<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.13866の一覧
[0] 濁流のフェルナン   【ゼロ魔二次・習作・実験作・R-15】【更新再開】[ゴンザブロウ](2010/10/08 11:36)
[1] 濁流のフェルナン0 転生直前[ゴンザブロウ](2009/11/11 21:48)
[2] 濁流のフェルナン01 奴隷市場[ゴンザブロウ](2009/11/11 21:54)
[3] 濁流のフェルナン02 約束[ゴンザブロウ](2009/11/11 22:00)
[4] 濁流のフェルナン03 舞踏会[ゴンザブロウ](2009/11/11 22:42)
[5] 濁流のフェルナン04 長々と考察[ゴンザブロウ](2009/11/12 21:59)
[6] 濁流のフェルナン05 王道に対する邪道の在り方[ゴンザブロウ](2009/11/12 22:04)
[7] 濁流のフェルナン06 悪夢の後に見る悪夢[ゴンザブロウ](2010/02/19 16:37)
[8] 濁流のフェルナン07 決闘と狂乱[ゴンザブロウ](2010/02/19 16:43)
[9] 07終了時における設定など覚書[ゴンザブロウ](2010/03/17 22:25)
[10] 濁流のフェルナン ルートA08 血塗れの天空【仮掲載・前回と同じ】[ゴンザブロウ](2010/02/23 13:03)
[11] 濁流のフェルナン ルートA09 激突【仮掲載・前回と同じ】[ゴンザブロウ](2010/02/23 14:55)
[12] 濁流のフェルナン ルートA10 新生[ゴンザブロウ](2010/02/26 12:18)
[13] 濁流のフェルナン ルートB08 ミッション・インヴィジブル【仮掲載】[ゴンザブロウ](2010/02/26 19:07)
[14] 濁流のフェルナン ルートB09 牛鬼とホムンクルスの人間性[ゴンザブロウ](2010/02/26 16:22)
[15] 濁流のフェルナン ルートB10 フェルナンの冒険[ゴンザブロウ](2010/02/28 16:58)
[16] 濁流のフェルナン ルートB11 冒険で彼は何を得たか[ゴンザブロウ](2010/03/03 20:37)
[17] 濁流のフェルナン ルートB12 一つの再会、一つの世界の終焉[ゴンザブロウ](2010/03/09 00:27)
[18] 濁流のフェルナン ルートB13 虚無の敵意と水の再会[ゴンザブロウ](2010/03/16 11:20)
[19] 濁流のフェルナン ルートB14 同盟者[ゴンザブロウ](2010/03/16 11:24)
[20] 濁流のフェルナン ルートB15 崩れる同盟[ゴンザブロウ](2010/03/21 10:07)
[21] 濁流のフェルナン ルートB16 人形と人間の狭間で[ゴンザブロウ](2010/10/08 11:34)
[22] 濁流のフェルナン ルートB17 狂王の布石[ゴンザブロウ](2010/10/11 20:45)
[23] 濁流のフェルナン ルートB18 不吉の予兆 【番外編追加】[ゴンザブロウ](2010/10/15 23:47)
[24] 濁流のフェルナン ルートB19 我が名はレギオン、大勢なるが故に[ゴンザブロウ](2011/07/09 02:00)
[25] 濁流のフェルナン ルートB20 瘴気のアルビオン[ゴンザブロウ](2010/11/09 14:28)
[26] 濁流のフェルナン ルートB21 惨劇の後始末[ゴンザブロウ](2010/11/10 13:22)
[27] 濁流のフェルナン ルートB22 ヒトという名のアイデンティティ[ゴンザブロウ](2010/11/20 14:26)
[28] 濁流のフェルナン ルートB23 この冒瀆された世界の中で[ゴンザブロウ](2010/12/01 23:54)
[29] 濁流のフェルナン ルートB24 世界が壊れていく音が聞こえる[ゴンザブロウ](2010/12/18 17:14)
[30] 濁流のフェルナン ルートB25 ロクデナシのライオンハート[ゴンザブロウ](2011/03/27 23:19)
[31] 濁流のフェルナン ルートB26 OVER/Accel→Boost→Clock→Drive→Evolution→[ゴンザブロウ](2011/04/13 13:25)
[32] 濁流のフェルナン ルートB27 決戦前夜 【加筆修正】[ゴンザブロウ](2011/07/09 02:12)
[33] 濁流のフェルナン ルートB28 おわりのはじまり、はじまりのおわり[ゴンザブロウ](2011/07/14 01:31)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[13866] 濁流のフェルナン01 奴隷市場
Name: ゴンザブロウ◆cebfabc8 ID:b5e4ce7b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/11/11 21:54
 そういえば、大切な事を忘れていたような気がする。そう、それは自己紹介である。話が始まると同時に一人称視点で自己紹介が始まるのは、最低系のテンプレらしいからな。まあ、どうでもいいが。

 まあ、それはさておき。

 早速だが、僕が誕生してから、数年の月日が経った。その間に起きた出来事=テンプレ通り。とりあえず、これといった出来事もないし、ぶっちゃけ面倒なので適当にスルーしつつ今に至る。

 そして現在、フェルナン・ド・モット十歳。メイジとしての二つ名は“濁流”のフェルナン。モット伯爵家の当主であるジュール・ド・モット伯爵の長子。モット伯爵……そう、何を隠そう、“アレ”である。アンチ系とかでもよく引き合いに出されたりする、メイドさん拉致イベントの張本人。そして僕はその長男。ちなみに次期当主。

 ……何というか、非常にエロな臭いがしますね、と考えた人、正解である。何といっても、彼は現在、僕の目の前でメイドさんに突っ込んで腰を振っている真っ最中なのだから。体臭とか性臭とか色々なものが漂ってきて、色々と生々しい。

 気まずい思いを押し隠しつつドアノブから手を離して扉をくぐる。趣味のいい、そこそこ金のかかった分厚い黒檀の扉だが、その向こうに見えるのがブクブクと肥え太ったオヤジの裸体となれば、色々とブチ壊しというものだ。
「父上、今回の秘薬の調子はいかがでしょうか?」


 濁流のフェルナン/第一段


「うむ、これはまた中々の、おっおっおっ、出るっ出る出る出るゥ!」
 モット伯こと父上はカクカクと裸の尻を振りながら感極まった声を漏らす。オヤジの裸体なんぞに興味はないのだが、喘いでいるメイドさんの姿は彼の裸身に隠されて見えない。非常に残念な光景である。やがて、彼はエマさんだかシャーリーちゃんだか知らないが、とにかくどれかのメイドさんの股間からまだ隆々といきり立ってビクビクと脈動するイチモツを引き抜きつつ、こっちを振り向いた。体を動かしても父の肥満体でメイドさんの体は隠されていたので、やはり非常に残念な光景である。

 僕が生まれた当初、ほとんどロクに教わってもいないのに魔法、というか魔術を使いこなしたので化け物を見るような目で見られていたのだが、家伝の秘薬の改良を行ってみると、それに喜んだ父はたちまちの内に神童扱い、今では父直々に帝王学なんぞを教わっている。

 ゼロ魔……便宜上呼ぶ事にするが、原作におけるジュール・ド・モット伯爵は、ロクな身分も後ろ盾もない平民である平賀才人が大暴れしたにも関わらず、エロ本一冊で彼を許すどころか、わざわざ金とコネを使って連れてきた性奴隷を手放しまでする男である。意外と器は大きいのかもしれない。まあ、エロは偉大だ、というだけなのかもしれないが。

 色々と突っ込みどころはあるが、とりあえず、現状の僕がマトモに心を許せる唯一の相手でもある。数々のオリ主とは違い、主人公補正やニコポ能力を持たない僕は、ただでさえ評判が悪いモット伯の息子であり、日夜怪しい実験に明け暮れているという事もあり、性的な意味でも実験体的な意味でも、領民には手を出してはいないものの、領民たちには評判が悪い。ギルガメッシュのカリスマ:A+があるためか、家人達にはそれなりに慕われているらしいのだが、スキルが無ければこんなものだ。

「ふう。フェルナンよ、今回の出来は中々のものだった。褒美をやろう。それに、お前もそろそろ専属の奴隷……ゥオッホン、メイドを持った方が良い。今度、ダングルテールの方の小競り合いが終わったから、ラ・ロシェールの奴隷市に奴隷が売りに出されているはずだ。百エキューほど渡すから、良さそうな娘を見つくろって買ってくるといい」
 自分が父の執務室まで呼び出された用件はこれか、と判断。ご褒美まで見事にエロエロである。だがそれがいい。そこに痺れたり憧れたりはしないのだが。

 我がモット伯爵家はモンモランシー家のように、領地経営の他にも秘薬の調合なんかを主として生計を立てている。ただ、モンモランシー家の主製品が女性用の化粧品とかであるのに対して、モット家の秘薬の購買層は主に男性である。と、ここまで言ったらその用途は分かるだろう。言うまでもなくエロである。

 エロ、とか言っても決して馬鹿にしてはいけない。これがまた結構売れるのだ。ゼロ魔の原作アニメでもモット伯が典型的な貴族といわれるのを見ても分かる通り、貴族が平民を使ってアレな楽しみをやるなど、この世界では日常茶飯事。父から見せてもらった顧客リストにヴァリエール公爵家とかグラモン伯爵家とかの名前を見た時には思わず吹いてしまった。
 何ていうか、小説として読んでいる時には普通にスルーしていたのだが、連中も当然人間である。人間であれば食事もすれば糞もする。当たり前ながら精液だって垂れ流すのだ。

 ちなみに、今回製造した秘薬の場合、ワインで割って飲めば五歳児でも抜かず十発とかを可能にするほどの精力を身につける事が可能だ。どちらかというと複数プレイ向けの代物で、一対一で使用するようなものではない。つまり、父は根底から使用法を間違えている。あれではメイドさん一人に掛かる負担も大き過ぎる。まあ、知ったこっちゃないが。

 古い資料を漁ってみたところによると、元々、モット伯爵家は尋問拷問記憶操作何でもござれと、精神や肉体に作用する水魔法を得意とし、裏方として某ガリア北花壇騎士団のトリステイン版のような秘密組織の一翼を担っていた家系らしい。何千年か前にトップの失脚でその組織が崩壊してしまって以来、元々組織が裏の存在であった事もあり、もはや当時のモット伯の裏の所業など誰の記憶にも留まらぬものとなっていった。
 だが、モット伯爵家がそれまで積み重ねてきたそれらの技術は、決して錆びついてなどいなかった。そう、彼らは数千年もの間、血の滲むような努力を重ね、研鑽の末に自らの水魔法をより洗練されたものへと高めていったのだ……エロ方面に。
 まあ、雄(オトコ)の浪漫ってヤツだ。分かってやれ。

 ああ、それから。父の腹の下であえいでいたのは、メイド長のエマさんではなく、新人のシャーリーちゃんだったようである。


 そんなこんなで、転生した僕は五つの能力……というか、五体のキャラの能力を持って誕生してきたのだ。
 一つは、Fateの英雄王ギルガメッシュ。有名なチートである。
 一つは、Fate/zeroの黒騎士ランスロット。“王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)”の宝具の真名解放ができるようになるので最強である。
 一つは、Fateのキャスターこと魔女メディア。魔術師としての技量もあるが、むしろ陣地作成スキルと道具作成スキルが嬉しい。
 一つは、武装錬金の蝶人パピヨン。ホムンクルスを作ったりできるので、手駒を揃えるのに非常に便利である。
 一つは、円環少女のグレン・アザレイ。相似体系魔術は“王の財宝”と組み合わせるとチートにしか思えない。

 パピヨンとキャスター以外は、組み合わせて無双できそうな組み合わせを選択した。だが、もう少し自重を取り払っとけばよかった気はしないでもない。自分の書いた二次小説の最強オリ主とか。まあ、今更遅いが。
 ちなみに、五つの中で三つがFateで揃っているのは、それぞれの能力を組み合わせて引き出しやすいんじゃないかなー、などと期待したからである。

 はぁ、と溜息を吐いて、部屋の中に置いてある姿身を見ると、向こうから覗き込む僕の鏡像と目が合ってゲンナリする。相変わらず、形容に困る顔である。
 具体的に言うと今の僕の顔は「不殺」「友の婚約者=俺の嫁」「僕に勝てるわけないじゃないか」で有名な某ガンダムの主人公の顔を金髪赤眼にして最強オリ主補正を加えた後に、存在感を数億倍に薄くしたような感じである────自分で言ってて訳が分からなくなってくるが。
 はぁ、ともう一度溜息を吐きつつ外出着に着替えて、出かける事にする。


 あー、これテンプレだな……などと思いながら奴隷市場を歩く。ファンタジーな世界に転生した主人公が、奴隷市場で美少女を買って、一生の忠誠を誓われる。もはやこれは、ファンタジー転生もののテンプレではないだろうか。

 まあ、僕は凡百の転生主人公と違って人付き合いは正直苦手なのであまり期待はしていないのだが、それでも内心では浮き立つ気持ちを抑え切れなかった。何といっても、奴隷である。しかも、頭の上に肉とか付くタイプの、だ。まあ、そんなもの、実家にいくらでもいるじゃないか、と言われるかもしれないが、実はそうでもない。実家の(肉)奴隷兼メイドさんは今朝のシャーリー同様、全て父のお手付きである。

 別に処女じゃなけりゃ駄目、とかそんな事を考えているわけじゃないが、現実世界の女性に独占欲と嫉妬心があるように、男にだって同じものがあるのだ。ついでに言うなら、もう少し女性に対する幻想を抱いていたい年頃である。まあ、とっくにそんなものは壊れている気もしないでもないのだが。

 店先ではまあそれなりの顔と体つきをした少女とか、筋肉がそれなりにスゴイ男とかが売られている。……いまいちぱっとしない。これ、と思えるような奴隷とか見つからない。まあ、現実なんていつだってそんなものなんだろうが。

 ホムンクルスの材料とかも結構物入りなんだけど……。うーむ、傭兵崩れの盗賊を捕獲してホムンクルスにしたりして兵隊代わりに使ってはいるが、実験材料にはならない。だからといって領民を野放図にホムンクルスにして回るのもどうかと思う。何といっても、領民は大事な金蔓だ。それに、配下にするなら、どうせなら可愛い女の子の方がいいに決まっている。

 ……何というか、こんな事を考えていると自分もすっかりトリステインの貴族に染まっているな、とか思う。爛れている。ぶっちゃけ、国が滅ぶのも近いんじゃないか、とも思う。まあ、このハルケギニアで貴族制以外の政体が取られる事なんて、そうそうあるはずもないんだが。

 かつてプラトンが上げた最も効率の良い三つの政治形態は、王制・貴族制・民主制の三つである。現代においては民主制が最も素晴らしいとされているが、システムが正常に稼働している際の効率においては、王制や貴族性が劣っているという訳でもないのだ。にもかかわらず現代社会が民主制マンセーなのは、要するに、皆が平民……というか一般市民であるからだろう。

 誰しも、自分に最も都合のいい体制を支持するものだ。前世において、哲学か何かの授業で、「一人が絶対の権力を握って好き勝手するような権力を握る世界と、普通に民主制の世界ではどっちがいいか」という問いが出て、皆が満場一致で民主制に挙手する中、ただ一人「自分が王になれるなら」という条件付きで、絶対王政を支持した男がいた。そして誰もが「自分が王になる」選択肢が存在する事に気がついた途端、あちこちから「それなら私もそっちがいい」とか、そんな声が上がった。世の中そんなもんである。

 よくゼロ魔のアンチ系二次創作において言われている通り、王制や貴族制は暴走しやすく、腐敗すると平民に対する弾圧度合いが半端じゃなくなり、抵抗する手段さえも奪われる。今のモット伯家がやっている通り、だ。もっとも、それでもロマリアや、あるいはトリステインの他の土地よりはマシだったりするのだが。それに、領土が経営できなくなるほどの贅沢はしていない。農民は生かさず殺さず、と徳川家康あたりも言っている。歴史とかそこら辺はあまり良く覚えていないのだが。だからまあ、内政チートとかは無理だ、僕には。

 地球において民主制が主流となったのは、貴族と平民の間に、絶対の格差が存在していないからである。地球において貴族の力であった権力にしろ財力にしろ、状況によってはいくらでも変動するものだ。ゲルマニアの商人はそこらの貧乏貴族よりもよっぽど金持ってるし、ここトリステインでも実権握ってるマザリーニ枢機卿は平民出身である。

 だが、ハルケギニアでは話が違う。平民と貴族を分けるものは“魔法”という純然たる暴力だ。最高位であるスクエアに一歩届かないトライアングルですら、炎を操って敵を焼き尽くし、水を操って精神を自由に弄び、風を操って何人にも増殖し、土を操ってガンダムよりも巨大なゴーレムを作り出す。とてもではないが、平民に対抗できるものではない。

 また、魔法に対抗するためには地球のように発達した科学が必要だが、魔法という便利パワーが存在し、生活がそれに依存してしまっている以上、発明は魔法を強化する以外のものではなく、科学が発達する事はない。必要という母がいなければ、発明という子が産まれる事もないのだ。

 せめてリリカルな魔法少女の世界のように大魔導師の腹から常人が産まれるくらい魔法の才能が遺伝に依存しないのであれば別だったのだろうが、この世界において魔法の力は完全に遺伝だ。平民が手にする事は普通、できない。そういう意味で、魔法の有無が大きく断絶を広げてしまっている。

 それは単純な「パワー」という格差ではない。貴族にとって、平民とは何がどうあろうと自分たちよりも絶対的に弱い存在であり、平民にとっては、貴族の意志や人格がどうあれ、いつでもこちらを踏み躙れる暴力を保有している相手。そういう意味で、魔法の存在が彼らの心を大きく断絶させてしまっている。
 故に、革命も起きない。革命というのは、平民と貴族階級の力がある程度近づいていなければならない。色々と複雑な条件を揃えなければならないのだ。

 だがこの状況、国が滅びかねないというのは、十分にあり得る。一つには狂王ジョゼフ、およびその影響下に存在するレコン・キスタ。第二には、知能の高さに反して脳天からお花が咲いた教皇ヴィットーリオによる聖戦による過剰出費。どちらも冗談じゃない。そんな真似をされたら、僕が安楽に暮していけないじゃないか。

 要するに、どちらも危険である。どうにかして排除したいものだが、手段が思いつかない。さて、どうしたものか。大体、僕は確かに多少(笑)のチートが入っているとはいえ、そこそこの地位の貴族の跡取りでしかない。というか、チートが入ってすらその程度でしかないのだ。その程度の人間が、んな化け物どもを相手になんぞできるわけがない。

 人間一人にできる事なんて限られている。とりあえず、手駒が欲しい。例えばどこぞのミョズニトニルンみたいに、優秀で、有能で、万能で、忠実で、なおかつ無償かつ無私の心で敬意を持って僕に仕えてくれるような手駒が欲しい。ついでに、それが僕好みの美少女であったら言う事はない。……まあ、そんな都合のいい存在がそうそう手に入るわけもないが────


 ────そこまで考えたところで、唐突に思いついた。いないのなら作ればいいのだ。
 幸い、そのために必要な知識のいくらかは僕の中にある。
 ふむ、そうなると、素材が必要になってくる。ここはちょうど奴隷市で、僕がここに来た目的は、専属の奴隷を探すためだ。ここで素材を見つくろっても、別に問題はあるまい。

 そんな思いつきを抱えて、気の趣くままに奴隷市を見て回る。
 買うなら手駒として使い勝手のよさそうなメイジの奴隷がいい。まあ、メイジが奴隷なんて滅多にいないので相応に高いのだが。さすがに、百エキューじゃ足りない。大剣一本程度の料金ではとてもではないが足りやしない。とりあえず念のためにと持ってきていたポケットマネーも加えても、せいぜい二百エキューくらいか。やはり足りない。

 やれやれと思いながら溜息を吐く。どうせなら最高級の奴隷が欲しいが、せいぜい適当な値段で我慢するしかないのだろう。まあ、どのみち最高級が最上級とは限らないし、と自分を慰めつつ辺りを見回す。どうやら、ここは競売エリアだ。
 競売エリアは賑わっていた。何というか、金を持っている暇人がこんなにいるとは驚きだ。大体はマントに杖を携えた貴族だが、中にはゲルマニア辺りから来たのか、商人らしき姿も見える。なぜ分かるか、と言われると、ぶっちゃけマントと杖がないから、それだけだ。だが、貴族はこういう、身分を隠した方がいい状況であってもマントと杖だけは手放さない。貴族の誇りとかそれ以前の固定観念なのだろう。

 景気がいいな、と思いながら、ぽんぽんと売れ飛んでいく奴隷たちを見る。男もいれば女もいるが、大体は顔のいい奴隷だ。場合によっては翼人なんかの亜人も混ざっている。彼ら彼女らがどんな用途に“使用”されるのか大体見当がついて、あまり良い気分でもない。不愉快だ、という気はないが、どこか妙に苛々する。そう、何となく妙な気分だ。

 まあ、どちらにせよ、出品される“商品”どもはとてもではないが僕に手の届く代物ではない。中には捕虜になり、一族郎党皆殺されたために身代金が払えなくなってしまったために、奴隷として売り飛ばされた貴族なんぞが結構いて、メイジ奴隷の値段も常の奴隷市からしても結構安くなってはいるのだが、それでもやはり、僕が手を出すには少しばかり値段が高い。特に、メイジ奴隷はマントとかを着けていない連中が高い金を出しているようだ。護衛とかそこらへんの価値もあるのだろうが、それ以上に、普段自分たちを見下している貴族、それもガリアの次くらいに洗練されていると評判かつプライドの高さで有名なトリステインの淑女を奴隷として扱き使える、というかむしろ好きなように犯す事ができるとなれば、色々と思うところもあるのだろう。

 ────彼女を見かけたのはそんな時だった。
「……あれは」
 新教徒狩りで焼き潰されたダングルテールの一角を治めていた子爵家の令嬢。現在十一歳で、使える魔法は土のライン。歳の割には結構優秀な部類。顔も結構将来が楽しみな感じ。
 だが、それにも関らず、彼女に値段をつけるような声は一つも上がらない。司会の男もそれが分かるらしく、いい加減話を切り上げて次の商品を見せてみたいようだ。

 まあ、それも仕方のない話だろう。顔の半面を覆う火傷が、その理由を何より雄弁に解説している。現在のトリステインの技術でも、あの火傷を治すのは無理だ。そういうのが好きな変態もたまにいるのだが、今回は運悪く────いや、運良く、か? 今回の競には参加していなかったようだ。
 なるほど、お買い得物件のようだ。火傷なんて治せばいい。僕の力なら治せるし。
「────百エキューで」
 だから、彼女に値段を付けた。司会はあからさまに安堵した表情で僕の入札を認めた。

「モット伯爵家の令息、フェルナン・ド・モット────モット家の噂は聞いています」
「ロクでもない噂を、か? リーラ・ウルリカ・ド・アングラール」
 帰路に就く馬車に乗った僕が溜息混じりの答えを返すと、半顔を火傷に覆われた少女は、怯えを隠すように、無理矢理作った強気な表情を見せる。

「その噂は半分以上真実だ。とりあえずバレないようにはしているんだけど……想像力って怖いね」

 正直に答えると、その少女、リーラはあからさまに顔を青くする。我がモット伯家には、色々と悪い噂が立っている。僕が産まれて以来、僕の能力である黄金律スキルの影響により、モット伯家の財政はかつてなかったほどに潤っている。リアル座敷童とはこの事だ。その結果として色々と嫉妬やら何やらを呼び、その上に父の女漁りがあらぬ想像を呼び、結果として情報がいっさい外に漏れていないにもかかわらず、真相通りの噂が形成されている。やれやれだ。

「さて、これからの君の処遇だが……」
 言った途端、少女の背筋がびくりと跳ねる。自分の末路がどのようなものか、大体予想できているのだろう。
「まあ、そうあまり構えるな。そう悪いようにはしない……不幸とも感じなくなる」
「ひ……ぁ…………」
 面白いように顔を蒼褪めさせていくリーラ。少し脅かし過ぎたかな、と思いながら、僕は軽く杖を振った。

「『スリープ・クラウド』……とりあえず、今は眠れ。何も考えずにな」
「やめなさい、やめて! いや、いやぁあああああ…………!」
 少女の叫びから少しずつ力が抜けていき、やがて少女は深い眠りに落ちる。まあ、こんなものだろう。この魔法、元は戦闘用ではなく、寝ている貴婦人に悪戯するためのものである……とは父の談である。
 さて、本番はこれからだ。リーラには悪いが、父に手を出されないために、父をどこか適当なところに追いやるまではこのままの顔でいてもらう。火傷の治療は後回しだ。それよりもまずは、こっちが先だ。
「イル・ウォータル・ユル・マインディ……『メモリー・カスタマイズ』『エモーション・カスタマイズ』」
 さあ、さっそく、少女の人格から作り変えさせてもらおう。そうでもしなければ、僕は人を信用できない。


=====
 追記
=====
 初投稿してみての感想= やってしまった……。
 雑談版でよく見かける要望の正反対を地で行く作品。果たして、こんな作品に需要があるのか否か。不安だ……すごく不安だ……。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.03839111328125