3月14日(土曜日)、とあるアパートの一室が、魔境と化していた。その魔境にて、生存が確認できるのは五つ。部屋の中央にてテーブルを囲い、この魔境を作り出す存在が4つ。部屋の片隅で、4つの気配に震える存在が一つ。重々しい空気の中、魔境を作り出す一角が口を開いた。「…本当に、千雨ちゃんがあげたんじゃあないのね?」「ああ、私のはココにあるからな」千雨は目の前に置かれた、厚さは2~3cmほど、大きさは掌より少し大きい程度の物を、親指と人差し指で挟んで持ち上げ周囲に見せた。「…じゃあコレは本当に?」抑揚のない声で一人が呟くと、全員の視線がテーブルの中央に集まり、「ええアキラさん、間違いなくコレは私たち以外の誰かが、渡した物です」その言葉に、全員が息を呑み『ではいったい誰が?』と思ったが、残念ながら手がかりは少なすぎた。再び静けさが支配する空間の中で、部屋の片隅で震えるだけだった存在が、耐え切れずに「ひ、ひゃ~ん」恐々と鳴き声をあげると、みんなの光る目が自身に向き、耳を伏せながら『ビクッ』と一回だけ大きく動いたが、圧し掛かる重圧のため震えすらなくなった。「茶々、ご飯はまだです」「チビちゃん、大人しくしてなさい」「…寂しかったんだね」アキラが、親切心から茶々を抱き上げ、自身の太ももに乗せた。そのときの猫の心境は、『えっ! そ、そっち行きたくないんだけど』と内心もの凄くいやだったが、体がまるで動かずなすがままであった。最後に大きく口を開け、「ひゃ~~ん」と鳴いたが、今度は誰一人視線を向けなかった。茶々の純白の毛が『パラパラ』と何本も抜け落ちながら、彼女は心の底から少女達が来るよりずっと早く出かけて行ってしまった、大好きな主の事を思い出し『ご主人様、早く帰ってきて~~』と切に願った。テーブルには、ノートや筆記用具などの勉強道具が散乱していた。そして、全員の焦点が合う中央には、食べかけのためか歪な形をしたチョコレートが、異様な存在感をかもし出していた。「へっくしょ~ん」少女を連れて歩いていた横島が、盛大にくしゃみをしたために、前を歩く人の後頭部に唾や鼻水を吹き付けた。鼻水をつけられた男に、横島は思いっきり睨まれると「あっ、すんませんすんません」と男に向かいへこへこと頭を下げた。唾をかけられた人物は、横島の横を見ると「…何でこんな奴に…」と文句を言いながら、不機嫌そうに歩き去って言った。「誰か噂してんのか?」鼻をすすった横島は、誰に言うでもなくぼやくと、映画館から一緒に出てきた少女が心配そうに、「忠夫さん、風邪ですか?」「ん~ ちょっと寒いけど別に平気だぞ、千鶴」心配そうに横島の顔を覗き見る千鶴に、「ハッハハ」と高笑いを上げ元気である事をアピールしたが、「寒いんですね。これで暖かいですか?」横島が寒いと言ったため、千鶴は『ギュッ』と横島の肘を抱きしめ、横島と密着し暖を取り合った。衣服を着ていても主張する少女の胸に、二の腕辺りを挟まれた横島は、至福の感触を味わいながら、「俺は暖かいけど、千鶴はこんなにくっついて暑くないか?」まだ中々気温が上がらないため、千鶴は黒を基調とした服の上から防寒対策に赤いコートを羽織っているため、十分暖かく横島と寄り添うとむしろ暑いのだが、「寒さと言うのは建前で、忠夫さんとこうしていたいんですよ」言い終わった千鶴は、ニコニコ笑いながら甘えるように横島の肩に頬を当てた。千鶴の無邪気な笑顔をカワイイなと思った横島が、「どっかで休むか」「そうですね。ふふ」何故か急に笑い出した千鶴が気になった横島は、「何か楽しい事あったんか?」「忠夫さんと一緒にいると心地良いので」「そ、そうか」「はい」見目麗しい少女に、そのような事を言われた横島は、嬉しさと気恥ずかしさからそっぽを向いてしまった。しかし、横島の態度を気にしない千鶴は、横島に甘えるように密着した。那波千鶴、クラスでもお姉さんやお母さん的ポジションにいるため、甘えられることがほとんどで、甘えることがほとんどなかった。しかし、忘れてはならない千鶴もまだ十四歳の少女である。まだまだ甘えたい年頃である。しかし、周りにいる大人や先生からも、大人顔負けの見た目と風格、そして落ち着いた性格のため、しっかり者と認識され甘えづらい空気であった。そんな大人の様な少女の前に現れた男は、一目で年齢を見破ったため取り繕う必要もなく、年相応に甘えることが出来る存在が出来た。そして、少女はその男性に甘えることを決めたのであった。その日少女たちは、勉強をするため横島のアパートに集まっていた。期末テストの時期が近くなると、周りから「あの子達、男がいるんじゃない?」との噂が流れ始めた。特に昨夜から寮にいると何かと騒がれ寮内では勉強しにくいため、和美達は試験対策のため図書館島ではなく、落ち着ける横島宅で勉強していた。アパートに着くと、ゴムボールを使い茶々と遊んでいた茶々丸もいたので、勉強会に加わえた。勉強を始めて十数分経ったときに、ココで勉強する理由がわからない茶々丸が、「どうして寮ではなく、ココで勉強してるのですか?」「寮じゃあねえ~ ちょっと昨夜から気まずいから」「ああ、全くだ」昨日の夜の出来事を思い出した和美と千雨が、呆れながらアキラに視線を向けた。二人に呆れられる意味がわからないアキラは、不思議そうにしながら、「…私は、二人に誘われたから」本気で判らなさそうにしているアキラに、唖然としてしまった千雨が、「なあアキラ、背中とか痛くないか?」「…別に」アキラが答えると、千雨と和美が顔を近づけコソコソと、「なあ和美、昨日あいつ背中から落ちたよな?」「うん、でもそういえば全く痛そうにしてないね」「…どうした?」内緒話をする二人に、アキラが訝しげに思い声をかけた。和美が、何でもないと手を振り、「アキラ、昨日の夜何したか覚えてる?」「…気がついたら、ベットで寝てた。理由知ってるの?」アキラの疑問には答えず、二人は視線を絡ませると、(やっぱ風呂場のこと覚えてねえぞ)(まあ、忘れたほうがいいでしょ。クラスメート3~4人お風呂に沈めた事なんて)(だな)視線での会話を終えた二人は、首を傾げているアキラと茶々丸に、「知らない。千雨ちゃん何か知ってる?」「知らん。それより勉強するぞ」この話は終わりと和美と千雨は、率先して教科書と格闘を開始した。アキラと茶々丸は、二人が答えてくれそうにないので、仕方なく勉強に取り掛かった。ちなみに昨夜何があったかというと、入浴のため外したアキラのバレッタを人質(物質?)に、男について聞こうとする、ドッジボールの教訓を忘れた猛者というか蛮勇を行う者が7~8名いた。動揺しオロオロとしながらも、何とか奪い返そうとするアキラを、嘲笑うかのようにパスをまわしていた少女達だったが、数分すると内なる野獣を開放したアキラが、瞬きの間に3~4人を掴んでは風呂に投げ込み沈黙させた。残る数名も潰されるのを待つのみであったが、救世主が登場した。委員長・あやかであった。彼女は、クラスメートのためではなく、テストが近いのでこれ以上戦力を減らすのはマズイと思い、アキラの前に立ちふさがった。『涙目のバーサーカー』VS『哀しみゆえに愛をしる戦士』の死闘が幕を開けた。身体能力のアキラと技のあやかの対決は、5~10分間の対決であったが、寮の伝説になるほどの激闘であった。事情を知らない他のクラスの生徒達からは、『ネギ争奪戦』との噂が立っていた。結果は、死闘の間に更なる愛の力に目覚めたあやかが、一瞬の隙を突きアキラを地に沈めたのであった。ちなみに、死闘を制したあやかも、翌日何者かに倒され倒れ伏しているのを寮の自室にて、お風呂場で救出されたお礼を言いに来たクラスメート達に発見された。生徒達が、部屋の片隅で恐怖のあまり座り頭を抱える村上に、犯人を問い詰めるが決して口を開かなかった。倒れるあやかの傍には、黒と白の夫婦剣ではなく、2本のネギが無造作に転がっていた。しかしコレが凶器とは、犯人・被害者、そして唯一の目撃者である村上しかわからなかった。ちなみに、あやかのお尻は無事である。話は戻り勉強を始めた千雨が、「わるい和美、1月の終わりから2月上旬のノート見せてくれ」「えっ、千雨ちゃんも取ってないの?」千雨の声に顔を上げた和美も、誰かに見せてもらう予定だったため、残念そうな声を出した。「ああ…お前も取ってないのかよ。じゃあアキラは?」千雨は、和美が取ってないとわかるとアキラに矛先を向けたが、アキラも首を横に振り取ってない事を示した。千雨は、ノートなど持って来ていない茶々丸に聞くことはせず、何故全員がピンポイントでとり忘れているのかを、疑問に思い考え込む事数秒、「あん時か」取っていない理由に気がついた千雨は、思わず声に出してしまった。1人納得した千雨に、首を傾げた茶々丸が、「何かわかったのですか?」「一月前っていったらたしか、横島さんがえらい取り乱してただろ。そんで、私たちにキツイ言葉言った時だろ」勉強の手を止め聞いていた3人は、「ああ~」と理解した。その事で、新たな疑問が出たアキラは、「…何で横島さん、あんな事言ったんだろう?」「う~ん、本人は『ごめん』の一点張りで教えてくれないしね」横島は、誰が聞いても引きつった表情のまま固まり、「ごめん」や「すんません」しか言わないでいたため、真相を知る者はいなかった。悩む千雨・アキラ・和美を、眺めていた茶々丸が、「別にいいのではないですか? 横島さんと再び、仲良く一緒にいれるのですから」どことなく嬉しそうな茶々丸の、的を得た意見に『はっ』となった3人は、それもそうかと思い再び黙々と勉強を開始した。元々勉強する気がなかった茶々丸は、何故集まってまで試験対策をしているのか気になり、「みなさん、何故こんなに真面目にしてるのですか?」「今回はいいんちょがうるさいからな~」ため息をついた千雨は、休み前の金曜日にクラスの委員長あやかに捕まり、勉強するように釘を刺されていた。今まであやかが、勉強しろと言う事があまりなかったので、逆に謎が深まってしまった茶々丸は、「何故そのような事を?」「いいんちょのお気に入りの、子供先生がクビになるみたいだからね」「まあクビになってもいいけどな。あのガキ一日授業サボってるしな。自業自得だ」あっけらかんとしている和美が、事情を簡単に説明し、試験前日に学校に来なかったネギについて、千雨が本音を口にした。「そうですか、マギ先生がニートになるのですか。それは大変ですね」「…茶々丸、まだネギ先生の名前覚えてないんだ」いまだにネギの名前を覚えずにいる茶々丸に、呆気に取られたアキラはジト目を向けた。マギ先生=魔法使い先生、あながち間違っていないのだが、そのような事をアキラ達が知るはずもなかった。それに、茶々丸は真剣に間違えていたし、彼女はネギが魔法使いという事すら知らないでいた。空回りしている彼女の母・エヴァは、茶々丸が既に好きな人物の事なら調べ、知っているものと思い込み、説明していなかったのである。ちなみにエヴァは、家にて試験対策に明け暮れていた。ネギがいなくなっては、娘が悲しむと思い込んでいるエヴァは、過去のテストを探し出し傾向と対策を練っていた。この勉強によりエヴァは、全教科満点を取るが、一部の先生からカンニング疑惑が出てしまった。そんな、アキラと茶々丸のやりとりを千雨は、なんとなしに眺めながら、(目立たず、一人でいようと思ったけど、こいつらといるのも悪くないな)そんな事を千雨が思っていると、和美が千雨の顔を見てニヤついているのに気がつき、「…何だよ」「別に、千雨ちゃんが嬉しそうに唇吊り上げてるてるから、気になってね」「なっ」慌てた千雨が、自身の頬を両手で触り確かめると、「くっくく、嘘よ」口を押さえた和美が、笑い転げまわった。嵌められた千雨が、恥ずかしさを隠すため座っていた座布団を持ち上げて、和美を『バシン、バシン』と叩いた。「チウちゃんやめてよ~ いたいよ~ 友達でしょ」「知らん、お前なんて友達じゃねえ!」和美とじゃれ合う千雨を、今度は茶々丸たちが穏やかに見つめているのに気がつき、そちらに攻撃目標を変えたのは数分後であった。身体能力の高い二人には、千雨がやたらめったらに振り回す座布団を、『ヒョイヒョイ』とかわし掠りもしなかった。千雨は、あまりにも当たらないので、「テメーら本当に人間か! 掠るぐらいしろ~」「私、ロボットですから」茶々丸の冷静な突っ込みに、結構な頻度で忘れてしまう事実に、自身の常識が悲しいことになっていることに気がつき、四つん這いになった。その後、肩で息をし茶々を胸の上に乗せ倒れた千雨を除く、他の3人が昼食を作り出すのであった。胸に乗った茶々が「大丈夫?」と見つめていると、「ハァハァ…だい…じょうぶ、だから、退いてくれちょっと重い」大きくなってきたため、重くなった茶々の重量が疲れた体にはきつかった。しかし、茶々が丸くなって寝ると、移動させるのが可哀想と思ったため、茶々の試練に耐える千雨だった。所変わって横島達も、千鶴が前から行きたいと思っていたカフェに着いていた。店の内装は白をメインとし、どちらかといえば女性向けの店であったためか、男性客は残念ながら横島しかいなかった。場違いな場所に来た感が強い横島は、周囲をキョロキョロと眺めながらも、千鶴に腕を引かれて席に着き適当に注文を頼み終えると、「素敵な店ですね」「そうだな、ちょっと居づらいけど」席についても、横島が落ち着くことはなかった。そして、午前中に見た映画について千鶴が感想を言い、横島が聞き役になっていった。見た映画は、アドベンチャー映画で『カリブの海賊』をモチーフにしたものであった。残念ながら横島は、女優しか見ておらずストーリーをほとんど覚えていなかったので、適当に相槌を打つだけであった。そして、一足先に横島が注文したピラフが来ると、「食べてていいですよ」「そうか、んじゃお言葉に甘えて」大きな口を開けた横島が、店の雰囲気など考えずガッツクのを、ニコニコしながら千鶴が眺めていた。横島がほとんど食べ終えたころに、千鶴のサンドイッチも来ると、「美味しそうじゃん、ゆっくり食べな」アイスコーヒーを飲む横島に向かい、千鶴が小さめに切られたサンドイッチを取り、「では、お一つどうぞ、アーン」「アーン(ふっふふ、茶々丸ちゃん達で慣れ取るわ~)『ガチン』…何で?」最近では、茶々丸以外の子達にも、アーンの試練を受けている横島であった。無表情の茶々丸、ノリノリの和美、頬を赤らめながら行うアキラ、様々なパターンで攻められていた。残念ながら千雨は、まだ恥ずかしさに勝てず、見ているだけであった。千鶴の手が近づくと横島の口が閉じたが、タイミングよくサンドイッチは抜き取られ、歯と歯が当たる音が響いた。お預けを喰らった横島が、非難の目を向けると、片頬を膨らました千鶴が、「他の女性の方々の事を考えるのは、失礼ですよ」「…何でわかったの…」「カンです」「…すんません」汗を流す横島が、素直に謝ると再びサンドイッチが横島の口に向かってきたので、今度は無心で口をつけるのであった。モグモグと口を動かす横島が、『これも、ウマイな』と思っていると、千鶴が皿ごと横島の前にサンドイッチを置いた。横島は、口の中のものを飲み込むと、「くれんの?」「さきほどの罰です」「へ?」千鶴の発言に、?マークを何個も頭に浮かべる横島であったが、千鶴の次の行動でイヤでも理解した。赤くなった千鶴は、膝の上に握りこぶしを置き目を瞑り「アーン」と小さく口を開けて待っていた。その姿は、親鳥からエサを貰う小鳥のようであった。「ち、千鶴?」「アーン」汗が大量に流れ出した横島が、千鶴から目を逸らすと、あることに気がついた。何と店内にいる店員から客の全ての視線が、横島と千鶴に注がれていた。全員ワクワクしながらが目で語っていた、『早くやってあげなさい』と。視線に押されるように、横島の手が油が切れた機械のように動き一つのサンドイッチを取った。そして、震える手を千鶴の口元まで運び、「は、はい、アーン」横島の視線が千鶴の唇に集中し、彼女が飲み込むまでほうけたように見続けていた。飲み込み終えた千鶴は更に、「アーン」腹をくくった横島が、どんどん千鶴に食べさせていくと、段々変な気持ちになってきて、(何だか餌付けしてるみたいで、ちょっと楽しいな…千鶴、可愛いし」大人しく口を開け頬を染め横島の手を待つ愛くるしい千鶴に、最後の二フレーズが気がつかぬ内に声に出ていたが、千鶴も聞こえない振りをしていた。横島の無意識の発言に、少女は内心でとても喜んでいた。少女は、『キレイ』や『美人』と言われることが多かったが、『可愛い』と言われ慣れていなかったため、とてもドキドキしていた。千鶴の一口が小さいため、10分ほどその光景が続き、店内はとても暖かい雰囲気に包まれていた。『カシャ』とシャッター音が数回鳴ったが、千鶴に集中する横島の耳には幸い届いていなかった。全て食べさせ終えると、店内から拍手が起こり、横島はいたたまれなさから死にたくなっていた。千鶴は、照れくささから下を向きながらも、お日様のようなほほ笑みのため、周囲からは可愛く見られていた。横島の精神が一段階成長している頃、横島宅では食事と休憩を終えた少女達の勉強が再開されていた。真面目に勉学に励む千雨の膝元に、短めの紐をくわえた茶々が近づき、「遊んで」と目をキラキラさせていた。千雨は、苦悶の唸り声を上げ、紐を取ろうとする左手を右手で掴み、鋼の精神にヒビを入れながら、「うう、ゴメンな茶々、今日は勉強しなきゃダメなんだ。また今度な」それでも、ジーッと上目使いに千雨を見る茶々であったが、彼女が遊んでくれないとわかると、トコトコとアキラのところに向かい、先程千雨にした事と同じ事をした。誘惑を我慢した千雨が、(我慢しろよアキラ、遊びに来たんじゃあないからな)アキラに向かい思念を送ったが、アキラは茶々に見つめられると、ペンを手放しノートを閉じ、「…遊ぼ」「『バン』私も遊びたいわ、ボケ!」茶々の攻めに、一瞬で落城したアキラを見かねた千雨は、テーブルを叩き怒声をあげると、落ち着き払ったアキラが、「…我慢は良くない」「テメーのは、忍耐力がねえって言うんだよ!? 話してる最中に手を振るな!」「…いつのまに」千雨が叫んでる間に、アキラは自身すら気がつかぬ内に茶々から紐を取り、手首を動かし紐を自在に操っていた。生き物のように動く紐を、茶々が寝転がって腕を振るったり、飛び跳ねて追いかけていた。千雨がさらに何か言う前に、「アキラさん、紐捌きが上手ですね」「ほんと生きてるみたいじゃん」和美と茶々丸が、躍動的に動く紐を目で追いながら感心していた。褒められちょっと照れたアキラが、更に腕を動かし、「まき絵にコツ教わった…」茶々と遊ぶためだけに、リボンを自由自在に操るまき絵に、紐の動かし方を習っていた。練習の甲斐もあり、短い紐なら自由自在に動かせることが出来ていた。照れたアキラが、自慢げに紐を動かし気がつくと、茶々が紐に全身を捕縛され動けずにいた。茶々がコロンと転ぶと、慌てたアキラが「ゴメン」と謝りながら、茶々に絡まった紐を外した。意外に楽しかったのか茶々は、もっとやってと期待に満ちた目で見ていると、「アキラ、私にもやらして」遊びたくてウズウズしだした和美が、アキラから紐を譲り受け、「さあチビちゃん。あそ…ぼ…」和美が紐を持ち茶々に近づくと、茶々は脱兎のごとく逃げ出しアキラの背に隠れ、ソーッとアキラの背の影からちょっは気になるのか和美を見ていた。悲しみからかプルプルと震える和美が、「やったー! とうとうチビちゃんが、部屋から逃げなくなった」悲しみではなく歓喜の震えであった。茶々を洗ってから最初のころは、和美から隠れ姿すら見せないでいたのが、最近ではやっと一緒の部屋にいてくれるまでは、関係が修復されていた。一緒の部屋にいても、目が合うだけで逃げ出していたのが、やっと様子見で治まったので和美は本気で嬉しかった。それを見ていた3人は、茶々の為に猫缶や遊び道具を買ったりして、何とか気を引こうと必死の和美を知ってるだけに、嬉しさを共有できていた。嬉しさと同時に千雨とアキラは、あまりにも哀れさを誘う和美の姿に、涙を流しそうになったのは秘密である。そこで茶々丸が、騒がしさがひと段落したためある提案をした。「紅茶でも入れますから、休憩しましょう」「…うん。一息入れよう」「まてまて、飯食ってから勉強してねえだろ」「では、千雨さんはいらないですね」「…いる」正論を放つ千雨だったが、自分ひとりで勉強するのが馬鹿らしく、自身の分もお茶を茶々丸に要望した。1人台所で紅茶を入れる茶々丸の足元に、茶々が擦り寄り『何か頂戴』とエサを要求した。4人の中で一番茶々の躾に力を入れる茶々丸は、決まった時間以外エサをやらないため、茶々の要求は却下されていた。「…茶菓子はどこでしたか」紅茶のお茶請けを探す茶々丸は、近くで茶々が戸棚を必死に開けようとしているのに気がつくと、茶々の横に膝をつき、「ココに何かあるのですか?」茶々丸が戸棚を開けると、密閉されたお菓子の箱を発見した。手に取った茶々丸は、中身を確かめずに、「重さからしてクッキーかチョコレートですか、みなさんのおやつはコレにしましょう」茶々丸は、お盆に紅茶とお菓子をのせ、みんなの元に戻っていった。茶々も茶々丸の後をついて行き、おこぼれを預かろうとしていたが、お菓子の場所を見つけた茶々が、自分の首を思いっきり絞めた瞬間であった。ここからあとがきと感想返し感想でロリについて何度か出ていますが、ロリについて今一わかりません。ネットで調べてると、ちょっと虚しくなります。18~19歳の横島、今でているヒロイン(茶々丸除けば)14歳。年齢さ4~5歳はロリなんでしょうか。それともロリは年齢層なのか?気を強く持って今度詳しく調べてみよう。1414 様、待っていただけて幸いです。今回も、お待たせしました。横島とはそのうち絡ませる予定です。コンテナ様、横島のコスプレはまだあまり考えておりません。赤貧魔術師は、どっかで見たことがるので、候補には入りません。エロ本ネタは、連続で使ったのでちょっと封印です。和美は、エロネタ言うときには顔赤らめてましたし、子供に見られるのと年頃の男性に見られるのでは、大分違うと思ったので。誤字脱字、報告ありがとうございました。直しておきます。良様、一家に入れるかどうかは、まだまだ決まっていません。茶々の友人で終わる可能性もあります。千雨は、死にかけというか一度魂抜けましたから、波長が合いやすくなっている感じです。千雨がGSか…ありゃりゃ様、茶々は横島の猫ですから。ペットは飼い主に似ます。ちなみに裸イベントは、当初アキラの予定でしたが、スタイル面で勝る和美になりました。次のラッキーイベントも、もう考えています。ちなみに、チョコは本当に唯のチョコです。トラブルの元ですが。