テーブルに戻った茶々丸が、紅茶を3人の手元に置き、お菓子の箱を開けた瞬間、「「「「……」」」」部屋の温度が、数度低下。そして茶々が、急に寒くなった空間に耐えるように部屋の隅で丸くなっている。4人の冷たい視線を集めている物は、食べかけのチョコレートであった。元の形はハート型であったが、そこまで原型を留めておらず、『本命で…』『千…』とデコレーションされており、全員の声が、「「「「バレンタインのチョコ(だ・ね・です)」」」」ハモると、3人の怪しく輝く目が、一緒に声を出し驚いていたのだが気がつかず、抜け駆けしたと思われる1人の少女に集結し、「「「何か言う事あ(る… ・りますか・るかな~)」」」向けられる眼光の鋭さに恐怖を覚え、ちびりそうになった少女・千雨だったが、この少女も精神的に鍛えられているため、もらす事も気絶する事もなく、焦った表情で首をブルンブルンと横に振ると、「てめーら『千』て文字だけで決めんじゃねえ!」「証拠は?」和美の追及に、信じてもらえていないことを悟った千雨は、切れそうになりながらも、手近にあった学業用のバックを漁り、「コレだ! ホワイトデーのお返しに持っ…アレ? 包装は同じだけど形が違う、私のじゃあない」据わった目つきになった千雨が、ブツを周囲に見せると、自分の用意したものではないことに気がついた。目を点にし『だれんだコレ?』と思った千雨が、周囲を見るとプルプルと全身が打ち震えているアキラが、「…千雨、何か私に恨みでもあるの?」ちょっと考え込んだ千雨は、神妙な顔になりアキラの目をしっかりと見据え、「うん、大分あるな」『ガーン』と両手を床につけ落ち込むアキラに、茶々丸がアキラの肩にそっと手を置き、「大丈夫です。アキラさんの優しさに、いつか千雨さんも気がつきます」「…茶々丸」互いの両手を握り締め、微笑みあうアキラと茶々丸が其処にはいたが、ジロリと千雨が二人を睨み、「訳わからんことで感動してるところ悪いけど、茶々丸、お前にも恨みは一杯あるからな」笑っていた二人が、ゆっくりと崩れ落ちた。千雨の溜飲が少し下がっていると、ガサガサと部屋の片隅で、何かを漁っている和美が、何かを発見し手に持ちながら、「コレね、千雨ちゃんのは」「…人のカバン漁っんなよ…まあそれが証拠だ」勝手にカバンの中身を物色されたが、もう疲れている千雨は呆れながら、「バレンタインは、私が貰う側に回ったからな、お返ししようと思ったんだよ。アキラも同じ店で、買ってたみたいだけどな」自分の物とアキラが持ってきた物を見比べた千雨が、包装等で同じ店で購入した物であると気がついた。更に和美をジーと見ながら、「和美は買ってないのか?」「さあ~ どうだろうね」はぐらかす和美に、怪しそうな目を向ける千雨だったが、「買っているかどうかわかりませんが、和美さんがある店で数時間ほど、2種類のチョコを見比べているのを見かけました。これがその時の写真です」崩れ落ちていた茶々丸から、意外な証言が飛び出してきた。二人の間に携帯を差し出し画面を見せると、真剣な顔をしながら2つの箱を吟味する、和美が写っているのがわかる。数枚ほど撮られていたが、和美の顔の向きと手の位置が変わるだけで、その他は何も変化がなかった。現場を見られていた事を知った和美が、ピシリと石になっていると横にいた千雨が、自分のバックに近づいていくのに気がつき、「な、何やってるの千雨ちゃん」『ガシッ』イヤな笑みを浮かべる千雨を止めようと、慌てて手を伸ばす和美だったが、誰かに羽交い絞めにされ動きを強制的に止められた。必死に首を動かし背後の誰かを見ると、「アキラ~ 離しなさい!」「…まあまあ、見つかるならみんな一緒に」「ちょっとアンタ、性格悪いぞ!?」「…クス、そうかな」ちょっと邪悪に笑うアキラの雰囲気に、和美と部屋の隅で丸くなり事の成り行きを見守っていた茶々が、ゴクリと喉を鳴らした。そして茶々の目には、アキラから黒いオーラが噴出しているのが見え、更にバックを開けている千雨からも、黒いオーラが出ている。和美のプレゼントも無事発見され、ハイタッチし喜ぶアキラと千雨、そして対照的に落ち込む和美が、「こっそり渡してポイントアップしようとしたのに」和美の言い分は、アキラと千雨も少しは思っていたことである。そして、プレゼントがバレた3人の思考が、(((やっぱみんな用意してたんだ…みんな?)))キレイに一致したのである。唯1人無傷の少女がいたため、3人はゆっくりと頭を動かし茶々丸を見つめると、オロオロと挙動不審になった茶々丸が、「…何か?」他の二人に呼応するように、和美の体からも黒いオーラが噴出し、「茶々丸ちゃん、私と同じ店にいたんだよね~ しっかも、私に声もかけずに数時間も」「た、偶々です。近くのスーパーで特売が行われていたので」慌てふためきながらの茶々丸の言い分に、ニッコリと口を笑みにする和美だったが、茶々丸の高性能な視覚はしっかりとある事を捉えている。それは、全く和美の目が笑っていない事に。茶々丸が、気まずそうに顔を逸らした瞬間に、和美が飛び掛っていた。しかしながら、和美の雑な動きに捕まる茶々丸ではなく、軽くいなすのに成功する。いなされ、たたらを踏んだがすぐに正面を向いた和美に、茶々丸が彼女の次の行動に注意を払っていると、「千雨ちゃん、今よ!」「おう、任せろ」「ッ!? しまった、陽動ですか。しかし…」和美と茶々丸がにらみ合っていると、その隙を突き千雨が茶々丸の荷物に駆け寄っていった。しかし、間に合うと踏んだ茶々丸だったが、「…茶々丸、行かせない」わざわざ存在をアピールした和美の声と千雨の返事も、アキラの存在を隠すためのオトリである。取っ組み合いになっては、1対1では茶々丸に勝てないことを、理解しての行動である。茶々丸は、真横から突進してきたアキラに胴体を抱きつかれ、力任せに倒されてしまった。ダークサイドに落ちた3人の、即席にしてはなかなか上出来な連携である。「残念ながら、まだ甘いで…くっ」パワーだけに頼るアキラの寝技から、簡単に抜け出そうとする茶々丸に、イイ笑顔を浮かべた和美がボディプレスを仕掛けてきた。3人は、服が乱れ下着も丸見えになっていたが、全く気にしていなかった。必死に逃げ出そうとする茶々丸と、逃がしてたまるかと腕や足に絡みつくアキラと和美である。さすがに寝技で1対2は茶々丸でもきつく、簡単には抜け出せずにいる。傷つけてもいいなら簡単であったが、少女達に手を出す気がないため、悪戯に時が過ぎると、「あったぞ!」嬉しそうな千雨の声が響いた後には、力が抜けた茶々丸がぐったり地に伏せいた。こうして茶々丸も、ダークサイドの深淵に落ちていくのであった。ちなみに、全員同じ店でお返しを購入している。そんな中、逃げるタイミングを逃し、そっとみんなを見守るしか出来ない茶々は、『みんな、黒いよ~ 怖いよ~』とっ、耳を伏せもの凄~く怯えていた。仲良く暗黒面に落ちた4人は、テーブルに着き冒頭の会議を始めた。和美が、人差し指でテーブルを叩きながら、「今日はホワイトデー、相手は動いてると見るべきね」「私が来たときには、すでに横島さんはいませんでした」和美は、失態をしでかした事に気がつくと、悔しそうに表情を歪め、「くっ、勉強なんてしてるんじゃあなかったわ」学生としてあるまじき発言をしているが、他の3人は真顔で頷いている。少女達の担任が、この言葉を聞いていたら泣いてしまっていただろう。茶々を撫でているアキラが、猫の抜け毛に気がつく事無く、「…横島さん、探してみる?」「もし見つけられたとして、本当にデート中だったらどうすんだ?」横島の横に、全く知らない女性がいることを想像したアキラが、「…何かヤダ…横島さんの…」沈んだ表情と声色で苦しそうに呟くアキラに、他の3人も同じような意見であり、横島の事が段々と信じられなくなり出し一気に暗くなった。モヤモヤとした気持ちの中、更に4人は澱んだ空気をかもし出している。澱んだ空気に当てられ、抜け毛の進行が早まる茶々。誰も喋らないまま少女達と茶々にとっての、短いがとても濃厚な数分間が過ぎ去っていた。そして、気分転換のため正面に座るアキラの腿に乗る茶々を見て、直ぐに視線をはずし眼鏡をとりレンズをキュッキュと拭く千雨。もう一度彼女が茶々を凝視すると、今度を目を指で擦りだした。他の少女達も、千雨の行動に気がつき注意を向けている。他の少女達の視線を浴びる中、千雨が目から指を離し、目を細め茶々を見つめ、自分が見たものが間違い出ないと悟ると、ガクガク震えながら茶々を指差し、「…ちゃ…ちゃ…」「お茶ですか?」震えたままの千雨は、のどが渇いたのかと思った茶々丸が、紅茶を注ごうとするのを遮ると、「ち、違う。ちゃ、茶々が禿げてる」やっとの事で声を出す千雨以外の少女が、何を馬鹿な事をと思いながら猫を見つめると、まず茶々を膝に乗せるアキラが、「…禿げてない。何かいっぱい毛は抜けてるけど」真上から見ると茶々は、禿げてはいなかったが周りに毛が散乱していた。しかし、横から見た茶々丸と和美からは、茶々の両わき腹辺りに出来た500円玉ほどの空白地帯が確認できている。青ざめた和美が、茶々を割れ物を扱うかのようにアキラから持ち上げ、茶々のわき腹を見せると、目を丸めたアキラが、「…何で禿げてる?」アキラの呆然とした質問に、誰も答えられるものはいないのであった。それから、黒化した少女たちは大慌てである。何故なら、横島宅に来る最大の建前が、茶々の世話であるためである。実際には、子猫のときから知っている茶々の為というウェイトも大きいのだが。将を落とすには馬からと言う諺もあるように、茶々を通じて横島に会う理由が自然であった。禿げてしまった理由はわからないが、これを気に「茶々の世話が出来ないなら、来なくていいよ」と最悪の場合言われるのではと、少女たちは恐怖しながら、「ど、どうする。何か禿げを直ぐになおす方法ないのか、茶々丸に和美?」「し、知らないわよ、そんな事!」「残念ながら」焦る千雨が、情報通の和美、猫好きの茶々丸に問いかけたが、現実は無常である。何か打開策がないかと考える千雨だが、いい案は全く思い浮かばず、「くそ、まずいな。横島さん、茶々をめっちゃ大事にしてるからな」「うん、夜帰ってこないだけで、麻帆良中を走り回ってるからね。しかもそん時、保護してくれた黒人さんを、勘違いから殴りかかってたし」夜取材のため外出していた和美が、偶然その現場に居合わせといた。そのような事、全く知らなかった茶々丸が、好戦的な横島の行動に少し驚きながら、「そんな事があったのですか」「そうなんだよ~ 結構面白かっ…てっ違う! そんな話今はどうでもいいから、チビちゃんをどうにかしないと!」和美が急に大声を出すと、座布団に座る茶々がビクリとしたため、アキラがあたふたし、「…茶々、大丈夫。怯える事ない」アキラが和美に非難の目を向けながらも、茶々を頑張ってあやしている。そして茶々丸が部屋の中で、何かないかと探し回り部屋を汚し、和美が必死に、携帯で情報を集める中、「アキラ、茶々は紐に反応してるか?」座布団に座る茶々の前で、一心不乱にアキラが紐を振っていたが、「…だ、ダメ。目をちょっとは動かすけど、体が反応してない」手を出したい本能を、まだ黒いままの少女達に叱られるのではないかと思い、鋼鉄の理性で我慢する茶々。アキラが茶々を見守る中、 動きたいが動けない為、更にストレスが増加した茶々に異変がおき、「…あ…」不安そうな声を部屋に響かしたアキラ。その声に、タンスの中にあった横島のエロ本コレクションを、投げ捨てきった茶々丸が、ヘンテコな藁人形を掴んだまま固まり、「どうしたのですか?」「…禿げが大きくなった」「「「~~~」」」他の少女達が声にならない悲鳴を上げた。その1人茶々丸が、キュッと藁人形を軽く握り締めている。一箇所に集まった少女達が、疲弊しながらも真剣な表情で、「…本気で困った」「そうね。とりあえず機嫌取るために、茶々の好きな物を買ってこようか?」「好きなものか…高級猫缶や魚か? でも、金あんまないぞ」千雨も、和美の意見には賛成であったが、懐が寒くあまり高級な物を買うのはきつかった。そのアイデアにはアキラも同意していたが、この少女も金欠のため難しい顔をしている。言いだしっぺの和美も、財布の中身を思い出し、「え~と、あたしもそんなに余裕ないかな」中学生の財力では、良いものを買うには財力不足であったが、「お金なら大丈夫です。私が何とかします」自信ありげに発言する茶々丸に、感銘を受ける3人だったが、少しばつが悪そうに、「…でも」「茶々丸ちゃん、1人に出させるのは…」「ああ」1人にお金を出させるのが後ろめたい3人だったが、「問題ありません。任してください…私のお金ではないですし」胸を張って言う茶々丸に、悪いと思いながらも3人は任せることにしたが、最後の発言は小声になり聞こえていなかった。ちなみに茶々丸の資金の元は、彼女の主人であり母でもあるエヴァの警備の仕事の報酬である。3月中の彼女のご飯が、小魚等の安い食材がメインになったらしい。買い物のため、急いで部屋から出ようとする茶々丸に、和美が出て行こうとする少女の手の中にある物を指差し、「そのヘンテコな人形、持ってくの?」「…気がつきませんでした」和美に言われ自身の手を見て、初めて藁人形に意識を向け、どうしようか少し迷い、「和美さん、すみませんがコレの処理お願いします」「はい、はい」茶々丸は、安請け合いする和美に藁人形を渡すと部屋の窓を開け、腕と背中からのジェット噴射で飛び去っていった。その行動を一部始終見ていた千雨が、「窓から飛んでくなよ。出かけるなら玄関からだろ…あいつ、靴はいてたか?」「…履いてない」呆れる千雨が、開けっ放しの窓からアキラと外を見ながら、かなりどうでもいいことにツッコミを入れている。茶々丸が飛ぶことに関しては、『あいつなら、飛んでも不思議じゃあねえな』と、あまり驚いてはいない事が、千雨の常識が徐々に可哀想な事になっている証拠である。人形を受け取った和美は、何となく人形の頭に軽くデコピンを喰らわせていた。全員の目が、茶々から離れていたため気がつく事がなかった。動かなかった猫が、藁人形を見て『アレ、あたちの獲物』と、目をらんらんに輝かせているのに。人形を托された和美は、捨てていいか迷い残った二人に向けて、「コレ、捨てても大丈夫だよね?」「いらないだろ、そんなの」「…大丈夫だと思う」二人同意を得られた和美が、近くに置かれたゴミ箱に狙いを定め、「とう、3Pシュート」両手首のスナップを利かせ放られた人形は、キレイな放物線を描き、寸分違わずゴミ箱に向かった。思わず人形の動きを目で追うアキラと千雨、そして投げた和美が、『入った』と思った瞬間、白い軌跡が藁人形を掻っ攫った。予想外の出来事に、本の少しパニックになった3人は、同時にスーハーと深呼吸し冷静になり、互いに目を合わせ頷き、「「「動いた(((…・ね・ぞ)))」」」部屋の隅に視線をやると、少女達にお尻を向けながら、藁人形に元気良く噛み付いている茶々。茶々が動いてくれた事に、安心しニコニコした3人がそっと近づいていたが、人形に夢中の茶々は気がつかず。少女達が、尻尾を振る茶々を見守りながら、「良かったな」「…うん」「あの人形、チビちゃんのお気に入りなんだね。捨てるのはやめようか」少女達が、他愛もない話をしていたが、茶々が噛み付いているこの藁人形、以前横島が作成した物である。以前使用した時は、『アキラ・千雨・和美・茶々丸にモテル奴は呪われろ』であったが、今回は何も考えずに茶々が噛み付き、指向性を持たせなかったためか、力の残り香により『モテル奴は呪われろ』で発動された。この時間帯、何故か『高畑・T・タカミチ』『ネギ・スプリングフィールド』『フェイト・アーウェルンクス』等、様々な人物たちが後頭部をはたかれたり、胸をまるで噛みつかれたかのように感じ、苦しみに悶えたり転がり回るのを周囲にいた人物達に見られ、多大な心配をされた。そして、もちろんデート中のこの男も公園のベンチに座り、隣で俯き座る少女に対して、「さっきは、すまんかった千鶴」「こちらこそ、そ、その、すみませんでした。反射的につい」謝る横島の頬には、赤い手形がついていた。つい先程、何らかの力により横島の後頭部に衝撃が走り、飲み物を渡すため正面から向かい合っていた、千鶴の母性溢れる胸に顔面を埋め、反射的に持ち上げた手が千鶴の胸を揉むと、「…きゃ!『バチン』」「げふ!」意外に可愛らしい悲鳴と共に、スナップを利かせたビンタが炸裂した。当たり所が悪く、脳を揺らされた横島が、地面に横たわると、「…まだ、心の準備が…それに、他の方達とも順番を決めてからです」恥ずかしそうにだが、大胆な事を言う少女の発言は、目を回す横島には聞こえていない。この少女の中では、全員が横島の毒牙に掛かるのは、確定事項であるらしかった。休憩のためベンチに座る二人が、目の前に広がる池…だった地形を見ながら、「知ってますか、忠夫さん。この公園、2月14日テロがあったらしいですよ。ここも池でしたし、あそこの木々も、薙ぎ倒されたらしいですよ。犯人も捕まってないらしいです」池だった物の向こう側には、森と言うには小さいが、木々が覆い茂っている箇所があった。しかし、現在では直線で空白が出来ている。ちなみに薙ぎ倒されているのは、一箇所ではなく二箇所なのも二人の位置からは見て取れた。「あれはテロじゃあないぞ。それにな、犯人は捕まったし、制裁もくらっとる」「犯人を知ってるんですか?」「くっくく、変態野郎の暴走じゃ」当時ここにいて結構な被害を受けた横島が、噛み殺した笑いをあげる中、驚き口に手を当てた千鶴が、「そうですか。忠夫さんが犯人でしたか」「かっかか、その通り犯人は『忠夫さん』…ちゃうわい! 何で、ワイなんじゃ」目を『クワット』っと広げた横島が、千鶴に詰め寄ると、目を伏せた少女が、「色々とですね、その…忠夫さんの噂が流れてまして」「…どんな?」「一週間少女を奴隷にしたとか、少女の裸を見て飛び掛って襲ったとか、4人の女の子泣かして興奮してたとかです」「ぶっ…それは、変態というレベルを超えてるだろ。むしろ俺、そんな噂流れてるの…警察、捜査してないよな」似たような事ならした覚えがあったが、誇張した噂が流れている事を知った横島の目から、しょっぱい汗が流れていた。そして、噂の内容を知り青ざめた横島は、警察が自分を捕まえようとしてるのではないかと思い、ビクビクしだすと、「あらあら、冗談ですよ。驚きました」悪戯が成功し笑う千鶴が、体を倒し横島の膝に頭を乗せ、「ふわ~ 眠くなってしまったので、借りますね」ジョークとわかった後も、ビックリし中々理解できずにいた横島だったが、30秒ほど千鶴の言葉を吟味し、理解にいたると、「く~ 質が悪い冗談を。おい、千…はぁ」千鶴に文句を言おうとし、自身の膝辺りを見ると、怒鳴る気が奪われた。ため息をつきながら、茶々が膝に乗ってきたときのように、千鶴の頭を右手で優しく撫でながら、「こんだけ安心しきって寝られるとな~ 起こすのも可哀想か」幸せそうな寝顔で、横島の膝に甘える千鶴を見ていると、こんなのんびりした時間を過ごすのも、悪くないと思ていながら、「向こうじゃあ、何かと騒がしかったからな。あいつら、元気に…ぐっぐ」元いた世界に思いを馳せ、知り合いの身を案じていると、突然胸に激痛が走り左手で胸を押さえる横島。すやすや眠る千鶴に心配をかけないため、痛みに耐え右手は髪を撫で続けながらも、身に覚えのある苦痛に、(あ~の馬鹿猫~ 前あんだけ怒ったのに、またやりやがったな~ 今日は徹夜で説教じゃ!)血の涙を流しながらも横島は、やせ我慢をし叫びも転がりもせづ、自宅にいる愛猫がやった事に対して内心ブチ切れ、痛みが去るのを唯ひたすら待ち耐えている。様々な人物達に無差別攻撃し、敬愛する主人にどのように思われているかも知らずに、一箇所を噛み続けている茶々が、ふいに視線を感じ後ろを見ると、若干黒さが薄くなったがまだまだ黒い3人に気がつき『あっ』と、口を開けポトリと人形を落としてしまった。4箇所の牙の痕がついた人形が茶々から離れた瞬間、一匹の猫が奇跡を目撃する。藁人形についた、4箇所のうち3箇所の穴に、少女達3人の黒いオーラがそれぞれ一箇所ずつ吸収された。その光景に『えっえっ』と仰天した茶々が、人形を見ていると穴が段々と塞がりだした。一箇所を残し完全に修復した人形に、茶々が目を白黒させていると、「…横島さんを信じよう」「あの人が私達を傷つける事しないよ」「非常識だけど、いい人だからな」黒さが一気になくなり、以前以上の白き心になった3人。黒化現象から復活した少女達に、心の底から『さすがあたちのご主人様が作った人形だ』と喜ぶ茶々。喜びのあまり先程まで自分からは決して近づこうとしなかった、アキラ・千雨の順に擦りよい甘えだした。茶々が、近寄り頭を摺り寄せられた二人が、頬を緩めているのを、人差し指を唇にあて眺める和美が、「いいなー チビちゃん、私に近づいくれないし」羨ましそうに1人ごちる和美に、何と茶々が近づいて和美を下から眺めている。「うわ、うわ! 二人とも見て、チビちゃんが近づいてくれたよ。撫でていいのかな?」興奮しだした和美が、二人に問いかけたが一応問いかけただけで、既に屈んで茶々の頭に手を差し向けている。茶々も和美の手に自分から近づき、頭が手に触れようとした瞬間、『ドゴス』「うぎゃ~」先程茶々丸が出て行った窓から、部屋に飛び込んで来た物体に和美が引かれ、可憐ではない悲鳴を上げ吹き飛んだ。傍から見ていた千雨とアキラは、和美を引いた物体を見て、「…マグロ」「マグロだな」二人が見たものは、正確には稀少の黒マグロである。「…最近のマグロ、飛ぶんだ」「茶々丸じゃあねえんだから、飛ぶわけねえだろ、ボケ」「…うっ」場を和ませようとしたアキラだったが、千雨に素で返されてしまい、言葉に詰まってしまった。「くっ…二人とも私の心配してよ!」友人に気にもしてもらえなかった和美が、うつ伏せに倒れながら顔を上げ愚痴っていると、茶々の接近に気がつき、「うう~ チビちゃんは、二人と違って優し『ポフポフ』…私よりもマグロか!」茶々は、倒れる和美の背後に転がる、美味しそうな匂いがするマグロが気になっただけらしく、和美を踏みつけてマグロの目の前まで行くのであった。『何コレ?』とマグロの腹に、猫パンチを叩き込んでいる茶々を、千雨が持ち上げながら、「悪戯したらダメだぞ茶々」『コレ、食べたいな~』とアイコンタクトする茶々に対して、思いが痛いほど伝わってきた千雨が、茶々を制する前に、「すみません、マグロ飛んできませんでしたか? この部屋に入るように、投げたのですが」窓からヒョコリっと体を入れる茶々丸に、千雨がマグロに背を向け、「ここに居るぞ。コレが茶々の土産か? …何でポン刀持ってんだお前、捕まるぞ」茶々丸に対しと、親指で背後のマグロを指差すと、呆れた顔で茶々丸が持つ鞘に入った、日本刀について尋ねると、「その通りです。ちなみにコレはですね、いつも使用している包丁・シメサバ丸では、少々さばくのが難しそうでしたので。五大剣と迷ったのですが、反りがあるシシオウブレードをマグロ解体用に持って来ました」茶々丸が持ってきた刀は、少女の姉もしくは兄にあたるチャチャゼロの持ち物の中の一本であったが、彼女に頼み込んだ茶々丸が借りてきた名刀である。武器作成者・超によれば、大抵の物は切った感触すら伝わらないほどの、切れ味との太鼓判の一品だ。部屋に入った茶々丸も、瞬時に藁人形に暗黒パワーを吸収され白くなり、「さてアキラさん、コレ重いので持つの手伝ってください」「…わかった…よいしょ。ちょっと重いね」マグロの口に手を突っ込む茶々丸と、尻尾の付け根辺りを持つアキラが、二人でマグロを台所に持っていくのを、千雨が『ん? アレ、二人で持てる重さなのか?』と疑問に思っていると、「…いいもん、いいも~ん、私なんて誰も心配してくれないんだから」部屋の隅で座り込みいじける和美が。正直『うわ、こいつ面倒くさ』と思った千雨だったが、ちょっと哀れだと思ったので相手をするために、胸に抱いた茶々を、「ほら、かわいい茶々だぞ。モフモフだぞ、抱いてみろよ」「…貸して」久しぶりに茶々を抱きたい和美が、手を差し伸べ茶々を受け取ろうとすると、台所のほうから、「秘剣・獅子王千枚おろし…さすが業物です」「…すごい…ちょっとやってみたいかも」和美達の部屋に茶々丸の気合の入った声と、『ザシュッ、スパパパ』と何かを切る音、そしてアキラの感嘆の声が聞こえる。耳をピクピク動かした茶々が『あっちが気になる』と暴れだし、目前まで迫った和美の手を蹴り、その反動を利用しスルリと千雨の手から抜け出ていった。茶々が去るのを見送り、一気に落胆した和美が、「…私ってそんなに嫌われてるのかな?」「い、いや気にすんなよ。向こうが気になっただけだって」必死に和美をフォローする千雨だったが、全く話を聞かずマイナス思考に陥った和美が、「千雨ちゃんも、さっき友達じゃあないって言ってたし。ううっ」落ち込み続ける和美は、少し前に千雨に言われた事を思い出し、顔を下げ悲しんでいる。『げっ、こいつあの言葉気にしてんの?』と思った千雨が、引き攣った表情で、「さっきのは冗談だ!? 友達、友達だから、元気出せって! なっ」和美の背中を撫で、自分のキャラではないと自覚しながらも、慰めの言葉を必死に投げかける千雨。そしてマグロの解体が終り、茶々にあげる部位を皿に乗せた茶々丸たちが、戻ってくると珍しい光景に不思議そうな顔をし、「…?」「何をしてるのですか?」「お前らも、和美慰めろ。アキラ、足元の茶々持って来い!」援軍が来てホッとした千雨が、矢継ぎ早に指示を出し、和美が元気を取り戻せるように奮闘を開始する。3名の少女が、和美を褒め称えたり、茶々を使用しへこむ和美の元気を取り戻すのに成功すると、「ほーらチビちゃん、美味しそうなお魚だよ。ほしい?」「うにゃ~ ふみゃ~」正座する和美が、マグロが盛られているお皿を掲げていると、興奮した茶々が和美の膝に乗り、和美に全身を摺り寄せ媚びている。少しだけ満足した和美が、お皿を下に置き、「ほい、お食べ」「みゃ~ うみゃ、うみゃ」『ガツガツ』と一口に切られたマグロを茶々が口にすると、あまりの美味しさにテンションが上昇し、変わった鳴き声をあげながら、わき目も振らず口を動かし続けている。マグロを食べる茶々を眺めていた千雨が、あまりにも一心不乱に食べているので、「そんな旨いのか?」「ちょっといいマグロを買ってきましたから」「ふ~ん。しっかし、一匹買って来るか普通」呆れ気味の千雨が、茶々丸と何となしに話していると、『クウ~』誰かのお腹の虫が鳴り、自然とそちらを向く茶々丸と千雨。茶々の横ではしゃいでいた和美も、その音に気がつき、音源を見ると、「……」アキラが、無言でバツが悪そうに下を向いている。何を言っていいかわからない千雨と和美だったが、あまり空気を読まない少女が、「もうお腹が減ったのですか。アキラさんは、昼食も2人前は食べていましたね」「…成長期だから…」唯一この中で運動部に所属する少女であり、中学二年生と食べ盛りの時期である。無言で小さく頷いた茶々丸が、部屋を出て行くと、「「「・・・・・・」」」 「うみゃ~ うにゃ『ガツガツ』」少女達が無言の中、茶々の咀嚼音と変な鳴き声だけが、部屋に響いていた。しばらくすると、お盆を持った茶々丸が戻ってくると、お盆に乗せたお皿をテーブルに並べ、「どうぞ、お食べください」「…いいの、横島さんの分は?」茶碗に盛られ湯気を立てる白米と、皿に大量に盛られた新鮮なお刺身を見たアキラが、唾を飲み込みながらも横島の食べる分の心配をしていた。しかし、目線がテーブルの上から離れていないことが、少女の心境を物語っている。『食べたい』と。「大丈夫です。横島さんには特別な部位を残してあるので」心残りが消えたアキラは、ふらふらっとテーブルに着き、行儀良く手を合わせ、「いただきます…」ご飯の茶碗を片手に、お刺身をぱくつくアキラが、「…んっ、トロも赤味も美味しい」幸せそうに呟くアキラが、パクパクと食べるのをちょっと羨ましそうに見る、和美と千雨に対して、「お二人もどうぞ」二人が答える前に、茶碗にご飯を盛る茶々丸。「気が利くね。ありがとう、茶々丸ちゃん」「しょうがねえな、食べてやるよ」嬉しそうに茶碗に手を差し出す和美と、そっぽを向きながらもしっかりと手を出す千雨に、わかってますと渡す茶々丸。そして、「…おかわり」ご飯粒を頬につけたアキラが、おずおずと空の茶碗を茶々丸に手渡し二杯目を催促する。3人でかなりの量のお刺身を食べた後も、さっぱりとしたマグロのお茶漬けを締めに、お腹も心も膨れた3人であった。満足感たっぷりの和美が、ゴロンと後ろに倒れ手を伸ばし、「美味しかった、もう食べれない」「…直ぐ横になると太るよ」満腹のアキラが、行儀悪く寝転がる和美をたしなめるが、「平気平気、こっちに基本いくから」満足し頬が緩む和美が、胸を指し示していると、『くそ、自慢しやがって』と千雨が怨嗟の念を送っている。そして、茶々のほうも食事が終わり、大きな欠伸をし体を思いっきり伸ばすと、眠いためにふらつきながらも和美に歩み寄り、「? なーにチビちゃん」夢うつつの茶々は、和美の声も聞こえていないのか無視し、和美の体を数回足を滑らしながらもよじ登り、少女の胸をクッションにして静かに寝始めた。茶々の行動に、焦った和美が小声で、「千雨ちゃん、私のバックからカメラとって撮影して!」茶々との仲直りの記念撮影をしたい和美が、千雨にお願いすると、お願いされた千雨が自信なさげに、「うまく撮れるかわからないぞ?」あまり期待されても困り、後で文句を言われたくない千雨だったが、和美は不敵に笑い、「被写体は、私とチビちゃんよ。どんな下手な人がとっても、最高の写真になるわ」「さいですか…どっからくんだ、その自信は」気が抜けた千雨は、適当に和美のデジカメで写真を撮り始めた。アキラ・千雨・和美の表情が自然と緩む、そんな穏やかな空間の中、(横島さんと茶々、そして楽しい友人達。こんな時間が、ずっと続いてほしい)自然と口元が緩む茶々丸だったが、少女の願望は力を蓄える吸血鬼により、打ち砕かれる事になる。優しき少女が傷つくばかりの、吸血鬼が行動を開始するまでの時間は残り僅か。少女達の白化、茶々との仲直り、すべてが上手く解決したと思われていたが、大きな大きな問題が残っている。達観したのか、それとも色々と諦めたのか笑みを浮かべた少女たちは、和美の胸をクッション代わりにして寝る茶々を見て、「さて、どうするか」「…どうしよう」「ええ、見事に禿げてますね」そう茶々の体には、円状に毛が無い所が二箇所ある。3人の少女が思いあぐねる中、「チビちゃんは、本当に可愛らしいわ」唯1人、寝転がっている和美だけが、茶々と仲直りできた幸福感に包まれていた。そして、和美が全くあてにならないことを理解し、ため息をつく3人。「とりあえず、この部屋を片付けますか」周りを見回した茶々丸が言うと、アキラと千雨もキョロキョロと部屋を見ると、「…散らかってる」「ポイポイと物投げる奴が居たからな」横島の部屋は、茶々の機嫌回復のため茶々丸が色々探し回った代償として、いたる所に物が散乱していた。千雨にジト目を向けられた茶々丸は、決して目を合わせようとはしなく、「まあまあ、3人で掃除すれば直ぐ終わりますから。千雨さんは洗い物を、アキラさんは私と部屋の片付けを手伝ってください」「…わかった」「さっさとやるか」めんどくさそうに千雨が、テーブルの上の茶碗等をまとめ持っていき、どこから片付けるか悩んでいたアキラが、ある一角に目を向け顔を赤らめ、「…えっと…アレどうする、捨てる?」「それは可哀想です。男性には必要な物ですから…一冊くらい持って帰りますか」「い、いらない…」茶々丸が率先してその一角に赴き、横島のコレクションを部屋の隅にキレイに並べだしている。もうそれ関係には関わりたくないアキラは、茶々丸の方を見ないようにしながら、頬を一回叩き『…やるか』と気合を入れ片付けを始めた。そして、ナチュラルに数に入れられていない和美は、「ほーら、このリボンも似合うよ。うーん、こっちも捨てがたいわね」それはそれは楽しそうに、茶々をコーディネートしている。茶々の小さな体のいたる所に、様々な色のリボンがくくり付けている。寝ている茶々を、器用にも起こさずに胴体にもリボンを巻いていく和美。「ねえねえ、どう可愛いでしょー」コーディネートが終えた茶々を、和美が他の少女達にお披露目すると、「「「いいかも」」」「でしょ! この黒と赤のリボンが、白い茶々に映えていいと思うんだ。それに、この紫の…」嬉々として茶々の良さを説明する和美だったが、アキラ達がいいと思ったのは、茶々の禿が隠されていいと思っただけであった。簡単にバレてしまうとわかっていたが、藁にも縋る思いの少女3人。そして、対照的な少女が胸の上の茶々をかいがいしく撫で、「うんうん、これなら横島さんも可愛いって言ってくれるよ」自信作の完成に大満足の和美であった。「忠夫さん、今日はお付き合いいただき、ありがとうございました。とても楽しかったです」「俺も楽しかったよ」にこやかに笑い並んで歩く二人は、他愛のない事を話しながらも、何時の間にか別れなければならない地点までたどり着いていた。横島が千鶴を見送るため立ち止まっていたが、俯いて帰ろうとしない千鶴に、首を傾げているとお腹の前で手を絡ませたりしモジモジする少女が、「そ、その、また会ってくれますか?」「…お、おう。ワイでよければ誘ってくれ!」千鶴の仕草に身悶えそうになった横島が、了承をすると少女はニッコリと笑い、「きっと誘いますね。では失礼します」「気をつけて帰れよ」千鶴が去っていくのを手を振りながら見送る横島が、今日一日を振り返り顔をだらしなく崩しながら口を開くと、「可愛かったな~ さて俺も帰るか…待ってろよ、茶~々~」公園での痛みを思い出した横島は、悪魔の様な黒い尻尾と羽、そして禍々しい角と牙を生やし、ゆっくりゆっくりと歩き始めた。野良猫達がアパートの近くのゴミ捨て場にて、ゴミ袋を漁ってる横をデビル横島が通り過ぎると、クモの子を散らすように逃げ出す猫たち。ゴミ袋からは、大きな魚の骨が見えていたが、それには目もくれず横島が、アパートの自室前に到着し、「か~え~た~ぞ~ 茶々!」ゆっくりとドアを開けた先には、茶々が大人しく玄関で座り横島の帰りを待っていた。そして、茶々を視界に入れた瞬間、「おっ、似合うな。はっ、違う」色とりどりのリボンで包まれる茶々を見た横島は、毒気が抜けていき角と牙が引っ込んでいった。しかし、今日は説教すると決めている横島は、これ以上邪気が抜けないようにし、気をしっかり持ち羽と尻尾を揺らしている。そして、茶々は横島の威圧感には、全く動じていなかった。4人の少女が放つ、強烈な気配に比べると『ぬるい』とすら感じている猫である。「そんな可愛い格好してもダメ! 取るぞ」むずがる茶々を片手で持ち上げ、リボンを解いていく横島が、「茶々、あの人形で遊ぶのはダメって言っただ…」説教を開始した横島が、胴体に巻きつくリボンをはずすと言葉を止め、目をパチクリしたり擦ったりと、千雨が気がついた時と似たような事をし、「…ハゲ? …ハゲとる!」茶々を両手に抱きしめ焦った横島が、急いで玄関から飛び出して行き、「ぬを~ 悪い病気か! あ、あの子達に怒られる!?」茶々の禿た理由を勘違いした横島が、少女達に責められるシーンを想像し、『何やってんだよ』『…ヒドイ』『可哀想なチビちゃんだねー』『ここで茶々を飼うのはダメですね。他の飼い主を探しましょう』冷たい目を向け茶々を連れ去っていく少女達を、リアルに脳内で描かれると、「い、いやじゃあ、そんな目で見んといて! みんないなくならないで、あと茶々連れてかないで~」病院に向け横島は、魂の叫びを上げながら爆走中である。大抵の人たちは、横島の叫びを聞き道を開けたが、退かず走る障害となった不良グループを、「邪魔じゃ、ボケ!」この掛け声と共に、2~3潰していた。当初、横島が猫を飼う一番の理由は、猫のために遊びに来た可愛い少女達が、横島の世話もしてくれるためである。しかし、今では茶々も家族の一員であり、連れて行かれるのはイヤであった。まあ、少女達が来なくなるのは、もっとイヤであるが。ちなみに、胸に抱かれた茶々は、横島の想い等露も知らず、主人と出かけることが出来て、嬉しそうに『ゴロゴロ』と喉を鳴らし引っ付いていた。そして、病院に着いた横島が医師に言われたのは、「ストレスですね。好物でも食べさせて、安心できる人と居れば大丈夫ですよ」悪い病気ではなく、ホッとしへたり込む横島。そして、優しく優しく茶々を抱いて帰宅した横島は、「くっ…俺がストレスで死にそうじゃ」部屋の一角に並べられた本を見た横島が、先程とは違う理由からへたり込み、胃を押さえている。自身が並べたのではないため、少女達の誰かがやったと簡単に予想が出来、死にたい気分である。なぜなら、女子中学生にエロ本整理されたためである。しかも、『アイウエオ順に』。どんなに落ち込んでいてもお腹は減るため、食料を求めた横島が台所に行くと、「え~と、マグロのカブト焼き? ま、また珍しい物を」茶々丸が、横島に残していた特別な部位である。家庭料理ではまずお目にかかれない、食材と料理に圧倒される横島だったが、さっさとテーブルに運び胡坐をかくと、「まあ、食ってみるか。いただきまーす」胡坐の上に茶々を乗せ、もくもくと箸を進めていき、「意外に旨いな。ほれ茶々食うか?」箸で取った身を、手に取り茶々に食べさせようと、猫の目の前に持っていった。茶々は、とった部位の匂いを嗅ぐだけで終わり、プイと横を向いたのである。食べないと判断した横島が、自分の口に運び食すと、「贅沢なニャンコだな。こんなウマイもんを、お前にはこの味がわからんか~」茶々にぼやいた横島だったが、茶々が美味しく完食していた部位は、大トロであったとさ。目玉までちゃんと食べた横島は、疲れたため布団に入り携帯片手に、「安心できる人物か…あの子達しかいないよな」呟きながら『明日、遊びに来てくれない?』との内容のメールを送信した。すぐに全員から了承を得られたが、茶々をこのような姿にしたのは、少女達である事をこの男は知らない。安堵した横島が、布団に隙間を作り、「ほれ、茶々寝るぞ」 「にゃ きゅわ~」布団に入る直前、大きく口を開き欠伸をして、布団に入り込み横島の腕を枕にしている。茶々の息の匂いを嗅いだ横島が、「何かお前の息、生臭いな」顔をしかめる横島だったが、既に茶々は夢の中である。その日の夜、大学の研究室にて、パソコンと睨めっこしている超と葉加瀬に、「こんばんは。お夜食です」茶々丸が、気を利かせたのか、食べる物を持ってきた。ありがたく貰うため、席を立つ超と葉加瀬に、「マグロのお茶漬けです」「美味しそうネ」「いただきまーす」食欲をそそる匂いに、さっさと食べだす二人に、「食べましたね」意味深な発言をする茶々丸に、気がついた超が箸を止め、「…食べてはダメだったカネ?」「いえいえ、そう言うわけではないですよ。安心して食べてください。ただ…」超は、葉加瀬が美味しそうに頬張ってるのを横目に、「ただ、何ネ?」「少々食材にお金がかかってしまい、超のカードを使用しました」毒でも盛られてるかと思った超は、内心ドキドキしていたが、「何だその程度こと、気にしなくていいヨ。お金はあるネ」言質をとった茶々丸が、ドアの前で一礼しながら、「ありがとうございます。後日請求があるのでお願いします」「任せるネ」部屋から出て行く茶々丸を見送り、残りのお茶漬けをかき込み、「美味しいヨ」口の中に残る、味の余韻に浸っていた。月末になり、カードの支払い請求が来ると、「何に使ったネ! 茶々丸ー」超の叫ぶ声が聞こえた。300万オーバーの請求書を見て、さすがに目を丸くしていた。茶々にしっかりとリボンを巻いた日曜日、集まった少女たちは「可愛いですね」しか言わず、だれもリボンを解こうとはしないのであった。心の底から思っている和美以外の少女が、少し黒くなっていたが、すぐに藁人形に吸収され清らかな少女に戻っていくのであった。数日後、ちょっとだけ藁人形がでかくなっているのに、横島が気がついたが、なんら対策が立てられず、棚に仕舞うしかないのであった。こうして充実した休日を終えた少女達は、全くテスト勉強をせず当日を迎え頭を抱える光景が、テスト中にクラスメートに見られている。他にも心ココに在らずの少女が一名、適当に答案を埋めていた。そして、テストの成績発表当日、「今回の最下位、ブービーメーカーも2-Aでした。いつも通りでしたねー」司会者の明るい声とは裏腹に、落ち込み茫然とする少女達に、最終課題に落ちたネギが、「み、みなさん、ほ、本当に短い間でしたけど、そ、そのありがとうございました」マギステル・マギになる夢が途絶え泣きそうになるネギ。しかし、頑張った少女たちの姿を知ってるだけに、落ち込んでほしくはなく、「5人組も、アレだけ頑張れるのですから、他のしっかりした先生なら、も、もっと成績が上がりますよ」声を震わせ泣きそうになるのを堪えるネギに、図書館島で一緒に行方不明になっていたバカレンジャー達が、「ネギ、ごめんね。わ、私達のせいで、アンタの夢が」「もう一度、テストやらせてもらうアル」「子供には厳しすぎるよー」「スマンでござる」少女達に謝られ抱きつかれるネギ。そして、他の生徒達からも次々と、「ねっ、他に手があるんでしょ」「もっとネギ君と一緒に居たいよ」「いいんちょ、何とかならないの?」「ダメ元で学園側に交渉してみましょう」教え子達からの心温まる言葉に、とうとう感極まって涙腺が緩み、「う、うわ~ん。ぼ、僕もみんなと別れたくないです。ひっく、もっといっぱい、みんなの事が知りたいですし、一緒にいたいです」学園ドラマのワンシーンのように、少女達に包み込まれるネギに近づく影が、「フォフォフォ、何の騒ぎじゃ?」脇に封筒を抱えた学園長が登場。学園長に気がついた2-Aの少女たちが、「学園長、ネギ先生にもう一回チャンスをあげて下さい」「おじいちゃん、お願いや」若い女子に囲まれ満更でもなさそうな学園長が、孫娘の頭を撫でながら、「まあ、待つんじゃ。すまんかったの、遅刻組みの採点をワシがやってのう、発表時はまだ合計されてないんじゃよ」「「「えー 何ですかそれ!?」」」申し訳なさそうにする学園長に、少女達が激しく詰め寄る。その中、ネギだけが事態について行けず、茫然としながら無意識に、「…2-Aは最下位じゃあないかもしれない…」立ち尽くし呟くネギの声を、耳ざとく聞きつけた学園長が、「うむ、その通りじゃ」「「「「…やったー!」」」」学園長の口上に、数瞬の間を置き意味を理解し、飛び上がり歓声を上げる少女達。そして、期待に満ちた目で学園長を見上げるネギが、「じゃ、じゃあ、僕のクラスは、もしかして上位に入ったりしてるんですか」「うっ…」キラキラした目で見つめるネギに、うめき声を上げ視線を逸らした学園長が、ネギの頭に手を置き、脇に抱えた封筒を片手で上手に開けると、「いいかねネギ君、人生とはままならんものなんじゃ」「?」酷く言いにくそうな学園長が、必死に言葉を紡ぐために、封筒から出した紙を見ながら口を開け、「…ブービーじゃ」「そんな! ビリって事じゃあないですか!」学園長の表明に、担がれたと思いショックのあまり涙目のネギに、1人の生徒が凝視し「ハァハァ」息荒く鼻血を出していた。大多数の生徒は、その女子をシカトしネギの大声に首を傾げていると、「それと、さっきも気になったのですが、ブービーメーカーって何ですか?」ズッコケル2-Aの生徒と学園長の姿があった。『ブービー』とは基本的にビリをさす言葉であり、『ブービーメーカー』という言葉も日本独自のもので、日本以外では通用しない言葉である。『ブービー賞』が最下位から二番目も同様である。その後、懇切丁寧にネギに『ブービー』・『ブービーメーカー』を説明をし、納得したネギが、「『ブービーメーカー』なんて言葉があるんですね。と言うことは、2-Aは最下位脱出したんですね!」「うむ、これで最終課題も合格じゃ。これからも精進するのじゃぞ」「はい!」満面の笑みを浮かべ返事をするネギに、近くに居たバカレンジャーたちが、「あんなに頑張ったのにブービーか~」「まあまあ、ネギ坊主がいなくならないのだから、いいでござる」「結果がよければいいのです」「私達の点数足したくらいじゃあ、ビリ2が妥当でしょ」「そ、そんな事ないですよ。みなさんが頑張ったから、最下位脱出できたんですよ」手をグルグル振るネギが、バカレンジャーを励ますと、「そうじゃぞ、君らが頑張らなければ、ダントツで最下位じゃったぞ」努力が報われた事を知ったアスナが、「私達の頑張りは無駄じゃあなかったんですね!」「そうじゃ。これから努力するんじゃぞ」「はい! …でも、私達の成績上がったなら、順位ももっと上がる気が?」元気良く応答するアスナだったが、釈然としない様子で考え込んでいる。思案するアスナに気がついた学園長が、誰にも聞こえないほどの小声で、「…鋭いの、今回はもの凄く成績を下げた子が何名かいたからの…本当に良かったわい」ネギが合格し、胸中胸を撫で下ろす学園長であった。数日後、クラスメートに点数が知れ渡ると、バカレンジャーならぬアホレンジャーが誕生した。アホパパラッチ「まあ、仕方ないか、勉強してなかったし。さあー 今日もチビちゃんに会いに行っこうと」朗らかに笑い結果を受け入れると、さっさと気持ちを切り替えて、猫に会いに行く少女。アホバーサーカー「…私そんな凶暴じゃあない」『バーサーカー』の意味を調べ、愕然としクラスメート達に訴えたが、誰にも賛同される事の無い発言であった。アホノイド「今回のテストは、みなさん頑張ったのですね。…何故でしょう?」テストに何が懸かっていたか、説明されていたが既に忘れているガノノイド。アホバイーン 「あらあら、テストなんて受けたかしら」本当は、『アホ年増』との称号になりそうだったが、空気を呼んだ周囲が、直前に変更。ちなみに、テストはしっかりと受けている。アホメガネ「眼鏡かよ(アホコスプレヤーとか言われたら、死ねるな)」安直な名称に、まっいいかと思う少女。何時バレるかわ運次第。コメ返しコンテナ様:あやか、千鶴・アキラ、この中で最強はとりあえず謎です。相性がありますから。バーサーカーに千鶴の威圧は効きそうにないですし。尋問や修羅場は今のところなしです。ライア様、ご感想と助言ありがとうございます。ゆうメンタルクリニック見さしていただきました。なるほど13歳以下ですか。茶々丸以外の子はセーフですね。ありがとうございます。私見ですが、30代のおっさんが14歳ほどの中学生と付き合ってもロリコンと思っています。良様、千鶴は、自分の中でも初期の4人とは、何となく毛色は違う気がします。しかし、少女たちとも仲良くさせる予定です。麒麟様、哀れと思うなら、少しだけ泣いてあげてください。吸血鬼編出番も減りますし。ディス様、アドバイスありがとうございます。気がついていませんでしたが、見直したらソレばっかりですね。一部があと一話で終わると思うので、改定をメインにして行こうと思います。ありゃりゃ様、精神面のみ、馬鹿みたいに鍛えられています。今のところ千鶴のほうが白いです。ちなみに、噂はすでに一部で立っています。お盆は仕事の休みがとれ、実家に帰るので執筆できません。また更新が遅れると思います。申し訳ありません。