D&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)というゲームがある。
TRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)と呼ばれるものだ。
発祥はアメリカなのかな? もう大分前に発売されたやつだと思う。
おにいちゃんから教えてもらったので、そのあたりのことはよくわからない。
けど、遊び方は知っている。
だってわたしもやっていたわけだから。
ちなみに友達はだーれも知らなかった。
男の子の知り合いにも聞いてみたけど、本当に誰も知らなかった。
おにいちゃんの友達が、何人か毎週末になるとよく遊びに来ていた。
それでいつも、紙と鉛筆とさいころで何か楽しそうに話していた。
興味をもったわたしは、おにいちゃんに一緒に入れてほしいとお願いしたのだ。
それで、小学校4年ぐらいからずーっと遊ばせてもらっていた。
これがわたしとD&Dの出会いだった。
あ、まずTRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)というものはね。
一人がマスターとよばれるゲーム進行役係がいるの。
その人が、他のプレイヤーと会話しながらゲームの舞台となる世界と、登場する様々な状況やクエストを説明します。
プレイヤー側はマスターから与えられた情報を元に、決められたルールに従って行動していくことになる。
行動に対して、結果ははさいころ(ダイス)で決定します。
ファイナルファンタジーやドラゴンクエストとかのコンピューターゲームで、
コンピューターの役割も人間がやるといったらわかりやすいかな?
で、今回、ようやく、その何年もかけて行っていた一つの壮大なシナリオが終わった。
今日、集まることができた、わたしと、おにいちゃん、そしてマスターの3人で今回のプレイの感想を語り合うことになりました。
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001 TRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)
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「いや-、今回のはさすがに長いシナリオだったなあ」
大学院生のおにいちゃんがしみじみ語っています。
そうだよね、5年かけて終わったシナリオだもん。
マスター役のおにいちゃんの友達も苦笑する。
「ここまでドラマティックになるとは、さすがに予想できんかったよ。
気がつけば、俺も社会人で主任やってんだぜ?
このシナリオが始まった時は学生だったのによー」
私も小学生だったけど、今、高校生です。
愛用の青色のダイス(さいころ)を何となく転がした。
購入したときは透き通っていたが、さすがに多くの傷が見られていた。
この何年間に何回転がしたのだろうか。
「乃愛(のあ)には、ちょっと申し訳なかったな。
土曜日、ほとんど付き合わせちゃったからなあ」
おにいちゃんは少ししかめたような顔をしたが、わたしは感謝したいぐらいだ。
とっても楽しかったし、むしろ終わるのが寂しいくらいだもの。
○
「じゃ、最終的にキャラクターどうなったか見てみようか?」
テーブルに置いてある各々のキャラクターシートに目を向ける。
まずはわたしのキャラクター[ノア]のものだった。
この頃のわたしは自分の名前を、そのままキャラクターにしたのだ。
自由に決めていいっていうことを知らなかっただけなのだけど。
「うわー、わたし、すごいことになっているなあ」
「乃愛、お前チートだなこれ~」
「そりゃ、乃愛ちゃん初心者だもん。確かキャラ作った時には小学生だろ?
マスターとしてはキャラメイキングを全部無制限にしたんだよなあ」
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キャラクター名:ノア
アライメント:カオティックグッド
種族:ハーフエルフ
職業:ファイター/クレリック
レベル:15/20
性別:女
年齢:不明
髪:黒
瞳:黒
社会的身分:冒険者
兄弟:無し
外観:耳は少しとがっている程度のわたし。
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筋力 (Strength) :18-91
敏捷力 (Dexterity) :16
耐久力 (Constitution) :8
知力 (Intelligence) :11
判断力 (Wisdom) :18
魅力 (Charisma) :16
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「乃愛ちゃんの[ノア]って、外見は同じ設定だったんだ……
こんなかわいい女子高生がモンスターを血の海に沈めていたのか。
うん、いいね、いいね!」
「げ。変態マスター、乙。
しかし、まー、なんというか……
こんな能力の妹と兄妹けんかしたら、間違いなく俺死ぬな」
「でも、本当のわたしのストレングスなんて5ぐらいだと思うな」
なんていうか苦笑するしかない能力値だと思います。はい。
通常のキャラクターの作り方だと6面体のダイスを3回振って(3d6)、
その合計値が、そのまま能力値に適用される。
だから、普通に作製したのでは[ノア]なんてキャラクターの能力は滅多にでないだろう。
「じゃ、こんどは俺のキャラクターの[キース・オルセン]はっと……」
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キャラクター名:キース・オルセン
アライメント:ローフルニュートラル
種族:人間
職業:ファイター
レベル:14
性別:男
年齢:不明
身長:182cm
体重:78kg
髪:金
瞳:黒
社会的身分:ロード
兄弟:無し
外観:王子!
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筋力 (Strength) :16
敏捷力 (Dexterity) :13
耐久力 (Constitution) :16
知力 (Intelligence) :9
判断力 (Wisdom) :8
魅力 (Charisma) :13
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「俺が作った時、ガチでダイス運がよかったんだよなー」
「非常に典型的なファイターの能力値だな」
「おにいちゃんの外観、王子っていうのが気になるんだけど?」
「よくぞ聞いてくれた、イメージはピエトロ王子だ」
「うは、ポポロかよ!」
最終的にシナリオでロード(郷士)になれたんだから、これはぴったりだったのかもね!
○
「ちなみに、ダンジョンマスターであるおまえの世界観では、
一般的な人間の数値の基準ってどうなのよ?」
「ん? 一般人(ノーマルマン)の平均能力値ってやつ? そうだな……」
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6~8 平均
9~10 よくできる子
11~12 秀才
13~14 天才
15~16 世界王者
17 英雄
18 精霊や神様に愛されているレベル
筋力 (Strength) :腕力や脚力の強さを表し、戦闘でのダメージなどに関係。
敏捷力 (Dexterity) :身のこなしや手先の器用さを表し、戦闘での攻撃の避けやすさなどに関係。
耐久力 (Constitution) :身体の頑丈さを表し、ヒットポイントなどに関係。
知力 (Intelligence) :知識の豊富さを表し、秘術呪文の使用などに関係。
判断力 (Wisdom) :聡明さを表し、信仰呪文の使用などに関係。
魅力 (Charisma) :外見的な美貌と性格的な魅力の双方を表し、他キャラクターとの交渉などに関係。
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「ほほう。
わりと、俺の[キース]も良い線いってんだな」
「そりゃそうさ、仮にもキースは[ロード]なんだぜ?
全く無名の男がロード(郷士)までのし上がったんだ、運だけじゃどうにもならんさ」
「にしても、キース以上に、こうなると乃愛の[ノア]はすごいな」
「うん、ちょっとすごいかも。
精霊やら神様やらから、ラブラブなようです、わたしってば」
○
「さて、キャラクター達の、その後なんだけど……
……えっと、まずは……
……[ノア]だね。
[ノア]はカオティックグッドらしい終わり方だったと言えるね」
マスターが手元の資料を確認しながら、「うんうん」と満足げに頷いています。
「わたしは性格がカオティックグッドで、しかもハーフエルフだから。
世界を救ったお祝い祭り中に、どっかに一人で旅立っちゃった」
「乃愛はなんか、妙なところでテンプレ的な行動とるよな」
あ、カオティックグッドっていうのは、キャラクターの性格になります。
これでキャラクターの道徳的概念と、他人、社会、善悪、神々に対する姿勢を表すの。
カオティックグッド(混沌/善)は個性が強く、親切で寛大。
美徳や善、正義を重んじているが、法や規則は好きじゃないって感じかな。
「今日来てないメンバーも、町長やったり塔を建築したり、やりたい放題だしな。
ま、みんなハッピーエンドって感じか」
「でも、なんだか寂しいなあ。こっからのシナリオって作れないのかよ?」
「これだけのレベルになると、マスタリングが難しいんだよ。
そんじょそこらの敵じゃ相手にならんし。かといって強いモンスターは本当にやばいし」
「うーむ……そりゃ確かにやばいな」
わたしも[D&D]の上級モンスターの能力をちょっと見せてもらったけど、
うん、これは関わりあいたくないって感じの能力値だった。
なんていうか、うん、あれは惨い!
「でもモンスターの前に、おにいちゃんの[キース]は政務で過労死しそうだよね」
「あははあははははは、そりゃ言える! [キース]にはモンスターいらんな!」
「ばかいえ、政治学研究科の院生の俺のだぞ?
そんな俺の[キース]なら、素晴らしい政策の数々で人々を幸せにする素晴らしいロード(郷士)に違いない!」
「おま、自分の成績表は見たことあんの?」
「ひどい」
「それじゃ、わたしの[ノア]が[キース]の治める町に行って確認してあげるよ」
「来い来い、いつでもウェルカムだ!
そこで幸せに暮らしました、めでたし、めでたしで」
「そうだね、そんな終わり方も良いかもね!」
こういった自由な想像が楽しいよね。
しかも自分の頭の中から育ったキャラクターだ。
何年もつきあっている分身だ、幸せに過ごしてもらいたい。
そんなたわいもない想像のお話が――
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【能力補足説明】
AD&Dというゲームの能力値は基本的には「18」が最高能力となります。
しかしファイターが「18」の時にだけ、エクセプショナル・ストレングスというボーナスがつきます。
ノアの筋力(Strength)が18-91と表記されている「91」がボーナスです。
これは1d100(1~100)のさいころを振って数値を決めます。
この数字が大きければ大きい程、さらにストレングスにボーナスが加算されます。
……えと、まとめると、ノアのストレングスは尋常じゃないってことで(笑)