師匠、来日。
ここは天空闘技場だが。
「ふふん、貴様が儂の弟子となりたいと言う者か」
「はい」
小柄だ。
身長150位のお爺ちゃん。
道着姿、というか着流しに近いのか。
ネテロのじーさんとお揃いな感じである。
亀仙人も斯くやと言う禿げっぷり。
お禿げ様と呼ぶと宇宙が全滅エンドである。
というか凄い。
ヒソカと違い悪意も欲情も感じられないが、纏でまとっているだけのオーラが凪一つ立たない湖を思い起こさせ、存在するだけでこちらに訴える何かがある。
けど強そうではないな。育成専門で自分は強くない人なのかな?
弟子は無意味に強そうだが……
ここは天空闘技場の俺の部屋。
今、部屋にいるのは、俺と横島、サダソと師匠っぽい人とその弟子。
…うん、兄弟子になる人。
テーブルに四人腰掛け、俺が紅茶を入れて回り。
俺が席に着いたところで、先ほどのお言葉。
横島とサダソが全力で目を逸らそうとしている弟子の人は置いておいて。
「自己紹介と行こう。
儂が心源流師範代、シン=シューザンである」
シンさんというとあの伊藤勢のグラサンかガンダム一の悲劇の主人公(現実的な事情という意味で)を思い出す。
着流し姿に杖を突いた姿が妙に粋である、普通に格好良い爺だ、うむ。
杖は椅子に立てかけてるけどな。
「わたしの名前はゴーリキ=ワカモート。貂蝉って呼んでちょうだい、うふっ♪」
キモいっ!
顎髭に耳毛の三つ編み、筋骨隆々な身体にビキニパンツ一丁、妙に巻き舌っぽい喋り方の、身長3mに届くんじゃねーかというおっさん。
そう、数年前に横浜で見かけたハーレム王の仲間というか下僕の一人。
アレにそっくりなのだ、声も見た目も。
御大なら酎とか破壊神シヴァの世代なんだけどなー俺は。
間違ってもこんなトコで出会って良い人じゃないと思うんだ、嫌いじゃないけど。
「何故、貂蝉…?」
この世界に貂蝉がいたかどうかは兎も角、三国志くらいは知っている横島が尋ねる。
正直、俺の科白だろそれはと言いたい。
「絶世の美女の名よん、私にこそ相応しいんじゃないかしらぁ!?」
「あ、そうっすか…」
俺も横島もサダソも、テーブル越しに見下ろされてる。
俺が少女な身長に思える位差があるとかこの世界パネェ。
はっきりとテーブル越しに向かい合って、この部屋の誰より背が高い…座高だけじゃないんだろうが。
「静香ちゃん怖いっ!」
耐えられなくなった横島が抱きついて来た。
気持ちは分かるが抱きつくな馬鹿者、俺だって怖い事は怖いけどな。
引きはがすと、キュピーンと目が光る、貂蝉の。
「だぁれが二目と見られぬ化け物面ですってぇぇぇ!!?」
言ってねーし。
「ひぃぃぃぃ!?!」
サダソと二人で抱き合って震える横島。
気持ちは分かるけどな、ヒソカのオーラ並にこえー。
他人事だから平気だけど。
「よさぬか貂蝉」
「ンもう! センセも甘いんだらぁ!」
…その乙女口調辞めてくださいませんか、御大の声で。
好きですけどね、好きだったけどね。
…これはアレか、秋本羊介声が師匠でない事を感謝すべきか。
その場合、卑弥呼が出てきそうだしな……
同じヒミコなら創界山から連れてきて欲しい、割とマジで。
「…ではこちらも。シズカ=タカマチ。24歳」
「よこ、違う、タダオ=ヨコシマっ、23歳」
「ささささ…サダソ=ガイル。17歳で、す」
「うふふ…良い男の子が二人も…ドゥフフフ…」
こええ……悪い人ではないのはオーラの澄み切った感じを見れば分かるんだが。
流石にアレだわ…
というかヒソカと違って澄み切ってるのが逆に怖い。
欲とか悪意とかじゃなく、純粋に褒めてるだけなのか。
……目がキュピーンとか光ってるのは念? そんな事の為に…いやいや。
これホントに邪念はないんだろうか?
「ふむ。各人、それぞれ、相応に鍛えておるな。
これならば弟子にしてやってもよかろう」
なんという上から目線、しかし逆らえない。
というかね、この二人、特に貂蝉のオーラが半端無いのだ。
アルクェイドとか、元の世界の一部の強者も凄かったが、あれらは大概カテゴリー的に人間じゃないのだ。
それでアルクェイドやギルガメッシュ、アーカードに匹敵する威圧感とかもうね。
メルエム、空想具現化(とかなら殺せるかなぁ…?
ちなみにうちの近所に住むギルは衛宮の親友である、セイバーが焼き餅焼く程の。
「ありがとうございます!」
しかしまあこれは本当に嬉しい。
今まで独学でやってた上に年齢的にそろそろ修正が効くか怪しいからな。
50過ぎても成長出来るのかも知れんが、鉄は熱いうちに打つものだ、曲がっているならなおさらだ。
「俺は静香ちゃんの言う通りにするだけだし。
宜しくお願いしまーす」
その辺の割り切り方は本当に凄いと思う、俺なんか大した事なく右往左往してるだけなのに。
「俺は――」
「ゴーリキ――いやさ貂蝉殿、私と一試合、舞ってくれませんか?」
目をキュピーンと光らせるのは辞めて頂きたい。
「うふっ♪ いいわよぉン」
サダソのような人間は見たものしか信じられないんだよな、思い切りこいつら信用出来るのかって目をしてたし。
俺の方も初めて念能力全開で戦える相手と出会えた訳で。
ちょっとやってみたいよなあ。
まあライキ達使えば負けないけど、数の暴力的な意味で。
……ライキ達使って負けないよね?
「ふむ、まあ良かろう。おぬしの実力、見せてもらう」
悠然と頷く先生。
この人は普通なんだよな、少なくとも見た目と言動は。
****
「『開錠(』」
呟いて指輪を外す。
勢いを増すオーラを留める纏。
「あらン。そんな隠し球があったのねぇ」
練!
ゴウっと音を立てる錯覚と共に吹き上がるオーラ。
「ほう」
顎を扱きながら、唸る先生。
ちなみに横島とサダソの三人はこの部屋、トレーニングルームの中、模擬戦用のフロアの側でパイプ椅子を並べて座っている。
それぞれ得物を持ってこさせたのはそういう事なんだろうな。
部屋は広く、実に観客席を含めた闘技場ほどもある。
それもそのはず、ここは206階ほぼ全てが、200階クラスの闘士専用のトレーニングルームであり、部屋の総てが念能力を基準として作られている為、相当頑丈に出来ている部屋だ。
注意深く探れば神字すらそこそこに書き込んである、書いたのは誰か知らんが。
トレーニングに勤しんでいる選手はぽつりぽつりとしかいない。
念を手に入れると格段に力が増す。
するとトレーニングをしなくなる馬鹿も結構いるのだ、馬鹿らしい事に。
手だの足だの無くしてる奴ほどトレーニングサボる傾向にあるから救えねぇよな、割とマジで。
よって、総勢170名越えるハズの200階クラスのトレーニングルームもこんなモンである。
ヒソカみたいに出かけてていないのも多いんだけどね。
今日はカストロがいない、か……ここの主みたいな顔してトレーニングしてるんだがな、いつもは。
「はじめ!」
頭を下げ、構える。
「ふぅぅぅ――!!」
足に流でオーラを溜めて蹴り出しダッシュする――!
攻撃と防御以外にも流の使い出はあるのだ。
「ぶるぁっ!」
風すら纏って撃ち込まれる拳を躱し、左の刃止剣(と右の飛刃(に周をして切り込む。
「甘いわよン!」
オネエ言葉辞めてくれ割とマジで!
こちらの周をした刃物を凝をした腕で受け止め流す貂蝉。
一応、掠り傷程度はついたみたいだけど有り得ない強度の防御力!!
そのまま流を使い、ナイフを覆ったオーラをヒットの瞬間だけ増幅させ、蹴りと体捌きにも流を使い。
もはや無意識の領域で流をして必要な部位のオーラを増幅させて攻防を行う俺と貂蝉。
「師匠、見えます?」
「辛うじて何やってるか分かる程度に。お前は?」
「光が走ってるようにしか見えねぇっす」
「ふむ、もう念能力者としてはほぼ完成してるの、シズカは」
向こうの雑談も殆ど耳に入らん程集中して行う攻防に、精神がごりごりと削られていくのが分かる。
向こうの拳も足も風を纏って衝撃波が余剰攻撃として襲ってくる程だが、こちらはナイフに周して凝してダメージが発生しない時もある位だ。
つまり単純に攻撃力の差で、負ける。
速さ自体は互角、いや僅かに俺の方が速い。ゆえに一見互角に見える。
しかしこちらの攻撃がほぼ通用しない。
飛刃(に全力で凝して突き立てても同じLvかそれ以下の攻防力で防がれている上に、フェイントに引っかからないのにこっちは引っかかりまくるという現実。
鋼糸に周をすれば、指くらい切り取れるかも知れんが――
「ふんむっ!!」
流石に指切り取ったら目覚めが悪いなんて話じゃなくなるので、一番太い鋼糸で腕を絡める!
周をしてなお動きを止める程も出来ないが、鋼糸を引き寄せてバランスを崩す――!
ぶおんっと音を立てて宙を舞う俺! そりゃ基本のパワーが違うから引っ張られたらこうなるわ!
内心でツッコミつつ、併せて放たれたアッパーを足と膝裏、背中からオーラを吹き出して一気に空中移動し躱す!
鋼糸から手を放した俺の身体はオーラによってアッパーを躱し一気に貂蝉の背後を取り――取りすぎた!
距離が空いてしまったので逆さに宙に浮いたまま飛針を背中に叩き込む!
巷に針の降る如く(!!
俺の両手から放たれた周状態の飛針が『螺旋』を描いて飛ぶ! 六本のうち『何本かが不可視状態』で貂蝉を襲った!
ナイフ持ったままだろうが刀持ったままだろうが飛針と鋼糸を操るのが御神流だぜ?
「ふんっ!」
アッパーの為、振り上げていた右腕の勢いそのままに身体を回して左腕で飛針を払う!
「っ!?」
『見えない飛針』が一本、肩を突き抜ける!
が、気にせずダッシュかよ!?!
「はあっ!」
身体を回して着地すると同時に、オーラを溜めた足で踏み込みバックステップ!
直後腕にオーラを移動!
溜め撃ちロックバスターのイメージでナイフを握ったままの右拳から念弾を発射!
どぅんっ! と音を立てて発射されたソレは突進する貂蝉の拳に叩き落とされた!
が、予想外の威力だったのか体勢が崩れる!
再びオーラを溜めた足で前へ踏み込み! 続けざま背中からオーラを吹き出し加速を付けて!
出来る限りの凝でほぼ全てのオーラを突き出した飛刃(に纏わせ、貂蝉の下腹部へ――
「そこまで!」
喝!
オーラさえ含んだ一喝に、俺と貂蝉の動きが止まる。
ちょうどこちらのナイフが腹に刺さる寸前、そして貂蝉が振り上げた右肘が俺の背中に触れる寸前だ。
……背骨砕けてたかもな……怖ぇぇ!!
そしてどちらかともなく体勢を戻して向かい合い、頭を下げる。
がくっと、力が抜け膝を突く。纏状態は維持してるが……
予想以上に疲れてるっぽい?
とりあえず飛針拾っておかないと……
「大丈夫かしらン?」
軽々と俺の腕を引いて立たせる貂蝉。
手には拾っておいてくれただろう、飛針が数本。
「大丈夫だ」
ま、女に欲情する奴じゃないから異様に雄臭いトコ除けば普通に付き合えるか。
それにしても汗一つかいてないって…こっちは汗だくだぞ、全く。
受け取った飛針を手首の収納場所に仕舞う。
「肩、平気なのか?」
「あたしの鍛え抜かれた身体には何の問題もないわよン」
……ここまで効かないとか想定外過ぎる…
針と言っても普通の箸よか長いし太いんだけど…なぁ?
「言っておくけどぉ、アレなら中堅クラスのハンターもぉ当たり所次第じゃ硬で防御しても穴が開くわよォん?」
なんであんた肩に穴が開いて平気なのか、そっちの方を訊きたい。
あー…ウボォーギンが肩を盛大に噛みつかれて普通に殴ってた気がする。
強化系って極めるとこんなんばっかか。
****
「実戦経験が足らんな、シズカは」
「はい」
肩で息する俺。
横島の用意したパイプ椅子を二つ、俺と貂蝉が腰掛け、椅子を円に並べて反省会である。
なにげにここまでオーラを使いまくって戦うのは初めてだからな…
200階クラスで戦う必要ないと考えてたが、考えを改める必要があるかも。
「その割に流によるオーラの移動速度は見事。
まあ攻防力自体の数値の割り振りは兎も角としてな」
うーむ、数値化というか必要なトコに必要なだけ流すというのは面倒なのだ。
よって80~90位を移動させまくり、ダッシュに攻撃に防御にと使っていたのだが。
「必要な部位に必要なだけのオーラ量を移動させれば、その疲労はもっと軽減するじゃろう。
特にダッシュなど移動の為のオーラが無駄使いが激しかったの」
「アレはいざという時のみにした方が良いわぁ、その方が緩急が出るものン。
うふ♪ 単調な攻めじゃ満足なんてさせられないわよぉ」
汗もかいていない貂蝉がキモイポーズを取りながら合いの手を入れてくる。
言ってる事は兎も角そのポーズに意味はあるのか。
「空中移動は大したもんだったが、あれなら瞬間移動を発で覚えた方がオーラ消費の効率は良いな。
おぬしなら難しい制約無しでも瞬間移動位出来るようになると見たが。
後は単純にパワーが足らん。
今のままでは貂蝉が垂れ流しか絶状態の時しかダメージを与えられそうにないぞ。
まあ、貂蝉が世界トップクラスの強化系というのもあるだろうが」
うおい。
瞬間移動云々は兎も角、こっちは練して周したナイフに凝して斬りつけてるってのに垂れ流しか絶状態でしか効果ないとか泣けてくるんですけど。
「後はフェイントなどの駆け引きの技術じゃな。
実戦経験の無さもあって、拙い」
「何処に攻撃が来るのかが見え見えよォ?
でなきゃいくらあたしが強化系で美しい肉体を持ってるとしても、あの量の念とナイフで刺されたら怪我しちゃうわぁ」
ああ、見え見えの攻撃だったから防がれてたのか。
前世の世界でも鍛え抜かれた身体でタイミングを合わせれば刃物や弾丸も防ぐとか言う話もあったし、この世界じゃなおさらか。
「その割には流の移動速度、堅のオーラの量と維持時間等は上級ハンターレベルと言って良い。
念弾の威力もなかなかのものだったが、使いどころが甘いな。
目眩ましやフェイントなど他にも用途はあろう」
チートな部分はチートなんだな、やはり。
便利だから今更どうとは言わないが、ズルしてる気分にはなるぜ…
念弾に関しては細かく発射しても効かないからと思ったんだが、フェイントとかは確かに考えてなかったか…
もう一つの発に関しては威力的な意味で模擬戦になんか怖くて使えないし。
…効かないかも知れんのが怖いな、アレは現状、俺単体で出せる最高攻撃力なんだが。
堅に関しては7時間到達したのだ。
横島やサダソにバレても問題なくなったから遠慮無く出来るし。
「その指輪、ちと見せなさい」
「はい」
「……ふむ。オーラ抑制の神字か。これを付けて日常生活を送りかつ修行したというなら、その若さでそのオーラ量も納得というものか」
あ、やっぱオーラ量とか規格外なんだ、俺。
返してもらった指輪を再び薬指に填める――ふおっ!? オーラ出し尽くした訳ではないが、流石に疲労感はそれに匹敵するな…
さっきまでも十分疲れていたが、抑制の指輪填めたら当然ながら疲労度が増した感じだ。
「とは言えおぬしは温室の薔薇じゃな。
今、おぬしに必要なのは実戦じゃ」
「分かりました」
確かになー、念の修行だけはこっち来る前からずっと続けてたけど、念使って実戦なんてなぁ。
ポケモン達は戦わせてたけど、自分はと言われれば確かに思い出せる程の実戦もない。
戦い自体は全くない訳でもないけど、念使って本気で戦った覚えはないな、うむ。
「ふう…」
指輪を填めると一段と疲労感が増す。
やはり身を纏うオーラが減ると色々と身体に影響があるな。
「大丈夫?」
横島がタオルで汗を拭ってきた。
なかなか気が利いて宜しい。
「まあ、ちょっと疲れただけだ」
こいつはこいつで美沙斗さんにムリヤリドイツや香港連れていかれたりして、実戦慣れしてるんだよな…
むう。
「タダオ、サダソ。
二人の戦いをどう見たか?」
「…いやもう…何が何だか」
「凄いっすねー、身体からなんか吹き出て、色々こう…ちょっと訳分からん」
「ふむ、タダオの方は精孔が開きかけてるようじゃの」
「サダソちゃんの方はちょぉっと時間かかるわねぇン」
ま、そりゃそうだわ。
かなり大目に見てズシと互角の才能としても半年かかるらしいしな。
クラピカとかハンゾーは半年位で殆ど完成したみたいだし、やはり才能か。
レオリオは……どうだったっけ?
2月ごろゴン達と別れて、9月に再会だから、どっちでもおかしくないんだが。
勉強しながらゆっくり起こして、かつ大学に合格とかレオリオも大概チートだな……
あ、アメリカとかと一緒で入るのは簡単なのかも?
どっちにしろ半年近くで起こしたんだから、才能的にはズシと同じか?
そう考えるとサダソは……うーん、可哀想とか思うのすら上から目線で傲慢なんだろうが。
まあ出来るだけ手伝ってあげよう。
「次はタダオとサダソ、戦ってみせい」
「うっす」
「いや、まだ師匠の足下にも及ばないっていうか」
「そんな事は分かっとる。良いから全力でやってみせい」
「うっす」
「あとサダソちゃあん? 慕ってるのは分かるけどぉ、師匠はないんじゃないかしらん?」
だんっと音がしたと思った瞬間、サダソの目の前に立っているソレ。
大胸筋ぴくぴくさせつつ、凄まじい笑顔で両手をわきわきさせている。
これから抱き締めちゃうぞ☆って感じだろうか。
それにしても、視線は貂蝉に向いていたのに、音がしたと思ったらもうサダソの前にいた。
疲れて気を抜いてたのは事実かも知れんが……
実力差なのか経験の差なのか慣れなのか。先は長そうだ。
「いやいやいやいや!? あーとそのーえーっ!??」
おお、混乱しとる。
目の前で筋骨隆々、身長3mクラスのオカマ? が筋肉ぴくぴくさせつつ頬染めて――
もう見たくないんですけど。
「兄(さん、で良いんじゃないか」
俺の事、姐さんだしな。
…なんで俺は姐さん呼ばわりが多いんだろう?
「じゃ、それで!」
「良い子ねぇ♪ お姉さんが可愛がってあげちゃうわン♪ ドゥフフフ…」
いつから筋骨隆々なアナゴさん声のおっさんをお姉さんと呼ぶ時代になったんだろうか。
「ひぃぃぃ!!?」
パイプ椅子に座ってるのに後ずさろうとして後ろに転けて、そのまま転がるように逃げるサダソ。
「貂蝉、模擬戦をやらせるんだろう?」
「あらやだ♪ そうだったわねぇン」
いちいちポージングしないで欲しい、キモイから。
普通のマッチョとかボ帝ビルなポーズじゃなくて、むしろぶりっ子とか可愛い女の子なポーズだからダメージでかい。
――俺じゃなくて横島とサダソにな。
いやあ、対岸の火事と分かってると余裕が持てて良いね、うむ。
こいつは意外と女性には紳士だしな、うむうむ。
「は、速くやるぞサダソ!」
「うっす!」
やる気になって、というか早く逃げたくてサークルの中央付近に移動する二人。
到着するや否や一礼し、横島は木刀を、サダソは空手か何かの型を構えた。
共に念無しとは言え、サダソと横島じゃまだまだ勝負にならんと思うんだが。
天空闘技場、基本的には素手で戦う選手の方が有利なのだ。
200階クラスまでは武器禁止だからである。
俺や横島などはある意味規格外だから割と楽に上れたが、剣術や或いは飛び道具で戦うようなのは200階クラスまで上がれまい。
そういう連中がこんなトコに上ろうとするかは微妙だが。
してみると200階クラスの武器解禁は特に具現化系・操作系に対する処置と見た方が良いかも知れない。
障害持ちになるのが前提みたいなトコだから、それに対する補填もあるか。
あ、一度200階から落ちると、ギドもリールベルトも二度と戻ってこられないのか、武器使えないから。
原作の人質だの使ってまで勝とうする執念の一因を見た思いだな……
「そういえば先生」
「なんじゃ?」
「貂蝉は念能力者の中じゃどれくらいのレベルなんでしょうか?」
「状況や相性次第ではあるが、トップ3から10は確実じゃ」
世界最強クラスって事じゃねーか。
…でっかいビスケとがち喧嘩できそうだし、当然かも。
「ああ、おぬしの攻撃が殆ど効かなかったのは仕方ないと思え。
念の総量、練でのオーラ量、堅の維持時間、凝による攻防力の多寡。
『攻撃力』を左右する要素はまだまだあるが、おぬしと貂蝉との決定的な差は『根本的な筋力の差』じゃ。
貂蝉は絶状態で100t位は平気で持ち上げるし、纏状態でならトラックがぶつかってきても平気な面してるであろうな」
「どんな化け物だ……」
げんなりする程、力が違うってか。
やっぱ強化系がバランス良いというか強くなりやすいのは事実だな……
戸愚呂じゃないが、技を越えた純粋なパワーってか。
絶状態にしてぶん殴るとか、クラピカやなんだっけ、あのリーゼントの取り立てとかが必要。
…相当難易度高いんじゃね?
リーゼント名前なんて言ったっけなぁ…
とりあえずアレは、『使う必要がない敵には緩く、使う必要がある敵には半端なくキツい上に手間がかかる制約』なんだよな。
親衛隊クラスで相当難儀な事になってたし。
クラピカのは完全に『破ろうと思えば破れる制約に命を賭けた』から出来るんだろうし。
アレ、勘違いというか、ヒソカに仕掛けたらどうなってたんだろうなぁ?
「おぬしはまだまだ伸びる。大丈夫じゃ」
「そうだと良いんですが…」
確かに強くなってるのに強くなった気がしないって泣けてくるね、全く。
ああ、貂蝉は二人の模擬戦に黄色い(かつ野太く巻き舌)な声援を送ってるぜ。
「…ところで先生はどれ位強いんですか?」
「うむ、世界ランキングで100位は確実じゃ」
…前に色々調べた時にハンターの数が600人だったハズ。
念能力者の数>プロハンターなのは確定的に明らかなので、念能力者は大体…何人だろう?
「念能力者って世界でどれくらいいるんでしょうか?」
「大体2000人位とは言われとるな、事実かどうかは知らんが」
世界人口自体は地球と変わらんので70億と仮定して、7000万が1%の人口だから。
世界人口の0.0001%以下?
作中ガンガン念能力者、それも強いのやら凄いのやらばっか出てくるから、錯覚してたぜ……
冷静に考えれば、そもそもGIから出てこれない連中みたいなのが大半なのかも知れん。
そもそもゴンキルが才能の塊だからなぁ…仕方ないけど。
天空闘技場にしたって200階クラスは在籍数が180前後で上下してるだけって事は、下から上がって来ても洗礼でそのままあぼーんか、10勝する前にあぼーんかの二択が多いんだろうなぁ…新人潰しもいるし。
まだリールベルト達は実戦に出てないみたいだけど、原作の格好にはなってたぜ。
と言うことは確実に先生の方が弱いんだな、貂蝉より。
あ、横島が勝った。
武器は木刀一本の横島から大体1分保ったのは大した進化だな。
体力含む基礎能力は確実に向上してるね、うむ。
客観的に見て、ハンター試験時のキルアvsトンパくらい差があったのが、ゴンvsヒソカ(何とか島時)位には縮まったかな?
…あんま縮まってないように思えるのはヒソカが強いからだぜ。
横島が手を抜けば勝負の形にはなるしな、とりあえず程度だが。
貂蝉をここまで鍛えたのか勝手に強くなったのかは兎も角、師匠としては問題なさげだ。
師範代としての実力に問題のある人間をネテロのじーさんが資格与えるとも思えないしな。
人間として問題がある場合はスルーしそうなのが怖いが。
ま、本格的な修行開始と行きますか。
****
絶状態のウボォーさんは、凝か硬したクラピカさんのボディーブローを食らっても『むせっただけ(骨折はしてたかも?)』で済みました。
絶対時間で強化系は最大Lv6ながら精度10割で強化出来る&恨み節全開のクラピカさんの凝か硬を。
……ウボォーさんありえねぇ肉体防御力すぎる…
同じ硬が基本(のハズ)の主人公の必殺技受けたゲンスルーは『内蔵破壊、血反吐吐いて気絶程度』、恐らく纏状態で。
ナックルは硬で受けてそれでも気絶。
…超破壊拳ってとんでもない威力だったんですねぇ…アレで辛うじてとは言え生きてた蚯蚓も大したモンですけど。
まあそんなイメージです、貂蝉は。
……病犬ってウボォーさんの肩を喰らえる程の攻撃力……
陰獣は陰獣でそれなりに強かったんですね、やはり。
ハンター世界へ来る前に、この作品での横島並に修行して基礎体術(てか御神流)を向上させていたら間違いなく最強オリ主だったでしょうねー。
流の速度はビスケたん並なのに、フェイントに弱い&フェイントが下手という、非常にバランスが悪い仕上げになってます。
格下相手だとフェイントに引っかかった上で該当箇所の攻防力移動が間に合うというチート仕様。
格ゲーで例えると技の入力とコンボ自体はミスらないけど、フェイントや引っかけの技術が足らないので力押しみたいな。