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No.13727の一覧
[0] 【習作】 英雄たちのその後って? 【現実→AD&Dっぽい異世界】【チート能力】[ぽんぽん](2013/07/06 08:18)
[1] 01 TRPG[ぽんぽん](2011/01/03 07:02)
[2] 02 現状の確認[ぽんぽん](2011/01/08 18:19)
[3] 03 準備[ぽんぽん](2011/01/15 10:10)
[4] 04 森からの脱出[ぽんぽん](2011/01/30 10:42)
[5] 05 森からの脱出02[ぽんぽん](2011/02/11 08:35)
[6] 06 ウォウズの村[ぽんぽん](2011/03/05 18:23)
[7] 07 夜の酒場[ぽんぽん](2011/03/19 18:09)
[8] 08 魔法[ぽんぽん](2011/03/26 15:54)
[9] 09 治療[ぽんぽん](2009/12/13 09:46)
[10] 10 想い[ぽんぽん](2009/12/13 09:55)
[11] 11 正体[ぽんぽん](2009/12/19 14:04)
[12] 12 黒聖処女[ぽんぽん](2010/02/28 09:03)
[13] 13 葛藤[ぽんぽん](2009/12/27 09:16)
[14] 14 来訪[ぽんぽん](2009/12/30 11:51)
[15] 15 引き渡し[ぽんぽん](2010/01/02 14:51)
[16] 16 旅立ち[ぽんぽん](2010/01/11 12:04)
[17] 17 城下町エドラス[ぽんぽん](2010/01/16 14:11)
[18] 18 戦乙女[ぽんぽん](2010/01/23 16:57)
[19] 19 冒険初心者[ぽんぽん](2010/01/31 11:59)
[20] 20 見極め[ぽんぽん](2010/02/28 09:01)
[21] 21 戦闘[ぽんぽん](2010/02/19 06:00)
[22] 22 ただいま勉強中[ぽんぽん](2010/02/28 11:38)
[23] 23 ハイローニアスの使い[ぽんぽん](2010/03/14 11:45)
[24] 24 依頼[ぽんぽん](2010/04/11 07:59)
[25] 25 地下墳墓(カタコンベ)[ぽんぽん](2010/04/17 09:01)
[26] 26 地下墳墓(カタコンベ)02[ぽんぽん](2010/04/25 18:01)
[27] 27 地下墳墓(カタコンベ)03[ぽんぽん](2010/05/09 10:22)
[28] 28 地下墳墓(カタコンベ)04[ぽんぽん](2010/05/23 10:00)
[29] 29 地下墳墓(カタコンベ)05[ぽんぽん](2010/06/06 10:06)
[30] 30 地下墳墓(カタコンベ)06[ぽんぽん](2010/06/27 17:24)
[31] 31 タエ[ぽんぽん](2011/02/26 04:35)
[32] 32 思い[ぽんぽん](2010/07/18 12:09)
[33] 33 海沿いの街・セーフトン[ぽんぽん](2010/08/01 11:10)
[34] 34 海沿いの街・セーフトン02[ぽんぽん](2010/08/15 12:04)
[35] 35 海沿いの街・セーフトン03[ぽんぽん](2010/08/29 11:00)
[36] 36 戦乙女(ヴァルキュリア)[ぽんぽん](2010/09/26 16:41)
[37] 37 戦乙女(ヴァルキュリア)02[ぽんぽん](2010/10/03 11:24)
[38] 38 戦乙女(ヴァルキュリア)03[ぽんぽん](2010/10/16 20:28)
[39] 39 告白[ぽんぽん](2010/10/31 10:40)
[40] 40 またね[ぽんぽん](2010/11/14 10:23)
[41] 41 白蛇(ホワイトスネイク)[ぽんぽん](2010/11/27 18:26)
[42] 42 サーペンスアルバス[ぽんぽん](2010/12/11 19:27)
[43] 43 日常[ぽんぽん](2011/02/26 04:36)
[44] 44 日常02[ぽんぽん](2011/01/08 18:22)
[45] 45 3ヶ月[ぽんぽん](2011/01/22 18:11)
[46] 46 イル・ベルリオーネ[ぽんぽん](2011/02/26 04:41)
[47] 47 顔合わせ[ぽんぽん](2011/03/19 14:08)
[48] 48 旅の準備[ぽんぽん](2011/03/19 14:09)
[49] 49 ケア・パラベルへ[ぽんぽん](2011/04/09 10:28)
[50] 50 ケア・パラベルへ02[ぽんぽん](2011/04/02 18:00)
[51] 51 ケア・パラベルへ03_カスピアン[ぽんぽん](2011/04/23 17:48)
[52] 52 ケア・パラベルへ04_ソランジュ[ぽんぽん](2011/05/03 17:57)
[53] 53 ラクリモーサ[ぽんぽん](2011/05/14 17:56)
[54] 54 ケア・パラベルへ05_待ち伏せ[ぽんぽん](2011/05/28 17:51)
[55] 55 ケア・パラベルへ06_芽生え[ぽんぽん](2011/06/11 20:15)
[56] 56 旅の少女[ぽんぽん](2011/06/26 07:08)
[57] 57 確信[ぽんぽん](2011/07/16 18:51)
[58] 58 痴漢[ぽんぽん](2011/08/06 07:42)
[59] 59 兄妹[ぽんぽん](2011/08/15 04:15)
[60] 60 強くなるために[ぽんぽん](2011/08/27 16:49)
[61] 61 蠢動[ぽんぽん](2011/09/10 17:52)
[62] 62 開幕[ぽんぽん](2011/10/01 15:44)
[63] 63 前哨戦[ぽんぽん](2011/10/15 17:36)
[64] 64 決意[ぽんぽん](2013/03/02 06:41)
[65] 65 回顧[ぽんぽん](2011/11/19 17:17)
[66] 66 一騎当千[ぽんぽん](2011/12/10 16:57)
[67] 67 一騎当千02[ぽんぽん](2011/12/29 15:53)
[68] 68 想い交錯[ぽんぽん](2012/01/15 12:40)
[69] 69 英雄への想い[ぽんぽん](2012/02/26 07:14)
[70] 70 急転[ぽんぽん](2012/02/26 08:43)
[71] 71 防衛[ぽんぽん](2012/03/10 11:33)
[72] 72 反撃[ぽんぽん](2012/03/31 19:58)
[73] 73 魔王[ぽんぽん](2012/04/21 11:33)
[74] 74 魔王と白蛇[ぽんぽん](2012/05/20 12:37)
[75] 75 チート[ぽんぽん](2012/08/17 11:06)
[76] 76 決着[ぽんぽん](2012/08/17 11:09)
[77] 77 黒い悪魔[ぽんぽん](2012/08/17 11:09)
[78] 78 黒い悪魔02[ぽんぽん](2013/03/02 06:50)
[79] 79 黒い悪魔03[ぽんぽん](2013/03/02 06:51)
[80] 80 黒い悪魔、白い騎士[ぽんぽん](2012/11/03 10:19)
[81] 81 悪を討つ一撃[ぽんぽん](2013/03/02 06:55)
[82] 82 援軍到着[ぽんぽん](2013/03/02 06:57)
[83] 83 妙子と勇希[ぽんぽん](2013/03/02 06:58)
[84] 84 愛しさ切なさ悲しさ[ぽんぽん](2013/04/29 12:19)
[85] 85 異様過ぎる何かとの遭遇[ぽんぽん](2013/06/23 09:03)
[86] 86 異様過ぎる何かとの遭遇02[ぽんぽん](2013/06/23 09:10)
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[13727] 54 ケア・パラベルへ05_待ち伏せ
Name: ぽんぽん◆d1396e89 ID:9fc8f5b1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/28 17:51

「その時さ!
 いつまで経っても痛くない。
 で、おそるおそる目を開けたら――」

「イルマさんがいたってわけね!
 さっすが、あたしが認める紳士・オブ・ザ・イヤー」

「ああ!
 で、なんでって聞いたんだ。
 だって、そうだろ? 会ってから、まだ間もないのにさ」

「そ、そうしたら、イルマさん何て言ったの? ソラちゃん?」
 
「うん。
 じっちゃん、「友達だろ」って、当たり前って顔で言ってくれて――」

「きゃ~♪
 やるやるぅ、イルマさん~!」

「わあ……
 いいなあ……ソラちゃん……」

「あの時のじっちゃん、その、やばかった」

「え~♪
 ど・う・い・う・意・味・なのかな~?」

「えと、すげえカッコ良かった」

「きゃ~♪」

「にゃー(全く、何、当然のことを言っているのでしょう)」


ソランジュは顔を真っ赤にしてうつむき加減になってしまった。
テンションの針が振り切れたルイディナは、そんなソランジュの頬を「プニプニ」と突く。
やはりファナも頬を赤く染めて、小さな身体を「もじもじ」と揺する。
何故か3人の足下にいるクロコは、自信満々に胸を張っている。

そんな賑やかな3人と1匹のグループに、少し離れた後方からガストンとイルはついて行っていた。


「やれやれ、「きゃー、きゃー」と、まあ。
 ソラ坊も含めて3人か。
 女三人寄れば姦しいってのはホントだな」


ガストンは深いため息をついた。
どこか疲れたような表情のガストンに、イルは苦笑してしまう。
イル自身も、思っていたフシがあったからだ。


「同感です。
 ただ、何を話してるかわからないけど、楽しそうだからいいんじゃないでしょうか?」

「それは、まあ、そうなんだけどな。
 ただ、ソラ坊が女の子とは思わなかったから、つい、な」


今、ルイディナ達とイルは、[ケア・パラベル]へ向かうために[中継集落 カスピアン]を出たばかりだった。

結局、ソランジュはルイディナ達を一緒に、[ケア・パラベル]へ同行することになった。
イルから事情を聞いたルイディナが、「あたし達と一緒にこない?」と手を差し伸べたからだ。
誘われたソランジュは、最初、突然の誘いに戸惑っていた。
イルに迷惑をかけた負い目を感じていたからだ。
だが、ルイディナは気にしなかった。
ずっと1人だったソランジュは、少し涙目になりながらルイディナの手を取った。


「しかし、イルマさんはついてなかったな。
 結局、ファナだけじゃなくて、ソラ坊にも服を取られたのか」


イルとソランジュの姿を見比べて、ガストンは笑う。
現在、イルが着用しているのは、今まで身につけていた[ローブ・オブ・フォーベアランス(耐えるもののローブ)]ではない。
黒っぽい衣服の上に、柔らかそうな布地の深緑のマントを羽織っているからだ。


「なんか、すごく気に入っていたようなので」


イルもガストンと共に笑ってしまう。
ただ、イルの笑いはガストンと少し異なる。
ソランジュが、あのローブの本当の価値を知ったら、どう反応するかを想像してしまったのだ。


「(確かLV24のローブだから、525,000gp(ゴールド)だったかな。
  ってことは、職人1日の給料が1gp(ゴールド)だから、大体52億円??)」


人生を何回繰り返しても使い切れない程の価値だ。
だが、ソランジュはそんな価値などを知らないで、あのローブを気に入ってくれている。
なんだか、イルは、可笑しくも気恥ずかしさも感じてしまった。





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054 ケア・パラベルへ05_待ち伏せ

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(イル、報告します。
 この先に続く街道正面、人間型、20名程の存在が確認できました)


前方を歩いていたルイディナグループにいるクロコから、イルに対してテレパスが飛んでくる。
すぐに、イルは[アイ・オブ・ジ・アースマザー(地母神の眼)]越しに目を細める。
遮蔽物など何も無い街道上の為、その存在はすぐに確認ができた。


(どうやら向こうも、こちらの存在に気がついたようです。
 なにやら動きがあるのを感じます。
 申し訳ありません、報告が遅れてしまいました)


苦々しげに、クロコからの報告があがってくる。
だが、イルは気にしてない。
こんな障害物が何も無い、見晴しの良い街道上では無理はないと思っている。

イルが気になるのは、この後だ。

何故なら、[アイ・オブ・ジ・アースマザー(地母神の眼)]の効果でイルにはわかったからだ。
そう、こちらに向かってくる集団が、あの貴族だったから――


(気にすることはないよ。いつもありがとう、クロコ)


どんな行動でもすぐに取れるように、イルは意識して精神を落ち着かせることにした。





「あ、アイツ……!」


一番、目が良いのはソランジュなのだろう。
前方にいる集団の存在と、その中の中心にいる男の正体に気がついた。
心底、嫌そうな声が漏れてしまう。
そして、足が止まってしまった。


「ん、どったの?」


突然止まったソランジュに、ルイディナは不思議そうに見やる。


「ごめん……!」


ソランジュには唇を噛みしめながら謝ることしかできなかった。





「待ちくたびれてしまったじゃないか、48番」


街道の真ん中。
派手な金色に縁取られた豪奢なサーコートを着ている、
ではなく、
着られているような男が、胸を張って立っていた。


「全く、こんなに活きが良い奴隷は初めてだよ。
 しっかりと、この僕、トスカン・ブルゴー・デュクドレーが教育しないといけないね」

「しつこいやつ……!」


ソランジュが吐き捨てるように呟いた。
さもありなん。
目の前の男は、自身とイルに鞭を打ち付けた男なのだから。


「誰だか知らないけど、ちょっちマナーがなってないんじゃないの?
 いきなり人に向かって奴隷なんて言っちゃって――」


ソランジュのただならぬ様子に、ルイディナは黙ってなかった。
ズカズカと、トスカンの前に歩み出る。
そんなルイディナに、ソランジュは悔しそうに言葉を吐いた。


「ごめん、あいつなんだ。
 俺が売られた貴族って――」


ソランジュの言葉に、ルイディナは納得する。
それは話に聞いていたとおり、そして想像していた通りのダメ貴族っぷりだったからだ。
トスカンを見つめながら黙るルイディナに対して、トスカンは何を思ったか満足げだった。


「ははは、この僕が貴族とわかって萎縮してしまったのかい?
 まあ、それは無理もないね。
 私の品格と風格に当てられて、言葉が出ないのは仕方がないことだからね。
 許してあげようじゃないか」


トスカンは高笑いする。


「は、はあ……
 ありがたいこと、で???」


さすがのルイディナも、思わず疑問系になってしまった。
斜め上過ぎて、いや、斜め下過ぎて、どうしてよいかわからないのだ。


「ありがたがるといい。
 だが、48番は返してもらうよ。
 それは僕のモノだからだね」
 

48番。
この数字を聞いて、ルイディナは目前の男を敵と判断した。
ルイディナが一番嫌いなタイプだったからだ。

その時だ。

ルイディナの頭の中でアイディアが閃く。
頭上に電球が光り輝くように――


「くそ!」


一方のソランジュは腰の重心を下に下げる。
どんな動きに対しても対応できるように戦闘態勢に入った。
だが、そんなソランジュに対して、ルイディナは自信満々の笑みで胸を叩いた。


「ソラ、大丈夫よ。
 ぜーんぶ、このあたしにまっかせなさい~!」

「え?
 ……あ、ああ……?」


あまりの堂々とした態度に、ソランジュも呆然と思わず答えてしまう。
だが、そんなルイディナの様子に頭を抱える人間がいた。
ガストンとファナである。


「ああ、終わった……」

「る、ルーちゃん……」


ガストンとファナは知っている。
いや、強制的に教えられた。
こういった時のルイディナの行動で、上手く物事が進展したことは一度も無いのだから――

だが、そんな2人の心中などつゆ知らず、
ルイディナはトスカンの前に堂々と歩み出て行った。


「あの~、ちょっちいい?
 何を言っているか、意味わからないんですけど?」


ルイディナは片手を顎に添えて、小首をかしげている。
ハッキリ言って、その姿はわざとらしいものだった。
そんなルイディナを見て、トスカンの表情は「これだから下々の人間は」といった表情を浮かる。


「良いだろう。
 特別だ、この僕が説明してあげよう。
 そこにいる汚らしいローブを着ている、そいつを48番と言っている。
 あれは僕のモノなんだ」

「き、汚い!?」


トスカンの言葉に、ルイディナよりソランジュがいち早く反応する。
それは大切な人から貰った、思い出のローブを馬鹿にされたからだ。
だが、そんなソランジュに、ルイディナは手で制止する。


「だから、この子があんたのモノっていう意味がわからないのよ。
 何か証拠でもあんの?」


ルイディナの言葉に、演技のように大げさにトスカンは肩をすくめる。


「腕にあるのだよ。
 消えることがない、我が家の所有を表す家紋がね。
 ハハハ――!」


自信満々にトスカンは高笑いをする。
だが、一方のルイディナも笑いそうになってしまった。
そう、まさに考えていた通りに事が進んで行ったからだ。


「ふーん。
 じゃ、人違いね」


ニヤニヤしながら、ルイディナはサラッと答える。


「……え?」


何事も無いような、自身が予期していなかった返答に、
トスカンは止まってしまった。


「だって、あんたの言う[消えることがない]家紋なんて知らないもの。
 ね、ソラ~?」


ルイディナはソラに満面の笑顔を向けた。
いや、笑顔というよりも、いたずらを計画している子供に近い。
そして。
そんな表情を見たソランジュは、ルイディナの意図を理解することができた。
正直、分の悪いかけのような気もしたが、ソランジュはベットすることにした。
する以外の選択肢が無かったとも言えるが。


「あ、ああ!
 何を言ってるかさっぱりだ?
 あんなやつ、初めて会ったしさ」

「そうよね~」


ソランジュの言に、ルイディナは自信満々に何度も頷く。


「な、何を言うか!
 そいつの右腕には――」


再起動したトスカンがなにやら言いかけるが――


「何も無いわよね~♪」


ルイディナはソランジュのローブをまくって、
傷一つない、ほっそりとした綺麗なソランジュの腕を、これみよがしに見せつける。


「な、なんだって!?
 そ、そんな馬鹿な!?」」


トスカンは顎が外れんばかりに、大きな口を開けて呆然としている。
一方のルイディナは高笑いだ。
ルイディナはソランジュから、「48」という傷があったこと、
そしてイルのポーションで、その傷が完治したことも知っていた。
だからこその引っかけだ。


「消えること無いんでしょ?
 あんたが偉そうに言ったんだもんね~♪
 ってわけで、人違いってことよね。
 全く、人騒がせなんだから。
 あ、今回は慰謝料はいいわ。
 でも、もう、人様に迷惑かけちゃだめよん」


言うやいなや、ルイディナは手を挙げて横を通り抜ける。
そんな後に、パーティの面々は続く。
ソランジュはあかんべーをしながら。
ファナはぺこぺこと頭を下げて。
ガストンは麦わら帽子を取って、収まりの悪い髪をバリバリと描いた。

イルは、笑いをこらえるのに必死だった。
いつでも動けるように控えて様子をうかがっていたが、まさかこんな展開になるとは思っていなかった。
ルイディナの行動に拍手を送りたいぐらいだった。


「ちょ、ちょ、ま、待て!
 な、何を突っ立っているんだ。
 お前等、取り囲め!」


あまりの事の成り行きに、トスカンの後ろの控えていた兵士達も呆然としていたが、
主人の命令で、慌ててルイディナ達を取り囲んだ。


「あ、あれ??
 パーペキな作戦だったはずなんだけど……」


今度はルイディナが焦る番だった。


「こ、この私を愚弄するとは、か、覚悟はできてるんだろうな!!」


トスカンの顔は真っ赤だった。
先程までの胡散臭げな演技ぶった物言いは無くなっていた。
ただの街のゴロツキと同レベルだ。


「ル、ルーちゃん。
 な、なんか、すっごく怒ってるよ……?」


小さなファナの身体は、ますます小さく萎縮してしまう。


「やっぱりなあ。
 なんか、こうなる予感はしてたんだけど。
 ま、ソラ坊に、あんなこと言うヤツは気にくわないからいいけどな。
 けど、もうちょっとなんとかならんかったのかねえ」


ガストンは深いため息を付く。


「た、たはは……
 ご、ごみんなさい」


自信があったルイディナは、さすがに肩を落とす。


「みんな、悪い。
 俺のせい――」


ソランジュは謝罪しようとするが、それはルイディナに遮られる。


「ストップ。
 あたしはリーダーで、失敗したから謝るけど、
 ソラは、それ以上は無しよん。
 あたし達は仲間でしょ。
 当たり前、当たり前!」


いつも見せるルイディナの笑顔だったが、
今、ソランジュは泣きそうになってしまっていた。
だが、そんな余韻を――


「何をごちゃごちゃと……!
 おい、お前等!」


トスカンの声によって壊された。
そしてトスカンは鞭を持った右手を挙げる。
すると、すぐに兵士達が剣を構え始めた。
切っ先は勿論、取り囲んでいるルイディナ達だ。

それを見たルイディナも、深呼吸をしてから真剣な面持ちでレイピアを抜く。


「ごめんなさい、イルマさん。
 たはは、
 どうもちょーっち、あたし、お仕事続けられないかもしれない。
 あ、でも安心してね。
 絶対にイルマさんの安全は守って見せるから!」


ルイディナは後方に控えているイルに対して、目一杯の笑顔を見せた。
そして、すぐに目の前にいる兵士に視線を戻す。


「何を言ってる!
 この私を馬鹿にしたんだ。
 男とじじいは剣のサビにしてやる。
 お前と、48番、子供の女は、せいぜい、部下の役に立って貰うことにしてやるぞ!」


もう、とても貴族とは思えない言動だった。
トスカンの言葉を聞いて、周囲を取り囲む兵士が野卑な表情を浮かべる。


「やれやれ、ここまでとは」


イルは苦笑してしまう。
もう、今日は何度苦笑したかわからないぐらいだ。
それは、目の前の貴族が、マスターが作成するダメ貴族のテンプレートのような男だったからだ。


「だ、大丈夫ですから、イルマさん。
 あ、あの、あたし、絶対に守りますから……!」


イルの呟きに、ファナは何か思うところがあったのだろう。
イルを兵士達の攻撃にさらさないように、と、ファナはイルの前に立ったのだ。
そんなファナの小さな背中は震えていた。
だが、ファナは動こうとはしない。

この瞬間、イルは決心した。


「ありがとう、ファナ」


小さなファナの頭に、イルは優しく手を置いて撫でる。


「……え?」

「君のような優しい女の子と知り合えて、本当に嬉しく思う」

「え、え?」


突然のイルの言葉に、ファナは混乱してしまう。
そんなファナの横を通り、今度はソランジュの元に向かった。


「どうやら私は、自分が思っていたより欲張りな性格のようだ。
 今まで知らなかったよ」


身構えて、ガチガチに緊張しているソランジュの肩に、
イルはそっと肩に手を置いた。


「え、じ、じっちゃん?」

「君を、あんなヤツらにやるのは嫌で仕方がない」

「え!?」


続けて、イルは、先頭に立っているルイディナの所へと向かった。
レイピアを構えて腰が引け気味のルイディナに、イルは背中を軽く叩いた。


「ルイディナ。
 私は君が大好きだよ」

「へ!?」


突然のイルの言葉に、ガチガチだったルイディナの全身から力が抜けてしまった。


「最高のリーダーで、最高のパーティだ」


言うやいなや、トスカンとルイディナの間にイルは立つ。


「黙って、手を引いてくれないかな?」


この場の雰囲気にはそぐわない、それは穏やかな声だった。
だが、トスカンと兵士達から返ってきたのは嘲笑だ。
そんな様子に、イルは溜息をつく。


「今回は、私の負けか」


結局、貴族のイベントから逃げることはできなかった。
この状況では、マスターに向かって白旗を上げざるを得ない。


「何当たり前のことを言ってる、このジジイ?」


だが兵士達は、イルの言葉を違う意味で取った。
「自分達の手によって蹂躙される」と――

そんな兵士達の間違いに気がついたイルは訂正する。


「ああ、すまない。
 君達に向けての言葉じゃないんだ。
 マスター、いや、なんと説明したらよいかな?
 君たちで言う神か。
 今回は神に負けた、そういう意味なんだ」


だが、イルの言葉は兵士達に通じることはなかった。


「何、わけわかんねえこと言ってやがる」

「耄碌か?」

「心配しなくていいぞ。お前はすぐに神様のとこに送ってやる。
 残った女は、俺たちが有効活用してやるから」


まるで盗賊か山賊のような言い分に、イルはさすがに不快感を覚える。
自分をどうこう言われるのは、イルにとっては何ら痛痒を感じる物ではない。
だが、自分が気に入っている人達に関しては別だ。

正直に言えば、逃げる手段などはいくらでもある。
だが、このような言動をする人を放っておいたら、いつ、ソランジュ達にどんな危険なことが起こるかわからない。


「上司が上司だと、部下もこれか。
 盗賊と変わらないな。
 そんな君達には、この子達はもったいなさ過ぎる。
 渡すことはできない。
 彼女達は、私の大切な人なのだから――」


今までに見せたことがない、イルの真剣な言葉だった。
その言葉に、思わず兵士は尻込みしてしまった。
だが、対照的に。
イルは気がつかなかったが、後方の女性陣は顔を真っ赤にしていた。


「この身体に慣れるように、モンスターとは戦いまくったけど――」


イルは首を大きく回して「ポキポキ」と骨の音を鳴らす。
そして、次は指の骨を鳴らした。


「……手加減できるかな……?」


イルの言葉を聞いた、兵士達はざわめき始めた。
当然だろう。
この老人が、自分達に対して「手加減」するなどと言っているのだから。

兵士達の目に本物の殺意がこもる。
場は一触即発の空気に包まれた。







ハーレム物の醍醐味って、主人公が無自覚に女の子をメロメロにすることだと思います。
この無自覚というのがポイント。
うーむ。難しい。
おじいちゃん編は本当に苦労の連続です。



オープニングはガールズトーク(笑)



ガストンさんが放置気味。ごめん。



ルイディナさんは良いリーダー。



あと1,2話ぐらいで、おじいちゃん編が終了できればいいなあ。


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