まずは、お決まりの『メモリー・カスタマイズ』と『エモーション・カスタマイズ』を。基本的にはリーラにやったものと大して変わらないが、一つだけ大きく違う点がある。それは「人間である事に対する未練の削除」である。 シャーリーには、僕とリーラが以前倒した獣人をベースにしたホムンクルス素体を移植し、これにより彼女は、以前の彼女では絶対に有り得ないにしても、やはり一命を取り留めた。 ホムンクルスには“食人衝動”という大きな欠点が存在する。だが、これにも実は抜け道があるのだ。人間が本能的に持っている「人間である事に対する未練」が、食人衝動の源泉である。故に、水魔法であらかじめそれを無効化しておくのが、僕の取った対抗手段である。 こうして、シャーリーは人間であることをやめた。やめされられた。 否。やめさせたのだ。僕が。 ごめん、シャーリー。 濁流のフェルナン/第三段「では、獣人のホムンクルス素体……使ってしまわれたのですね」「ああ……ごめん」 事を終えた僕が最初に行なったのは、リーラに対する謝罪だった。獣人ベースのホムンクルス素体は、最初リーラにこそ使う予定だったのだから。「いえ、結構です。ご主人さまなら、もっと素晴らしいものを用意して下さると信じておりますから」 リーラはそう言うと、残念そうな笑顔を僕に向けた。 にしても、獣人以上の素体か。……さて、何があったか。最高レベルと言うとエルフ……いや、エルフの個体能力は先住魔法以外はそれほどでもない。それよりは、多少先住魔法が使える吸血鬼の方がいいかもしれない。あるいは、韻竜という手もある。「……韻竜か。そんな手もあるな」「韻竜…………いえ、韻竜は絶滅したはずでは?」「いや、少なくとも今の時点で三個体は生きている…………らしい。あまり確度の高い情報じゃないけどな」 ゼロ魔原作におけるタバサの使い魔シルフィードと、少なくともどこかに存在するはずの彼女の両親だ。 前世で読んだ二次創作だと、たまにシルフィードの存在が忘れられてタバサの使い魔の座には謎のオリ主なんぞが収まっていたりするからな。だが、確率自体はそう悪いものではない。「では、韻竜狙いで行くのですか?」「ああ。そういう訳だ。それより、そろそろシャーリーが目を覚ます」 同時に、手術台の上に横たわっていたシャーリーが呻き声をあげて体を起こした。「ここ……は…………」「起きたかシャーリー。自分が今、どうされたのかは理解できるな」 そう言うと、シャーリーは不思議そうに自分の掌を見つめて、ついで頭に手をやった。そこには、機械のような外観なのにどこか金属じみた三角形の耳がある。獣人型ホムンクルスとしての特有の形態だ。「はい……。まだよく分かってないみたいな、だけど今までと全然違うような、不思議な感じです」 シャーリーはふらりと立ち上がり、どこか眠そうな笑顔を浮かべた。「ご主人さま、お腹が空きました」 食べる。食べる。食べる。食べる。シャーリーは人としての年齢こそリーラよりも二つ上だが、ホムンクルスとしては生まれたての存在だ。誕生したばかりで腹が減っていてもおかしくはない。 食堂からリーラが持ってきた料理を、生まれ変わったシャーリーは驚くほどの勢いで平らげていく。気がつけば、あっという間に牛の丸焼き丸ごと一頭が消え失せていた。「ところで、ご主人さま? 私はこれから何をすればいいのでしょうか?」「そうだな。フェネット村に返すわけにもいかないし……まあ、地下工房の番人でもしてもらおうか。その内に武器も渡そう」 いつの間にか、僕に対する二人称が「坊ちゃま」から「ご主人さま」になっている。ホムンクルスによる人格の変化が原因か、それともその前段階の水魔法が原因なのか。あるいは、もっと根本的な部分に理由があるのか。その事実に意味もなく苛立ちを感じて、しかし僕はそれを押し殺して笑顔を取り繕った。 とりあえず、パピヨンの技術があるので核鉄を作って渡せば問題ないだろう。まあ、パピヨンの技術の中にある核鉄研究は、設備やら何やら色々と不完全なのでまだまだ研究が必要なのだが。「ここをこうすれば……と」 うん、中々いい感じだ。 ホムンクルスと並んでここ数年の研究課題であった核鉄の製造法が、ようやく確立できそうな感じだ。僕は一つ頷くと、机の上に乗っていた真鍮色の金属片を取り上げる。「武装……錬金!」 金属片が展開し、渦巻く黒い粉末が僕の手の中に現れる。黒色火薬の武装錬金『ニアデスハピネス』。「基本的な機能の再現には成功、か。しかし、それでもスペックはオリジナルの核鉄に届かないか……。まあ、技術的な熟練なんかもあるんだろうけど……後は精度を高めていくだけか。となると…………」 僕は再び設計図を引き直し、理論構築の部分をもう一度詰め直す。無駄になっている箇所を検証し、少しずつ完成度を高めていく作業。 僕はしばらく、机に向かっての作業に没頭を続けていた。理論の穴を埋め、術式の粗を検証し、金型の微細な歪みを解析し、少しずつ設計段階から完成度を高めていく。 その時。 軽くドアが叩かれた。「ご主人さま、いらっしゃいますか?」 聞き慣れた声がする。工房の鉄扉が開き、いつものようにリーラが入ってきた。「どうした、リーラ?」「ご主人さま、そろそろ出発のお時間です」「……? ああ、そうだったな。忘れかけていたよ」 確か、パーティの日だった。隣のアンペール侯爵家の屋敷で、ちょうど三番目の息子が産まれた祝賀会が開かれるとか。 気だるい音楽に合わせてホールの中央で貴族たちが踊る。他の貴族たちも実に楽しそうに談笑している。まあ、裏では公私に渡って色々と腹黒い事を考えていたりするのだろうが。僕はそれを、ホールの端からじっと見つめていた。 先程まではヴァリエール公爵家の三女とか、グラモン伯爵家の四男坊とかの姿も見かけたが、向こうは僕の事なんぞあまり気にしていないらしく、声すら掛けられなかった。まあ、どうでもいい話である。「楽しんでおるかな?」 その声に振り向くと、あまり見覚えのない貴族の男が立っていた。見覚えの無い顔だ。人の顔を覚えるのが何よりも苦手な僕だが、少なくとも、ここのアンペール侯爵ではないのは確か。隣には妙に愉快そうな顔をした父がいるので、とりあえずそっちに聞いてみる事にする。「父上、こちらの方は?」「うむ、こちらモルセール侯爵、ヴァリエール公爵の覚えもめでたい名門、モルセール家の御当主だ。お前にも一度紹介しておこうと思ってな」 このトリステインにおいて、ヴァリエール公爵を筆頭とする派閥の中にも幾つかの小派閥が存在しており、このモルセール侯爵もその中の一つを率いていた……ような気がする。あんまりよく覚えていない。「これは失礼を致しました。モット伯爵家の嫡子、フェルナン・ド・モットです。以後、お見知りおきを」「おお、君があのモット伯家の『神童』かね。私も君の秘薬には世話になっているよ。いや、若い頃には私も『抜かず四発のアンドレ』として鳴らしたものだが、恥ずかしながら君の薬が売れ始めるまではとことんせいぜい二発がいいところだったのだがね。ところが今では君の秘薬のおかげで、『抜かず四十発のアンドレ』だよ、ははっ」 ……四十発。すげー。いや、それは僕の薬がすごいのか? というか、それは喜んでいいのだろうか? 股間の中華キャノンからガトリング並みの連射をしているモルセール侯を幻視する。「それよりも侯爵、あの話を……」 父がいそいそといった様子で話しかける。このタイミング、という事は、おそらく僕にも関係のある話なのだろう。「おお、そうだったな。メルセデスや」 侯爵が背後にいた少女に向かって声を掛ける。綺麗な少女だった。黒に近い濃い栗色の髪に、アメジストのような深い紫色の瞳。何より、あまりにも苛烈なまでの心根の強さ。そんなものが混然一体となって、少女の魅力を作り上げている。「初めまして、メルセデス・エミリエンヌ・ド・モルセールと申します」 少女は完璧な礼儀作法で頭を下げる。その後を受けるように、父が相好を崩して少女の言葉を補足した。「こちらはモルセール家の御令嬢でな。今回、ちょうどお前の婚約者になる事になった」「そういう事だ。あの『神童』が我がモルセール家の婿とは、私も鼻が高い」 笑顔で手を握る大人たちと対照的に、少女の顔は苦々しく歪められていた。まあ、それはそうだろう。見た目からして、僕にはあまりにも不釣り合いだ。 ホールの中央では宴もたけなわらしく、グラモン家の四男とヴァリエール家の三女がやたら幸せそうな表情で踊っているのが見えて、まるで光と影だ、と僕は内心で舌打ちしながら、僕は隣で憮然とした表情をしている少女を見やる。 美人の婚約者が現れて、これで人生勝ち組……などとは思えない。少女の不機嫌そうに歪められた顔は、そんな喜びを叩き壊すには十分過ぎた。「まあモルセール侯、ここは若い二人に任せて、儂等は退散するとしましょうか」「ふむ、それはいいな。では、私達は他を見回ってくるのでな。メルセデスや、モルセール家の家名に恥じぬよう、しっかりとお相手を努めあげるのだぞ」「……はい、お父様」 大人二人が姿を消した途端、僕たちの間には重い沈黙が落ちた。 正直、話題なんてあるわけがない。元々引き篭もり予備軍であった僕は人と話す事が苦手だ。話しかける事が苦手だし、話を続ける事が苦手だし、話を切り上げるのも苦手だし、正直好きな話題以外で人と話すこと自体苦痛以外の何物でもない。 加えて、僕が持っている話題と言えば、機密以外の何でもないホムンクルス絡みのあれこれと、後は女の子と話すには少しばかり都合の悪い薬の製法とかくらいだ。 ちらりと、隣に立っている少女の横顔を観察してみる。「……何でしょうか?」「いや、何でもない……」 睨みつけられて目をそらす。不機嫌そのものといった顔つきの少女は、体裁を取り繕うことすらお前にはもったいないと言わんばかりの視線を叩きつけてくる。「気分が悪いなら、退席した方がいい。立つのが辛いなら手を貸そうか」「いえ、結構です。金に飽かせてモルセール家の家名を奪おうとする輩の手など、借りたくありません」「…………」 ……身に覚えが無いんだが。というか、ぶっちゃけた話、家名なんてものにはあまり興味もない。 確かにモット伯家は僕の持つギルガメッシュの黄金律スキルが影響しているのか、空前の好景気を迎えている。だが、だからといってわざわざ侯爵家の家名に金を払うような真似はしない。侯爵よりも一つ上の公爵にだって、金に困っている奴がいないわけじゃないのだ。 メルセデスは黙り込んだ僕に嫌気がさしたのか、不快気に顔を歪めて身を翻すと、僕を振り切って去っていく。一体、僕が何をした?「これが現実か」 現実なんてこんなものだ、と僕は溜息をつく。よほど僕が気に食わなかったらしい。まあ、そんなものだろう。僕は舞踏会のざわめきに背を向けて、ベランダの柵にもたれかかった。 背後を恋人か何からしき男女が談笑しながら通り過ぎていく。思わずそれに殴り掛かりたくなる衝動を、手をぐっと握り締めて押さえつけた。「ああ……恰好悪いなぁ…………」 深々と溜息をつく僕の背中に、幸せそうに笑うざわめきがのしかかってくる。背後の光から目をそらすようにしてワインの入ったグラスを掲げ、星のない夜空を透かしてみる。赤いワインの輝きを透かしてグラスに映る舞踏会は、血のようにどろりと赤い闇に包まれて見える。 あれが婚約者か。幸せな結婚生活のために使用する秘薬は、どれがいいだろうか? 女を従順な奴隷に変える手段など、モット伯家にはいくらでも存在する。いっそのこと、裸に剥いて首輪でも嵌めて平民のメイドに紐を引かせて四つん這いで歩かせるってのもいいかもしれない、そんな状態でも貴族の誇りなどとほざけるかどうか見てやろうか。などと脈絡もない想像が頭をよぎる。こんな事を考えていると、ああ、自分もまたハルケギニアに染まっているな、と嫌な感慨を抱く事になる。 踊り終わったグラモン家の四男がヴァリエール家の三女と仲良く退場し、驚いた事に、近寄ってきた王女様とヴァリエールの娘とに両側から抱きつかれてあたふたしているのを見て、僕は吐き捨てるようにして苛立ち混じりの吐息を吐き出し、ワインを注いだグラスを呑み干した。 酒は嫌いだ。前世の時から味覚が子供だから味も分からず、ただ喉が痛いだけ。昔から、何でこんな飲み物を皆好んで飲んでいるのか理解できなかった。それでも飲まなければやっていられない。今はそういう気分だ。 自分は自分、人は人だ。ブラウン管の向こう、ページのあちら側、あるいは網膜の反対側で、他人がどれだけ幸福を貪っていようが、希望に満ちた優しい言葉を掛けてくれようが、そんなものは別世界の、そう、僕には永遠に理解できないクトゥルフ的な異界の存在に過ぎないのだ。 目に見える幸福に伸ばした手は絶対に届かない。目に見えない幸福は常に手の中からすり抜けていく。昔からそう決まっていて、未来永劫そのままだ。外の世界なんていうものは、目の前一杯に迫った絶望から目をそらすための自慰行為の餌であり、少し先にある絶望をより深く味わうためのちょっとしたスパイスに過ぎない。そんなものだと、昔から知っていたはずだ。 他人の幸福なんて見るだけ無駄だ。救いなんていうのは妄想の世界にしか存在しない。「お嬢様には逃げられたか。まあ無理もない」「父上……見ていらしたのですか?」 僕がグラスをテーブルに戻すと、後ろにはいつの間にか父が立っていた。気配を探るのを忘れていたようだ。我ながら未熟。転生者として得た能力群も、ほとんど使いこなせていない。使い方一つ一つにいちいち粗があるのだ。「金に飽かせて家名を奪う……などと言っておられましたが……?」「それは違うぞフェルナン。今回、私は何もしてはおらぬ。むしろ、モルセール侯爵がぜひにとおっしゃってな」「というと?」 大体、予想は付く。僕を娘の婚約者にする事で得られるメリットの数々。水の秘薬だけではない。他にもたくさん。「これは、公にしてはならない事なのだがな。今現在、モルセール侯爵家の経営は少しばかり苦しくなっているそうでな。それで、モルセール侯女には元々仲の良い婚約者がおられたのだが、わざわざその縁談を断ってこちらに、という事で、とてもではないが断り切れなくてな」 いや、少しばかり、ではあるまい。貴族というのは見栄を張るのが基本だ。安っぽいプライドというだけではなく、家に置いてある調度品や酒などの値段が落ちているのを見られると、収入が下がったと見られて舐められるのだ。従って、他家の人間である父にそれを教えている、ということ自体がすでにアウト寸前という証拠。体面を気にして過少報告をしているだけで、実際にはもっと酷い事になっているのだろう。それこそ、もう目も当てられないくらいに。 ああ、つまり、だ。あの娘、モット伯家の財産欲しさに売られたということか。やれやれかわいそうに。喉の奥から暗い嗤いが込み上げてくる。多分、あの小娘は何も知らないのだろう。ああ、本当に可哀想なメルセデス! 何も知らないのもかわいそうだから、式を挙げたら教えてやるのもいいかもしれない。真実を知ることは大切だ、ってよく言うだろう。 まあ、どちらにせよ、謎は全て解けた。しかし全く、馬鹿馬鹿しい話じゃないか。元々モルセール家の汚した尻だろうに、それを拭く為に何で僕が恨まれなければならないのか。理不尽な話である。 にしても、相手の事情を理解してなお、恨みを晴らす事ばかり考えて、優しくしてやろうとかそういう考えが浮かばないのは、やはり僕が僕であり、転生しようが憑依しようが僕は僕以外の何物にもなれない、という証拠なんだろうな。 ああ、そうさ。この人格の薄っぺらさこそが僕の本質なんだろうさ。所詮僕は、どこまでいっても僕でしかない、ということだ。「あまり気に病む事はありませんよ父上。主にベッドの上限定とはいえ、女性を幸福にして差し上げるのは、我がモット伯爵家の伝統ではありませんか」 まあ、プレイの内容によってはベッドの外というのも可能だが。 どのみち、人格なんて魔法と秘薬を使えばいくらでも好きなように作り変えられるのだ。大事なのは外見だけ。そういう意味では、中々の縁談だったかもしれない。うん、やはり父には感謝するべきだ。「ほっほっ、それもその通りだな。確かに、お前は我がモット家の跡取りとして相応しいよ」 やや脂肪分の多い腹を揺らして、我が父は嬉しそうに笑う。別に少女の人権なんぞはどうでもいいらしい。無論、もう少し可愛げがあるならともかく、初対面であんな対応をされた以上、僕にとってもどうだっていい。故に問題はない。 希望を持つだけ、無駄ってものだ。そんなものだ。そうだろう? 僕は手に持ったワイングラスを、ベランダの下に広がる闇へと傾ける。舞踏会の光を浴びてきらきらと輝く葡萄色の液体が、闇の中へと流れ落ちていった。 もう一度星のない空にワイングラスを掲げてみれば、空っぽのワイングラスにはどろりとした闇が溜まり、そこにはもう、何も映っていなかった。 パーティーを終えて、今はモット伯領の館へと帰る馬車の中。窓から外の景色を見やれば、日は既に落ちて空は暗く、時刻は既に夜。窓から見える家並みは闇に沈み、しかし窓の奥には灯りがついており、人の生活の気配を漂わせているのが分かる。「婚約者……か」 どうでもいい事だ。どうでもいい事だが、あまりいい気分ではない。すぐ向こう側で、他の誰かが幸せそうな顔をしていればなおのこと。人の不幸は蜜の味だが、人の幸福は下水の汚物味だ。 ふと気付いた事がある。 グラモン家の四男坊こと、ギーシュ・ド・グラモンの事だ。そして、ヴァリエール家の三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの事。 あの二人がこの時期にあそこまで親密になるような出来事が、この世界に────いや、僕が読んだゼロの使い魔の物語の中に存在しただろうか? ヴァリエールと一緒に、アンリエッタ王女までがグラモンに抱きついていたことも気になる。あれはまるで、グラモンが両手に花を抱えているようにも見えた。というかモンモランシーはどうした? 無論、この世界が原作通りに流れるはずはないだろうし、当然のことながら僕がここにいる事に端を発するバタフライ効果という事だってあり得る。だが。「ギーシュ・ド・グラモン……確か、ゼロ魔二次では最大人気の転生先、だったな」 顔もいいし、青銅人形ワルキューレの使い勝手もいい。現代知識を生かせば応用性の幅を特に広げる事ができる土魔法と相まって、転生ものの二次ではこれ以上ないほどに人気の代物だ。「……確か、土魔法でモビルスーツを開発しているような二次小説もあったっけなぁ」 まあ、さすがにモビルスーツは出てこないだろうが。苦笑して思考を続ける。 一番警戒すべきは“僕と同じ”転生者だ。原作知識、そして現代知識というアドバンテージを持ち、能力というチートを持っている。これで警戒するなという方がおかしいだろう。 大貴族の令嬢であり虚無の使い手であるルイズと、王女であり次の女王であるアンリエッタ。そんな大駒を両手に抱えて両手に花で人生勝ち組なギーシュ・ド・グラモン。 勝ち組……気に入らない言葉である。前世においてモロに人生負け組であった僕からすると、勝ち組の人間を見かければ即、邪気眼にも匹敵するほどの破壊衝動に駆られても致し方ない所であろう。……まあ、実行には移さないがな。 だが、とりあえずは、ギーシュ・ド・グラモン。あれを調べなければならない。 そこで、ふと妙な事を思う。 似たような事が、前にもあったような気がする。あれは何だったか…………思い出せない。前世の事のようにも思えるが、そもそも前世で何が起きたのかも判然としない。何も覚えていない。=====後書き的なもの===== ああ、またやってしまった…… 間が詰まっていて読みにくいという意見があったので、空行を入れるようにしてみたが、果たしてどうなる事やら。作者の日本語力程度では、逆に読みにくくなってしまったやも知れず。 それはそうと、叩かれるの怖い荒らされるの怖い怖い怖いこわいコワイ…………