<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.14218の一覧
[0] 【とらハ・多重クロス】高町静香のTS人生【ネタ】[陣](2013/05/02 10:31)
[1] 【ネタ】嫌いな要素を詰め込んでみた実験作【基本とらは】[陣](2012/06/06 21:50)
[2] まだまだ増える地雷要素[陣](2012/11/20 19:19)
[3] 分からないようなマイナーネタ、だがそれが(・∀・)イイ!![陣](2011/03/01 22:00)
[4] 地雷作品なので設定のすりあわせなんて考えません(・∀・)[陣](2011/01/02 01:49)
[5] ( ^ω^ )どうしてこうなった!?[陣](2009/11/29 19:17)
[6] 会話が厨二くさい、でも謝らない(`・ω・´)[陣](2009/11/30 23:04)
[7] 戦闘らしい戦闘は始めてかも?(´・ω・`)難しいね[陣](2009/12/02 21:59)
[8] 可愛いは正義(`・ω・´)[陣](2011/03/01 22:00)
[9] 番外:横島の憂鬱[陣](2010/10/24 22:05)
[10] ららいらーいらいららーいヾ(o゚ω゚o)ノ゛[陣](2009/12/06 21:55)
[11] 三人称注意[陣](2009/12/07 21:59)
[12] だが私は謝らない(`・ω・´)[陣](2009/12/09 20:04)
[13] 名前決めが難しい(´Д`;)[陣](2009/12/11 23:44)
[14] 主人公っぽくない能力やね(´・ω・`)[陣](2011/01/02 02:23)
[15] なんかこう書いてて違和感が…?[陣](2009/12/19 23:03)
[16] かよ子さん大好きです(`・ω・´)[陣](2011/01/02 02:29)
[17] 遅れてごめんなさいなんです(><)[陣](2009/12/30 19:03)
[18] 更新は不定期になります(´・ω・`)元からともいう[陣](2009/12/30 22:12)
[19] 先進まない(´Д`;)[陣](2010/01/07 23:46)
[20] 最長すぎた(´Д`;)[陣](2010/03/07 19:04)
[21] 復活(`・ω・´)復活なのでさらっと短編[陣](2010/03/09 15:15)
[22] 閑話的な感じで[陣](2010/03/16 18:34)
[23] 夕方、なのは帰宅後からスタート(・∀・)[陣](2010/03/25 19:19)
[24] 黒髪ポニーで料理上手でクールな美人お姉さんは好きですか[陣](2010/04/13 23:21)
[25] 俺のターン!ドロー!なんだこのカードは!?(|| ゚Д゚)ガーン!![陣](2010/05/29 23:15)
[26] 遊戯王知らん人は飛ばしても大筋問題ないですたい[陣](2010/09/05 19:10)
[27] 本編的な。暑すぎて死ねる[陣](2010/09/05 19:30)
[28] わたしのアルフは凶暴です(せいてきな意味で[陣](2011/03/01 21:44)
[30] 初代ポケ以外も好きだけど(`・ω・´)世代的に思い入れがね[陣](2011/05/29 20:33)
[31] おーまーたーせーしーまーしーたーすーごーいーやーつー[陣](2012/02/17 09:47)
[32] 「\ルナ!/\トリガー!/」[陣](2012/02/25 10:54)
[33] 原作なにそれ美味しいの?[陣](2012/03/01 19:01)
[34] 先に進まない、先の事なんて考えてないが[陣](2012/03/10 08:40)
[35] 強いられてるんだ!(色々と)[陣](2012/03/16 18:38)
[36] 追投稿と全削除の位置が誤爆しそうで怖い[陣](2012/03/23 19:04)
[37] ○と女のぱぴぷぺぽ~♪[陣](2012/04/18 21:44)
[38] 安藤奈津は洋菓子の専門学校での同級生にすれば良かったかも[陣](2012/05/07 19:43)
[39] 違和感感じてるのは静香だけ[陣](2012/05/18 07:40)
[40] 書きたいモノを完璧に書ける人はプロでも少ないハズ、ハズ……[陣](2012/05/30 10:57)
[41] 横島が爆乳音頭と静香を見比べています。コマンド?[陣](2012/06/08 12:11)
[42] P4Gを買ったがVITAを所持していない[陣](2012/06/16 08:50)
[43] OG2を買ったがPS3がない[陣](2012/12/04 18:18)
[44] 露骨な伏線、こなたは便利[陣](2013/05/02 10:30)
[45] あらすじとキャラ紹介[陣](2010/04/04 15:26)
[46] 番外編:ユーノの休日・その一[陣](2010/07/18 12:28)
[47] 番外編シリーズ2-1[陣](2011/03/01 22:03)
[48] 番外編シリーズ2-2[陣](2011/03/01 22:03)
[49] 番外編シリーズ2-3[陣](2011/04/26 20:51)
[50] 番外編シリーズ2-4[陣](2012/02/21 08:50)
[51] 番外編シリーズ2-5[陣](2012/03/03 17:36)
[52] 番外編シリーズ2-6[陣](2012/03/10 08:44)
[53] 番外編シリーズ2-7[陣](2012/03/20 23:34)
[54] 番外編2-8[陣](2012/03/26 07:37)
[55] 番外編2-9[陣](2012/03/26 07:46)
[56] 番外編シリーズ2-10[陣](2012/04/25 00:47)
[57] 番外編シリーズ2-11[陣](2012/04/25 00:48)
[58] 番外編シリーズ2-12[陣](2012/04/24 08:53)
[59] 番外編シリーズ2-13[陣](2012/05/11 09:09)
[60] 番外編シリーズ2-14[陣](2012/05/21 17:10)
[61] 番外編シリーズ2-15[陣](2012/05/30 10:57)
[62] 番外編シリーズ2-16[陣](2012/06/08 12:08)
[63] 番外編シリーズ2-17[陣](2012/11/21 14:24)
[64] 茶を濁す(`・ω・´) 没作品集[陣](2011/05/29 20:34)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[14218] 横島が爆乳音頭と静香を見比べています。コマンド?
Name: 陣◆cf036c84 ID:7d0b3044 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/06/08 12:11


「はぁぁぁぁ……」

 帰り道、翠屋へ向かう途中で、横島の盛大なため息。

「なんだ、その大仰なため息は」

「これから店行ったらお袋がいるかと思うと……はあああ……」

 まあ気持ちは分からんでもないが。
 貧乏ではあるが気ままな一人暮らしから惚れた女の家に居候という幸運な状態なのだ。
 下手に親に突っつかれてこの状態がご破算になるのが怖いのだろう。
 
 俺としては別にどうでも良い事だが。
 居候の件はもしかして咎められるかも知れん――異性と同棲的な意味で――が、バイトの方は横島の境遇ならしない方がおかしいし、成績だってむしろ上がってるのだ。
 士郎が怖いからである、うちの親父殿は自分が中卒なのを気にしてか、子供達が学業を怠るのを酷く嫌がるのだ。
 原因は隠しているが、原作を知っている俺は今までの士郎の態度や死んだ一族に対する想いからそれを推察している。
 
 簡単に言えば劣等感コンプレックスと家族愛に自縄自縛になってしまったのだろう。
 なにせ自分で言う程ではないがそれでも才能がないとされる父に対して、実の弟不破一臣と義理の弟御神静馬が揃って一族始まって以来の天才と持て囃される程の強さの持ち主だったのだ。
 そして二人とも兄と本気で慕ってくれる、ついでに妹の美沙斗は純情を越えて娘殺そうとする程、静馬に対してヤンデレさんである。
 ゼロ魔のガリア王族じゃないが、これでは少年だった父の心が歪まない方がおかしいのだ。
 そして年が重なるにつれ荒れてついに放浪の旅に出て、紆余曲折して俺と恭也が産まれた。
 こんな人生歩んでれば、子供達の教育に関しては一言言いたくなるのが当然である。
 人間、誰だって自分が犯した失敗は繰り返して欲しくないものだ、それが子供ならなおさら。
 
 中卒といえば母桃子もそうなのだが、アレはイタリアだのフランスだの渡り歩いてきた猛者なので別格だろう。
 
 という訳でなのはが大学までエスカレーターな聖祥に入れたのに、原作じゃ中学で辞めてしまうというアレな事になってさぞがっかりしただろうなぁ。
 ま、うちのなのはにそれはなさそうだが、中学からは女子校になる聖祥には行かないで共学の風中に行くかもな。

「とりあえず先に言っておこう、さらば忠夫」

「ひどっ!?」

 生活環境が改善されて、成績が上がり、バイトという社会活動もまともに初めて、身体も鍛えられている。
 これだけ揃えば、別段余所の家に同居する事自体を文句言う程、頭が固い母親ではないハズだが。
 うちは女性が多いからなぁ。そこだよね、問題は。
 
 割と許容されてるのはなのはに手を出す程倫理観が欠如してる訳でもなければ、桃子に手を出す程無謀でもないからだ。
 むしろなのはとフェイトに関しては恭也が妬く程には仲が良い。
 Wiiとか一緒になって遊んでると精神年齢疑うわ、滅茶苦茶上手くて俺も勝てん。
 関係ないけどレースゲームで身体が動くなのは達が可愛い。
 
 そして美由希の訓練になると考えてるからだろう、父が放置しているのは。
 気配を殺すのが何より上手いのだ、この馬鹿は。
 恭也も横島が来てから気配を察知する能力が確実に上がってる、なんだかんだ言ってシスコンだからな、あいつは。
 どう考えても異常だ、俺達不破の人間から気配隠して行動出来るなんて。
 ま、横島はいざとなるとヘタレるだろうから最悪の心配なんてしなくても良いから俺は気楽だが。
 
「そういえば転校生に告られたらしいな?」

 こないだは俺、今日は横島が呼び出されたのだ。

「嫉妬してくれないのね」

「嫉妬なぞするか。で、断ったのか?」

「んにゃ、断るとか以前にこう……前世がどうのとか幽霊があすたろうがどうの言ってて。
 あ、これは電波だ。
 そう思って、逃げた」
 
「………そうか」

 何らかの形で、原作かそれに近い記憶を持ってるんだろうか?
 横島の周りに男連中以外は見あたらないからチャンスだと思ったのか、単純に会いたかったのか。
 
 しかし初っぱなからそんな出会い方しちゃ駄目だろおキヌちゃん……
 横島も同じような記憶持ちだと思ってしまったんだろうか?
 だが美由希は横島に関してどういう話をしたんだ?
 俺に惚れてる云々は伝えたのかどうか。焦りか?
 
「静香ちゃんには負けるけど、可愛い子だったんすけどねー。
 ああいうのを残念美人っつーんすかねー!
 折角美人に告白されたのになー! 静香ちゃんさえいなきゃ電波でも受けてたけどなー!」
 
 チラっとこちらを見る横島。
 ハっと鼻で笑っておいて呟く。

 明らかにがっくりした風を装う横島を放って歩を早める。

「……そうか」

 知らぬ間に、小さく呟いていた俺。
 残念美人扱い。哀れだ……

「まっ! おっぱいは静香ちゃんの圧勝だったけどねっ!」

「往来で阿呆な事抜かすな」

 ゴンっと鞄を振って、胸に伸びてきた手を払う。
 油断も隙もない奴だな。

「いてっ――今日はアルトリアちゃんと衛宮の奴だっけ」

「ああ」

 うーむ。
 仕事に修行に学業に、全てをそれなり以上にこなしてる横島だが、何言われるのだろうかね?
 セクハラさえなきゃ完璧だがセクハラしないと横島じゃないよなぁ。
 
 
****


「ふへ~~……疲れるっ!」

 厨房の入口と対面になってるバックヤードの入口に寄りかかってペットボトルを煽る横島。
 その表情は確かに気疲れしていた。
 ま、自分の母親が客として来ているとなれば当然か。
 
 翠屋に着くと既に横島百合子――旧姓紅百合子さんが陣取っていた。
 どうも、紅姓時代、つまり伝説のOL時代に護衛をした事があったらしい父と昔語りをしていたのだ。
 当初は横島姓だった事もあって、忠夫の母親が紅百合子である事を父の方は気付かなかったが当然百合子さんは気付いたので、不破ちゃんならとりあえず問題なしと預けたらしい。
 
 当然預かる側として主に母桃子が横島の成績や教師や俺、恭也から聞いた学校での生活、翠屋での仕事ぶりや高町家での態度などそれなりに細かく報告し、横島の給与明細も報告していたそうだ。
 その上で横島大樹の部下にも色々とこちらの事を調べさせて殆ど差異がないと解ったので、このたびナルニア支社の営業成績が爆上げした事の報告を本社に出す為に帰国予定だった大樹にひっついて、わざわざ直接お礼を言いに来た、というのが百合子さんの言い分である。
 聞く限り、少なくともムリヤリ翠屋を辞めさせるだの高町家から引っ張り出すだのはなさそうだ。
 
 筋は通ってるしね。
 どうも母とはメル友で俺の事もそれなりに知っているらしく、見透かすような目で微笑まれた。
 
 こええええ!!
 
 というのがその時の感想である。
 
 とりあえず厨房に引っ込んで、外はアルトリアと横島、美由希で回している。
 夕方なので帰りのOLさん狙いでアルトリアと横島が外で販売しているが、意外とアルトリアが人気なのだ。
 曰く本当に美味しそうに食べた感想を力説してくれるだそうだ。
 
 ま、売れればなんでも良いわ。

「静香、休憩入って良いわよ」

「了解」

 生クリームのボウルにラップを掛けて冷蔵庫へ放る。
 
 狭い廊下に横島と二人でペットボトルを煽った。
 並んで座ると流石に狭いが、なんとか人一人は通れるか。
 
「で、外はアルトリアだけか?」

「騎士の名にかけてとか言ってたよ」

 …何があったんだろうか。

「ま、授業参観じゃないが疲れるわな」

 親の前で働くとか拷問だよね、恥辱系の。
 
「もーね! 声かけてこないだけマシだけど視線がね!」

 思い出すのは原作のガンの飛ばし合いだ。
 神通根を通してバリバリ電撃のようなエフェクトが出てたしな……ありゃ怖い。
 
「まあ頑張れ」

「ひどっ」

 ペットボトルを横島に押し付けて休憩終了。

「お前も休憩終わりだろ」

「ういー……あーもう帰ってくんねぇかなぁ…」

「……今日はうちに泊まる予定なハズだが? 親父さんも来ると仰ってたぞ」

「うえぇぇぇぇ!? 勘弁しろよマジで……」

 頭抱えてしまった横島を放って厨房へ戻る。
 気持ちは分かるが如何ともし難いしねー。
 他人事だし?
 
 いやだってさ、雇い主はうちの両親だし同居認めてたのも両親だし、俺自身は友人程度の同居人だし。
 原作の――こういう言い方もいい加減アレだが、兎も角原作のおキヌちゃんと違って別に秋波出してる訳でもなきゃ美神さんのようにツンツンしてる訳でもないしね、目上の人には礼儀正しくですよ。
 目を付けられるような事はないのだよ。
 

 と思っていた時期が俺にもありました。


****


 どうしてこうなった?!
 暮れ泥む町並みを、商店街を歩く。
 いつものように荷物持ちの横島を連れて、八百屋で野菜を、魚屋で魚を購入し酒屋で家に届けるよう依頼して。
 そう、いつものように行うつもりだった。

「忠夫お兄ちゃんは昔から忠夫お兄ちゃんなんだねー」

「なのは、その言い方はちょっと……」

「いいのよ、昔からあの馬鹿息子は宿六に似て馬鹿ばっかりでねぇ」

「宿六?」

「旦那、夫って意味だよフェイト」

 翠屋でお茶していた制服姿の三人をお供に、晩飯のおかずやら朝食の準備やらの為買い物に出かけた俺。
 勿論、三人が着いてくるのは想定内、百合子さんが着いてくるのが想定外だ!
 
「ユーノ君は物知りね?」

「うん! ユーノ君、色んな事知ってるの!」

「英語喋れるんだよ、凄いよね」

 ……フェイトの外見で喋れない方がおかしいからな、フェイトが悪い訳ではないが。
 
「なんなんすかねー、これ」

 子供達ときゃいきゃい言ってる百合子さんを背中に感じながら、横を歩く横島がぼやく。
 
「知るか」

 ぼやきながら歩いて着いた八百屋の前。

「ラッシャイ! おお、高町んトコのねーちゃんか! 今日は妹さん達も一緒かラッシャイ」

 今日も八百屋さんは元気だね。

「ああ」

 店先に並んだ野菜を一通り見渡す。
 仕方ないが野菜は高いんだよなぁ、うーん。
 春巻き、ロールキャベツ、グリンピースや空豆、エンドウ豆か。
 豆ご飯でも作るかね。
 青物と言いつつ緑なんだよねー、何故か。
 多分色に対する言葉が変遷した結果なんだろうけど。
 
 青と言えば原色の青色してる食い物は日本人にとって基本的に喰う気にもならない色だけど(例:ポーションで炊かれたご飯)アメリカだと『美味しそうな色』らしくて、ショートケーキの色が青、クリームもスポンジも真っ青なケーキとか普通にあるんだよね。
 つーか向こうのケーキはカラフル過ぎて引く。
 逆に『黒』は向こうでは『不味そうな色』らしくて、海苔巻きとかも逆巻きにして見えないようにとかするらしい。
 
 この話を知った時はアメリカ人と飯喰える気がしなくなったもんである。

「今日は菜の花が入ってるぜラッシャイ」

「なのはが?」

「菜の花だよ。黄色い花を咲かせる、食用にもする花」

「わたしの名前は、お母さん達の思い出の、菜の花畑から取ったんだって!」

 行儀良く店先の商品に触らないようにしながらきゃいきゃい騒ぐガキどもと、それを後ろからにこにこ見守っている百合子さん。
 なんだこのプレッシャーは?
 睨み付けられてるでもないんだが、妙に圧迫感感じるぜ……

「ほー、ロマンチックやねぇ、桃子さんには似合うけど」

「うちの親父はなぁ……
 お前達、新しいお母さん欲しくないか?! 欲しいと言ってくれぇ!(棒)
 と私らに泣きついてくる奴だからな」
 
「……対応に困るっすよ」

「ぷっ! 不破ちゃんがそんな事言ったの!? これは良い事聞いたわ」

 うーむ、語尾に草でも生やしそうな勢いで笑われてしまった。
 アルのおっさんに出されたデザートを毒味のつもりで完食しそうになったりな。
 よく考えると割とファンキーな親父だ、SPだの古流剣術の武芸者のくせに。

「新玉葱も美味しいぜラッシャイ」

「そうだな、玉葱とキャベツ、アスパラと菜の花をくれるか」

「静香お姉ちゃん苺食べたいの」

 鞄を持っている反対側の腕にぶら下がるように抱きついてきたなのは。
 ま、可愛いおねだりだし、構わんか。

「では苺も3パックほど頼む」

 苺ジャムでも作りますかね。

「ラッシャイ!」

 なんで魚屋だの八百屋だののおっさんは声がでかいだろうね、全く。
 ぶっとい指の割にてきぱきと包んで纏めていくおっさんを横目に視線をずらす。
 
 やはり見られていた。
 にこりと微笑まれたが、これはいったいなんだろうか?
 俺は美神令子のように虐待混じりの躾けなんぞしてなければ、おキヌちゃんのように横島に懸想している訳でもないのに。
 まあ、悪意も殺意も感じないから問題ないっちゃないが、見られてるってのは神経すり切れるぜ……
 
「ほれ兄ちゃん! 落とすんじゃねーぞラッシャイ」

「落としたら飯抜きだっての」

「おば様の前で笑えない冗談を言うな」

「いいのよ、その程度のお使い出来ないんじゃ、穀潰しだものね?」

「はあ…」

 妙に理解されてるっつーか、受け入れられてるっていうか。
 気に入られるような事はした覚えもない、逆もないが。

「次はお魚屋さーん」

「お魚嫌い……」

「好き嫌いはいけないよフェイト」

 フェイトのは食べられないという意味ではなく死んだ魚の目が怖い的な嫌いなんだが。
 魚捌くの見せて練習させようとしたらご覧の有様だよ。
 食べる分には問題ないらしいけどね。
 こういうのはどうやって慣れさせれば良いんだろうね?
 ユーノに美味しそうに食べさせるか? その上でなのはの作った刺身が食べたいとでも言わすか?
 負けず嫌いだからな、意外と。
 
「なのはちゃんはお魚捌けるのかしら?」

「出来るよ! いっぱい練習したの!」

 事実だが割と骨に身が残る程度ではある。
 小学生3年なんだからそれでも十分凄いとは思うが。

「まあ、凄いわね」

「……あたしも練習する」

「フェイトちゃんも頑張ってね」

 百合子さんに頭を撫でられ、猫のように頬をゆるます二人。
 
 ……解ってるし納得もしてるが、どうしても原作なんてものと比べてしまうからか、あの苛烈なイメージとのギャップが凄い。
 普通に、小さな子供に優しい主婦にしか見えないし。
 
「静香お姉ちゃんは料理上手なんだよ! あたし達の先生なの!」

「うん、静香は料理上手」

「へぇ、どうなの? 忠夫」

「あん? 静香ちゃんの料理は旨いぞ? 少なくともそこらの料理屋なんて相手じゃねー位には」

「毎日やってれば、それなりにですよ」

 野菜を抱えながら歩く横島。
 どうでも良いが、なんか商店街中から注目されてる気がするぞ、自意識過剰か?

 親子連れには見えないハズだ、うちの両親は商店街の顔だし。
 うーむ、百合子さんの意識が俺からちっとも外れねーし、なんだってんだ。
 
 連れ立って歩いて魚屋『魚安』に到着。
 
「ラッシャッーセー! あ、高町の姐さん、よーこそ!」

 いつもながら不思議な店だ、フグが宙に浮かんで客引きしてるんだからな!

「ああ」 

「こんにちは! ハチちゃん!」

 なのは達に挨拶を返すフグを横目に店を眺める。
 
「あら、いらっしゃい、静香ちゃん」

 耳の長い、所謂エルフ耳の奥さんが声を掛けてくる。
 気にしたら負けだ負け。

「店長の奴はいないのか?」

「へい、奧でマグロ捌いてまさぁ」

 フグが喋る事に誰も、商店街の誰も気にしないという理不尽!
 今更だけどな!
 百合子さんも気にしないで店の中を眺めているし。
 日本の魚を見るのは久しぶりとの事、然もありなん。
 
「そうか。今日は何が入ってるんだ?」

 喰いたい物が特にないなら店の人間に訊くのが一番だからな。
 面倒臭くないし。
 何喰いたい? という質問に何でも良いと答える奴は皆死ねば良いと思うよ。

「今日は大将が奮発してマグロのでかいの買い付けてきやしたから、それが一番でげす」

「マグロ、良いわねぇ」

 ふむ、ナルジェリアだったか。
 そっちで海産物は食えないんだろうか?
 
「ではマグロの中落ちと、中トロ、赤身を適当に見繕ってくれ。
 ふむ、カブトは買えるか?」

「売れやすけどいーんでやんすか? 負けるのも限度あるでげすよ?」

「構わん」

「なるほど、静香ちゃんは口が悪いわね」

「そうなの! 直すよう注意してるんだけどなかなか直らないの!」

「口調ってのはなかなか直るもんじゃないし、静香さんも敬語の時は普通に話せてるんだから気にする事はないと思うけどね」

「ああじゃなきゃ静香ちゃんじゃねーし」

「ふむ」

「おば様も何か買われますか?」

「いいわよ。お土産はうちの宿六が用意してるでしょうし」

「では。ハチ、さっきのと鯛を一匹くれ」

「大盤振る舞いっすねー」

 横島の呆れた声。
 
「お前のご両親の事だろうが」

「あらあら、そんな気を遣わなくても良いのに」

「いえ、滅多に出来ない帰国ならば、おば様には美味しい物を食べて欲しいですから」

 これは本当。
 少なくとも俺は無理だしな、ネットどころか水道すらあるか怪しいような場所へ行く、しかも連れ合いの為に。
 今の俺には出来る気がしない。
 まあ今の俺は色恋だの結婚だのというのは遠いイメージしか持てないからかも知れんが。

「あら、良い子ね」

「もうすぐ二十歳ですが……」

「私からしてみたら子供でしょう?」

 くっ、なんだこの溢れんばかりの余裕は。
 というか何で俺がプレッシャー感じなきゃならんのだ!
 
 まてまて、落ち着け。
 今までの俺の対応は何も間違ってない、最悪でも無礼ではないハズ。

「はい、おまけにシャコ入れておいたわ」

「すまんな」

「…ふむ」

 エルフの奥さんから魚の包みを受け取り横島に渡す。
 一抱えもあるそれを軽く持ってバランスも崩れない横島の姿に百合子が眉を上げた事に誰も気付かない。

「横島さん、手伝います」

「忠夫お兄ちゃん手伝ってあげるね」

「ちょっと重いね」

 それぞれ野菜や魚をコンビニ袋のようなものを分けてもらって、横島から荷物を奪い始めた。

「良い子達ね」

「自慢の妹達ですから」

 これは本当。
 正直賢すぎるだろってのはあるが、概ね問題ない程度に自慢の妹達である。

「解ってると思うけど、シャコはさっさと食べるか茹でるかしてね」

「ああ、ありがとう」

「ありがとーございましたっ」

 ガキどももお礼を言って、帰路へ着く。

「今日は宴会だねー」

「うん、ご馳走楽しみだね」

「あ、静香さん、湯霜作りって作れますか?」

「前作ってなかったか? あと肉は良いんすか?」

「鴨肉が冷蔵庫に突っ込んであるハズだからそれを使うさ」

「かもなんばーん!」

「オレンジソースがけー」

「僕はコンフュが良いですね」

「贅沢言ってんじゃねーや」

「鍋とかの方が良いだろ、人数多いしな」

「お鍋っ!」

 多人数で喰う事が前提な鍋はなのはの好物の一つだ。
 一歩引いて見守ってるのか監視してるのか、百合子さんの意識を感じながら夕暮れの町を帰る俺達であった。
 

****


 小さめに丸めて葱も混ぜ込んだ鴨のつくね、その上から海苔で包み鴨蕎苔団子完成。
 鴨肉自体に濃い目に下味も付けてるので普通におかずにも肴にもなる。
 こういう創作料理とも言えない小料理は良いなぁ、心が洗われるぜ。
 
 鯛やらマグロやらを片端から永霊刀で斬り飛ばし刺身に汁物に煮物に焼き物にと作りまくると、味に感動した大樹が勢いこんで口説いてきたのだが、うちの父と百合子さんと横島に吹っ飛ばされた。
 酒入ってたから自制心飛んだかね? それとも持ちネタのつもりか?
 年下趣味のなかった俺からしてみれば、40にもなって女子高生とか手を出す気持ちが分からんのだがなぁ。

 まあ料理自体は百合子さんにも大好評だったので良しとする。
 残った食材をヅケにしたり汁物に放り込んだりして、後片付けをして。
 横島と美由希に洗い物を任せて一休みである。

「あの、おば様、プリン作ったの」

「あら、フェイトちゃん凄いわねぇ」

「むー! なのはも手伝ったのにその言い方は駄目ー!」

「まあまあ。ほら、速く食べよう?」

「なのは、お父さんになのはの作ったプリンを食べさせてくれ!」

「良いですなー娘さんというものは! 母さんうちも頑張るk――ぐべらっ!?」

「あ・な・た? 子供の前で何を言うのかしら?」

 カオスだ。

「……親同士の仲が良いのは良い事だな?」

「まあ仲が良い割に弟とか妹は出来なかったみたいっすけどね」

「うちも不思議よね、なのはの後に一人二人生まれてもおかしくないのに」

 洗い物しながら器用にセクハラしようとする横島と身のこなしだけで躱し続ける美由希。
 馬鹿らしい事に割と高等技術の連発だ、する方も避けてる方も。
 洗い物が終わればぶっ飛ばされるんだろうけどな。
 
「そうだな、弟欲しかったな?」

「ユーノが来てくれてホント嬉しいよね」

「可愛がり過ぎちゃうん?」

「横島先輩だってなのはとフェイトちゃん構い過ぎだと思うけど?」

「そうかぁ?」

「こいつは中身が子供だからな、子供に好かれるのさ」

「ひどっ!」

「父さん、持って来たぞ」

「おお! ではくれな――もとい、百合子さん、大樹さん、これから忠夫君の修行の様子をお見せしましょう」

 何処からかDVDを持って来た恭也とビデオデッキの前でガチャガチャしている親父。
 どうでも良いがいつまで名称は『ビデオデッキ』なんだろうな?
 まあ親父の世代にしてみればいつまで経っても『ファミコン』なのと同じなんだろうが。
 
「……いつの間に撮ったん?」

 洗い物を終えて、俺が座ってるソファーに腰掛けてくる横島。

「なのはの魔法」

 もはや戦闘とは無縁の所でチート成長しているうちの妹である。
 フェイトも家電製品を手から出す電気を信号レベルまで出力絞り、スイッチ類に触れずに操作するとか凄いんだか凄くないんだかよく解らん事して遊んでるし。

「いつの間に……」

「一度術式を組んで魔力流した後ならレイハが自動操縦出来るらしいからな、ビットだかファンネルだかは」

 それなりに大きな液晶プラズマテレビの前のテーブルを囲むように座る大人達と子供達。
 それを離れた台所のテーブルに座って眺める高校生組。
 
「忠夫、珈琲淹れてくれ」

「俺も頼む」「私も御願いね」

「うい」

 暗いハズの夜中の訓練、或いは早朝の訓練を基本的には恭也を写し、その後横島を写す形で画面が流れていく。
 これは実力差を比較する事によって、時間が経つにすれそれなりに横島が成長しているのを分かり易くする為だろう、ユーノの入れ知恵かな?
 横島の淹れた珈琲を飲みながら俺達もテレビを見続ける。
 恭也や美由希も比較対象として写されるが、改めて横島と比較される事によって気付く事もあるのか予想よりも真剣に見ていた。
 
 興味がないのが俺と横島である。
 今更自分の稽古姿見ても恥ずかしいだけなのだろう、だからお前は阿呆なのだと言わざるを得ないが。
 
 看取り稽古ってのは自分の姿見ても十分有用なのだ、馬鹿め。
 勿論俺は強さなんぞ興味ないので、どうでも良い訳だが。
 
 フェイトの所から寄ってきたアルフを抱え、子犬アルフをもふもふしつつ珈琲を啜る。
 新種のポケモンですと強弁出来そうだが喋らせなければ良い事である。もふもふ。
 そもそも魔法を隠す必要があるかあやしい気もするが、隠すことに意味はあるのだろうもふもふ。

 魔法と言えば管理局来ないなとこないだユーノに聞いたら来る訳ないですと言われた。
『次元震一つ起きてない管理外世界にどうしてアースラが立ち寄らなきゃならないんですか?』
 だそうだ。巡回ルートではあるがとっくに通り過ぎたらしい。
 ついでにジュエルシードはプレシア名義で担当部署に送り返したそうだ。
 
 そもそもなんで地球にばらまかれたのか訊いたら嫌そうに顔を歪めながらも答えてくれた。
 部族内の嫉妬と権力争いの結果だそうだ。
 前回より10割増しで優秀なユーノは今回の人生ではジュエルシードが初仕事ではなく、次期長老の試験的な発掘だったらしい。
 また前回の人生では友人だったり良き隣人だった人が敵意を見せられたりと、二度目の人生、なのはに出会うまでは割とさんざんな人生だったようだ、主に人間関係的な意味で。
 なのはを巻き込みたくないという叫びは、一方でなのはにも嫌われたらどうしようという恐怖だったようだ。
 まあレイハさんが台無しにしてくれたが。
 ついでに嫌われるどころか凄いラブラブだし。
 
 前世の記憶を持ってるというのも楽ではないなという話だな、全く。

「くぅん」

 五月蠅いと言わんばかりの不満げな声で鳴かれたもふもふ。
 耳の裏や尻尾の付け根を強めにもふもふ。
 人間状態で毎日風呂へ入ってるからか匂いからして野生のとは違うもふもふをもふもふ。
 骨っこを囓ってるアルフをもふもふ。

 もふもふしながらぼーっと横島達の修行風景を見ていると、割と死にそうな目に遭うシーンでも大笑いする大樹さんに眉一つ動かさず注視している百合子さん。
 殺気は出てないし不快感は観て取れないんだが、どんな気持ちで見てるのかねぇもふもふ。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.026655197143555