「旨すぎる…」
「はぐはぐはぐはぐ――うめぇ!」
二度揚げカツ丼旨すぎだろ常識的に考えて。
「止まれバカ」
横島が喰ってるのはリンゴのオムライス――つまり陽太の料理で、俺が喰ってるのが隆夫氏の料理である。
下町の包宰が生きていたっつーのも驚いたが、陽一がまた旅に出てたのには呆れたな、今度は嫁さんと一緒らしいが。
…俺の朧気になってきた記憶じゃ味王トーナメントの途中だったからなぁ、味っ子Ⅱ。
「う?」
「ほれ」
一切れ、俺のカツを皿の端に乗せてやる。
「何これうめぇ! さくさく感パネェ!」
二度揚げ、しかも時間をそれなりにかけてるからか、衣のサクサク感が無くならないんだよ、これ。
これだけでも旨いのに、肉が厚くて豚のくせに柔らかくてなぁ。
ちょっと考え込む仕草してから、オムライスの乗せたスプーンを差し出してくる横島。
を無視して腕を伸ばし、直接皿から横島のオムライスを一口戴く俺。
「うむ、旨いな」
箸で喰うオムライスというのも違和感あるな、日本人だけだろうが。
「シドイ!」
「黙れ」
泣くな鬱陶しい。
リンゴに浸けた鶏肉なんて甘くなりそうだがそうでもないんだなぁ、てか旨ぇ。
「焼き肉定食上がりっ!」
「はーい!」
戦場だよなぁ、昼飯時の定食屋なんて。
うちの喫茶店も似たような感じだが、客層は大いに違うな。
定食屋だけあって、つなぎ着た如何にも工場で働いてますなおっさんや法被着た大工っぽいじいさんやら、全体的におっさんばっかだ。
うちは若い兄ちゃん姉ちゃんがメインだし、この雰囲気は久しぶりだよなぁ。
前はよく定食屋巡りしたもんだ、昼休みにな。
「ビール入りまーす」
しかし法子おばあちゃんも若ぇなおい。
厨房の旦那と一緒にまめまめしく働いちゃってさあ。
アニメ版の丸井のおっちゃんとのラブストーリーはやはりこの世界じゃなかったんだろうか。
いつの間に生き返ったんだろうか、それともこの世界じゃ最初から死んでなかったのか…
まあ他人の家庭事情に首突っ込む気はないけどさ。
「陽太ちゃん餃子頼むわ-」
てげぇ声で直接注文するおっさん、なんか良い雰囲気だよなぁ、如何にも下町って感じで。
つか陽太の嫁さんってアレか? ネギ農家の子だっけ? 黒髪だし。
陽太が赤ん坊背負いつつ料理してるのがなんか良いな。
…陽太も俺と大して変わらん年頃に見えるんだが、まあ大した事ではないか。
それよりアンナはやはり現地妻なんだろうか、フラれた?
普通に考えたらあんな炸裂弾のような外国人よか大和撫子選ぶか。
単純に過ごした時間の長さかも知れんけどな。
むしろ陽一だわ、父親として最低だろ、いろんな意味で。
孫が生まれたってーのに放浪中……
いや他人の家の事情だから突っ込まないけどね、人としてどうなのそれは。
「ふう、馳走さん」
「ご馳走様」
俺も横島も食べ終わる。
いやマジで旨かった。
これはうちに帰ったら作ってみるしかねーだろ位には。
レシピくれって言ったらくれねぇかな。
…昼飯時にそんな事頼まれたら頭に来るだろうし辞めておくか。
まあ概要は覚えてるから何度か試行錯誤すれば作れるだろ。
「流石は日の出食堂ってトコか」
「有名なんすか?」
「次の味皇候補の生家だからな」
「ふーん」
まあ料理人でもなきゃ興味ないかもな。
俺としてはあの旨いぞーがどういう風になるのか、実物を一度見てみたいもんだが。
****
お代を置いて外へ出ると日が高い。
つーか暑い、五月だってのになぁ。
「次は何処へ行くんすか?」
「スカイツリー見に行くぞ」
ちょうど家と家の隙間からスカイツリーが見える。
開場はまだ先らしいが、外見は殆ど完成してるからな、とりあえず見ておこう。
余談だがバトルフロンティアも併設されるらしいぞ、中か外かは知らんが。
「さらば東京タワーってトコっすかね」
「まあ観光客の流れは変わるだろうな、多少は」
東京タワーといえばレイアース。光ちゃんマジ天使。
味皇料理会ビルも見てみたい気はするが、どうするかねぇ。
腹ごなしにてくてくと歩く歩く。
なんというか、下町特有の雑多な感じが良いよなぁ。
なんと言っても東京は人が多いわ。
海鳴も地方都市としては大分栄えてる方だが、やはり東京と比べるとな。
コンビニがいっぱいあると無意味に嬉しい。
「なのはちゃん達は動物園っすよね」
「ちょくちょくメールが来てるぞ」
パンダ可愛い
フェレットさんもいた
ウサギって結構重い、でも可愛い
全体的になんか臭う。
etc
おまえは俺の彼氏か彼女かという位にはちょくちょくメールが来る。
なのはだけでなくフェイトからもな。
勿論、ウサギを抱っこした写真や象を背景に撮った写真やらと一緒に送られてくる。
「今度は水族館とか行きたがるんじゃ?」
「海鳴帰ったら魔法で海に潜ってこい、じゃダメだろうか」
「ダメっしょ」
「ダメか」
水系のポケモンも欲しいな。
ちょこちょこラッタっぽいのが走ってるような気がするのは目の錯覚だろうか。
まあ空にはピジョットとか飛んでる訳ですが。
個人的には草むらから鳥ポケモンが出てくるのはどうかと思う。
後、普通は気絶させてから捕獲だよね、気絶させられるなら。
あ? この世界じゃ普通にバトル無しで説得してゲット出来るぞ、ライキの時みたいに。
むしろそうするのが普通っぽい。いやだって、ポケモンって動物的ではあるが凄く頭良いし。
「水族館行ったらマグロ見て旨そうと思う」
「烏賊とか海老とか、普通に食えるの泳いでますからねー」
そーいや昔サンシャインの水族館でイルカに触らせてもらったなぁ。
ゴムみたいな手触りだった。
「そーいや静香ちゃんのメールは顔文字多いっすね」
「絵文字は嫌いだからな」
機種依存だしね、絵文字は。
(`・ω・´)は至高、(´・ω・`)は究極、キタ━(゚∀゚)━!は黄金体験、異論は認めるが反論は許さない。
「ギャップ萌えだったなぁ、最初に静香ちゃんからメールもらった時は」
「悪かったな似合わなくて」
「\シズカチャン!/\カワイイ!/」
なんだそれは。
「阿呆」
よし、今度は水族館に行こう、とメールした。
しかし子供がそうなのかなのはがそうなのか、こっちの返事待たずにがんがん来るからなぁ。
…ユーノも大変だな、全く。
「おお、工事現場」
「珍しいもんでもない――いや珍しいな」
カイリキー一族を始めとした力自慢的ポケモンが働いてる。
重機の類も動かしてるが人力が必要な部分の半分以上ポケモンが肩代わりしてるな。
「自分の家の近所でもなきゃ工事現場なんて見られるもんじゃないっすからねぇ」
そう、重機+ポケモンパワーのおかげで、この世界の工期はかなり短い。
気づくと新築に変わってましたみたいな事がよくあるのだ。
建設スピードもそうだが破壊スピードも凄まじいのだ。
その重機自体もよく解らん新技術でパワーが凄い。
月村重工だのネルガル重工だのセベクだのが篠原重工だのとそりゃ新技術のバーゲンセールにもなるわ。
なんでまだコロニー作ってないの? というかよく平和だよな、この世界と言わざるを得ない。
「行くぞ」
「ういーす」
PiPiPiPi…
「む」
「メールっすか」
「ああ、母からだ。
…なのはと別行動取るとは何事だとお叱りだな」
誰がデートを優先させただ。
させられたんだよバーロー。
まあ本気で怒ってる類ではないが。
一応アルフもいるしな。
「ユーノがいるから大丈夫だ、心配ない、と…」
「静香ちゃんはユーノ贔屓っすよねぇ」
視線を移すと、アレだな。
西条とか大樹とかが絡んだ時の顔っぽい。
…10近く年下のガキ相手だぞ、全く。
まあ中身は俺と同じで30、40代に近いかも知れんが。
「…弟はいなかったからな、私には」
「まあそうーっすけど」
分かりやすい表情しやがって、なぁ。
喜怒哀楽が分かりやすいのは長所かね、短所かね。
「…俺の何処が良いんだろうな?」
「? なんか言った?」
「何でもない」
まあ客観的に見てキツい印象はあるが顔は美形だし、スタイルはグラビアモデルかAV女優かってLvなのは否定せん。
家の事は料理も含めて家事一切切り回してるし、客観的に見て働き者だよな、うん。
あれ? エロゲーのヒロイン並の良属性持ちじゃね?
性格がキツい位か、つーか口が悪い。基本的に男っぽい話し方だし。
うん、人によるけどご褒美ですね、分かります。
うーん、横島が惚れても仕方ない、のか?
いやいやいや。だからって俺が応じる理由もないし。
いや嫌いじゃないけどね、嫌いじゃないけど、男と付き合うなんて考えたくないし。
…誰に言い訳してるんだ俺は。
****
スカイツリーはあの左右非対称が年寄り受け悪いんだろうな。
近くに流れてる川に掛かってる橋のいくつかは絶好の撮影スポットらしく、渡るのに苦労する程だった。
「まあ中に入れないならそれだけの話っすけどね」
写真も一応撮って、その辺りをぷらぷらして。
「押上から錦糸町経由で秋葉行くぞ」
「メイドさんっすね」
「月村の家やアリサの家で見てるだろうに、本物を」
「ノエルさんやファリンちゃんは兎も角なー」
うん、40代とか多いからな、アリサの方は。
鮫島のじーさんも大分年寄りだし。
「なのはちゃん達はまだ動物園っすか?」
「ああ。パンダがお気に入りらしいな」
「アルフみたいな獣耳っ子は好きだけどなぁ」
「アルフにも春が来たからなぁ」
やっぱ良いよなぁ、東京。
久しぶりに歩くから懐かしくて仕方ない。
よく分からん地名とかあるけどな。なんだ、CLAMP学園駅って。
…そーいや1999年はとうに過ぎたがXはどうなったんだろうか。
懐かしいなぁ、レイアースの光とか大好きだったなぁ、後サクラのレニ。
「気が変わった、東京タワー行くぞ」
光ちゃんランドにいけるかも知れん。
CLAMPと言えば東京タワーだよな。
「えー?」
「メイド服位帰ったら着てやる」
「さあ今すぐ東京タワーでダイブ!」
見せてやるとは言ってないからな。
想えば東京住んでたのに東京タワーは一回も行ったことなかったしな!
ちょっとテンション上がってきたぜ。
「押上からだと大門まで一本だから楽だな」
「…静香ちゃんやけに東京の路線詳しいな?」
「勉強したからな。
翠屋2号店は東京に私が出す」
新宿とか絶対嫌(変態スナイパーとかいそう)だが、それなりに人が多くて電車でも車でも便利な場所が良いなー。
夢がひろがりんぐって奴だな、うむ。
「お供します!」
「別に要らんけど」
「ひどっ!」
元気だなぁ、全く。
がたんごとん…がたんごとん…
地下鉄に乗るのも久しぶりだぜ。
うーん、懐かしい。満員電車が我が人生だったからなぁ。
「満員電車でなくて助かったな」
「静香ちゃんに痴漢する奴ぁ殺す! 俺のじゃ!」
「別におまえのでもないが」
時間帯的には座れる程度には空いてて当然なのだが。
まー視線が集まる事集まる事。
仕方ないけどな、俺だって男だった頃なら間違いなくガン見するわ、こんな美人でおっぱいな女いたら。
だからって見られたい訳じゃないが…どうしようもないしなぁ、これは。
む?
「東京だとあんまり人から見られなくて良いね、だと」
「あー、東京は普通に外人歩いてっから。
うちは学校だと結構外国人教師とか留学生とかいるけど、街中だとそうでもないし」
勘違いしてはいけない、俺の周りで金髪率が高いからといって別に海鳴全体が金髪外人ばっかりではないのだ。
ぷしゅー…『浅草ー 浅草ー』
「…何処から湧いてくるんすかね、この人数…」
「それが東京と言うものだ。
大阪だって似たようなもんだろうが」
「大阪住んでたのは小さい頃であんま覚えてないんだよなぁ」
「の割にはたまに関西弁出るよなおまえ」
「まあおかん…おふくろが関西弁使うんすよ、説教する時とか」
説教される→びびる→テンパって話す→何度も怒られてるうちに関西弁が移る、と言った感じか。
「しかし慣れないと異様な光景に見えるな」
「全くっすね」
釣り皮に捕まって新聞読んでる蛾の怪人とか椅子で寝てる特撮ヒーローっぽいのとかな。
普通のサラリーマンやら子供に交じって普通に存在するから怖いわ。
と、ポケモンを外に出してる奴こそいないが、老若男女問わずポケモントレーナーっぽいのが増えてきたな?
具体的にはモンスターボールのマークが入ったバッグやら使ってる人が多くなってきた。
んー…あ、浜松町にポケセンがあったわ。
という事はあそこがやはりポケセンなのか、この世界でも。
浜松町には都営浅草線大門駅から出て歩いてすぐだぞ(宣伝)。
「東京タワーの前にポケセン行こうか」
「りょかー」
さてさて、何があるかね。
****
だらだらしてます。
番外編と比べるとアレですねー
友人以上恋人未満な感じ?
友人というか下僕な感じもしますがw
しかし仕事中に隠れて書いてるとここまで筆が進むものなのか…
ちゃんと仕事はしてますよ?(・∀・)