大破壊により工業施設等が軒並み破壊、ないし活動停止した事により。
現在においての技術水準はかつてと比べる必要もないほどに落ち込んでしまっている。
しかし、それでも簡単な構造の武器や。弾薬の製造自体は可能になってきており。
かつての技術で作り出された兵器や装備も、資材さえあれば修理は可能であった。
荒れ果てた世界に転生(う)まれたけど、私は元気です 05話
『装備って大事だよね』
ハスキー、と名付けたシベリアンハスキータイプのポチを伴い、アルトがアサノ=ガワの町に帰還してから翌日。
研究所跡にて拾った戦利品の一部を確保し、残りを売り払う事で一時的であるが小金持ちとなったアルトは。
最寄の武器屋の陳列棚に並ぶとある銃をじぃっと眺めていた。
少女の隣でハスキーが伏せている事から、かなり長い時間そこを動いてない事が見て取れる。
当初の目的は、まとまったお金が入ったので5m先はもう当たらないようなサイドアームである小型拳銃の買い替えと。
愛用のボルトアクション式ライフルと拾ったSMG…MP5の整備。
そして、ハスキーと名付けた。大柄な体格のポチが見に纏える防具の調達であった。が。
「うはぁ…いいなぁ……スコープ、暗視装置…更にバイポッドまでついてる…」
まるで、大破壊からさらに遡った昔のショーウィンドウに飾られたトランペットを見る少年のように。
大破壊前に製造されたセミオート狙撃銃、ドラグノフを目を輝かせて食い入るように見つめる少女。
チラホラと店内にいる他の客も、そんな姿の少女に軽く引いているのかその周辺には近付こうとしていなかった。
「…おい嬢ちゃん、見るだけなら帰ってくれ」
そんな状況を見咎め、逡巡しつつも声をかける店主。
その声に我に返ったのか、少女は店主へ謝り本来の目的のために店主にハスキーを伴って近付く。時折ドラグノフをチラチラと見ながら。
「おじさん、コレとコレのメンテナンスお願い。後、9mmパラベラム弾使ってる拳銃とこの子が装備できそうな防具ある?」
ゴト、と音を立てつつカウンタテーブルにライフルとMP5を乗せ。隣でお座りをしているハスキーを撫でながら尋ねるアルト。
「おうよ、防具はともかく拳銃はあるが…そいつはシングルショットできるヤツじゃないか。拳銃は要らんと思うがね?」
「まぁね。だけど、咄嗟に抜けて構えれる銃があると安心だし」
「そうかい、まぁ幾つか持ってくるから待ってろ」
ライフルとMP5を手に持ち奥へ引っ込む店主。
その間少女は屈み、ハスキーの顎下背中脇腹撫で回し。昨晩洗ったことでフカフカとなったその毛皮を堪能。
ハスキーは口を半開きにして舌をだらんと垂らし、お座りの姿勢のままなすがままにモフられ。やがてごろんと店の床で横になりお腹をアルトに見せる。
その動きに気を良くしたのか、アルトはお腹の柔らかな毛を更に撫で回し…。
「…おい嬢ちゃん帰って来い」
幾つかの箱を奥から持ってきた店主に、呆れた口調で声をかけられた。
(Side:アルト)
ライフルとMP5の2丁を預け整備料金前払い、22口径の豆鉄砲を売り払いM92Fベレッタを購入。
後、かなり値が張ったけど。ハスキー君用にボディアーマーを加工して作られるポチジャケットを買ってあげました。
足りなくなってきた煙幕手榴弾と手榴弾も買い足して、買い物終了。
その足で、とある場所…街の修理工場へと向かう。
メタルマックスをやってた時のイメージだとクルマ直したり改造したりなイメージが強い修理工場。
しかし、駆動系やら制御系やら電子系が詰まったクルマを修理できると言う事はしっかりとした技術があるわけで。
「こんにちはー」
修理工場に挨拶しつつ、ハスキー君を伴って中へ入る。
そこは、職人気質なメカニックさんの怒号や。クルマ修理による金属音等が響くある意味で戦場でした。
誰も気付いてないので、息を吸い込み。
「こんにちはぁ!」
元気良く挨拶、そうする事でようやく1人のメカニックに気付いてもらえた。
丁度良くと言うか何と言うか、驚愕の騾馬亭の常連さんの1人でした。
「なんだアルトちゃんじゃないか、こんな所に何しにきたんだい?」
「ちょっとお願いがありまして…発電機の出張修理ってお願いできますか?」
実は我が家には発電機がある。否、あった。
物心ついた時には既に動きを止めており長い間ウンともスンとも言っていなかったが。
「出来るけど…直せるかどうかは見てみないとわからないぜ?」
「それでもいいです」
「そうか、ならお安い御用だぜ」
任せておけ、と頼もしい笑みを常連さんが浮かべ。見習いらしい若いメカニックさんを2人呼びつけると。
発電機の修理パーツを見習いさん達に手早く用意させ始めました…頑張れ見習いさん。発端はボクだけど。
閑話休題
準備が完了し出発、とはいえ同じ町の中なのでほどなく到着。
家の隅っこに置かれていた発電機をメカニックさん達は外へ運び出し、修理を開始。
「うわ、こいつぁヒデェ!」
「ですよねー」
常連メカニックさんが思わずあげた声に同意するボク。
そりゃ10年以上動いてなかった発電機が真っ当な状態であるわけもなく。
「直せない事はないけど、結構かかりそうだな」
「…ちなみに、おいくらですか?」
「1000G」
おもむろに財布の中を確認する。
色々と買ったりお金払ったりした結果、臨時収入残金1000G。
ぴったりカツカツでした。ちなみに普段のお仕事の報酬とかの生活費は別途しっかりとっておいてあるので使いきっても安心です
ともあれお金はあるので修理をお願いすることに。
コレが動くようになれば…箱だけの冷蔵庫も動くようになるからかなり楽になるし。
何より、研究所跡で拾った電熱調理器やコーヒーメイカーが使えるようになる。
他にも電熱調理器対応の圧力釜等もあるので、電源が手に入ればかなり文明的生活に近づける…はず。
(続く)
【あとがき】
やっと5話お送りできました、正直難産でした。
そして、主人公にとっては電子部品や銃よりも。圧力釜の方が優先度が高かったと言うお話です。
なお主人公は一応登録こそしてあるものの、BSコントローラは持ってない設定です。
なので、今週のターゲットとかやっつけたら証拠品を一々ハンターオフィスへ持っていってたりします。きっと。
感想にてご指摘を受け、ライフルについて修正。
物凄いうっかりでした…ご指摘していただき、ありがとうございました。