仲が良いだけだと言い張る二人だ、好奇心で開いて見た上級者向けページに載っていた、用途のいまいち分からない組み体操ヨガのようなポージング集も実践してしまっているのかもしれない。

(考えれば考えるほど勝率が下がっていくわね……)

むしろもう積んでいるのでは無いかとすら思える。
通信機の向こうへ積極的に身体ネタなどでアピールして尽くスルーされているらしいメルアの想いが成就するかと考えると、自動的にフラれた後のフォローが頭に浮かんでしまうのも仕方ないのではないか。
しかし、この国には告白して玉砕するまでが恋愛ですとの言葉もあるらしい。
最低でも告白の段階にまで持って行けるように援護してあげるのが、実験体時代からの付き合いである自分たちの友情というものだろう。
自分が他人より苦労症であるという自覚の無いカティアは、深く溜息を吐くのであった。

―――――――――――――――――――

「ああ、それじゃまた暇な時間にでも。他のみんなにもよろしくー」

通信を切り、実家から持ち込んだアルバムを眺めていた美鳥に通信機を投げ渡す。
あれ、姉さんの映ってる写真を厳選して集めたものだから俺以外の奴が見ても面白いものではないと思うのだが、いったい何をそんなに熱心に眺めているのだろう。
アルバムから目を離さず片手でページを捲りながら片手で通信機をキャッチした美鳥が、ちらりとこちらを見た。

「お兄さんが持ってた方が良くない? なあんか長々と喋ってたし、あっちも月まで暇だろうからすぐにまた通信来ると思うけど」

「いや、流石に今の会話で殆どこっちの近況は話し終わったからなぁ」

近況、とは言うがルート分岐してまだ数日、それほどネタにできるような事件が頻繁に起きる筈も無い。
こっちに残った連中の気性の問題もあるのだろうがナデシコよりも大分地味な内容になってしまう。
ここが正式な意味での軍艦ということもあり、フルメタの連中の起こす騒ぎにしても爆発ネタは自重しているので大人しめになっているし。

「後半、お兄さん相槌打ったり否定したりとかそんなんばっかだったよね? 女の方にばっかり話題振らせるのは男としてマナー違反だと思うけど」

「あれは、リアクションし難いネタばっかり振ってくるあっちにも問題があるんだよ」

清楚なクッションとか淫らなクッションとか誰が教えたのか。露骨な胸囲自慢、いやらしい。
いや、ナデシコ内でも思い当たる節は大量にあるし、ネット環境もあるから自力で調べたという可能性もある。思い返してみれば、ナデシコの方にある俺の自室に遊びに来た時も備え付けの端末で何事か検索していたような気がする。
検索した覚えのないエロ単語が検索履歴に残っていたり、金髪巨乳グラビアアイドルのポージング特集のページがお気に入りに登録されていたのもメメメの仕業の可能性がある。
というかほぼ確定だろう。俺はやって無いし美鳥も情報収集する時は自分の部屋の端末かコミュニケから検索している。
嘆かわしい話だ。全年齢対象でぱっと見ロボゲにしか見えないからお子様でも安心してプレイできるギャルゲのヒロインの自覚はどこに消えてしまったのか。

「ああ、なんか最近下ネタ増えたよなーあの金髪。多分色目使ってんだろうけど、あれは流石にちょっと引くわー……」

「色目? 誰に」

「お兄さんに。あんだけ露骨にアッピルしてるんだから気付いてない訳じゃないっしょ?」

「ふむ」

そうなるように洗脳仕込んだのは確かなので可笑しくは無い。ここまで露骨なレベルの好意になるのは計算違いだったが。
本当ならもう少し軽い、警戒心が少し薄れて信頼されやすくなる程度にするつもりだった。まぁ今更それを言い出しても意味は無いので気にしないで良いものとしておく。
しかし、金髪巨乳は忍者とドラマチックな恋をしてくっつくのが流行の最先端なのだ、農夫系の俺の出る幕は無い。
というか、俺は金髪巨乳に興味があまりない。
姉さんと致す前に集めていたのも黒髪巨乳とか姉弟の近親相姦モノばっかりだったし、外人系には欠片も手が伸びなかった記憶がある。
ベッドの下にメメメ似の少女が出てくるエロ本がいつの間にか仕込まれていたりするのもメメメの自己アピールなのだろうか、美鳥の悪戯という線も捨てがたいと思っていたのだがこれで確定だろう。

「フラグを立てたからといって回収しなければいけない義理も無いよな?」

「フラグっていうより改造コードで『好感度下がらない』『好感度上昇率255倍』入れてるようなもんだしね。とりあえず直接的に好意を伝えられたりしない限りは放置でいいと思う」

ふむ、そうなるとこっちから三人娘や統夜に積極的に近づく必要は無い訳で、餌付けの時間の優先順位はかなり下がる。
余った時間は追加武装でも作っていた方が効率いい、が、しかしだ。

「どうせ時間は持て余し気味なんだし、暇なとき限定で餌付けは続けておこう」

「え、ツンデレ?」

違う、と言おうとしてまだ美鳥がアルバムから目を離していない、というより一枚の写真に目を向けて難しい顔をしている。

「さっきから聞こうと思ってたんだが、アルバム眺めて面白いか? 俺は面白いが」

「何いきなり自問自答してるわけ? いやそうじゃなくてこの写真、だいぶ古いけど何時頃の写真っていうか、どういう状況?」

手渡された写真に写っているのは小さな頃、多分まだ小学校に上がって間もない頃の俺と高校入ってすぐの姉さん。俺がわんわん泣きじゃくって、それを姉さんがおろおろしながら宥めているという構図だ。
姉さんは高校の頃から外見的に殆ど変わっていないが、この写真だと今の姉さんとは分かりやすい違いがある。
オールバックのド派手な金髪ロン毛、心なしか目つきも悪く、そしてなにより、眉毛が無い。

「ヤンキー? お姉さんにもヤンチャな時期があったんだねぇ」

「いや、スーパーサイヤ人3」

「――なん……、だと……?」

―――――――――――――――――――

……………………

…………

……

確か両親が死んで、姉弟二人で頑張って行こうね、みたいな約束を二人で交わしてしばらく経った時の事。
小学校に上がって初の授業参観に、姉さんが来れないということで軽い姉弟喧嘩をした。
その当時異世界トリップのし過ぎで上がったばかりの高校で出席日数がギリギリだった姉さんは、できる限り授業に出なければ早速留年してしまうところだったらしい。
そんな事情を知りもせず、また姉さんのその説明を理解もせずに駄々をこねていじけ、結局数日間気不味い空気が家の中を漂っていた。
そんなタイミングで例によって例の如く姉さんがふらりと家を開け、帰って来た時の姉さんがそんな感じだったのだ。
今思えば間違いなくドラゴンボールか何かの世界に言って目覚めたか、さもなければ何処かキツイ条件の世界に行く特典としてサイヤ人の能力を付加された、とかそんなんだったのだろう。
しかし、そのヤンキーも裸足で逃げだしそうな風貌を見た瞬間、俺は子供ながらにこう思った。

『お父さんとお母さんが居なくなって、お姉ちゃんが頑張ってくれてるのに、僕がわがままを言うから、お姉ちゃんがグレて不良になっちゃったんだ!』

そこからはまぁ、帰ってくるなり出迎えた俺がわんわん泣きながら、ぼくいい子になるがらぁ~! とか叫び出して、それを見てどうしたモノかと姉さんがオロオロして。
俺の泣き声を聞いて姉さんのトリップ中に預けられていた千歳さん宅の親御さん達がやってきて、こっちは状況を把握できずにオロオロして。
遅れてやって来た千歳さんが、状況を一発で把握して一旦部屋に戻りインスタントカメラを持ち出し、写真に撮って姉さんをゲラゲラ指差して笑って……。
結局また数時間姉さんが姿を消して、戻ってきたときには元の黒髪と眉毛を取り戻したいつも通りの姿になっており、その姿で何だかんだとしっかり話し合って和解したのであった。

―――――――――――――――――――

「姉さん力の封印とか手加減みたいなことは出来てもパワーダウンとかできないから。多分あれは一旦自力でトリップして、スーパーサイヤ人4を経てそこから更なるオリジナルの進化を遂げて元の形態を取り戻したんだろう。懐かしいなぁ……」

「お兄さんが金髪巨乳を頑なに受け入れようとしないのはその事件のせいでもあるのかぁ……」

しみじみと当時を思い返す。姉さん千歳さんに一週間くらい写真ネタで笑われてたなぁ。
しかし初の金髪巨乳との接近遭遇が姉なのはいいんだが、眉無しってのはインパクトがあり過ぎる。
例えば、もしあそこで姉さんが眉毛の部分に回復魔法当てて眉毛復活させて普通の顔立ちになってれば、今頃俺は金髪巨乳も守備範囲だったのだろう。
でも、『もし』とか『たら』とか『れば』とかそんな言葉に惑わされるほど俺も若輩では無いしな。黒髪巨乳最高!

「む、カティアってもしかして黒髪巨乳じゃないか? 洗脳深いのがメメメじゃなくてカティアだったら危なかったな」

「お兄さん、そのセリフはお姉さんに報告していいの? あ、でももう完璧に人格破壊されて脳改造完了調教済みな肉人形レベルまで持って行けば、お姉さんも浮気じゃなくておもちゃ持ち帰って来た程度の感覚で許してくれるかもよ?」

「ごめんなさい」

「それにほら、もうこっちの出すお菓子に警戒心無いからカティアに改めてポ用ナノマシン投与するぐらいなら余裕だろうし」

「いやもう本当に謝るから許してくれ、話題チェンジチェンジ!」

それなんてエロゲとか言ってられないレベルだ。数年前までならともかく、今の法じゃメディ倫に通して貰えないだろう。
大体、俺はなんというか、そう、ピュアラヴなのが好みであって、調教とかそういうアブノーマルなのは正直あまり強く無いのだ。
出撃回数的に見てこの世界の統夜はほぼ間違いなくカティアエンド、そんな状況で洗脳調教とか流石に鬼畜過ぎる。
俺のリアクションを見て、美鳥がやや呆れたような顔で呟く。

「殺人とか洗脳とかはオッケーなのに凌辱とか調教は駄目って微妙なラインだよね、童貞?」

「ど、どど童貞ちゃうわ!」

「ん、知ってる」

「……」

「……」

ボケたらマジ返しをされた。リアクションに困る。
美鳥もとりあえず反射的に言ってみただけでその後を考えていなかったのか、明後日の方向を向いて少し紅くなった頬を指で掻いて照れている。
気不味い、ここは互いの精神の健康の為にもこの話題を終了させるべき。

「あー、っと。時間も余ってるし、今後の予定とか確認しよう、な?」

「う、うん」

そんなこんなで両者の利害が一致して話題変更。
こほんとわざとらしく一つ咳をし、今後の予定、どの辺りで主人公部隊から抜けるのが一番それっぽいか、その後この世界のどこを回るかといったことについて話し合った。
どうせ時系列の問題はボソンジャンプでどうにでもなってしまうので、切りが良くて抜ける理由がいい感じにできそうな話を適当に見つくろっておくという、なんとも煮え切らない結論が出てお開き。
夕食まで間があるし、今更格納庫に戻って追加武装の組み立てをするのも何か違う気がする。時間潰しの為に備え付けの端末(ナデシコのものに比べれば技術的に劣るが、それでもその辺からニュースを拾ってくる程度は出来る)で情報収集。

ジャンク屋の動向が載っていないか探すが気が入らない。ふと美鳥の方をチラ見したら目が合った。二人同時に慌てて眼を逸らす。
視線をディスプレイに戻すが、DSでスパロボJをプレイしながらチラチラとこちらを窺っている美鳥の視線を時折感じる。
どこのラブ米だこれは。今さら照れるような内容でもあるまいに、調子が狂う。
微妙な空気が抜けない。あー、ここで空気読んでメメメが通信入れたりしないかなぁ。

―――――――――――――――――――

……………………

…………

……

撤退していった月のローズセラヴィーの後ろ姿を見送りながら、ゼオライマーのコックピットの中で秋津マサトは深いため息を吐いた。

「なんとか、なったか……」

戦闘には途中参加だったが精神的な面での疲労がある。
戦うと決めた、敵とも、自分の中の何かとも。とりあえずのものではあるが、色々な人に背中を押されて、それでも自分で一歩踏み出して行こうと決心した。
出撃せずに燻っていた時に声をかけてくれた執事のレイモンドさんに、様々な雑用を担当しているという千鳥さん、そして、何時でも共に戦ってくれると言った美久。

いや、それ以外にも居た。ネルガルの雇われであるという傭兵の鳴無兄妹。
他のパイロットが出撃しなくてもいい、返って足手まといだと言っていた時、あの二人は自分が立ちあがることを確信していたような気がする。
信頼の表れ、と受け取るのは些か自意識過剰というものだろうが、内容的には自分が立ちあがる事を前提としたものだからあながち間違いでも無いだろう。

(言っていることは滅茶苦茶だったけど)

つい先刻の事を思い出し、思わず苦笑を漏らすマサト。精神的に少し余裕が出てきたということだろう。
皆が出撃し、自分の脇を通り過ぎて行った時、すれ違いざまに肩をぽんと叩かれ、

『ふふー、説得待ちで後から出てきていいとこ掻っ攫おうなんていい度胸してるよなー。まぁゼオライマーの攻撃は派手で見栄えがいいから大物は取っておいてやるから安心しとけー』

ほくそ笑みながらこちらの肩を叩き、言うだけ言って自分の機体に向かっていった妹の方、鳴無美鳥。
その言動に呆然と見送っているとその兄、鳴無卓也もまた声をかけて来た。

『あいつの言う事は気にすんな、敵のタイミングが良くて少しヘブン状態入ってんだ。ああそうそう、搬入されてたゼオライマーちょっと弄ってかなり早めにメイオー☆できるようにしといたから、後で敵増援に開幕ぶっぱして使い心地の感想くれ』

そして返事も聞かずにこれまた自分の機体へと走って行ってしまった。
こちらを気遣うでもなく、戦わない事に文句を言うでもなく言いたいことだけ言ってその場を去っていった二人。
あの二人は良い意味でも悪い意味でも気を使わない、というのが秋津マサトの抱いている印象だった。
さばけているというか、余分なところ、必要無いと思うところはバッサリと切り捨てて考え、その癖ふと誰かに世話を焼いていたり、何時の間にか整備の手伝いをしていたりもする。
浅いところでは割と好き勝手干渉してくるが、相手の深い事情には踏み込まない。
あちこちを転戦している傭兵だと言っていたから、その経験から自然とそういう無駄に人と衝突しない接し方というものを構築していったのだろう。
戦う決心をした今では、そういうあり方で接してくれるのは気が楽で、正直ありがたい。

火と水の八卦ロボは既に一度戦っていて相手の手の内が割れていることもあり、相手への遠慮さえ無ければ苦戦するような強さを備えている訳でも無い。
はっきり言って楽勝だった。ゼオライマーは相手の攻撃でまともにダメージを受けてすらいない。
前回のように多くの傭兵を従えているという訳でも無く、連携が重要な機体でその肝心の連携はバラバラ、対するこちらは心強い仲間の援護を多く受けていたというのも大きい。
因縁は自分の手で断ち切るのが一番自然だし、因縁のある八卦衆を他の人に任せるというのも違うような気がしたので二機の、いや、二人のとどめは自分で刺した。予想以上にメイオウ攻撃の制御が楽になっていたのもあって、止めを刺す程度は楽に行えた。

その後に出てきた月のローズセラヴィーは、何故だか執拗にスケールライダーとボウライダーに狙われて、あっという間に撤退していった。
ローズセラヴィーがそれなりにダメージを受け、何かを射出した瞬間に鳴無兄妹が全く同時に「チャージなどさせるか!」と叫び、射出された何かを撃墜していたが、もしかしたら何かローズセラヴィーの機体情報を得ているのかもしれない。
普通の傭兵であればありえない話だが、何せゼオライマーを少し弄っただけで改良できてしまう程の謎の人物だ。
傭兵独自の情報網(笑)のようなものを持っていたとしても可笑しくは無い。
正直、つい先日まで一般人をしていたマサトからすれば、正式な軍隊でも分からないような情報を一回の傭兵が持っているというのは、文字通りフィクションの世界のようで現実味が無いと思えた。
しかし実在する傭兵とかそれに関わる軍隊の人達からすれば自然なことなのだろう。誰ひとりとして疑問を差し挟まないのがその証拠だろう。

「マサトくん、お疲れさま」

姿の見えないパートナーからねぎらいの言葉を掛けられた。
心強い仲間達の中で、誰よりも自分に近い所で一緒に戦ってくれるこの人とも、もっとしっかりと向き合うべきだろう。
そう思い、マサトは改めて己の決意を宣言する。

「美久、僕、戦うよ。敵とも、今日は出てこなかったけど、もう一人の凶悪な自分とだって」

「ええ、それが私たちの運命ですものね」

「違う、そうじゃないよ、そうじゃなくて──」

美久のいつもの返事に、マサトは首を振り否定する。
美久の言うことも確かに正しい。確かにこの呪われた運命から逃れることはできない。
でも、それだけじゃ戦う意味が無い。

「その運命とだって戦って、終わらせて見せる」

「マサトくん……」

「手伝ってくれるよね?」

「……うん!」

―――――――――――――――――――

……………………

…………

……

メメメから通信は来なかったが、代わりに出撃の要請が来た。偵察に出ていたスカイグラスパーとブレンがグランチャー部隊に遭遇したらしい。
アークエンジェルが到着する頃にはスカイグラスパーとブレンがほぼすべてのグランチャーを撃墜し終えていたのだが、すぐに八卦ロボの火と水、あしゅら男爵率いる妖機械獣軍団が現れた。
お陰であの微妙な空気のこもった部屋から出ることが出来たし、戦闘による興奮で美鳥の様子も元に戻ったのは本当にありがたい。
現在は戦闘も終了し、自室へ帰る道を一緒に歩きながら雑談している。
すっかり調子を取り戻した美鳥がこちらの腕にぶら下がるように抱きついていて歩き難いが、変な調子でぎくしゃくするよりはよほど気が楽だ。

「敵も空気読めてるよねー」

「ザフトの連中にも爪の垢を飲ませてやりたいな」

暴れまわって気分爽快、というほど雑魚相手に無双をした訳では無いが、むやみにデカイ八卦ロボ相手だと適当に撃ちまくるだけでバシバシ当たって面白い。
そして顔見世に来た月のローズセラヴィー相手に、冥王様よりも先に『チャージなどさせるか!』をやれたのはスパロボファンとして感無量というか、やってやった感が最高潮。
お陰でマサキは出てこれなかったが、これは別に大した問題でも無いだろう。

「あ、そういえばお兄さん、戦闘前に冥王になに吹き込んでたの?」

「ああ、ちょっとした催眠術、かな?」

このスーパーロボット大戦の世界においては、ゼオライマーがメイオウ攻撃を放つのに、原作には存在しない制限が存在している。
気力制限。ある程度敵を倒すなり他人から激励されるなりしてそれを高めなければ、ゼオライマー、ひいては次元連結システムの本領を発揮することが出来ないのだ。
これは本来の性能だとゲームバランスが崩れてしまう為の処置なのだが、この世界においてはバランス云々の話でそうなっている訳では無い。

暗示による弱体化といった感じのものだ。戦わせる為に監禁し、闘争本能を高めたは良いが、その全力が万が一自分たちの方に向けられては意味がない。
戦闘が始まってすぐの時点では全力が出せないようにすることで、万が一の時に『処理』しやすくしているのだろう。
今回は会話の中でさりげなくその暗示を他の暗示で打ち消した。
ゼオライマーを改造してメイオウ攻撃を早い段階で撃てるようにしてあるという言葉を信じ込ませることで、無意識のうちに押さえていた出力を開放させている、というのがメイオウ攻撃が早撃ちできるようになったカラクリという訳だ。
今の必要気力はせいぜい110程度。ゲームの時よりも格段に気力制限は緩くなっているのでかなり早い段階でメイオウ無双が可能となっている。

「統夜は月に行ったが、とりあえず目の届く範囲にゼオライマーが居る限りは頑張ってみようと思ってな」

強制出撃以外でもゼオライマーは出撃してしまっているが、ただ単に幽羅帝の乗機をグレートゼオライマーにするだけなら八卦ロボを全機ゼオライマーに撃破させるだけでいい。
そうしたら適当なタイミングで鉄甲龍要塞に忍び込んで取り込んでしまえば見事にグレートゼオライマーもコンプリート。
次元連結システムは俺も美鳥も体内に搭載しているから問題なく味方版グレートゼオライマーと同じ運用法が出来る。
パイロットが動力も兼ねる全く新しい八卦ロボが誕生するのだ。

「なるほどねぇ、色々考えてんだ。あ、じゃあ金髪巨乳への罰ゲーム的なあれはやらないの?」

「いや、やる」

「好きモノだねぇ」

ただ餌付けするだけ、というのはもう大分飽きてきたし、メメメに対しての焦らしプレイ的なものになるから反応を楽しんで餌付けのマンネリ回避といこう。

「次回はブレンパワード系、と。次は結構暗躍するから心の準備しといてね?」

「予定詰まってるなぁおい」

暇だ暇だと思っていたが忙しくなる時は唐突だ。
いや、多分この暗躍云々も今ちょっと思いついたからやってみよう程度の感覚で言いだした可能性もある。
今現在スパロボJをプレイして予定を立てているのはこいつだから、戦闘前のプレイで何か思い出したのだろう。
バロンズゥとかが出てくるのはまだ先だった筈だし、何か面白い事を思いついたのかもしれない。

「暗躍するのはステージが終わってからだけどね。あ、そうだ、こっちなら一緒にシャワー浴びるくらい大丈夫だろうし、久しぶりに一緒に――」

―――――――――――――――――――

×月◆日(グランチャーの貴重な大量惨乙シーンを眺めるだけの簡単な仕事です)

『伊佐美勇が自軍に合流、これからは艦内に居ても何時脳直な有機的な何か発言が行われるか分からないので注意して行かなければなるまい』

『とりあえずあいつらの会話には『はいはいオーガニック的な何かだね』とでも言っておけば大体オッケーだろう』

『さて、そんなこんなでオルファン対策会議で周辺警備の仕事をすることに相成った』

『警備といっても実際はどこそこを守れ、みたいな作戦がある訳では無く、何時も通り出撃して敵を叩き潰していけばいいだけの話』

『が、今回俺と美鳥は狙ってはいけない目標というべきものがある。しかもその目標、現時点の機体に縛りのある俺達では逆立ちしても敵わない強敵なのだ』

『今回そいつはプレートの奪取のみを目的に動くので俺達が戦う可能性は低いが、まともに戦ったら精神コマンドあり、機体フル改造の主人公軍でも勝てる見込みはまったく無いらしい』

『その目標の気分次第では今回の話はほとんどイベント戦闘だけで敵が全滅してしまう可能性もあるが、あくまでも俺達は手を出さないで邪魔にならないように見守るのが最良なのだとか』

『……自分で言っててむず痒くなってきた。男なんてみんな『俺超強えぇ!』がやりたいだけの単純馬鹿ばかりだという差別発言を聞いたこともあるが、自分でも少し自覚があるだけに余計に痛い』

『まぁ、実際バイタルジャンプだのチャクラシールドだのは少し使ってみたいような気もするし、少しの恥ずかしさとかは気にせずに行こう』

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……………………

…………

……

「そういう性格なんだから仕方ないだろ。あの女はどうしたんだよ」

「トイレでマスでもかぐぃ!?」

「ああすまん、なんかこいつの脳みそがバグッたみたいでな。今さっき格納庫でブレン触ってるのは見かけたぞ」

「あの、美鳥ちゃん思いっきり舌噛んだみたいだけど……」

「なあに、舌ぐらいすぐに生えてくるさ」

インターミッションの会話に下ネタを差し挟もうとした美鳥の頭を押さえつけセリフを中断させた。
ヒメちゃんが微妙に美鳥のことを心配しているが、兄妹の軽いじゃれ合いであるということをナデシコに乗っている時に理解しているからかあまり強くは言ってこない。

俺と美鳥は現在、機体と一緒にノヴィス・ノアに乗り込みオルファン対策会議の会場へ向かっている。
基本的に、俺と美鳥は主人公の代役のような役割になるらしく、当然のように会議の会場警備に回されることになったのだ。
身軽である、小型機であることから警戒され難い、というのも警備に回された理由の一つだろう。

そんなこんなでオーガニックエンジン試験艦ノヴィス・ノアの食堂にやってきたのだが、これがまたこの艦、以外に面白い。
先ずは言わずと知れた人工オーガニックエンジン試作型。
これがあればグランチャーかブレンパワードを取り込んだ後、バロンズゥの巨大化のようなかなり無茶なこともできるかもしれない。
そして食堂に来る途中でトイレに寄り、洋式便座に座りながらこの艦全体と融合することでブレンやグランチャーには無い『オーガニックシールド』の機能を得ることが出来た。更にさりげなく核兵器まで搭載しているのだからこの船は中々侮れない。
海戦主体のスーパーロボット大戦があれば確実に自軍の戦艦ユニットでダナンと双璧をなすこと間違いなしだろう。

さて、そんな感じで周りの話になぁなぁな感じで相槌を打っていたらいつの間にか各自の機体に戻ることになった。
俺もボウライダーに戻ろうとしたのだが、どうにも視線が気になる。
視線の主は伊佐美勇、じっ、とこちらを品定めするような視線を送ってきているのだ。
例によって例の如くオーガニック的なものに触れてきたもの独特の直感で何か違和感を感じているのかもしれないが、今のところは怪しむ材料は直観だけということもあるのかこちらにちょっかいは出してこない。

一応この世界に来てからネルガルで身体検査、というか健康診断のようなこともしたし、改造人間であるという自己申告をした後に精密検査を受けもしたが、改造人間である、という自己申告以上の結果は出なかったので擬態は完璧。
ボウライダーを操れる程度の改造人間に擬態しているのでその通りの結果しか出ない。人間に擬態している時は本当に人間になっている、と言い換えるとどことなく無貌で三つ目な神様を思い出すが、あれ由来でないという事だけは姉さんに確認を取っているので変に身体の心配する必要も無い。
とりあえず紳士的に当たり障りのない接し方をしていれば問題は無いだろう。
立ち止まり振り向き、視線の主に声をかける。

「どうかしたか? ええと、伊佐美、勇くん?」

視線を送っていることに気付かれるとは思っていなかったのか、振り向いて声をかけると一瞬呆けたような顔をしたが、すぐに表情を作りなおし、

「あんたが居るとブレンが変に反応するんだ。なにか心当たりは無いか?」

「ふむ」

個人の感覚で気付かれた訳では無く、ブレンの反応から何かを感じたか。
そういえば美鳥がブレンのモップ掛けをした時に逃げ遅れたのは臆病なナンガブレンで、ヒメちゃんが言うには脚が竦んで逃げられないような感覚だったか?
ユウブレンは勇敢な性格だから、怯えるとかそういう感情ではなく警戒するような感じで反応するんだろうな。
で、ブレンの意思をくみ取り切れないこいつは、それがどういうことか理解できない、と。

「俺はアンチボディに明るくないが、俺も美鳥も身体を結構弄ってるから、それに反応してるんじゃないか?」

俺の返答に少しばかり考え込んだ後に訝しげに問い返してきた。

「そういう事があるのか? 改造人間に反応するなんて、聞いたことも無い」

こいつ、男にも結構絡むんだな。原作あんまり見て無いから詳しくないけど、出会いがしらに女にキスする奴ってイメージしか無い。
あ、そういえばこいつ、子供の頃の姉とのふつくしい想い出語りを『ごめん覚えてない』とかやるんだよな。
照れていたにしても、この歳でフォローの一つも出来ないとか弟としてレヴェルが低すぎるだろう。端的に言って反吐が出る、シスコンの風上にもおけない奴だ。あぁそもそもシスコンじゃ無いか。
姉が居てシスコンじゃないとかこの糞ったれめが、世の一般常識が許容しても俺の狭い心は絶対に貴様を許しはしないだろう。責めもしないが。
同じ姉持ちということで多少肩を持とうと一瞬思ったけどこれは駄目だ。こんなやつの質問はささっと流してしまうに限る。

「最初に言ったろ、俺は詳しくないって。犬猫に嫌われることも多いから、そういうこともあるんじゃないかっていう素人考えだよ」

じゃ、と手を振り機体に向かう。予定では出撃はあっても戦闘自体は無い可能性が高いので暇つぶしに持ち込んだCDでも聞いていよう。

―――――――――――――――――――

……………………

…………

……

海辺の小さな町、黄土色の人型が白い人型五体に指示を出し、出現したプレートを回収させている。
指示を出している黄土色の人型の片腕は義手、オルファン所属、ジョナサン・グレーンの駆るアンチボディ、グランチャーだ。

「ハエが飛びまわっているが気にするな。プレートの回収が最優先、戦闘は極力避けろ!」

ジョナサンは怒鳴るように他のグランチャーに指示を出しているが、別に作戦に遅れが出ている訳では無い、ただ単にそういう喋り方が染みついているだけだ。
プレートの回収はほぼ完了しており、ここにやってくるであろうノヴィス・ノアのブレンパワード部隊や連合の特殊部隊の相手はクインシー率いる別動隊に任せればいい。
自分たちはプレートを持ち帰ることができれば作戦完了という簡単な任務。これでイラつく筈も無い。

ふと、ジョナサンは自らのグランチャーがあらぬ方向を見つめている事に気付いた。
自らの制御を離れ、何かを警戒するように虚空を凝視しているグランチャーに不審を感じるジョナサン。
数秒、グランチャーの見つめる方向を警戒していると、虚空からにじみ出るように新たな人型が三体出現した。
バイタルジャンプではないし、グランチャーでもブレンパワードでもない。

「ボソンジャンプ、とかいうやつか?」

木星蜥蜴なる侵略者がそういった移動方法を用いるという話を聞いていたジョナサンは、所属不明機の未知の転移を異星の技術であろうと当たりを付けた。
侵略者がオーガニック的なモノを理解し利用する。
ありえない話では無い。自分たちが住んでいるオルファンとて元は外宇宙からやってきた宇宙船のようなものだ、同じく地球の外からやってきた侵略者であれば、その価値を理解し、利用しようという発想をするのも可笑しな話ではない。
が、それにわざわざ協力してやる義理も無い。
プレートの回収は完了している、あとはこの場から立ち去り、海上の支援部隊に引き渡すだけ。

「海上の支援部隊と合流する、急げよ!」

グランチャー達がバイタルグロウブに乗りジャンプしようとしても出現した人型達は動かない。
利用しようとまでは考えておらず、ただの様子見だったのか、などと考えるほどジョナサンは平和な思考をする人物では無かったが、今は何よりも確保したプレートを持ち帰ることが最優先。

(あいつらの相手もクインシー・イッサー任せか)

女に戦いを丸投げとは情けない話だが、個人の感情で任務を放り出す訳にも行かない。
そう冷静に考えながら、グランチャーをジャンプさせ――られない。

「何ぃ?」

思わず疑問を声に出してしまう。
バイタルグロウブに乗れない、いや、正確には違う。
バイタルグロウブに乗りはした、飛びもしたが、行きつく先がここだった。
世界中に張り巡らされているオルファンが発するチャクラの奔流が、この空間においては他の流れから切り離され、狭い範囲に押し込められて限定された狭い順路を巡っているのだ。

転位してきた人型の内、どこかグランチャーやブレンパワードに似た雰囲気がある一体が手を口元にやり、肩を震わせている。
アンチボディでもしないような生々しい、嫌味な程に人間臭い動きを持ってその感情をありありと表現している。
楽しげに、愉しげに笑っている。嗤っている
いたずらが成功して、それに引っかかった間抜けな大人を指差す子供のように、無邪気な悪意に満ちた喜びの感情。

転位してきた人型の内、ザフトのMSに似た雰囲気を持つ機体が肩をすくめている。
機械的な動きを装いつつ、これも人間臭さを消し切れない生き物のような動きで、その感情を露わにしている。
呆れ、苦笑し、嘲笑している。
本来なら満点のテストを、名前を書き忘れてふいにしてしまった間抜けを見るような、軽い優越感と憐れみの感情。

転位してきた人型の内、ラダムのテッカマンのような雰囲気を持つ魔人が、虚空を眺めて呆けている。
両手をだらりと下げ、こちらにまるで関心が無いかのように海を眺めてぼうっとしている。
飽き、つまらないものには目も向けない、徹底した無関心。
しかし、無関心、無反応から読み取れるものはある。
路傍の石に気を止めない、自分が高みに居る事を理解しつつそれが当然であるとでも言わんばかりの傲慢な感情。

「はっ、そういうことかよ」

態度で分かる。バイタルグロウブの異常は間違いなくこいつらの仕業だろう、ジョナサンはそう考えた。仮にこいつらの仕業でなくとも、こいつらが何かしらの情報を持っている事は確実だ。
普通に飛んでいたのでは間違いなく連合の特殊部隊に追いつかれる。
ここは確実にこいつらを仕留め、この異常な現象を解除させなければ任務達成はならない。
ジョナサンのグランチャーがソードエクステンションを構える。それを見た他のグランチャー達も状況を察したのか戦闘態勢に移行していく。
数の上ではこちらが上、狭い範囲に限定されているとはいえ、バイタルジャンプも戦闘でなら使えないではない。

「アンチボディのまがい物や、玩具みたいな人形なぞ!」

グランチャー部隊が戦闘の陣形を取った。
対する三体の人型は思い思いの動きで相対する。
アンチボディもどきはフィンを伸ばし、MSもどきは刃の無いサーベルの柄を取り出し、テッカマンもどきは相変わらずふわふわと浮いたまま構えすら取らない。
いや、三体共に共通する動きはある。
一体は無邪気に、一体はさりげなく、最後の一体はよく観察しなければ分からない程のかすかな仕草で、一つの言葉を表現している。

──遊んでやろう──

子供の相手をするような余裕の感情を持って、グランチャー部隊との交戦を開始した。

―――――――――――――――――――

プレート出現の報を聞き、会議場の警備を抜け駆け付けた俺達が見たのは、元の数が分からないほどバラバラに砕け散ったグランチャーの残骸の山だった。

「なんだ、これは。どうなっているんだ」

「ひ、酷い、ここまでするなんて!」

眼下の光景に愕然とするボルテスの長男の健一と、驚愕と憤りの感情を含むヒメちゃんの声が通信から響く。
他の数名は声も出せずに呆けているか、周囲を警戒している。プレートの回収に来たらこの光景だ、訳が分からない、というのがこの場に居るほぼ全員の素直な感情だろう。
美鳥と俺は一応の事情は知っているが、ここまでオーバーキルするとは思っていなかったので少し呆れている。
なんというか、自重するべきか自嘲するべきか悩む光景だ。

「お兄ちゃん、あれ! この間の義手のグランチャーだよ!」

ボルテスの末っ子の日吉がレーダーにわずかながら残っていた反応を見つけたのか、全員の機体に位置情報を転送する。

「義手? ジョナサンか!」

そう、レーダーに映る反応はグランチャーのもの。しかし、そのグランチャーはとても戦闘が行えるような状態ではない。
なるほど黄土色の機体色は間違いなくジョナサンのものだろう、特徴的な義手も印象深い。
しかし、脚が無い。
片足は膝下からごっそりと消滅し、もう片足は股関節の部分から引きちぎられ無残な傷跡を晒している。

腕は、両腕共胴体に付いている。付いているだけで役に立ちそうも無いが。
義手は一応無事のようだが、義手にならず無事だった肩の関節が握りつぶされたかのように拉げている。振り上げて相手にぶつけることもままならないだろう。
もう片方の無事だった腕はその手にしっかりとソードエクステンションを構えている。
構えたまま肩から引き抜かれ、腕ごと胴体、人間なら肺があるだろう部分に無理やり突き刺しねじ込まれているが。
胴体から切り離されてい入るがくっついてもいるし、腕自体は殆ど損傷も無く無事なので両腕共に無事、ということでいいだろう。明らかに狙ってやったとしか思え無い。

余りの惨状に因縁のある伊佐美勇ですら手を出しかねている。いや、手を出さなくともあのグランチャーは放っておけば死ぬ可能性が高い。今死んでいないのが奇跡と言えるレベルなのだ。
ここまでやられてグランチャーが死んでいないのは、明らかに相手に遊ばれたからだろう。そしてこれをやった犯人は……。

「みんな! 海の上でオルファンの部隊が!」

やはりこの世界では砂漠の虎と戦ってオルファンの飛翔にでも備えるのだろうか、オーブの国の御姫様が海上の様子を伝えてきた。
海上、クインシーの駆る赤いグランチャーが率いるオルファンのグランチャー部隊が謎の機体と交戦している。
いや、交戦しているというのも語弊があるかもしれない。

「あれは、アンチボディ? 遊んでいるのか……?」

伊佐美勇が呆然と呟く。
そう、遊んでいるように見える。子供がおもちゃで遊んでいる、というのがもっとも相応しい表現かもしれない。
バロンズゥとユウブレンを足して割らず、無理やりに一体の形にまとめたような歪なアンチボディのような機体がグランチャーとグランチャーの間をくるくると回りながら飛びまわっている。

いや、ただ飛んでいる訳では無い。
くるりと一回転する度に強烈な暴風が巻き起こり、その暴風に紛れて強烈なチャクラ光がまき散らされ、ほのかに光る包帯のような長いひだ、バロンズゥのフィンのようなものがひらひらと揺れ動く。
周囲のグランチャーは暴風で姿勢を崩し、チャクラ光に身を削られ、フィンに切り刻まれていく。
ズタズタのグランチャーの残骸には股間部にあるコックピットの中身も含まれているのか、白いグランチャーの破片をほのかな薄紅で飾っている。

グランチャーもただ黙ってやられている訳では無い。
暴風に近寄らずソードエクステンションからチャクラ光を発射して応戦しているが、踊るように飛びまわるグランチャーはそのことごとくを避け当たりそうになったチャクラ光もフィンで撃ち落とし吸収している。
撃ち落とすという事は撃つのが無駄では無いという解釈をしたのか、防がれてもなおチャクラ光を連射し続けるグランチャー。
しかし、そのグランチャーも横あいから唐突に割り込んできた巨大な拳に殴り飛ばされて粉々に砕け散った。

「MS……?」

「ザフトの新型か!?」

ヤマトと外宇宙に備える姫が口々に呟く。並べるとイスカンダルに向かいそうだなこいつら。
しかしなるほど、機体のサイズ、意匠共にMSに似た作りをしているようにも見える。顔はザフトのジンを角ばらせたような、そう、しいて言うならバーザム顔であろうか。
いや、顔デザインは間違いなく搭乗者の趣味だろうことがわかるのでスルーするとして、問題は首から下だ。
太い。ゴツい。堅い。首から下だけスーパーロボットのようなシルエットで、表面にMSっぽい擬装を施しました、といった感じの機体だ。
更に今さっき一撃でチャクラシールドを張ったグランチャーをパンチ一発で粉砕した。見かけ倒しではないパワーも兼ね備えているのだろう。

「見て! あの機体、プレートを持ってる!」

持っている、というか、バックパックには明らかにプレートを運ぶために設えられただろうと分かるラックがある。
そのラックに、五枚のプレートが納められているのだ。お持ち帰りする気満々の装備から気合が垣間見える。

「みんな持ってかれちゃう! そんなこと、させるもんかぁっ!」

「いかん、そいつには手を出すな!」

ヒメちゃんが必死なのは分かるが、istdとはさりげなく美鳥もノリノリである。
別に戦ったからといって進化する訳でもな、するか、そういえば。こいつは戦わなくても勝手に進化するが。

ヒメブレンがブレンバーを構え、MSもどきの死角からチャクラ光を放つ。
が、まるで後ろに目でも付いているかのようにヒメブレンの方に掌を向け、放たれたチャクラ光を全て掌で受け止めた。
シールドを張っている訳でも無いのに、それでも受け止めた掌には傷一つ付いていない。恐るべき強度だ。
ゆったりと余裕をもってこちらに振り向き、俺達の機体を一瞥すると、背中のバックパックからプレートを一枚取り出し、手首のスナップで軽くこちらにフリスビーのように投げてよこした。
反撃を警戒していた所にプレートを投げつけられ、慌ててチャクラシールドでプレートを受け止める。

「え、え? 譲ってくれるの?」

ヒメちゃんの疑問に答えず、MSもどきは再び振り返ると、今度は飛びまわるアンチボディもどきの前に転位した。
ボソンジャンプではない、なんの兆候も無く飛ぶ様子から見るに、ちょっとしたシステムの応用だろう。素の状態でブレンパワードのチャクラ光を喰らって無傷の装甲にあのシステムとは、なんとも豪勢な話だ。
アンチボディもどきは飛行を中断させられて不満そうだったが、しばらくすると不服そうな動きを見せた後、MSもどきと共に霞むように姿を消した。

残るグランチャー部隊はまだ数十体は居る。戦闘が始まるか、と俺と美鳥以外の機体が身構えた。
しかし、俺達とグランチャー部隊との間に一体、テッカマンのような姿をした何かが割り込む。
つい先ほどまで単騎でクインシーとやりあって、いや、ひらひらとクインシーと数体のグランチャーの攻撃を木の葉のように回避し続けていた奴だ。
シンプルな、尖りもしなければ丸みも帯びていない地味な装甲のそのテッカマンもどきがグランチャー部隊に向けて拳を向ける。
その手に何も持っていなかった筈が、唐突にその手の中に小さな銃のようなものが出現する。
おそらくテックランサーのようなものだろう、銃身の代わりにクリスタル質のナイフのようなものが生えているそれを向け、カチ、とトリガーを引くような動きをした。

――轟音。それ以外の音が消滅してしまったかのような錯覚に陥る程巨大な発射音とともに、青白いフェルミオン粒子の濁流がグランチャーの一体を巻き込み爆発する。

「ボルテッカ、やはりテッカマンだったか」

ボルテスの健一が冷静に呟く。まぁ、見た目はまんまテッカマンだが、MSやアンチボディを従えているならば疑わしくもなるのだろう。
しかし、目の前のテッカマン(仮)が放ったボルテッカは一味違う。
ボルテッカの直撃を喰らったグランチャー、その周囲に巨大なクリスタルの幻影のようなものが映し出され、そのクリスタルの幻影から新たに数本のボルテッカが再発射され他のグランチャーに着弾、更にそこから新たなボルテッカが撃ち出され……。
通信から驚愕に息を呑む音が聞こえてくる。が、せっかくなのでここは一つ俺も出しゃばっておこう。

「むぅ、あれはリアクターボルテッカ」

「知っているんですか?」

割と冷静に状況を見ていたヤマトが聞き返してくれた。ありがたい返し、これでスムーズに解説に入れる。
重々しく頷き、この世界に来る前に覚えておいたリアクターボルテッカの解説を始める。

「テッカマンが高速で移動する際に発生させているクリスタルフィールドという、言わば結界に覆われた超空間のようなものがある。これをボルテッカに乗せて発射することにより、ボルテッカが命中した時に発生するエネルギーを利用してクリスタルフィールドが新たにフェルミオン粒子を空間から生成し、それがボルテッカへと変化する」

説明を続ける俺の目の前で、次々と枝葉の如く分岐するボルテッカに呑み込まれていくグランチャー達。

「クリスタルフィールドを制御する力に長けていればほぼ無制限にボルテッカを連鎖させることができるという必殺技だ。Dボウイの戦闘データなどから得たテッカマンのスペックから、理論上は可能だとされていたが、まさか実際に使用できるテッカマンが存在していたとはな」

「そんな恐ろしい技の使い手が、敵の中には存在するというのか……」

とうとう最後の一機、クインシー・イッサーのグランチャーに、分岐を重ね全方位からボルテッカが迫る。

「姉さん! 避けろよ!」

伊佐美勇が咄嗟に叫ぶ。バイタルジャンプで間に入ろうとしたのか一瞬ユウブレンの姿がかき消えるが、すぐに元の場所に戻ってしまった。
どうやら、バイタルグロウブの流れを人為的に操作してバイタルジャンプの機能を阻害しているらしい。
逃げられない。チャクラシールドを張った赤いグランチャーに数十にもなるボルテッカが迫り、しかし着弾寸前で全て消滅した。

「助かった、いや、見逃がされた、のか……?」

助かり、しかし呆然とするクインシーのグランチャーに、スクラップ同然に破壊されたジョナサンのグランチャーが投げつけられた。
あのMSもどきがいつの間にか回収していたらしく、グランチャーを放り投げた姿勢のままのMSもどきの姿が見える。
そのMSもどきによりそい、リアクターボルテッカを撃ったテッカマンもどきを肩に乗せたアンチボディもどきが、手をひらひらと振り、辺りの景色に滲むようにして消えていった。
まさにやりたい放題。チートに次ぐチートでどこのスパロボオリジナルだという話だ。

意図するところは分かる。第一目標であるプレートの回収は完了しているし、リバイバルの兆候のある双子が生まれるだろうプレートはこちらに回収させた。ここに留まる必要も無い。
ボルテッカを消したのも、あれを直撃させたら間違いなくクインシー・イッサーは死ぬと分かっていたからだろう。姉キャラが死ぬのは多少嫌な気分になるだろうし、グランチャーがバロンズゥに再リバイバルする瞬間を見てみたいというのもある筈だ。

が、ボルテッカを食らうまでも無くクインシーのグランチャーはダメージを受けていたのだ。
あのアンチボディもどきがまき散らしたチャクラ光の流れ弾を数発受け、ぱっと見は分からないだろうが戦闘ができるぎりぎりのラインで踏ん張っていた所にあのボルテッカのプレッシャー。
それが不発ということで張りつめていた緊張の糸が切れた所に、自分の機体とほとんど同じ大きさ重さの機体を投げつけられた。すると、どうなるかと言えば……。

「うわぁぁああっ!!」

墜落。黄土色のジョナサン・グランチャーに弾き飛ばされるようにして、赤いイイコ・グランチャーは狙い澄ましたかのように綺麗な花畑の中に突っ込んでいった。
そのグランチャーを追うように花畑に降りて行ったユウブレン。
これからあの花畑で、説得に失敗しながらそれはもう見事なフラグクラッシュを慣行するのだろう。フラグと一緒に砕けて死ねばいいのに。

しかし、無茶苦茶な戦い方だった。あのMSもどきの戦い方だけは見ていないが、どうせ碌なもので無いことだけは分かる。ようは趣味に走った感じの機体と武装なのだろう。
これからやらなければならないことを考えると頭が痛い。
せめて一日二日置いてゆったりと静養し、気分を落ち着かせてからにするべきだろう。
これが終わったら、今度こそ本気でこの部隊でやることが無くなるのだ、どうしてああなったのか分からないが、できる限りの努力はしなければなるまい。



続く

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以上、J三人娘内の電波受信アンテナ兼まとめ役担当のカティアさん、主人公の介入で微妙にマサキになる回数を減らされているマサトくんから見た主人公のそれぞれの印象独白と、三体の黄色軍ユニットが一話分の敵を相手に無双するの話をお送りしました。

しかしあれですね、サポAIが度々ヒロインっぽいアクションをするのが頂けませんね。大体主人公と一緒に行動してるから仕方ないと言えば仕方ないのですが。

ジョナサンの喋りが分からないす。数少ない資料から察するにねっちょりした喋り方でもあり、かと思えば紳士的な感じもある気がする。この使い分け、尊敬に値するマザコンですね。

クマゾーくんは断ってましたが個人的にはグランチャーとかかなり欲しいです。車検要らないから車の代わりに使いたいですね。保険は利くのでしょうか。

あと、別に自分は伊佐美勇が嫌いではありません。好きでもありませんが。でも主人公的には姉をないがしろにしている時点で、もはや問答無用!といった感じになります。



ここでこのSSの作者の根拠無き思い込みによるJヒロインズのエロ知識関係。この作品内だけの設定であることを明記しておきます。

・カティア
基本に忠実。それっぽい読本などの最初の方を読んで、自分がまだそこら辺を体験していないからと最初の方のページを熟読。
ややうぶ。
・テニア
ほぼカティアと同じ、が、少女マンガや他の女性クルーから聞き出した知識がプラスされている。
没個性。
・メルア
勤勉である。基本を押さえつつ、スポーツ新聞の真ん中の小説や駅のキオスクに置いてあるワンコイン小説、少女マンガの付録などにも細かく目を通す。女性クルーから積極的に知識を吸収し、卑猥な妄想をする。
淫ら。



セルフ突っ込みは天気が良いのでお休み、次回更新は今度こそいつもより遅くなると思いますので、なにげない日常に潜む少し心が癒される何か探しをしつつ心穏やかにお待ち下さい。
たとえば天然酵母の食パンとかに口と鼻あてて吸い込むと香ばしくて少しいい気分、天然酵母という響きに騙されれば幸せになれます。

次回予告!
「やろう、ぶっころしてやる!」
「ぎゃあ、じぶんごろし」
「ねむいと、気があらくなるんだな」
「やめろよ、じぶんどうしのあらそいは、みにくいものだ」
「はやく、暗躍してねようよ」
「おにいさんとあたしで6P……!」
の予定が計画倒れ。

諸々の誤字脱字の指摘、この文分かりづらいからこうしたらいいよ、一行は何文字くらいで改行したほうがいいよなどといったアドバイス全般や、特に作品を読んでみての感想とか、心からお待ちしております。

アドバイスを元に文章の改行とか少し作り替えてみました。
どんな感じに見えるのか、皆様、よければご意見下さい。


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