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No.13626の一覧
[0] 【習作】暁物語(元ネタ:源氏物語)[紫敷布](2009/11/11 22:02)
[1] プロローグ[紫敷布](2009/11/03 16:48)
[2] 1話[紫敷布](2009/11/03 16:56)
[3] 2話[紫敷布](2009/11/18 18:25)
[4] 3話[紫敷布](2009/11/05 23:13)
[5] 4話[紫敷布](2009/11/07 13:48)
[6] 幕間1[紫敷布](2009/11/07 13:57)
[7] 5話[紫敷布](2009/11/08 21:18)
[8] 6話[紫敷布](2009/11/09 22:42)
[9] 7話[紫敷布](2009/11/10 23:15)
[10] 8話[紫敷布](2009/11/13 23:51)
[11] 幕間2[紫敷布](2009/11/15 22:38)
[12] 9話[紫敷布](2009/11/18 18:30)
[13] 10話[紫敷布](2009/11/22 20:07)
[14] 11話[紫敷布](2009/12/01 22:29)
[15] 12話[紫敷布](2009/12/14 22:08)
[16] 13話[紫敷布](2010/02/06 22:48)
[17] 14話(前)[紫敷布](2011/02/23 21:31)
[18] 14話(後)[紫敷布](2011/02/23 22:07)
[19] 帰ってきた「クリスマス特番」(再掲載)[紫敷布](2011/02/24 22:02)
[20] なんで今頃「新春特番」(お蔵入りのお披露目)[紫敷布](2011/02/24 22:16)
[21] 15話[紫敷布](2011/02/25 22:43)
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[13626] 11話
Name: 紫敷布◆07eba287 ID:a5147822 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/01 22:29




 
 何れの御世であったでしょうか……。
 
 浮名を極めた大臣のもとに、珠のような男の子が居りました。
 
 人畜無害な容姿とは裏腹に、父親に似たその手の早さから
 
 都の姫持ち公卿を、恐怖のどん底に落し入れたと語り継がれております。
 
 やがて何時しか人々は、色々な意味で、
 
 彼の若君を『源氏の君の二代目』と呼ぶようになります。
 
 これは、数奇な運命を辿り、平安の世に生まれ変わった、
 
 暁の君の半生の物語 ―――――



 
 
 桜の蕾も次第に膨らみ、春風そよぐ2月の中旬となった頃、
 
 運命の日…つまり朱雀院行幸の日は、とうとうやって来てしまった。
 
 
 うぅぉぉぁぁ、凄っごく胃が痛いデス。
 
 
 神様…… 本気で今日だけは平穏無事に終わらせてください!
 
 もう無事に終わるなら、祈ります! 願います! 誓います!!
 
「宣誓!! 私~暁は、日々平穏主義に則り~、精々堂々と、まったりすることを誓います!」
 
「何を早速入口で堂々と馬鹿な事をしているのですか!」
 
 パシーン! という父上の容赦のない突っ込みが入る。
 
 最近、手加減という言葉を忘れてないですか?
 
 
 
 
「良いですか? 此処から先は公式の場です。主上も居られます」
 
 分かってます。
 
 
「何時もの様な迂闊は! 決して許されるものでは無い事を肝に命じておいて下さい!!」
 
 すっごく良く分かってます。
 
 
「それと何度も言いますが、主上は『たまたま朱雀院に招かれた貴方を見かけただけ』です。
 
 お言葉を掛けられることは有りません。くれぐれも誤って話掛けないように……」
 
 重々良く理解して居ります。
 
「父上……その言葉はもう今朝から10回位聞いていますよ?」
 
「何時も何時も、何処かの誰かさんは、何度言っても分かってくれない様なので……」
 
 ぐぅの音も出ません。
 
「努々御忘れなきように。では行きましょうか……院をあまり待たせてはいけませんから」
 
 
 
 
 
 
 朱雀院――
 
 兄上から聞いた話によると、広さ8町も有るという上皇さまの御所である。
 
 単純計算で、今年に引っ越す予定の六条院の広さの倍も有りますよ!
 
 どうりで池の対岸が、霞んで見えるほど広い訳ですね。
 
 そして、その院の主である朱雀院さまは……寝殿の入口付近で来客の応対をしていました。
 
 
 
 え~と、上皇が自ら迎えに居て良いモノなのでしょうか?
 
 幾ら招かれた側とは云え、客…というか自分が恐縮してしまいますが。
 
 
「やぁ、よく来たね…」
 
「え~と…本日はお招き頂き「あぁ、堅苦しい挨拶はいいよ」……ハイ」
 
「私が無理に頼んだ様な物だからね。父上から聞いていると思うけど、今日は内宮のお相手をお願いします」
 
 
 まぁ…それは良いのですが、私などが何度も此処にお邪魔して良いのでせうか?
 
 とか、ちょっと思ってしまうのですが……。
 
 
「前も言った通り、私は気楽な隠居だからね。今日の様な公式の時は兎も角、普段はそんなに気にしなくて良いよ」
 
 
 はい! 了解しま……って、
 
 おぃ…今の言葉を良く聞けば、今日は気楽に来ちゃダメな日じゃないですか!?
 
 伯父上! 笑って誤魔化さないで下さい!!
 
 そもそも、そんな駄目な日に、呼ばないで下さいよ!
 
 とか、初っ端の時点で、伯父上に突っ込みを入れそうになったが、其処はなんとか堪える。
 
 耐えろ! 堪えろ! 持ち堪えろ! この人は雲の上の人なのだ!
 
 全ては己の平穏のため……そう時代はスマイルだ!!
 
 
 
「ん? 暁君、何か悶えている様だけど… 具合でも悪いのかい?」
 
 貴方が原因だろ!! なんて言えません……。
 
「いえ…何でもないす。そういえば、肝心の女三の宮さまの御姿が見えませんね?」
 
「今日は来客が多いので、内宮は表立って出て来れません。この先は、そこの小納言に案内させますので宜しくお願いします」
 
 ??
 
「では、此方へどうぞ」
 
 !!!
 
 突然背後から掛けられた言葉に、思わず度胆を抜かれる。
 
 其処には、如何にも『私出来るぞ!』的キャリアウーマン系な女房が、何時の間にか音も立てずに控えていた。
 
 
 びっくりした!! 一体、何時の間に!?
 
 吊り上った眼鏡とか「ザマス」口調とかが凄く似合いそうな人です。
 
 名前からして、何処かで平安式なBlogとか書いてそうですが、流石にないよね?
 
「?? …何か?」
 
「いえ、何でも無いです……」
 
 ヤバイヤバイ…ちょっとジロジロと顔を見過ぎたか?
 
 忘れていたけど、女性は表立って余り顔を見せない時代でした。行き成り不興を買う所でしたね。
 
 今日は自重だ自重……迂闊な事を考えちゃダメっ!
 
 
「御案内しても宜しいですか?」
 
 はい、宜しくお願いしますデス。
 
 
 
 
 …
 
 ……
 
 ………
 
 
 
 
 小納言さんに案内されて連れて行かれた所は、院の奥の方であり、まだ一度も入ったことの無い場所であった。
 
 つまり此処が朱雀院の禁裏付近であると察せられる。
 
 上皇様の禁裏って、もっと物々しいイメージが有ったのだが……意外と普通だよな?
 
 不思議と警備が甘いと言うか、これなら自分でも忍び込めそうである。
 
 ……って、何をまた不穏なことを考えているんだ! 今日は大人しくするんだろ?
 
 今日は大人しく今日は大人しく今日は大人しく……。
 
 
 などと自分の考えに悶々と浸っている間に、何時の間にか目的地に着いた様で、
 
 我に返った時には、三の宮さまがトテトテと、自分の方に近づいて来くる所でした。
 
 
 
 
 
「暁ちゃん…いらっしゃい」
 
 開口一番に抱き付かれるのは少し恥ずかしいのですが、だからと言って嫌とも言えない微妙な気持ちです。
 
 姉か妹を持つなら、彼女の様に可愛らしい娘が理想ですね…… 本気で姉上とトレードしたい。
 
 
「??」
 
「いえ、何でもありません! え~と、本日は父上達が戻ってくるまで、私が遊び相手を務めますので宜しくお願いします。
 
 あっ! これ御土産です。お菓子とか持って来ましたので、後で一緒に食べましょう」
 
 と、室内用の暇つぶし用のアイテムと御菓子を渡した。
 
 
「ありがとう…」
 
 いえいえ、大した物でなくて恐縮です。暇つぶし道具は一部を除いて自分の手作りだし。
 
 
 
「で…? 今日は何をしましょうか? この間みたいに、また物語でも語りますか?」
 
「お外で遊びたい…」
 
「……エッ!?」
 
 いや、気持ち的には賛成なのですが……
 
 外は~~~流石に拙くねぇか? 知らないオジさんやらお兄さんがいっぱい居るみたいですよ?
 
 寝殿の正面広場前の池付近が、行幸の余興の実施場所だって、つい先程聞いたばっかりですから。
 
 
「駄…目?」
 
 向こうは怖い人がいっぱい居ますからねぇ……。
 
「流石に今日は拙いかと…。まぁちょっと変わった物を用意してきましたので、それで我慢して欲しいのですが?」
 
「なに…?」
 
 
 ジャーン!! 『紙芝居』
 
 絵に凝った渾身の力作です。ちょっと凝りすぎて枚数が少ないけど……。
 
 あっ、宮さま! これ水飴です。舐めながら見ていてください。
 
 さぁさぁ、寄ってらしゃい! 見てらっしゃい!
 
 暁特製の紙芝居『桃太郎』が始まるよ!!
 
 
 
 
 
 むか~し、むか~し、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました………
 
 
 
 < -- 暁 お話し中 -- >
 
 
 
 鬼が島から宝を持ち帰り、幸せに暮らしましたとさ……。
 
 めでたし、めでたし。
 
 お・し・ま・い
 
 
 
 
 
「如何でしょうか? 満足して頂けましたか?」
 
 コクコクと三の宮さまが頷く。それは上々です…苦労が無駄にならずに済みました。
 
 
「暁ちゃん…次は…?」
 
 うん、どうしよう……か?
 
 良く考えたら今の桃太郎分しか、紙芝居は用意して無いのですよ。
 
 紙芝居は絵に凝った自信作だけど、絵に懲りすぎたせいで大量に作れないしね。
 
 そうだよねぇ。一話分の紙芝居じゃぁ、いいとこ15分位しか間が持たないよね。
 
「「……………」」
 
 さて、困ったぞ……。
 
 
「暁ちゃん。あのね「ダメです!」…まだ…何も」
 
 いや言わなくても、何となく分かるから!
 
「今日は父上から『大人しく遊ぶように!』と言われているのです…勘弁してください」
 
 
(ジーー)
 
「いや、あのね? お願い…そんな目で見ないで」
 
 
(ジーーーー)
 
「だから、その……」
 
 
(ジーーーーーー)
 
「……分かりました。但し! やはり庭に出るのは拙いので、以前遊んだ東側の釣殿の方に行くので良いですか?」
 
 コクリと三の宮さまが頷く。あそこなら人気の無さそうな感じですから…たぶん大丈夫な筈?
 
「付近に人が居るようだったら、今日は室内での遊びに戻しますからね!?」
 
 コクコクと三の宮さまが頷く。
 
 
 
 なるべく目立たないように、2人連立って院の東側へ向けて移動する。
 
 自分は兎も角、女三の宮さまを人目に晒す訳には行きませんから慎重に移動です。
 
 自分の家を抜け出す時に培った技能が、陽の目を見ることになるとは……余り嬉しくないですね。
 
 予想通り、今日は建物の中央~西側に人が集中している為か、全く人に会うこともなく釣殿に到着。
 
 これから此処でまったりと、魚釣りでもしようかと思っています。
 
 行幸の催しが屋敷内で行われていた場合に備えて、外で遊ぶ用の道具とかも準備しておいて良かったです。
 
 でも魚釣りとか…思いっきり自分の趣味を入れちゃったからなぁ。
 
 三の宮さまの反応が、芳しく無い可能性大なのが心配です。
 
 
 
「魚釣…り?」
 
 うん、まぁ普通はやったこと無いよね?
 
 池の魚を餌で釣り上げる……って実際にやって見せた方が早いか。
 
 早速、釣竿を準備をして、釣殿の端から釣りの仕掛けを投入しました。
 
 
 
 春先の池の辺は桜が見事に咲いており、春風に乗って花弁が時々舞っていた。
 
 時々、小鳥の鳴声が木々の間から縫うよう聞こえてくる。
 
 
 なんか癒される~~。
 
 初めからこうすれば良かったかもしれないなぁ……
 
 
 
 
 そんなゆったり流れる時間の中で、俄かに仕掛け浮きがすっと沈む。
 
 
 魚信(アタリ)キターーーー!!
 
 余り強い引きじゃ無いから小魚系ですかね?
 
 とは言っても前世で愛用した道具と違って、ナイロンの糸じゃあないから慎重に引き上げます。
 
 良し! 小ブナを確保っっ!! 大きさはメダカサイズですが幼児には手頃です。
 
 早速、用意しておいた桶の中に放します。
 
「お魚…だ」
 
 小さいフナを見詰める宮さま。間近で泳いでいる魚を見るのは初めてでしょうから、
 
 目を輝かせています。可愛らしいですね……。
 
 ど~~れ、これはもう少し良い所を見せねば!!
 
 
「また別の魚を釣りますので、その魚でも見ていてください」
 
 餌を付け替えて、再び仕掛けを投入します。
 
 
 
 
 
 
 春の穏やかな日差しの中、釣り糸を垂れる……
 
 ちょこんと座って、後ろで桶を飽きずに眺めている三の宮さま。
 
 なんか平和だ~~。
 
 
 このまま太公望のように、一日中釣り糸を垂れて、ぼーーーっとして居るのも良いかもしれない。
 
 もう……此のまま魚釣りで本日の業務は終了っぽいですね。
 
 
 
 
 
 そんな穏やかに流れる時間の中、仕掛け浮きが再び沈む。
 
 魚信(アタリ)キターーーー!!  って、何!? この強い引き!!
 
 あっ! 跳ねた!? 2尺級の野鯉だ!!
 
 
 
 超大物、キターーーー!!!!!
 
 オィイイ!!! こんな大物、前世を含めて掛かったこと無いぞ!!
 
 相手は如何見ても、今の自分の身長の2/3以上はある大きさです。
 
 絶対に持ち上がりません!!
 
 いや、その前に…… 引き摺り込まれるぅぅ!!!
 
 
 ―― どっぽ~~~~ん!!
 
 
「暁ちゃん!! 誰か! 誰かーー!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 迫り来る水面を見ながら、前世を含めて人生の記憶が走馬灯の様に蘇る。
 
 『何時か自分を引き摺るような大物を釣ってみたいよ!』
 
 前世時代の子供の頃、父に連れられて一緒に釣りに行った妹に良く言っていたっけ?
 
 よりによって、こんな時に願いを叶えるなんて……神様のバカヤロー!!
 
 
 
 
 
 
(暁日記:第11巻 「池中行幸」より抜粋)
 
 
 
■■
 
 
 
 
  一方、詩吟の余興を行っている現場では ―――
 
 
 少し前に朱雀院の東の方で発生した騒動の様子が、ジワジワと伝わり始めていた。
 
 (はぁ……。暁、本当にまた何かやらかしたのか――)
 
 学生達の中でただ1人、夕霧のみが平静を保っている。
 
 それは騒ぎを起こした張本人から、事前の忠告が有った為であろうか?
 
 何れにせよ彼の詩文の作成は、他の学生達よりも遥かに順調であった。
 
 
 (場所が場所だけにかなり怒られるだろうけど、偶には頭を冷やすのも良い薬だね……)
 
 
 …
 
 ……
 
 
『あたま所か全身を冷やす羽目になっているとは……夢にも思い付かない夕霧であった』
 
 12話に続く…… (声:キートン山田)
 
 
 
 
 
 
 
 
 

あとがき:
 
 朱雀院の行幸編の2話目でした。
 休みが1日ずれた……。まぁ代休貰えただけマシか?
 そして昨日Upを忘れて寝落ち……。疲れているなぁ。
 明日から出張行って来ます。週末に体力残っているだろうか?
 
 
 本編の「どっぽ~ん」事件、実は作者の幼少時の実体験だったりして。
 (暫く竿を握るのが軽くトラウマになった)
 
 
 今回は感想にあった質問の回答などを書いてみたり…
 
  >「半生」表記の件
  現在作者の頭の中の構想では、原作物語の時系列で言うと、
  ~第41帖「雲隠」までしか予定されておりません。
  従って構想中での最終話では、暁君の年齢が22才頃になる為、
  半生という表現にしました。
  「宇治十帖」編は完結できたら、どうするか考えます。
  完結出来るとは限らんし……。(オイ)


  >乳兄弟は居るの?
  設定上は居ますが、登場させる機会が……。
  同じ歳の『小春』呼ばれる女の子で、半年ほど早く生まれたお姉さんです。
  子煩悩な紫の上が、自分自身で暁君を育てている設定なので、乳母の出番が殆どない上に
  まだ相手が普通の4歳児なので絡ませにくい……。
  将来、側使えの待女か女房にでもと考えていますが、でも出番有るかな……?
  出番が無いかもしれないので、存在だけでも前もって公表してみました。


  この他にも質問らしき物が有りますが、本編のネタとの絡みから回答は簡便してください。
  (無視した訳じゃないですよ……)
 
 
(了)



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