「ただいま」
「ライ♪」
30㎏と意外と重いライキ、だが俺、高町静香の鍛えられたボディにそんな事は関係なかった。
まあ殆ど人間の子供サイズ(平均80㎝)だから見た目通りちと重いのは確かだな。
だがそれが(・∀・)イイ!!
可愛らしくて重さなんて感じないね、全く。
…はて、そういえばうちは食品を扱う家業だから、動物は禁止だったんじゃなかろうか。
……フェレットユーノがオッケーだったんだからライキも大丈夫。
駄目なら家出でもしよう、幸い俺は美人なので声をかければ誰かしら泊めくれるだろう。
…こんな世界じゃ普通に死亡フラグな気もするがライキもいるし大丈夫だろ。
「……?」
誰もいないのか?
時間は――18時か。なのはとユーノ辺りはいておかしくないんだが…ああ、塾か。
じゃあユーノは翠屋で働いてるのか。ん?シフトは横島休みじゃなかったか? 月曜だし。
まあいないならいないで良いけど。
「あ……あの、お邪魔してます」
「静香かい、お帰り」
フェイトと大人verのアルフが居間で珍しそうに世界不思議発見の録画を見ていた。
フェイトは兎も角、アルフはもふもふしまくってたからすっかり仲良しである。
ライキをぷにぷにしながらアルフにもふもふしたいものだ。
「ただいま」
フェイト、おどおどしすぎだろう。お前さんが本気出したら恐らく一分もしないうちに俺なんかこんがり焼けましたーとなる事請け合いだというのに。
「ライ♪ ライ♪」
「ああ、ちょっと待ってくれ」
甘酒要求のコッペパンチですね、分かります。
はあああ…可愛いにも程がある。
ちなみにコッペパンチとはライチュウのぷっくりおててでぺしぺしと叩く事である、語源はライチュウの手がコッペパンに似てるトコから。
「あの…その子は?」
「拾った」
だからどうして普通に答えただけなのにそんなびくつくのか。そんな怖いですか俺。
ガラスのハートが傷ついちゃいますよ、防弾防刃性だけど。
「ライキ、電化製品が山とあるのでむやみにそこらの物を触らないように」
「ライ!」
(o゚ω゚o)ゝ
可愛いにも程があるだろ常識的に考えて。
ライキを椅子に降ろして、甘酒を用意。まさか久遠対策に用意した甘酒をライチュウに振る舞う事になるとは、この世界マジで何が起こるか分からんね。
あとフェイトそんな居心地悪そうにすんな。
別に何も言ってないだろ俺は。
フェイトが借りて来た猫よりおどおどしててかわいそうやら鬱陶しいやら。
アルフのように自分の家だぜって感じでくつろいでくれて構わんのに。
「堪能するがいい」
「ライ♪」
マグカップに注いでやった甘酒をふうふうしながら飲むライチュウ。
こう、ぷっくり両手で挟んでふうふうって! あーもー萌え殺す気ですねライキさん!!
「ほら、フェイトとアルフも飲め、甘酒だ」
「あ、ありがとう…」
もーいいです、慣れるまでおどおどしててください。
「なんだい? これは」
「甘酒。成分は点滴用の栄養剤に類似。甘みがあり若干アルコール含有。
まあ子供用の酒もどきだ」
ビーフジャーキーを皿にぶちまけアルフの前へ。
「お、肉肉♪」
「あ、美味しい…」
ふう、やれやれだぜ。
新聞でも見ますかね……
――太陽系に新たな惑星発見! 命名候補に魔王星、雷王星など…
ぱしっ
新聞を閉じた俺は二度と新聞も開かない事を心に決めたのであった。
「ライ?」
「気にするな、色々あるのだよ」
さて、晩飯の支度でもしちゃいますかね。
アルフがいるなら肉でいいか。にくにく。
「フェイト嬢」
「はい! なんですか?!」
軍隊じゃあるまいし起立して振り向かんでよろしい。
「夕飯の支度するから手伝え」
「あの…ごめんなさい、料理した事ない…」
まあリニスがいればそうだろうな。いなかったらいなかったであの母親が教えてる姿は想像できんな、意外に料理上手そうなイメージだが。あの間延びした声とか。
「そうか。なら教えてやる。
…誰かに自分の作った料理を食べてもらうと言うのは良いものだぞ」
ここで「ところでユーノがそろそろ帰ってくるな」とか言うべきやいなや。
「えーと……」
アルフ、お前はフリーダム過ぎ。フェイトが迷ってるのにビーフジャーキー喰いながら料理番組見てるんじゃない。
「ユーノもうちで夕飯食べる訳だが」
ここまで言わんと分からんのか全く。
「お願いします」
恋愛が絡むと即断即決なのか?
違うか、指針とかを決めてくれるなら迷わないけど、決定権を委ねられると迷うタイプで、現在は母親もリニスもいないからふらふら迷いまくりで、ユーノラブだけはその例外、か。
なんでそこまでユーノの事好きになったのかはちょっと知りたいな。
「料理というのは難しくやろうとすれば難しく、手を抜こうと思えば何処までも抜けるものだ。
まあ、今日の料理は難しくない。とりあえず、手を洗ってこい」
「はい」
鶏肉のソテーとか考えてたが変更だな。
鶏肉の餃子にしてしまおう。餃子なら言われた通りやるだけで「作った」気になれる。
後は……豚バラ肉があるがこの量で何をしろと…サラダの添え物にするか。もやしが大量にあるから、これにゆでた豚肉混ぜて、ポン酢かけた奴で良いか。
適当な残り野菜を冷蔵庫から出してっと。
大蒜がないな、餃子に大蒜いれるのは日本だけらしいが。
「ライ♪」
ん、マグカップを下げに来たか、えらいなこいつ。
そしてそのままふらふらしながらソファまで行って丸くなってしまった。眠いらしい。
可愛いのぅ可愛いのぅ。
ま、それは兎も角。
「アルフ、買い物に行ってきてくれ」
「えー」
「アルフ、お願い」
手を洗ってきたフェイトが戻ってきた。
「しょうがないねぇ」
フェイトの言うことは素直に聞くんだな、当たり前といえば当たり前か。
では必要な材料、と言っても足らない大蒜を含めて数点だけだが。スーパーとか行かせられないしな、怖くて。
で、お金は…万札渡さないと使い方分からんのだったか、こいつらは。後でお金の使い方教えなきゃな。
「翠屋がある商店街の、野菜売ってる店にこのメモとお金渡せば良い。
向こうが包んで渡してきたものを全て受け取って帰ってきてくれ」
全く、なのはに買い物頼むよりメンドイな。
「寄り道厳禁、早く帰ってきてくれ」
「りょーかい」
行動するとなると速いな。
ああ、よく考えたら狼Verになってもらって、首から籠ぶら下げて八百屋に突っ込ませればよかったか。
まあいいや。
「ではフェイト、今日は餃子を作る」
「餃子?」
「簡単に言うと、肉と野菜を混ぜた物を小麦粉の皮で包む料理だ。焼いたり煮たり蒸したりして食べる。
今日は焼いて食べるがな。
まず野菜を切ってみようか」
静香のお料理教室始まるよー。
ふむ、フェイトとーなのはのーりりかるクッキングー
とかも良いかもな。もし撮ったらニコ動にうぷしよう。
****
「へー、これフェイトちゃんが作ったのか。旨い!」
お前に褒められてもそう嬉しく――という訳でもないのか、まんざらでもなさそうだな。
ああ、人付き合いが足らないから褒められた経験も少ないんだな、フェイト。
そして横島の膝上で手づかみで餃子を食べるライキ。こいつらポケモンって主食はなんなんだろうか。
ゲームとかアニメじゃポケモンフードとか売ってるみたいだが。あとポフィンか? あれは明らかにお菓子だが…
まあ美味しそうに食べてるから問題はないんだろう、きっと。
しかし横島はやはり動物に好かれるタチなのか、あっという間に懐いてしまった。一番懐かれなかったのは士郎というのだから笑える。
そんな士郎は昔ポケモントレーナーだった事もあるらしい、死別したから辞めたとかなんとか。
あとオーキド博士の護衛もした事あるんだと。士郎パネェ。
そしてこの世界、というかこの世界の日本、関東地方と九州地方、そして近畿地方を中心に「ポケモン」は当たり前に存在する動物らしい。
ここ海鳴市は関東に近い中部地方に位置する為、そこまでポケモンは生息していない為かなり珍しい存在だが、東京や京都、函館など生息地域の主要都市ですら普通にポケモンが生息しているらしい。
それを聞いてポケモンマスターを目指す為、さっそく出かけようとしたが止められてしまった。
ジュエルシード集めるよりポケモン集めたいと言ったらユーノ涙目。そしてなのはとフェイトに説教された。
OHANASIされなかっただけマシか。
とりあえずポケモン飼うのもトレーナーの資格がいるから市役所行ってもらって来る事に。
ポケモン図鑑も講習受けるともらえるらしい。
まあそうだわな、漫画じゃ勇者の証的扱いされてる事もあるが、それじゃ図鑑の意味ないしね。
講習自体は二時間位で終わるらしいから明日行ってこないとな。
あ、学業免除なんて社会基盤崩壊フラグはないらしいよ、当たり前だが。
後は忍がこういう事詳しいらしいので相談する事に。
ブイズやニャース、エネコロロなどがいるらしいですよ、月村家。
お茶会に参加フラグktkr。
とするとアレか、バニングス家にはガーディやウィンディがいたりするのか。
楽しみ過ぎる。
まあそれはそれとして飯を食わねば。
「むー…」
なのはよ、視線でお姉ちゃんの意地悪、などと言われてもどうしようもないんだが。
「フェイト、美味しいよ」
女殺しの笑顔だな、おい。アレか、やはり精神年齢は顔に表れるのか。まあ確かに大人っぽいってだけで格好良く見えたりする事はあるが。
フェイトはもう真っ赤になって縮こまってしまった。可愛いのぅ。
そしてなのは、ふくれっ面してもどうにもならんぞ。
高町母も父もフェイトを褒めまくりである。
一方アルフは骨付き肉にかじりついていた。狼Verだが。
肉を勝手に買ってきやがったのである、こいつは。お金の使い方もあやしいくせに良く買えたな。
言われたもの以外を買ってくるのは小学生までにしとけってんだ、全く。
「…小学生3年でもこれだけ出来るのにな」
「うう…フェイトちゃんにまで負けた…」
涙目の美由希ざまぁ。
「静香、また料理教えて…?」
顔赤いまま上目遣いとかヤバいんですけど、可愛いすぎて。
しかしまあ計画通り(ニヤリ)だな。共同作業すれば大概仲良くなれるもんだ。
「静香お姉ちゃん! 私にも教えるの!」
勢いよく立ちすぎだ、ユーノが吃驚してるぞ。
高町母は微笑ましいとばかりにニコニコだが。士郎と横島は今にも赤い涙を流しそうだ。
美由希は不景気な面して飯を食べるな全く。恭也はそろそろ達観して来たな。
「分かったから黙って飯喰え」
「ライキ、あーん」
高町母もライキを気に入ったようだ。まあ可愛さポケモン界No.1だからな、異論は認めない。
****
「なるほど、一緒に風呂入るのは辞めた方が良いか、やはり」
携帯電話で忍にポケモン育成の相談である。ゲームでなら幾つものポケモンを育てた覚えはあるが生ものは初めてだ、当たり前だが。
なので経験者に相談というわけだ。
ちなみにアルフは俺の頭の上で睡眠モード、ライキは俺に添い寝してくれている。マジラブリー。
ベッドの上で寝ながらお喋り、全く便利な時代になったもんだ。
『講習受けたら図鑑もらえるでしょ? それがトレーナー資格の証明書になるから、そうしたらデパートでポケナビ買いなよ。ポケモンのコンディションとか調べられるしね』
なるほど、確かにそれは大事だ。ライキが病気になどなったらたまらん。
『あとボールマーカーは付けておきなさいよ。付けてなかったら野生のと勘違いされても文句言えないんだからね』
「ボールマーカー?」
『一度モンスターボールにしまいなさいって事。それで外に出せば図鑑やポケナビに反応するようになるの。
ちなみにゴージャスボールお勧めよ。既に懐いてるなら『捕まえやすいボール』より『ポケモンが喜ぶボール』にすべきだわ』
はて? もしかしてライキはマーカー付きなのだろうか?? まあそうだとしても、もう俺のモンだが。
「了解した。後は家の耐電処理頼めるか?」
『はいはい、それは明日にでもノエルとやってあげるわ』
「頼む」
充電具合や大気の状態にもよるが、ライチュウなど電気ポケモンが家にいるだけで家電製品全滅とかあるらしい。電気ポケモンマジパネェ。
『じゃあ静香、また明日。お休み』
「ああ、助かった。お休み」
これでオッケー。
とりあえず俺の部屋の家電製品(パソコンくらいしか壊れて困るものはないが)をなのは部屋に移動させてある。
ちなみに部屋割はユーノが独り部屋、フェイトがなのはの部屋、アルフは俺の部屋、という感じ。
フェイトとなのはの口論の末、この配置に決まった。まあ抜け駆けは出来ないわな、お互い見張ってれば。
ユーノが絡まなきゃ仲良いんだけどな、たまにユーノが絡んでも凄い仲良いけど。
食後、以前と同じようにプリンを、今度は三人で作ったのだが、流石になのは。
以前から母や静香に手ほどきされてるだけあって相当上手かった。
フェイトは一度覚えた動きの再現は流石だが、初めてやる手順はおっかなびっくり過ぎだな、慣れがなさ過ぎるから仕方ないかも知れんが。
次は何作るかね。まあ適当でいいやね。
目覚ましのスイッチ入れてお休み、ライキ、アルフ。
「らぁぁぁぁぁぁぁいっっ!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」
バリバリバリバリ!
何事!?
跳ね起きるとそこにはこんがり焼けた横島の姿が。
はあ…別に夜這いしなくても押し倒せばいいんじゃね? 抵抗はするけど、ライキとアルフが寝てるトコ襲うよか学校で強姦した方が速いよ? 多分。
夜這いはありで強姦は駄目って価値観もよく分からんな。
ひょっとして押し倒すんじゃなく寝てるトコ見る為だけに部屋に侵入してくるのか?
下着泥棒なら洗濯機の方狙った方が良いしな。よく分からん。
あとまともに告白された事ないんだけど? 正直夜這いとかする前にやることあるだろうが、俺の事好きなら。
間違いなく振るけどな。
「アルフ、そこのゴミ外に捨てておいて」
しかし…未熟とは言え御神の剣士たる俺が気付かないうちに部屋に入るとかどんだけスネークスキル高いんだこいつは……
「あいよ」
ぽいっと魔法を使われて宙に浮いた横島が窓から捨てられる。生きてるのかね、アレ。
どうでも良いけど。
「ライキ、よくやった。褒めてつかわす」
なでくりなでくり。可愛い上に強いとか最高じゃね?
「ライ♪」
でもお前横島に懐いてたよね、結構。そしてその割には容赦ない電撃攻撃。
いやいいんだけどさ、別に。