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No.14323の一覧
[0] 【習作】ネギま×ルビー(Fateクロス、千雨主人公)[SK](2010/01/09 09:03)
[1] 第一話 ルビーが千雨に説明をする話[SK](2009/11/28 00:20)
[2] 幕話1[SK](2009/12/05 00:05)
[3] 第2話 夢を見る話[SK](2009/12/05 00:10)
[4] 幕話2[SK](2009/12/12 00:07)
[5] 第3話 誕生日を祝ってもらう話[SK](2009/12/12 00:12)
[6] 幕話3[SK](2009/12/19 00:20)
[7] 第4話 襲われる話[SK](2009/12/19 00:21)
[8] 幕話4[SK](2009/12/19 00:23)
[9] 第5話 生き返る話[SK](2010/03/07 01:35)
[10] 幕話5[SK](2010/03/07 01:29)
[11] 第6話 ネギ先生が赴任してきた日の話[SK](2010/03/07 01:33)
[12] 第7話 ネギ先生赴任二日目の話[SK](2010/01/09 09:00)
[13] 幕話6[SK](2010/01/09 09:02)
[14] 第8話 ネギ先生を部屋に呼ぶ話[SK](2010/01/16 23:16)
[15] 幕話7[SK](2010/01/16 23:18)
[16] 第9話[SK](2010/03/07 01:37)
[17] 第10話[SK](2010/03/07 01:37)
[18] 第11話[SK](2010/02/07 01:02)
[19] 幕話8[SK](2010/03/07 01:35)
[20] 第12話[SK](2010/02/07 01:06)
[21] 第13話[SK](2010/02/07 01:15)
[22] 第14話[SK](2010/02/14 04:01)
[23] 第15話[SK](2010/03/07 01:32)
[24] 第16話[SK](2010/03/07 01:29)
[25] 第17話[SK](2010/03/29 02:05)
[26] 幕話9[SK](2010/03/29 02:06)
[27] 幕話10[SK](2010/04/19 01:23)
[28] 幕話11[SK](2010/05/04 01:18)
[29] 第18話[SK](2010/08/02 00:22)
[30] 第19話[SK](2010/06/21 00:31)
[31] 第20話[SK](2010/06/28 00:58)
[32] 第21話[SK](2010/08/02 00:26)
[33] 第22話[SK](2010/08/02 00:19)
[34] 幕話12[SK](2010/08/16 00:38)
[35] 幕話13[SK](2010/08/16 00:37)
[36] 第23話[SK](2010/10/31 23:57)
[37] 第24話[SK](2010/12/05 00:30)
[38] 第25話[SK](2011/02/13 23:09)
[39] 第26話[SK](2011/02/13 23:03)
[40] 第27話[SK](2015/05/16 22:23)
[41] 第28話[SK](2015/05/16 22:24)
[42] 第29話[SK](2015/05/16 22:24)
[43] 第30話[SK](2015/05/16 22:16)
[44] 第31話[SK](2015/05/16 22:23)
[45] 第32話[SK](2015/05/16 22:50)
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[14323] 第13話
Name: SK◆eceee5e8 ID:89338c57 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/07 01:15


   第13話


「先生。わたしが魔法使いだってことと、相坂が幽霊だったってことは誰にも秘密にしてくださいね」
「はい、わかりました」
「それじゃああした学校で」
「はい。千雨さんと相坂さんも、また明日」
 そんな昨夜の別れから早翌日。

「今日からこのクラスに加わる相坂さよさんです」
 わりとオーソドックスな言葉とともに、先生が相坂を紹介する。
 情報を得られていなかったためか、朝倉が悔しそうな顔をしている。
 他の生徒もこの突然な紹介に興味があるのか、相坂に注目していた。

 そもそも相坂の名前はクラス名簿には記載されていたのだ。名前はあるけど登校しない文字通りの幽霊少女。
 転校生という扱いではなく復学となった彼女について、興味がわかないはずもない。

「よ、よろしくおねがいします」
 ぺこりと頭を下げる。
 緊張して硬くなるその仕草が、みなの好印象を誘ったのだろう。矢継ぎ早に質問が浴びせられる。
 いままでどうしていたのか。家はどこなのか。年はいくつなのか、などなど。

「どこから来たの?」
「休学をしていたようなものですから。麻帆良にいましたよ。ずっと」
「へー年は?」
「……皆さんと同じ……かな?」
「好きな食べ物は?」
「アイスとケーキとラーメンと肉まんと、あとはいろいろです」
 危なっかしい質問もあったが、何とかやりすごす様を見てこっそりと安堵の息を漏らした。
 一つ一つ丁寧に答える相坂はわたしの目から見てもこのクラスになじめそうだった。
「どこに住んでるの?」
「あ、はい」

 そんななか、ありきたりな一つの質問に相坂は一拍の間をあけた。
 昨日、散々もめた末、最終的に決まったその結果。

 相坂はわたしの部屋にくっついていたかったようだが、さすがにそれは無理である。
 部屋はすでに満員だ。
 それにコスプレ衣装にパソコン器具が散乱する部屋は、整理はされて入るものの、決して片付いているとは認識されない。無理やり詰めるのも、昨日今日では不可能である。
 交渉時の気苦労を思い出し、こっそりとわたしはため息をつく。

 だから相坂は最終的に“彼女”の家に住むことになった。
 部屋に空きがあって、部屋をいきなり用意できるような生活をしていて、そしてなにより長い幽霊暮らしで生活感のない相坂さよの事情に明るい、そんな人物。

 そんなのはあいつしかいなかった。
 つまり、

「わたしはエヴァンジェリンさんの所にご厄介になっているんです」

 そういって笑う相坂に、事情を知らないものだけが驚かなかった。
 ピクリと龍宮と桜咲が反応し、反応を隠せず視線を一瞬動かす葉加瀬。まったく普通に驚いているような顔を見せる超はもしかしたらすでに知っていたのかもしれない。
 解答を知っているからこそだ。いつものわたしだったらぜったいに気づくまい。横目でそれを見ながら、わたしも私で気づかない振りをする。

 エヴァンジェリン・マクダウェルも相坂さよのことはまだしもわたしのことは話さない。いつものようにコナくさい笑顔で適当にあしらうはずだ。
 そういう契約だった。
 エヴァンジェリンの性根は信じられないが、エヴァンジェリンとの契約は信用できる。それが長谷川千雨としての考えだ。

 あいつが霊体としてこのクラスに在籍していたことなど、ほとんどの人間が知らなかったわけで、そんなことをわざわざ説明する必要はないのだ。
 だから、まあ。
「宜しくお願いします」
 そういってクラスメイトに向かって笑う相坂に、わたしはニコリ笑みが浮かぶのだった。

 しかし、最後の爆弾を投げかけるのが、このクラスのお約束。
 朝倉がじゃあさ、と口を開いて
「相坂さんは恋人とかはいないの?」
 ネギ先生のときも口にした、いつも必ず聞いている文句を口にする。

 カア、と相坂の顔が赤くなる。
「いえ、そんな人は……」
「おやおやー、その反応は心当たりでも?」
「ラブ臭がするねえ、好きな人がいるって感じ?」
「いえ……そういう人じゃあありませんので……」
「えっ、なになに。どんな人?」

 いやがおうでも想像を掻き立てられる返答だ。
 その反応に早乙女と朝倉が食いついた。
 わたしもおもわず顔を上げた。少しばかりおどろいたからだ。
 相坂は、人の色恋はまだしも、あいつ自身は異性どころか人間に縁のない生活を送っていたはずだ。
 だれだれ、とクラスメイトが大きく騒ぎ、エヘヘと笑いながら相坂が口を開く。

「千雨さんです」

 ゴンと音をたてて机に突っ伏したわたしに視線が注がれるのを感じた。
 テレはあるものの、背徳感がまったくないのが恐ろしかった。六十年間幽霊でいた弊害が変なところで現れている。

 質問をした朝倉まで固まっている。
 エヴァンジェリンはこらえきれずに笑い声を発している。
 その笑いが響く中、他の誰も声を発しないので、仕方なくわたしは顔を上げた。

「友達というか、憧れというか。わたしは世界で一番千雨さんを尊敬しているので」
「相坂、それはすごく誤解を招くと思うぞ」

 自分の席から突っ込んだ。

「ち、千雨さん。お知り合いなのですか」
 横から綾瀬が聞いた。さすがに動揺している。
「ああ、まあ知り合いだな。……いや、早乙女。そんな面白そうな顔しても違うからな。わたしは相坂とちょっと知り合いなんだよ。それだけだからな」
「はいっ。千雨さんはわたしの命を――――」
「相坂ストップ」
 うれしそうに相坂が追従する。
 しかしわたしのほうは、魔法使い連中から隠そうともせずに注がれる視線で冷や汗が止まらない。
 相坂は舞い上がっているのか、実はこういう性格だったのか。変なテンションになっている。
 人としゃべるのになれていないとか、そういうレベルではなく迂闊すぎる。
 このまま魔法のことを口走られたらわたしの人生が終わってしまう。

「まず相坂。お前はさっさと誤解を解け」
「えっ?」
「いやいや、なんで驚いてんだよ」
「千雨ちゃん、命ってなにー?」
「鳴滝。お前はそんなところで目聡さを発揮してんじゃねえよ!」
「あ、あのですね。わたしが復学できたのは千雨さんのおかげでして……」
「えーっ、なにそれ!」

 いらないことだけきちんと答える相坂の言葉に、クラスメイトが盛り上がる。
 魔法組から要らん視線が飛んでくるのを無視する。
 わたしは矢継ぎ早に聞こえる質問に適当な言葉を返しながら、相坂を思いっきりにらみつけた。
 相坂が復学することでそれなりの騒動は想定していた。
 だけど初日にこの騒ぎ。
 ようやく気づいた。
 悪意なしに騒動を呼び込むこの娘の性質は、ネギにつながるものがある。

   ◆

 放課後になり、クラスメイトの尋問と、学校案内という名目で連れ去られる相坂の助けを求める視線を当たり前のようにスルーしたわたしは部屋で一人の客人を迎えていた。
 ちなみに当然といえば当然だが、わたしも同行を求められたのだが……、軽ーく相坂のほっぺたをつねりながら、優しい優しい言葉で相坂の失言を問い詰めるわたしの姿を見て、全員が引き下がった。
 素晴らしく物分りのいいクラスメイトである。

「しかし、あいつらはホントに、話題があるとそっちに全員行くんだよなあ」
 わたしは一人ごちる。
 まあ、もちろん全員が相坂さよと愉快な仲間たちのグループに同行したわけではないが、基本時に一つの騒ぎが起こっていると、参加する側も見物する側も別の騒ぎを起こそうとはしないのだ。
 騒ぎが多いわりに、流れが一貫している。
 つまりその隙をつくと、

「朝倉なんかにはばれちまうかと思ったけどな」
「あはは、朝倉さんは率先して相坂さんを案内していましたよ」

 こうして、ネギ先生をこっそり部屋に呼べたりするわけだ。

「そりゃなによりだよ。記事……にはさすがにしないだろうけど、情報を集めときたいんだろ。まあ、相坂の話がばれるといろいろまずい。神楽坂なら最悪説明できるだろうけど、朝倉じゃ先生はオコジョ確定だな」
 うう、とネギ先生がうなった。
 その顔を見てわたしは笑う。
「あの、千雨さん。それで今日はなんで」
「あー。相坂があんなに間抜けだとは思わなかったからな。もう少し口裏を合わせておきたかったんだよ。それと、相坂がいないときに先生に言っておきたいことがあったからな」
「えっ、でもいいんですか?」

 ネギ先生が言いづらそうに口にする。
 まあそうだろう。こうしてわたしが先生と対面している間にも、相坂はクラスメイトに連れ去られている。
 色々と相坂の事情を聞きたがったクラスメイトにである。
 軽い質問だけであれだけぼろを出していた相坂だ。
 だんだんとわかってきたことだが彼女には、魔法使いの常識がない。
 ネギ先生とルビーの間ですら共通していた「魔法使いは己の存在を秘匿する」という内容を軽く見る。
 誰のサポートもなければ、明日にでもうちのクラスメイトに魔法使いのすべてが暴露されることだろう。

「いやクラスの連中に対して口裏を合わせとくわけじゃないよ。それにもう相坂がついさっきにほとんど白状してたしさ。わたしが命を救って、この学校に復学できるように手を回した、だっけか。エヴァンジェリンから助け舟が来るとは思わなかったけど」
「は、はあ」

 エヴァンジェリンがわたしの手助けとしてつい先ほどクラスメイトに説明した内容は嘘が80%くらいを占めているが、それでもあいつの口のうまさに助けられた。自分を多才と評するだけあって、変なところで芸達者だ。
 だから、もう大まかにばらした以上、あとは口を滑らせないように、誰かがサポートにつけばそれで十分。さすがに相坂だってわかっているだろう。
 いま先生を呼んだのだって、相坂の件ではなく別の要件である。

「それに相坂たちには絡繰がついていっただろう? だからわたしは抜けても問題ない。エヴァンジェリンが絡繰を同行させたのは、フォローさせるためだろうし。最悪のことまではバラさないだろ」

 もし相坂がばらし、魔法がうちのクラスにばれることになったとしたら、記憶処理だろうが、ネギ先生のときのように説明することになろうが、それはエヴァンジェリンの責任になるはずだ。
 エヴァンジェリンがそれを分かっていないはずがない。
 正直なところ、この世界の魔法は危険性についてはルビーのいっていた世界ほどではない。
 以前神楽坂に魔法をばらした先生が許されたのは本当に予想外だったわけだが、それならそれで魔法に秘匿については認識を改める必要がある。
 吸血鬼に襲われるわけでもないし、もしクラスに説明するというのなら、それはそれでありなのだろう。先生に説教した手前それを進めようとは思わないが、ばらしてよいならばらしておきたほうが、後々楽だ。どのみちこの先生が担任ではいつまでも隠しとおせまい。
 ネギ先生が魔法使いである以上、すでに知る権利はあるだろう。

「絡繰さんですか?」
 そんなことを考えていると、先生から疑問の声が上がった。
「あーっとだな。エヴァンジェリンの相方というか、まあ絡繰はエヴァンジェリンの仲間なんだよ。魔法使いの従者だっけ。先生ほんとに知らないんだな、うちのクラスのこと」
「か、絡繰さんもですかっ!?」
 そういえばネギ先生は知らなかったのか。どこまで言っていいものか。

 学園長と相談したときに、エヴァンジェリンは相坂さよに体を与えたのはエヴァンジェリン自身である、と説明した。
 わたしは相坂が見れるようになったあと、相坂の相談に乗って “たまたま”知り合っていた魔法使いのエヴァンジェリンに相談した、ということになっている。
 エヴァンジェリンは気まぐれで相坂を身内にいれ、体を与えたと説明した。
 長谷川千雨の立ち位置は、魔法使いを知る一般生徒と言う立場に落ち着いた。

「でも、千雨さんはボクと同じ魔法使いですよね。あの……パートナーとかはいらっしゃるんですか?」
「パートナー? いや、いないな。わたしは先生たちとは少し違って魔術師なんだよ。だから先生が言うような魔法使いってのとは少し違うんだ。パートナーってのも概念は分かるが、魔力そのもののシステムから違うと思うぞ」
「そうなんですか?」
 ネギが驚いたような顔をする。こいつにとっては魔法とはほぼ一種類のベクトルを向く技術なのだろう。
 だがルビーが言うには、魔法使いの言う魔力は、魔術師の魔術回路では応用できない完全に別の技術だ。

「ああ。わたしが先生たちのことをよく知らないっていっただろう? あれはそういう意味だしな」
「そうなんですか……あの、それってどういうのなんでしょうか?」
「興味があるのか? 見せるのはまだしも、わたしが理論を勝手に教えていいのか分からないんだけど……ああ、参考書みたいなのなら貸せるけど、それでいいか? あんまり魔法の役にはたたないと思うけど」
「い、いえ。貸してほしいです。そ、その、前に千雨さんがぼくたち魔法使いのことが嫌いだって言っていましたし……」
「わたしとしては、それよりも先生の普段の態度を改めてほしいですけどね」
「あ。す、すいませんでした、この間は……」
「反省してるなら、べつにいいけどさ」
 尻すぼみにネギの声が小さくなる。
 なんか勘違いしているような気がしたが、まあいいかと本棚に唯一存在する魔術関係の本を取り出してネギに渡した。

 しかし、ネギは本当に無知である。知識がないというよりワザと与えられていないようだ。
 わざわざ2-Aに入れておきながら、エヴァンジェリンや絡繰のことをネギ先生がきいていないのは少し意外だし、相坂さよのことも知らなかった。
 相坂の事情は人間関係に影響がでそうだからまあ黙っていることはあるかもしれないが、エヴァンジェリンは実際に人を襲っているのだ。
 幸運と悪運でわたしは何とか切り抜けたわけだが、桜通りの吸血鬼の噂は未だに広まっている。
 そういうことに関わらせないのなら、魔法の国からわざわざこの学校にこさせた意味がないような気がするのだ。

 ちなみにわたしは個人の善意は信じられても、組織の善意は欠片も信じないタイプなので、卒業試験でここにネギ先生が送り込まれたのには、絶対に裏があると考えている。
 最初はネギ先生の卒業試験というのは“魔法使い以外”をバカにする輩が、人生経験をつませるためにネギ先生を送り込んだ、そういう馬鹿げた行事かとも考えていたのだが、いまならわかる。おそらくそれはない。

 エヴァンジェリンのような例外がいるものの、魔法使いはマギステル・マギ、偉大な魔法使いの区分として人の助けになることをあげているらしい。実際はどうだか知らないが、それを体現しようとするネギ先生をみる限り、お題目としてはきちんと機能している。
 そのようなマギステル・マギを育てる学校が、遊びで魔法使いを送り込むことはあるまい。
 そして送られてきた先は、ネギ先生の父親に呪いをかけられた吸血鬼のいる学校だ。
 ネギ先生の幼馴染とやらは占い師を命じられたらしいし、卒業試験でわざわざ日本まできて学校の教師というのは珍しいどころではない。
 つまり意図があると見るべきで、何もないと考える方がおかしい。
 生贄ではないと思うが、エヴァンジェリンもネギ先生には色々と思うところがあるようだ。たまにネギ先生をみてにやりと笑う吸血鬼は、物語でいうならまごうことなき悪役だった。

 だが、それを学園長をはじめとする大人の魔法使いはネギ先生に告げていない。
 いい方面でも悪い方面で考えても、これは確実になにかある。
 最大限好意的に見て、エヴァンジェリンとネギを自然の成り行きで接触させるため。普通に考えればネギかエヴァンジェリンのどちらかが、もう片方の生贄だ。
 わたしはそれを聞いた。わたしはそれを知ってしまった。
 そんな言葉をきかされて、エヴァンジェリンに関わって死に掛けたトラウマを持つ半人前の魔術師のやることは決まっている。

 だからこそ、先生を呼び出したのだ。
 わたしは先生に顔を突きつける。

「先生。エヴァンジェリンのことですが」
「はい。なんですか。エヴァンジェリンさんがなにか?」
「まだなにかわかりません。でもなにかしてくるでしょう」
 ポカンとした顔を返される。
 エヴァンジェリン・マクダウェルは先生の父親に呪われた。実際には呪いではないらしいが、エヴァンジェリンは内心はともかくそう振舞っている。
 つまり、エヴァンジェリンはネギ先生を狙う可能性があるということだ。
 わたしは悪の魔法使いというわけじゃない。
 吸血鬼の味方をするなんて真っ平だし、大事に巻き込まれるのもごめんこうむる。
 だけど、わたしは正義の味方じゃないし、マギステル・マギを目指してもいない。
 先生に嘘もつくし、友人をだましもする。
 そして、わたしはエヴァンジェリンとは敵対できない。
 あいつがたとえ、お人よしだということを頭で理解していても、この体は死の恐怖を覚えている。

「先生、わたしが今日言っておきたいのはですね――――」

 だから今日先生を呼び出した。
 口裏を合わせるため、釘を刺しておくため。
 そして、

「――――わたしは、エヴァンジェリンに先生が襲われても、先生側につくことは出来ません」

 先生に、この言葉を言うためだ。


   ◆


 ネギ先生はわたしの言葉に、特にピンとくることはなかったらしい。
 煙に巻かれた顔をしながら、不思議そうな顔をしながら、腑に落ちないような顔をしながら、最終的にわたしの言葉にうなずいた。
 まあ良い。もともとわたしがこのような釘を刺しておくべきだと感じたのも、最近のエヴァンジェリンの動向を見て、なんとなくいやな予感を感じたからだ。

 正直なところ、これは先生を見捨てるようなものだが、相手がエヴァンジェリンなわけだし最悪なことにはならないだろう。
 あいつも殺す気はないはずだ。
 あいつ自身もわたしとの一件でこりただろうし。わたしが持つトラウマは、私自身だけの問題である。
 これは、なし崩しに巻き込まれないための布石に過ぎない。

 その後、少しばかり雑談をしていると、先生のポケットから携帯電話の着信音が響いた。
 いままでこいつが携帯電話を持っていなかったことは、電話で連絡を取りあっていたわたしはもちろん知っている。
 絡繰を従えているくせに、携帯を使えない吸血鬼や、万の世界を旅しながら、パソコンに苦手意識を持つ幽霊を筆頭に、魔法使いは機械に疎い。

「んっ、携帯もったのか?」
「はい、先日千雨さんにご迷惑をかけてしまったあとに、いいんちょさんから頂いたんです」
「……ちなみに、電話はものだけじゃなく電話料金がかかりますから、そのへんも含めて委員長にお礼でも言っておくといいと思いますよ」

 知らないはずがないと思ったが、一応口にする。
 さすがに盗聴器なんてものは仕掛けられていないだろうが、通信ログくらいは監視されていそうだ。
 だがまあ歓迎すべき事柄だろう。
 この間の騒動だって、ネギが携帯電話をはじめとする通信機器を持っていれば起こらなかったのだ。
 なんとなくいやな予感を感じながら、無理やりそう思い込む。

 ネギが携帯電話を四苦八苦しながら操作して電話に出た。相手は委員長のようだ。
 その姿を見ながら、一応おかしなことを言わないようにこっそりと釘を刺そうとすると、いいタイミングでわたしの携帯からもメールの着信音が響いた。
 ネギをちらりと見てから携帯に向かう。宮崎からのメールだった。

 先生は委員長からの電話で、わたしは宮崎からのメール。これは相手との友好の差ではなく、付き合い方の問題だろう。
 メールの本文には「これから相坂の歓迎会で相坂さよも会いたがっているからこれるならきてください」とある。
 宮崎らしいお誘いだ。
 先生のほうにも、大きな反応がない所を見ると、相坂は長谷川千雨の秘密を守り通したのだろう。相坂が自主的に守ったはずはないので、あとで絡繰には感謝のひとつもしておくべきか。
 相坂もそのトラブルメーカーっぷりを発揮することはなかったようだし、今回は一応出ておこう。
 そう返信を打とうとして、何の気なしに、恐らく同じ内容を電話で話しているネギ先生の会話を漏れ聞いて――――

「あっ、はい。いいんちょさん。ちょうどよかった。今は千雨さんのお部屋にいるので千雨さんにも声をかけてみま」

 後半は電話の向こうからの叫び声でさえぎられ、ネギ先生の言葉が止まる。
 当惑するネギ先生の顔を見ながらわたしは大きく大きく息をはく。
 直情型のお人よし。こいつは善意だけで動いて、その上でコトを起こすから困りものだ。そして当のわたしがこいつを決定的に怒れない。
 だから以前の問答がギリギリだった。よく先生を知らなかったからこそ罵倒できた、非難できた。だけど改めて考えてしまえば、こいつはまだガキなのだ。
 未熟で、馬鹿で、デリカシーがない。でもこいつはまだ十歳で、悪意を持つわけじゃない。
 以前ルビーに言われた長谷川千雨の長所で短所。理屈が合えば、人殺しを許容できるほどの合理性。理屈の上で理解できてしまうから、わたしはこいつを憎めない。

 わたしは携帯電話の向こうで叫ぶ委員長に戸惑うネギを見る。本気で困っているその姿。
 わたしがメールに返事を打つ必要はなさそうだ。
 なるほど。相坂が騒ぎを起こさないときは、こっちのトラブルメーカーが頑張ってくれるというわけか。
 ここ最近は本当に騒ぎにゃあ困らない。
 まぶたに裏に映るルビーが大きく笑う。その笑顔にわたしは苦笑いをかえしながら、携帯電話を取り上げて電源を切ると、あわてるネギ先生のほっぺたを力いっぱい引っ張った。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 相坂さんに体がつく話でした。簡単に言えば、臙条巴。恐山とかにも行ってません。ルビーさんが万能すぎるお話。
 前回ネギ先生が出なくなるとかいいましたが、ウソでした。プロット的には出なくても、ネギくんはやっぱり出ますね。
 あとあくまで相坂さんから千雨さんへの感情は友情です。カンストしてるだけです。百合ったりはしません。たぶん。
 次回更新は一応一週間後を予定しています。おそらく桜通りの吸血鬼編に入ります。



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