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No.13727の一覧
[0] 【習作】 英雄たちのその後って? 【現実→AD&Dっぽい異世界】【チート能力】[ぽんぽん](2013/07/06 08:18)
[1] 01 TRPG[ぽんぽん](2011/01/03 07:02)
[2] 02 現状の確認[ぽんぽん](2011/01/08 18:19)
[3] 03 準備[ぽんぽん](2011/01/15 10:10)
[4] 04 森からの脱出[ぽんぽん](2011/01/30 10:42)
[5] 05 森からの脱出02[ぽんぽん](2011/02/11 08:35)
[6] 06 ウォウズの村[ぽんぽん](2011/03/05 18:23)
[7] 07 夜の酒場[ぽんぽん](2011/03/19 18:09)
[8] 08 魔法[ぽんぽん](2011/03/26 15:54)
[9] 09 治療[ぽんぽん](2009/12/13 09:46)
[10] 10 想い[ぽんぽん](2009/12/13 09:55)
[11] 11 正体[ぽんぽん](2009/12/19 14:04)
[12] 12 黒聖処女[ぽんぽん](2010/02/28 09:03)
[13] 13 葛藤[ぽんぽん](2009/12/27 09:16)
[14] 14 来訪[ぽんぽん](2009/12/30 11:51)
[15] 15 引き渡し[ぽんぽん](2010/01/02 14:51)
[16] 16 旅立ち[ぽんぽん](2010/01/11 12:04)
[17] 17 城下町エドラス[ぽんぽん](2010/01/16 14:11)
[18] 18 戦乙女[ぽんぽん](2010/01/23 16:57)
[19] 19 冒険初心者[ぽんぽん](2010/01/31 11:59)
[20] 20 見極め[ぽんぽん](2010/02/28 09:01)
[21] 21 戦闘[ぽんぽん](2010/02/19 06:00)
[22] 22 ただいま勉強中[ぽんぽん](2010/02/28 11:38)
[23] 23 ハイローニアスの使い[ぽんぽん](2010/03/14 11:45)
[24] 24 依頼[ぽんぽん](2010/04/11 07:59)
[25] 25 地下墳墓(カタコンベ)[ぽんぽん](2010/04/17 09:01)
[26] 26 地下墳墓(カタコンベ)02[ぽんぽん](2010/04/25 18:01)
[27] 27 地下墳墓(カタコンベ)03[ぽんぽん](2010/05/09 10:22)
[28] 28 地下墳墓(カタコンベ)04[ぽんぽん](2010/05/23 10:00)
[29] 29 地下墳墓(カタコンベ)05[ぽんぽん](2010/06/06 10:06)
[30] 30 地下墳墓(カタコンベ)06[ぽんぽん](2010/06/27 17:24)
[31] 31 タエ[ぽんぽん](2011/02/26 04:35)
[32] 32 思い[ぽんぽん](2010/07/18 12:09)
[33] 33 海沿いの街・セーフトン[ぽんぽん](2010/08/01 11:10)
[34] 34 海沿いの街・セーフトン02[ぽんぽん](2010/08/15 12:04)
[35] 35 海沿いの街・セーフトン03[ぽんぽん](2010/08/29 11:00)
[36] 36 戦乙女(ヴァルキュリア)[ぽんぽん](2010/09/26 16:41)
[37] 37 戦乙女(ヴァルキュリア)02[ぽんぽん](2010/10/03 11:24)
[38] 38 戦乙女(ヴァルキュリア)03[ぽんぽん](2010/10/16 20:28)
[39] 39 告白[ぽんぽん](2010/10/31 10:40)
[40] 40 またね[ぽんぽん](2010/11/14 10:23)
[41] 41 白蛇(ホワイトスネイク)[ぽんぽん](2010/11/27 18:26)
[42] 42 サーペンスアルバス[ぽんぽん](2010/12/11 19:27)
[43] 43 日常[ぽんぽん](2011/02/26 04:36)
[44] 44 日常02[ぽんぽん](2011/01/08 18:22)
[45] 45 3ヶ月[ぽんぽん](2011/01/22 18:11)
[46] 46 イル・ベルリオーネ[ぽんぽん](2011/02/26 04:41)
[47] 47 顔合わせ[ぽんぽん](2011/03/19 14:08)
[48] 48 旅の準備[ぽんぽん](2011/03/19 14:09)
[49] 49 ケア・パラベルへ[ぽんぽん](2011/04/09 10:28)
[50] 50 ケア・パラベルへ02[ぽんぽん](2011/04/02 18:00)
[51] 51 ケア・パラベルへ03_カスピアン[ぽんぽん](2011/04/23 17:48)
[52] 52 ケア・パラベルへ04_ソランジュ[ぽんぽん](2011/05/03 17:57)
[53] 53 ラクリモーサ[ぽんぽん](2011/05/14 17:56)
[54] 54 ケア・パラベルへ05_待ち伏せ[ぽんぽん](2011/05/28 17:51)
[55] 55 ケア・パラベルへ06_芽生え[ぽんぽん](2011/06/11 20:15)
[56] 56 旅の少女[ぽんぽん](2011/06/26 07:08)
[57] 57 確信[ぽんぽん](2011/07/16 18:51)
[58] 58 痴漢[ぽんぽん](2011/08/06 07:42)
[59] 59 兄妹[ぽんぽん](2011/08/15 04:15)
[60] 60 強くなるために[ぽんぽん](2011/08/27 16:49)
[61] 61 蠢動[ぽんぽん](2011/09/10 17:52)
[62] 62 開幕[ぽんぽん](2011/10/01 15:44)
[63] 63 前哨戦[ぽんぽん](2011/10/15 17:36)
[64] 64 決意[ぽんぽん](2013/03/02 06:41)
[65] 65 回顧[ぽんぽん](2011/11/19 17:17)
[66] 66 一騎当千[ぽんぽん](2011/12/10 16:57)
[67] 67 一騎当千02[ぽんぽん](2011/12/29 15:53)
[68] 68 想い交錯[ぽんぽん](2012/01/15 12:40)
[69] 69 英雄への想い[ぽんぽん](2012/02/26 07:14)
[70] 70 急転[ぽんぽん](2012/02/26 08:43)
[71] 71 防衛[ぽんぽん](2012/03/10 11:33)
[72] 72 反撃[ぽんぽん](2012/03/31 19:58)
[73] 73 魔王[ぽんぽん](2012/04/21 11:33)
[74] 74 魔王と白蛇[ぽんぽん](2012/05/20 12:37)
[75] 75 チート[ぽんぽん](2012/08/17 11:06)
[76] 76 決着[ぽんぽん](2012/08/17 11:09)
[77] 77 黒い悪魔[ぽんぽん](2012/08/17 11:09)
[78] 78 黒い悪魔02[ぽんぽん](2013/03/02 06:50)
[79] 79 黒い悪魔03[ぽんぽん](2013/03/02 06:51)
[80] 80 黒い悪魔、白い騎士[ぽんぽん](2012/11/03 10:19)
[81] 81 悪を討つ一撃[ぽんぽん](2013/03/02 06:55)
[82] 82 援軍到着[ぽんぽん](2013/03/02 06:57)
[83] 83 妙子と勇希[ぽんぽん](2013/03/02 06:58)
[84] 84 愛しさ切なさ悲しさ[ぽんぽん](2013/04/29 12:19)
[85] 85 異様過ぎる何かとの遭遇[ぽんぽん](2013/06/23 09:03)
[86] 86 異様過ぎる何かとの遭遇02[ぽんぽん](2013/06/23 09:10)
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[13727] 30 地下墳墓(カタコンベ)06
Name: ぽんぽん◆d1396e89 ID:9fc8f5b1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/27 17:24
「我が主よ――
 貴方様から拝受いただきました[指輪]を……
 ……
 ……今、ここで使わせていただきます!」

「指輪……!?」


金色の指輪だった。
右手の薬指にはめられた金色の指輪。
ローブの女性が右手をぎゅっと握りしめて――


「release(解放)!」

「え!?」


指輪の効力を発動させるコマンドワード――!?
その瞬間、感じるのは、あまりにも強大な魔力で……!?


「あは、あはははは!」


勝ち誇ったように、いや、確実な勝利を確信したように笑う女性――!


「私ではあんたには勝てない。
 ああ、それは認めてやる。
 なら。
 私の力じゃなかったどうなる!?
 [リング・オブ・スペル・ストアリング・グレーター(上級呪文蓄積の指輪)]の力。
 あははは、忘れたとは言わせない!
 我が主の力を、その身に思い出せ!!!」

「こ、これって――!?」


指輪から魔力があふれ出している……!?
これは、さっきの[ライトニング・ボルト【電撃】] の比じゃない……!


「く、くぅう――!」

「え……?」


指輪に力が集まっていくとは反比例するかのように、ローブの女性は苦しげに片膝をついた……!?
 

「さ、さぁ、どうする?
 はぁ、はぁ……
 ……もうすぐ呪文は発動する。
 もう、もう、私を殺しても呪文は止まらない。
 ははは、いい気味だ。
 あんたは死ぬんだよ――!」


この人、指輪に、指輪に力を吸い取られているの……!?
そ、そうまでして……!?
どうする!?
どうする、わたし――! 


「はぁ、はあ……
 始まりだよ……
 唸れ、大地。
 全てを、全てを飲み込め……
 ……[ムーブ・アース【大地変動】]……!」

「じ、地面が――!」


地下墳墓(カタコンベ)が揺れる。
それは、まるで海に浮かぶ小舟のよう。
それでいて、次第に大きくなっていく――!?


-----------------------------------
・[ムーブ・アース【大地変動】] LV6スペル

土、もしくはそれに類似するもの(砂、泥、粘土層、等)を揺り動かす呪文。
土砂崩れや砂丘を崩したり、小山の地形を変えたりすることができる。
この呪文の詠唱や、アースエレメンタルへの召還は、具体的か効果が生じる前に済ましておく必要がある。

-----------------------------------


「死んでしまえばいい、お前なんて――!!!」
 
 







-----------------------------------
030 地下墳墓(カタコンベ)06
-----------------------------------


「はい、それまで」

「え……!?」


思わず声を上げてしまいました。
いつの間にか、今度は、ローブの女性の横に別の男の人が立っている――!?
地震に気を取られたとは言え、また、全く気がつかないなんて……!?


「ロレイン!?
 なんで、なんであんたがこんな場所に!?」


やっぱり、ローブの女性の知り合いなの――!
レザーアーマーに身を包んだ軽装備の男の人は、何事も無かったようにローブの女性に近づく。
「ロレイン」と、男性の事を呼んだローブの女性は驚いている、の……?


「こんな場所にって……
 ローレン姉さんを止めに来たんだよ。
 決まってるでしょ」

「な、止めにですって――!?」


姉さん……!
ってことは、この男の人は弟――!?
なら、援軍ってこと……!?
でも、止めにって言っているのは……?
どういうこと――!?


「ロレイン、何を馬鹿なことを!
 私は、この売女を――」

「はいはいはい。
 言い訳は後で聞きますよっと。
 まずは……
 ……この呪文を止めないとなあ……」


ロレインと呼ばれた男の人。
20歳半ばぐらいの人、だろうか?
腰には短刀をぶら下げている。
軽装備を好む戦士、もしくはシーフといった風体だけど――

ロレインと呼ばれた男の人は、様子をうかがっていたわたしに視線を向けて――


「あー、ごめんね。黒聖処女(ノワール ラ・ピュセル)。
 うちの馬鹿姉がご迷惑をおかけしております」


ペコリといった感じで、突然、現れた男の人は頭を下げる。


「――!」


その言葉を聞いた瞬間。
どこかゾクリとするものを感じる……!
な、なに、この感覚……!?


「ちょっと待っててね。
 今、この呪文は止めるから。
 それまで休戦でお願いします」

「な、止めるってどういうことよ――!」

「あー、もー。
 姉さんはちょっと黙るの!」


軽装備の男性ロレインという名前と思われる男性は、
姉と思われる人の言葉を受け流して、腰のポーチに手を突っ込む。


「これがマスターの[ムーブ・アース【大地変動】]か。
 ちょ、さすがに僕の力じゃ止められない。
 やれやれ、僕もコレ使わないとダメってことかー」


ポーチから出したのは、そう、また金色の指輪――!
となると、また魔法が封じ込められている……!?


「うーん。そんなに身構えないでよ。
 信用無いなー。
 ま、仕方が無いか。
 こんな可愛い子に警戒されると、さすがにちょっと凹むなー」


ちょっとすねた感じで、男性は金色の指輪を右手にはめ込んでいく。


「release(解放)っと――!」


コマンドワードを唱えた瞬間。
まぶしいぐらいの光が指輪から発せられる!


「さあ、頼んますよ、
 [リング・オブ・スペル・ストアリング・グレーター(上級呪文蓄積の指輪)]さん。
 全てはφ(ファイ)から0(ゼロ)へ……
 ……
 いけ、[ディスペル・マジック【魔法解除】]」


[ディスペル・マジック【魔法解除】]――!?
なら、本当にこの男の人は呪文をキャンセルしようとしているの……!?


「おぉ、さすがにすごいなあ。
 うんうん。
 いやあ、さすがにいい仕事をしてるなー」


男性が言葉を発した直後でした。
あれだけ横揺れしていたのに、次第に揺れが収まっていく。
気がつけば、地下墳墓(カタコンベ)は落ち着きを取り戻していました。

ただ、男性はため息をついて――


「しっかし、この展開はないわー。
 こんなことで[リング・オブ・スペル・ストアリング・グレーター(上級呪文蓄積の指輪)]がー。
 うぅ、なんか切ないなあ」


この男性には、指輪は取っておきのアイテムだったのでしょうか。
確かに、二人が使った[金の指輪]の効果はすごかったです。
けど、一体何が目的で――


「ロレイン、あんた!
 なんで……
 なんで止めんのよ!!
 もう少しで、ぶっ殺せたはずなのに――!」


ローブの女性が、[ムーブ・アース【大地変動】]を止めた弟に問い詰めている……?
ただ、男性の方はやれやれといった表情だ。


「姉さん。姉さん。
 あのね。
 そんな、脂汗いっぱい流して何言っているのさ。
 あのままだったら、死んじゃってたんだよ?」

「……!
 た、確かに指輪には力を取られてたような気はしてたけど……
 し、死ぬって決まったわけじゃ――!」

「指輪のせいじゃない。
 あのままだったら姉さんは死んでたの。
 もー。
 後から説明するから、今はとりあえず帰るよ、いいね」

「な!」


何かを言いかけたローブの女性を、男性は口を押さえて遮る。


「いやあ、迷惑かけたねー。
 黒聖処女(ノワール ラ・ピュセル)。
 迷惑かけた分は、きっとマスターが利子を付け加えて。
 ……
 ……
 きっと、君を……ね!
 あはは、だからまあ「またね」と言っておこうかな?」

「一体貴方たちは――」


言いかけた、わたしの言葉を男性は遮って――


「それは。
 僕よりも、ずーっと君と話したいマスターから説明があるよ。
 だから、その時に聞いてね」

「マスター……?」


先ほどから、この二人の口からは「マスター」や「主」といった言葉が出てくる。
その人が、わたしに何かを――?


「キサマぁあ!
 売女が何を軽々しく口にして――」

「ああ、もう、姉さんは黙るの!」

「むー!」


激昂した女性の口を、再び力強く軽装備の男性は押さえる。


「さてと、今度はっと。
 あー、もう!
 高価なアイテムがどんどんなくなってくよー!」


そして再びポーチからから出したのは――!


「スクロール!」


羊皮紙で作られた巻物!
あれが魔法使いによって、魔力を込めたものだとしたら、また魔法が――!


「あは、今、ビクッてしたね! したよね!
 ああ、もう、かわいいなあ。
 でも安心していいよ。
 これは、僕らが逃げるためのものだからねー」


広げられたスクロールからは、やはりほとばしる魔力が感じられて――


「あはは、じゃあね~♪
 release(解放)っとぉ」

「ま、待って、あなた達は――!」


わたしが声をかけた瞬間。
目の前にいた二人は、一瞬で消えていました。
それは。
来たときと一緒で、あっという間の出来事。

テレポート(瞬間移動)系の呪文だったのでしょうか……?
何がなんだか、本当に意味がわかりません……


「なん、なんだったの……?」


誰もいなくなった地下墳墓(カタコンベ)。
急に静かになったような気がします。
耳にキーンといった静寂音が聞こえる程です。
ただ、今は……!


「イアンさん!」


考えるのは後!
そうだ、考えるのは後でいい。
今は――!


「待っていてください!」


わたしは地面に落ちていたモーニングスターを拾い上げて、
グラヴズ・オブ・ストアリング(物入れの手袋)に入れました。


「石を立てて
 めぐみを
 捧ぐるいのり
 うけいれたまえ――
 ストーン・シェイプ【石物変換】!」


塞いでしまった道を元に戻すため、わたしは意識を集中する――





■■■





「ったく、姉さんってば。
 よく、あの[ムーブ・アース【大地変動】]をあそこまで完成させたね。
 頭痛とか、倦怠感や吐き気しなかった?」

「あの売女をやれると思えば、そんなのなんでもない」

「……
 ……
 やっぱり、あったのね……」


ロレインとしてはため息を突くしかない。
この姉はおかしい。
あれは耐えられるようなものではないからだ。
なぜなら――


「あのねえ。
 僕らにはマスターの[ギアス【命令】]がかけられてるんだよ?
 わかる?
 あの[ギアス【命令】]だよ?
 わかってるでしょ?」

「……わかってる!
 そんな何回も言うな!」

「ねえ、姉さん。
 もしかしてMっ気アリの方?」

「……
 今、この瞬間の気持ちなら言ってやる。
 お前限定でサディストだよ、私は」

「わ、わわ。
 じょ、冗談だってば!
 もう! すぐに[ライトニング・ボルト【電撃】]唱えようとしないでよ!」

「……フン。なら言うな」


-----------------------------------
・[ギアス【命令】] LV6スペル

対象のクリーチャーに魔法で命令を与えて、
任務を遂行させたり、特定の行為を行えないようにする呪文。
自殺させたり、確実に死に至らしめる行動以外なら、どのような行為も遂行させることができる。

呪文にかかった者は、任務を遂行し終わるまで与えられた指示に従わなければならない。
その行為を怠ったり場合、1~4週間以内に死亡する。
また指示を曲解したり、指示から逸脱した場合にはペナルティが課せられる。
-----------------------------------


「やれやれ……
 さ、とにかく、今はマスターの所に帰るよ。
 あと1回[テレポート(瞬間移動)]すれば、マスターの所につけるでしょ」


ロレインは、姉であるローレンの手を握ろうとする。
が、ローレンは差し伸べられた手をはねのけた。


「……イヤだ」

「は? なんでさー。
 僕、イヤだよ。こんなわけのわからないところにいるのなんてー」


今、二人は何処にいるのか、全く現状を把握していなかった。
本来、[テレポート(瞬間移動)]は集中すれば望む場所に行ける呪文だ。
だがロレインは一瞬の隙を見せるより、ランダムの[テレポート(瞬間移動)]を選択した。
黒聖処女(ノワール ラ・ピュセル)に、隙を見せることは危険と判断したためだった。


「……怒られるわ」

「え? 怒られるって?」


先程までの狂気を身に纏っていた姿は無かった。
紫のローブを纏ったローレンはしょんぼりと肩を落とす。


「マスターに怒られる」

「……はあ。
 まあ、そうだろうねー。
 でも、それ自業自得って言うんだよ」

「……」


ローブを深々と被り、ローレンはうつむき黙ってしまった。
ロレインは泣きたくなった。
いつのもの事とはいえ、ウチの姉は躁と鬱の差が激しすぎる。


「じゃ、しばらくそこにいるといいよ。
 後でまた迎えに来るよ。
 出来の良い弟が、姉のフォローをしておくからー」


落ち着くまでここにいてもらおう。
そうしたら迎えにくればいい。
幸い、というか。
どんな場所でも、この姉が一人で危ないということはない。
危険度でいったら、よっぽどこの姉の方がやばいのだから。

ロレインは再び[テレポート(瞬間移動)]の準備を行おうとした。
が。
すると、ロレインの腰にローレンはしがみついてきた。


「あの、姉さん……
 今度はなんなんでしょうかー?」


わけがわからない。
このままだと、自分と一緒に[テレポート(瞬間移動)]の効果に巻き込まれてしまうからだ。


「イヤだ」

「……は?」


それは先程聞いた。
戻るのが嫌だというから、まずは自分一人で戻ろうとしているのだが。
そう、ロレインが、疑問を口に出そうとした時だ。


「マスターに会えないのはもっとイヤだ」

「……
 ……
 ……
 ……」

「どうした?
 早く[テレポート(瞬間移動)]を行え」


ロレインはとてつもなく深いため息を1回ついた。
その後に、深呼吸を5回ほど行う。
さらに素数をいくつから数えてから[テレポート(瞬間移動)]を発動させた。


-----------------------------------
・[テレポート(瞬間移動)] LV6スペル

自分がよく知っている場所を念じるだけで、瞬間的に移動することができる呪文。
使い手のレベルが高いほど、一緒に移動できる制限重量が増えていく。
使い手がよく知らない場所へのテレポート(瞬間移動)は、かなりの危険が伴う。
(空中高くや、地中の中などに移動してしまう可能性があるため)

-----------------------------------





■■■





「戻りましたよ~」

「……戻りました……」


ロレイン、ローレンは荘厳な空間にいた。
天井には装飾を施された幾何学模様の文様が鮮やかに描かれていた。
床は埃や傷一つない大理石で造られている。

そんな二人の前には男がいた。
男は豪奢な椅子に威風堂々と腰をかけている。
王の風格。
これ以外に例えようが無い程、威厳を発している青年だった。

そんな男を前にして、ロレインは飄々とした姿勢で立っていた。
対照的に、一方のローレンは、片膝を付いて地面に付きそうな程に頭をたれている。


「命拾いしたな」


豪奢な椅子に座っていた青年は、楽しげに返答をする。
重々しい声だった。
気の弱い人などは、その声だけでひれ伏してしまうかもしれない。
そう思わせる程に、力が込められた声だった。


「いやあ、ホントですよ~
 生の黒聖処女(ノワール ラ・ピュセル)を侮ってましたよ。
 すごい力が、そりゃあ、もう、ビンビンですよ」

「な、あんな女、あと一歩で――!」


ロレインとローレンの言葉を、王座の男は楽しげ聞いていた。
実際に男は楽しかったのだ。
久しぶりだった。
心が、こんなにも楽しげに躍るのは――


「ローレン。
 これはロレインの言う通りだ。
 他のメンバーも居たら、[ムーブ・アース【大地変動】]で一人ぐらいは殺せたかもしれん。
 だが、ノアは無理だろうな。
 ノアは、あんな形(なり)をして四大精霊を使役できる。
 溶岩の上を歩け、深海で息をし、空を歩け、岩の中でも生活できる。
 俺も一度、それで痛い目を見てるからな」

「な!
 エ、エレメンタルまで――!?」


主に対して疑問を発するなど言語道断だ。
だが、それでもローレンは口に出してしまった。
ありえない。
ローレンとて、自分の魔法には自信がある。
だが、そんなローレンの力を持ってしても、エレメンタルの使役なんていうのは考えられないことだった。


「はあ。
 なんていうか、反則ですねー」


さすがにロレインも冷や汗が止まらない。
ただ、手が全く無いわけじゃない、とロレインは思う。
あのような甘い性格なのだ。いくらでも手はある。


「そんなに強いなら、僕も一度ぐらいは味見しておけばよかったな~」


ロレインの言葉に、青年は苦笑しつつ応える。


「姉弟そろって、人の者を横取りとは行儀が悪いな。
 ノアは、まるで神が冗談で生み出したようなキセキの存在。
 だから。
 だから、あれは俺のものだ。
 これは俺の中で決定事項だ。
 前の戦い、あの瞬間からな――」

「えー、独り占めはずるいです。
 僕もちょっとはお裾分けが欲しいよ~」

「駄目だ、ノアはやれん。
 そうだな、ならお前には……
 ……[白蛇(ホワイトスネイク)]をくれてやろう」

「え! [白蛇(ホワイトスネイク)]っすか!?」


ロレインは[白蛇(ホワイトスネイク)]と聞いた瞬間、渋柿でも食べたかのように渋い表情を見せた。


「あの人、なんていうのかな~。
 聞いた話だと、こざかしそうなんだよね。
 殺し合っても、気持ちよくなさそう。
 もやもやするっていうか~」

「はははは!
 ロレイン、お前がこざかしいと言うか!
 きっと[白蛇(ホワイトスネイク)]が聞いたら、お前と同じ表情をするだろうよ」


青年が声を上げて笑った。
ローレンは表情には出さなかったが、少し驚いてしまった。
こんなに楽しそうなマスターを、ローレンは初めて見たからだ。
なら、あまり我が儘を言って、マスターを不機嫌にするのはよくないと判断した。


「了解っす。
 僕は男の悲鳴でも聞いて、まあ、楽しむとします~」


ロレインがのんびりとした口調で、青年に対して返答したときだ。
どこからとも無く、空間から声が響く――


「ひひひ。
 聞き捨てならんのお。
 [白蛇(ホワイトスネイク)]はワシがずっと目を付けておったもの。
 おぬしのような小僧っ子にはやれん。
 ひひ」


嫌な声を聞いた。
ロレインは一気に心が不機嫌になるのが分かった。


「なんだ、あんたいたんすか」


何もない空間に対して、ロレインは「とりあえず」といった風体で返答した。


「おぉ、いたとも!
 [白蛇(ホワイトスネイク)]……
 ……ひひひ甘美よのお」

「変態」


ロレインの侮蔑の言葉に、何も無い空間から聞こえるしゃがれた声のやり取り。
そんな中に、青年は楽しげに間に入っていった。


「くく。
 お前ら二人は相変わらずだな。
 今度お前らがやり合う機会を作ってやるさ。
 今は、まあ、そう熱くなるな。
 ヴェクナ、ならお前はあのじゃじゃ馬女とやるか?
 アイツを乗りこなすのも楽しそうだぞ?」

「ひひひひ!!
 [戦乙女(ヴァルキュリア)]ですな!!!」


ヴェクナと呼ばれた声の主は、周囲を生理的に不快にさせる声を上げる。


「ああ、ああ、マスター!
 よいのですか、よいのですね、あの[戦乙女(ヴァルキュリア)]を!?」

「ああ。かまわん」

「ひひひ、ひひひひ……!!!」


奇怪な声は次第に小さくなり、最後は消えて言ってしまった。


「くく、早いな。
 もう向かったのか。
 せっかちなヤツだ」

「うわあ、最悪。
 さすがに戦乙女(ヴァルキュリア)に同情しますよ~。
 変態ってやだな~」


ロレインは心から祈った。
絶世の美女と呼ばれる戦乙女(ヴァルキュリア)が、あの変態をけちょんけちょんにしてくれることを。


「あれ、マスター。
 黒聖処女(ノワール ラ・ピュセル)、
 白蛇(ホワイトスネイク)、
 戦乙女(ヴァルキュリア)ときて、あと一人、[終演の鐘(ベル)]はどうします?」


この3人の名前がでたら、当然、[終演の鐘(ベル)]をどうするかも気になるところだ。


「終演の鐘(ベル)は、同じ魔法を扱うものとして捨てがたいな。
 だが、俺が二人独占しても、それはそれでつまらん。
 ……そうだな、終演の鐘(ベル)にはラクリモーサをあてがうとするか」

「な、ラクリモーサが目覚めたのですか!?」


今まで黙っていたローレンが、大きな声を上げた。


「ははは。
 ローレン、相変わらずの反応だな。
 お前はそうでなければらしくないな」

「マ、マスター!
 ラクリモーサにやらせるぐらいならば、この私に命を――!」

「相変わらず、騒がしい娘だこと」


軽やかな女性の声が、ローレンの決意を遮った。
ゆっくりとした歩みで現れたのは、長い銀髪に褐色の肌を持つ女性だった。
耳に特徴があり、知識がある人ならば一目で分かるだろう。
ダークエルフの女性だった。


「ラクリモーサ!」

「ひさしぶりね、ローレン」


ラクリモーサと、ローレンに呼ばれたダークエルフの女性は、ローレンの横に跪いた。


「マスター、主命を謹んでお受け致しますわ」

「ああ、期待しているぞ」

「くっ……!」


ローレンは思わず舌打ちをしてしまった。
そんなローレンに対して、ラクリモーサは満足げに微笑を向けた。
その微笑はローレンに向けたものではなく、自分の勝利に対してのものだが。


「ははは、楽しくなってきたな――」


青年は豪奢な椅子から立ち上がった。


「本当に楽しい。
 生きている感じがして素晴らしい。
 俺の血がようやく熱を持つ。
 黒聖処女(ノワール ラ・ピュセル)のノア……
 ……
 ははは、もっと良い女になれ。
 そして。
 そして、また殺し合おうじゃないか。
 血を吐いて。
 腕や足がもぎれそうなくらいに。
 今の俺を心底満足させるのは、お前だけなのだ。
 お前らだけなのだ。
 このビッグバイを倒した英雄たちよ――!」


魔術師ビッグバイ。
ビックバイは高らかに笑い続けた。







一段落です。
正直、ここまでこられるとは思いませんでした。
このような稚拙な文章を読んでくださって、皆様からご感想やご指摘をいただけたからです。
どれだけ、それが力になったことでしょうか。
まずはお礼をさせてください。
本当に、本当にありがとうございます!

これでノア編は一段落です。
次はお姉ちゃんかお兄ちゃんの出番を考えています。

それにしても、最近の戦闘がメインのお話は、今の私の力では表現しきれませんでした。
お恥ずかしい限りです。
ちょっと休んでから、またほのぼのとしたシーンから描きたいと思っています。


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