XXX板で投稿しました18禁版の続きになりますが読んでなくても殆ど影響ないはずです。
2-3→18禁版の一話→2-4ですね、時系列的には。
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「どうするんすか?」
「…黙ってろ」
マジで困った。
よもや空港でこんな足止めを食らうとは…完全に想定外だ。
「よく考えりゃ当然っすよねぇ。
俺ら風来坊も良いとこで、パスポートなんて取れる訳がないんだから」
そう、「飛行船に乗れない」という緊急事態である。
よく考えたら当然だわ、迂闊な話だが。
「…うむ、とりあえず飯でも食べながら考えよう」
「考えてどーにかなるとも思えんけどなぁ」
やれやれと頭を振る横島。
正論だがぶん殴りたい。
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ザバン市に着いた後、最寄りの空港までの電車を調べてから飯を済ませ、ラブホで色々溜まってたモノを吐き出して。
次の日電車を乗り継いで夕方、今ここ――空港である。
なんかいちいち時間かかる割に、乗り物自体の速度とかそんな日本と変わらんのよな。
やはりこの世界は地球より面積が物理的に広いと思わざるを得ない。
まあそんなこんなで早めの夕食である。
空港の飯屋はなんか充実してる事多いからな、困る事はない。
かちゃかちゃとハンバーグを切るナイフと鉄皿の擦れる音。
「密航は却下だな、リスクばかりでメリットがない」
護衛のハンターの一人雇っててもおかしくないしな。
まあ、船や飛行船の護衛程度しか出来ないハンターなら俺が負けるとも思えんが、勝負の問題ではないのだ。
…戸籍も国籍もないんだから犯罪し放題ではあるんだよなぁ…やらねーけど。
「イチローで飛んでくしかないんじゃ?」
キリコに空飛んで運んでもらったシーンは覚えてるからな、不可能ではない。
ただし、向こうはナビゲーター、つまり協会の雇われ職員でその権限を持ってると思われるのに対して俺らはというと、だ。
……ふう。
夢小説の主人公はいいなぁ!
いきなりジンとかヒソカとかクロロとかに出会えて気に入られて!
地に足つけた苦労なんてしなくていいんだもんなぁ!
…嘆いていても仕方ない。
だいたい冷静に考えれば、色々と俺もひどいし…
…尤も、この世界で法律を守る意味があるのか、必要があるのかと言われれば疑問だが。
たん、と一息で飲み干したアイスティーのテーブルに置く俺。
「イチローとロデムに頑張ってもらうしかあるまい。
ただし、準備がいるな」
お空の交通事情の調査である。
イチローで飛んで行ったら墜とされました、じゃ笑えん。
必要なら新しい発も作るしかないし。
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そして再びザバン市である。
時間的にはもう日が沈む頃、繁華街が最も賑わう時間帯。
途中、コンビニで世界地図を確認したが、ここは南アフリコ大陸(仮)で、原作でのゴン達が合格したハンター試験の最終会場があった大陸っぽい。
と言ってもザバン市は南の端に近いのに対して、最終試験場は北、即ちパドキア共和国がある大陸から左下に存在する大陸である。
確か最終試験場があった場所から飛行船で三日とクラピカが言ってたので、ぶっちゃけここからイチローで飛んで行くのは無理がある。
「くじら島しか知らなかったけど、やっぱこっちの世界もそれなりに普通なんだ」
「ま、言葉が通じるのは有りがたかったな。
この世界は世界共通語が存在して、並列するように英語や日本語が存在するみたいだが」
とりあえず開き直って観光中。
と言っても街中をぶらつくだけだが。
金銭的にはラブホで泊まり続けて一ヶ月程度は持つ位の現金がある。
つまり当分金銭的にどうこうする必要はない、余裕があるという程でないにしろ。
「ヌメーレ湿原にビスカ森林公園がこの国ってか、ザバン市の目玉観光地みたいっすね、このガイドによると」
右手だけで器用にガイドを手繰る横島。
左腕は俺の右腕に絡まってるので使えません。
腕組むのは良いんだが、胸がなぁ…むにっと横島の腕に当たるというか押し付けるのがな。
横島は喜ぶし別に嫌じゃないんだが、ただでさえ大きい胸というだけで視先が集まりやすいのに、そういう事してると倍率ドンなのがな…
ま、今更だわ。
「入るのにプロハンターの同行やこの国の職員(多分軍隊関係)の同行やらなきゃいけない場所が観光地とはな」
この世界の金持ちは頭のねじが飛んでるのが多いし、よくある事だろう。
「ハンターの人たちの修行場としても開放してるみたいっすね。
てか広すぎ? この国の半分位その二つなんだけど」
「まあギアナ高地とか、似たようなトコは地球にもあるだろ」
そういやギアナ高地って勝手に入って良い場所なのかどうか。
「入れない場所よりも今夜の宿探しだ」
「昨日のトコで良いんじゃないっすか。安かったしそれなりに設備は良かったし」
「まあ、それで構わんか」
メモってて良かった電話番号。
一応、公衆電話で予約して、と。
携帯? 国籍も住所すら不定の俺らが契約出来るとでも?
…不便過ぎる。ハンター試験前倒しするか?
しかしなぁ…ほぼ確実に合格出来る試験が3年後に存在するのに、無駄に危険に飛び込むのもな…
試験内容知ってるから簡単なのであって、他の年だとキルアが合格した年の試験みたいに簡単にいくとも思えないし。
あれ、ヒソカとかイルミクラスの人間いたらキルアオワタだったよな…運が良いやら。
「お、露天商もこの世界にはあるんだ」
「いちいちこの世界とか言うな、中二病患者みたいだぞ」
実際の所はハンターの殆どが中二病患者みたいなのは秘密だが。
そして特に意味もなく足を止め、ふらふらとシルバーアクセを眺めて見る。
「お、美人のねーちゃん! いらっしゃい」
軽薄そう、かつ薄汚れた感じのするボンバーヘッド、というか汚い天パなおっさんである。
…ん? なんか気になる、な?
ま、品揃えはアレだな、普通。
普通に日本の繁華街でやってる露天のアクセ屋と同じ感じ。
造形や色使いに独特なものもいくつかあるが、それだけだな。
凝して見ても普通に………おい、模様が神字だぞ、彫り込んでやがる。
「記念になんか買う?」
なんつーか、漫画で読んでた横島とは別人の観があるな、当たり前だけど。
ちゃんと気遣い出来るようになったしな、横島は私が育てた。
と、それどころじゃねぇぞ。
「いや、良い。シルバーは手入れが面倒だしな」
ふん、凝に気付いたな、お互い様だが。
ちなみにザバン市に来る前、船に乗ってる最中から纏すらしていない。
ヒソカみたいなのに目を付けられても困るからな。
しかし露天商でそんなん売って大丈夫なのか?
いや、能力者以外には単なる模様でしかないんだろうが。
「そんな事言わずにさぁ、この指輪とか姉ちゃんにはお勧めだぜ?」
俺には、ときたか。
見た目は単なるアラベスクリング、ただし溝その物が神字になっていてびっしりと書き込まれている。
GI編の指輪よりももっと細く、幅は5㎜程か。GI編のは1㎝以上幅があったような気がする。
このおっさんが悪人だった場合、洒落にならないぞ、これは。
原作じゃ神字が使われたのは、天空闘技場での誓いの糸、GI編での指輪辺りがぱっと思いつく。
というか他に思い出せん。
漫画読んでたのが4年前くらいでその間は念能力関係で思い返す程度だったしな…
…ふむ、よほど悪意がない限り、「念を発動出来ない人間」に害を与える効果を神字に持たせるのは難しそうだな。
使いこなせれば便利そうだし、神字についても勉強するつもりでいよう。
「どうお勧めなのだ?」
「似合う」
と言いつつ指輪を小指に通してぷらぷらさせるおっさん――と見せかけて空中にオーラ文字。
『オーラを通常の六割までしか出せなくする効果。簡単に言えば念能力者養成指輪』
「……」
「………」
なんでそんなもん売ってるんだよ、こんな街中で。
嘘付いていない、という保証はない。
ないが、正直魅力的な商品ではある、本当ならば、だが。
「じゃ二つくれ」
「おい」
待てや。
「いいじゃないっすか。
婚約指輪って訳じゃないっすけど、お揃いでさ」
「…はあ、金が余ってる訳じゃないんだがな…」
『非念能力者が付けても平気だろうな?』
横島と組んでいる反対の左腕を、更に横島から見えないよう気を遣いつつ空中で文字を描く。
変化系能力者なら、ゴンの修行の時のように外に出したオーラを変形させまくって文字を書けるんだろうが、俺は放出系だからそれは苦手なのだ。
よって指で文字を描きつつオーラを放出する以外、オーラ文字は書けない、不便だが。
「よっしゃ! 姉ちゃんは美人だしボインだし、大いにまけてやるぜ!」
『それは問題ない。無意識に念能力使ってる奴でもない限り、自覚なしの奴に効果はないぜ』
それならまだ良いが。
つーかボインって。ボインってなに。古いぞ表現が。
「いくらだ?」
『…名前を訊かせてもらおうか?』
「二つで2100ジェニーでどうよ」
『ドゥーンだ、これでもプロハンターなんだぜ?』
…思い出した……おい、こんなトコで何してる、GIの管理者。
「まあその程度なら良いか」
財布からジェニーを出す。
大体2000円ってトコだし、安いと言って良いんじゃないか?
相場なんて知らんがな、シルバーアクセなんて買った事ないし。
「はい、静香ちゃん」
「こんなトコで填めるなバカが」
腕をほどくと抵抗する間もなく、薬指に指輪を填められてしまった。
うおっ! 体感できる程オーラが減った!
そして期待するような横島の目。
やれやれ…
「ほれ」
「いいねぇ、若いってのはよぉ」
ドゥーンに茶化されつつ横島の指にも填めてやる。
…お互い左手の薬指だ文句あるか。
『アンテと呟けば外れるようになるぜ。壊れたりもしねーから安心しな』
それから、ドゥーンのおっさんに礼を言い、横島と腕を組み直してその場を立ち去る。
これ、纏してないとキツいな…街中でする気はないが、意地でも。
見た感じ、垂れ流し状態でも一般人と比べてかなり多い俺だったが、指輪付けてからはほぼ同等か一般人よか少ない位になった。
ヒソカみたいなのに目を付けられる事考えたら僥倖だな。
デザインもあのおっさんが作ったとは思えない程度には良いし。
お揃い、かぁ。
「気に入ったみたいっすね?」
「黙っとけ」
…ま、歩きながら左手を上へ掲げて眺めてたりすれば、な。
その後、ケーキ屋でデザート喰ったり、安売り店でラブホ入ってからの飲み物とツマミを確保したりと、恋人らしくぶらぶらした俺らであった。
あ、ドリーム小説の主人公の皆さん、すいませんでした。
俺も割となんか補正がかかってるみたいです、超が付くほど要らないけど、望んでないけど。
にしてもなんであのくさそーなおっさんなんだ、全く。
まあジンならまだしも、ヒソカやクロロに会いたいとは欠片も思わんけど。
……夢小説とか所謂最低系SSとかだとあのおっさんに弟子入りとかするんだろうか。
普通、縁もゆかりもない相手を弟子にしたりしねーと思うけど。
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そして再びラブホである。
ベッドに腰掛けてバトルポカリを一口。
一息吐いて、左手を翳して指を眺める。
…割と嬉しいらしい、なんか悔しいが。
とりあえず国境超える為の念能力はいくつか候補が出来た、頭の中でだが。
問題は修行時間がない事だな、金もそう長くラブホにいられる程余ってる訳でもない。
しかし今更くじら島へ戻るのもなぁ…
いや、そもそも飛行生物に乗って空路を行くのにパスポートが必要なのか?
頑張って思い出してみて、そういう描写はなかったような…いや、あれだ。
シルバとゼノ、ジン位じゃないか、飛行生物に乗ってたの。
…パスポート何それ美味しいの? だな…
念能力が必要な場合は、横島になんて説明しよう?
正直、試しの門開けられないLvで念を教えたくないんだよな、俺が素人みたいなもんだという点を差し引いても。
ああ、でも文珠作る為にも、どのみち説得は必要か。
「しーずーかーちゃんっ」
「む?!――」
バフォっとラブホのむやみにでかいベッドに押し倒される俺。
考え込むと注意散漫になる癖はなかなか抜けないなぁ…相手が横島だからかも知れないが。
「忠夫、何をする」
「考え過ぎっすよ、静香ちゃんは。
俺ぁ別に強いて戻らなきゃいけないなんて思ってないし」
「それは――ふっ!?!」
この野郎、舌入れてきやがった。
あー、ぬるぬると気持ち良いわ。
なんでこいつ、いちいち上手いんだ俺が筆おろしだった癖に。
最初からキスだけは上手かったなぁ…
てか横島の癖に生意気じゃね?
バカみたいな顔してルシオラに迫って拒否られてた癖に!
いやまあ俺と出会って色々有って大分女慣れしたからだと思うけど。
っていかん、話を逸らされるトコだった。
舌を弄ばれながら強く睨む。
名残惜しげに離れた口からしみじみと横島が喋る。
「そりゃ俺だってなのはちゃん達にもう逢えないのは嫌っすよ?
でも静香ちゃんがいればとりあえず問題ないし。
無理はしないで欲しいってところ?」
「…んっ…痛いぞ、力ゆるめろ」
俺の頭を抱え込むように抱きしめてくる横島。
やべえな、意味もなく安心してしまう。
惚れてるなぁ、なぁ?
「分かった、無理はしない。
だが帰る努力はするし、手伝ってもらうからな」
ふん、と一息吐いて俺も、両腕を横島の背中に回して抱きしめ返す。
一日過ごした男の匂いが良いモノに思えてくる辺り、重傷だわ、全く。
「へーい。それは勿論。
でも一番は静香ちゃんの安全っすよ?」
「ああ」
抱きしめ合ったまま腰のポーチからボールを三つ放り出す。
ぽんぽんぽんと音を立てて俺の仲間が現れた。
「らぁい!」
「メメタぁ」
ライキとロデムが仲間に入れろと飛びついてくるのを上手く避けて横島との間に挟んでやる。
そしてロデムよ、なんか鳴き声変じゃなかったか?
「相変わらず変な触感」
横島の首筋にマフラーのように巻き付くロデム、俺と横島の間でもぞもぞと動くライキ。
そして一人澄ました顔してベッドの脇で丸くなって休んでいるイチロー。
こっそりベッドに出来るだけ寄ってから丸くなってる辺りツンデレかと言わざるを得ない。
一度身体を起こし、ベッドに腰掛けながらイチローの頭を撫でる。
「ちょっと長い距離飛んでもらわざるを得ない。頼む」
「がぁう」
小さく一声鳴くと目を閉じてしまうイチロー。
性格が冷静で昼寝をよくするだけあって基本的には物静かなイチローはあまり鳴かない子だ。
リザードンといえば初代ポケ赤でヒトカゲ選んでタケシ→カスミと苦行を積んだ俺である。
ま、それは兎も角。
マジでどーすっかね。
国籍がないってのは意外とキツいなぁ?
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おまけというか蛇足
「よぉ! 帰ったぜー」
「お帰りなさい、ドゥーンさん」
「今日はよく売れたぜっ! いやあ、あのボインの姉ちゃんに感謝だな!
あの姉ちゃんが買ったからってノリで若い連中が食いついてよぉ」
「はいはい。がらくたが売れて良かったですね」
「がらくたとはなんだ!
精魂込めて念入れて刻んだんだぞ!」
「大した効果でもないでしょうに。
大体、二束三文で売ってどうするんですか全く…」
「いいじゃねぇか。別に儲けようって訳じゃねぇんだし。
大体俺もお前も普通に億万長者だろうよ」
「まあそれはそうですけど。
それよりそんなもの作るヒマあったら掃除の一つもしてください」
「んじゃ疲れたから寝るわ。
いやあ、あの姉ちゃんは強くなるな、才能の固まりのようなオーラしてやがった」
「やれやれ」
G・I管理人、円にて魔法システムを管理する双子以外は結構気軽に外へ気張らしに出て行けるとか何とか。
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富樫先生本気出し過ぎワロタ。
ゴトーが凄まじく犬死になトコ以外は凄い感動と感激の嵐でした、会長選挙編。
とりあえずジンがロクデナシだった事に安心していいやら何やらw
まあゴンも割とあれですけどw