今回は改行の入れ方を少し多めに変えてみました。
読みやすくなってれば良いんですけど、読みにくい場合はおっしゃって下さい。
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ゴンがライキを連れ去ってから、深夜。
風呂からあがって横島に俺のアホみたいに長い髪を乾かせて。
パジャマに着替えて肩を揉ませてからベッドにイン。
異世界に来てまで働かなきゃならないってのはアレだな、割と世知辛いぜ。
ユーノ達がいないから大分時間喰ってしまったが…髪の毛切るかな…降ろすと踵辺りまで届くほど長い俺の髪。
正直戦いが必ずある事が確定しているようなこの世界では邪魔でしかないのは確かだ。
ポニーが普通に出来る程度に切ろうかな。
でもなぁ、腰より下に伸びる黒髪のポニーとか最強過ぎるだろ常識的に考えて。
まあ保留としておこう、とりあえず。
いきなり髪の毛切ったらなのは辺りに怒られてしまうかも知れん。
思えば遠くにきたもんだ。
「はぁぁ、やーらかいなーあったかいなー」
「五月蠅い黙れ」
空き部屋に余裕はあるが――なにせ亡くなられたジンのご両親・ミトさんのご両親、併せて四人分の空き部屋がある――俺の方で一つの部屋で良いと断ったのだ。
どのみち横島の私物は全くない訳だし。
まあ夜も遅いし別に誰がいる訳でもないが、べたべたとしおってからに。
殆ど抱き枕状態だ、全く。
俺の首筋に顔埋めてくるからくすぐったくてかなわん。
シングルサイズだから二人で寝るには密着せざるを得ないから仕方ないんだが。
「今日はやらんぞ」
「分かってますって」
ホントに分かってるのかこいつは。
太ももの間に膝入れて来るな胸を揉むな首筋に顔を埋めるな。
「なんで女の子ってこんな良い匂いがするんすかね」
「黙れ」
全く、恥ずかしくなるような事を。
大体23歳にもなって女の子とか有り得んだろ。
世の中には不惑過ぎて女の子(笑)とか自称する輩もいるらしいが、理解に苦しむわ。
「擽ったい、手を動かすな」
さっきからひっきりなしに身体をまさぐってくる横島の手。
俺も前世じゃ似たような事してたからなぁ…まあ交際始めてから最初の数ヶ月程度は。
結局若い男なんて皆同じという事だろうか。
…まあ未だに女的な恋人としての振る舞いに照れを感じる俺が言うのもなんなんだが。
それにしてもこいつとはもう恋人として数年経過してるんだが、いつまで経っても俺の身体に飽きるという事はないらしい。
別に浮気して欲しいとかそういう意味ではないが、意外ではある。
俺と付き合いだしてから、何故か知らんが普通にモテ始めたんだがな、横島は。
アレか、結婚するとモテるとかそういう事か。
「いい加減寝るぞ」
「ういっす」
まさぐる手が止まり、一際強く俺を抱きしめる横島。
うー…嫌じゃないんだが。嫌じゃないんだがどーもなぁ…照れる。
誰が見てる訳でもないんだが。
「とりあえず、明日以降暫く、ゴンと全力で遊ぶぞ」
「? なんすかそれ」
「やれば分かる」
そう、この世界の人間の理不尽な体力とかな。
一次試験のマラソン、メンチに殴られたデブとかなんで走破できるのか不思議で仕方ないだろ、体格的に考えて。
走破距離80キロは超えてたろうに。
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半年経ちました。
海で遊んだり山で遊んだり森で遊んだり。
酒場での女給や調理の仕事手伝ったり。
ネットで色々と調べたり。
結論から言うとゴンパネェ。
なんだあの体力は。
ライキ達ポケモンと一日中鬼ごっこして平気な顔してるとか有り得ん。こっちには飛行ポケもいるのに。
横島ですら普通に体力負けするとか今までどういう生活だったんだマジで。
予想はしていたが半年前の俺だと勝負にもならかった。
そりゃフルマラソンを完走出来る程度の体力はあるがそんなんじゃ全然足らん。
纏状態で纏してないゴンと互角とかもうね。
元々、垂れ流しとは言えゴンのオーラの量が半端なかったのは確かだが、それにしても凄まじい。
で、円したり色々したりくじら島歩き回って調べて。
この世界の住人の成長率とか、主に肉体的な面での異常さの原因が掴めた気がする。
この世界、植物までうっすらと念を垂れ流していた。
勿論、凝した上で注意して見ないと分からない程だとしても、海鳴市では凝で見ても植物に念があるようには見えなかった以上、有と無の差はかなりでかいハズ。
この世界の植物は念能力を持てる可能性がある、という仮説。
これだと何とか湿原の馬鹿馬鹿しい植物どもの進化も説明つくんだよな、念能力の不可解さ的に。
で、その垂れ流しのオーラを自然に身体に取り込んでいるから、ゴン達のような成長率や筋力と見た目、体力のアンバランスが発生する訳だ、多分。
ミトさんとかが若く見えるのも、イネ婆さんが長生きなのも(もう100超えてるらしい)これが原因じゃないだろうか?
普段生活しているだけで体内に取り込むオーラの量が桁違いなのは間違いない。
更に言えばカイト達があほな数の新種を見つけていたが、これも念による進化の加速が起こっているとしたら、納得出来ない話ではないのだ。あと単純に世界が広い。多分地球の10倍位この星は大きい気がする。じゃなきゃハンターがこれだけ歴史築いていて未だに未発見の古代都市とかが出てくるとか信じられん。
まあもっと驚きなのは半年間、ゴンと付き合って走ったり泳いだりしてたら、普通にゴンと同じ位の体力が付いた事だが。
しかも見た目の筋肉量は殆ど変わってない。
まあ元から腹筋は少しだけど割れてたし太ももなんか筋肉えくぼとか出来てたけどな…流石にボディビルダーほどではないぞ、ボ帝ビルとか微妙過ぎる。
それでも流石女の身体というべきか、横島なんぞ涙流さんばかりに「やーらかいなー!」と喜んで抱きしめたり撫で回したりしていた、というか今もしている。
うーん…不思議だ。見た目の筋肉量と実際の筋力の差がよく解らん。オーラの差だけなのか?
レオリオが試しの門開けた時なんか、見た目殆ど変わってなかったしなぁ。というか見た目の問題ならゴンキルがあれだけ筋力あってあんな細いのはいったい。ビスケ(本性)ならまだ話は分かるが。
やはりこの世界、見た目の筋力量≠実際の筋力なのか。ビスケの例だけじゃ判断出来んなぁ。
体力が付いたと言えば、ポケモン達も体力、というかレベルが随分上がったぞ、具体的にはライキLv143。
技使わずにゴンと対戦、技ありで横島と対戦とかしてたからな、強くなる分には文句ないんだが。
図鑑がバグったのかと思ったが、他のポケモンも似たようなもんだった、つまり全員Lv100越え。
図鑑バグってない、と思う。レベル表示以外は特におかしい所はないし。
流石に現在位置とかはノーデータとしか出なかった。
まあ地図データ突っ込んだら普通のGPS程度には使えるようになったけどな。
何気に凄いぞポケモン図鑑。
そして半年経った今、横島も俺も、ゴンと一日中走り回って汗かいた程度で済む程になった。
横島に未だ念は教えていない、念使えるようになると意識的に纏を解かないと体力が逆につきづらいからな、というのも理由の一つだが、ぶっちゃけて言えば怖いからだ。
言うまでもなく、俺の念能力は我流である。というか気付いたら纏・練が出来てたという気違いっぷり。
しかも今では大分抜け落ちが多い原作漫画の知識を元に、我流で練習しているに過ぎない。
操作系の練習方法なんてさっぱり分からんしな。放出系と強化系はちょっとは覚えてるが。
一応、念でライキや飛針、鋼糸を踊らせたりして操作系の練習(もどき)はしてる。更には周した飛針をラジコンの飛ばしたりな。周した物体を、オーラ維持しつつ身体から切り離すのはコツを掴むまでちょっと悩んだが今では楽勝だ。
まあ、そんな俺が横島を中途半端に育ててしまって、海鳴市に戻れませんでした、戻れる能力を覚えませんでした、では泣くに泣けん。
なので今は横島に教えていない。多分これからも俺が教える事はない。
お金貯めてロリババア辺りを探して師匠になってもらうのだ。
何とか会とかクラピカがそうやって師匠を捜してた、はず、大分怪しいが…
絶対に海鳴市に戻る。
そしてそれ以前の問題として絶対に五体満足な状態で生き残る。
その為にも横島には強くなってもらわねば。
死んだら、多分泣くしな。泣くだけで済まないかも知れん、いやきっと済まない。
この上横島やライキ達を失うとか地獄過ぎる。
よって頑張って強くならないとな…はあ、平和な海鳴が懐かしいよ。
妖怪とか幽霊とか吸血鬼とか色々いたけど平和だったし。
「最近涙もろいっすね?」
「懐郷病だ」
ちょっと涙ぐんでしまった。
昼飯兼夕飯の調達兼仕入れ代わりの釣りの最中である。
横島と二人、丸まって昼寝しているリザードンのイチローを背もたれに、釣り竿を垂らして太公望だ。
もう一匹、メタモンのロデムが俺の腕に絡みついてうにょうにょしている。
ちなみに名前の元ネタはヒ「トカゲのイチロー」とバビル2世である。
「もうそろそろ半年かって感じですからねぇ」
海である。まあ四方を海に囲まれているくじら島では余り泳ぐ事を趣味としている人はいないらしい。
なにげに荒い海だしな、俺たちにとってみれば大した事ないが。
波乗りを楽しんでいるライキとゴンを遠くに見ながら、砂浜に座っている俺たち。
もう3月だがくじら島では別段泳げない程寒くはない。
大分南に位置している島なのか、海鳴市(静岡県太平洋沿岸部地域)の六月相当の気温位だろうか。
俺も横島も、Tシャツにハーフパンツというラフな格好である。
俺の場合は下に水着を着込んでいるけどな。
しかし水着代馬鹿にならんかったなぁ…
ワンピースタイプは論外なスタイルのせいで、ビキニタイプしか選べん。
バストが大きすぎるとこんな事でも悩まなきゃならんのだ、理不尽だ。
ワンピタイプを買うと、胸に合わせると尻がぶかぶかで尻に合わせると胸がきつくて入らないという…ふっ…
ビキニタイプはビキニタイプでお腹が…少し力を入れると割れて恥ずかしいんだが。
男ならむしろ格好良いのになぁ。
「と言いつつ肩を抱くな」
まあこいつはそんな事気にしないんだろうけど。
「いいじゃないっすか。自重して胸もお尻も揉んでないんだし」
「黙れ馬鹿」
ちなみにライキの波乗りは自分のしっぽを巨大化させてボード状にして波に乗っている、ゴンと相乗りだ。
アイアンテールとかの要領だろうか。
ポケスペみたいに身代わりを使って云々ではない。文句がある訳ではないがアレだと波乗りするたびにHP持っていかれる訳で、効率悪いよな…まあ元々水上移動用で、ポケスペのポケモンは1匹たりとも攻撃技としては使用していないけど。
よく考えると大分無理があるよな、バトレボとかで大波呼んで攻撃するが、アレじゃ波乗りというより『津波』と呼ぶ方が相応しいし。
まあどうでも良い事だが…ゲームと違って、そしてポケスペ同様、波乗りは攻撃技にはならんという事だけ分かれば。
ちなみにゴンなら兎も角、俺や横島みたいな大人は相乗り不可能だそうだ、残念。
まあ飛行用のポケモン・リザードンのイチローがいるから概ね問題はないが。
まあそれは兎も角、合計3匹連れている、利便性と好みの妥協点だな。
ゲームの6匹というのはゲーム的な事情だろう、ポケスペではオーキド博士気が上手く説明していたが、それでいてブルーは7匹目を隠し持ってたりしたしな…別にどうこういうつもりはないが。
10匹でも20匹でも連れ歩けばいいじゃないかと思った奴ぁ表出ろ。
オーキド博士の言う事に加えて、余り多いとまずえさ代が馬鹿にならんのだ。
そういう意味でカビゴンとかは不人気だな、強いけど。というか設定的に日本以外だと屠殺されんだろうか。
一日400㎏の食餌ってどう考えても地球環境の敵だと思うんだが…まあ深く考えるのはよそう。
ライチュウだって大分アレだしな、初代は特に。
何より――ペット飼っている奴なら分かるだろうが――あんまり多いと手間がかかる、色々と。
そういう訳で、ポケモンバトルをメインでトレーナーしている奴やジムリーダーを除けば、俺がいた世界じゃ精々2~3匹、一番多いトレーナーが1匹のみだった。例外はバニングス家や月村家などポケモン屋敷にしてる金持ちの家な。
そして俺も3匹飼ってる訳だ。所持してるというと物扱いしてるようで何か嫌。
イチローもライキも体格相応にしか食べないし、ロデムは体格に比べれば確かに食べる方だが、それとて精々ライキ並である。しかしこいつ、リザードンどころかホエルオーにすら変身出来るんだが、どこからその質量をひねり出しているのやら。
「ふぃーっしゅ」
イチローの欠伸と同時に横島の声。
「…何気に卒がないよな、忠夫は」
本日7匹目の魚をバケツに放り込む横島。
俺の方はオケラである。
悔しいので、周を使う。文句は言わさん、バレないだろうけど。
釣り竿と糸と針を周し、釣り竿の弾性を強化、餌の付いた針の部分のオーラを円――イメージ的にはガラス細工の花瓶を作る感じで――で膨らませ海中を探る。そして餌の付いた針を操作して魚の前にちらつかせる。
列記するとなかなか高等技術に見えるから不思議だ。まあ針操って直接魚の口に針を引っかけてもいいんだけどな。
そして程なく1匹目がヒット。
「しかしグロいな」
「まあゴンが食えるって言うんだから食えるんじゃないすか」
まあこの世界の生物は色々おかしいからな、主に見た目が。
富樫ワールドな上、主人公どもも特殊だから仕方ないが、漫画に出てくるような奴らも皆大概考え方がぶっ飛んでたりするしな。
レオリオとかセンリツとか常識的なキャラが本当に少ない作品だったなあ…
前世の俺が死んだのが確か2009年の終わり頃、あれから4年と半年。
今頃連載終了…してなさそうだな、数年経ってるけど。
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「ふむ。こんなもんか」
「十分っすね」
合計30匹も釣れば十分だろう。
ゴンとライキは砂浜で棒倒しをしていた。仲良いなお前ら。
昼頃なのでゴンとライキを呼んで浜辺で焼き魚のみのバーベキューにしよう。
と思ったら森の中から食べられるキノコをいくらかゴンが拾って来た。野生児パネェ。
水着の短パンのみで上も裸なら下も素足でよく森の中走れるもんだ。しかも持ってくるキノコがまた色々ある事。
いやね、自分の世界だったらある程度分けられるよ? 食べられるのと食べられないのと。
だがこの世界のキノコはよく分からんのが多い。
見た目で判断付かないのはキノコの常だとしても、種類が俺らの世界の十倍はあるんじゃなかろうか。
イチローの尻尾の炎を移して起こした焚き火の周りに、俺が内臓を処理した魚を飛針に刺して焼いていく。
キノコも同じように焼く。
飛針は針と言っても普通の菜箸の片方位の大きさはあるからな、問題ない。
「らぁい♪」
塩水被ってるライキに抱きつかれたら死亡しそうなので自重してもらっているが、焚き火の前で楽しそうに身体を揺らしている。
さて、円の出番だ。
根性入れて集中すれば大気の揺らぎや加熱による蛋白質の熱変性すら察知可能になったのだ。
恐らく操作系の特性が円に付加された、というか無意識的に付加する事を望んだのだろう。
こうなると円じゃなくて名前を付けて発にまで高めた方が効率も上がりそうだな…考えておこう。
最終的には血管の拍動や『空気が割れる音』すら聞き分けられそうだ。梁老師の強さは異常。
拳児とか読んでたからそれほど梁老師の強さに違和感がないから困る。ジーザスとか好きだったなぁ。
…ジーザスとか拳児辺りはいそうだけどな、俺の世界なら。
そしてどうでも良いが盲目のキャラで弱い奴っていないよな、普通に考えたら目が見えないって最悪のハンデだと思うが。
特に虚空とか黄泉とか強すぎじゃね。
「シズカ?」
「…ああ、すまん」
つい懐かしさで思索に耽ってしまった。
「イチロー達にも食餌をやらねばな」
「ちょっ!? 尻尾こっち向けるな馬鹿たれ!」
ライキと同じ位横島に懐いているイチローが早速横島を構い始める。
リザードンの平均身長1.7mを大きく上回る2mのイチローである。勿論翼や尻尾を入れれば計測値はもっと伸びるだろう。そんな巨体のトカゲ(或いは竜)が抱きついてくるのである、横島ザマァ。
「メタメタ~」
メタモンの鳴き声だけじゃないが、ポケモンの鳴き声って無茶なのが多い気がするぜ。
ライチュウとかピカチュウはまだしもドサイドンとかエルレイドとか無理があるだろ。
リザードンは比較的怪獣っぽいというかゴジラっぽい鳴き声だが。
まあそれはそれとして、俺の腕に巻き付くように身体を固定して焼けた魚を丸呑みするロデム。
こいつの消化器官ってどうなってんだろうな…バクテリアの類と同じなのだろうか。
「はい、イチロー」
横島に抱きつくイチローに魚をあげるゴン。
対抗するようにライキも、横島の胡座を背もたれにするように座って魚を囓っている。
見た目グロいが旨いなこの魚。秋刀魚を無理矢理深海魚にしたようなデザインなんだが、味はどちらかというと鯖か?
塩振って(と言うか海水を適当にぶっかけた)焼いただけでこれだけ旨いんだから大したもんだ。
まあ俺が円で焼ムラ無しで均一に焼いたというのもあるんだがな。きちんと火の通ったレアは肉でも魚でも旨いものだ。
元々サバイバルには自信がある方だったが、くじら島に来てから相当LV上がったぞ、全く。
「何度喰っても旨いっすねー」
「シズカが焼くとホント美味しいよ!」
「まあな」
「静香ちゃんの料理は世界一やぁ!」
興奮すると中途半端な関西弁が出るよな、こいつは。
「食べたら一泳ぎするか」
「静香ちゃんの水着キター!」
「そんなに嬉しいの?」
「当然!」
「まあ男ってのはこういう馬鹿なもんだと思っておけ」
前世から俺は余りコスプレに萌えるという事はなかったからなぁ、いまいち理解してやれん。
いやまあそれこそ巫女服だとかナース服だとかウェイトレスの制服とか、可愛いのは理解出来るけどさ、それが性欲に直結しないんだ――しなかったんだよな、俺の場合。
しかもこいつは何度も俺の裸を見てるし触ってるハズなんだが…別腹なのか、よく分からんが。
しかしまあなんだ、こいつが俺の身体に飽きる事ってあるのかね。なさそうだが、というより性欲が尽きなさそうだよな、こいつ。女冥利に尽きる、のか? よく分からん。
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「ふぅ、流石に波が荒かったな」
しかしまあ綺麗な海だこと。
海鳴の海も綺麗な方ではあったがここは別天地だな。
素潜りすると綺麗なのからグロいのまで色々な魚がいるわ珊瑚だのよく分からない海草だのと、賑やかな海。
俺も横島も素潜りで5分前後はいけたが、ここへ来て10分近くまで伸びた。
なので酸素ボンベなんぞ無くてもダイビングが楽しめると言うわけだ。
「海中で靡く黒髪…実にイイ!」
「シズカは綺麗だもんね」
「やかましい」
ゴンの場合は下心がないから困る。照れるぞ、全く。
「かーいいなぁもう!」
「抱きつくな馬鹿者」
こいつはこいつで年々歳々遠慮がなくなってくるし。
まあ…そう思いながらも無理に振りほどかない辺り俺も大概だな、全く。
「ほら」
三人で浜辺に上がり、三匹固まって昼寝をしている処へ戻る。
荷物からバスタオルを出して横島に放ってからゴンを抱き寄せて頭を拭いてやる。
「もー自分で出来るってば」
「いいからやらせろ」
見た目に反して意外と柔いんだよな、ゴンの髪。どういう理屈であそこまで立ってるのか不思議だ。
「最近の静香ちゃんは構いたがりっすね」
ベッドでもとか言いそうな横島に全力で殺気飛ばして黙らせつつ。
「よし、終わったぞ」
まあ応急手当みたいなもんだけどな。
そもそも塩水にどっぷり浸かった以上、風呂なりシャワーなりで洗い流さないと色々笑えない。
俺が指示するまでもなくてきぱきと片付けている横島と二匹。
ロデムはなんか横島の腕に巻き付いている。
まあロデムにそんな期待はしていないが。
ゴンも片付けを手伝い始めるのを横目で見つつ俺も髪を拭く。少しでも水気を飛ばさないと頭が重すぎる。
で、適当に首の後ろで結わいて、と。水で濡れた髪をポニーとか重すぎて疲れるんだぜ。
まあポニーテール自体、自己満足の度合いが高い髪型だけどな、普通に重いし肩凝る。
梃子の原理は知っててもなんか理不尽だよな、同じ髪なのに纏め上げる場所と、降ろすか纏め上げるかが変わるだけで重さが変わるってのは。
「静香ちゃん片付け終わったっすよ」
「ああ、分かった」
三匹をボールに戻してポーチに仕舞う。
魚籠と竿、着替えその他の入ったバッグをそれぞれ分担して帰途につく俺たち。
まあ歩いて数分の距離だけどな。
「帰ったらミトさんと少し話し合いだな」
「何かありましたっけ?」
「ああ、そろそろ島を出る時期だ」
体力的にゴンと互角になった上、天空闘技場までの旅費が余裕で貯まったからな。
いつまでもここでのんびりしている訳にもいくまいよ。
まあいきなり天空闘技場じゃなくキルアの実家でバイトしようかなと思ってるが。
あそこで手に入る筋力は今後、どう考えても必要だし。
嫌な現実だが死体慣れもしなきゃならないし、な。今から凄まじく憂鬱だが。
ちなみに俺はそういう意味ではバージンだ。恭也や美由希、横島が殺ったのを見た事は何度かあるが。
横島は嫌だと喚きながらも恭也と美由希に引き摺られて香港やドイツで色々やらされてたからな。
…手を汚したくない、というのは我が儘なんだろうなぁ…
「え、シズカとタダオ、出て行っちゃうの?」
「ああ、私は、家に帰りたいからな。くじら島が嫌いな訳ではないが、な」
「そっか…」
「帰るっつったって帰り方も分かんないすからねぇ。
まあまだ当分先の話っすね~」
足を止めてしまい俺たちから遅れたゴンを、戻って小脇に抱えて来る横島。
「癪だが忠夫の言う通りだ。
まあ、旅に出ると言っても、精々半年か一年ぐらいでくじら島に顔出すさ。
ちょくちょく電話もするしな」
横島の小脇に抱えられたままのゴンの頭をくしゃくしゃと撫でる。
うーん、何故こんな柔らかいのに立つのか。
実写版今日俺の伊藤とか見窄らしかったが、ゴンのは凄まじいな。
「それに、だ。
ハンターになれば出会いと別れの繰り返しだぞ?」
「え? …俺、話したっけ?」
ミトさんがああだからな。
フリークス家でハンター関係の話題は厳禁、という程でもないが喜ばれないのだ。
ミトさん自身ハンター大嫌いと公言してるし。
まあ、そんな事言いつつジンの写真の前で独り酒したりする辺り、ミトさんもなかなかツンデレであるかも知れない。
「姉は何でも知っている」
横島と二人でコンの面倒見てたりな。
俺が近づくと出て来ない辺り腹立たしい。
全く許し難い所行だ、もふもふさせろ。
どうもコン的に俺は許し難い匂いの人間らしい。
まあミトさんも同じようだから人間の雌はダメだという理由なのかもな。
「いつゴンの姉貴になったんすか」
「黙れ」
話の流れを切るな、全く。
「ま、ミトさんの前では言わないから安心しろ」
「ハンター嫌いっすからねー、まあ逃げた旦那が悪いんだけど」
「でも俺は――」
「黙っておけ。ミトさんの思惑は兎も角、なりたいモノになるのが正しいのだ」
「そうそう、諦めなきゃどうにかなるって。
俺も諦めないで良かった!」
「一歩間違えなくてもストーカーレベルだった事は忘れんからな」
まあそれを許してしまう辺り、それこそアレなんだろうけど。
「――うん!」
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デレ杉じゃね? という疑問は封殺します。
ツン期が長かった反動と思ってくださいw