さて、俺らが本日の最初のプロデュエリストとのエキシビションデュエルするのだが、Aゲートを通った人間だけでも200人以上はいるっぽい。
プロデュエリストも30人はいるみたいだが…これは凄いイベントだな。
ヘキサゴンっぽいドーム状の施設の中は観客席を周囲に取り巻いた舞台がいくつもあり、それぞれチケット番号によってあがる舞台を割り振られる。そしてデュエル待ちは待合席が千席ほど飲み物とともに用意されていた。
さらに全デュエルをリアルタイムで見ることが出来るテレビが舞台の数分あり待合席のあちこちにセットされている。結婚式の席の配置に近いか。主役の席が30舞台以上あるが。
イメージ的には東京ドームでイベントといった風情か。パネェな、海馬コーポレーション。
そしてたまたま俺らの中から最初のデュエルに選ばれたのがユーノだった。
「デュエル!」「デュエル!」
舞台に上がったユーノと孔雀舞が、デュエルディスクを構えて叫ぶ。
「今日のイベントでは挑戦者側、つまり坊やの先攻でデュエルするよう海馬から言われてるからね。
先攻をどうぞ、坊や」
ちなみにプロ側はシンクロ召喚禁止だそうで。チューナーの使用は有り。
昨今のシンクロ優遇を鑑みれば相当挑戦者側に有利だな、この特例は。
尤も、うちの天才ども並に頭が良い小学性がどれほどいるやら。さらにプロ連中は大なり小なりチートドロー(積み込みのように欲しい時に欲しいカードを引いてくるドロー)の使い手だからな。
「ではドロー! ………」
「どうしたのかな? ユーノ。難しい顔してる」
「手札事故かなぁ」
「…メインフェイズ、まず手札断札! 互いのプレイヤーは手札から二枚墓地に送り、デッキから二枚ドローします。
チェーンありますか?」
*作者注意:以降、チェーン確認省略します。実際のOCGでは一々チェーン確認するのが基本ですが、SSや漫画でそれやると煩雑に過ぎるので。
更に実際のOCGでのデュエルでいちいちカード効果を説明するとかあり得ませんがしないと分からない読者の方もいらっしゃると思われますので一々説明させてます。見苦しいでしょうががご了承ください*
「ないわ。いきなり手札交換ね……」
ユーノの手札:□□□+□□
墓地ゾーンへキラートマト/ドラゴンフライ
舞の手札:■■■+■■
墓地ゾーンへハーピィ・レディ/ハーピィ・レディ
「もしかして手札が良すぎた?」
「闇と風のコストが手札から落とすという事は、準備だからな、召喚の」
「墓地よりドラゴンフライとキラートマトを除外!
煌めきたる黒鳥よ! 今導きの元、舞い来たれ! 喰らうは闇、纏うは風!
ダーク・シムルグ、特殊召喚!
ダムルグは表側表示で存在する場合、相手プレイヤーのセット(裏側表示のカードを場に出す事)を禁止します!」
「先攻1ターン目からダムルグとか鬼過ぎる…」
「あの口上、もしかしてバルディッシュのアレか」
ソリッドビジョンがあるからあの口上は輝くんだよなー。ないとただの厨二病だぜ。
いつも思うが、どういう仕組みで動いてるんだ? あのソリッドビジョン。
「ユーノ…」
「うー、フェイトちゃんだけズルいの。ユーノ君、スタダ出してくれないかなぁ」
「魔法・罠エリアに三枚セット、モンスターをセット、ターン終了です」
ユーノの手札:満足
→ 罠・魔法ゾーン:□□□
→モンスターゾーン:□□(?/ダムルグ)
→ 除 外 ゾーン:ドラゴンフライ/キラトマ追加
「私のターンね! ドロー!」
「そのドローに対して罠発動! 魔封じの芳香! このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、互いのプレイヤーは魔法カードをセットして1ターン後からでないと使用出来ません!
では改めてスタンバイフェイスどうぞ」
ダムルグで「相手のセット」を禁止し、魔封じの芳香で「魔法カードをセットしないと使えない」状態にする、所謂アロマダムルグロックである。
「くっ…なんてロック…!」
ユーノの手札:無し
→罠・魔法 ゾーン:□□□(?/?/芳香)
→モンスターゾーン:□□(?/ダムルグ)
「積み込みのような手札だなぁ。初手からダムルグアロマロックが完成するとは」
序盤でこのロックが決まったらよほど手札がよくないと崩せない。
「攻撃力2700以上を召喚出来ればとりあえずロックは崩せそうだが…
ダムルグアロマはスキドレを使えない以上効果モンスターでもどうにか出来る可能性は十分ある」
サイドラから帝シリーズとかでも何とかなるな、今なら。
「とは言え、孔雀プロお得意のハーピィの狩り場は事実上不可能っすよね」
「そうだな…ユーノのEXデッキには星屑竜が入ってるからな、出てきたらほぼ勝利確定だろう。
今ならならず者の傭兵辺りでロックを崩せるが…」
「サイドデッキなら兎も角、孔雀プロのデッキに入ってる可能性は少ないの!」
「有名な人なんだ?」
「うん、女流デュエリストとしてはトップランカーなんだよ!」
「異次元の女戦士を召喚! バトルフェイズ、ダーク・シムルグに攻撃!」
「攻撃にチェーン! 罠発動、くず鉄案山子!」
「うわ、えげつねぇ」
「ユーノ君がダムルグと案山子揃えた時の勝率は七割超えるんだよねぇ」
「ユーノのデッキ、ロック系ばかりだから大変なんだ、戦うの」
「くっ…! ターン終了よ!」
舞の手札:■■■■
モンスターゾーン:■(異次元の女戦士)
「では僕のターン! ドロー! セットモンスターをリバース!」
「メタモルポッド!?」
ユーノの手札:□
→罠・魔法 ゾーン:□□□(?/芳香/案山子)
→モンスターゾーン:□□(メタポ/ダムルグ)
「メタポの効果発動! お互いに手札を全部捨て、五枚ドローですね」
ユーノの手札:+□□□□□
墓地ゾーンへレベルスティーラー
舞 の手札:+■■■■■
墓地ゾーンへハーピィの狩り場/ゴッドバードアタック/万華鏡/風帝ライザー/継承の印
「可愛い顔してやる事がえぐいわね…」
「初手から手札も巡りも良すぎて、僕自身驚いてます。
とりあえず続けます。
墓地のレベル・スティーラーの効果発動! ダムルグのLvを1つ下げて攻撃表示でフィールドに蘇生!
伏せていた魔法カード強制転移発動! お互いが選んだ自分のモンスター同士を交換です!
こちらはレベル・スティーラーです」
「こっちは異次元の女戦士しかないわ」
ユーノの手札:□□□□□
→罠・魔法 ゾーン:□□-□(芳香/案山子/強制転移)
→モンスターゾーン:□□(女戦士/ダムルグ/メタポ)
舞 の手札:■■■■■
→モンスターゾーン:スティーラー
「続けて霞の谷の戦士を通常召喚! そのまま異次元の女戦士にチューニング!
風は天空に、
星は宇宙(に
――不屈の魂(はあの胸に…!
この手に護りの力を! スターダストドラゴン、シンクロ召喚!」
「えぐい程回るなおい」
横島の呻き声と共に派手に登場するソリッドビジョンの星屑竜。
ユーノの手札:□□□□
→罠・魔法 ゾーン:□□(芳香/案山子)
→モンスターゾーン:□□□(メタポ/星屑竜/ダムルグ)
「もうユーノの勝ちだろ。ダムルグにフェイト、スタダになのはのセットアップの口上か」
「ユーノ君凄いの…!」
「ユーノ格好良い…」
「バトルフェイズ!
まずメタポでスティーラーを攻撃!」
舞:LP8000-(700-600)=7900
「続けてダイレクトアタック×2!」
「くぅっ!」
舞:LP7900-2500-2700=3200
「罠・魔法ゾーンに三枚セットし、ターンエンド!」
ユーノの手札:□□
→罠・魔法 ゾーン:□□□□□(?/?/?/芳香/案山子)
→モンスターゾーン:□□□(メタポ/星屑/ダムルグ)
「バウンス、除外か溶岩魔神か…帝系はリリース要員がいないから厳しいか。
サイドラやトリッキーでも入ってれば別だが」
「溶岩魔神でどけてもダムルグは戻ってきそうっすけどね。墓地からでも手札からでも特殊召喚出来るし」
「そもそも溶岩魔神なんて孔雀プロのデュエルで見た事ないの」
「今日はいつにも増してユーノの手札が回ってるね」
「今日の回り具合だと天罰と神宣位伏せてそうだな、あの三枚は」
「聖杯辺りも可能性としては高いっすね」
「私のターン! ドロー!」
舞 の手札:■■■■■+■
「ハーピィレディ3を召喚! ターン終了よ」
「まあ攻撃しても案山子どうにかしないと無効化されるしな」
舞 の手札:■■■■■
→モンスターゾーン:□(ハーピィ3)
「僕のターン、ドロー!」
ユーノの手札:□□+□
→罠・魔法 ゾーン:□□□□□(?/?/?/芳香/案山子)
→モンスターゾーン:□□□(メタポ/星屑/ダムルグ)
「伏せていた月の書発動! メタポを裏側表示に! そしてそのまま反転召喚!」
「なんてこと…!」
「回りすぎだろ」
ぼやきながらデジカメのシャッターを切る横島。別に写真撮影禁止ではないしな。
ところでそのデジカメどこから出てきた横島。
「あ、プレシアさんから頼まれたんすよ。今まで忘れてたけど」
「ああ、デバイスどもはプレシアに預けてるんだっけか」
今レイハさんとバルディさんはプレシアのトコでメンテ中らしい。
デバイスがなきゃ魔法が使えない訳じゃないみたいだが、わざわざ頼むって事は写真撮ったりは出来ないんだろうな。でなきゃなのはがサーチャーで写真・動画撮影してるだろうし。
「それにしても今日のユーノはツキまくってるな…」
そして興味ないのか机に突っ伏して寝ているアルフ。この駄犬め。
寝顔が可愛いぞ。
ユーノの手札:-□□□+□□□□□
墓地ゾーンへネクロガードナー/儀式魔人リリーサー/疾風鳥人ハリケーン・ジョー
舞 の手札:-■■■■■+■■■■■
墓地ゾーンへハーピィの狩り場/ハーピィズペット仔竜/トライアングルXスパーク
/風帝ライザー/ヒステリックパーティ
「そしてメタポをリリース、神禽王アレクトールを召喚! 効果発動! 神禽王は表側表示のカード一枚を選び、その効果を1ターンの間無効にする事が出来ます! 対象は僕の魔封じの芳香!」
「なんで?」
「魔封じは自分の魔法も1ターンロスさせられるからな。アレなら相手のターンには魔封じの効果は元に戻る訳だし、即魔法使いたい場合は有効だろう」
「続けて手札からエンド・オブ・ザ・ワールドを発動!
墓地の儀式魔人リリーサーを除外し手札のThe・トリッキーを墓地に送り!
黄昏を告げる鐘の音よ、鳴り響け! 儀式召喚! 終焉の王デミス!」
ユーノの手札:□□□-□□
→罠・魔法 ゾーン:□□□□(?/?/芳香/案山子)
→モンスターゾーン:□□□□(デミス/神禽王/星屑/ダムルグ)
→ 墓 地 ゾーンへトリッキー追加 リリーサー除外
→ 除 外 ゾーンへリリーサー追加
「リリーサーを使っての儀式召喚、つまり相手は特殊召喚不可能になる…
魔法・罠・カード破壊系・攻撃に特殊召喚までロック…えぐすぎる」
「普通に使ったら友情終わるっすね、そのままリアルデュエルに移行しそうな勢いで」
「えー? ユーノ君、ロックが決まった後、凄い優しくしてくれるから好きだよ?」
「こないだ耳掃除してくれたもんね」
「わたしは一緒に飴舐めたよ!」
なん…だと?
「いいなぁ、なのは」
「……突っ込むなよ、横島。知らない方がきっと幸せだ」
普通に同じ袋から取り出した別の飴を舐めてたという事にしとけ。
うちの両親なら――…やってそうだからマジで困る。
両親の行動が子供の教育に対して如何に影響力があるか思い知る日々です。
とりあえず帰ったら家族会議だ。いやいや今晩なのは達が寝たらユーノに説教だ。
中身が大人なんだから子供の押し位跳ね返せと言いたい。ユーノからってのはないだろうし…多分。
…無理かもなぁ、ユーノ、アニメじゃなのはの背中押す事はあっても押しとどめる事は滅多になかったし…押しに弱いのかなのはに弱いのか。多分両方だろうが。
「うう…石投げたろか」
「なんかね、ユーノ君とキスするとね、ほわぁってなるの」
「唾がぐちゃぐちゃってなってね、気持ち良いんだよね」
「とりあえず黙れ」
「はーい?×2」
……信じてるぞユーノ、頼むから。
うちの性教育のせいでストレスがマッハだ、親父の怒りが有頂天かも知らん。
「勝者! ユーノ・スクライア!」
あ、最後見逃した。歓声が同時にわき上がる。
まあプロ相手にあそこまで完璧なロック決めればな。
あの状況だと、2700以上の打撃を特殊召喚とアドバンス召喚なしで呼び出して、かつ二回以上攻撃してダムルグを片付けないとな…特殊召喚まで封じられたからもう何も出来なかったろう。
ユーノじゃなきゃ積み込みを疑うLvだな…お互いにシャッフルしてるんだから積み込みようがないとは思うんだが。
お、ユーノが戻ってきたな。
「お疲れ様、ユーノ君」
「凄かったね、ユーノ」
「いやいや、こっちの回りが良すぎただけだよ」
「確かにな。初手で孔雀プロにサイクロンが手に入っていれば違った結果になってたろうが」
「ユーノ、それなんだ?」
「ああ、記念品だそうです。オリカですね。
青眼白竜のレプリカカードで公式大会以外ならデュエルディスクも通るそうですよ」
「わ! フェイトちゃん! 静香お姉ちゃん忠夫お兄ちゃん!
何が何でも勝つの!」
「次はなのはだよね」
「うん! 武藤チャンプか海馬プロと戦いたいな!」
「私は誰でも良いけど…」
「カード目当てなら弱小プロのが良いんだろうが…まあ記念だし、出来ればチャンプだよな」
「武藤プロっすね。あの髪型はあり得ん」
「言うな」
「えー? 格好良いよ、ねーフェイトちゃん」
「うん? なのはがそういうなら格好良いと思う」
「なのはのセンスが分からん…」
「さ、次はなのはの番だろう?」
どうもうちらは早い方らしいな、殆ど連戦で順番が回ってくる。
まあ都合がよいのは確かだ。
で、なのはの相手は……社長かよ。
「やった! 海馬プロとだ!」
「なのは頑張って!」
頑張っても勝てる気がしない。
「なのはちゃんの負けっすね、こりゃ」
「公式戦ではチャンプの武藤プロ以外には一度も負けてないしな」
この世界にペガサスがいたとしても読心術で勝利とか俺は認めない。
ましてやあれは公式戦じゃないしな。
「絶対に勝つの!」
さてさて…意気込みだけは勇ましいが。
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ユーノが使用したデッキは僕が実際使用している紙束がガチ周りした時を想定しています。
孔雀舞のデッキは遊戯王オンラインの孔雀舞CPUデッキを元にしています。
遊戯王二次創作してる人はマジ尊敬です(´Д`;)これだけで力尽きました。