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No.13866の一覧
[0] 濁流のフェルナン   【ゼロ魔二次・習作・実験作・R-15】【更新再開】[ゴンザブロウ](2010/10/08 11:36)
[1] 濁流のフェルナン0 転生直前[ゴンザブロウ](2009/11/11 21:48)
[2] 濁流のフェルナン01 奴隷市場[ゴンザブロウ](2009/11/11 21:54)
[3] 濁流のフェルナン02 約束[ゴンザブロウ](2009/11/11 22:00)
[4] 濁流のフェルナン03 舞踏会[ゴンザブロウ](2009/11/11 22:42)
[5] 濁流のフェルナン04 長々と考察[ゴンザブロウ](2009/11/12 21:59)
[6] 濁流のフェルナン05 王道に対する邪道の在り方[ゴンザブロウ](2009/11/12 22:04)
[7] 濁流のフェルナン06 悪夢の後に見る悪夢[ゴンザブロウ](2010/02/19 16:37)
[8] 濁流のフェルナン07 決闘と狂乱[ゴンザブロウ](2010/02/19 16:43)
[9] 07終了時における設定など覚書[ゴンザブロウ](2010/03/17 22:25)
[10] 濁流のフェルナン ルートA08 血塗れの天空【仮掲載・前回と同じ】[ゴンザブロウ](2010/02/23 13:03)
[11] 濁流のフェルナン ルートA09 激突【仮掲載・前回と同じ】[ゴンザブロウ](2010/02/23 14:55)
[12] 濁流のフェルナン ルートA10 新生[ゴンザブロウ](2010/02/26 12:18)
[13] 濁流のフェルナン ルートB08 ミッション・インヴィジブル【仮掲載】[ゴンザブロウ](2010/02/26 19:07)
[14] 濁流のフェルナン ルートB09 牛鬼とホムンクルスの人間性[ゴンザブロウ](2010/02/26 16:22)
[15] 濁流のフェルナン ルートB10 フェルナンの冒険[ゴンザブロウ](2010/02/28 16:58)
[16] 濁流のフェルナン ルートB11 冒険で彼は何を得たか[ゴンザブロウ](2010/03/03 20:37)
[17] 濁流のフェルナン ルートB12 一つの再会、一つの世界の終焉[ゴンザブロウ](2010/03/09 00:27)
[18] 濁流のフェルナン ルートB13 虚無の敵意と水の再会[ゴンザブロウ](2010/03/16 11:20)
[19] 濁流のフェルナン ルートB14 同盟者[ゴンザブロウ](2010/03/16 11:24)
[20] 濁流のフェルナン ルートB15 崩れる同盟[ゴンザブロウ](2010/03/21 10:07)
[21] 濁流のフェルナン ルートB16 人形と人間の狭間で[ゴンザブロウ](2010/10/08 11:34)
[22] 濁流のフェルナン ルートB17 狂王の布石[ゴンザブロウ](2010/10/11 20:45)
[23] 濁流のフェルナン ルートB18 不吉の予兆 【番外編追加】[ゴンザブロウ](2010/10/15 23:47)
[24] 濁流のフェルナン ルートB19 我が名はレギオン、大勢なるが故に[ゴンザブロウ](2011/07/09 02:00)
[25] 濁流のフェルナン ルートB20 瘴気のアルビオン[ゴンザブロウ](2010/11/09 14:28)
[26] 濁流のフェルナン ルートB21 惨劇の後始末[ゴンザブロウ](2010/11/10 13:22)
[27] 濁流のフェルナン ルートB22 ヒトという名のアイデンティティ[ゴンザブロウ](2010/11/20 14:26)
[28] 濁流のフェルナン ルートB23 この冒瀆された世界の中で[ゴンザブロウ](2010/12/01 23:54)
[29] 濁流のフェルナン ルートB24 世界が壊れていく音が聞こえる[ゴンザブロウ](2010/12/18 17:14)
[30] 濁流のフェルナン ルートB25 ロクデナシのライオンハート[ゴンザブロウ](2011/03/27 23:19)
[31] 濁流のフェルナン ルートB26 OVER/Accel→Boost→Clock→Drive→Evolution→[ゴンザブロウ](2011/04/13 13:25)
[32] 濁流のフェルナン ルートB27 決戦前夜 【加筆修正】[ゴンザブロウ](2011/07/09 02:12)
[33] 濁流のフェルナン ルートB28 おわりのはじまり、はじまりのおわり[ゴンザブロウ](2011/07/14 01:31)
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[13866] 濁流のフェルナン ルートB17 狂王の布石
Name: ゴンザブロウ◆cebfabc8 ID:6764df4f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/10/11 20:45
 帝政ゲルマニア。
 トリステインの東側にある大国。国家元首が始祖の血を引いていないため成り上がりとされ、国際社会では一段低く見下されているものの、ガリアと並んでハルケギニア最大級の国力を誇る超大国。
 正確な地図さえ作れば国土面積的な意味でも、トリステインがゲルマニアを見下すという行為がどれだけ無謀かつ馬鹿げたことなのか、猿にでもあっさり理解できるはずだ。というか、トリステインは外交感覚が某北の国並な連中が多過ぎる。
 国土の広さはそれだけで国力に繋がる。文明が発達しておらず、加工貿易のように国土面積に依存しない生産手段が存在しないハルケギニアなら尚のこと。ついでに言うならゲルマニアは経済大国でもあり、その資金力は伝統しか取り柄のないトリステインなぞでは逆立ちしたって勝てる相手ではないのだ。

 しかし、このゲルマニアの政治体制、というか身分制度はきわめて特徴的であり、皇帝が海千山千の地方貴族どもに対抗するためとか何やらで、実力(金)さえあれば平民でも貴族になれる、という、転生オリ主誰得な制度が存在するのである。
 この制度、当然ゲルマニアの転生者どもが目をつけるのは当然ということで、ゲルマニアの貴族出身の転生者が援助を行い、取り巻きに平民出身の転生者たちを従えて一大勢力を形成している。それがゲルマニアの転生者組織である錬鉄竜騎士団。貴族の地位という餌を元手に、詳細不明のガリアを別としても、数において他国の転生者組織に大きく水を開けている組織である。
 僕たちの目の前にいる男も、その一人であった。



 濁流のフェルナン/第十七段



 そいつの名前はマテウス・クサヴァー・フォン・グデーリアン。フルネームだと長いし面倒なので「グデーリアン」でいいだろう。

 その男の外見的特長を一言で言い表すなら、アルビノ、で終わる。絵に描いたような白髪赤目。白髪に不健康そうな痩身と合わせて色というものが抜け落ちたかのような立ち姿の一点に、ペンキで塗り潰したかのような赤い点二つが、両目。

 それだけの、ただの薄っぺらい男だ。威圧感とかそういった要素は、たとえばジョゼフ王のような論外規格外どもを別としても、ワルド子爵とかコルベール先生とかそこら辺の真っ当な強者と比べても大したことはない。せいぜい、街のチンピラよりもやや上程度。
 だが、彼が持っている余裕じみた雰囲気と、人を見る目つきが与える奇妙な違和感が、どこか奇妙な不気味さを醸し出していた。
 その雰囲気一つ取ってみただけでも、彼が何者であるのかという結論を出すには十分過ぎる。力持てるものに特有の強者の余裕と、周囲を己のためのモブとしてしか見ない転生者特有の風情を、どこか無意識の内に発散させている。それがもたらすのは、気配の中に含まれる奇妙な薄っぺらさであり、そこから感性に訴えかけてくる漠然とした違和感だ。

 大抵の転生者に共通のそれは、あのギーシュやアリサ・テューダーすら完全には逃れられていない致命的なものだ。あの二人に関してこの違和感は、その人間に対して注目を惹き付け、性格や行動のプラス要素を強く印象付けるものになっていたが、グデーリアンのそれは正反対だ。脅威や残酷さといった負の要素をいたずらに撒き散らし、周囲の人間を刺激する。

 正直言って、度胸があるなどという自信は欠片も持っていない僕としては、そんな危ないヤツには近寄るどころか視界に入れたくもないのだが、これが任務なのだ。仕方ない。

「よォ、初めましてだなァ」

 意味もなくニヤリと笑いかけながら、グデーリアンは爬虫類系の視線でこちらを一瞥し、意味深な目つきで僕の横に立つタバサをじろじろと眺めた。タバサは相変わらず雪風な無表情だが、何となく不愉快そうに見える。
 あまり愉快ではないので、手短に要件だけを済ませよう。気分はRPGのNPCだ。どうせ相手も、こっちをそんなものとしか認識していなさそうだ。

「それで、用件……こちらに亡命したいということでしたが」
「あァ。ゲルマニアは騎士団長どもが威張っていやがるからなァ。正直鬱陶しいんだよ」

 最強の俺にどうたらこうたら、とか呟きながら、そいつは体重を投げ出すようにして椅子に深く腰掛けた。まあ、グデーリアンの能力については調べがついているので、本当の本当にこいつが最強だとは思わないが。

「ふむ、それでは、まずこちらの書面を御覧ください。さほどややこしい話でもありませんし、一回目を通したら機密保持も兼ねて焼却させていただきます」
「こいつァ……」

 そいつに懐から取り出した書類を渡す。僕が渡した書面を確認したそいつは、思わず顔を引き攣らせた。それはそうだろう。それだけ物騒な任務なのだ。

「この作戦は、貴方が信頼できるか確かめる、という意味もありますし、貴方にどこまでのことができるのか、というテストの意味も存在します。我々北花壇騎士団は純粋に実力主義ですから」

 だから僕とタバサは援護しない。
 そう言ってやると、相手はいかにも自信ありげに鼻を鳴らした。それだけ、自分の能力に自信があるということなのだろう。

「まァいいさ。さっさと終わらせて、跡形残さず片ァ付けてやンよ。要は、俺の最強を証明すればいいってだけのコトだろォがよ」

 ニヤリ、と嫌らしい笑みを浮かべて、グデーリアンは宣言した。


 そいつが出ていくと、僕は深々と溜息をついて椅子に座り込んだ。何だか最近、溜息をつくのが癖になりつつあるような気がする。

「よりによってあんなのを使わにゃならんとは……」

 使い捨ての手駒にするにせよ、もう少し扱いやすいヤツが良かった。まあ、こんな単純な裏も見通せない相手であれば十分扱いやすいと言ってもいいのかもしれないが、それはあくまでジョゼフ基準だ。
 僕が言うなと突っ込まれるかもしれないが、あんな厨二病患者と付き合っていたら、ストレスが溜まって仕方がない。

「大丈夫。たった三日の辛抱」
 タバサが慰めてくれるのが唯一の癒しである。それに、その三日間にしたって、どうせロクに顔を合わせることもないのだ。
 とはいえ、ジョゼフ王に任された、というか有無を言わさず押し付けられたこの仕事は、正直言ってかなりの重大事である。正直、面倒なことこの上ない。まあ、僕達のやることは単純極まりないんだが。



 トリステイン魔法学院の生徒にとって、学院から最も近い都会である王都トリスタニアは、僕やタバサのような図書館利用常習者、もしくはキュルケやギーシュのように異性に不自由しない連中を除けば、唯一の娯楽の場であるといっても過言ではない。一般的な学生が修道士の如く学院に閉じ篭っているのは、それはそれで結構きついものがある。

 トリスタニアはギーシュによって内政チートの影響によって、何十年か前と比べると信じられないほど賑やかになった……らしいと父が以前言っていた。
 貿易も活発になっているのか、たとえばビエモンの秘薬屋の品揃えなんかにも、トリステインでは普通まず手に入らない東方の産物が混ざっていたりする。

 もっとも、ここ最近はアルビオンの戦争の影響がじわじわと伝わってきているのか、いまいち活気がないようで、街を歩いている人々の顔つきにもやや暗いものが混じっているのが見受けられる。

 だが、僕にはあまり関係ない。
 たとえアルビオンが滅ぼうともギーシュざまぁとか言っておけば済むことであるし、別に大した問題にはならない。
 何より、そもそも今回ここに来た目的は、暗い顔をするためじゃない。
 人口の密集した都市の臭いは工業技術があまり発展していないこのハルケギニアにおいてもあまり心地の良いものではないが、数年前にギーシュの手によって行われた下水道開発のせいもあって、実質あまり気になるものではない。
 石畳で舗装された路面を歩きながら、噴水の設置された広場に辿り着く。


 そこには妖精がいた。


 喧騒が無音に取って代わり、味気ない無色の景色の中で彼女の立つそこだけが鮮烈に輝いている。
 柔らかな蒼の髪、澄んだ湖水の瞳、透き通った雪白の肌、それだけで他のものなど全て何も目に入らなくなる。

「フェルナン?」

 気がつくと、タバサはいつの間にか僕の目の前に立っていた。

「……あ、ああ。タバサ、待ったか?」
「少し」
「そうか。……その、ごめん」
「ん……」

 二人で手を繋いで歩く。
 そういえば、今日のタバサはどことなく雰囲気が違う気がする。いや、タバサの体内に仕込んだ水精霊の一部などから、別に偽者とかそういうオチではないことは分かっているのだが、別にそういう話ではなく、つまり、まあ、そういうことだ。
 タバサが着ているのはいつも通り飾り気のない制服であり、特に何というわけでもないので、その原因は別のところにあるのは間違いない。

「タバサ、もしかして化粧とか……してる?」
「ええ。キュルケに手伝ってもらった」

 タバサに気取られないように視線だけ、隣を歩く少女に向ける。相変わらずの無表情だが、頬がわずかに緩んでいるので機嫌もいいのだろう。
 ナイスである。キュルケには感謝しておかねばなるまい。

 先ほどの偽一方通行との会話で非常に神経を擦り減らしたので、息抜きがてら、二人で出歩くことにしたのだ。
 でもって、一旦空間転移まで使って学院に戻って気分を切り替えてから、またここに来た。
「そうだな。色気はあまりないけれど、書店巡りでもしようか?」
「ええ」

 実際問題、僕はここ数年、書店を訪れたことはない。
 確かにギーシュの影響で、トリステインにもラノベ的な作品が売られるようになった。だが、それよりももっと大きな問題が存在する。
 ギーシュである。
 ギーシュの書くラノベもどきというのは要するに前世のサブカルの完全なるパクリである。その原作は当然、前世における現代日本の水準であり、当たり前の話だが、文明が進んでおらず、当然ながら娯楽文化もさほど発達していないハルケギニアの詩人なんぞが逆立ちしたって勝てる相手ではないのだ。
 そんなこんなで、ギーシュが書いた作品というのは、彼が作家(笑)としての活動を休止している今でも、結構根強い人気を誇っている。

 それの何がいけないか、と言うとだ。

 トリステインのラノベコーナーの中心には、ギーシュ専用コーナーが存在するのだ。もう本当、目障りで仕方ない。
 そんなわけで、こう店員の目を盗んでギーシュの肖像画の掛けられた壁の部分をガスガスと軽く蹴り飛ばしてから、本棚を物色する。
 正直、地球に行った方がよほどに品揃えがいいラインナップだ。ついでに言うなら筆力的にも印刷技術的にも、日本で出版されているラノベの方が上なのは言うまでもない。まあ所詮は猿真似だからな。

「で、タバサはどんなのが欲しいんだ?」
「……私は別に」

 真っ赤になって目をそらすのがかわいい。ついついその場で抱き締めたくもなるが、自重。ここは書店のど真ん中だ。店員や他の客の目だってある。

「いつも本読んでいるし、好きな本くらいあるだろ」

 言いながら本棚に並んでいる背表紙に視線を滑らせながら、タバサと連れ立って店内を歩き回る。
 たまに興味を惹かれる題名の本があれば、背表紙の上に指先を引っ掛けて本を引っ張り出し、ぱらぱらとめくっては本棚に戻す。
 そんな様子をタバサが、妙に熱のこもった目つきでじっと見つめているのが気になって、気が散ってしょうがない。そういえば、彼女はさっきから全然本棚を見ていない。

「どうかしたか?」
「何でもない。気にしないで」
「や、でも気になるし」

 否定するタバサだが、気になるものは気になるのだ。というか、耳元まで真っ赤になっているタバサが妙にかわいいのでよけいに気になる。
 埒が明かないのでこっちもじっと見つめてみることにする。何となく小動物を愛でている気分だ、とか考えて、途端に夜のタバサの乱れた姿を思い出して、思わず気恥ずかしくなって僕はその思考を追い出した。
 やがて、根負けしたタバサが真っ赤になって俯くようにして言った。


「…………貴方の好みを把握したい。その、大事な人……だから」


 あー、何というかね。
 心臓に直撃というか、まあそんな感じだ。抑えが千切れる感覚。タバサの手を引いて早足で書店を抜け出し、適当な場所に隠れてから全力で空間転移して自室に戻り、引っ張ってきたタバサを目一杯抱き締めた。
 何というかね。もうね。

 その日は結局、ひたすら彼女に溺れて過ごした。



 そんなことがあった翌日。
 僕はギーシュに呼び出されて校舎裏にやってきていた。
 校舎裏における呼び出しのテンプレは二つ。リンチと愛の告白だ。ギーシュのチートの正体も分からず、また学校に他の転生者がゴロゴロいる中で前者と来られては厄介だが、後者も本気でお断りしたい。まあ、後者の可能性はまず有り得ないだろうが。

「……何の用だ?」

 顔をしかめながら言う。こいつに関しては、表情を取り繕う必要がないという意味で楽だ。楽な要素はそれだけで、それ以外は完全無欠に不愉快なのだが。

「……アリサの事なんだ」

 ギーシュは真剣な表情でじっとこちらの目を見据えて答える。どうやら、既に名前呼び捨てで呼ぶほどにフラグが立っているらしい。これだからハーレム系は、とむかつきを隠しもせずに睨み返す。

「却下。現状、アルビオンに手を貸して得る利益はない」

 むしろ損害ばかりが大きい。アルビオンとトリステインは弱過ぎる。

「利益だけじゃ人はついてこない」
「馬鹿馬鹿しい。この間も似たようなことを言ったな、おまえ」
「……アリサは、さ。一人なんだ」

 僕の言葉を完全に無視して、ギーシュは勝手に語りを始めた。

「アルビオンの転生者組織だったのが、アルビオン近衛騎士団。アリサがその団長で、仲間の転生者二人がその下で部隊をまとめていたんだ」
 三人で現代知識を出し合って、技術を開発し、産業を発展させ、アルビオンを繁栄に導いた。それがおそらく、アルビオンの全盛期。
 だが、既にギーシュの手によって連れ出されていたため、彼らがどれだけ原作知識を総動員して探してみてもティファニアは見つからず、さらに何者か(って実は僕なんだが)が横槍を入れてギーシュの手からティファニアを奪い去ってしまう。
 その後レコン・キスタが勃興した際にはよりにもよってティファニアがレコン・キスタの最高司令官として登場する。さらに彼女を背後で操っているのは、おそらくはガリアのジョゼフ王。いかに現代知識を持つとはいえ、真性の天才が相手では歯が立たなかった。
 さらに、仲間二人の能力は戦闘用でこそあるが継戦能力が低く、戦争には極端に弱かった。その上、死亡した二人の死体がアンドヴァリの指輪で蘇生され、再生機能によって継戦能力を克服した上で敵の手駒として復活してくるというオマケ付き。
 もはやアリサに勝ち目はなかったのだった。まあ、僕にとっては予想通りではあったのだが。

 にしても、アリサ・テューダーのチート能力は何なのかね。何だか歌っていたらしいが。戦場で。


「それでどうするつもりだ? まさか、そんな話を聞いただけで、僕が改心して心変わりするとでも?」


 僕は吐き捨てるように言い放ってから、深々と溜息を吐いた。
 情とその場のノリに乗せられて命を賭けるようなヤツは、ただのバカだ。扇動に乗せられて命を賭けるということは、逆に言うならば自分の命の賭けどころが分かっていないということでしかない。
 僕が命を賭ける価値を見出す目的は徹頭徹尾自分のためだけで、ギーシュの要請は全く僕の得にならない。

「というか、だ。その程度の顛末は、僕も知っているよ。調べたからな。おまえに教わるほどのことじゃない」

 否定されたギーシュは、顔を俯けて震えている。下を向いていて顔が見えないがために表情は分からないが、怒っているのか、泣いているのか、どうなのか。もし笑っているとしても、少なくとも楽しんでいる笑いではないだろう。
 なぜならば、ギーシュの喉から、絞り出すような声が漏れてくるから。

「お前は、何も思わなかったのか……?」
「何をだよ?」

 ギーシュの手が伸びて、僕の襟首を掴み取る。速い。気圧されたとかそういうのではなく、単純に速度の問題で追随できなかった。純然たる肉体のスペックでは、少なくともギーシュのそれは僕を凌駕しているようだ。

「アリサのことだ。アリサがどれだけ悩み、苦しんできたのか! アリサの仲間がどれだけ彼女を愛していたのか! それを知ってどうしておまえは、そんなに無関心でいられるんだ!?」

 ギーシュの怒りを表すように、締め上げられた襟首が気管を圧迫する。呼吸が遮断されたからといって活動に一切の支障はないが、かといってそれは不愉快でないということを意味しない。

 おそらく今、僕は自分を遥かに凌駕する相手を目の前にしている。
 鳩尾の辺りに重いものが溜まっているような、腹の辺りから冷えていくような、あるいは脳味噌の中にあった熱いものが一斉に抜けていくような、そんな感覚。
 恐怖と焦燥と怒りと嫌悪が渾然一体となって膨れ上がっていく感覚。

 この感覚は久しぶりだ。むしろ慣れ親しんだ感覚だ。前世の僕が、死ぬ前に、日常的に味わい続けていた感覚。世界の全ての人間が、あらゆる面において、自分よりも優れているという感覚。
 だから、冷静になるのは決して不可能なことではない。

 だからこそ、だが、と思う。
 馬鹿馬鹿しい。どうしてこいつは、こんな下らないことでこうも真剣になれるのか。答えなど決まっている。

「それは僕の感情じゃない。アリサ・テューダーを愛していたのも、アルビオンの近衛騎士団で戦っていたのも、僕じゃない。そいつらは単なる他人に過ぎない。僕には関係ない存在だ」
「お前はぁあああああああああ!!」

 ギーシュの拳が振り上げられるのを見て、少々まずいと判断する。少なくともあの拳であれば、僕の頭なぞ完熟トマトも同然、簡単に叩き潰してしまえるはずだ。
 再生も肉体交換も何度だって可能だが、そこはそれ、将来偽装死とかするためにも、秘密にしておきたい切り札だ。



 だが、結論から言えば、その拳が振り下ろされることはなかった。拳が振り上げられた刹那、魔法学院の建物の全てを貫いて、時ならぬ轟音が響き渡ったからだ。



 ちょうどいいタイミングではあるが、少々タイミングが良過ぎる。こういう時には、何か落とし穴がありそうな気がして不安になる。大体においてそれは杞憂に終わるのだが、今回ばかりはどうやらそうもいかなかったらしい。

「あの馬鹿は……」

 馬鹿が先走った。こちらに連絡の一つも寄越さずに、だ。
 確かに、ヤツに与えられた任務は、このトリステイン魔法学院を強襲してルイズの身柄を強奪すること。しかし、予定日は三日後だ。

「な、何だ!? 何が起きた!?」

 僕の襟首を掴んでいた手を離して慌てふためくギーシュを見て、大体予想できた反応だ、と判断する。某ランペルージさんじゃないが、基本的に転生者というのは、予想外の事態に弱いのだ。チートと原作知識で身を固めている転生者は、こちらから仕掛けることはあっても、仕掛けられること自体があまりないためである。
 などと冷静に考えているようでいて、実際僕自身も決して冷静ではないようだ。耳元で血管がどくどくと嫌な音を立てているし、呼吸も浅く速くなってきている。

「まあ仕方がない、か」

 走っていては間に合わない。適当なところに隠れてから、相似魔術の空間転移で移動する。目的地は教室だ。
 瓦礫を適当に積み上げたバリケードの物陰に隠れているキュルケとタバサを発見、走り寄る。

「何が起きた?」
「……見れば分かる」

 油断無く杖を構える二人の間から、そっと奥を覗いてみる。
 そこは戦場だった。

 炎で焼かれて火達磨になりながら転がり回る男子生徒。手足を失って血塗れになりながら、両親や恋人らしき名前を呼んで這いずる女子生徒。
 あるいは、ばらばらに寸断されて誰のものかも分からない肉片や、床に転がった巨大な岩塊の下から伸びて、うつろに痙攣を繰り返す手足。
 まさに死屍累々。幸い死者こそまだ出ていないようだが、それはあくまでも時間の問題。負傷者の大半は治療が遅れれば確実に命に関わるだろうし、少なくとも数人は確実に“そう”なる。
 本物の戦場もかくやと言うような惨憺たる地獄絵図だが、何より恐ろしいのは、これがたった一人の人間によって製造されたものであるということだ。
 その血と肉の散乱の向こうで、戦闘が行われている。



 そこに立っているのは、二人の人間だった。
 振るわれる力は明らかに単なる人の域を超えているにせよ、少なくとも肉体的には人間である、はずだ。
 争っている二人のうち片方は、ゲルマニアからの留学生であり、同時にゲルマニア錬鉄竜騎士団の副団長である白髪に褐色の肌の男エドガー・ブルクハルト・バルシュミーデ。
 そしてもう一人。白髪赤目の男。マテウス・クサヴァー・フォン・グデーリアン。ちょうど昨日、僕が交渉に当たった相手でもある。
 彼ら二人が、この戦いの当事者であった。



 世界を焼き切り炎が走り、円を描くようにして走った火焔が世界を刻み、空間を裏返し、展開。固有結界────無限の剣製。

 展開した固有結界は無差別に周囲の人間を取り込んだらしく、僕とタバサに加えてキュルケまでが巻き込まれている。厄介なこと極まりない。

 果てしなく広がるのは無数の剣の突き立つ荒野、再構成オリ主クロス主ひっくるめて、とにかくあらゆる二次小説で使い古された情景ではあるが、実際に目にするその光景はあくまでも荘厳にして壮大。固有結界が世界を心象風景で塗り潰す技法というなら、かくも壮大な世界を心に秘める英雄とは一体どれほどの精神を持つというのか。
 その心象風景はあくまでも英霊エミヤのものであって、転生者が使ってんのは二番煎じでしかないというのはお笑いであるが、だが、固有結界が生み出す破壊力、それは決して本物に劣るものではない。集中豪雨にも等しい勢いで降り注ぐ無数の剣弾、その一撃一撃が必殺の威力を秘めて炸裂し、その破壊力は流星雨に等しい。

 だが、敵はそれを迎撃する素振りさえも見せなかった。
「ハッハァ! 柔いぜェ正義の味方さんよォ!! 柔過ぎて卵も割れねェぜこんなんじゃあよォ」
 超能力────ベクトル制御。射程距離こそ短くともあらゆる“方向”を司るその力は、ことこういった攻撃には強い。
 だが、エドガーは撤退する素振りを見せない。ジョゼフ王の真の目的など僕には見当もつかないが、少なくともグデーリアンを放っておけばゲルマニアとトリステインの国際関係が徹底的に悪化することは分かっているのだろう。


 戦闘は激しい。
 この、多数の転生者とメイジが集まるこのトリステイン魔法学院を襲撃することが、亡命の条件としてグデーリアンに課せられた任務であった。
 襲撃の目的などは特に決められておらず、ほぼ僕の裁量に任せられており、とりあえずはルイズの誘拐(というか強奪)を設定した。それがなぜゲルマニアのエドガーと戦闘を続けているのかは分からないが、要するにゲルマニアの転生者がトリステイン魔法学院を襲撃した事実さえあればいい。
 だが、この任務を命じたジョゼフ王の何よりも恐ろしい点は、この任務がおそらく、あくまで「布石」でしかないということだ。その真の目的こそ僕には分からないが、おそらくはアルビオン攻略に関係していることだけは間違いない。
 チェスを好むその趣味とは対照的にその発想は、駒の能力を最大限活用する将棋というよりも、全ての駒を単色の白と黒に貶める囲碁のものに近い。どれだけ強大な力を振るえる転生者であっても、彼にとっては単純な敵か駒に過ぎないのだ。


「くくっ、鋼鉄の副団長とか言われているくせに、何だ脆いじゃねェか!!」
 笑いながらグデーリアンが一歩を踏み出せば、地面に走る衝撃がロケットブースターのように変換され、グデーリアンの肉体を一瞬で敵前へと運ぶ。

 グデーリアンの哄笑に答えずエドガーは呪文を唱え、空中に無数の剣を生み出して降り注がせるが、剣弾の群れはグデーリアンの突進に一本残さず弾き飛ばされていく。

「っ、らァっ!!」
 グデーリアンの肉体が地響きを上げて床面に着弾、その爆心地から同心円状に衝撃波が発生し、グデーリアンの着地点を円周状に包囲した剣弾が薙ぎ払われる。そのまま体を沈めてのグデーリアンは脚を薙ぎ払うように低姿勢の回し蹴りを繰り出すが、エドガーは足元に長剣を生み出し、それを足場に回避。


「にしても、どっちも分かりやすい能力だな……」

 エドガーが呪文を唱え、ダミーの杖を振るたびに、空中に無数の剣が出現し、雨あられと降り注ぐ。

「あれって……錬金よね。あれだけの剣を作るのは正直すごいと思うけど、わざわざ全部形を変える必要があるのかしら?」
 疑問ありげに呟くキュルケ。確かに、転生者の存在を知らなければ、この世界の住人にはあれが錬金に見えるのだろう。
 だが、違う。あれは別の技術。「投影」と呼ばれる魔術によって精製された宝具のレプリカだ。レプリカとはいえ宝具は宝具、圧倒的な神秘を誇る原型は、一ランクの力を減じた程度の弱体化では、まだまだその威力はハルケギニアの魔法程度は軽く上回る。
 まあ既に固有結界内部にいるので剣を出すのに投影の必要すらないとか、そんな設定があった気がするが。

 だが、全方位三百六十度から降り注ぐ宝具の飽和攻撃すらも、グデーリアンを傷つけるには至らない。絶対的に、相性が悪いのだ。
 なぜならばグデーリアンのその能力。あらゆるベクトルを捻じ曲げるその力、一方通行(アクセラレータ)と呼ばれるそれは、どうやらベクトルを伴った投射攻撃しかできないらしきエドガーには、決定的に打つ手が無いようだ。

「ええい、グデーリアン、お前にこの場を襲えと命令を出した覚えはない! 団長の命令か!?」
「ハッ、違ェよ! もうお前らの仲良しこよしにはウンザリなんだヨ馬ァ鹿。オレは、俺のやりたいようにやらせてもらう」

 グデーリアンに向かって降り注ぐ剣弾は、彼に触れることすらできずに跳ね返り、傷一つ付けられない。剣弾が反射してエドガーが宝具の串刺しにならないのは、エドガーが射出している宝具が全て自動追尾タイプであるからだ。射出される宝具はグデーリアンに跳ね返されるたびにグデーリアンを再照準し再射出される。
 だが、結局は同じことだ。また跳ね返されるだけ。


「何を飛ばしても跳ね返ってくるのよ。さっきも私の火球を跳ね返されたわ。あと少し逃げるのが遅れてたら、自分の魔法に黒焦げにされていたところだったわよ」
「……私の魔法も弾かれた。不意打ちも効かないらしい」
 水魔法で二人の傷を治す。キュルケはあちこちコゲているし、タバサも服が少し破れている。自分の魔法を跳ね返された痕だろう。
 二人とも、深刻な傷は見られない。せいぜい、キュルケの服が焦げて、ただでさえ男の目を引き付けるようにわざと調整された制服が、よけいに扇情的になってしまっている程度。
 もっとも、これは二人が異常なのだ。並みのメイジであれば、そこらに転がっている死体一歩手前どもと同様に、再起不能になっているところだ。
「圧倒的よね。杖も使っていないみたいだし、もしかしてエルフの先住魔法ってヤツなのかしら?」
「たぶん、違う。……もっと別の力」
 キュルケとタバサが言葉を交わす。この場ではタバサの推測が正しいが、キュルケは知るよしもないこととはいえ、彼女の言うとおり、確かに、グデーリアンの能力は原作知識にあるエルフの「反射」に近い。

 だが、グデーリアンの力である『一方通行』の「反射」は、エルフの「反射」とは決定的に異なっている。
 原作ゼロ魔で主人公が戦車砲を使用して行ったように、エルフの先住魔法は術者の想定を上回る力を叩き込めば貫通できる。しかし、一方通行はベクトルそのものに干渉する「方向転換」であるため、力押しでは決して打ち破れないのだ。
 だが。

「何となく、僕にもタイミングが掴めてきた」

 行ける、と判断。簡単だ。多少予定外の事態に陥ったりはしたものの、この場にあいつが現れた時点で、既に目的は果たされている。後はあの馬鹿が余計なことを口走らない内に、一気に片をつけるのみ。
 偽アーチャーが手元から華に似た盾を展開し、それが偽一方通行の一撃で砕け散り、余波で吹き飛ばされた偽アーチャーが地面に叩きつけられて気絶する、そのタイミング。
 両手に武器を展開する。右手にはゲイボルグ。左手には伸縮式の特殊警棒型の杖を縮めて握る。
 呼吸を整え。
 背後から。
 全身の力を込める事無く。
 全力の、大体五割の余力を残し。

 一気に踏み込む。

 刹那、残した力で槍を再加速した。



 鈍い音が響いた。



「…………どう……し……て……」

 どうして、無敵の一方通行が敗れたのか。
 それとも、どうして僕が裏切ったのか、ということか。

 後者は初めからそういう目的だったから、要するに、ゲルマニアの人間がルイズを誘拐しようとした事実が欲しかった、というだけであるのだが、答えてやる義理はない。だが、ひとまず前者の問いにだけは答えてやるとしよう。

「七夜、亀仙流、神鳴流、北斗真拳、飛天御剣流、流派東方不敗……僕たちの知っている物語の中には、常識どころか物理法則すら無視した能力を発揮するトンデモ拳法が腐るほど存在するわけだけれど────」
 それを実現するのが転生者というものだ。
 確かに武術系のチート能力は、戦闘以外に応用が利かないものがほとんどである割に、攻撃力も防御力も魔法や超能力といった他の系統に比べて低い。
 だが、だ。


「そんな連中の実力なら、木原真拳の再現だって簡単だと思わないか?」


 要するに、そういうことだ。相性の問題。

 一方通行(アクセラレータ)の能力の原典である『とある魔術の禁書目録』において、自分に降りかかるありとあらゆる攻撃をベクトル反転させる一方通行の能力は確かに超能力の最上位に位置づけられている。
 だが、しかしそれは最強であり無敵ではあっても、攻略不可能であることを意味しないのだ。アヴァロンとかハンプティ・ダンプティとか無敵系の能力は色々あるが、ここまで穴の多い能力も少ないだろう。

 たとえばあるものは生命維持のために必然的に受け入れているベクトルを算出してその抜け穴を攻撃し、またあるものはベクトル反転のタイミングを先読みし、直前に打撃の向き自体を自分から反転させることによって、それをベクトル反転の作用によって再反射させることによって攻撃した。

 僕が取った後者の手法こそ、原典において初めてそれを実現した技術者の名前を取って『木原真拳』と称される。
 一方通行は、武術系の転生者に対して致命的に弱いのだ。

「武功で人間をやめた存在、英霊の能力を持ってすれば、事実簡単だ」

 特に無窮の武練スキルを持つランスロットの力があれば、とは言わない。現在能力隠しのために、ランサーの振りをしているからだ。
 ベクトル反射のタイミングは、既に似非弓兵のエドガーがさんざん見せてくれた。後はネタさえ割れていれば、さして難しい話でもなかった。



 偽一方通行の喉笛に突き立ったゲイボルグを引き抜くと、噴水のように血が噴き出した。まるで人形のよう。チート無敵モードであんなに猛威を振るっていた最強無敵の超能力者も、こうしてみると出来の悪いマネキンだ。実に滑稽。
 キモいので一歩横に引いてから水魔法で噴水の軌道を逸らしておく。

 軽く槍を振るって血を振り払うと、固有結界もいつの間にか解除されたらしく、飛び散った血液が窓に一文字の赤線を引く。平和な教室が一瞬にして惨劇の舞台に! いや、なんというか、日常ってのは脆いものだな。

 そんな風に深々と溜息をつくと、今さら駆けつけてきたらしく、詰め寄ってきたギーシュに胸倉掴まれた。また。うざい。

「……どうして殺した?」
「殺す以外に止める方法が思いつかなかっただけだ。よく言うだろ? 生かしておいたら後ろから撃たれるって」

 なんて、僕は本気で思っちゃいない。ギーシュを黙らせる理屈が欲しいだけ。まあ、あの場合はしっかり殺しておかなければ本当に後ろから撃たれただろうけど。
 厨二小説なんかでよく聞く理屈だが、僕は必ずしもそうは思わない。確かに、生かしておけば後ろから撃たれるリスクはあるが、殺しても復讐されるリスクがある。毒が即効性か遅効性かの違いだけで、致命的なことには変わりない。
 それに、生かしておいても問題ない場合、生かしておかなきゃならない場合、生かしておいた方がリターンが大きい場合、世の中色々なのだ。
 なんて、僕が言っても説得力の欠片もないが。

 今回は、任務の都合でアイツに死んでもらわなけりゃならなかっただけ。暴走したのはゲルマニア、そういう筋書きで動かさなけりゃならん以上、一方さんリスペクトには死んでもらう必要があったからだ。

「そういうことじゃない! ────殺す覚悟はあったのか?」

 一瞬激昂しかけながら、深呼吸して冷静さを取り戻すギーシュ。そうそう長い台詞でもないのにそこまで感情を動かせるとは、まったく器用なものだ。
 僕はさらに深々と溜息をついた。

「馬鹿馬鹿しい」

 断言。
 ぶっちゃけた話、殺す覚悟なんてのは、こと僕のような人種においては、そうそう重要なガジェットではないのだ。

 殺す覚悟とは、殺人を犯さざるを得なければならない状況で、致命的なリスクを回避するために、敢えて人道を踏み外し、色々なものを守りあるいは手に入れるという行為。
 殺さない覚悟とは、やはり同じ状況で、致命的なリスクを背負ってでもあえて人道を歩み、それによって別の色々なものを手に入れあるいは守り抜くという行為。
 決して、中途半端にアーカードさんを猿真似したような見敵必殺(サーチアンドデストロイ)的な殺人狂と同義ではない。

 そして、そのどちらもが────


「────そんなものが必要になるほど、僕は上等な人間じゃないからな」


 肩をすくめて僕はギーシュの手を振り払う。
 どちらかというならば、それはタバサの役だ。少なくとも原作知識において、彼女は殺す覚悟を決めた人間であったはず。
 今のタバサがそれと同じなのかは正直分からないが、それでも彼女は僕よりも上等な人間だ。そのはずだ。




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おまけ的なもの:15終了時の主要キャラ関連設定覚書
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フェルナン・ド・モット
 主人公。
 転生者。
 メイドさん拉致イベントで有名なモット伯の長男という、原作的に考えてきわめて微妙な立場にいる人間。また、最近ガリア北花壇騎士団の構成員になった。
 精神構造の中心は前世から続く徹底的に低い自己評価。だからこそ他の転生者を徹底的に過大評価しているし、あまり油断がない。また、それ以外にもさまざまな部分で低い自己評価が行動や思考に影響を与えている。
 どうやら事あるごとに溜息を吐く癖があるらしい。
 水のスクエアメイジであり、またラグドリアン湖の水の精霊と融合しており、ほぼ人間をやめている。また、それ以外にも相似体系魔術やゲートオブバビロンを初めとした、規格外に大量のチート能力を持つが、あくまでも幅が広いだけで、下位の転生者なら一蹴できる程度の力はあるとはいえ、決して最強にも無敵にもなり得ない。格下にはほぼ無敵だが、格上には話にならない。
 地球を征服している事実を持つが、本人はそれをあまり重視していない。保有する国力、軍事力でいうなら世界最強クラスなのだが、転生者相手に有効なのかどうか微妙、というのがフェルナン自身の自己評価。


タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン)
 正ヒロインの座を手にしつつある。
 非転生者。原作キャラ。
 無口無表情で素直クールな合法ロリ。本の虫。
 謀殺されたオルレアン公の息女であり、毒を盛られて発狂した母親を人質に仇にこき使われている不幸属性持ち。今作品ではさらにフェルナンに洗脳されるというさらなる不幸が訪れた。
 風のトライアングルメイジであり、ガリア北花壇騎士団にいたため、戦闘技術だけでなく、戦闘経験もそれなりに豊富。原作においても味方ユニット屈指の戦闘能力を持っていた。また、死亡した転生者のドロップ品であるカオシックルーンの魔界カードを持っているが、まだ一度も使用していない。


ティファニア・ウエストウッド
 性ヒロイン。
 金髪巨乳ハーフエルフ。
 この作品において、一番非人道的な扱いを受けている人物。
 フェルナンの手によって大量生産されて色々な方面に役立てられているが、おそらく一番特徴的な個体はレコン・キスタの最高司令官をやっているらしい。


リーラ・ウルリカ・ド・アングラール
 メイド。洗脳済み。
 フェルナンの秘書的な役割を持つが、魔法学院パートでは正直出番がない。


シャーリー
 メイド。洗脳済み。
 獣人型ホムンクルス。先住魔法と武装練金「ミッドナイト・プラグレス」を武器とする。
 リーラと同じく、魔法学院パートでは出番がない。


ギーシュ・ド・グラモン
 ライバル的ポジション。
 転生者。原作キャラへの転生。
 一見絵に描いたような典型的転生オリ主のような存在のようだが、その実行動原理は「オリ主っぽい行動をする」こと。機械的に原作キャラを救済し、機械的にハーレムを形成し、機械的に内政チートを行い、機械的にSEKKYOUを垂れ流す。そこには欲望も自己陶酔も存在しない。
 グラモン家の跡取りであり、現代知識を生かして内政チートを行ってグラモン領、及びトリステインの内政に貢献しているものの、トリステイン自体の地力が低過ぎるせいで超大国ガリア・ゲルマニアと比べると正直ぱっとしない。
 オリキャラ・原作キャラを交えたハーレムを形成しているものの、ハーレム要員の一人がフェルナンの諜報員に転向していることなど知る由もない。
 土のスクエアであり、またチート能力由来の戦闘能力もフェルナン以上と推測されるが、詳細不明。


ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
 ギーシュの相方。
 非転生者。原作キャラ。
 原作の主人公の片割れであり、原作における正ヒロイン。ギーシュのハーレム要員の一人。
 失われた虚無属性の持ち主であるが、それを判別する手段が失伝していたため貴族のくせに魔法が使えないドベ扱いされていたところをギーシュに救済され、ヤンデレじみた恋慕を抱くが、度が過ぎており、たびたび暴走する。
 原作と違い、二つ名は「爆撃」である。


アリサ・テューダー
 ギーシュの仲間。
 ギーシュのハーレム要員。アルビオンの転生者組織アルビオン近衛騎士団の唯一の生き残り。ウェールズ王子の妹。
 転生者としてのチート能力も持っているはずだが、レコン・キスタ相手にはあまり役に立たなかったらしい。


ジョゼフ1世
 なんかすごい。以上。
 あと、フェルナンとタバサの上司である。




=====
番外編:タバサ
=====


 今はタバサと呼ばれている少女が、濁流の怪物と再会し、同盟を結んだ後の話。彼によって犯されて決定的に心を壊された、少しだけ後の話。


 タバサ────シャルロット・エレーヌ・オルレアンが彼に抱いた第一印象は、すなわち“ずるい”という一語に尽きる。
 メイジとしての位階は当時の自分より一つ上のライン(実はそれは偽装でその当時既にスクエアだったとのことだが)、要するに自分よりも格上のくせに、父の命を奪われ母を狂わされこの世に頼るべき人の一人もいない自分とは違って、何やら研究なんぞしているだけの暇がある。

 己自身を盛大なるチートの権化と定義する彼、フェルナン・ド・モット本人が聞けばそれこそ苦笑いを禁じ得ないだろうが、しかし、おそらく苦笑いの後に、彼はきっとこう言うだろう。
 『人の苦しみなど人それぞれ』と。
 ありきたりの言葉だが、どれだけありきたりに見えようが、人間には誰しも人それぞれ固有の苦しみを持ち、彼女がどれだけフェルナン・ド・モットの気持ちを推察しようとも、それはタバサの苦しみではない、と。



 濁流のフェルナン/段外段



 今のタバサの目から見たフェルナンの印象は、一言でいえば「恐ろしい」だった。

 フェルナンは言ってみれば“薄い”のだ。意志が薄い。感情が薄い。欲望が薄い。存在そのものが薄い。

 たとえば、彼は転生者としての特殊能力を生かして自らの力を強化するために色々と企んでいるようだが、しかし、それにさえも確固たる目的が存在するわけではない。
 唯一はっきりとしているものは自己否定と世界に対する嫌悪くらいのものなのだろうが、それすら行動するための目的にはなり得ない。
 強いて言うなら生き残るためなのだろうが、逆に言うならばそれだけだ。それこそ誰でも持っている程度の本能であって、加えて言うのであれば、フェルナンの立場はそこまで言うほどに追い詰められているものではない。
 だからこそ、フェルナンの行動原理がタバサにとっては不可解であるのだが。

 そして今、フェルナンにはタバサの目的に協力してもらってこそいるが……タバサがもしジョゼフ王に対する復讐をやめたいと言い出せば、フェルナンは二つ返事でそれを受け入れて、そのままの関係を続けようとするだろう。

 それが何より恐ろしい。
 フェルナンは、おそらくタバサが堕落すればその堕落すら何の感慨もなく受け入れてしまう。自分は誰に止められることもなく、どこまでも堕ちていってしまうことだろう。


 フェルナンがタバサの精神を犯す際に与えた変化は四つ。

 “フェルナンを愛し、全てにおいてフェルナンが優先となる”。
 “フェルナンに悪感情を持たない”。
 “フェルナンに不利益な行動を行わない”。
 “以上全ての精神干渉について悪感情を抱かない”。

 だが、それ以外については何ら改変を行われていない。キュルケに感じる友情もそのままだし、母親の事だって大切に思っている、はずだ。そのことについては、むしろ感謝している。

 精神干渉のせいでもあるが、フェルナンに対しては愛情すら抱いている。そうなるようにされたのだから当然だが、だからといって、今の自分がフェルナンを愛しているのも事実。
 そのことに対して、たとえ作られた感情であろうが自分を偽るつもりもないし、愛している以上、彼を愛したいし、愛されたい。

 それに、フェルナンに抱いている感情自体、どこからが暗示とも分からない、というのも一つ。
 洗脳される以前から、あるいは自分は彼に好意を抱いていたのかもしれず。
 たとえば、彼と初めて出会い、彼が自分を助けてくれたことを今でも覚えている。
 たとえば、彼と再会した後、助けを求めたのは他の何者でもなく彼であったのも、無意識にフェルナンを頼っていたのかもしれない。
 たとえば、彼に犯された時に抵抗しなかったことでさえ、他に彼の力の対価として支払えるものがない、という理由でしかないとはいえ、そもそもの初めから彼に対してその手の行為を許すつもりでいたということもある。

 それら思い出が洗脳によって作り出された感情を補強しているのか。
 思い出によって築かれた感情が洗脳を補完しているのか。
 どちらなのか、少女にはもはや分からない。だが、少女に言えることは唯一つ。

 彼を愛することで堕ちていく自分が、何よりも恐ろしい。



 タバサはいつも通り誰もいない廊下を進み、ドアの前に立つ。薄暗い廊下の中で、巨大なドアは少女を拒絶するかのように閉ざされていた。少女はわずかに瞑目すると、自分の来訪を告げるべく軽くドアを叩く。

 小さな繊手が重厚な木扉を叩く音が静まり返った廊下に響く。
 停滞した空気の中にその音が消えていくと、もはやその後は無音。ドアの向こうには誰もいないかのように静寂だけがその場に漂っている。これまたいつも通りだ。
 少女は意を決したように扉を開けて、部屋に入る。

「……誰?」
 力のない、無機質な声だった。意志を宿さない、外的刺激に機械的に反応するだけの声。少女を出迎えたのは、それだけ。
 一人掛けの安楽椅子の上に、一人の女性が横たわるように座っている。酷く、みすぼらしい女だった。髪は乱れ、目は見開かれ、茫洋と窓の外に広がる外の景色に見入っている。

 狂女。

 正気ではないということが一目で分かる風体だった。貧民街に良くある襤褸切れではなく、貴族らしく綺麗に整えられた服を身に纏っていることが余計にその表情の惨めさを際立たせている。

 タバサは何も言わずに女の前に立つ。胡乱げな女の視線が、タバサへ投げかけられた。タバサはいつも通りに膝をついて女に向かって頭を下げる。

「ただいま帰りました、母様」

 言われてみれば、その女はタバサに似ているように見えないこともなかった。狂気に歪められた表情から顔立ちの相違を伺うことは難しいが、心なしか色褪せて見える髪の色だけは、少なくともタバサのそれと同じだった。

「下がりなさい! 無礼者!! ……王家の回し者め!! 私のシャルロットを、夫のように亡き者にするつもり!?」

 女はその腕に抱かれていた少女の人形をきつく抱き締めて叫ぶ。

「恐ろしや、この子がいずれ王家を狙うなどと、私たちは静かに暮らしたいだけなのです!」

 卓の上に置かれていた食器がタバサに向かって叩きつけられる。タバサは目を閉じて無表情のまま、しかし握っていた杖をきつくきつく握り締めた。本人にも理解できない不愉快な熱が、鳩尾の中から込み上げてくるように思えたのだ。

「下がりなさい! 誰にも、誰にも渡すものですか! この子は、シャルロットは私の大切な娘です……」

 タバサは、その女から逃げるようにしてその場から立ち上がった。また女に会うことなど考えることもせずに。
 女はそんなタバサに目をくれることもなく、その腕に抱いた人形に、愛しげに頬擦りを繰り返していた。



 女から逃げるようにして自室へと転がり込んだタバサは、ベッドまで辿り着くこともできずに床の上に座り込んだ。
 乾いた音を立てて、投げ出された杖が床に転がった。
 荒い息を吐いて我が身を抱き締める。彼女はようやく、自身を襲った得体の知れない衝動の本質を理解していた。

 それは憤怒であった。憎悪であった。そして殺意であった。


 簡単な話だ。


 今まで、彼女は絶望していた。
 敵はジョゼフ王。最高の頭脳を持つ策謀家であり、最強国家の王であり、虚無魔法と使い魔に加えて、転生者すら従えている絶望的な戦力差。
 そして、その上で、ジョゼフ王の情報収集能力は底が知れない。それはつまり、どこに逃げようが相手の掌から逃れることすらできないという事実。
 そして、彼女はたとえ犯され精神の自由を奪われて奴隷にされるという形ではあっても、フェルナンという“勝算”を得てしまった。
 最大の絶望とは、希望の後にやってくるものである。逆に言うならば、希望を持つ事のできない人間は、決して絶望することがない。

 タバサは希望を持ってしまった。


 今まで、彼女は一人だった。
 父は殺され、母は狂い、オルレアン公派は誰の助けも差し伸べず、親友は巻き込むことすらできず。
 一人だから戦ってこれたのだ。
 一人であるということは、他に居場所がないということだ。だから、狂気に囚われた母親がたとえタバサに愛情を向けてくれなくとも、戦い続けることができた。
 フェルナンは、戦わないタバサをも無条件に受け入れてしまう。少女の居場所になってしまう。たとえ、それが強くなることを促す優しさではなく、堕落を許容する甘さでしかないとしても。
 そして、他に居場所を持ってしまった以上、母親は“唯一の”居場所ではなくなり、そして依然として、冷淡な憎しみをぶつけてくる相手のままでしかないのだ。

 タバサは居場所を持ってしまった。


 味方を得た代償として、少女の心の中から、かつての心の強さは失われてしまっていた。
 希望を持ってしまったがために絶望する恐怖に怯え、また居場所ができてしまったがためにかつてのそれを取り戻す意志を失い。


 そして何よりも。
 フェルナンの洗脳によって、本能よりも強固に少女の精神に刷り込まれた第一条。

 “フェルナンを愛し、全てにおいてフェルナンが優先となる”。

 確かに、母に対する愛情は今も変わらない。だが、どうしてもフェルナンがその上位に来るだけで。

 しかし、もし母親がフェルナンに対する障害になるのなら自分は躊躇なく母親を殺すだろうし、そして現に、障害とまでは言わずとも既に足枷になっている。いずれ、自分を誤魔化し切れなくなる時が来る、かも知れない。

 何より、少女はもはや、母を第一に愛することができないのだ。
 フェルナンの二の次に過ぎず、故に“それ以上に大切な存在”のために母を“切り捨てる”という選択肢が少女の裡には出来上がってしまった。



 それらいくつもの要因が茨のように絡み合い、少女の逃げ道を塞いでいた。
 大切な存在を守るために硬く閉ざされた少女の心は、しかし弱さを捨てることができなかった。どれだけ頑強な鋼であろうと、わずかにでも罅が入ってしまえばあっさり砕け散る。ましてやタバサのように常に強大な外圧に曝されている身となればなおさらだ。
 こと、硬いということは脆いということと同義なのだ。硬さを保ったまま脆さを捨てようとするならば────一旦砕け、完膚なきまでに壊れる他に道はない。もはやこれ以上、壊れることがないほどに。

 いずれ、自分は母を殺す。
 そんな最悪の予感に、少女は怯えるようにして自らの体を抱き締めた。

「助けて、フェルナン……」

 だが、助けを求める相手こそ、この最悪の事態の最大の原因なのだ。
 少女は矛盾を抱え、否、矛盾を抱えることすらできず、全ての意志が最悪の道へと突き進むことを少女に促していた。






=====
後書き的なもの
=====

 偽一方さんvs偽アーチャー。学校テロ。

 番外編ではタバサは暗黒面の誘惑と戦っているようです。そろそろ精神的にリーチ掛かっているような。
 番外編は原作と同じシーン、でもタバサの内心だけが原作と致命的に食い違う。そんな感じ。

 転生者の能力は、力の桁も大事だけれども相性も大事。致命的に。原作では無敵の能力でも、変な部分に穴があるかも。

 グデーリアンの能力は禁書から一方通行。「反射」のオートガードによる絶対防御と、ベクトル制御による攻撃力。黒翼モードはなし。

 バルシュミーデの能力はFateからアーチャー。オリ主の能力としては割と典型的。歴戦の戦闘技術に加えて、大半の敵に有効な武装を用意できる投影魔術と、切り札の固有結界。

 アーチャーの技術で一方通行の防御が抜けなかったのは、ベクトルに依存しない攻撃が引き出しに無かったため。
 多分アーチャーの能力でいくと、固有結界展開時には『剣が常にそこにある』ので『取り出す必要すらない』からゲートオブバビロンより速いらしいが、その理屈で行くと、一方さんの心臓がある場所に直接剣を実体化させるとかすれば、剣が最初っからそこにある=静止している=ベクトル関係ないので、もしかしたらベクトル関係なく『反射』抜けるかも。だが今回は誰も気付かなかった。

 あと、相似体系魔術にベクトルはあまり関係ないので、心臓を石に相似させて石化するとかしたら、実はフェルナンは一方通行打ち抜き放題な罠。

 ところでアリサ関連のあれこれ書いてて気になったこと。
 TS転生者は(仮に前世が男だったとして)現在の性別である女として男と恋愛するのと、百合に走って女と恋愛するのと、どちらが正常なんだろうか。


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