(…なんじゃ、今の感覚は?)執務室である学園長室にて、書類に判を押していた近衛 近衛門の手が止まりどこか遠くを見だした。すると、業務を手伝っていた源しずながジト目で、「学園長ボケた振りはもういいですから、早く必要な書類に判を押してください。もう22時過ぎてるんですよ、今日中に帰れなくなるじゃないですか」「ち、違うんじゃよ、しずな君。ちょっと思い出したことがあっての、タカミチ君に伝え忘れていたことがあったのでな、すまんが少しの間席を外してくれんかの」「はぁ、しょうがないですね、伝え終えたら休憩なしで判を押してもらいますからね」「う、うむ、しかし少しくらいなら休憩を入れてもいいのではないか?ずっと判を押しているとな、さすがに老人にはきついのじゃが」しずな先生はもの凄くきれいな笑顔で「駄目です」と言いきって、学園長室から出て行った。しずな先生が出て行ったのを確認し、タカミチ・T・高畑 に連絡をした。学園長の脳裏には候補として、エヴァンジェリンもあがっていたのだが力が封印されているのと、現場の状況もわかっていないため、最強の駒である 高畑を送ることにした。「…タカミチ君か……桜通りにて変な力を感じての……そうか行ってくれるか、すまんの~では報告を待っておるぞ」タカミチに連絡を終えた学園長はまた、書類との格闘を始めるかと思いきや、しずな先生が来るまで休憩をしていたのだが、バレてしまい説教されてしまった。休憩と説教のため時間を使いすぎ、しずな先生が自宅に帰れたのは、午前過ぎになってしまった。学園長からの電話に出た、タカミチは「はい高畑です…どうかしましたか、学園長?…そうですか今から向かってみます、走れば10分ほどで着くので…はい、では失礼します」携帯をスーツにしまうと、タカミチは桜通りに向かって走り出した。桜通りについた、タカミチが辺りを見回すと桜の木の根元に倒れている、17~8歳位のジージャンにジーパン姿の少年を見つけた。少年と周辺に注意を払いながら、どのような出来事にも対応できるように両手をポケットに入れて近づいていった。周囲には赤い布切れしかなく問題ないと考え少年に近づくと、細かい部分も視認出来る様になり、頭部にかなり強力な打撃を食らっているのがわかった。「これは、ひどいな。普通の人間では死んでしまうような攻撃を食らってっるな。すまない、もう少し早く感ずけていたら、助けることが出来たかもしれないのに」どうやらタカミチは偶然ここを歩いていた少年が、学園長の感じた力の持ち主に襲われてしまったと考えているようだ。学園長に連絡しようとし少年から目を離した瞬間、「いって~~、何だこの頭の痛みは~~」その声に驚いてそちらを見ると頭を抱えながら、死んだと思っていた少年が転がっていた。タカミチは、生きていたことに驚いて固まっていたが、すぐに再起動を果たし「君生きていたのか?頭は大丈夫かい?」二つの質問をするタカミチだったが、よく聞くと結構失礼なことを言っている。「生きとるわ!!勝手に殺すな、初対面の人の頭を馬鹿にするな」「す、すまない、悪気があったわけではないんだ、頭の怪我は大丈夫かと思ってね。」「ふ~ん、頭はまだ痛いが、まあ大丈夫だと思いますよ、ちょっと質問ですが、頭をやったのはあんたですか?」「いや、僕じゃあないよ。たまたま通りかかったら君が倒れてるのを見つけてね、どうしたのか心配になって近づいたんだ、大丈夫そうだけど頭部に衝撃を受けているようだから、救急車でも呼んで病院にいこうか?」「そうなんですか、ご親切にありがとうございます。え~と…」少年は、ダンディなこのおっさんに少し敵意を持っていたが、結構いい人のようなので少しは敬意を持って、接することに決めたようだ。「そうそうだまだ名乗っていなかったね、僕は、タカミチ・T・高畑、麻帆良学園中等部で教師をやってるんだ。そう言えば、キミは何でこんなとこに倒れてたんだい?」タカミチは先ほどの会話よりこの少年が、誰に襲われたのかは知らないようなので、名前と何故この場所にいたのかを尋ねると、「名前は、横島忠夫っていいます。ここにいたのは…」急に辺りを見回しはじめる、横島だった。「どうかしたのかい?」「ここ何処です?」「? ここは桜通りだけど」「え~と、東京の何処ですか?」「いや東京ではないんだけど」「「……」」「頭を打ってるからね、とりあえず病院に行って、診てもらおうか」「そうですね、お願いします」魔法関係者のいる病院に連絡して救急車が来る間に、色々持ち物を調べたが横島は、携帯はおろか財布すら持っておらず身分を証明することが出来なかった。タカミチは、今日の警備についている者の中で、実戦慣れしている者を選び周辺の調査を依頼していた。タカミチ本人も行きたかったが、目の前にいる横島と名乗った人物が気になったために行くのを断念していた。それは動きは素人臭いのだが、体はかなり鍛えられており、そして頭部えの攻撃を受けているのに、もうすでに平気そうにしている異常なタフさが気になった。まあタフさは職場の上司に強制的に鍛えさせられ、最近では闘神と魔神相手に戦闘を繰り返していたので、タフにならなければすぐに天に召されてしまう状況だった。何より少年から感じる、気のような力が一般人を大きく上回ってるのを感じたためである。このことを一通り学園長に報告すると、「わかった、すぐにワシも病院に行こ…す、すまん、しずな君がもの凄い笑みを浮かべておるので、直ぐには無理そうじゃ、その横島君と言ったかな、タカミチ君はその少年について行ってくれ。もしも何かあったら頼むぞ」説明を終えたら、一方的に学園長が話して電話を切ってしまった。色々確認している内に救急車が来たようで、横島と高畑が乗り込んだ。救急車内では、高畑と救急隊員が息を呑んだ。それは頭部以外にも、服の下にも傷がないかを確認するために、横島にジージャンと下のシャツを脱いでもらい、彼の上半身を見たためであった。「よ、横島君、その大きな傷は直ってるようだけど、何時ついたんだい?」彼の上半身には、普通では死んでいる腹と背中を貫通したような傷跡があった。「?? 傷って何を…なんじゃこりゃ!!」傷を見た横島本人も吃驚していた。「記憶にないのかい?」「全然ないです。誰じゃ俺の玉の肌に傷をつけたやつは! 責任取れちくしょ~~~」横島の絶叫が救急車内にとどろくのであった。横島とタカミチがいなくなり、警備の魔法先生が調査に来るわずかの時間に、一人の少女が桜通りを走っていた。「…まずいな、こんな時間に帰ったら寮長にキツイ説教される」走りながらどうやって、寮に気づかれず入ろうか考えていた彼女の視界に、何か赤いものが見えた。「…ん、何?」それがどうしても気になったようで、近づいていった。そこは横島が倒れていた地点より10mほど離れた地点であったが、彼女に知るすべはなかった。近づいて手に取ると「…ボロボロな布、もとは何かな?ん」ボロボロの布の下には、鎖の部分が切れてしまっている。太極図形のペンダントが落ちていた。少女はそれを手に取り「キレイなペンダント、…鎖が壊れたから、落とした? それとも捨てたの?」迷った末、少女はボロボロな布とペンダントを持ち帰ることにした。明日にでも同じクラスにいる、パパラッチの異名を持つ知り合いに情報を集めてもらおうと考えながら寮に帰っていった。注:前話に横島が持っていた槍は、横島が気絶し持ち手の意識が途絶えたため「収納」の太極文珠に収納されている。バンダナがボロボロなのは老師の打撃をくらったため。ペンダントの鎖が壊れているのも同じ理由。