ボクははれてメルディアナ魔法学校を卒業することになった。
お姉ちゃんもアーニャもおめでとうといってくれた。
七年かかる授業課程も、頑張って五年で卒業できた。
アーニャは六年で卒業した。メルディアナ魔法学校は飛び級制度に関してとても融通が利く。
お姉ちゃんにはボクもアーニャもすごく優秀なことをしたのだとほめてもらった。
だけど、まだまだ終わりじゃない。
マギステル・マギになるために、ボクは頑張り続けないといけないのだ。
この学校でも卒業後に、修行を行うことが義務付けられている。
卒業証書とともに渡される紙に書かれた修行の内容。
アーニャの紙にはロンドンで占い師をすることとかかれていた。
魔法に関わらない世界は子供に厳しい。占い師なんて大丈夫だろうか、と思ったが、アーニャなら大丈夫そうなので、心配するのはすぐにやめた。
だけどアーニャはボクのことをまだまだ子供だと思っているので、しきりにボクの修行の心配をしていた。
ボクの受け取った紙は日本で教師として修行するようにと書かれていたからだ。
幕話6
赴任が決まってまず行ったことは日本語の勉強だった。
言葉が通じなくては先生は出来ない。
三週間みっちり頑張った結果、自分でも満足できるほどに日本語を操れるようになった。
周りの皆は魔法を使ったほうがいいのではといっていたけど、ボクがこうしてしゃべれるようになったことを伝えると、驚いていたようだった。
学校には赴任当日に着いた。
ここにはボクの知り合いのタカミチがいるらしい。彼は父さんと知り合いの魔法使いで、非常に強い。ボクがマギステル・マギになる上で、教えをこうべき人である。
電車に乗って麻帆良学園の中央駅というところに向かった。
ここに迎えの人が来ているはずである。
ああ、とっても楽しみだ。
◆
ボクの父さんの知り合いのお父さんだという学園長さんはボクがきた経緯を聞いてはいないらしかった。
ボクが修行できたことを伝えるとひげをなでながら、それは大変だったのう、と微笑んだ。とてもいい人そうだった。
アスナさんとは大違いである。
そりゃあ服を吹き飛ばしてしまったのは悪かったとおもってるけど、あんなに怒るのは意地悪だ。
ボクはそのまま教室に行った。まず授業を行ってみようということになったのだ。
補佐にはしずな先生という人がつくらしい。
タカミチが言うには、普通はもっと手順をふむらしいけど、ボクが担当する2-Aは特別らしい。
タカミチはあまり驚いてはいけないよ、とボクに言った。
ボクはそのときはよくわからなかったけど、教室に入ってすぐにわかった。
上から黒板消しが降ってきたのだ。
ボクは日本で修行することを告げられてから日本の勉強をたくさん行ったので、これが日本で有名なイタズラであることにすぐに気づいた。
反射的に魔法で受け止めてしまったけど、すぐにわざとその黒板消しを受け止めた。
きっと誰にも気づかれなかっただろうけど、すこし動揺したまま教室に入り二段構えのトラップに引っかかってしまった。
ボクはまだまだ未熟だった。
授業中にアスナさんが消しゴムを投げてきた。ひどい人である。
でも話を聞くと、これは意地悪ではなくボクが魔法を使ったを見ていたかららしい。
驚いた。アスナさんもそのことを教室の真ん中で叫ぶので、取り繕うのに必至になってしまった。
あのときはアスナさんを止めてくれて、ありがとうございます、雪広さん。
◆
帰り道、ボクはとても高いところから落ちそうになった宮崎さんを助けるために魔法を使った。
魔法を使ったことに後悔はしていない。使わなくてはきっと宮崎さんは大怪我をしてしまっていただろうからだ。
だけどそれをアスナさんに見られてしまった。
アスナさんはどうやら最初からボクが魔法使いではないかと思っていたみたいで、ボクは問い詰められて本当のことを話してしまった。
ボクは、オコジョにされてしまうのだろうか。
◆
アスナさんはいい人だった。
魔法のことを黙っていると約束してくれた。
クラスメイトの皆さんはボクの歓迎会を開いてくれた。
みんなとてもいい人だった。
ボクはとても嬉しかったので、アスナさんに言われたように、タカミチの心を読んだりと、アスナさんのお手伝いをしようとした。
実はアスナさんはタカミチのことが好きらしいのだ。
結局それは失敗してしまったけれど、それからいろいろあってアスナさんは結局ボクを励ましてくれた。
魔法はばれてしまったけれど、ばれてしまった先がアスナさんだったのはきっと幸運だったのだろう。
歓迎会が終わると、アスナさんは実は宮崎さんが落ちたときにもう一人2-Aのクラスメイトがいたということを教えてくれた。
すぐに隠れてしまったらしくて、ボクは気づかなかったけれど、アスナさんは見ていたらしいのだ。
ボクの歓迎会にも出席してはくれていなくて、ボクは夕方になってその人の部屋を訪ねることにした。
お願いしてアスナさんについてきてもらった。部屋はアスナさんと同じ女子寮の一室だった。
その人は長谷川千雨さんといった。
部屋は一人部屋みたいで中には長谷川さんしかいなかった。
ボクは誤魔化さずに宮崎さんのときのことを聞いてみた。
すると長谷川さんはべつだん普通の態度で魔法のことを見てはいないようだった。
よかったとアスナさんに言うと、アスナさんも同意してくれた。
朝倉や早乙女だったらこうは行かなかったでしょうねえ、と彼女は言った。
名簿を思い返せば、カメラを持っている人と、のどかさんといつも一緒にいる人だと思い出す。
ああ、そういえば長谷川さんはどうなのだろう。
長谷川さんは無口な人だ。
アスナさんに聞いてみると、長谷川さんはあまり人付き合いがよくないらしい。
そういえば、アスナさんたちが開いてくれたボクの歓迎会にも長谷川さんは来てくれてはいなかった。
なかよくなれるだろうか? ボクはすこし不安になった。
◆
アスナさんはいい人だ。だけど怖い人でもある。
ほれ薬を作ってくれと昨日言われたので、本当に作るかどうかをたずねてみた。
少々面倒な手順が必要だし、このかさんにばれないように作るのは大変だが、四ヶ月くらいあれば出来ると思ったからだ。
だけどアスナさんは自力で頑張るとボクに言った。
昨日ボクに対して魔法に頼るなといったからだという。
えらいなあ、と感心した。
ボクも魔法にあまり頼り過ぎないようにしよう。
ボクも先生として頑張ろう。
そのすぐあとの授業中にアスナさんの髪の毛が鼻をくすぐった。
ボクはくしゃみをするときに魔力が漏れてしまうのだ。
制御が甘いからだとよく言われる。
その所為でアスナさんの服を吹き飛ばしてしまった。
アスナさんにとてもとても怒られた。
◆
授業中ずっとにらまれた。
そのあと何度か話しかけようとしたけれど、アスナさんはボクの言葉に返事をしてはくれなかった。
このままではアスナさんはボクのことを許してくれないみたいだったので、ボクはアスナさんのためにほれ薬を作ってあげることにした。
運がよかった。お姉ちゃんがこっそりとボクのかばんに魔法の元七色丸薬セットを入れておいてくれたおかげである。
大人用はパワーが違う。四ヶ月を四分に短縮して、ほれ薬を作るとボクはさっそくアスナさんのところに行くことにした。
だけどアスナさんはボクが前に失敗したことを根に持って、ボクの薬を信用してはくれなかった。
薬は結局ボクが飲む羽目になって、ずいぶんとひどい目にあった。
それをアスナさんに言うと、彼女はぷりぷりと怒りながら、じゃあわたしが飲んでても同じような目にあったってことじゃない、といった。
もっともだとおもった。
これからは気をつけよう。
◆
その夜、アスナさんにボクのお風呂嫌いがばれてしまった。アスナさんはお風呂好きのようで、ボクをお風呂場まで連れて行き髪をわしゃわしゃと洗ってくれた。
洗ってもらっている最中に、実はアスナさんは苦学生だということを知った。
いい人でえらい人で怖い人で、やっぱりえらい人であることをしった。
アスナさんが苦学生だと知って泣いてしまったボクを、アスナさんは慰めてくれた。
すると、そこに2-Aの人たちが入ってきた。この寮の大浴場はクラスごとの時間制らしい。
アスナさんと一緒にあわてて隠れた。
お風呂に入ってきた人たちはボクのことについて話を始めた。
2-Aの人はスタイルのいい人が多い。彼女たちの話ではボクの寝泊りさせてもらっている部屋がアスナさんの部屋から一番胸が大きい人の部屋にかわってしまうらしい。
アスナさんの部屋から移りたくなかったボクは、アスナさんが一番胸が大きくなればよいと考えたので、風邪の精霊に干渉して、水着姿だったアスナさんの胸を膨らませた。
タオルを巻いた姿じゃなく、水着を着てくれていてよかった。
魔法を唱えると、アスナさんの胸が膨らんだ。
結局、やりすぎてしまって後でアスナさんに怒られた。
うう、御免なさいアスナさん。
◆
中学校では教科ごとに担当をする先生が決まっている。
ボクは2-Aの担任で、教科は英語を担当している、だけど出張や急病などの理由によってはほかの教科の授業を担当することもある。
ボクは2-Aの担当なので、その日体育の先生が2-Aの授業を欠席することになったため、その役目がボクに回ってきたことは当たり前だったのだろう。
体育の先生からは今日の2-Aの授業予定は屋上でバレーをやるということを聞いていたので、ボクは一足早く屋上に向かった。
屋上にはすでに生徒がいた。でも2-Aの生徒ではなく、高等部の2-Dの人たちだった。
彼女たちはボクを捕まえると、そのあとすぐに屋上に現れたアスナさんたちに戦いを挑んできた。
屋上の使用権をかけたドッチボールらしい。
彼女たちはドッチボール部らしく自信満々だ。
相手は11人。こっちは倍の人数でやってもいいことになった。
倍といってもやることになったのは20人で、残りの人は見学と応援になった。
なのでボクも参加することになった。これで21人。あと一人はいれ倍の人数だったけど、まあ21人もいれば十分だろう。
彼女たちは強かった。だけど2-Aのみんなが力を合わせて、勝ったのは僕たちだった。
最後にすこし失敗してしまったけど、解決できた。
だけどアスナさんにはやっぱり怒られてしまった。
タカミチのようになるためには、もっと頑張らないといけないな。
◆
夜になった。
アスナさんはもう眠っている。
ボクも眠ろうかとベッドにもぐりこむと、インターホンがなった。
明日は休日なので、夜更かしする人も多いようだが、アスナさんは新聞配達のアルバイトをしているので、基本的に夜更かしはしないようだ。
夜もずいぶん遅い時刻だ。アスナさんもこのかさんももう寝ている。
誰だろうとドアを開ける。
そこにいたのはボクの生徒の長谷川さんだった。
彼女は言った。
「先生。お時間いただけますか?」
ボクはその言葉に頷いた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
6話と7話の間に幕話がないのはもともと6と7があわせて一話だったからです。話数を稼ぎました。
Fate的に見るまでもなく、初期の先生の行為はちょっとだめすぎるので、アンチネギに傾く千雨。特に媚薬関係はまじめに考えれば突っ込みどころがいくらでもあるんですよね。じゃんけんアンサラーのごとく本来は突っ込んじゃいけない部分なんですが、ここでは突っ込みます。でもネギ先生はヒロインなので、べつにいじめて終わりはしません。
正直自分もさっさと次の話に行きたい感じです。