(初出: 2009/11/04 以降、修正版)
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何れの御世であったでしょうか……。
位人臣を極めた大臣のもとに、珠のような男の子が生まれました。
その美貌は、生母に瓜二つと噂され、
振りまく笑顔は、周りの者達を魅了し、
若君の居る所は、春の陽光の中に居るような感覚になると、人々は噂しました。
やがて何時しか人々は、彼の若君を『光る暁の君』と呼ぶようになります。
これは、数奇な運命を辿り、平安の世に生まれ変わった、
暁の君の半生の物語 ―――――
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読み書きに関しては、前世の知識が殆ど役に立たないので
普通の子供と同じ様に、手習いを始めました。
最も習い事を始めるには、年齢が随分と早いのですが……。
がっ!、しかし! 時間は有効に使わねば!!
何せ、今の時代は『人生五十年』の世ですから……。
それと母上から、立派な公達は、日記をちゃんと付けるものだと言われて
日記を付け始めることになりました。
日記なんて、まともに付ける習慣なんか無い前世ですから、正直、最初は何を書くか途方にくれましたねぇ。
まぁ…… 当初は書くネタが思い付かず、テンパった揚句に、何をとち狂ったか姉上に
『姉さん!! (参考にするから、日記を) 見せて!!!』
――――と特攻して、教育的指導を受けたのは、決して良い想い出ではない筈?
そんなこんなで始めた日記ですが、なんとか続いていたりします。
サボった時の母上の微笑みが、怖いからじゃないと思う………多分。
それにしても、これ……
『暁日記』とかに成って、古典の教科書に載ったりしないよね?
迂闊なこと書けねぇぇぇぇぇぇ!!
あっ! でも、1人だけ過去に飛ばされて苦労してるのは、割りに合わないから、
将来の受験生の為に、無茶苦茶な内容の日記とかを残すのも、良いかもしれない!!
受験かぁ~~~~~。
山手線に揺られながら、英単語を覚えた日々が懐かしいねぇ………。
何時も寄っていた、あのハンバーガー屋はどうなったのかなぁ?
あ~~ ロッ○シェイク飲みたいなぁ……。
あっ、そうそう……
近々、兄上が元服するらしく、元服後に家に戻ってくるらしいです。
原作通りの優しい人だと、良いのですが……。
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「ねぇ… 暁…?」
「なに? 姉さん?」
「山手線って、なに?」
「う~~~ん?? 1000人以上の人が乗れる、巨大な牛車…?」
「何それ!? そんなの有る訳無いでしょう! 大体、日記に御伽噺みたいなモノを書いてどうするのよ!!」
「なっ! って、姉さん! また、人の日記を勝手に読んだのかよ!?」
「わ、私は、お母様から貴方の面倒をちゃんと見るように言い付かっているから、良いの!!」
「酷でぇぇ……… 自分が読まれた時は、般若ような顔になって怒るくせに!!」
「ゴチャゴチャ言わずに、真面目なモノに書き換えなさい!! 私が、お母様から怒られるんだから!!」
「イタタッタ!!! 間接がぁ!! 間接がぁ~!! って、お母様も読んでるの!?」
「書き終わるまで、寝ちゃダメだからね!!」
「イタタッタ!! 書くから離して!! 極まってる!! 極まってる!!」
…
……
………
■(りて~~~く にっき))
子供の遊びといふものは――
室内の遊戯などは、器具の関係で様変わりするものの、体を使った遊びというものは、
時代や世代などで、余り変わりばえがしないように感じる。
「鬼ごっこ」「かくれんぼ」などは、言うに及ばず。
「妖怪を退治した英雄ごっこ」など、役柄は違えどやっていることに大差は無い。
今日も姉上が誘に来たので、一緒に遊ぶことになった。
麗しい姉君は活動的な為、なにかと私を、外での遊びに誘いに来てくれる。
そんな優しい姉上がダイスキなので、誘いを断ることなんて考えられないデス…
例え、役柄が魑魅魍魎の役で刀で切られる役であっても…
例え、鬼ごっこの鬼役が、体力差のせいで永遠に終わることが無くても…
ボクは、泣きませ~~~~~ん!
オトコノコだから………
早く兄上が、二条院に来てくれないかな………。
この後に書かれた日記帳が、
本音と建前用の2つ存在していた事は、暫くの間、家族の誰にも気付かれなかった―――
(暁日記:第2巻 「手習い」より抜粋)
あとがき:
感想を書いて下さった諸氏に、感謝の意を表します。
ちなみに当作品は、物語のプロローグが、第19帖「薄雲」近辺を想定してますので、
それ以前は、概ね原作の流れに近いものだったという設定で書く予定です。
(夕顔、葵、六条の御息所のファンの方々、ゴメンなさい…。 彼女達は既に故人です。)
(了)