初戦から2週間経過し、現在180階である。
やはり女性の選手、かつ200階まで上がってくる奴は珍しく、受付や案内係、つまり闘技場の女性職員達から大人気になってしまった俺。
現在170人位200階にいて、女が10人位らしい。
これだけなら大した事ないが、登録だけしてなかなか試合しない人、特に女性はその傾向が強いらしい。
何の為に200階まであがったんだろうか…?
障害持ちになってリハビリ中?
あと200階クラスは別に毎日はやってないらしい。
だからこそ原作のヒソカvsカストロみたいな盛り上がりを見せるらしい、アレは純粋にヒソカ人気もあったんだろうが。
あと、俺が言うのもなんだけど美人が少ない、女性選手には。
漫画じゃないんだから当然だけどなぁ。
自慢げに聞こえるが、多分天空闘技場の女性選手じゃ一番俺が美人だわ、俺の調べた範囲では。
それはそれとして。
戦うのを見るのが好きで強い人が好きという女性職員ばかりなので、割とすぐ職員の女の子達とは仲良くなった、全員ってわけじゃないが。
タイプは違うとは言え、女性職員の人達も美人多いのはなんでだろうな?
選手と付き合ってるのもいるらしい。中には結婚まで行ったって話も。
野蛮人の聖地なんて言うが、金稼げて結婚チャンスまであるなら、そら流行るわな。
ゴンキルはそんなの興味ないだろうから描写されなかったんだろうか?
ちなみに俺の試合の動画はそういう意味で大人気らしいぞ、阿呆ばかりだ。
流出画像・動画はすぐ消されるけどな。
過去の試合の動画に関しては運営から貸し出しもあるけど、人気の試合はやはり順番待ちらしい。
ま、テレビ放映もちゃんとやるから、録画すれば良い話なんだけど。
で、仲良くなった受付や案内のお姉さん方に色々尋ねてみた所。
夢小説とかハンター二次創作のお約束、190階クラスで負けて180階クラスで勝っては駄目っぽい。
一回位なら兎も角、余程上手くやってもペナルティが付くし、最悪二度と参加出来無くなるって脅されてしまった。
計画が崩れ去った音が聞こえた、この瞬間に。
別にGI自体が帰る為に必要と思ってた訳でも、同行で帰れると思ってたわけでもないから、それは良いんだが、手に入らないとなるとなぁ…どうしようかね。
とは言え金は金で必要なので、GIに届かないと知りつつも頑張るしかない。
200階以下の場合、試合の回数自体は原作でのゴンキル初戦のように、午前の試合で無傷かそれに近い状態なら午後もう1試合という感じで、強い奴は一日2回がデフォ。
負け方次第では負けても2試合目がある。
つまり一日一回はファイトマネーが貰える。
基本的にはな。
で、俺と横島は『出来るだけゆーっくりと上がる事』にした。
具体的には飛び級しない。これは選手側の権利として認められている。
不戦勝――つまりバックレも状況次第で許される。ただしクラス自体は下の階に下げられるが。
何回もやると問答無用で一階or二度と参加不可能になる。
で、現在の貯蓄は2億3160万位。
今日のこれからの試合で勝てば3億突破だ。
実は一回、190階クラスで負けてるのだ、無論わざとだが。
一回位ならバレないだろうしね。
自分に賭けるのって有りかなぁ…駄目だろうか?
対戦相手に賭けるんじゃなきゃ許されそうなんだけどな。
でも元の世界じゃ馬の関係者は全部問答無用で駄目だったっけ?
うーむ…。
時間的には今、1997年8月だ。
ゴンに電話して年訊いたりハンター試験受けるのかどうか訊いたりして確認したが、試験自体は1999年の一月のを受けるっぽい。
時間的には1年4ヶ月位は確実に残ってる訳だ。
一年も稼げばGI買えたのにな、等と死んだ子供の年を数えていても仕方ない。
とりあえず、イネさんとミトさん、ゴンにプレゼントでもするか。
天空闘技場饅頭って作った奴誰だ、ジャポン人はどれだけ世界に散らばってるんだよ、ジャポン自体は閉鎖空間なのに。
目論見崩れてテンション下がったが、今は200階行きたくないしなぁ。
200階で戦わないのかとお姉さん方に訊かれたが。
何故かって?
今ヒソカが200階で暴れてるからだよ!
原作だと10勝目がゴンだったような気がするんだが、勝ち星の最初はこの頃から稼いでたらしい。
まあ一回登録だけでもすれば3ヶ月ほど開けられるから、3敗全部不戦勝につぎ込めば9ヶ月は戦わなくて良いし、聞いた話じゃネットからも対戦登録は可能らしいし。
つまり、こないだ俺と戦ってなかったらカストロは多分、今頃200階でボコボコだったんだよ、ヒソカにやられて。
200階到達は実力から言えば当然だろうが俺と横島に一回ずつぶつかったせいもあって、今は180階のご同輩である。
ヒソカとぶつからなくて良かったかどうかは分からんけど、ダブルはなー。
能力としては凄いし独学であれだけ覚えてたのはもっと凄いけど、融通が効く能力じゃないし。
ぶっちゃけレイザーと14人の悪魔の方が遙かに優秀だよな、似たような使い方出来るし。
何にせよこれ、200階行かせない方が死亡フラグ立たなくて良いよな?
今日の横島の180階クラスの相手がカストロ(二回目)なんだが。
神速無しでやらせて勝っても負けても良しと指示するか?
ただなぁ…アイツの手怖ぇよ。
下手な負け方したら腕とか使えなくなっちゃうぞ。
負けなくて良いや。怪我しないように頑張ってもらおう。
怪我と言えば、新人つぶし(原作)の三人は今、リールベルトは横島が、ギドはカストロが吹っ飛ばして150階クラスにいる。
二人はもともと俺らが来た時は100階クラスにいたんだけどね。
150階から上は実力違うし当然かな、あっさり通り抜けた俺が言うと嫌みだが。
神速がある以上、念有りの相手でもぼこぼこにしてポイント稼いで勝てるしね。
ヒソカクラスになると別だが、というか怪我しないように負けるが。
リールベルトに至っては、試合前に俺をナンパして来たせいで横島にボコボコにされたからなぁ。
アレは笑った。
元々キックボクサーかムエタイとかの選手だったっぽいな、構えとか動きとかから見たら。
それで足やられて電気鞭とか泣きたくなる凋落ぶりではある。
ギドは覆面と足が独楽の印象が強すぎて名前訊いても顔見ても分からなかった。
マジで気付かなかった。
気付いたのはサダソとリールベルトと、三人で仲良さげに飯喰ってるトコ見て脳裏に電流が走った時だった。
別に印象薄かったつもりはないんだけどね、どうでも良いキャラではあったが。
なんか補正でもあるのかね、いつの間にか普通に友達になってたけど。
で、サダソである。
弟子入り志願してきた馬鹿。
原作ではどう捻くれたのか、今は大分熱血漢で突っ走る性格だった。
あの後、ホテルまで付いてきて土下座でホテルの前で待ち続けるという無意味に根性発揮したせいで、ホテルの人から俺達が怒られてしまった。
しょうがないので、鍛えるだけの価値がある事を証明して見せろ。
具体的には200階まで到達して、一度辞退しろ。
それが出来たら弟子にしてやると。
これ、200階クラス、そしてフロアマスターとバトルオリンピア目指してる人間には過酷な条件だと思ったんだけど。
快活に頷くと、元気に駆けだして行ったサダソ。
今は160階クラスらしい。
俺の手持ちが今日で3億5000万前後、横島がカストロぶっ飛ばして3億程度。
ちなみに俺らの差額は賭け金によって出るボーナスの差額な、女性選手の方が人気だし、美人だし。
美人は特だよ、うむ。目付きキツいのなんてこんな場所じゃメリットにすらなるしねー。
とは言えサダソの金巻き上げても10億行かないんじゃなぁ…
…弟子からお金取るのは師匠の特権だよね?
実際はどうなんだろ? そういやウィングさん、ズシとかから金取ってるのかなぁ?
ズシの闘技場での稼ぎじゃ喰えない気がするから意外と金持ちなのかも?
ビスケたんの場合はブループラネットで良かったんだろうけどね。
****
そして更に2週間が過ぎた、現在9月の半ばで200階である。
その間、色々あった。
サダソが本当に弟子のようなモノになってしまったのと、お金が二人合わせて、13億位貯まった程度だ。
そう、200階到達したら、俺と横島は一回拒否ったのである。
で、二週目も『ゆーっくり上がった』のだ。
カストロは怒ってたけどなー、そんな事知るか、そんな事よりお金儲けだ。
で、今は200階、一昨日の夕方、準備期間90日もらって、横島と二人のんびり修行しつつサダソの修行をつけてやっている。
サダソも一応一度200階行けたので、拒否らせた。
正直200階到達以前の体力だしね、ハンター世界を漫画として読んでいた人間からすれば、だが。
あ、あと俺にはどうでも良い事だったが、二週間前にカストロが、一週間位前にリールベルトとギドは200階まで上がって、結局洗礼を受けたらしい。
思うところがない訳ではないが、二人には一応サダソを通して一回、直接会って一回警告はしたのだ。
その上で突き進んで自爆したんだからな、俺らが何の痛痒を感じる必要はないのだが、横島はちょっと落ち込んでた。
大した付き合いがあったわけでもないのに、な。そういう甘い所は変わらない、可愛い奴め。
カストロの相手はやはりヒソカだったらしく、自身の強さもあってカストロだけは障害を負わなかった。
こっそり探ってみたが、病院のベッドの上、寝たきりだったが纏は出来るようになってたな。
…ダブルは駄目だよって教えた方が良いのかなぁ…
あとサダソなんかは泣きながら「姐さんの言う通りにしてれば!」と二人に説教したらしいが。
独りだけ無事なのを妬んだのかこないだ見舞い行ったら拒絶されたと凹んでいた。
そんな性根だからそんな目に遭うのだ、全く。
で、そんなサダソは50㎏の重りを付けた服着て走り回ってる。
基礎体力が違い過ぎるんだな、原作の一線級と雑魚は。
その差を埋める為の第一歩だ。
最初そんなの付けて走れる訳ないとか騒いでたが、200㎏付けて横島と組み手してやって走り回って見せてら納得したのか、今は黙々と走り込んでいる。
ちなみに自前で用意させた重りをつけて、だ。何処から買って来たんだろう?
サダソの反応を見ると、割と常識自体は大差ないのかもな、漫画に出てくるような連中の方がおかしいだけで。
ちなみに、今サダソは街のホテルに住んでおり、横島は俺と闘技場の用意した個室に二人で住んでいる。
試合しながら体力付けるのは無理がある、特に190階クラス以下は毎日試合あるし。
200㎏で天空闘技場の非常階段を上から下まで、全力で走り抜ける事が出来るまで試合禁止というルール。
251階991mの階段上り下りは俺と横島も200㎏つけてやったがそんな大変でもなかったけど。
やはりゴン達主人公組や俺と横島は才能があるというか異常らしい。
50㎏付けて走り回るのなんて俺達は一週間もかからなかったが、サダソはまともに走れるようになるだけで二週間はかかったし。
俺達は俺達で木刀とか使って模擬戦とかしまくってる。
横島の奴はどんどん強くなるし。
飛針や鋼糸も、刀捌きも凄い勢いだ。
俺も飛針や鋼糸の扱いは自信あるけどね。
こっそり横島が寝た後に堅を限界までやったりは続けてる。
ついに5時間位出来るようになったぜ。
流石に睡眠時間足らなくなるから、昼寝確保するようにしている。
正直具現化系ならベッドとか枕を作りそうな自分がいる。
睡眠時間を一時間一分にする効果でな。
加えて、毎日という程ではないが、誰に気兼ねなくそういう事出来るようになったから結構な頻度で押し倒してくるバカがいるし。
全く…
いつまでもこっそりという訳にも行くまい。
纏だけでも覚えさせるべきかどうか。
これが今現在、夢にまで見そうな程悩んでる事だ。
生兵法は怪我の元とは言うが、念無しで200階クラスの試合に参加させたり死の元にしかならん。
サダソですら生き残ったんだから横島なら平気だろうが、変な障害もたれたらたまったもんではない。
と言うか、金儲け目的だったんだからもう天空闘技場に用はないんだよな、正直。
ただ強さ自体の底上げはしておかないと色々不味い。
特にGIの為雇われるのにも強さが必要だし、この世界は人の命が安すぎるからな。
よって、暇を見ては何とかか会とか探してるんだけど、見つからない。
クラピーはあんな簡単に見つけたのにな。やはり補正か、主人公だからか。
「とりあえず今日の修行は終了か」
「っすね。シャワー浴びて下降りる?」
「そうだな」
何処で写真撮られるか分からんし、殆ど戦闘服で過ごす日々である。
少なくとも闘技場内ではな。
平気で盗撮する奴いるしな…円で出来る限りそういうのは潰すようにしてるけど。
部屋の中の盗撮器具なんざライキが放電すれば大抵壊れるしな、ザマァ。
ちなみに下とは闘技場周辺の街を指す。
「一緒に入ろ~」
「変な事するなよ」
「変な事ってどんな事っすか!」
「阿呆が」
「いて」
ホントに馬鹿なんだからな、こいつは。
****
「あ、シズカさん、タダオさん」
横島と二人、個室から出てエレベーターへ向かう。
200階ともなればエレベーター無しだと特訓になるよなぁ。
ぷしゅー
ちょうど下りのエレベーターが来ると先客が乗っていた。
「む。テレラか」
女性職員の一人で、主に場内の案内と観客席会場受付などがメインの人。
他にも解説とか場内放送係、天空闘技場内売店などが人目に付く仕事らしい。
審判は危険だから男性職員にしかやらせないんだってさ。
童顔で背の低い、女の子らしい女性だ。
…俺とは正反対だよ、全く。
挨拶もそこそこに、乗り込む。
全長991mのエレベーターだけあって、見晴らしは大変よろしい。
「そういえばヨークシンへは行かないんですか?」
「なにそれ?」
「世界最大のオークションが開催されている街だ」
そういえば、9月だったな、今は。
国境越える行為は面倒だからなぁ…マジで移動用の念作るかなぁ?
ヨークシン行けば、凝でオーラ見て儲けられるし。まあGIには手も届かない額だろうが。
バッテラ? は兎も角、まともに離脱も手に入れられないあの辺のへたれはどうやってこんな金稼いだんだろうかさっぱり分からん。
「へー…ちょっと行ってみたいかも」
横島に金持たせれば稼いできそうな気はするが、身分証明が出来ないんじゃなぁ。
「200階クラスの方は結構出かけてるみたいですよ」
「まあ時間はあるがな…」
移動手段…面倒な制約と誓約で誤魔化せるかなぁ…うーむ。
拳だけならあんな雑魚でも出来るんだし、不可能ではないのは確かだけど。
とは言え折角放出系でメモリに余裕もあるしな…というか感覚的にはどれだけ覚えても不足になる気がしないんだが。
ちーん
「じゃあこれで」
「うむ。仕事頑張ってな」
「じゃーねー」
事務所の方へ向かうテレラに別れを告げると、その足を玄関まで向ける俺達。
「で、どうするの?」
腕を組んで歩きながら、街へ向かう。
流石に最近はそこまであからさまな視線は減ったな、見慣れただけだろうが。
「とりあえず、食材確保だ」
200階クラスの個室となると台所もかなり充実していて大変よろしい。
自炊出来ないとストレス溜まるよ、うむ。
「後はサダソの様子でも見に行ってやるか」
あんな装備付けて走り回れる場所は流石に闘技場内にはないからな。
非常用階段はたまになら兎も角、毎日走ってたら間違いなく文句言われるわ。
よって近くの公園を走ってると言っていた。
走り込み自体は俺も横島もやっているぞ、200㎏付けて毎朝。
正直念無しでフルマラソン1ダース位出来ないとヒソカクラスと勝負にならないんじゃないかと思ってる。
キルアとかどういう筋トレしてたんだろうね。
****
久しぶりにポニーを結んで、ジーンズにTシャツという姿だが公園でお弁当を食べようという事になったのだ。
買った弁当だが、たまにはお外で食べるのもよかろう、横島にしてはナイスな提案だ。
という訳で。
この街で一番でっかい公園の真ん中の時計塔の下のベンチに座ってたんだけど。
荒くれ者どもが集う街にしては緑豊かで良い環境なんだけど。
サダソが走ってるハズなんだけど。
「やあ♠」
……あれれー? おかしいなー?
俺の前に横島やサダソじゃなくて変な死神がいるぞぉ?
「………」
「ツれないなぁ♡ 返事位してくれても良いじゃないか♥」
バササササ…
近くで遠くで、鳥や獣が逃げる音。
「…生憎と待ち合わせ中だ。何処かへ消えてくれ」
なんつーオーラ。
粘液のプールに沈められたかのような粘つき、オーラに温度なんて存在しないのに感じる生ぬるい感覚。
俺を対象に周されてる訳でもないのに全身を嘗め回されてるかのようだ、気持ち悪い。
多分、興味だけだからこの程度なんだろうが…本気で欲情されたらこのオーラがどれほど邪悪に燃え上がるんだか。
これは念無しゴン達が一歩も進めないのも無理ないわ。
とっさに纏しなかったら俺もどうにかなってたかも知れん。
ボールの中でがたがたとライキ達も騒いでる、警告か、或いは俺を守ろうと戦わせろと主張してるのか。
まあ原作読んでれば、こいつはそこまで危険じゃないのは分かるんだけどな。
イルミもそうだが、こいつが気に入らない態度や行動を取らなきゃ別に殺したりしないんだよね。
それも俺が相応の強さを持ってるからだけど。ま、今この場で殺される事だけはない。
よって恐怖と嫌悪は感じても、及び腰になる事はないのだ。
「で、何の用だ?」
というかさりげなくベンチの隣に座るな。
すすすっと出来るだけ距離を取る俺。
流石に間を詰めてくる事はなかった、良かった。
…逃げ出してぇ、キモい。
「君と、恋人のタダオクンだっけ? 興味深くてねェ…♧」
「そうか」
ため息を吐く。
いやもうホントマジ勘弁して欲しい。
俺はこんなイカれた男に欲情する趣味もなきゃ恋人にしようなんて酔狂な事を妄想した事もないんだ。
この世界にもきっといるだろうドリームな人と付き合ってやってくれ、俺の知らないトコでひっそりと。
などと考えても仕方ないのは分かってるんだが。
正直カストロで興味もたれる以上、俺や横島じゃ仕方ないかも知れない。
知れないが嫌だよやっぱり。
「これからデートなんで何処か消えてくれないか、そして二度と会いたくないな」
「くっくっく…♥」
いつ伸縮自在の愛(ひっつけられるかドキドキだぜ、ちっとも楽しくないが。
救いなのは隠で隠そうが何しようが、『飛ばすモーション』が必要という点だな。
腕や足に注目してれば『ついでに飛ばせるモーション』を見逃さずに済む。
変化系は苦手な放出系、だが強化系は比較的得意、刃止剣(で周してやれば斬れる。
こんな街だし、常に武器は携帯してるぜ。
弁当買いに行かせた横島、遅いなあ…でも来ない方が安全かも知らん。
…もしかしてこいつが全方位に向けて発情してるから来られないのか?
原作のゴンキルみたいに。
「とりあえず、そのオーラを収めろ。気持ち悪い」
「酷い言い草だ♣」
わかりづらいが苦笑しつつ、オーラを纏状態まで落ち着かせたヒソカ。
…纏状態でも怖いわやっぱ。
「で、用があるなら早く言え、そして巣にカエレ」
何処に巣を持ってるか知らんけどな。
個人的には根無し草だと思うが。
「特に用という程じゃないさ♥
たまたま街で見かけたから声を掛けようとした、それだけ♣」
「嘘吐け。私たちのせいで有望な選手が上がってこなくなってきたから文句の一つも言いに来たんだろうが」
カストロさえ2週間前に漸く到達だからな、実力的にはもっと早くてもおかしくはなかったんだが。
「それは誤解だ、前々から気にはかけていたのさ♠
で、街で見かけたから声を掛けたというのが本当♦
暫く天空闘技場から離れないと行けないし♣」
旅団活動かね? それともハンター試験か?
9月だからまだ早いか。あ、オークションか?
…毎年旅団に狙われるんじゃやってられないと思うんだが…
「静香ちゃん!」
…もう少しで帰りそうだったのにこいつは…全くなぁ。
「姐さん浮気は駄目ですよ!」
しかもサダソまでいるし。
ちなみにこいつ、17才だってさ。
「誰が浮気か。タチの悪いナンパだ」
「おやおや…確かに彼女は魅力的だけど、そういうつもりはないな♥」
うすら寒くなるような笑みで見られる、嘘吐けと突っ込みたい。
背骨が悪寒で軋む。横島に背中をつつーっとされた時のような、それでいて真逆で強烈な不快感が俺を襲う。
こいつの性欲ってどうなってるのかなぁ?
マチやカルト相手に欲情してたのは確かだけど、殺し合いたいのか犯したいのか、よく分からんのよね。
大分抜けがある原作知識だけじゃ判断しようがないか。
どちらだと言われても納得出来る程、怖えよこれ。
「ふぉっ!?」
こいつ、挑発する為だけに練状態になりやがった。
流石に戦闘慣れしてるだけあって、横島は大きく後ろへ飛び去る。
「サダソは感じないのか?」
「何がすっか?」
念使えなきゃ怖いなんてLvじゃない、ハズなんだが?
んー…感じる事も出来無いLvなのか?
刺激しないよう静かに立ち上がり、横島の前へ立つ俺。
念は精神的要素が多分に影響するが、同時に物理学的要素にも大きく影響されるから、これで風除けと同じ効果が出る訳だ。
多分、念使い本人が人生の中で実感してきた物理学的影響を無意識に念に反映させちゃってるんだろうとは思うんだが。
「な、なんすかこいつ…」
「死神ヒソカ。200階クラスの人気闘士。戦績は2勝無敗。
サダソ、実力差は兎も角、これでまともに立ってられないようなら200階では勝負以前の問題だ。
その結果があの二人だからな」
ま、横島に念を実感させられる機会があったのは良い事だ。
サダソの方は涼しい顔というか、何が起こってるか分かってないな…
どうしたもんか?
最悪、あの二人がサダソを嫉んで襲撃してこないとも限らないのになぁ。
今はリハビリと念の使い方に四苦八苦してるようだが。
円は便利だよ、うむ。鍛えれば唇の動きから何喋ってるかまで何となく分かるようになったし。
「ふぅん…そっちの彼は兎も角、タダオの方は――イイねぇ…♥」
じゅるりとでも音を立てそうな邪悪な笑顔。細められた目は狩人のソレだ。
そして一気に膨れ上がる欲情!
オーラってのはここまで精神状態反映するのか――!
「こ、こいつまさか…!?」
「男も女も関係ないぞ」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
おお、取り乱しとる。
そして俺にしがみつく。人前でくっつくな。
ヒソカのせいで動物はいないけど、人はそれなり?
200階クラスの選手が揃ってるからか、遠巻きにはされてるね、うむ。
しっかし…
元男の俺からすれば、今更男に犯される位なんだという感じだが、普通はこうなるよなー。
最初は俺もこうだったよ、いやここまで取り乱しはしなかったかな?
なんつーか、男はアレだよな、自分に向けられる意に沿わない相手からの性欲に弱いというか。
スーパー銭湯のサウナでケツ触られた位でガチ泣きするからな、こいつも。
とは言え、このオーラの風ごとセクハラされたら、感じる奴なら誰だって取り乱すかも知れん。
…俺が高町静香として生き始めた最初の頃、セクハラしてくるのが横島じゃなかったら男性恐怖症になってたかもね。
「…そうだ」
サダソはよく分からんなりに傍観している、ヒソカの形相には恐怖してるようだが。
正直こういう態度は助かるな。
「ん?」
「情報屋に伝手はないか? 人を探したい」
どうせ喰うなら美味しく育ってから喰った方が良いだろう?
念文字でそんなような事を書くと、ニタァともう身の毛も弥立つ笑顔。
元が美形なんだか普通にしてりゃいいのに。
休みのたびに街を探してみたが、何とか会は見つけられなかったんだよね。
勝って負けて稼ぐ手段もポシャった上にその金で行うハズの第四段階も始まる前に終わりそうだったが。
こいつが教えてくれれば取り返せるかも知れん。
「いいよ、君たちには期待してるからね♠」
何処からか取り出したメモにさらさらとペンを走らすヒソカ。
どうでも良いが練状態辞めろってんだ。横島もサダソも動けやしない。
書き上げたのか、ピっと音を立てて飛ばし――周で覆った刃止剣(で紙の後ろを切ってから、受け止める。
「へぇ…よく分かったね♥」
「ふん…用を済ませたら速く消えろ」
案の定、伸縮自在の愛(を引っ付けてやがった。
凝しなくてもバレバレだっての。
200階クラスでの試合はちゃんと見てるからな、名前は分からなくても――俺は知ってるが――内容は洞察力さえあれば分かるし、ヒソカも隠す気ないしね。
「はいはい…じゃあね♦」
わざとらしくオーラでハートマーク飛ばしてから背中を向ける。
そして漸く、横島が呪縛から復帰した。
「なんすか、アレ…」
身体を起こして、俺の肩を抱くように密着してくる。
人前では辞めろと言ってるんだがあれの後ではな…
「この世界でも最強クラスの殺人狂さ。
俺より強い奴を会いに行く、がモットーだ」
まあ、道着に裸足に鉢巻きの人から比べると大分斜め上だが。
というか人格面から言うと月と鼈だが。
「さて弁当買って来たんだろう? 喰ってしまおう」
「…アレの後でよく食欲あるね…」
横島が呆れつつ、芝生の上に弁当を並べ始めた。
それを横目に、ヒソカのよこしたメモを見る。
千耳会という団体名っぽいのと、個人名がいくつか並んでいて、それぞれ住所が記されていた。
…有り難いが気遣いされればされるほど嫌な気分になるな…
体感したが、実力差がまだまだあるわ、当然だが。
ビスケたんか、ウィングさん、ノヴかモラウ辺り、師匠に出来ると良いんだが、さてさて…
ビスケたんにブループラネットゲットの旅In GIの権利を送って育ててもらおうと思ったんだが、なぁ。
育ててもらえるか以前に師匠として雇えるか不安だ、金銭的な意味で。
そういう意味じゃ他の三人も不安だ…10億程度で足りるかなぁ?
****
200階登録をその日に、拒否ると一階から、二回目拒否ると登録不可能になる。
これ、個人的には、どう考えてもスムーズにゴンキルの精孔開く為の設定だと思うんですよ。
二回目拒否したら云々が特に分からないんですよねー。
ただ、これないとずっと190階のターン! になって200階行けよゴルァ!になるんですが。
しかし買って負けて荒稼ぎ、ハンター二次創作じゃ割とお約束だと思ってましたが、感想欄見ると結構疑問に思ってた人多数だったようですね。
出来ると楽というか、出来ないとGI買う為のお金を別方面から工面しなければならない為、原作沿いだと結構必須なお金が必要ですからね。
まあこっちは原作沿いとかそういうんじゃなく、最後の一言の為だったり。
この時期はまだビスケがブループラネットの情報を得る前という前提です。
そうでない場合、1988年(原作10年前・この作品の現在時間軸は1997年)にバッテラが掛けた本体に170億/クリアデータロムに500億の時からバッテラが行動しているとして、ブループラネットの情報を得たのが1997~1998年頃よりもっと早い時期であるならば、原作よりもっと早い時期に行われたバッテラ大量雇用の一員になってないとおかしいと思うからです。
まあ毎年GIがオークションに賭けられる訳でもなく、毎年手に入る訳でもないから、チャンスを狙って待ってただけなのかも知れませんが。
ゴンキルがヒソヒソのオーラで先進めなくなった時、美人の女性職員さんは平気の平左でしたね。
アレは
1:ヒソカがわざとオーラを当てないようにしてた。
2:才能がない人には感じる事が出来無いのがオーラだから。
ただし無理矢理精孔を開けてしまえばその限りではない。
3:女性職員が凄まじいまでの使い手かつ名女優並の演技力
で、2を僕は推奨しますね。
ピトー以外はあんな人を避けてオーラ飛ばすなんて出来無いみたいですし。
3はねぇ…あの人好きなんですけどね、女性職員の中で一番美人というか好みですw