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No.13626の一覧
[0] 【習作】暁物語(元ネタ:源氏物語)[紫敷布](2009/11/11 22:02)
[1] プロローグ[紫敷布](2009/11/03 16:48)
[2] 1話[紫敷布](2009/11/03 16:56)
[3] 2話[紫敷布](2009/11/18 18:25)
[4] 3話[紫敷布](2009/11/05 23:13)
[5] 4話[紫敷布](2009/11/07 13:48)
[6] 幕間1[紫敷布](2009/11/07 13:57)
[7] 5話[紫敷布](2009/11/08 21:18)
[8] 6話[紫敷布](2009/11/09 22:42)
[9] 7話[紫敷布](2009/11/10 23:15)
[10] 8話[紫敷布](2009/11/13 23:51)
[11] 幕間2[紫敷布](2009/11/15 22:38)
[12] 9話[紫敷布](2009/11/18 18:30)
[13] 10話[紫敷布](2009/11/22 20:07)
[14] 11話[紫敷布](2009/12/01 22:29)
[15] 12話[紫敷布](2009/12/14 22:08)
[16] 13話[紫敷布](2010/02/06 22:48)
[17] 14話(前)[紫敷布](2011/02/23 21:31)
[18] 14話(後)[紫敷布](2011/02/23 22:07)
[19] 帰ってきた「クリスマス特番」(再掲載)[紫敷布](2011/02/24 22:02)
[20] なんで今頃「新春特番」(お蔵入りのお披露目)[紫敷布](2011/02/24 22:16)
[21] 15話[紫敷布](2011/02/25 22:43)
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[13626] 12話
Name: 紫敷布◆07eba287 ID:a5147822 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/14 22:08



 
 何れの御世であったでしょうか……。
 
 権勢を極めた大臣のもとに、珠のような男の子が居りました。
 
 父親譲りと言われる才気を持った彼の若君は、
 
 僅か4歳にして、大人並の知識と思考を有する、将来有望な若君だったと伝えられております。
 
 やがて何時しか人々は彼の姿に、若き日の彼の父親を重ねるようになり、
 
 色々な意味で彼の若君を『源氏の君の二代目』と呼ぶようになります。
 
 これは、数奇な運命を辿り、平安の世に生まれ変わった、
 
 暁の君の半生の物語 ―――――



 
 
「暁ちゃん……何故、私が六条の院様に降嫁しなければいけないの?」
 
 ……それは、他に身分の釣合いそうな人が居なかったから
 
 今の自分は元服前の無位の童だから、候補にすら成らないよ
 
 
「酷いよ…暁ちゃん。信じて居たのに……」
 
 宮さま……ごめんなさい……
 
 無力な子供で……ごめんなさい……
 
 
 
 
 
 
 
 
「殿…今頃になって……あんまりです」
 
 母上……
 
 お願いですから気を落さないで下さい
 
 
「殿の正妻という立場も失われ、尼になる事も許されず……私は何を頼りに生きて行けば良いのでしょうか?」
 
 あれは親代わりの筈です。父上が母上を見限る訳が……
 
 
「もはや生きていく意味も有りません。世を儚んで二条院でひっそりと余生を送ります」
 
 母上……父上を止められなくてごめんなさい……
 
 
 
 
 
 
 
 
「やれやれ、幼い方だと私に思わせて、裏で隠れて不義の子を生しますか……」
 
 お、親父! 自分の事は棚に上げて、お前がその台詞を言うか!!
 
 そもそもアンタが確りしていなかったから、柏木に隙を付けこまれたんだろ!!
 
 
 
 
 おのれ……
 
 
 
 おのれ、糞親父!!
 
 どこまで……を不幸にすれば気が済むんじゃぁぁ!!
 
 
 
 
 …
 
 ……
 
 ………
 
 
 
 
 
「暁ちゃん! 暁ちゃん!!」
 
 ん? 宮さま……。泣いているのですか?
 
 
 
 ごめんなさい……
 
 
 不幸になると分かっていたのに
 
 
 絶対に後悔する事になると知っていたのに
 
 
 何もしなくて……本当に…ごめんなさい……
 
 
 
 
 もし…やり直せるなら……
 
 
 
 
 
「今度は間違えません。幸せにしますから、私のもとに来てくれませんか?」
 
 
「えっ!? …………うん、良「貴方は! 何を馬鹿な事を言っているのですか!!(バシッ!)」 ―きゃっ!」
 
 
 痛ってえええぇぇぇ!!!
 
 
 自分と女三の宮さまの間に割って入る大きな影――
 
「出たな諸悪の根源(ラスボス)! 節操なしの糞親父! 今こそ引導を渡してくれるわ!!」
 
「全く、貴方は先程から何を錯乱して……うゎ! 危ないではないですか!?」
 
 
 ちっ…避けたか。
 
 手近にあった枕を投げつけたのですが、体にが思う様に動かず外してしまいました。
 
 まぁ良い…奴は自らの拳で叩きのめす!!
 
 まだ上手く動かせない体に、無理矢理力を込めて立ち上がり相手を見上げる。
 
 
 
 ……あれ? 見上げる??
 
 何で親父が、あんなに大きいんだ? さっきまで同じ位……というか若干自分の方が身長が高かったのに?
 
 
「くっ…卑怯だぞ糞親父! 何時の間に巨大化したんだ!?」
 
 これではまるで、大人と子供では…????
 
 
「いい加減に目を醒ましなさい! この馬鹿息子!!」 (バキッッッ!!!)
 
 ふんぎゃぁぁぁーーーーーーーー!!
 
 
 
 
 
■■
 
 
「さて…これで漸く、この大馬鹿者の処遇について話せます」
 
 板の間に正座させられている自分に対し、底冷えする様な声で父上が切出す。
 
 もうすっかり意識を取り戻した後であり、自分の身に何が起きて居たのか?
 
 寝起きに自分が何をしたか? に関しても、よ~く理解している。
 
 というか、父上や宮さまの容姿から、なんで夢だと気付かなかったんだ!? 俺…?
 
 
 
 敢て言おう!!
 
 『俺、終わった……』
 
 何と言うか、色々やり過ぎてしまったので、冷汗すら出て来ません。
 
 
 
「さて、一応聞きますが言い残すこと――もとい、何か申し開きたい事は有りますか?」
 
 ひぇぇぇ! 非常に拙いです……。
 
 私の記憶が確かなら、あの薄ら寒い表情は、苛立ちが限界直前まで達した時の見せる表情に間違い無いです。
 
 多分、柏木をいびり倒すときにも、あの表情を見せているのに間違い無いでしょう。
 
 
 温厚な人でも、行き成り悪の権化の様に言い掛りを付けられれば、少しは不愉快にもなるでしょう。
 
 ましてや、相手がよりによって、プライドが8000m級の山より高い、御父上様が相手では……。
 
 うん、とても無事には終わらないね……。
 
 
 最後の望みを掛けて、騒ぎを起こした事自体は事実ですので素直に認めて、
 
 少しでも酌量面での考慮を訴えることにします。
 
 そうでもしないと、此の侭では凄まじく機嫌が悪い父上に、不当に大きな罰を貰いかねません。
 
 
「この度は、騒ぎを起こす事に成ってしまって、大変申し訳なく思っております。
 只、ひとつだけ弁解するなら……え~と、状況的に『不可抗力では?』とも思うのですが?」
 
 なるべく殊勝に、控えめに、そして深く反省している様にポーズを取る。
 
 
 父上は…… あの野郎、鼻で笑いやがった!?
 
 
「その様な言い分が通るとでも? 普段から貴方の迂闊さには、毎度毎度毎度! 頭を悩ませられていますが、
 そも、魚釣りの様な殺生を行う下賤な行為を嗜む事自体が、貴方の迂闊さの現れでは無いですか?」
 
 
 まぁ下手人の意見が、素直に通るとは思ってはいませんでしたが……
 
 『魚釣りが下賎』…だとう? 前世の趣味を『下賎』だとう?
 
 流石に、ちょっとカッチ~~~~ン!と来た。
 
 『その自分は何時でも正しい』みたいな、スカした表情に一発お見舞いしてやりたい気分です。
 
 殊勝? そんなモノ…ポイ捨てです!
 
 こうなったら勝てないまでも、一矢報いる為に徹底抗戦あるのみ!!
 
 
 
 
「何を言いますか!? 我が国では馴染が薄いかもしれませんが、魚釣り自体は、
 古の唐土の王朝を切り開いた偉人にも由縁が有り、人が嗜む物としては、決して卑しいとは言えないものです!」
 
 
「む…しかし殺生は」
 
 
「生きた動物を取る行為と云う意味で下賤と仰るのであれば、よく貴族の方々が行う狩りも大して違わないでは?
 まぁ、どちらも殺生をしている時点で、仏法からすれば問題有りの畜生行為な訳ですが……」
 
 
「…………」
 
 
「そう言えば御父上様は、狩りがお好きでしたねぇ……まぁ全く関係無い話ですけれど」
 
 
 さぁ? さぁ!? 何か反論は有りますか? 御父上さま?
 
 
「くっ…なまじ余計な知恵を身に付けている分、貴方は始末に負えないですね」
 
 フッ……勝った!
 
 
 正直、『何故この時に、この場所で釣りをやったか?』に関して切り込まれたら、風向きはかなり悪くなった筈ですが、
 
 ちょっと頭に血が上っていて、冷静さに欠ける今の父上で助かりました。
 
 
( 父上…聞こえて居るのなら、釣りを馬鹿にした少し前の己の迂闊さを呪うが良い! )
 
 父上の表情が、何処ぞの御曹司の様に歪む…… ふはははは――いい気味じゃぁ!!
 
 
 君は良い父上でした……ですが、君の『釣りは下賎』発言がイケナイのダヨ。
 
 
 
 
 
 
 
 
「ほぅ…噂では聞いていましたが、随分と利発な御子息ではないですか?」
 
 伯父上の隣で、自分と父上の遣り取りを聞いていた兄上??が、初めて声を発した。
 
 
「嫌だなぁ兄上。おだてると僕、木に登っちゃう…………え? あれ?」
 
 え~と? 兄上…? では無いですよね?
 
 どちら様でしょうか?
 
 兄上にソックリ? はて…?
 
 
 
 
 そんな頭の上に?マークをいっぱい浮かべて、悩む自分の肩にポンと誰かの手が置かれた。
 
 
「つ・い・に、話し掛けてしまいましたね?」
 
 そこには、ニヤリと笑う父上の姿……
 
 なんか心の中の警報が、最大規模のアラートを発しています。
 
 ん!? 兄上より少し年上っぽい? …… ま・さ・か!?
 
 
「これで貴方の不敬が確定した訳ですが…残念です。非常~に残念です!」
 
 ひぃぃーーーーー! 拙い・不味い・マズイ……やはりこの御方は!?
 
 というか、何で主上が公式場で帝用の衣装を纏ってないの!? それってズルイじゃない!!
 
 
 
 この機を逃さない様に、がっちり自分をホールドして、先程撃墜した筈の父上が、何時の間にか復活!!
 
 畜生め……何を嬉しそうに言っているんだよ! この糞親父!!
 
 
「貴方の不敬行為には、国を背負う大臣の1人として厳しい処罰を与えなければ為りません!」
 
 嘘だ!! 絶対に私怨が入ってる! 入ってる!!
 
「厳しいと言っても、貴方は未だ童ですから……大人程の罰では無いので安心してください」
 
 嫌らしく笑いながら言われても安心なんか出来ねぇよ!
 
 
 
 非常~にマズイ……この侭では、主上という錦の御旗の名の下に、色々と理不尽な目を見る破目になってしまう。
 
 必死に打開策を思案していると、思わぬ所から救いの手が伸びて来た。
 
 
「あぁ大臣、気にしないで下さい。彼の行為に関しては今回は不問とします」
 
 本人からのお許しデターーーーー!!
 
 
「主上っ! ……しかし、それでは!?」
 
「私と暁は、たった今、初めて会ったばかりですよ?
 相手が誰かも明かされて居ない間の行為を不敬として問う程、私は道理の分からない者でも無いですし、
 こんな事くらいで、まだ元服もしていない童に罰を与えたら、私が後世の人に笑われてしまいます」
 
 
 主上ぉぉ!! 心から『ありがとう』を言わせてくだい。御恩は一生忘れません!!
 
 父上が悔しそうに顔をしかめる。恐れ多くも、帝を利用して私を罰しようなど不埒な真似をするからです。
 
 はーーはっはっは♪ 正義は常に勝つのだよ!
 
 調子に乗って『アカンベ』なんかしちゃう…… 父上、そんな顔で睨んでも無駄無駄無駄ぁあ!!
 
 
 
 
 
 
 ……だと思っていました。
 
 
「あ~~、喜んでいる所で大変申し訳ないのですが、今、私が大臣に言った事は、
 私がこの場に居ることで、加味された分の罰のみ免除をお願いしただけですよ?」
 
 
 主上のこの御言葉までは……。
 
 
 
 
「えっ!? ちょぉぉっ! それは一体…??」
 
 罰の免除の意味合いが、急に方向転換したことに動転してしまい、
 
 主上の言葉の意味をすぐには理解できなかったが、どうも余り良い意味では無さそうである。
 
 
 
「簡単に言うと、大臣が親の責任として、朱雀院で騒ぎを起こした息子に対する与える罰までは、
 止め立てする気は無いと言う事です」
 
 つまり……
 
「もしかしなくとも、父上から御仕置きの名の下の折檻を受けるのは、変わらないって事ですか!?」
 
 ニッコリと頷く叔父上様――もとい主上。
 
 が~~~ん! そんな、酷い!!
 
 裏切ったな! 僕の純粋な気持ちを裏切ったな!!
 
 文字通り、がっくりと項垂れる自分。主上の公認とあっては、もはや逆転の目すら見つからない。
 
 そして何時の間にか、父上に抱きかかえられて居り、既に逃亡すら出来ない状態であった。
 
 
 
「さて、では二条院に戻りましょうか。貴方にはこれから色々と、お話をしなければいけませんから」
 
 気分は、最早『売られて行く子牛』状態です。
 
 周りで見ているギャラリーからは、荷馬車で運ばれていく『つぶらな瞳の子牛』のように見られているのでしょうね。
 
 だ~れ~か~ へるぷ、み~~~~!
 
 
 
「少しお待ちください源氏の君……」
 
 自分を連れて退出しようとした父上が、朱雀院さまに呼び止められる。
 
 ……もしかして、伯父上のフォロー有りですか!?
 
 
 
「今回の件では、私からも暁君に罰を与えなければ為らないと思うのですが?」
 
 ―――グシャ!! そんな酷い言葉に100tの重りを頭に受けたような衝撃が走る。
 
 
 !!……ちょっ! 伯父上! 貴方まで僕を苛めるのですか?
 
 此処は味方が居ない所か、敵だらけなのですか!?
 
 
 みんな一応、自分の親戚だよね? 私、貴方たちの甥っ子ですよ?
 
 リアルタイムで『四面みな楚歌し』状態……項羽の気持ちも分かります。
 
 
 
 
 
「朱雀院さま、行幸を台無しにされて御怒りは良く分かります。
 ですがどうか此処は、私が良く言って聞かせますので、私に免じてお許し頂けないでしょうか?」
 
 流石に気の毒に思ったのか? 今の今まで自分を責める側であった父上が、
 
 今度は自分を庇う側にまわって来たのだが、
 
 次に伯父上から出た言葉は、そんなシリアスな雰囲気をぶち壊すのに十分な物であった。
 
 
「いえいえ、騒ぎが起きてしまった事自体は、全く気にしていないのですが、
 女三の宮に心配を掛けて泣かせてしまった事が、父親としてはちょっと許し難くてですね……」
 
 オイッ!! ……いや、気持ちは分からなくも無いのですが、公衆の面前で其れを言っちゃいますか?
 
 
 親馬鹿だ! 此処に親馬鹿が居る!!
 
 親父っ! 『なるほど…』なんて納得するな! 駄目だ…この一族! 救いような無い困ったちゃんだらけです。
 
 
 うぐぅ……。 うちの家系の娘持ち父親は馬鹿親だらけか?
 
 こんな時だけ、父上と朱雀院さまに血の繋がりを感じるとか、正直悲しくなって来ます。
 
 まだ娘持ちでは無く、一族の中で比較的まともそうな人は、主上である冷泉の帝だけなのだが、
 
 今、主上なんかに助けを求めたら、今度こそ何をされるか分かった物では無い。
 
 
 
「それで院は愚息に、如何ような罰を与える御積りでしょうか?」
 
 うゎ~い! 父上的には、伯父上が罰を与えるのは賛成なのですね?
 
 駄目だ、この馬鹿親どもめ!
 
 自分は将来、娘が出来たら、こんな馬鹿親には成らないようにしよう。
 
 
 目の前では伯父上が、顎に手を当てて罰を思案している。
 
 不意に視線が合った時、伯父上が人の悪そうな顔になってニヤリと笑った。
 
 
「そうですね……宮を悲しませたのら、逆に喜ばせる事が償いにもなりましょう。
 ならば、暫く院に留まって内宮の遊び相手をすると云うのは如何でしょうか?」
 
 !?
 
「承服致しかねます!」
 
「おやおや、源氏の君は反対ですか?」
 
 
 いやいや伯父上……そもそも、そんな条件を父上が呑む訳がないですよ?
 
 というか、実は伯父上、罰に見せかけて、私の救済を謀っているのか?
 
 ……可能性は無くもないか? でも、どちらか言うと、単に宮さまが喜びそうだからの線が強いか?
 
 それは父上も同じ様に感じているみたいですね。伯父上を怪しむように見ているし。
 
 これは思わぬ所で 父上 VS 伯父上の馬鹿親対決勝負に成りそうです。
 
 既に他のギャラリーは観戦モードに入ったらしく、仲裁する気配すら無い様子です。
 
 
 
「たった一時の罰で、何日も拘束するのは罰が過大であると思われます!」
 
「では源氏の君は、何日が妥当であるとお考えですか?」
 
「精々半日でしょう「お話になりませんね!」……むむっ!!」
 
「『贖罪をする者、少なくも3倍以上の刑期を持って誠意を見せるべし!』ではありませんか?」
 
「本当にそれが贖罪になるのであれば喜んで了承もしますけれど…
 朱雀院さまの言動からは、どうも別の意図が有るのでは? と思われてなりませんが」
 
「本気で詫びる気が有るのなら、相手の喜ぶ事をするべきでは? 思うだけですが…。
 そういえば、貴方は昔から、勘違いをした詫びの入れ方ばかりをしていましたね。
 朧月夜の君の一件でも、勝手に都から去られた御蔭で、私が朝臣からどれだけ責められたことか……」
 
「あの時は、私の縁者達のためにも、あれが最善の方法でした。
 兄上だって皇太后さまに逆らえずに、私に酷い仕打ちをしたでは無いですか!?」
 
 
 そのまま、睨み合いになる親父ぃず。なんか話が変な方向に向かってないか??
 
 睨み合いの合間に、自分への罰とは全く関係ない口論まで出始めて居るし。
 
 
 誰かあれを止めてなくて良いのか? 流石に身内として見るに耐えないですよ。
 
 でも止められる人物の心当たりが、主上くらいしか居ませんがな……。
 
 
 主上が傍観モードの今、誰も手出しは…… ん? 誰かが自分の袖を引っ張っている?
 
 後ろを振り返ると、其処には女三の宮さまの姿が…… 何時の間にか自分の近くに寄って来ていたのですね。
 
 何ですか? 宮さま?
 
 
「暁ちゃん、暫く此処に居るの?」
 
「いや宮さま…多分無理だと思うよ? 父上が了承するとは思えないし」
 
 家族の力関係上(父上 対 母上 的にだけれども)自分が外泊する事になると、
 
 恐らく父上も無事では済まなくなるだろう。
 
 それに、なんだかんだ言っても父上は母上にゾッコンだから、母上の機嫌を損ねる様な真似はしない筈。
 
 
 
「居ないの?」
 
「いやいや、私的には一向に構わないのというか、是非居たいのですが、
 あれが『うん』と言ってくれない事には、自分からは、なんとも……」
 
 是は紛れも無く本音である。特に、このまま二条院に戻った時の末路が明確に予想できるだけに。
 
 何れにしても、あれ(親父ぃず)の結論待ち…?
 
 
 
「居な…いの…?」
 
 いや、だから……なんだろうね? 凄く嫌な予感がして来た。
 
 え~~と、宮さま、少~し落ち着こうね? 口調になんか嫌な前兆が在るような……。
 
 
 
「居…な…い…の…?」
 
 あっ……!? すっごく涙腺がやばそう。ちょっと待って下さい宮さま!
 
 ここで貴女に泣かれでもしたら……今度こそ本気で、俺・即・斬です!!
 
 
「ううっ…暁ちゃん……」
 
 ぎゃぁぁぁーーーー!! 待って、Wait!! お願い!!
 
 
 
 
「さっきから何をやっているのかね? 君は…」
 
 慌てふためく自分に、見知らぬ公卿に話し掛けてきた。
 
 身内以外でこの場に居る者……つまり宮中にて其れなり地位に居る者に他ならない。
 
 真っ先に思いつくのは、本日の主催の1人、現在政務を取り仕切る関白の役に就いている『あの御方』だろう。
 
 
「え~と、内大臣さま… ですよね?」
 
 父上と同世代っぽい華やかな公卿が黙って頷く。そっか……この人が兄上の伯父上ですか。
 
「初めまして、何時も父と兄がお世話になっております。
 え~と、見ていたのなら、事情は大体御分かりと思いますが?」
 
 
 内大臣さまは、自分の返答にちょっと呆れたような表情になる。
 
「事情が分かっているから、何故速やかに対処しないのか聞いているのですが……」
 
「出来るものならやってます! 嗚呼…… お願い! 宮さま落ち着いて下さい!」
 
 
 そんな宮さまに振り回される自分を見て、内大臣さまの表情が意外な物を見るような感じに変わる。
 
「噂というものは、存外、真実とは違うという事ですか……」
 
「……噂? 何でしょうか?」
 
「いえ、宮中での貴方の評判は、源氏の君並に口が巧く、手が早く、場慣れしていて、
 既に何人もの女性を誑かしていると云うものでしたから……」
 
 何、その話……兄上に聞いた時より、更に酷くなってないか?
 
 全く、どこぞの垂らしと同列扱いなぞ、しないで欲しいわ!
 
「まぁ、そう云う事なら将来有望な若者の為に、骨をおるのも吝かでは有りません」
 
 そのまま、主上もとに近づく内大臣さま。小声で何か話し掛けて居る。
 
 そして、それまで若干成行きを楽しそうに見ていた主上が、親馬鹿ズのもとに行き、何かを囁いている?
 
 恐らく仲裁しているのかな?
 
 此方に戻って来られた内大臣さまが、すれ違いざまに『貸し1つですよ…』呟いたので、まず間違いは無いだろう。
 
 ひっとして面倒な人に借りを作っちゃった!?
 
 というかアンタ、貸しにするなら、自分自身で仲裁しろや!!
 
 
 
 
 結局、主上の仲裁で『罰として3日間の朱雀院への逗留』が決まるのであった。
 
 
 
 
 
 
(暁日記:第12巻 「後始末」より抜粋)





あとがき:
 
 感想を書いて下さった諸氏に、心からありがとうの意を……。
 
 朱雀院の行幸編の3話目で御座います。
 まったりペースでの週末のみの執筆なせいか? 作品の完成速度が、ガタ落ちになった感があります。
 などと思っていたら、1話の平均文字量が、何時の間にか倍以上に…そりゃ完成も遅くなるか??
 12話での予定部分まで話が進んでいませんでしたが、ちょっと長くなりすぎたので
 切りの良い所で、次回に回すことにしました。
 
 原作を読んだことの無い人は、多分読まないだろうと勝手に思って、今までは細かい説明とか省略していましたが、
 これからは簡単な説明とか入れた方が良いのだろうか?
 
 因みに、漫画で源氏物語の概要を知ろうとする勇者への、作者の推奨の作品は
 大和和紀先生の「あさきゆめみし」です。
 (分かり易い、絵が綺麗、宇治十帖まで完結済、原作のドロドロ部分がライトな表現になってる
 etc. 大変読みやすいです)
 本棚から「あさきゆめみし」発掘して再読した後、作者脳内で、SS内でのキャライメージは
 「あさきゆめみし」の映像を使用しています。
 ( 暁は紫の上の幼児姿で……… )
 感想であった「ジャパネスク」で思い出しましたが、そういや、次章で出てくる玉鬘の名前って、実は『瑠璃姫』なんだよね……。
 玉鬘の性格を、ジャパネスクの瑠璃姫から持ってきたらどうなるのだろうか? ……右大将が殴り倒されて終わりの予感。
 
 
 
 
(了)



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