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No.13866の一覧
[0] 濁流のフェルナン   【ゼロ魔二次・習作・実験作・R-15】【更新再開】[ゴンザブロウ](2010/10/08 11:36)
[1] 濁流のフェルナン0 転生直前[ゴンザブロウ](2009/11/11 21:48)
[2] 濁流のフェルナン01 奴隷市場[ゴンザブロウ](2009/11/11 21:54)
[3] 濁流のフェルナン02 約束[ゴンザブロウ](2009/11/11 22:00)
[4] 濁流のフェルナン03 舞踏会[ゴンザブロウ](2009/11/11 22:42)
[5] 濁流のフェルナン04 長々と考察[ゴンザブロウ](2009/11/12 21:59)
[6] 濁流のフェルナン05 王道に対する邪道の在り方[ゴンザブロウ](2009/11/12 22:04)
[7] 濁流のフェルナン06 悪夢の後に見る悪夢[ゴンザブロウ](2010/02/19 16:37)
[8] 濁流のフェルナン07 決闘と狂乱[ゴンザブロウ](2010/02/19 16:43)
[9] 07終了時における設定など覚書[ゴンザブロウ](2010/03/17 22:25)
[10] 濁流のフェルナン ルートA08 血塗れの天空【仮掲載・前回と同じ】[ゴンザブロウ](2010/02/23 13:03)
[11] 濁流のフェルナン ルートA09 激突【仮掲載・前回と同じ】[ゴンザブロウ](2010/02/23 14:55)
[12] 濁流のフェルナン ルートA10 新生[ゴンザブロウ](2010/02/26 12:18)
[13] 濁流のフェルナン ルートB08 ミッション・インヴィジブル【仮掲載】[ゴンザブロウ](2010/02/26 19:07)
[14] 濁流のフェルナン ルートB09 牛鬼とホムンクルスの人間性[ゴンザブロウ](2010/02/26 16:22)
[15] 濁流のフェルナン ルートB10 フェルナンの冒険[ゴンザブロウ](2010/02/28 16:58)
[16] 濁流のフェルナン ルートB11 冒険で彼は何を得たか[ゴンザブロウ](2010/03/03 20:37)
[17] 濁流のフェルナン ルートB12 一つの再会、一つの世界の終焉[ゴンザブロウ](2010/03/09 00:27)
[18] 濁流のフェルナン ルートB13 虚無の敵意と水の再会[ゴンザブロウ](2010/03/16 11:20)
[19] 濁流のフェルナン ルートB14 同盟者[ゴンザブロウ](2010/03/16 11:24)
[20] 濁流のフェルナン ルートB15 崩れる同盟[ゴンザブロウ](2010/03/21 10:07)
[21] 濁流のフェルナン ルートB16 人形と人間の狭間で[ゴンザブロウ](2010/10/08 11:34)
[22] 濁流のフェルナン ルートB17 狂王の布石[ゴンザブロウ](2010/10/11 20:45)
[23] 濁流のフェルナン ルートB18 不吉の予兆 【番外編追加】[ゴンザブロウ](2010/10/15 23:47)
[24] 濁流のフェルナン ルートB19 我が名はレギオン、大勢なるが故に[ゴンザブロウ](2011/07/09 02:00)
[25] 濁流のフェルナン ルートB20 瘴気のアルビオン[ゴンザブロウ](2010/11/09 14:28)
[26] 濁流のフェルナン ルートB21 惨劇の後始末[ゴンザブロウ](2010/11/10 13:22)
[27] 濁流のフェルナン ルートB22 ヒトという名のアイデンティティ[ゴンザブロウ](2010/11/20 14:26)
[28] 濁流のフェルナン ルートB23 この冒瀆された世界の中で[ゴンザブロウ](2010/12/01 23:54)
[29] 濁流のフェルナン ルートB24 世界が壊れていく音が聞こえる[ゴンザブロウ](2010/12/18 17:14)
[30] 濁流のフェルナン ルートB25 ロクデナシのライオンハート[ゴンザブロウ](2011/03/27 23:19)
[31] 濁流のフェルナン ルートB26 OVER/Accel→Boost→Clock→Drive→Evolution→[ゴンザブロウ](2011/04/13 13:25)
[32] 濁流のフェルナン ルートB27 決戦前夜 【加筆修正】[ゴンザブロウ](2011/07/09 02:12)
[33] 濁流のフェルナン ルートB28 おわりのはじまり、はじまりのおわり[ゴンザブロウ](2011/07/14 01:31)
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[13866] 濁流のフェルナン ルートB28 おわりのはじまり、はじまりのおわり
Name: ゴンザブロウ◆ed8da44e ID:a045a279 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/07/14 01:31
 無音。
 音もなく、光もない。
 それでいて、一面の虹色。
 噴き上がる虹色の球体。惑星よりも極大に、宇宙の隙間に横溢する。素粒子よりも極小に、分子の隙間に横溢する。
 宇宙に満ち溢れる虹色の虚無。宇宙を内包する虹色の虚無。無限に連なりながら無限に膨れ上がる異界、虹色に輝くシャボン玉の群舞。
 虹、虹、虹、どこを見渡しても一面の虹色。見渡さなくても一面の虹色。空間にも時間にも眼球それ自体にも脳味噌の中にさえも虹色のシャボン玉が詰め込まれている違和感。虹色を呼吸し虹色を脈拍し虹色を狂気する、虹色の混沌。
 虹色という色彩の暴力、そんな場所。

 そこはそんな場所だった。世界の外側。時空の外側。次元の外側。あらゆる世界を俯瞰する、世界の外にある世界。

 それが、ヨグ=ソトースの門に突入した僕たちが最初に見たものであった。


「これが……異界」


 正確には虹色ではない。強いて言うなら宇宙色。宇宙的な色だ。
 油を流したように乱舞する無数の色彩、しかしその色彩の一つですら人類の脳構造で把握しきれるものではなく、かろうじて無数の色が交錯しているという事実それだけが、見る者にそれを虹色だと認識させる。

 次元位相どころか、物理法則それ自体が根本から異なる世界。だからこその異世界、異形の宇宙。宇宙それ自体が異形、それ以前に、宇宙という概念すら通じない、宇宙とは別の何か、それを人類の言語で解説することは事実上不可能。確か何か前世の小説で、どこぞの異世界の説明をする時に論理よりも詩情が必要だとか説明してたのがあったはずだけど、要するにこれはそういうことなのだろう。
 魔術や超科学で身を守っても精神がこの世界それ自体に耐え切れなければ、生きていくどころか存在の根底を保つことすら不可能。さもなければ狂って死んで魂ごと消滅するか別の何かに成り果てるか、あるいは両方か、どうなるにせよ結局地獄さえも生ぬるい結末。何よりも地獄めいていながら地獄よりも地獄らしい、ここはそんな世界だ。

 宇宙の深淵にも深海の奈落にも近く、しかしそのどちらとも掛け離れた虹色の世界。先程から機体にも圧力に似た未定義の負荷が掛かっていて、その処理も面倒だ。その圧力を掻き分けて色彩の暴力の海を泳いでいく。その虹色の闇の中で目を凝らせば、少しずつ何かの影が見えてくる。

 扉だ。
 虹色の宇宙に無数の扉が浮かんでいる。
 その扉の一つ一つは僕が見たことも聞いたこともない異界に繋がっていて、そこにはそれぞれ数知れないほどの宇宙的恐怖が潜んでいるのだろう。

 だが、そんなことはどうでもいい。



 濁流のフェルナン/第二十八段



 その次元に僕たちが辿り着いて最初に始めたのは、敵を探すことだった。

 虹色の世界の中に無数に存在する扉、その内のどれかは、王様とギーシュがくぐっていったものだ。扉に残された二人の気配の残滓を感じ取り、行き先を探知する。

「タバサ、補助頼む」
「任せて」

 意識が静まり返る。

 海面のようにささくれ立っていた精神の表層がその波立ちを静止させ、平面のようにフラットになっていく。

 静寂。世界の中心に自分とタバサだけが立っている、感覚。

 絶対的静寂。何物も存在しない二人の世界。
 
 暴力的静寂。意識領域の拡大、世界の中心に立つ自分自身をイメージ、その中心から波紋のように領域を拡大していく。混沌の世界が僕とタバサだけのものに塗り替えていく。静寂。
 異界の色彩を認識し把握し駆逐し、その概念を自分の内に取り込みつつも、それを自分の色に塗り潰していく。



 ────静寂。静寂。深淵的静寂。



 その中に、夾雑物となる気配。静寂を走る一筋のノイズ。


 ────見つけた。


 抜刀。
 振り返り様に振り抜いた手の中に一本のチェーンソー。背後にあった一枚の扉を切り裂き、その先に広がる無限の深淵。凍りついたように刻の止まった宇宙空間。


 その先から、確かに伝わってくる。


 闘争の気配。
 激突の気配。
 刃金と魔術の気配。



 ────ころしあいのにおい。



「あの先に、いる。フェルナン、用意は?」
「万端だ。行ける」


 スラスター全開、蒼黒の鬼械神は炎の尾を牽きながら次元の海を往く。







 そこでは既に戦闘が始まっていた。

 黄金の竜戦士と、深紅の鬼械神が拳を交わす。刃金の拳が連続激突、その度に空間が激震し、余波で星が砕け、銀河が崩れ落ちる。

『ジョゼフぅうううううう!! どうしてこんな事をした!? そんな事をして、何の解決になるっていうんだ!?』
『貴様などに語る口はない、が、分かりやすいように話してやるとすれば復讐だ。何とも分かりやすい解決法だろう?』

 王様は一旦距離を取ると、歪んだ方形の巨大な刀────バルザイの偃月刀を連続召喚、一斉に射出された偃月刀がギーシュのルシファーを取り巻くようにして射出する。その刃の合間に無数の光の筋、捕縛呪法アトラック=ナチャの光糸が走り、竜機神の機体に絡み付いて捕縛、さらに。


『呪文螺旋(スペル・ヘリクス)────消し飛べ!!』


 竜戦士を円状に取り囲んだ偃月刀が描いた魔法陣を即席の溶鉱炉と化して、灼熱の業火を司る神性“クトゥグァ”が召喚され、ビッグバンにも匹敵する熱量を発生させる。

『駄目だ、そんなのは駄目だ! 復讐なんてして、何の意味があるっていうんだ!』
『下らんな! 貴様に意味など聞かれても喜劇でしかないわ! 原作知識がどうこうなどというつまらん理由でシャルルの妻を狂わせた貴様ら転生者────ギーシュ・ド・グラモン、貴様も同じだ!!』

 クトゥグァの溶鉱炉を突き破って飛び出してきたルシファーを、リベル・レギスが蹴り飛ばし、さらに追いすがって巨大な黄金十字架で殴り飛ばす。弾丸のように吹き飛ばされたルシファーが惑星に恒星に銀河に激突しては打ち砕き、特大の赤色巨星の中心核を弾き散らしてようやく停止。さらに。


『悪神セト、蹂躙せよ────天狼星の弓よ!!』


 十字架を黄金の弓に変化させ、巨大な光の矢を撃ち放つ。放たれた矢が変容した巨大な紅龍がその口腔から光の吐息を解き放ち、それを掌から放たれた黄金の光でギーシュが相殺。


『次元連絶刃(ジョウ・ブレイカー)!!』


 ルシファーの両翼に仕込まれた無数の刃が展開し、“真空中”でメキメキと音を立てて巨大化、そこから放たれる時空間の断裂。
 対するリベル・レギスは空間それ自体に爪を立て、空間を引き裂いて同様に時空間の断裂を造り、断裂を断裂で相殺、空間ごと引き裂かれた銀河が重力構造を崩壊させ、中心核のブラックホールが手当たり次第に星々を呑み込んでいく。


『……そんなことで俺は、人を殺したりしない!』
『どの口がそれを言う!? 原作にあったからという理由で総力戦を起こして何万人を死地に送り込もうとした、貴様が!?』
『っ……仕方ないだろ、あれはそういうイベントだったんだから!』


『…………ふざけるなよ、小僧がァッ!』


 直撃。
 何も存在しない虚空を走り渡ったリベル・レギスが、その勢いのままルシファーに拳を叩き込む。一撃、二撃、三撃目を叩き込んだところでルシファーがその拳を掴み止め、両腕で掴み潰し、潰された深紅の腕が砲門に変形、重力弾を連続発射。
 それを黄金のオーラで相殺しながらルシファーが急速上昇、急降下しながら両腕を腰溜めに構える。迎え撃つリベル・レギス、左手の手刀が白く燃え上がる。


『これで終わりだ、ラスボスぅううううううううううううう!!』
『貴様がな、小僧ぉおおおおおおおおおお!!』


 光。圧倒的な白と黄金が輝く闇で世界を塗り潰した。

 耐え切れずに崩れ落ちる。宇宙が。

 次元の構造が砕け散り、ガラスよりも脆く世界が滅ぶ。

 そうして戦場は次の宇宙に。



 ディノニクティスの知覚機能が彼らの姿を捉えたのは、ちょうどそんなタイミングだった。



 そこは世界の涯(ハテ)。

 果てしない断崖絶壁の上に立つ黒瑪瑙の塔。その直径はおそらく銀河よりも広大で、その高さは宇宙よりも深淵。
 リベル・レギスはその塔の半ばに、沈み込むようにして体をめり込ませていた。

 しん、と静寂。

 その中で、微動だにしなかったリベル・レギスの視覚素子がぐるりと回ってこちらを向いた。

『……来たか、フェルナン・ド・モット』
「ええまあ。やっぱり、情報は伝わってたか」

 ディノニクティスの擬態を解除し、敵の正面に進み出る。確かに、大した迫力だ。老い先短い老人ならとっくに心臓が止まっているところだ。

 ────虚無。

 その顔に浮かぶ表情は、憎悪や狂気すらも押し潰し排除する圧倒的空虚。宇宙の深淵よりもなお荒涼とした虚無感に一瞬我を失いそうになって、腕の中の少女の暖かさを思い出し、それを中心に自我を再構成。
 目の前に立って改めて実感する。
 今まで戦ってきた相手とは格が違う。

『余とミューズは繋がっていたからな。貴様が生きていたと知った時には、少し驚いたものだが』
 仮にも、リベル・レギスはシェフィールドのベルゼビュートと繋がっていたのだ。さらに言うなら使い魔のルーンもある。情報も伝わっていると考えるのが自然。
「そんなに驚いたんですか? そうそうそこまで驚いているようには見えませんけど?」
『驚いたさ。おかげで、グラモンの拳を一発もらってしまった。なかなか痛かったぞ』
「おやおや、それはそれはお気の毒に」

 あっはっはっは、と嗤う。王様も、僕も。
 嗤う。
 嗤う。
 嗤う。
 嗤うほどに殺気が濃密になっていく。渦巻く殺意が方向性を留めないまま、より重厚に研ぎ澄まされていき、そして。


『まあ、もっとも』


 嗤いを収め。
 ぎしり、と空気が軋む。


『惚れた女を殺した相手を、生かしておく気は毛頭ないがな!!』


 轟音。
 鋼と鋼が重厚な響きを上げて激突する。
 抜き放たれたバルザイの偃月刀が、僕が振るったダゴン&ハイドラと激突する。鍔迫り合い、ギャリギャリと不健康な軋りを上げて、偃月刀の刃金が回転刃に巻き込まれていく。
 ダゴン&ハイドラはチェーンソーだ。真っ当な刃物と鍔迫り合いなどすれば、触れただけでも相手の刃を削り斬って破壊する。そうなる前に王様は刀を放り出してさらに踏み込んだ。
 続いて激突、激突、再激突を繰り返し、舞うように刃を振るいながら剣戟、刃を合わせるたびに偃月刀の刀身は千切れ飛ぶが、リベル・レギスは次々と新たな刀を作り出して連続攻撃。剣が振るわれる度に剣尖の先にあった適当な惑星や恒星や銀河が斬り飛ばされて星屑と散る、まさに宇宙の終焉を作り出す。
 斬り刻まれた宇宙が何度も崩壊し、次の宇宙に落ちては次の宇宙を斬り砕き、斬り裂き斬り裂き斬り裂いて、幾度も宇宙を滅ぼしながら剣舞が続く。


 強い。
 触れれば武器破壊、という近接戦における絶対有利な武器のアドバンテージが全く生かせていない。
 剣技ならランスロットのそれを取り込んでいる僕に分があるが、それを王様は超光速の予測演算と的確な対応で補い、反撃まで加えてくる。

 振るったチェーンソーの刃を潜り抜けてリベル・レギスの偃月刀がすくい上げるようにしてディノニクティスに肉薄、タイミング的に回避は不可能、しかし。

「させない」

 タバサが近接迎撃呪法『グラーキの棘』を発動、敵は咄嗟に攻撃から防御に切り替えて、掌を中心に発現した五芒星型の白光の紋章『旧き印(エルダーサイン)』が楯のように展開、毒針を弾き返し、そのタイミングには僕が引き戻したチェーンソーの二刀を振り下ろして防壁を削り、さらに。

「タバサ、交代!」
「任せて────My whole life was“unlimited blade works”!」

 ダゴン&ハイドラの回転刃がエルダーサインの防壁を削り砕くと同時、以前ロマリア崩壊の時に取り込んだ偽アーチャーの固有結界をタバサが発動、人間サイズから鬼械神サイズまで各種取り揃えた無数の剣群が空間を制圧。対抗して王様も無数の獣で構成された固有結界もどきの魔術を放ち、剣群と獣群の怒涛が激突し拮抗。
 そのバランスを打ち破るように忘却の波を放てば、その膨大な水量を突き破って無数の偃月刀が投げ放たれ、さらにその隙間を縫うようにして十字架状の黄金投擲剣が撃ち込まれてくる。

「それなら────I am the bone of my sword!」

 再びエミヤ式投影魔術、僕が一番よく知っていて、僕の手に一番よく馴染んだ剣を、鬼械神サイズにして投影する。オリジナルなら脳容量その他が足りなくて剣製し切れなかった神秘も、一方通行&緑の王式植物演算装置と数の暴力によるごり押しの高速儀式で押し切れる。
 投影するのは三本の回転円柱を繋ぎ合せたような削岩機にも似た黄金剣、あらゆる死の国の原典、生命の記憶の原初。天地開闢以前、星があらゆる生命の存在を許さなかった原初の姿、地獄そのもの。
 射出された乖離剣は複製障壁によって本数を増やしながら、降り注ぐ偃月刀と黄金十字架剣の雨を迎撃。

「天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)────壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!!」

 魔力暴走による自壊を組み合わせた真名解放。それに発動させたランスロットの『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』の宝具化を馬鹿魔力で上乗せしての重爆撃。原作に愛着のある相手なら即ブチ切れそうなチート乱舞、しかしこの程度で斃せる相手でもない。

「フェルナン!」

 タバサの警告と同時、足元遥か下、銀河数十個分ほどの距離を開けて黒紅と白銀の二挺拳銃を構えるリベル・レギスの姿を確認。連射される砲弾は灼熱の業火を纏った獣となり、あるいは絶対の凍気を纏った巨竜となってこちらに向かって襲い掛かる。神獣弾クトゥグァ&イタクァ、必殺技に入らない部類では最大級の破壊力を持つ攻撃。

「それなら……!」

 タバサがディノニクティスの全身から砲門を展開、フレイザー砲に投影魔術を組み合わせてゲイボルグの必中属性を追加した光線を連射、同時並行して僕がディノニクティスの鼻先の砲門を展開。
 ほとんど同じタイミングでリベル・レギスが二挺の魔銃を融合させて巨大な砲身へと変化。大技が来るのは予想済み、距離的に近接攻撃に持ち込むつもりがないことも予想していたから、こっちも大技で対処。

 ────神獣弾トゥールスチャ。
 ────リベル・レギス神銃形態、呪文螺旋(スペル・ヘリクス)。

 二つの閃光が戦場の中央で激突し、ビッグバンすら上回る超熱量が宇宙空間を灼き砕き、無数の並行宇宙が巻き込まれて崩壊し、繊細な砂糖細工のように融け落ちる宇宙の中で、その閃光に紛れて一直線に距離を詰め。

「っ……しまった!?」

 さっきの呪文螺旋自体に術式を隠して撃ってきたのだろう、ディノニクティスの機体に蜘蛛の巣のように絡み付く光の糸。

 ────捕縛呪法アトラック・ナチャ。

 持てる限りの最高速で解呪して、同時に周囲に檻のように展開した黄金十字架剣はタバサがフレイザー砲で撃ち砕き、二発目の呪文螺旋(スペル・ヘリクス)を二発目の神獣弾で迎撃、ギーシュがやられた溶鉱炉地獄に対処。

『今のも防ぐか。大したものだ』

 ジョゼフ王の嗤い混じりの感嘆と同時、呪文螺旋(スペル・ヘリクス)を陽動に間合いを詰めたリベル・レギスの右掌がディノニクティスの喉元に押し付けられる。

『────ABRAHADABRA/死に雷の洗礼を』

 バラクーダアームを分離、二本のチェーンソーを飛ばし相手の手を斬り落とす緊急防御────読まれた。先手を打って投げ放たれていた偃月刀が割り込んで旧き印(エルダー・サイン)を展開、ダゴン&ハイドラの軌道をずらし、できた空隙にリベル・レギスの紫電をまとった右掌が押しつけられ────。

「そうはいかない」

 タバサが対応、周囲に展開したクトゥルフの魔海にトゥールスチャの劫火の属性を上乗せし、全身に蒼緑の炎をまとってリベル・レギスの機体を吹き飛ばす。こちらの損害は軽く喉を抉られた程度。向こうも咄嗟に障壁を展開したらしく、損傷はさほど大きくもない。

『まさか、あれも防がれるとはな。水圧だけでなく、そういう応用もあるのか。便利な術だ。棘には注意したつもりだったが、もう一つの防御のカードはさすがに予想外だよ』

 嘯く王様が操るリベル・レギス、その掲げた左腕には、既に負の無限熱量の白炎が絡み付いている。


 強い。
 ここまで強いとはさすがに予想外だ。あるいは、人間とかそういった領域を超えているんじゃないかとも思う。


 だが。
 勝機はある。

「タバサ、気付いたか?」
「ええ、分かる。……敵は一人」

 最高速で術式を構築しながら敵の攻撃予測を組み立てるタバサは、目を鋭く細めて頷いた。

 そう、敵は一人、たった一人なのだ。
 『アル・アジフ』『ナコト写本』に加えて動力部には『無銘祭祀書』、まさに最高の格を持つ魔導書を三冊も手にして、その力を完全に使いこなしていながらも、我が敵、ジョゼフ一世はたった一人で戦っているのだ。
 ちょうど僕自身、あるいは原作デモンベインの主人公やラスボスのように魔導書に全力のサポートを受けながら戦っているのではなく、ただ魔導書を純粋な武器として行使しながら戦っているに過ぎないのだ。


 思えば、誰もが“そう”だった。


 ティファニア。
 ワルド。
 シェフィールド。


 僕の知っている魔術師の誰もが、魔導書を純然たる“武器”として扱っていた。それは例えば僕のゲート・オブ・バビロンに対する扱いにも似ているし、あるいはメイジと杖の関係とも近い。というか同じだ。そのものだ。
 せいぜいが替えの効かない武器。それくらいの認識で、魔導書を純粋なパートナーとして扱っている魔術師など一人もいなかった。

「……これも原作知識ってやつかね」
「多分」

 思えば、僕の知っている魔導書の姿というのは“それ”なのだ。パートナー。
 だからこそ意志持つ魔導書の反逆を最大限警戒して、その力を行使する際にはほぼ完全にその意志を封じ、二重三重の安全策を講じてから魔導書を講じていた。
 だからこそ僕から魔導書の概論を聞いたタバサも『自分自身の魔導書化』という、この世界のメイジであれば思いつくはずの無い結論に辿り着き、結果として僕とタバサは『魔術師と魔導書と鬼械神の三位一体』という、この系統の魔術の極みともいえる境地にまで到達した。

 だが、目の前の相手にはそれがない。

 王様はたった一人で戦っている。どこまでいっても、徹頭徹尾、ただの魔術師、それだけだ。無二のパートナーであったかもしれないティファニアやシェフィールドまで失って。


 だから。

『終わりだフェルナン・ド・モット────』


 番狂わせなど起こらない。順当に僕が勝つ。なぜなら。


『────ハイパーボリア・ゼロドライブ!!』


 二人でいる限り、僕とタバサに敗北など有り得ないからだ。


「フェルナン、来る!」

 視界の中で、リベル・レギスが左腕を振り上げる。深紅の手刀の周りに白熱する負の無限熱量が絡み付き、広大な宇宙空間を遍く満たす漆黒の闇を輝かしい純白に染め上げていく。
 触れれば一撃、直撃すればこのディノニクティス・アートレータ・アエテルヌムですら防ぎ得ない致死の一撃。


 だが。


「熱量反転、今!」


 その技は既に見た。


『っ────何だと!?』




 そう、見ているのだ。
 シェフィールドが一回。そしてギーシュと戦っている時にも一回。

 それで十分。

 それだけあれば、十分に対策ができる。



 僕とタバサは、リベル・レギスが放った最強の一撃を、正面から受け止めるように掌を撃ち当てる。



 要するに、だ。

 ハイパーボリア・ゼロドライブとは、リベル・レギスの中枢でありヨグ=ソトースの影である『無限の心臓』が生み出す無限熱量を、そのまま攻撃力として出力する大技である。

 そして、『外なる神』であるヨグ=ソトースの力を扱うことに関しては、僕の方に分がある。



 触れただけでこちらを無に帰す必滅の一撃がディノニクティスの掌が接触する刹那、ハイパーボリア・ゼロドライブの術式に直接介入し、その熱量を属性反転、触れ合った鬼械神の手と手を通して、負の無限熱量を正の熱量に置換しつつこのディノニクティスの内側へと吸入する。
 そのたった一瞬、最上位の神の一角であるヨグ=ソトースが放つ無限熱量を取り込んだたった一瞬だけ、枯渇していたディノニクティスの力が完全に蘇る。

 このわずかな身じろぎだけでも遍く三千世界を蹴散らし修復できるディノニクティスが最大最強の力を発揮できるたった一瞬。
 それを、使う。

「ヨグ=ソトース召喚術式」

 このたった一瞬の為にタバサが手に入れた術式。それを発動する。
 召喚対象は『無限の心臓』、目の前のリベル・レギスの中枢そのもの。時空が捻じ曲がり、次元を引き裂いて、あらゆる因果を爆砕し、ディノニクティスの心臓部、次元連結システムを炉心として、その中枢にあらゆる平行世界から無限の熱量を引き出す『無限の心臓』が顕現する。
 曖昧だった存在密度が確定し、ディノニクティスが纏った存在感が急激に確かなものとなって確定する。無限を越える熱量が全身を駆け巡ってその構造の隅々にまで満ち溢れ、活力が全身を満たしていく。


「っぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 全身に溢れていく膨大な熱量に、僕は思わず叫びを上げていた。タバサも同じように深い息をついて雪花石膏のように白い肌を赤く染めている。
 息が荒い。性的絶頂にも似たその感覚を、愛しい人と共有する。


 爆発にも似て、違う。静かに燃焼しながら無限熱量が持続する。
 今のディノニクティスは今までとは違う。わびしいエネルギーをちまちまと節約するのではなく、ヒトを超え魔を超え神を超え世界すら超えて、完全に完璧なディノニクティス・アートレータ・アエテルヌムの最大出力で戦える。だからこそ。


「王様、僕たちの勝ちだ。僕と、タバサの」
『……ああ、そうらしいな』


 僕はディノニクティスをリベル・レギスと向かい合わせる。完全に力を取り戻したディノニクティスに対して、リベル・レギスはその魔力の源を喪失し、力の大半を失っている。
 勝利。
 僕の勝ちだ。


「何か言い残すことはありますか?」
『いや、いらんよ。言うことなら、地獄で待っているミューズに言うさ』
「そうですか……」

 最後の抵抗とばかりに、リベル・レギスが呪文螺旋(スペル・ヘリクス)を放つべく二挺の魔銃を融合させる。だが無意味だ。その程度の威力では、完全体となったディノニクティスには傷一つ付けられない。


 思う。
 ティファニア曰く、僕はこの世界、『ゼロの使い魔』という世界に裏切られた、らしい。確かに、ギーシュといいルイズといい、どいつもこいつも期待外れの中で、しかし。
 この人とティファニアは、期待以上の存在だった。どっちかといえば、以上というより異常だが、しかし。


「貴方のことは、尊敬してますよ。時と場合によっては、僕が負けていたかもしれませんしね」
『負ける気など欠片も無かった癖に、よく言ったものだ。……そうだ、ならば余はどうして負けたと思う?』
「一人だったから、じゃないでしょうか? 僕にはタバサがいるのに、貴方は一人きりだった。せめてティファニアかシェフィールドのどちらかがいれば、貴方にも勝ち目があったでしょうに」

 僕の言葉を王様は何でもないかのように笑い飛ばしてみせた。まあ、そうするだろうなと思っていたので、さして驚く事じゃない。

『惚れた女と、娘のような相手。どちらも、こんなところに連れてきていい相手ではないだろうが』
「そんなものですか……? 僕にはよく分かりませんね」
『ああ、貴様には一生分からんだろうさ』

 そんなことは僕が一番理解している。だが、そういうことが分かる目の前の人が、少しだけ羨ましかった。

『そろそろ、終わりにしようじゃないか。長々と話しているのも、いささか飽きた』
「そうですね。じゃ、片づけましょう」

 ディノニクティスが巨大な顎を広げる。びっしりと生え揃った牙の一本一本が銀河の直径よりもなお巨大で、宇宙それ自体を丸呑みにできるほどに絶大無比。
 その顎が大きく開かれ、そして。


 もはや何の抵抗も無しに、リベル・レギスは一口で噛み砕かれた。


「フェルナン……」
「ああ、終わった。だけど、まだ残っている。もう一人の敵が」


 僕はゆっくりと振り向いた。
 そこに、そいつは既に来ている。
 今の僕とは比べ物にならないほどに矮小で、しかしそれでもなお、僕の最大の敵が。


「よく来たな元主役(ヒーロー)。ラスボスならさっき、僕が喰ってやったぞ」





 ────ギーシュ・ド・グラモン。その名と顔を持つ転生者。





 ギーシュの存在には気付いていた。王様と戦っているその最中に、奴はもうそこにいた。そこにいて……何もしなかった。ただ、呆然と立ち尽くすようにじっとしていた。
「フェルナン・ド・モット……どうしておまえが…………」
「それに僕が答える義理はあるのか? というか、他に聞く事があるんじゃないのか? 僕がこんなところにいる理由とか。今まで上手く行き過ぎるほどに上手く行ってたように見えたのに、いつの間にか何もかもが台無しになっていた事とか。それとも何か、聞きたくないか? 聞くのが怖いか? ま、どっちでもいいけど、今は特上の獲物が喰えて気分がいいからな。まあ、お望みのネタばらしをしてやるよ。僕の気がノればだけど」

 黄金の炎にもにたオーラを立ち上らせる巨大な龍の鎧の中で、もうこれ以上何をしていいのか分からず途方に暮れたような表情をしたギーシュの顔が見えた、気がした。

「なあフェルナン……俺はこの世界の主人公なんだ。なのに何で……?」
「僕がここにいるのは、最大の敵である王様とお前を始末するため。王様が死んだのは僕が殺したから。僕がここにいるのは、ハルケギニアに残ったヨグ=ソトースの門を使って、お前達を追いかけてきたからだ。あと他に質問はあるか? 無いならさっさと殺させてもらうが」

 チェーンソーを回転させるように突き付ける、その動作に、相手は激昂して叫ぶ。

「そういうことを聞いているんじゃない……! どうして、どうしてお前は、俺の邪魔ばっかりするんだ!? 俺は、俺は主役、俺は主人公なんだぞ!! なのに何で!? 何でお前はァッ!?」


「えーお前が主役ぅ? そんな設定あったっけ?」





「え?」





 虚を突かれた相手が虚脱状態に陥る。どう見ても、あまりにも大きな隙、しかしその隙は衝かない。相手は直感スキル持ちだ、わざわざ隙を衝こうとすれば、その不意打ちに反応して肉体が自動的に防御を組み立て、相手も戦闘開始によって精神を立て直し、なし崩し的に泥縄になる。
 むしろ、今は舌戦で相手の精神力を削るのが良策。

「嘘をつくのはやめなさい! お兄様が主人公でないわけがないでしょう!! でないと、でないと私は!!」

 ああ、ルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、こいつもいたか。名前長いな。

「トリステインは崩壊した。というかそれ以前にトリステインには今のあの大惨事の元凶がお前らだってのが定説になってるし、アンリエッタ王女は怪物になって周りの連中を連中を皆殺しにしたし、ヴァリエール領はBETAの群れに呑み込まれたからお前たちを庇ってくれる奴らはもういない。もう、誰もお前を主人公だなんて認めないさ」
「ふざけるな! 全部、全部お前がやったんだろう!! 全て、全ておまえが!! お前のせいで俺の人生は滅茶苦茶だ! どうしてだ!? どうして、どうしてこんなことができる!? 答えろ、フェルナン・ド・モット!!」

 人生……自分の、ね。他の人間のはどうでもいいとでもいうのだろうか。まあ僕もどうでもいいけど。金ピカだったメッキが剥がれてきたな。地肌が見えてしまえば、案外その外見は残念なものだ。馬鹿馬鹿しい。本当に下らないよお前。
 正直、僕自身、昔こいつにあんなに警戒心を抱いていた理由が分からん。まあ、きっとあれだ。要するに期待してしまっていたんだろう。こんな期待外れの世界なのだから、もしここが二次創作の世界なら、どう見てもオリ主らしきアイツは、きっと滅茶苦茶な補正を得ているに違いない、とか。
 だが、所詮そんなのは期待外れだ。あいつはこの世界に生まれ堕ちた転生者(レギオン)の中の最たる一人、たったそれだけの話なのだ。主人公補正なんてどこにも存在しない。
 つまるところ、僕と同じ。

 そして、決定的に違う存在だ。
 要するにコイツは、今までRPGでもやってる気分でいたんだろう。
 思えば、アリサ・テューダーがコイツの陣営に加わってから、ロマリア、ガリアと、アイツの眼の前には常に何かの行動の指針があった。フラグと言い換えてもいいかもしれない。そのフラグに従って、フラグの導くままに進めば良かった。その主人公フラグの半分以上が僕が誘導したものだというのだから全く笑い話だ。
 本当に、ゲームみたいな人生だ。羨ましいくらいに気楽な生き様だ。何と言っても、どんなことをやっても成功が約束されているようなもので、きっと世界もさぞ輝いて見えたことだろう。自分が主人公であると確信できる限りは。主人公ってのはそういう存在だ。

「どうして、ね。そんなもの決まってるだろうが馬鹿馬鹿しい。生き残るための最善手を取り続けてきたら、いつの間にかこうなってただけだよ。おまえが都合良かったから利用させてもらったが、都合が良ければ別にお前じゃなくてもよかった。おまえなんぞ最初から眼中にない」
 というか、ほとんどの相手は眼中にない。敵か、潜在的な敵でしかなかったから、わざわざ気を使ってやるようなつもりは欠片も無かった。
「ふざけるな! ここはお話の世界なんだ! 物語の世界なんだ! 俺は主人公なんだぞ……主人公に……主人公に…………なあ、ルイズ……俺は主人公なんだ、そうだよな、なあ! なあ!」
「え、ええ! そうですわ! 誰が認めなくても、ギーシュお兄様はこの世界の主人公です! …………そうですよね……お兄様」

 何となく、ギーシュだけでなく、ルイズという人間の底も見えたような気がする。要するに彼女は縋れる相手が欲しいだけ。それが運悪くギーシュになってしまった、と、きっとそういうことなんだろう。
 その上で、ギーシュの力が強過ぎたから、力だけが強過ぎたから、ルイズは一度も成長することなく、どうしようもなく弱い少女のまま、ここまで来てしまった。そういうことなんだろう。


「……なあ、フェルナン・ド・モット、お前はどうして生きているんだ?」
「馬鹿馬鹿しい。目的がないと生きていけないのか? 死にたくない、だけじゃいけないのか?」
「だって、だってそうじゃないか! 誰だって死にたくない! それは一緒だ! だから、他を押しのけて生きていくなんてできないじゃないか! だから、生きる価値が、生きていく価値がないと!」

 何というか、馬鹿馬鹿しいにもほどがある。喉の奥に溜まった溜息を押し出すように深呼吸する。
 生きる価値とやらがあれば、人を踏み躙ることが許される。要するにそういうことだろう。そんな考え方には正直ついていけない。
 本当に、馬鹿馬鹿しい。第一、人より優れたものが欲しいだけなら、もう持っているだろうに。僕たち転生者は、最初から。

「何というか、さ。生きていく価値があったら、他の人間を踏みにじることが許されるのか? 変わった考え方だな。というか、それ以前に、生きていく価値がある相手になら踏みにじられていいとでも? 僕は嫌だね」
 価値のあるヤツ、ないヤツ、等しく敵だ。だから平等に皆価値がない。敵の価値など関係ない。自分を踏みにじる相手の価値など認めてやらない。敵は敵だ。味方はタバサと人形だけ。あと、父くらいのものか。
「というか、さ、ギーシュ・ド・グラモン、生きる目的イコール生きていく価値だなんて誰が決めたんだ? ってか、お前自身に生きる価値なんてあるの? 本当に?」
「ふざけるな! お兄様に価値がないなんて私が認めない! お兄様は、お兄様が、お兄様だけが、私に生きる価値があると認めてくれるのよ! 生きる価値の無いのはお前の方よ、フェルナン・ド・モット!!」

「どうでもいい」

 断ち切るように誰かが言った。
 今まで黙っていたタバサだ。
「貴方の価値判断なんてどうでもいい。フェルナンは私の大切な人。だから、フェルナンの生きる価値は私だけが知っていればいい。貴方達なんかにとやかく言われる筋合いはない!」
「……そうだな。本当にどうでもいい。生きる価値なんて下らない、意味がない。そんなものはタバサだけが知っていればいい」
 こうしてタバサと手を繋いでいるだけで、相手の底が見える。
 ギーシュとルイズの二人は、自分たち以外のものを気にし過ぎだ。二人して求めるばかりで互いを見ず、どうでもいい他人の顔色ばっかり窺っている。だから勝てないのだ。
 それはあまりにもひたむきで純粋すぎるが故に愛に似て、しかしそこには、愛がその内に秘めている美しさも輝きもない。ただひたすらに無様で悲惨で醜悪で────だからこそ何よりも人間らしかった。


「俺は主人公になりたかった」
「僕は主役になんてなれない。というか今さらどうでもいい」

「お兄様を主人公にできなかったら、私は誰にも認められない」
「フェルナンは私の御主人様。私がそう認めている」

「ルイズがいれば、俺はきっと主人公になれる」
「傍にタバサがいればいい。そうすれば完璧だ」

「お兄様だけが私を認めてくれた。それ以外は私を見下し哀れむだけ」
「他人の眼なんてどうでもいい。ただフェルナンを見ていたい」

「生きる目的がないと生きていけない」
「目的なんて必要ない。死にたくないで十分だ」

「お兄様がいなければ生きていけない。他に生きていく方法が分からない」
「フェルナンのために生きている。他の生き方なんて必要ない」

「俺は主人公なんだ。主人公として生きるのが俺だ」
「僕は僕だ。良くも悪くもそれ以外の何物でもない」

「お兄様を目的にしていないと、私が私でなくなってしまう」
「フェルナン以外は目に入らない。必要ない」

「お前のせいで、俺は全てを失った」
「色々と手に入れてはみたけれど、やっぱりタバサが一番大事だ」

「お兄様のために、私は全てを失った」
「フェルナン以外、私には初めから何もいらない」

「俺はお前が理解できない」
「それこそ正直どうでもいい。お前なんて理解したくもない」



 だからこそ、こいつは僕の最大の敵なのだ。鏡映し。だからどれだけ力の差が開こうと、斃さなければならない。他の誰でもない、僕が。

 ああそうだ、そうとも。
 僕らはこんなにも相容れない。本当に、分かりやすい結論だ。


「決着をつけよう。この、長過ぎるほどに長い、十年の」


「ああ。どれだけ力の差があっても、勝つのは俺だ! その……はずだ……」
「それができるのは主役(ヒーロー)だけだ。お前はもうヒーローじゃない」
「私が勝たせる。私が、お兄様を主役にしてみせる!」
「私がいる限りフェルナンは負けない。絶対に」


 ギーシュ。
 ギーシュ・ド・グラモン。
 お前は、悲劇の主人公ではなく、ただのつまらない敵役のように、無意味に無慈悲に予定調和に死んでいくのだ。


「タバサ、任せた」
「任せて、フェルナン」
「お兄様、行きます!」
「行くぞ、フェルナぁあああああン!!」

 だが、一つだけ言っておくとすれば、だ。
「英雄ってのはなろうとした瞬間に失格だ……なんてどっかの北岡さんの真似をするつもりはないから自分の言葉で言わせてもらうけどさ。この世界が物語なのかどうかはさておくとしても、主人公ってのはどこまでいっても物語の登場人物の一人なんだ。だから、作者とか読者とかプレイヤーとか、そんな立場に立っていた時点で、お前は決して主人公にはなれなかったんだよ」
 何を驚いているんだか。当然のことだ。黄金のオーラと、鋼鉄の巨体を通して、どこか息を呑む気配が伝わってきて、そして。
「黙れ! 黙れ! 黙れ黙れ黙れ黙れェエエエエエエエエエエエエエエエエエ!! 全部、全部、全部お前がァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
 キレたな。
 そうだ。それでいい。
 もっと怒り狂うがいい。直感スキルの囁きすら耳に届かないほどに。
 筋の通った説教でさえマトモに耳を貸すのには苦痛が伴うのだ。こんな説教(笑)で心を入れ替えるようなヤツがいたら、僕は呆れて大笑いする。
 ヒーローが邪悪でも卑劣でもいい。世の中にはダークヒーローとかアンチヒーローとか、そんな言葉もある。だけど、紙面、画面なんて分厚過ぎる壁の向こう側に身を置いている時点で、もうそこは別の世界なのだ。そんな遠いところにいたら、声も手も視線すらもが届かない。


 振り上げられた黄金の拳を、返す刀のチェーンソーが斬り裂いた。
 あらゆるものを切り裂く時空の断裂を、ジャバウォックの爪で捻じ伏せる。
 竜機神の両肩が展開した魔力砲は、複製障壁で十倍返しにする。
 放たれる無数のエネルギー弾はベクトルを捻じ曲げて放り返した。


 距離を取ろうが詰めようが、どちらにせよ、相手の攻撃はそのまま防御から転じて撃ち返せる。こっちの負けなど有り得ない。

「終わりがないのが終わりにしてやる! ゴールド・エクスペリエンス・レク────!!」
『────Attack-Ride. KingStone-Flash!!』
「っな!?」

 ギーシュの背後に出現した金色の影は、ディノニクティスから放たれた深紅の閃光に掻き消されて消滅する。さすがはRX、全能ですらないのに戦闘能力で全能を超えているとか言われるだけのことはある。オリジナルと比べると自動発動しない分機能的に劣るが、相手の手の内が見えているならこんなものだ。

「百万倍────か、め、は、め、波ァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 咄嗟に距離を取ったギーシュは、竜戦士の両腕を腰だめに構え、その両手を獣の顎のように組み合わせ、その内側から巨大な光柱を解き放つ。時空連続体を貫き撃ち砕いて迸った閃光は、軌道上に存在した無数の宇宙を灼き滅ぼしながら僕に向かって迫り、そして。

「そっちが百万倍なら────百億倍にして返してやる! 複製障壁!!」

 どうせその程度の攻撃、ディノニクティスの装甲に傷一つ付けられないが、当たってやるのも業腹だ。
 ディノニクティスの正面に赤い光の壁が開いてギーシュが放った光の渦を呑み込み、ルシファーを包囲する形に展開した複製障壁の出口百億枚から黄金の光の渦が吐き出される。シリウスの弓とATフィールドに光凰翼の属性までを追加して展開されることにより攻撃性を増した複製障壁によって放たれたその攻撃の威力は実質百億倍を優に超えている。

「ならば……っ!!」

 一瞬で全身を素粒子レベルに分解された竜戦士は、しかし次の刹那にはその姿を完全に再生させ、光の渦の中を遡るようにして複製障壁へと挑みかかる。悪い判断じゃない。複製障壁というのは要するにワープゾーンの入口だ。潜り抜ければ一瞬で僕の正面に飛び出せる────それができるなら、の話だが。

「甘いよ。僕も成長……進化してるんだ」

 一瞬前までエネルギー波を増幅放出していた複製障壁は、しかし障壁そのものの堅固さでギーシュを阻む。
 当然だ。オリジナルの複製障壁であれば普通に素通ししただろうが、今の複製障壁は同時にATフィールドであり光凰翼でもあるのだ。それ相応の防御効果があるし、何より一方通行だ。

「堕ちろよ元主役、お前の時代は終わったというか終らせる! 終わらせてやる、今すぐ、ここで!」

 障壁が三十六枚重ねの光凰翼としての機能を発現、時空間の構造それ自体を激しくしかし精密に捻じ曲げ、宇宙それ自体を呑み込むほどの超大規模ブラックホールが無数、雨のように降り注ぐ。

「ついでだ、受け取れ! 呪文螺旋(スペル・ヘリクス)────消し飛べ!!」

 偽アーチャーの力で柄から刀身まで極彩色の宝石で構築された巨大剣を投影し、その力を引きずり出す。本来は短剣として存在するそれを巨大化させて二刀流で振るわれる二刀、その名を宝石剣ゼルレッチ、その力は平行世界を司るもの。顕現するその力は多重次元屈折現象、因果を捻じ曲げ時間の流れすら歪めて分身した無限数の刀身が宇宙空間を埋め尽くして内側から喰い破り、クトゥグァにイタクァ、追加で邪神ヨグ=ソトースの力まで乗せた飽和攻撃となって荒れ狂う。


「そんな、何でだ、何で俺が……何で主人公の俺がこんな目に……!」
「しっかりしてください、お兄様! 敵は目の前にいます!! お兄様、お兄様……!!」


 竜戦士の中枢に繋がれたギーシュが震える声を漏らす。自閉状態に近い。だから行けると判断。ディノニクティスの持つ三対六本のヒレ状の脚部から宇宙的色彩のオーロラを噴きながら、周囲に形成したクトゥルフの魔海を泳いで急接近。体当たりで弾き飛ばす。ぶちかましの直撃を喰らった竜戦士はそのまま吹き飛んで、周囲に生え揃った樹に似た巨大構造物に激突して粉砕、そのまま吹き飛び続けて次の樹状構造に激突して粉砕、激突激突激突激突、粉砕粉砕粉砕粉砕、激突に激突を繰り返し、粉砕に粉砕を繰り返し、まとめて叩き折り爆砕しながら吹き飛んでいく。
 時間樹とか世界樹とか呼ばれるそれは、内部に無数の分岐世界を内包する一種の多元宇宙。一つの枝は分岐した一つの平行世界であり、その平行世界自体が、分岐したひとつの世界がどこまでも続く無限の多層世界だ。
 そんなものをまとめて粉砕するような威力の一撃を受けてまだ蘇り続けるギーシュの方こそ異常中の異常。

 だが、どれだけ敵が異常だろうが、立ち直る隙など与えてやらない。
 サンドバッグになって死ぬ以外の道など与えてやらない。
 隙を与えず追撃する。
「捕縛呪法────アトラック・ナチャ!!」
 タバサが吸収し編纂を終えた『アル・アジフ』の記述をベースに地底に潜む蜘蛛神の属性である光の糸を放出、ダゴン&ハイドラの属性を上乗せすることによりチェーンソーの回転刃を突き出した無数の糸が、無数の世界樹を伐り倒しながら竜戦士の機体を絡め取り、捕縛と同時にトゥールスチャの緑の炎を噴きながら拘束。
「力を与えよ! 力を与えよ! 力を与えよ! ────バルザイの偃月刀!! イア! 双子の卑猥なるものよ! ツァール&ロイガー!!」
 王様と同じバルザイの偃月刀を練成して投擲し、さらに双子の風神の属性を持った双剣の呪法兵葬を出して組み合わせて展開、巨大な手裏剣状に変形させてさらに投擲する。
 偃月刀と巨大手裏剣が十字を描くようにして竜戦士を串刺しにして、さらに空間それ自体に刃を突き立ててギーシュの機体を縫い止め、さらにギーシュの周囲に世界樹を創造してその機体を絡め取り捕縛。鋸糸に絡め取られ剣に貫かれ無限の時間と空間に囚われて身動きの取れないギーシュに向かって、さらに追撃をかける。

 ギーシュを拘束する世界樹の塊の上から無数のアナコンダアームを展開して拘束、巻きつけながら締め潰し、その上から無限の宇宙を無限に重ねたよりもなお巨大な拳を撃ち下ろし撃ち下ろし撃ち下ろして殴りつけ、余波で無数の世界樹を内包する“海”が粉微塵に砕け散って消滅すると同時に距離を離す。
 超次元構造の崩壊に伴って無数の世界樹の破片が慟哭の叫びを上げながら乱舞する。

 その破片の一つ、壊れた宇宙の断片にギーシュの竜戦士が飛び込むのを確認、宇宙の残骸に潜伏してこっちの不意を撃つ気だろうがそうはいかない、こっちも追撃してその宇宙に飛び込んで、熱的バランスも物理法則も何もかもが崩壊した狂気の宇宙の中を駆け抜けて拳を叩きつけて殴り飛ばし、余波でその宇宙を支えてきた時間軸が宇宙ごと砕け散るのを後目に、竜戦士をその宇宙から叩き出す。

 殴り飛ばした勢いで“海”だった超時空間構造の外に向かって飛んでいこうとするギーシュの機体を鷲掴みに握り潰しながら引き寄せて投げ飛ばし、しかしアナコンダアームを伸ばすことで、掴んだ腕を離さずに投げ飛ばす。皇餓の時にも使ったアクション、一瞬で“海”の外まで吹き飛ばされて新たな“海”に放り込まれたギーシュに向かって紫電を纏った黄金十字架剣を叩きつけ、十字架剣を突き刺したまま再び距離を取り、砲撃戦の構え。

 ディノニクティスの周囲に無量大数枚にも及ぶ複製障壁を展開し、光凰翼でもあるそれの機能を発現させて斥力波を放射、ゲートオブバビロンの宝具を乗せて質量弾として射出すれば、どれもこれも再生妨害の特性を付与された宝具群は同時に放たれた斥力場に弾かれ加速、相対性理論によってその相対性質量はブラックホールどころか無限重力にも迫り、一つ一つが世界樹を軽く粉砕するだけの威力を秘めたそれが降り注ぐ様はその密度もあって豪雨というよりも暴風に近い。

「どうして……どうして……」
「お兄様……お兄様……! それなら……!」

 ルイズが呪文を詠唱、こちらに向かって爆発の呪文でも放ったようだが、そもそもディノニクティスの装甲にその程度の打撃でダメージを与えることは不可能、呆然と動かないギーシュに向かって紫電を纏わせた黄金十字架剣を振り上げ────

「フェルナン!」
「っ……幻影か!?」

 ルイズの放った爆発はフェイク、本命は、ギーシュに向かって放たれた幻影の虚無魔法だ。それによって生成された幻影がギーシュを取り巻き、アンリエッタやカトレア、エレオノールやその他僕がよく知らないが多分シエスタじゃないかと思われるメイドを始めとして、あいつの周囲にいた様々な人間の姿を形成して、あいつに激励の言葉を漏らしていく。
 こちらはディノニクティスのパーツとして組み込んだ量産型ティファニアを使って解呪の虚無魔法を発動し幻影を消滅させるが、しかし、多分もう遅い。
 無機質な鈍色に沈んでいた竜戦士の視覚素子が刹那、黄金色の閃光を放つ。闇夜の雷光にも似たその輝きは、まさしくギーシュが宿す狂気の光だ。

「クハッ、クハハハッハハハハハハッハハハハッハハァ!! そうだ、そうだよ、どうして思いつかなかったんだ!? そうだ、その通りだ! お前がラスボスになればいいんだよ!!」

 竜戦士の全身を包む黄金の光が一際大きく燃え上がり、竜巻のように渦を巻く。飛び上がった竜戦士の中で、ギーシュはこちらを指さして嗤う。
 復活しやがった。それも、最悪の形で、だ。

「お兄様、気がつかれたんですね! よかった……!」
 涙声を漏らすルイズの言葉に答えることもなく、ギーシュは嗤いながらこちらを指さし、竜戦士の拳もこちらに向けられている。

「そうだ! なら、フェルナン! お前に殺されたジョゼフの分も、ハルケギニアの皆の為に、俺は戦う!!」



 ……!?
 こいつ今何て言いやがった!?



「……あの人を呼び捨てたか。お前が」



 ぎしり、と噛み合わされた奥歯が軋む。
 まあ、あれだ。
 やることは変わらない。それがほんのちょっとだけ、残酷になるだけの話だ。

「……人間どうしても赦せないことの一つや二つくらいあるもの、か。タバサ、あいつ殺す」
「それが貴方の望みなら、任せて」

 飛び散る黄金のオーラで周囲に存在する世界樹を焼き払いながらギーシュの竜戦士が飛翔する。荒れ狂うオーラが黄金の龍を象り、その龍が大きく顎を開き、ディノニクティスの胸部装甲に喰らいつく。
 だが、無数の宇宙を噛み潰しながら放たれた牙は、ディノニクティスの装甲に傷一つ付けられない。それどころか、牙が触れた途端に黄金のオーラは弾け散り、竜戦士の機体までもが異常な揺らぎを発生させて崩壊を始める。
 現在のディノニクティスの全身を覆う存在・非存在複合装甲は、あらゆる攻撃が接触した時点で、対象が“存在しないもの”に“触れて”いる状態を作り出し、その絶対矛盾の発生により論理構造を崩壊させ、存在確率の崩壊に引きずり込むことにより対象を崩壊・抹消する。
 だが、一瞬で消滅した竜戦士はそれでも一瞬でその存在を回復し、次の瞬間にはディノニクティスが全身にまとうクトゥルフの魔海の流れに吹き飛ばされ、その機体を水圧で圧壊させながらも再生を繰り返し離脱する。
 ディノニクティスが八対十六本の両腕を交差させ、その腕に握られたチェーンソーが黒紅と白銀の魔銃に変容────王様から取り込んだ、デモンベインの魔銃。

 重厚なる黒。苛烈なる赤。装飾を施されながらも無骨。何より凶暴。面下方に設置された弾倉に闘志を装填する破壊の象徴────自動拳銃『クトゥグァ』。
 精錬された銀。耽美なる銀。研ぎ澄まされた刃の如く美麗。何より冷酷。六つの弾倉の最下部より死を吐き出す殺意の象徴────回転式拳銃『イタクァ』。

 銃撃銃撃銃撃銃撃、砲撃砲撃砲撃砲撃、魔銃クトゥグァと魔銃イタクァ、左右揃えて合計十六挺のその弾倉に弾丸が装填され、撃鉄が上がり、機関部が唸りを上げて回転する。その銃口が銃火と咆声を吐き出しながら砲弾を連射する。撃ち出される砲弾は無限に連なる並行宇宙を貫いて破滅させながらギーシュの騎乗する竜戦士ルシファーに向かって飛翔する。
 一斉砲火。
 放たれるのは銃弾ならぬ獣弾、砲弾ならぬ咆弾、獣に似て獣でなく、龍に似て龍でなく、悪魔に似て悪魔でなく、それは邪神、その顕現そのもの。


 腐敗と死の劫火を撒き散らし熱的死を具現化する神獣弾トゥールスチャ。
 時間の理を捻じ曲げ歪め加速して万物を終末の塵に還元する神獣弾クァチル・ウタウス。
 宇宙的真理を垂れ流し宇宙の秩序それ自体を論理崩壊させる概念破壊攻撃、神獣弾ダオロス。
 狂気の果ての極限の窮極の芸術的美を体現することによりあらゆる理想から価値を喪失させ魂の根本を撃ち砕く神獣弾トゥルーネンブラ。
 無数無限の眷族を産み出し従えながら超次元宇宙それ自体を蹂躙し駆ける神獣弾シュブ=ニグラス。
 遍く全次元全宇宙に普遍するが故に絶対不可避である無限熱量の塊である神獣弾ヨグ=ソトース。
 無限の形態と無限の個性を持ち刻一刻とその形と属性を変動させながら飛翔する混沌そのものの神獣弾ニャルラトテップ。
 そして、宇宙の無限の極限の深淵の根源の混沌の沸騰する核の窮極の顕現である神獣弾アザトース。


 『アル・アジフ』と『ナコト写本』から取り込んだ外なる神の記述を基に神獣弾を構築して連射する。降り注がせる。
 連射しながらその力を自分自身に通し、解析を繰り返し、自己を強化する。
 相手の持つ最大の力は自己進化能力、無限に超回復を繰り返すことによって、死にさえしなければいずれはいかなる強敵とも渡り合える次元に届く。そうなればジリ貧、今はこちらが強くとも、いずれは並ばれ、凌駕される。
 だからこそ自己を強化する。相手よりも高速で、相手よりも強大に。敵の進化が攻撃を受けるたびに強化される防性の自己進化なら、僕たちの進化は攻撃を行うたびに増強する攻性の自己進化。
 邪神の力を行使しながら自分の内側に取り込んで、僕は自分の力を拡張する。
 邪神の力を行使しながらその情報を解析し、タバサは自分の記述を拡張する。
 一撃撃つごとにその力は強大になり、それを何度も繰り返し、その度に僕たちは強くなる。しかし、それでも。

「っ、フェルナぁああああああああああああああンんんんんんんんん!!」

 竜戦士の背中の翼から黄金のフレアの尾を引きながら全力で間合いを詰めてくる。
 大体、速度にして、何分の一秒とかそういった人類の概念すら通じない、そして概念上にしか存在しない無限小の刹那の間に、宇宙の端から端まで百万回往復できる程度。
 つまり遅い。
 欠伸が出るほどに。
 その程度の遅さ、今の僕たちなら零距離で殴り掛かられようとも一千万回防御しながら昼寝しても間に合うレベル。
 だが、それすらもほんの少しずつ速くなっている。

 それはまずい。
 僕達とギーシュの進化速度はほぼ等速、たとえ互いに無限の進化を繰り返そうとその差が固定されている以上、今開いている極限の差は、互いの力が巨大になるほどにその意味を無くす。相対的に、全体の割合からして小さいものになっていく。
 それはどうしようもなくまずい。

「なら!」

 ディノニクティスの機体を高速巡航形態(エーテルライダー・モード)に変形させ、再び体当たり、同時に至近距離でグラーキの棘を叩き込み、無数の腕に握るチェーンソーで切り刻み、鰭に似た脚部を刃のように使って切り裂いて、ドリルのように変形させた下半身で抉り砕く。
 同時にタバサが術式を撃ち込み、そこに相似の銀弦を織り込んで相手の内側に固定、その成長を共有する。ギーシュが自己増強を繰り返せば、その強化は僕達に対しても適用され、こちらの力を増幅する。同時並行して行われるこちらの強化は向こう側には適用されないから、その進化速度は二倍。ならば、それによって行われる無限進化のチキンレースは倍速で相手の成長を振り切ってこちらが勝つ。

 それでもギーシュはまだ、死なない。
 どれもこれも先程の体当たりを遥かに上回る威力の砲撃を一方的に喰らい続けて、それでもまだ殺し切れない。
 いや、幾度も殺して殺して殺し続けているはずなのに、殺した事実すらも無かったことに書き換えて、蘇り続けている。黄泉帰り続けている。いや……死に続けている。

 妄執。
 装甲。
 魔力耐性。

 そんな様々な要素が、ギーシュを守っている。

 だが、それだけじゃない。何か、もう一つのカラクリがある。
 ルシファーの破壊された半身が瞬間的に回復し、一回り巨大化して機体それ自体のバランスすら崩壊させながら強化再生されていく。
 何度討ち斃されようとも必ず立ち上がり戦場へと舞い戻る────“まるで”正義の味方“みたい”だ。この粗悪の模造品が。


「まだだ、まだ死ねない、死なないんだ……主人公は死なない、負けない、倒れない、だから…………」

 ならば。
 終わりのない進化競争など続ける気はない。そのカラクリを暴いて、無力化してからブチ殺せばいい。
 今の連撃で大体、その正体も掴めた。多重属性による波状攻撃でそれぞれの攻撃に対する結果を基に解析すれば、おおよその答えは出る。
 後は確証を得るだけだ。

「見極めてやる。タバサ……」
「任せて」

 ディノニクティスが掲げた右腕に、『無限の心臓』が宿った次元連結システムから無限熱量が供給される。リベル・レギスの扱う負の無限熱量とは対極に位置する正の無限熱量。
 演算機関が唸りを上げ、術式を、詠唱を組み立てていく。

 術式構築、口訣詠唱────



  光射す世界に
  汝ら闇黒
  棲まう場所無し



「渇かず、飢えず、無に還れ────」



 ディノニクティスの掌に一瞬、次元連結システムが発する「烈」の一文字が浮かび、そして次の刹那には掌の上に浮かぶ闇黒の光体に捻じ切られて消滅する。
 闇黒の光体を掲げた右腕で、ギーシュが放つ黄金の閃光を引き裂きながら飛翔、相手の装甲に右掌を叩きつけるように押し付ける。魔力の奔流が解放され、それに沿って『無限の心臓』が生み出す無限熱量が解放される。あらゆる存在を灼き尽くし、無限の重力で潰し、最後には握り込むようにして時空間すらも消滅させる。

 王様が使うのが負の無限熱量なら、僕が使うのはそれを位相反転させた正の無限熱量。万物を打ち砕く無限熱量と無限重力。リベル・レギスと対を為す、『機神咆哮デモンベイン』の主人公機、鬼械神デモンベインの必滅奥義。その奥義────レムリア・インパクト。

 正真正銘、正義の味方の必殺技。
 お前を主人公になどさせてやらない。
 おまえは悲劇の主人公ではなく、二束三文の悪役として、予定調和の爆発で当たり前のように斃されろ。

 だが、それでもギーシュは死なない。跡形もなく消滅し、それでもまた何事もなく復活する。そしてその度にサイヤ人の特性によって超回復し強化する。だが────見えた。
 その復活の正体が、今見えた。

 そういうことか。
 スタンド────ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム。ガラヴェンタが使っていたザ・ワールドと同じく「ジョジョの奇妙な冒険」の世界における最強の能力の一つであり、その世界において最も理不尽な能力。
 防御においては絶対の未来予知によって繰り出された必殺必中の攻撃を、時間ごと巻き戻して始めから無かったことにする事によって無効化し、そして。


 攻撃においては、敵を「終わりがないのが終わり」にする。


 それがどういう状態なのか、たぶん理解できる人間なんていないだろうし、僕にも今持って理解できないのだが、それによってもたらされる結果だけは知っている。
 死に続けるのだ。その攻撃を受けた相手は何度死のうと何事もなく生き返り、そして何度でも、理不尽な死を与え続けられる。
 相手以上の時間・因果操作能力を持つこちらに対して因果抹消防御は通用しないが、しかしそれを、ギーシュ自身を生かす力とするならば話は別。
 要するに────

「こいつは今、自分自身を終わりがないのが終わりにしているんだ」
「……フェルナン、意味が分からない」
「僕にもよく分からないけどさ。とにかく、そういう状態になっているんだ」


 ならば。


 ディノニクティスを中心に、紅い光の華が咲く。

 赤。紅。赫。
 焼き尽くすほどに燦然と、蓮華を思わせる巨大な華が開く。

 複製障壁。
 ディノニクティス・アートレータ・アエテルヌムによって展開される、もはや無限すら超えた超数量の複製障壁。それによって複製されるのはディノニクティスそれ自体。
 無限/無量/無窮すら超えた鬼械神が宇宙を、次元を、時空を埋め尽くし、無窮/無量/無限すら超えて顕現する。

「その能力が貫けないなら」
「貫けるものを持ってくればいい」

 それこそ、全能の神すら殺すほどの。
 理不尽系の防御を突き破るのは、理不尽系の攻撃を持ってするに他ならない。そして、そんな代物を僕は一つしか知らない。

 無限の心臓の能力を以って因果率を操作、時間の流れに接続。遥か未来の可能性を手繰り寄せる。時間を掛ければあるいは辿り着くはずの、遠く彼方の未来の刻の果てから、在るべき自分自身に接続する。
 水精霊のリンクを通して流れ込んでくるのは暴力的なまでの経験値の濁流。必要なのは経験情報の憑依、その行為は偽アーチャーのスキルで以って補完され、僕とタバサの血となり肉と変えていく。ついでに偽アーチャーの力で宝石剣まで投影し、術式補助のツールに変える。

 ディノニクティス・アートレータ・アエテルヌムの中枢に宿る“無限の心臓”を、そしてその手に握られたトラペゾヘドロンを通して、僕たちが知らない、しかし僕たち自身の経験情報が流れてくる。今の自分の人格が意志を上書きしかねないその濁流に耐え自分自身を固く守りながら、その経験情報を最速で咀嚼して取り込んでいく。
 必要なのは“それ”を扱うための技術であり技量。さもなければトラペゾヘドロンそれ自体の宇宙的な力の乱流に押し流されて、消え去るのは僕たち自身だ。
 だが、着実にその経験は僕たちのものになっていく。僕たちの力になっていく。




 その経験の中に、何かの光景が見えた。
 遠い、遠い、果てしなく遠い未来の話。




 しん、と世界は静まり返っていた。何の音もしない。音一つない世界は、暗く凍てついた灰色の鋼に覆い尽くされている。見るものの精神を蝕む、暗澹たる風景。

 かつて漆黒の真空の中に浮かんでいた蒼い惑星は、今や冷たい灰色に凍りついた冷酷な姿を曝している。その惑星がかつて地球と呼ばれていた時代も、もはや過去のものとなった。今、その星を地球と呼ぶ生物はいない。かつてホモ・サピエンスという名で自分たちを呼んでいた生物種が栄えていた時代も、もはや何億年かほど昔に過ぎ去った。

 今、その星に青い海はない。蒼い大気はない。碧い空はない。

 惑星の地表から中心核に至るまでのあらゆる水分は赤く染まり、大量のナノマシン成分を含んで濁っている。海も同じだ。
 地表には無数の金属の植物が林立し、鈍色の葉や花を広げ、時折、鋼の森の中に散見される鋼の巨大樹、軌道エレベーターの役割を果たすそれから、直径数十メートルにも及ぶ星間種子が外宇宙や異次元の彼方へと打ち上げられる。
 空は常に分厚いナノマシンの暗雲に覆われ、大半の陽光は発電ナノマシンに吸収され、ナノマシンの機能によって透過された残りの太陽光が、視界を遮らない程度の薄さへと地表の闇を希釈する。

 夜空さえも黒いままではなかった。もし人間がこの大地で一夜を明かすことになったとすれば、陽光が差し込まない夜半、発電ナノマシンの大半が休眠状態になり、光が透過されて素のままの夜空が頭上に広がることになる。だが、その夜空すら漆黒ではなく白銀。
 旧太陽系外縁部を囲うように建造されたダイソン球がかつての月のように太陽光を反射し、空もまた金属そのままの淡い銀色に輝くのだ。
 そしてダイソン球がなかったとしても、夜空に星など見えようはずもない。もはやこの銀河系に……いや、宇宙それ自体に存在する恒星は全て、この太陽系と同様の鋼の甲殻に覆い尽くされ、その光を外に漏らす事もない。


 世界は鈍色の静寂に呑み込まれていた。


 その惑星の衛星軌道、無数の人工衛星が浮かぶその只中に、巨大な鉄塊が浮遊していた。宇宙船とも潜水艦とも甲冑魚ともつかないそれは、あまりにも巨大な鬼械神。

 ────ディノニクティス・アートレータ・アエテルヌム。

 船に似た形相を持ち、そして内部機構自体も船に似せている現在、それは次元を渡る船と呼んでも支障はないだろう。そのフネの中に人間はいない。マゼンタの装甲に全身を包んだ無数の人型が、呟き一つ発することなく無表情に歩き回っているだけだ。
 だが、人の姿をした存在は存在した。

 艦橋。
 果てしなく広大な空間、宇宙さえも呑み込むほどに。
 天地創造やアカシックレコード干渉の上位に存在する多重超高位次元干渉技術によって理論上無限の広がりを持つ巨大な艦橋の中に、唯一つ存在する椅子に腰かけて、一人。そしてその膝に甘えるように頬を寄せてもう一人。

「これでこの世界も征服完了。何というか……デモンベインとか虚無戦記の世界よりも苦戦したような気がするな…………」
「投入戦力でいえば、永遠のアセリアの世界の十倍以上。スパロボの世界との比較なら数万倍」
「…………冗談だろう?」

 ここは元々らきすたの世界だったんだぞ、と呆れたようにぼやきながら、頭痛をこらえるようにその人影は頭を抱えた。

「なんでらきすたとかけいおんとかAIRにSchooldaysとかの世界が、アセリアもびっくりのチート転生者無双になってるんだ…………? そもそもバトル漫画ですらないんだぞ!? というか、何だよ創造と破壊を司る程度の能力って!? 何だよ知っている限りのあらゆるサブカルチャーの能力を使えるって!? 何だよ思い描いた設定を具現化するのが能力って!? 何だよ主人公補正を具現化する能力って!? チートにも程があるだろ程が!?」
「おかげで収穫も大きかった。これほどの収穫があったのは『妄想キャラクター最強スレ』の世界以来。貴方はとてもよく頑張った」

 少女の姿をした存在が、椅子に腰かけていたもう一人を労わるようにして相方の頭を撫でる。子供をあやすようなその感触を受け入れるようにして引きつっていた彼の表情が緩み、穏やかになっていく。

「とはいえ、もう二度とあんな世界には行きたくないな……」
「同感。……いくらなんでもあれはない」

 今ではもう、その程度の相手であれば余裕で無双できるレベルの力を付けているとはいえ、あの世界は今の彼にとっても悪夢そのものだ。主に世界それ自体の痛々しさと自重の無さが。
 まさか、量産した超天元突破Zファイナル真ゲッターエンペラーX軍神強襲仕様トラペゾヘドロン装備が、無限大数まとめて消し飛ばされるとは思わなかった。
 あの時は確か脇目も振らず逃げ出して、追撃を掛けてきた敵軍が分散したところを各個撃破を掛けて吸収して、無限の強化と無限の進化を繰り返しながらようやく勝利したのだが……全軍撃破に至るまでの時間が、無限の時間を無限の無限乗数回重ねてさらに無限の無限の無限で累乗したくらいの……いや、確かもう一つか二つくらい無限がついたような気がする。記憶自体は鮮明なのだが、戦闘記憶それ自体の計算が面倒臭い。
 今でもあの追撃戦は悪夢に見るほどだ。あれは自分にとって三大悪夢に数えてもいいくらいだろう。そう、最初の頃にアンチスパイラルと天元突破グレンラガンのダブルライダーキックから逃れて異次元に脱出して、気がついたら時天空の腹の中だった時くらいだ。あの時は必死こいて脱出したらなぜか洒落にならない数のデモンベインが這い寄る混沌のロボに一斉攻撃するところの正面に出て、正直本気で死にかけた。
 おかげでその時知り合ったナイアさんとは今でもチート主人公の脅威について熱く語り合う友人同士である。

「次は何をする?」
「そうだな……もうアザトースコレクションもそろそろ無量大数行くし……まあ、休憩かな。もう今回はさすがに疲れた」
「私も。しばらくは二人だけでいい」

 少女の姿をした存在は相方の膝に頬を寄せていた体を起こして、相手の膝の上に座り込んだ。相手が後ろから回した腕をさらに抱き締めて、相手の胸板に頬を寄せる。



「ところでタバサ」
「……何?」



「この間、妙なものを見つけたんだ。最近始めたアレだけど、中にひどく錯乱した奴がいてさ、仕方ないからランダムで追加したらどっかで見覚えのある組み合わせになって、後で考えてみたらアレ、ギーシュだよ」





 どこかで、歯車の噛み合う音がした。
 理解。
 今まで触れることの無かった事実に触れた、気がした。



 どこからともなく狂ったフルートの音色が聞こえてくる。



 その経験を見通す僕の視点が、記憶の中の僕自身と少しずつ合一していく。危険だ、と思う。だが、今のままではどう考えても足りないのは事実。だから危険を承知で経験情報に沈潜していく深度を上げる。



 ギャリギャリと音を立てて歯車を巻き戻す。
 ほんの少しだけ、記憶の時計を過去に戻す。

 知りたい真実を知るために。





 そして。
 そこからわずかに時間を遡った時点で、その視点、“現在”の僕と“未来”の僕の視点が完全に一つになった。




 見えた。
 その経験の中に、僕の知っているはずの出来事が、僕の知らない形で存在しているのが。

 それは全ての始まり。
 ありとあらゆる何もかもの。
 かつてあの、どうしようもなく退屈で無意味で、しかし平穏な前世にすら適応することができなかった僕たち転生者が追いやられたレギオンの湖底の。
 この最低で最悪で、でも確かに大切なものを手に入れることができた蠱毒の壺の。
 ハルケギニアの。
 この世界の。






 全ての始まり。






「と、いうわけでリアル転生ものをやってみようかと思うんだがどうだろう?」

 あまりにも小さな、ちっぽけな魂を前に、僕は呟いた。その矮小な存在は、人間の成れの果てだった。その魂は不思議そうな顔をすると、僕に向かって言うのだ。

「僕を転生させようとでも?」
「まあな」
「……なんで?」

 それが全ての始まりだからだよ、と思わず本当の事を言いたくなるのを、嗤いの衝動と共に押し込めて、僕は適当に答えるのだ。

「いや、最近、二次創作の感想でよくあるだろ? 憑依転生のテンプレのヒキオタニートみたいなヤツが、転生した瞬間に熱血して努力しまくるとかおかしいとか。けど俺テンプレ好きだからさ。実際にそうなるかどうか試してみようと思って。だからまあ、生前ヒキオタニート直前で、ついでにタイミングよく自殺までしてくれちゃったお前を選んだわけよ」
「はあ……。そうですか」

 ぶっちゃけ、演技している。わざわざ演技しなくても僕の正体がバレるなどという可能性は皆無に等しいだろうが、しかし用心に用心は重ねておきたい。
 でも、タバサはあんまりいい顔しないんだよな、この演技。なんか小物臭いとか。

「反応薄いなあ。せっかく転生できるんだから、も少し嬉しそうな顔くらいしろよ。目指せハーレム!とか、原作キャラに会えるZE!とかさあ。別に何やってもいいよ。俺TUEEEE!でも、ハーレムでも、内政チートでも、死亡フラグ回避でも、好きなことしていいんだぜ。別に何もしなくてもいいけどな。そういう実験だから」
「いや、悪いけどそういうの趣味じゃないんだわ。まあ確かにハーレムには惹かれるものとかあるけどさ。それに、ゼロ魔世界に転生して、生まれが何の能力もない平民!とか嫌だし」

 こうして目にして、枯れてるなと思う。かつての自分自身であるが、こうして客観的に見てみると感慨深いものだ。
 もっとも、自分にも少し納得できる部分もあるが。
 自分自身とその世界に絶望した人間が安易に転生させられる。それはいい。だが、その転生先が必ずしも前よりもマシな世界になるとも限らないわけだし。また絶望するのは御免だ、とか思うわけだ。

「ああ、それは大丈夫。転生するときに能力とかあげるから」
「マジで!?」

 だって必要だから。
 能力ってのは元手だ。成長するための。
 やがてそれを大きく成長させていって、最後には全てを凌駕する存在になる。今の僕に至るために必要な工程だ。

「でもいいのか? 転生時に能力くれるテンプレって、叩かれるお約束だろ?」
「いいか、漢ってのは、胸を張って約束を守り通せるヤツの事を云うのさ。約束を守らねぇヤツなんざ、男たぁ云わねぇ!」
「…………なるほど」

 いずれ僕自身になる魂は、色々と考えているようだ。おそらく、向こう側に持っていく能力の組み合わせを考えているのだろう。精神系の能力を使わなくても分かる。今ここにいる僕自身が“そう”だったから。
 だから、行き先の世界を教えてやることにする。その世界が、無数の転生者が跳梁跋扈する地獄のディストピアになっている事までは教えてやらないが。

「ゼロ魔だ。あれならバトルも内政チートもありだからな。ああ、安心しろ。別に無力な平民に転生するような変化球を仕掛けるようなつもりもないぜ。テンプレ通り、ちゃんと貴族だ」

 言われたかつての僕の思考がめまぐるしく動いているのが分かる。いくつかの能力の組み合わせを取捨選択して、色々と試しているようだ。やがて答えが出たらしく、かつての僕は顔を上げた。


「分かった。それじゃあ……」


 答えを聞いて、能力を付与して、転生させる。もはやルーチンワークになりつつある一連の作業を終えた後、僕は立ち上がった。その背後から、僕の背中越しに腕を回して、過去と全く変わらない暖かさが乗る。

「フェルナン、終わった?」
「ああ。次辺りかそこらへんで、ギーシュの元がこっちにくるはずだ。とりあえずそれを終わらせたら一区切りってところだけど……」

 僕は呟くように言って真上を振り向いた。
 そこから迫ってくるのは、黄金の剣を携えた巨大な魔神の軍団。その中のあるものは巨大な剣を携えた巨人であり、あるものは無限の進化を続ける機械の神であり、またあるものは宇宙全てを覆い尽くす黄金の光輝を放つ龍であり、また、どこにでもいる当たり前の人間の姿をしているものすら存在していた。
 実在に依らず時空によらず存在し、非実体や概念というものすら構成素材として取り込んだ何ものか。
 共通しているのは、そのどれもが、遍く全ての次元、時空を撃ち砕くほどの力を有しており、そして────敵であること。


 “現在”の僕にはまだその存在の正体すら理解できないが────一つだけ理解できた。そいつらは敵だ。


「今はこの世界の敵を喰い尽くすのが先だ。このふざけた世界────妄想最強スレの世界を」
「ええ、だから────」


 僕とタバサはディノニクティスを巨大な魚のような形態に変容させ、無限大に増殖させながら、たった二人で戦いを挑む。


「ディノニクティス艦隊、第一艦隊から第百二十八艦隊まで、戦線が膠着するのを待って特攻体勢!! 第六十四億から第千八百兆艦隊までは潜行して回り込め!! 残りは迎撃! 敵の突進を受け止めろ!! 全艦、戦闘開始────!!」
「アザトース────神獣形態!!」


 そこから先は読み取れなかった。
 経験情報はそこまでだ。
 だが。



 そこから先は、僕が誰よりもよく知っている。






「……タバサ、今の」
「ええ。驚いた」
 さすがに驚いた。見れば、タバサ自身も目を丸くしている。それはあまりにも驚くべき真実だった。


 全ての始まりは……この世界に転生者を送り込んだ神は、間違いなく未来の────


「────僕たち自身だ」


 そうだ。
 なら、負けることはない。
 僕自身も含めて、全ての転生者は僕たちの被造物に過ぎない。なら、転生者を相手にこの僕たちが負けるはずもないのだ。


 八対十六本のアナコンダアームの尖端、リベル・レギスを捕食吸収したことによってその右腕と同様の能力を得たディノニクティスの掌に、巨大な暗黒の光体が発生する。その奥から迫り上がってくる、何か。


 流れ込んでくる経験情報に従って、深く深く、自分自身の闇の中に沈潜する。
 毒々しく濁った闇。
 遠く果てない闇。
 一歩間違えば自我すら融けて消えてしまう超自我の闇。

 その中に、確かに見つけた。
 闇の中に沈む金属の小匣。それに向かって手を伸ばす。匣と僕たちの間にはどうしようもなく果てしない、無限の距離。だがその程度、たかだか無限程度の障害など、僕たちを阻むには値しない。

 手を伸ばす。届かない。

 手を伸ばす。届かない。

 手を伸ばす。届かない。

 手を伸ばす。届いた。


 届いた。
 届き得た。
 遠く、遥か未来、いずれ届き得る果て無き果てへ。


 掴み取る。細かな彫刻が施された鉛色の匣、その扉は固く閉ざされていて、今の僕たちには開けそうにない。
 だから、開けるところから持ってくればいいのだ。大丈夫、同じことはさっきもやった。


 創造理念など知ったことじゃない。
 基本骨子などどうでもいい。
 構成材質などに意味などない。
 製作技術など取るに足らない。
 必要なのは成長に至る経験、蓄積された年月、それだけで工程は十全に完了する────


 頭痛。
 脳髄が悲鳴を上げる。
 ただでさえ、これを扱うこと自体、今の僕たちには早過ぎるのだ。だから使えない。使えないのなら、使えるようになればいい。


 扉に手を伸ばす。開かない。
 扉に手を伸ばす。開かない。
 扉に手を伸ばす。開かない。
 扉に手を伸ばす。開かない。
 扉に手を伸ばす。開かない。
 扉に手を伸ばす。開かない。
 扉に手を伸ばす。開かない。
 扉に手を伸ばす。開かない。
 扉に手を伸ばす。開かない。
 扉に手を伸ばす。開かない。
 扉に手を伸ばす。開かない。
 扉に手を伸ばす。開かな────


「────大丈夫。私がついている」


 タバサの小さな掌が僕の手に重なった。その掌に導かれて僕はその扉に手を押し当てる。
 今までとは全く違った感覚。
 そして、今までとは比べ物にならないほどにあっけなく、扉は開け放たれた。



 開放される。
 解放される。
 カイホウされる。

 異形の匣が砕け散り、飛び散ったその破片が再び集合して剣にも樹にも柱にも似た異形の刀身を組み上げる。

 匣の中に閉じ込められたそれ。
 柩のような箱の内側に、七本の支柱によって支えられたそれ。
 血涙にも似た無数の赤い筋が走る漆黒の多面体。有り得ない物質。存在しない物質。神々の禁忌。

 それこそが、デモンベインの世界における主人公とその仇敵が辿り着く最後の境地。


               Shining Trapezohedron
 ────窮極呪法兵葬≪輝くトラペゾヘドロン≫。



 そう、僕たちは一つ、思い違いをしていた。
 このトラペゾヘドロンを扱うために必要なのは、技術でも経験でもない。極限まで高められた己自身、それそのもの。
 かつてトラペゾヘドロンを、この神々の禁忌たる最終武具を扱い得た存在はたったの二つ。


 人の善性の極致。
 人の悪性の極致。


 すなわち、己自身の存在を極限まで突き詰めた存在であるということ。




 ならば、その程度────僕たちはとっくに成し遂げているというのだ。




 その理解に至った刹那、当たり前のようにこのトラペゾヘドロンの扱い方が理解できた。
 人間の極致を名乗るには肉体的にも少々人間をやめ過ぎているような気がするが、なに、大した問題ではない。半分邪神の血が混じったヨグ=ソトースの落とし子が人間の悪の極限を名乗る資格を持つのだ。ならば僕が似たようなものになったところで大差はあるまい。


 刀身の内側に多面体の結晶が嵌り込み、最後の核として結合し、顕現する。

 そして戦場は異界と化した。

 それは捻じ曲がった神柱、狂った神樹、刃の無い神剣────掌の暗黒体から吐き出される純白の双身剣にも似たそれを握り締めると同時、脳裏に膨大なイメージが走る。


 闇の極限に位置する。
 我は闇。輝きを呑み込み邪悪を孕む、無辺の深淵。愛は烈しく、狂おしく、我を苛む。

 光の極限に位置する。
 我は光。夜闇の中に駆け奈落に奔る、狂念の灯火。愛は甘く、熱く、我を蝕む。


 戦いのイメージ。掴み出したそれの内側に蓄積された無限大の経験情報、膨大過ぎて断片的にしか掴み取れないそれも、いずれは完全に受け止め、凌駕できる。そして、その断片をさらに自分自身の内側に取り込んで、自分自身をより強化していく。


 異形の神剣を振り上げ、振り下ろし、剣舞を舞うように輪を描く。その軌跡に光が宿り、やがて一つの紋章を描き出す。
 五芒星ではない。
 邪悪を祓う旧神の紋章ではない。
 それはもっと醜悪で、もっと残酷で、しかし、その紋章は────


 ────僕たち自身だ。


 そして。

 タバサとそっと掌を重ねる。
 タバサはそっと微笑んだ。
 その掌はやはり小さい。タバサの身体は未発達で未熟で小さくて、それでも、彼女がそこにいる限り、僕は無敵だ。



『────Final-Attack-Ride. R-R-R-RX!!』



 どこかで聞いた電子音と共に、無限のディノニクティスが握る無限のトラペゾヘドロンにレムリア・インパクトの無限熱量が流し込まれる。トラペゾヘドロンがジャバウォックの爪と、乖離剣エアと、グラムやデュランダルやミョルニルやゲイボルグやゲートオブバビロン内部のとにかくあらゆる宝具と相似され、無限の宇宙と無限の次元によって構成された、無数の世界樹を内包する超次元宇宙観さえ引き裂く対界奥義として発動する。


 ────闇が集う。闇が集う。闇が集う。
 歪んだ、狂った、悶える、異形の闇が集う。

 ────光が集う。光が集う。光が集う。
 荒ぶる、吼える、嘲笑う、異形の光が集う。


「それは悪」
「それは享受」


 双身剣に似たトラペゾヘドロンの刀身が再度砕け、三枚の回転柱を繋げた削岩機にも似た巨大剣になって最固定。唸りを上げる回転刀身はその刀身の継ぎ目から、無限に生成消滅する無数の宇宙を孕んだ超次元断層の靄を噴き出しながら、剣舞を舞って振り回される度に宇宙を超えた超宇宙構造を切り裂いていく。
 そして最後に、全てのディノニクティスが握るトラペゾヘドロンの尖端に深紅の華が咲いた。複製障壁の華だ。宇宙を埋め尽くし咲き誇る無数の華────曼陀羅華。


 ────それは埋葬の華。
 ────それは祝福の華。


 幾度も生まれ変わり蘇り続ける僕達の、転生の華。そして再誕の────



「再誕の華に誓って────我は神話を紡ぐ者なり────!!」」



 無限を超越したディノニクティスを、無限熱量の、無限物量の、無限数量の、無限に無限に無限に無限を重ねた最終奥義。
 それは本来、全能の神すら殺した奥義。その完全なる機械的再現に魔術的要素を加えて放つ技。リボルクラッシュと呼ばれるそれを、無限に無限を重ねた数だけ叩き込む物量攻撃。一度の攻撃を無限に増やし、無限の連撃で撃ち砕き、それを無限に繰り返す絶滅奥義として発動する。全能神相手ですらオーバーキルする僕とタバサの必滅奥義。




 ────天地乖離す開闢の星零零零式(エヌマ・エリシュ・アイン・ソフ・オウル)。




 光が降り注ぐ。
 無限の光だ。
 威力無限、回数無限、数量無限、物量無限、とにかくありとあらゆる要素が無限。全ての一撃はゲイボルグやグングニルのような必中系宝具と相似させて撃ったからとにかく必中、撃ち漏らしは皆無。
 世界を爆砕し、腐敗し、燃焼し、凍結し、崩し、呪い、溶かし、切断し、融解し、断絶し、歪曲し、粉砕し、分解し、浸食し、蹂躙し、冒涜し、────ありとあらゆる形でその存在を否定して、幾億の世界を創造し、そして相手の産んだ世界を殺戮する。
 レーザーのように細く絞り込まれた無限熱量の矢がギーシュの竜機神の機体を滅多刺しに破壊して、内側から爆砕し、それでもなお降り注ぐ光の矢はそれすらも純白の闇で押し潰し、何もかもが光の幕に閉ざされていく。






 ────全ては終わる。






 その刹那。

 全てが無限の光に消えてゆくその刹那に、奇妙な幻覚(ユメ)を見た。

 僕たちは何もない場所を歩いていた。
 一面の純白に埋め尽くされた世界。見渡す限り、上も下も前も後ろも右も左も、とにかく純白。いや、そもそも方向の概念すらあるのかどうか。
 その中に一本の道が通っていた。そこが道である事を示す何かが通っているわけでもなく、何の意味も理由もなく、そこが道であると、とにかく僕たちは認識していた。
 歩き始めてどれくらい時間が経ったのだろうか、いや、そもそも始まりなどというものがあったのだろうか、歩きながら、ふとそんな事を考える。ただ始まりを覚えていないだけかもしれないし、あるいは始まりなどというものは始めからなかったのかもしれない。
 だが、そんなことは今さらどうでもいい。僕が手を握っている彼女がいれば、別に歩くのも苦ではない。

 変わり映えのしない純白の世界を歩き続ける。相変わらず世界は真っ白で何もない。
 そんな世界に初めて変化が現れた。少し離れた場所に、見慣れない黒い点。少し歩いて距離が近づくと、その輪郭が段々と見えてくる。
 それは人影だった。二人いる。僕たちと同じように手を繋いだ彼らは、まるで影絵のように黒く輪郭だけが浮かび上がって、立体感の無い真っ黒な影が立っているようにも見えた。どこかで見覚えのあるような影絵の彼らは、幽霊か何かのように存在感も無くただその場に立ち尽くしていた。

「そんなところで、何やってるんだ?」
「……道を探しているんだ」
「道? あるじゃないか、ここに」
「……分からない。真っ暗で何も……見えない」
「ふーん……ま、好きにすればいいと思うよ」

 ほんの少しだけ言葉を交わすと、僕は彼女の手を引いて、相変わらず変わり映えのしない真っ白な道を歩き出す。
 その背中に、影絵の二人は声をかけた。

「なあ……俺は何になればいいんだ?」
「ねえ……どうすれば皆は認めてくれるの?」

 頼りなく震えるその声に、僕たちは声を重ねて答える。その程度、言うまでもない。




「「────そんなこと、知ったことじゃない」」




 それが幻覚だったのか、あるいはギーシュ達と僕たちの意識が一瞬通じあったことによる共感覚だったのか、それは分からない。だが、一つだけ、分かる事がある。

 終わりなんてものはない。

 僕たちはまだ生きていく。
 終わらないのだ。まだまだ強過ぎる相手なんていくらでもいるし、そんな相手と戦うことになるかもしれないから異世界侵攻と強化もやめるつもりはないし、手に入れたものを手放すつもりもない。

「……というか、ここ、どこだ?」
「……調査中」

 見渡せば、そこは宇宙。
 無数の星が瞬くこともなく輝いている。ただ問題は、ここが宇宙のどの辺りなのか、というかどんな宇宙かよく分からない、ということであり。
 ジョゼフ王、ギーシュ&ルイズとの連戦の後、うっかり調子に乗り過ぎて強力過ぎる技を撃ち過ぎた僕たちは、次元の崩壊に巻き込まれて、よく分からない場所まで落ちてしまった。まあ、それとて元の世界に無数の分身がいるから問題はないのだが────


「っ……フェルナン、あれ!」
「………………おおっといきなり大物」


 何かに気が付いたタバサが声を上げる。それに反応して僕が知覚領域を拡大すると、馬鹿でかい、それこそ銀河よりも巨大な赤と黒の巨人が、ドリルのように変化した腕を振り回して殴り合っている。……あまりにもデカ過ぎる物証を発見。

「…………グレンラガンの宇宙か。しかもラストバトル」

 この場所の特定に成功。
 なら、僕たちのやることは決まっている。

「それじゃ、様子見と行こうか、タバサ」
「ええ。ディノニクティス、高速巡航形態(エーテルライダー・モード)に移行。大深度次元位相に潜行開始────」

 別に獲物を見逃す気はないが、もう少し、相手が弱るのを待っていてもいいだろう。それだけの話。

 戦いは続く。終わりはない。
 だから、使い古された台詞を使わせてもらうなら────





 ────僕たちの旅はまだ始まったばかりだ、なんてさ。





 むかしむかしのはなしであった。

 むかし、あるところに一人の男がいた。男は救い主だった。

 さて、救い主の男が通りかかると、墓場から二人の男が出てきた。二人は悪魔憑きだった。悪魔に取り憑かれて苦しむ二人があまりにも暴れるので、誰も近付く事ができず、墓地に押し込めておくしかなかったのだ。

 彼らに取り憑いていた悪魔は言った。
「貴方が私に何の関係があるというのですか。お願いです。どうか私に関わらないでください」

 すると、救い主はこう返した。
「確かに私はお前たちとは何のかかわりもない。だが、お前たちはこの人間(セカイ)の中にいるべきではない。御覧、彼らはこんなに苦しんでいるだろう」

 悪霊は言った。
「ならば、ならばせめて、そこにいる豚の群のなかに入らせて下さい。我々には、もうどこにも受け入れてくれる場所が無いのです」
 それならば仕方がないと、救い主の男は彼らに豚の中に入る事を許したので、彼らは豚の中に入っていった。

 すると、豚の群は荒れ狂い、二千頭もの豚は前後の見境を失って、我先に水の中へと飛び込んで溺れ死んでいった。

 悪霊の名はレギオン。群勢であるが故に。

 たまに、そんな感じのヤツがいる。人間の中にいると迷惑ばかりかけるから豚の中に突っ込むしかやりようがない。だけど、さりとて彼らは豚の中ですら生きていけるわけではない。
 これは、そんな話であった。


 はてさて、水底のレギオンは────





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後書き的なもの
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 ジ・エンド。
 ディエンドではなくジエンド。
 マジ完結。
 自分でもちょっと信じられないけど完結。びっくり。

 振り返って思うのは、出てくる女キャラどいつもこいつも最終的に非処女だよとか……。
 まあそれはそれとして、書いていて本当に楽しかったと思う。要するに、だからSS書いているわけで。
 能力の組み合わせ方とか考えてて本当に楽しかった。皇家の樹辺りのアクシデントは本当に焦ったけれども。

 実はこの作品の冒頭にあるレギオン、これ、実はフェルナンだけでなく、転生者全体、そして転生者以外の主要登場人物全体をも指していたりします。転生者全員、どこか前世の世界で上手く生きていけない社会不適合者であり、そして同時にハルケギニアの中にいてもどこかおかしい世界不適合者。


 とにかく、何はともあれ、ここまでお付き合い頂いた読者の皆さん、感想をくれた方々、今まで本当に、心から、ありがとうございました。





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番外編:キュルケ
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 ニイドの月、エオローの週、オセルの曜日。


 古式ゆかしいルーンを使って日付を表すのも久しぶりだという気がする。ラ・ロシェール商会で使用されている文書における日付の表記は、基本的に数字を使う。見やすさと使い易さを重視したという触れ込みであり、実際見やすいし使い易いのは事実だ。
 だが、こうして以前と変わらないものを見ると、やはり懐かしいというのも事実だ。確かに色々なものが変わっていく時代であるが、しかしそれでも、変わらない何かがあって欲しいと思う。

 今携わっている事業にも少しだけ安定というものが見え始めてきた。暇ができたので、とりあえず手記のようなものを付けてみることにする。

 ハルケギニアは変わった。
 滅んだ、と言ってもいいかもしれない。
 我が祖国ゲルマニアだけではない。トリステイン、アルビオン、ガリア、ロマリア……かつてゲルマニアと肩を並べていた大国も軒並み崩壊し、アルビオンに至ってはその代名詞たる浮遊大陸すらも消滅したという有様。
 当然、ゲルマニアもBETAと呼ばれる怪物の群れに呑み込まれて消えた。モッタニア共和国の公式発表によると、ロマリアを裏から支配していた稀代の犯罪者ギーシュ・ド・グラモンによるものらしい。一時期は同じ学校で勉強していた私の目から見たギーシュ・ド・グラモンはそんな大それたことができるほどの男でもなかったと思うのだが。
 同じ発表で公表されたその犯行動機がまたお笑いだ。自分を英雄にするため、だというのだと。吹き出してしまった一方で、その犯行動機に妙に納得してしまったのも事実だが。今、思い返してみれば、私の記憶にある彼の一挙手一投足にはどこか、演技じみた不可解な胡散臭さが漂っていたようにも思える。それは果たして、私が公式発表を鵜呑みにしてしまっているからなのだろうか。


 まあ、それはそれとしても、神聖モッタニア共和帝国の話だ。

 あの事件の後、かろうじて人が生きられる環境が存在していたトリステインを支配した当時のモット伯、要するに現モッタニア皇王が建国した国家である。
 皇王の絶対的権威の下にあらゆる人民は平等を約束され、その国政は議会から選出された大統領に、国法は貴族院と衆議院からなる議会に、裁判権は大統領に任命された裁判官にそれぞれ委ねられる、という、召喚されし書物の知識を参考にしたと言われる国家体制で、過去の世界の在り方とは果てしなく掛け離れた政治体系は、私のような古い人間にはいささか違和感を感じさせないでもない。
 衆議院にしたってそうだ。爵位の無い平民の中から、爵位の無い平民によって選出される。
 かつてのゲルマニアのようにモッタニアで平民が貴族になることはできるが、貴族になった時点で衆議院への投票権は失われ、衆議院の議席からも外される。
 前代未聞だ。よくもこんな政治のやり方で領地が治まるものだとも思うが、とりあえず何の問題も起きてはいない。

 そう、いないのだ。
 衆議院の議員になるためには投票による選挙が不可欠で、投票を受ける為には公約を発表するのが義務であるのだが、その公約をまともに守っている議員など見た事がない。
 だが、それにもかかわらず、ここ数年というもの、この政治体制で問題が起きた事など一度もない。それどころか、投票においてどれだけあくどい手で議席をもぎ取った議員であっても、議席に座った次の日からは恐ろしいほどに清廉潔白な存在に変貌しているのだ。しかも取り巻きごと。
 無論、それは貴族院も同じだ。まったく。完全に。

 だからこのモッタニアには、おそらく、間違いなく何かがある。詮索してはならない、恐ろしい秘密が。
 正直なところ、私はそれを知りたくない。近寄りたくもない。真実などいらない。今のままで十分だ。


 いや、話題を変えよう。
 今、私はラ・ロシェール商会の経営部門で、小麦の取引を行っている。これに関しても少しばかり不審な点が多いのだが。
 品不足になった事がないのだ。どんな飢饉が起きた時にも。災害が起きた日には一時的に品薄になる事があるが、一日後には充分な量の物資が倉庫に一式揃えられている。あるいはどこからともなく届けられる。そういう時の物資の配達元には、決まって“ウクライナ”だの“カリフォルニア“だのといった聞いたこともない地名が記されている。
 これも正直、知りたくない事の一つだ。
 思えば、ラ・ロシェール商会の成り立ち自体、不可解な点が多い。元々ラ・ロシェール商会の母体となったのはあのギーシュ・ド・グラモンが設立したグラモン商会という組織である。それがラ・ロシェールの悲劇以来、まるで掌を返すかのようにモッタニア側に寝返ったのは、その頃から経済に関してある程度の知識があった自分にとって、まるで何かの喜劇でも見ているようだった。
 いや、工作自体はきっとそれ以前から進行していたのだろう。しかし、そもそもがその工作にしたところで、どこをどうすればあのような結果に至るのか、私にはまったく理解できない。まるで性質の悪い奇蹟でも見ていたかのようだ。……いや、案外それが正解かもしれない。


 やめよう。
 思う。
 あれも駄目、これも駄目、となると、正直、書く事が思いつかない。別に、今の世界が嫌いなわけではないのだ。治安も悪くないし搾取もない。かつては貴族という立場に必ずつきまとって離れなかった束縛のようなものもほとんどない。余計な事を詮索しようとさえ考えなければ、これほど生きやすい社会もないだろう。
 だから、これでいいのだ。きっと。

 仕方がないので、友人の事でも記そうと思う。
 彼女とはモッタニアの街角で出会った。自分と同じくらいに鮮やかな赤毛の持ち主が互いに珍しかったという理由で意気投合したのだが、自分と同じ年頃の可憐な少女が『水精霊の虜』亭で働く高級娼婦だと聞いた時には、正直開いた口が塞がらなかった。
 もっとも、彼女がモッタニア皇王陛下の隠し胤であると聞かされた時にはさらに愕然としたのだが。そして、さらによくよく考えてみればその少女はかつてトリステイン魔法学院で学んでいた頃の親友と結婚した友人とちょうど兄妹関係に当たるわけで、それに気付いた時には世の中というのは狭いものだと笑ってしまったものだ。
 その時はちょうどゲルマニアが崩壊した頃で、政治的な空白状態にあったトリステインを占領するべく軍を率いてきた貴族の一人であった父に同行した私は、小さな荘園を占領する一部隊を預かったまま、その後の方針を決めかねて、そんな状況を打開するべく単身でモッタニアに赴いたところだった。
 そんな時、その少女の紹介でラ・ロシェール商会の戸を叩く事が出来たのは、正直幸運だったと言わざるを得ない。彼女は私の命の恩人だ。
 その彼女は、現在も相変わらず、『水精霊の虜』亭で一娼婦として働いており、互いの休日が一致した時にはモッタニアの商店街などで一緒に買い物したりもする仲だ。正直、情熱とか恋とかの話もしてみたいのだが……娼婦である彼女には残酷な話だろう。それくらいの自重は自分にもある。


 そんなこんなで、私もそれなりに平和で穏やかな日々を送っていると考えていいだろう。この平和がいつまで続くのだろうか。
 少し前にはエルフ領と戦争が起き、黄金の鎧を着けたエルフの先住魔法による薔薇の毒で相当な被害が出たらしいが、現在はエルフ領もモッタニアに恭順を誓っており、戦争の火種になりそうな勢力もほとんど存在せず、専門家によると少なくとも今後数十年はこの平和が続くと言われている。
 その数十年が一体いかなる存在に支えられているのかなど想像したくもないが、しかし、たった一つだけ断言できる事がある。


 ────少なくとも、今のハルケギニアは平和であるということだ。




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後書き的なもの
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 キュルケ総括。
 別に娼館で働いているわけじゃありませんでした。別に娼館にいても違和感ない気もするけど、エレ姐と同じく管理職ポジション。所持スキルが似たり寄ったりだから。
 そしてさりげなくエルフ領にいる黄金聖闘士。転生者です。





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おまけ的なもの:完結時のメインキャスト覚書
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フェルナン・ド・モット
 属性:Neutral-Dark

 主人公。
 心のヒーローは武装錬金のパピヨン。好きなものはタバサ。嫌いなものはギーシュと他人。酒が苦手なので水を飲んでいる。趣味は秘薬研究、あと能力蒐集と戦力増強。
 タバサとの狂気じみた大恋愛の末、修羅道エンドに突入し、本作中では掛け値なしの最強の座に到達する。
 当初はやや異常っぽくはあるもののメンタル面における不安が大きかったが、二度の覚醒を経て、最終的には実力的にも精神的にも怪物の領域に飛び込んできた。
 社会不適合者というよりはもはや“負”適合者。最終的な能力の巨大さと相まって、存在するだけでも世界に悪影響を振り撒く危険人物とジョゼフには断定された……割に、ハルケギニア自体は比較的無事にまとまった。とはいえ、エヴァンゲリオンや戯言シリーズの世界のように悲惨な結末に終わった世界も多数存在しているため、結局ジョゼフ王の見立ては決して間違っていないものと思われる。
 色々な意味で水魔法使い。能力の初期コンセプトは『原作そのままの能力を組み合わせて、いかにして原作とは別の使い方をするか』。他者から貰った能力をどうすれば自分自身のものと言うことができるか、という問題の答えとして考えたもの。
 今思い返してみれば、意外なほどに正義サイドの武装が多かったような気がする。『水神クタアト』にしたところで、デモンベインではともかくとして、ブライアン・ラムレイ作の元祖魔導探偵タイタス・クロウの魔道書でもあるわけで。


タバサ
 属性:Neutral-Neutral

 ヒロイン。
 無表情系合法ロリ。眼鏡。基本的に無表情だが、見る者が見ればちゃんと表情が変わっている。現状、表情を読み取れる数少ない相手はフェルナン、キュルケ、シャーリーなど。
 おばけは別に怖くない。好きなものはフェルナン。“タバサ”の方にはシャルロットとは違って魔道書以外の本を読んでいるシーンはあまりなく、フェルナンにべったりくっついている事が多い。嫌いなものはフェルナンの敵。味覚的にシャルロットと変化がないためハシバミ草は好き。現状趣味は特に存在しないが、強いて言うならフェルナンとイチャラブするのが趣味。
 シャルロット・エレーヌ・オルレアンから誕生した狂気と人格破壊の結晶。精神的自傷癖有り。フェルナンにとっては最愛の人であると同時に『最高のパートナー』。さらにはその力を十全に発揮するために不可欠な魔導書でもあり、特にフェルナンの切り札である鬼械神ディノニクティス・アートレータ・アエテルヌムの召喚には彼女の存在が不可欠である。
 フェルナンの二度の覚醒の双方に非常に大きく関わった存在であり、フェルナンとの相性は「混ぜるな危険」といった感じで限りなく厄介な化学反応を誘発する。男を強くするのがいい女の条件であるなら間違いなくいい女のカテゴリに入るが、その分フェルナンの危険度はエスカレートする。フェルナンとの関係は一見フェルナンに主導権があるように見えて、その実タバサがコントロールを握っているのに近い。
 人間を辞めて群体型魔導書となり、フェルナンの半身ともいえる最高のパートナーとして覚醒し、そのダダ甘っぷりは既に天元突破の領域に入っている。


ギーシュ・ド・グラモン
 属性:Chaos-Neutral

 ライバル。
 好きなものは和食。苦手なものは民主主義。嫌いなものは人の話を聞かない相手と固定観念にとらわれた相手。
 フェルナンには互いの相性の悪さから蛇蝎のように嫌われていた。フェルナンとの出会いを経て、タバサとはまた違った形で互いの狂気を加速させていく。フェルナンが漆黒の濁流だとするならギーシュは多分黄金の山津波とかそこらへん。崩れ落ちる的な意味で。
 フェルナンの対極として設定されたキャラクターであり、当初は心の底から主人公属性のキャラとして設定されていたのだが、作者がそんな怪物描き切れないという理由で早々に挫折し、扱いに困った挙句に今のような自動機械的狂人として再設定。なお、そんな変わり果てた姿で再設定されて以来、タバサや主人公、黒テファに並んで作者のお気に入りであったりもする。
 明文化された指針がないと生きていけないギーシュと、ただ死にたくないだけだったフェルナン。自信のあるギーシュと、自信の無いフェルナン。無限に成長していくギーシュと、能力を蒐集して強くなっていくフェルナン。徹底的に建前で動くギーシュと、徹底的に実利で動くフェルナン。世界が自分の味方に“見えて”いるギーシュと、世界を自分の敵と“見て”いるフェルナン。主人公になろうとしながらプレイヤーとして壁の向こうでしか生きられなかったギーシュと、どこまでも一人の登場人物として生きながらその心は常に壁の向こう側にいたフェルナン。相方であるルイズを主人公になるためのガジェットとしてしか見られなかったギーシュと、タバサを唯一無二のパートナーとして認めることができたフェルナン。その辺りの対比の結果がラストシーン。
 そんな彼が正義サイドの技で徹底的に叩き潰されたラストは、もはや皮肉でしかない。
 能力コンセプトは『原作そのままの能力を組み合わせて原作以上かつフェルナンと正反対』。


ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
 属性:Low-Neutral

 ギーシュの相方。
 彼女が原作主人公の片割れであったという立場を持っていた事が、潜在的な部分においてはギーシュの内での最初の暴走の切っ掛けになった。
 ギーシュと彼女との人間関係は、フェルナン&タバサとはある意味同質であり限りなく対極。共に「求め求められる」関係ではあるものの、その在り方はどうしようもなく対照的。
 ギーシュがいないと生きていけないルイズと、フェルナンさえいれば後はどうでもいいタバサ。ある意味似たような境遇でありながらも、「求め求められる」という言葉のニュアンスがどうしようもなく違ってしまっている。
 ちなみに、早い段階でのギーシュ抹殺に成功するとルイズルートに突入していたなどとは口が裂けても言えない話。
 好きなものはお兄様とクックベリーパイとちい姉さま。苦手なものはお姉さま。嫌いなものは悪徳貴族。


シャルロット・エレーヌ・オルレアン
 属性:Neutral-Light

 薄幸娘。
 合法ロリ眼鏡っ娘。ハシバミ草と読書が大好きで、設定もほぼ原作通り。
 ジョゼフ王を倒し母を助け出すべく転生者であるフェルナンに助けを求めるが、色々あってフェルナンに洗脳され、フェルナンと関わる中で色々と追い詰められて人格崩壊の末、タバサにバトンタッチする。


アリサ
 属性:Low-Dark

 転生者。アルビオンの姫。薄幸娘。
 うっかり道を誤ったがためにギーシュと共に転落人生を堪能する羽目に。その末路は命を削ってロードビヤーキーを召喚した上に、邪神ハスターの依代となる悲惨な最期を遂げた。
 しかし出番というか活躍は多かった。
 ある意味もう一人のシャルロットというべき存在。ルイズがタバサの対極なら、アリサはシャルロットの対極。フェルナンのことを思いやって一度はフェルナンと別れようとしたシャルロットと、最期までギーシュの事を徹底的に利用しようとしたアリサ。フェルナンにその存在を求められたシャルロットと、最後にはギーシュに見捨てられるように置き去りにされたアリサ。多少なりともフェルナンに対して絆らしきものを抱いていたタバサと、ギーシュを単なる道具としてしか見られなかったアリサ。


ジョゼフ一世
 属性:Low-Dark

 ラスボス的立場の存在。
 最強国家ガリアの支配者でありミョズニトニルンを従える虚無属性使いであり世界最高クラスの頭脳を誇る天才的な策謀家であるという、原作においてなぜ途中退場したのか分からないほどの廃スペックに加え、さらに複数の転生者を配下として抱えており、加えてデモンベイン系魔導書の大量所持+使いこなせるという、無理ゲー級の実力者であった。
 原作とは違い、使い魔であるシェフィールドとは硬い絆で結ばれたバカップルであったのだが、ついぞ描写する機会は存在しなかった。


ティファニア(黒)
 属性:Low-Dark

 中ボス的立場の人。フェルナン、タバサ、ギーシュ、アリサに並ぶ作者のお気に入り。
 たぶんギャルゲ的ルート分岐次第ではヒロインと成り得た可能性も存在する相手。おそらく、クトゥルー召喚より先に好感度上げまくりフラグを立てておくと黒テファルートに入ることができた。
 フェルナンの洗脳攻撃に耐え切った稀有な存在。だが結局術式は巻き上げられた。
 物語序盤で量産されたティファニアが裏社会の荒波に揉まれまくった挙句どういう訳か暗黒進化を遂げたダークサイドの女王様。シェフィールドと並んでジョゼフ王の懐刀として活躍していた。


リーラ
 属性:Low-Neutral

 メイド一号。
 フェルナンの最初の味方。
 舞台が学院に移動したことによる最大の犠牲者だが、フェルナンの手駒にしては珍しく何気にほとんど人体改造を受けていない。生身のまま。そういう意味では割と稀少な存在かもしれない。
 奴隷市場イベントでパーティに加入する、異世界トリップものとしては非常にオーソドックスなメイドユニットであるが、フェルナンは容赦なく洗脳した。
 フェルナンに呼び掛ける時に、リーラとシャーリーは基本的に「ご主人さま」と呼ぶが、タバサがフェルナンの事を表現する際には「御主人様」と表記されることが多かった。


シャーリー
 属性:Chaos-Neutral

 メイド二号。フェネット村のシャーリー。
 思い出の人。
 リーラと同じく、舞台が学院に移動したことによる犠牲者。獣人型ホムンクルスであるため、先住魔法と武装錬金が使える。武装錬金は人間型ではなくとも、道具を使用する知的生物なら大体使える。つまりオーク型やミノタウロス型でも武装錬金が使える。
 キメラ型ホムンクルスの技術が完成していない最初期の頃のホムンクルスであるため、人間型素体を組み込んで本人の人格を残すことができず、そのため、ホムンクルス化前の人格は残されていない。
 まだ人間だった頃に「フェルナンを必ず笑顔にする」という約束を結ぶが、その約束が果たされる前に自殺し、完全に死亡する寸前でフェルナンが彼女をホムンクルスとして蘇生させた。フェルナンの治癒能力はきわめて高いが、当時のフェルナンは能力を未だ完全に把握しきっておらず、治癒魔法や治癒宝具を使えなかった。
 メイドさんとしてもハルケギニア基準としても戦闘能力は規格外に高いが、無数のチート転生者が跳梁跋扈するハルケギニアにおいては力不足の感が否めない。


モット伯
 属性:Neutral-Dark

 フェルナンの父親。
 モット伯領の領主にして、今作では後の神聖モッタニア共和帝国初代皇帝。その人生を全うした後は帝位を予定調和でフェルナンに譲ることになっている。
 悪人だが、息子に対しては意外といい親父だったりするのかもしれない。原作においても、刃物背負っていきなり屋敷に乱入して、大枚叩いて身請けした美人メイドさんを返せと叫ぶ不審者相手に、稀行本(ただしエロ本)一冊と引き換えに要請に応じるなどした懐の深さを見せる。ルイズの使い魔とかその辺の身分保障が胡散臭かったことも考えて、身分の違い的に斬り捨て御免でも不自然ではない状況でこれは案外大したものではないかと思う。
 原作においては素でメイドさんハーレムを建設している圧倒的なリア充だが、二次創作ではハーレムごと粉砕されたりする噛ませ犬的な側面が強かったりする。今作においてはメイド拉致イベント何それ?みたいな感じで話が進んだ。というかシエスタが学院にいなかった。
 ちなみのそのシエスタはグラモン家でメイドさんをやっていたらサクヤに洗脳された。南無。


キュルケ
 属性:Neutral-Light

 タバサの親友。フェルナンとも比較的良好な友人関係を築いていた。フェルナンの交友関係が主にビジネスライクな秘薬商売によって構築されていた事を考えると、ある意味稀有な存在なのかもしれない。
 タバサ・シャルロットに対しては面倒見のいい姉貴分。
 原作と違い、ルイズとの関わりはほとんど存在しない。ルイズの精神が割とヤバい方面にイッてしまっていたため、下手に突っつくと洒落にならなさそうなため。
 情熱。フェルナン曰く『千人斬り』。主に性的な意味で。ちなみにフェルナンは対象外。元々はネガティブ過ぎだったし、覚醒後はタバサ一本(に見えていた)のため、キュルケの好みとは掛け離れ過ぎていた。
 今作では傍観者のような立ち位置にあり、一連の事件の中核のような存在の傍にいたにもかかわらず、ほとんど事件に関わることはなかった。感想で非処女であることが転生者達に疎まれたためであるという説が出た時には思わず納得してしまった。
 

サクヤ
 属性:Neutral-Neutral

 メイド三号。
 元はギーシュのメイドだが、洗脳されて寝返り、地下工作員として大活躍する。
 風メイジ。
 ちなみに名前がどうも日本人臭いのは、メイドキャラにはメイドの名前を付けることにしていたところ、咄嗟に洋風メイドの名前が浮かんでこなかったためであり、転生者は一切関係ない。


ティファニア
 属性:Neutral-Light

 原作キャラ。
 ギーシュと交流を持った所を拉致された。
 量産された上に魔術装置、将軍様ハーレム状態、各国への配布、挙句の果てには構成粉砕のカートリッジ扱いという恐ろしい便利アイテム扱いにされていた。というかティファニア便利過ぎ。



 属性:Neutral-Neutral

 オリキャラ。割と登場回数が多かった癖に名前がない。名前がない割にその存在は実は早期から構想に存在した隠しヒロインのごとき存在。場合によっては彼女もまたヒロインになり得たかもしれない存在だが、やはり名前は決まっていない。
 フェルナンとは母親の違う妹であり、モット伯と『水精霊の虜』亭の娼婦との間で生まれた子供。『水精霊の虜』亭で高級娼婦として働いている。
 フェルナンとの関係は比較的良好。
 血の繋がりも半分はあるのだが、フェルナンとは平然と肉体関係を持っている。ちなみに何気にフェルナンの筆卸しの相手であるという裏設定は描写するチャンスがなかった。


エレオノール
 属性:Low-Light

 原作キャラ。
 ルイズの姉。“原作の”ルイズを濃縮還元したような性格の持ち主。ツンデレだが割といいお姉ちゃん。でもキツイ。
 番外編で割とマトモな初登場をするものの、後のカトレア編で悲惨な事態に陥っている事が発覚。授業料の値段設定は少しばかり高過ぎたらしい。


カトレア
 属性:Neutral-Light

 原作キャラ。
 ルイズの姉。優しいお姉さん。病弱。
 人の本質を見抜くという特異な才能を持つが、姉妹を救うためには何の役にも立たなかった。ストーリー終盤にフェルナン陣営に加入した。


メルセデス
 属性:Low-Light

 オリキャラ。
 登場時はフェルナンの婚約者として登場したが、ギーシュの手回しにより即婚約解消となった。
 フェルナンを打ちのめす精神的な障害として初登場し、フェルナンの一度目の覚醒の引鉄の一つとなり、最期には同時に覚醒したタバサに邪魔者その一として殺害される。ある意味割と重要な立ち位置にいた一般人。


ワルド
 属性:Chaos-Neutral

 原作キャラ。
 原作屈指の戦闘能力を持つ強キャラであるが、今作でも割と強さを発揮していた。
 今作では登場回ではさりげなくいいところをかっさらっていった。


ペルスラン
 属性:Chaos-Dark

 一応原作キャラ。
 元執事。
 番外編で割とクールというかヒートなところを見せるが、再登場時には悲惨な姿になっていた。
 過去の色々を取り戻すべくタバサに迫るが、覚醒二段階目のフェルナンにあえなく叩き潰される。ワルドと同じガリアンチクロスだが、扱いは明らかにワルドよりも下だった。


ガラヴェンタ
 属性:Low-Dark

 転生者。吸血鬼天国ロマリアの支配者。
 前世の経験とか色々から、絶対の支配による戦争の根絶という物騒な妄執に囚われた。その辺のテンションには多分吸血鬼化によって最高にハイって奴になっている分も入っている。
 彼が虚無魔法『世界扉』でBETAを召喚するという暴挙に出たのがゲルマニア崩壊の直接の原因。


オリオール
 属性:Low-Light

 転生者。
 属性はメガテン的な意味での解釈で。
 フェルナンの一回目の覚醒の間接的な引鉄となった人物。
 この世界がギーシュを主人公にした物語の世界であり、あらゆる転生者はギーシュを主人公たらしめる為に生きるべきだという訳の分からない行動原理で動いていた。


ヴィルジール
 属性:Low-Neutral

 転生者。ガリアだが所属勢力はオルレアン公派。
 かなり間抜け。
 同じ転生者ではなく、一応は原作キャラであるシャルロットに殺害されるという今考えてみれば転生者として珍しい最期を遂げた……などと思っていたら、そこで死んだのは彼の護衛だったオチ。作者にすら存在を忘れられた護衛の少年、哀れ。

 コードギアス見てると絶対遵守のギアスは最強に見えるけど、それはあくまでも使用者のスペックが高いからであって、絶対遵守のギアスの強制力は精神系の能力の中ではかなり高そうに見えるので、立ち回り次第ではかなりいいところにまでいけたかもしれないが、制限やら何やらが多過ぎるギアスを半端な転生者が扱えるわけはなかった。
 もしもの話、オリジナルのルル山がこのハルケギニアに出現していたとしたら、フェルナンも相当に苦戦していたかもしれない。


マリコルヌ
 属性:Chaos-Neutral

 転生者。ギーシュと同じく原作キャラ憑依タイプ。
 転生者でありながら行動・言動が原作とほとんど違和感ないという恐るべきステルス性能を誇る……が、他に特筆するところがなかった。というか知能が低過ぎて暴走して自滅。とりあえず彼から巻き上げられたカオシックルーンのカードはフェルナンにこれでもかというくらいに有効活用された。


広瀬康一……ではなく雄一
 属性:Neutral-Dark

 転生者。転生後の名前は不明。
 ガリア北花壇騎士団に所属していた転生者の一人であり、アンドロマリウス・ブラスレイターの能力を保有していた。
 フェルナンと最初に戦った転生者であり、ゲート・オブ・バビロンの宝具ガトリングの前に容赦なく撃沈される。実際一話限りのゲストキャラであったが、その遺産はフェルナンに最大限に使い倒された。

 実は作者にすら前世ネームを勘違いされていたりなんかして。


エマ
 属性:Neutral-Neutral

 一般人。別に大した役割はなかったが、一応名前が出てきた。
 モット伯家のメイド長であり、モット伯の愛人の一人でもある。魔法は別に使えない。
 外見的にも能力的にも名前の元ネタの人の劣化コピーだが、死体実験にあからさまに顔を歪めてしまう程度の良心はあるらしい。


イザベラ
 属性:不明

 転生者。ギーシュと同じく原作キャラ憑依タイプ。
 一行の台詞もなく、ただ指輪ゾンビとして使役されるだけで終わってしまったが、ガリア関連では何気に重要な役割を果たしている。
 転生者としての能力としてデモンベイン系の魔導書1セットを選択するが、そこに記載された宇宙的知識に耐え切れず、魔導書を残して発狂死した末、魔導書はジョゼフの手に渡り、挙句その死体は指輪ゾンビとして蘇生させられ、リベル・レギス=アルビオンのエンジンパーツ『Cの巫女』として扱き使われる。
 フェルナン・タバサを除くと自爆以外の方法で死亡した数少ない、というか唯一のガリアンチクロス。







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