…金が足らん。
天空闘技場に来て金が足らないとか新しすぎんゾ?
千耳会へ行ってみて、色々話をした結果。
ちなみに練して見せたらハンターでなくても紹介してくれたぞ。
仕事でなくて師匠捜しだからかも知れんが。
『ビスケたん、モラウ、ノヴ』→三人ともシングルハンター
→居場所教えてもらうだけでほぼ全財産飛ぶ。
ウィングさんは三人に比べればタダみたいもんだったが、連絡したら「初めて取った弟子に集中したい」との事。
これだけ訊くのに一億飛んだし…泣ける。
弟子とはズシの事だろうが、彼と天空闘技場来たのが再来年のハンター試験後+ゾルディック家滞在後だから、2月か3月?
半年かかったんだっけ? 纏習得に。
えーと、確かキルアに練しようとして怒られてたから、最低でも練覚えてから天空闘技場来襲。
纏で半年なら練も半年か?
今九月で再来年の1月が原作のハンター試験の月。
ズシのスケジュールが来年の今頃=八~九月頃纏習得して再来年の二~三月までの間に練習得、と考えると大体、一年六ヶ月後、再来年の3月頃が原作の天空闘技場編開始か。とりあえず極端な矛盾はない、ハズ。
多分、ズシでも練をすれば殺される事も障害を負う事もない、と判断したから天空闘技場に来たんだろう。
実際、纏状態のズシでもキルアが殺せなかった、まあキルアが念使えなかったからだけど。
うーん、今ズシが『念』の存在すら知らない頃となると、確かに天空闘技場には来たくないかもな。
天空闘技場のレベル確認…しに来ないだろうなぁ、ウィングさん…
だって数年前に200階登録してるもん、対戦成績もゴンキルと似たようなもんだから、多分ビスケたんが修行に使ったんだろうな。
つまり、自分で体感して熟知してんだから今さら調査に来るなんて展開はない。
ウィングさんに教わりたかったら試験合格してから、という事になる。
あと師匠なキャラって名前も顔も覚えてないクラピカの師匠くらいなんだが。
名前も覚えてないなんてどういう事だろうと自分の忘れっぷりに苛立つが仕方ない。
名前も覚えてないんじゃ探してもらいようがない。
千耳会の人には一応金額に応じて、それなりの念の師匠になってくれる人は紹介出来るし、億単位出せばシングルハンターとは行かなくても相当に優秀で実績のある人を紹介出来るよ、とは言われた。
…金も勿体ないのもあるが、外れが怖い。
しかし億単位出しておいて外れを引かす程、千耳会はだめな組織じゃないだろう、ハンター協会とも提携してるらしいし。
と言うわけで育成に関して有能である事前提に、話が通じる比較的常識人な念の師匠を紹介してもらった。
紹介料と仲介料併せて4億もかかった、泣きたい。
能力はまだしも人格面で常識人はハンターに少ないんだと説教されれば、ぐうの音も出ないんだが。
ともあれ、天空闘技場まで来て貰える事になった、到着は一週間後。
実際に育成してくれるか、その際の師匠としての雇用代はどうするか等は実際に会ってから交渉という話になった。
…不安だ…今更漫画のキャラだと、世界だと思う程阿呆な人生送ってないが、それでも全く知らない人間に今後の人生委ねる形になるのは非常に不安だ。
「お、静香ちゃんどうかした?」
よって鼻の下伸ばして抱き締めてくる横島の胸に顔を埋めても、それは不安ゆえ仕方ない事なのだ、うむ。
最近気付いたけど、横島とベッドで抱きしめ合って考え事すると捗る。
その間、こいつも好き放題してるみたいだけど、まあいいやね。
どうでも良いけど千耳会の人って奇抜なファッションじゃなきゃダメなのか?
頭に埋め込んだネジがいくつも飛び出てるユーノばりの金髪美少年とか微妙過ぎる。
念覚えてるようだし、見たとおりの年齢ではないんだろうけど。
「あ、そうだ。明日、サダソに会ったら昼飯喰いに来るように伝えておいてくれ。
昨日のヒソカの事で話がある、とな」
「アレなんなんすか? 魔法とかと違うし」
「明日話すよ、纏めてな」
横島の胸板厚くなってるなぁ…すりすり。
GIは正直ビスケたんゲットの為に必要だったから金貯めてた訳で、逆に言えばビスケたんとの出会い前倒しにしないなら必要ないのだ。
現状でも残高8億余りあるから、生活費さえ残るならほぼ全額師匠代に化けても構わない。
…問題ない人だといいなぁ……でもハンター世界、というかハンターでまともなのってレオリオとミトさん位しか知らんしなぁ…
『魅力的な人』と『まともな人』はイコールじゃないのがこの世界だし…
横島の撫でる手が気持ち良いなぁ…
子供になったみたいだが、撫でられるのは本当に気持ち良い…
ま、なるようになるさ。
「それが、隠し事?」
「うむ」
「そっすか」
ぎゅーっと抱き締められる。ぐぇ。
男の時とは全然違うよなー、同じ事してても。
裸で抱き合うだけでこんな気持ち良いし。
ま、ケセラセラ。おやすみー
――大丈夫…
ん?
****
「という訳で、講義を始める」
朝の修行を済ませ、組み手他で汗を流し。
外走り回ってたサダソを呼び戻して昼食の準備して。
食べ終わってまったりして。
今ここ、である。
ちなみに馬鹿みたいな格好ではあるが、全員相応の重り付きの服を着ている。
継続は力なりだよ、うむ。
「まず、サダソ。
一昨日のアレは覚えているな?」
「師匠が異様にびびってたというか、ヒソカが凄い顔してた奴っすか?」
「200階クラスの選手は皆アレを使えるし、使えない奴は無理矢理使えるようにさせられる。
別に死んでも構わないという方法でな。アレのせいで、リールベルトとギドはああなった訳だ」
「そうすか…」
わざわざ正座せんでも良いんだが、テーブルの前に正座して、拳を強く握り込むサダソ。
部屋の内装は選手の自由にして良いとの事なので、出来る限り居心地良くさせてもらってるのだ。
「という事は静香ちゃんと俺は使える?」
「お前は使えない。
洗礼、と200階クラスでは読んでいるその行為は大抵、200階クラス最初の試合で行われるから」
激戦だった190階をクリアして、自分の強さ噛みしめてるトコでアレだからな。
正直、纏状態と垂れ流し状態の差だけで、大人と子供、いや子犬と狼より酷い差だ。
「ちょっとやってみせよう」
クリリンのことかぁーっ!
割と分かり易いイメージってのは大事、今はこんな事考えなくても普通に出来るけどね。
「ふぉっ!?」
「?」
横島は逃げ出したり腰が引けたりはしていない。
サダソに至っては感じてもいないか。
「コレに悪魔的な劣情と興味をブレンドするとヒソカのようになる」
「確かに一昨日のに比べると全然違うね」
「? 姐さん何かしてるんすか?」
「手の先を見てろ」
どんっ!
念弾で壁を壊す俺。
壊してから思ったが、これ良いのだろうか?
…まあいいや。
「おお!?」
「何もしていないのに!?」
「見えないだけで、感じないだけでしたんだよ」
サダソは才能ねぇのか、今までの環境が悪かったのか。
思い返せば、ゴンキルは環境的に『気配』とかに敏感にならざるを得ない環境だったな。
自然に絶が出来る程に。
そう思えばサダソが感じられなくても、それはそれで普通かもな。
「で、コレは基本的に誰でも使える。
『念』といい、『オーラ=生命エネルギー』を自在に操る力だ。
誰でも使えるが故にそう簡単には教えてはならない事になっている。
まあ、私は自然に目覚めて使えるようになってしまった口だが」
正直、ネフェルピトー並にいきなり使えてたからなぁ…俺の場合は。
神様が設定でもしてくれてたのかね? あれから一度も接触した事はないが。
「俺でも使えますか?」
「使える。ただし、必要な時間は分からん。
忠夫が一日で出来るようになる事を1年掛けて漸く出来るようになるかも知れない。
逆にサダソが一週間で出来るようになった事を忠夫が半年掛けても出来ないかも知れない」
「才能の差って奴?」
「それだけではないがな。育ってきた環境や今現在の心境、両親の血統などありとあらゆる情報がこの能力を作用する。
だが一番大事なのは強い意志だ、強く想う力ほど早く身につき強力になる」
「で、どうやったら使えるようになるの?」
「『ゆっくり起こす』か『ムリヤリ起こす』か」
「ゆっくり起こしていってね!」
サダソがキョトンとした顔をしてる、分からんわな、こんなネタ。
「ああ、『ゆっくり起こす』ぞ。横島なら一週間かからん。サダソは早くても半年かかるだろうが」
確かズシが半年だったからな。
100万人に独りだっけ、ズシの才能は。
「俺、才能あるの?」
「ある上に、私が『ゆっくり起こす』為に必要な修行をつけていたからな」
「なんか変わった事やったっけ?」
「点・心を1つに集中し、自己を見つめ目標を定める。
修行の合間合間にやってただろう?」
何に『心を一つに集中し』てたかは兎も角、垂れ流しのオーラが日に日に綺麗になって行くのは見て取れたからな。
「今お前は念の存在を知った。今オーラを感じた。
後は自分の身体中を覆っている『オーラを感じ』とり、身体中の細胞にある『精孔=オーラを吹き出す孔を開いていく』事だ」
「『ムリヤリ起こす』起こすのはどうやるんすか?」
「リールベルト達がやられた方法だ。
『オーラを篭めた攻撃で吹っ飛ばす』
未熟な者や悪意ある者がやれば死に至るし、死なないまでもああなる」
ごくり、と唾を飲むサダソ。
「カストロもヒソカに同じように洗礼を受けたが、死にもしなければ障害も持たなかった。
何故か? ヒソカが念能力者として一流であり、殺意も悪意も持ってなかったからだ」
『精孔』を開くだけの勢いで『念を篭めて』殴り、なおかつ『試合続行不可能な程度にダメージを与え重大な身体的障害を発生させなかった』というのは、カストロが達人と言って良い強さを持っていたとしても、割と凄い技術だと思う。
「アレが悪意を持ってないってのは…」
「事実だ。あいつは強くなると感じた存在を、興味を惹かれた人間を殺す事はない。
もっと強くなったその相手と戦いたいからだ。
あいつ流に言えば、『美味しくなるのを待って、熟してから食べる』んだよ」
「うへぇ…」
「逆にリールベルト達がやられたのは、新人潰しという屑どもだ。
念を覚えてない奴、念に慣れていない奴だけを狙って勝ち星を稼ぐ奴らだな。
あいつらは念能力者としても戦士としても二流以下だが、何より悪意に満ちている。
『自分がこうなったんだから、こいつもこうなるべきだ』という悪意にな」
200階クラスで、障害者発生しまくってる一番の原因はこの悪意だろうなぁ。
まあ、人間にキメラアントのような頑丈さを求めるのも酷なんだが。
念能力者としては師が存在しない為、壁にぶち当たり。
戦士としては障害を持ってしまったが為に伸び悩む、障害を持つ以前が強ければ強い程、な。
ろくなもんじゃねーな、よく考えると。
「で、だ。
念の師匠は探してある。一週間ほどでここに来てくれる予定だ」
「静香ちゃんが教えてくれるんじゃないの?」
「忠夫、機械が壊れたらその持ち主の私と、作った忍。
どっちに尋ねる?」
「餅は餅屋ね、りょかー」
「?」
「忍というのは私の義理の姉で機械関係の仕事に就いている」
「ああ、使ってるだけの人より作ってる専門の人に訊けって事ですか」
「そうだ。師匠になってくれる人が到着するまで、今までの修行に加えて点を多く行い、自分の周りを覆うオーラを感じとれるようになってもらう。
一週間で出来るようになるかは分からんが」
ま、これだけなら危険はないし、一番時間かかるトコの一つだからな。
でもオーラ感じるだけなら毎日側で練してやれば、そのうち感じ取れそうな気もするけどどうだろう。
「瞑想だの座禅だのは士郎さんにも散々やらされたし、オッケーオッケー」
とかく欲情に支配されてたからなー、高校の時のこいつは。
精神修養が何より大事なのはどんな武術でも一緒だわ。
「姐さん、俺も?」
「お前もだ。
正直に言って、コレが出来るようにならない限り200階へは絶対に行かさんぞ。
お前の場合、リールベルトやギドから狙われそうだし」
「…そこまでしますか?」
「自分が片腕無くしたり目が見えなくなったり足が動かなくなったりしたら、ただ独り五体満足な友人を妬まずに済むかどうか、座禅しながらよーく考えろ。
弱い心、悪意。そんなモンは誰だって持ってるぞ?」
持ってなかったら新人潰しになんてならないだろうけどな。
俺の言葉に思うところがあったのか、うつむき加減で静まるサダソ。
「あ、横島は指輪を外せ。
実はそれ、『オーラを抑制する機能』を持ってる。所謂大リークボール養成ギブスに近い」
「懐かしいっすね、巨人の星っすか。あの時代の巨人は強かったなー」
ちなみに俺達の世界では普通に巨人の星がいた。
大リーグボール一号ってどう考えても打てないし、そもそもあいつらおかしいよ。
なんで球種が分かったらホームランなんだか、全く。
「あれ、外れない…?」
「『開錠』と呟け。じゃなきゃ外れん」
「あ、『開錠(』? おお、外れた――う?」
「師匠、どうしました?」
別に一緒に修行してるだけなのに師匠なんだよなー、こいつ。
今度来る念の師匠は先生とでも呼ぶんだろうか?
「いや、身体に違和感? よく分からんけど」
「今まで抑制されていたオーラが開放されたからな、断然感じやすくなってるハズだ」
今までのオーラが水道水を一捻りした垂れ流しなら、今は二捻りした程か。
大分オーラが増したな。
よく考えたらこいつ、今までオーラ四割減状態で普通に修行してたんだよな…
…そういえば。
「付けた時、何も感じなかったのか?」
オーラが四割も減れば身体に違和感感じそうなもんだが。
「あー、そういえば何か感じたような気もする。
けどお揃いの指輪で舞い上がってたからなぁ。
静香ちゃんが薬指に填めてくれたのも嬉しかったし」
…顔が紅くなった気がする、全くもう…
「サダソ、付けてみろ――嫌そうな顔するな忠夫、実験だ」
「ぶーぶー」
「すいません師匠――うぇ?!」
付けた途端、顔を変えるサダソ。
ただでさえ、俺や横島の『オーラ四割減状態』の垂れ流し時よりも少ないオーラが更に減った。
うーん、横島や俺はやはり天才とか才能ある方なんだなぁ…サダソがいて初めて実感出来るというのもサダソに悪い話だが。
「ちょっ重っ!?」
指から外そうとして外せず焦るサダソ。
オーラの量が減ったから重りがより重くなったのだ、というか重く感じるのだ。
「『開錠(』と呟いて外せ」
「『開錠(』! っ外れたっ」
と同時にオーラの量も回復、重くもなくなったみたいだな。
念で一番難しいのがオーラを実感する事だと思うんだ。
だって今までそんなの感じた事もないのに、人の身体には未知の力が秘められてるとか言われてもねぇ。
という訳で指輪と重りでオーラが身体に与える影響を実感してもらったが、成功みたいだな。
「オーラの存在が身体に影響する事を実感できたか?
半信半疑だったろう? お前は」
横島に指輪を返すサダソに語りかける。
「…っす! 参りました!」
土下座するサダソ。別に良いんだけどね。
才能ない奴が纏以前の段階で伸び悩むのって、『オーラの実在』が信じられないからなんじゃね?
等と考察してみたり。
まあ才能ないと感じる事すら出来無いみたいだし、それはそれで仕方ないのかも知れんが。
メルエムとか会長とかモラウやシルバ、ヒソカとかイルミとか知ってると、『ハンター』になるなら兎も角、『強くなりたい』なら諦めた方が良くないかなーと、サダソを見て思わんでもないんだが。
割とまっすぐに夢追っかけてるし――天空闘技場の最上階だと――応援してやりたい気持ちもあるんだよ。
難しいもんだ。
「忠夫はとりあえず指輪は外しておけ、オーラを完璧に実感出来るまでな」
「ういっす」
「纏めるぞ。
まず、点を、心を1つに集中し、自己を見つめ目標を定める瞑想・座禅を行い、身体中に溢れ出ているオーラを実感出来るようになる事。
そして実感出来るようになったら精孔と呼ばれるオーラを吹き出す穴を広げて行く。
それが出来てから、次の段階だ」
「次の段階はどんなのっすか?」
「目の前の課題片付けてから言え。
では重りつけたままで点の修行に入る――」
さ、一週間で纏まで行くかなー?
****
ノヴがシングルハンターなのはこの作品のみの設定です。
まあシングルでないと逆におかしい気もしますが。
後シングルハンターとか星基準で見ると強さは本当に関係ないっぽいですよねー。
キューティー=ビューティーとかがモラウと互角の戦いするとか考えると泣けてきそうです。