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No.12938の一覧
[0] 【ネタ】鬼畜王じゃないランス【R‐15】[Shinji](2009/10/24 19:30)
[1] 鬼畜王じゃないランス2[Shinji](2009/10/27 07:37)
[2] 鬼畜王じゃないランス3[Shinji](2009/10/29 23:40)
[3] 鬼畜王じゃないランス4[Shinji](2010/06/20 06:32)
[4] 鬼畜王じゃないランス5[Shinji](2010/01/13 18:24)
[5] 鬼畜王じゃないランス6[Shinji](2010/06/20 06:24)
[6] 鬼畜王じゃないランス7[Shinji](2010/06/20 14:56)
[7] 鬼畜王じゃないランス8[Shinji](2010/09/03 02:55)
[8] 鬼畜王じゃないランス9[Shinji](2010/08/31 02:01)
[9] 鬼畜王じゃないランス10[Shinji](2011/11/18 05:32)
[10] 鬼畜王じゃないランス11[Shinji](2011/08/24 15:07)
[11] 鬼畜王じゃないランス12[Shinji](2011/11/16 01:02)
[12] 鬼畜王じゃないランス13[Shinji](2011/11/20 06:55)
[13] 鬼畜王じゃないランス14[Shinji](2011/12/10 03:59)
[14] 鬼畜王じゃないランス15[Shinji](2011/12/15 06:23)
[15] 鬼畜王じゃないランス16[Shinji](2012/02/23 05:10)
[16] 鬼畜王じゃないランス17[Shinji](2012/03/20 01:49)
[17] 鬼畜王じゃないランス18[Shinji](2012/07/10 21:32)
[18] 鬼畜王じゃないランス19[Shinji](2012/12/04 20:16)
[19] 鬼畜王じゃないランス20[Shinji](2013/04/29 03:22)
[20] 鬼畜王じゃないランス21[Shinji](2013/05/24 16:48)
[21] 鬼畜王じゃないランス22[shinji](2014/02/01 21:23)
[22] 鬼畜王じゃないランス23[shinji](2014/03/15 03:29)
[23] 鬼畜王じゃないランス24[shinji](2014/03/23 04:03)
[24] 鬼畜王じゃないランス25[shinji](2014/06/20 03:25)
[25] 鬼畜王じゃないランス26[shinji](2014/09/16 22:26)
[26] 鬼畜王じゃないランス27(2015/04/14 01:34)[shinji](2015/04/16 21:04)
[27] 鬼畜王じゃないランス28[shinji](2015/05/07 13:41)
[28] 登場人物紹介[Shinji](2011/12/20 10:52)
[30] 別に読まなくても良いキャラクター補足[Shinji](2015/04/18 00:57)
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[12938] 鬼畜王じゃないランス8
Name: Shinji◆9fccc648 ID:1391bf9d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/09/03 02:55
鬼畜王じゃないランス8




=LP03年05月2週目=




――――リーザス城・謁見の間。


「ではキンケード。オマエが自分の仕事をちゃんと理解しているか、今後 見させて貰うぞ?」

「お、お言葉ですが……どの様な意味なので?」

「つまり貰った給料分は働いてくれって事だ。魔人も現れたし、くれぐれも無理するなよ?」

「!? そう言う事ならば喜んで勤めさせて頂きましょう」

「宜しく頼む」

「それではランス王。コレにて失礼させて頂きますが、今後とも私めを お見知り置きを!」

「あァ」

「(若輩だが思ったよりも話せる王だったな……どうやら私の"遣り方"を理解している様だ)」


今現在の俺はリーザス王としての"仕事"である、面会を求める者達との謁見を行っていた。

実際のランスが行っていたかは知らんが、マリスが王としての勤めだと言っていたので受諾。

よって午前と午後に2時間づつ機会を設け……つい先程は青の副将・キンケードと面会していた。

彼は表向きでは仕事をキッチリこなすが、上に気付かれない範囲で横着する事を考えてる奴だ。

勿論メナドが資金を横領した時みたく目立つ様な事はせず、小物と言える程度の範囲だろうが……

故に原作でキンケードが呟いていた様な事を言うと、彼は何処かしら安心した様に去って行った。

恐らく遠まわしに"適当に頑張れ"みたく言った事から、俺が"話せる相手"だと捉えてくれたのかな?

ともかく初めて会う相手には原作の知識を活かして、こんなカンジで第一印象を良くしていこう。


「ふぅ……マリス。これで全員か?」

「はい。お疲れ様でしたランス王」

「流石に4時間にもなるとアレだな」

「先日の魔人の一件で周囲の目が変わった様ですからね」

「そう考えればアイツの奇襲は都合が良かったな」

「抗えなかった事を考えるとゾッとしましたが」

「同意。だが旨くいった事を悪く考えても仕方ないだろ?」

「ソレもそうですね。失言でした」


さて置き。キンケードを最後に午前の謁見が終了したので、俺は傍に居るマリスに事実を確認した。

先程はAM・PMで2時間づつと述べたが、今日は土曜なので午前中に4時間 設けていたりする。

それ以前に城を空ける期間が長かったので、最近は長い時間 勤めないとダメだったとも言うが……

マリスの言う様やはり魔人を撃退できた事が大きく、手の平を返して面会を求める貴族達が増えた。

つまりキンケードは将軍なので別だが、最近その連中らとの謁見でスケジュールが埋まってたのさ。

されど謁見ダケでなく(俺自身の)鍛錬や、魔物に備えて どの軍を何処の街に配置するかと言う、
軍事関連 全般……また予算の流れ等についても興味が有ったので ちょくちょく口を挟んでおり、
加えてリアを始めとする人物との交流も有り、それなりに忙しい時を過ごして今に至っている。

されど土曜日の午後と日曜はマリスが意図的に俺のスケジュールを空けて置いて下さっているので、
やっと"仕事"から解放されたと言う意味合いを兼ねて、溜息を付きつつ俺は王座に背を預けた。

いや……コレから起こると思われる"厄介事"に対しての不安から来るモノとも言えるかも知れない。

またマリスが俺のスケジュールを調節してくれているにせよ、今後 何度も原作のイベント次第で、
キャンセルする事になってしまうと思うので、早くも申し訳ないと言う気持ちも含まれている。


「それよりラジールの件については どうなっている?」

「予定通りであれば、そろそろ白の軍が街に到着する頃ですね」

「だったら伝令待ちになるか……」

「ですが最近リーザスが好条件で自由都市を吸収していると言う"噂"が広まっている様ですし、
 ラジールの都市長が余程 愚かな場合を除いて、エクス将軍が旨く交渉なされるかと思います」

「その"噂"を広めたのはリーザスってか?」

「否定はしません」

「じゃあ、成功 前提で今後の予定を考えるとするかなァ」

「はい。ラジールと合併し白の軍を駐屯させて置けばカスタムとアイスの街への道が開けます。
 されど軍を帰還させるか否かの選択肢も有りますし、進路を変えMランドを目指す事も可能かと。
 また伝達に若干 遅れが出る可能性もありますが、将軍と副将の軍を分ける手段も有ります」

「ふむ」

「故に私達では判断しかねるので、ランス王の指示を仰げればと」

「マリスは どうするのが妥当だと思う?」

「今後ヘルマンや魔物との交戦を考え戦力の増強を図るのであれば、やはりカスタムが適所かと」

「やっぱりそうか」

「都市長の方の事を考えれば合併はともかく"彼女達"の雇用となると容易くは無いでしょうが……」

「だったら俺……様が出向く必要が有りそうだな」

「ランス王 自らですか? しかし――――」

「うむ。一部の奴にはトコトン嫌われてるし、逆効果の可能性も有る」

「とは言えランス王は以前カスタムを……それに彼女達とは以前も共に……」

「戦った"仲間"だからな。初対面になるエクスよりはマシな結果が出し易いだろ」

「それでは来週の頭には発たれますか?」

「気が早いな」

「善は急げと言いますから」

「立場的なモノも有るしな」

「そう言う事です」

「だが少し時間をくれ。魔王の事も有るしな」

「確かに外せませんね」


――――少なくとも魔人サテラが来るまではハウゼルの存在から此処を留守に出来ないのだ。


「まァ、伝令が来る迄に答えを出せなければエクス達にはラジールに留まって貰う様 言ってくれ」

「畏まりました」

「ハァ。軍は色々な箇所に展開させざるを得ない羽目になったし、皆が揃うのは先になりそうだな」

「私も今後 更に忙しくなる気が否めません」

「これも"リトルプリンセス"の存在の所為ってか……」

「一体 遥か西では何が起こっているのでしょう?」

「少なくともヘルマンやゼスを どうにかしないと考えるダケ無駄だと思うぞ」

「それもそうですね」


……此処で気付く人も居るだろうが、当然 原作と違い物事は一週間単位で進むワケでは無い。

例えば原作ではリーザス城から一瞬で軍を魔人領に移す事が出来たが、とんでもなく遠いので無理。

同じ意味でランスが一週間単位で世界を駆け回りイベントを消化する事も出来たが、勿論 不可能。

またターン終了後に敵が侵攻してきた際は好きな4部隊で迎え撃てたけど、無論 選択は限られる。

マリスと話していた内容の通り、今リーザス城が襲われてもエクス・ハウレーンの軍は不在なのだ。

よってリーザスの侵攻も軍を動かす事で初めて可能になるので、良く考えて指示を出す必要が有る。

多々やった同時攻略など有り得ない。よって他国と隣接する砦はしっかり守りを固めるのが定石だ。

故にソレだけでコルドバ・キンケード・加藤の軍を守りに使っている為、反乱が無くて助かったな。

それに敵の侵攻も同じ条件なので、ロードに頼っていた"あの頃"よりは余程 対策を立て易い筈だ。

んで極め付けは俺が"未来"を知っている事。その恩恵は計り知れないが油断は禁物……人間は脆い。

少なくともサイゼルの傷を今の自分が食らったら楽に死ねる自信が有る。更にレベルを上げねばな。

さて置き。今みたく魔人の名前が脳内に浮かんだ事から俺は話題を変える事にし、表情を改めた。


「ところでサイゼルに関しては大丈夫なんだよな?」

「はい。魔人の"正体"については公にしていませんので、彼女を知る者は城の人間のみです」

「今更だが相変わらず手際が良かったんだな」

「御命令ですから」

「あ~ッ、すまん……野暮な事を言った」

「お構いなく」


――――考えてみればリアの"無視作戦"に置いても、あっという間に全員に広めてたしな。


「それで当たり前の様に城外に出しちまってる事に関しては?」

「リーザスの城下の賑わいは大陸全体で見ても中々のモノですから多少 目立つ程度ですし、
 常にランス王も目付け役として同伴されておりますので特に問題は無いかと思われます」

「そうか(……思えば敵対心の無いハニーやらモンスターやら普通にウロウロしてるしな)」

「また城内ではサイゼル殿は与えられた部屋と謁見の間 以外の場所には殆ど行かれないので、
 兵士や文官に絡んだと言う話は聞きませんし、担当の給仕からも不満の声は出ておりません」

「ほほ~、だったら何一つ心配事は無いって事か?」

「いえ。只 問題が起きていないダケで有り、やはり魔人を城内に留めるのは皆 抵抗が有る様です」

「魔人どころか魔王が居るんだがな~」

「来水殿の姿を考えれば幾らでも誤魔化しは効きますが、サイゼル殿は御存知の通りですからね」

「ましてや敵としてリーザスを襲ってるから、逆に怖くて近付けないダケなのかもしれんな」

「そうですね……今はランス王の命と言う事から様子を見てくれているに過ぎないでしょう」


――――原作でのサテラとメガラスは"仲間"として来たから、容易く受け入れられたと言えるしな。


「だったら早いウチに警戒を解いて貰うべきか?」

「はい。共に戦って頂く時には、流石に公にも公表する必要が有りますから」

「んっ? それに関しては問題無いぞ」

「……ッ……理由を御聞きしても宜しいでしょうか?」

「サイゼルの様に魔王を狙う魔人も居れば、守ろうとする魔人も居るって事だ」

「では"その魔人"と共に仲間だと言う事を広めてしまえば……」

「世間的には何も問題無いだろ?」

「た、確かにそうですね(……でも、何時の話なのかしら?)」

「城内での蟠りについては、放って置いても自然と無くなるんじゃないか?」

「そうでしょうか?」

「何だカンダでアイツ。生意気で短気で魔人な事を除けば、単純で泣き虫で可愛いトコも有るしな」

「ふふっ……要は深く考えない方が良いと言う事ですね」

「そう言う事だ」

「ランス~ッ!」

「あら? 噂をすれば……」


此処でマリスとの会話の区切りがつきそうだった時、サイゼルが浮遊しながら謁見の間に来た。

キンケードが去った際、謁見時間 終了の数分前だったから……ひょっとして見計らってたのか?

まァどっちでも良いけど、彼女が現れた事から周囲の親衛隊達は警戒して……いなかったりする。

何かの合間にコイツ(サイゼル)が此処に やって来るのは、既に一週間近くも続いているのだから。

……と……そんな事を思っていると、サイゼルは"スィーッ"と此方に近付いてきて俺と接触する。


≪――――ボフッ≫


「おわッ!」

「ねェねェランス~。あたし お腹空いちゃったから、早くゴハン食べに行こうよ~ッ」

「いや飯ってオマエ……食事ならメイドが持って来てくれるって何度も言ってるだろ?」

「でもソレじゃ~好きなモノを選べないじゃないッ。だから あたしは街で食べたいの!」

「またかよ。結構 大変なんだぞ? オマエの好みに合う上にトイレや席が広い店探すの」

「だったら またジックリ探せば良いじゃない。それはソレで退屈しないし」

「ともかく離れてくれませんかねェ?」

「やだ」

「おいマリス、助けてくれ」

「それではランス王。私は職務が有りますので」

「聞けよ人の話ッ!」

「ホラ~ッ、アイツが来る前に早く行こうよ~?」


俺の腕に両手を絡めてくるサイゼル……少しの間に妙に懐かれてしまったが何故なんだろう?

思えば彼女を倒した後の事を振り返ってみると、目を覚ました直後は敵対心を剥き出しにしてた。

だが直ぐ俺がサイゼルが呟いた"ハウゼル"と言う存在について聞いてみると、案の定 妹と判明。

そんな"妹"に興味が出た素振りをして、どんな娘か聞いてみると……サイゼルの話は数時間に及ぶ。

ハウゼルが真面目で優秀で良い娘な為、いかに自分に風当たりが来て苦労しているかを飽きもせず。

よって知ってはいたが、マジでサイゼルは妹が気に入らないからケイブリス側に付いたのだと痛感。

恐らく彼女に取って魔王の身柄については二の次なんだろう。姉妹喧嘩も程々にして欲しいですね。

さて置き。サイゼルの長々とした単純な話が終わると、俺は呆れつつも考えていた台詞を告げた。


『――――でも、お前は そんな妹が好きなんだろ?』


ソレを聞いた氷の魔人は10分間 俯いたと思うと呟いたり頭を抱えたりした末、肯定するに至る。

カッとなって劣等感を抱いていたハウゼルと敵対してしまったが、素直に成れなかったダケらしい。

よって頭をクシャクシャとしつつ仲直りする事を促すと……嫌われてると思うから嫌だとヌカす。

その為 仕方なく"その時"が来れば仲介してやると根拠も無く言うと、踵を返して前向きに成った。


『そ、そそそそれって本当!? ならホトボリが冷めるまでリーザスに居てやっても良いわよ!!
 えっ? そんな簡単に決めて良いのかって……ダメに決まってんじゃないッ! 当たり前でしょ!?
 嫌だけどハウゼルの為に仕方無く居てアゲるのッ、だから戦いでも何でも命令しなさいよッ!』


何と言うツンデレ。正直ハウゼルの事を傾聴したダケで こうも楽に説得出来るとは予想外だった。

そんな訳で彼女はメイド付きの個室を与えられ、一応 武将となったワケだが……何故 懐かれた?

生活し易い様に色々と暇潰しの道具を届けてやったり気分転換に城下町に連れて行きはしたが……

フラグ(?)を立てた自覚が無いので困りモノだ。普通に可愛いレベルなので嬉しいのは否めないが。


『(……今迄……此処まで あたしの"話"を聞いてくれた奴ってコイツが始めてかもしれない……
 どいつもコイツも只の姉妹喧嘩だろって馬鹿にして……でもランスは真剣に耳を傾けてくれた)』


ともかく。ハッキリとした原因は謎なんだが、以上がサイゼルが俺を妙に慕う事となった経緯だ。

そんな彼女は未だに俺の腕を引っ張りながら外出を促して来ており、普通に力が強いので抗えない。

故に"今回"も仕方なく素直に彼女とのデートを楽しもうかな~? ……とか思う羽目になった矢先。


「(だからハウゼルの好みって あたしと殆ど合うし、男(王様)捕まえたって驚かせて やろっと!)」

「あぁ~~ーーッ!!!!」

「おっ?」

「げげッ」

「ま、また来てるの~!? 早くダーリンから離れなさいよォ!」

「いやリア君 違うんだ。コレは只 一緒に飯を――――」

「何よ五月蝿いわねェ~、こんなの早いモン勝ちでしょ~?」

「おまっ!?」

「何言ってるのよぉッ! そんな事 奥さんのリアが居るのに許される筈 無いじゃな~い!!」

「でもランスが良いなら話は別よねェ?」

「えっ? う~ん。理論的には そうなる気がするが……ってオマ」

「ホラホラッ! だったらアンタの出る幕は無いでしょ?」

「……(面白そうだから黙って置こう)」

「う、うぐぅうう~っ!! とにかく離れなさ――――うきゃんっ!?」


≪――――ビタンッ!≫


俺と同じく貴族 連中との関わり的な仕事を終わらせて来たと思われるリアが現れ大声を上げた。

ソレに対し俺は"あちゃ~"としか思わなかったが、サイゼルは見るからに鬱陶しそうな表情をする。

そんな魔人の挑発に乗って駆け出そうとしたリアだったが、ドレス姿なので僅かな段差でコケた。

だが旦那に対しての執着 故にか直ぐ立ち上がるとサイゼルに掴み掛かり、互いに口を伸ばし合う。

しかしながら。圧倒的な力の差が有るので、リアは必死だがサイゼルは状況を楽しんでいる様子だ。

……とは言え今回に関してはサイゼルに非があるので、軽くゲンコツでも くれてやるかと考える。


「おい2人とも。いい加減に仲良く……」

「ランス王」

「んおっ? どうしたマリス。仕事が有るんじゃなかったのか?」

「その筈でしたが、急遽"魔王"との面会を求める者達が参りまして」

「何だと? ……ッ……まさか!?」

『魔人だろうな』

「その通りです」

「!? そ、そんなーっ! また魔人なんて ど~するのよォダーリン!!」

「(ひょっとして、ホーネット派の誰かが……?)」

「こらカオスェ……お前 分かってた筈なのに何で言わなかったッ?」

『普通に空気を読んでたダケよ? 儂 気が利くし』

「自分で言うな!」

「どうされますか? ランス王」

「参ったな(……このタイミングで来るとは思わなかったぞ)」

『それ以前に もう来ている様だが?』

「!?!?」×4


≪――――ザッ≫


カオスの言葉に驚いて謁見の間の入り口に視線を移すと、3体の人型をした者達が姿を現す!!

一人目は少女の姿をしている赤い長髪の魔人・サテラ。元人間で多感症だと言う設定が印象深い。

二人目は魔人では無くサテラのガーディアンの"シーザー"で、軽く2メートル半は有りそうな巨体。

そして3人目は元ホルスの白い魔人・メガラス。四千歳を優に超え、体重は僅か28キロだった筈。

また世界最速の魔人と言われており……以上が、予定外とは言え俺が訪れるのを待っていた連中だ。

とは言えサテラとメガラスはともかくシーザーの威圧感が怖く、どう対応するか迷っていると……


「んっ? あッ……お前!! サイゼルじゃないかッ! 何で"こんな所"に居るんだ!?」

「え!? そ、それは~」

「リーザスに取り入ってリトルプリンセス様を浚うつもりか!? そうはさせないぞッ!」

「おいサテラ? 先ずは落ち着いて話を――――」

「サイゼル!! ランスは巧く騙せた様だけど、サテラの目は誤魔化せないからな!?」

「ち、ちょっと待ってよッ! あたしは もう、そんなつもりは……!!」

「アンタの所為で どれだけハウゼルが悲しんでるか……良いか? 其処を動くんじゃないぞ!」


先程からオロオロとしていたサイゼルに気付いたサテラが、唐突に彼女に向かって怒鳴り散らす!

対してサイゼルが縮こまっていると、サテラは険しい表情をしながらズンズンと距離を詰めてくる。

すると氷の魔人(笑)は俺の背中に隠れようと動きやがるので、仕方なく覚悟を決めて足を踏み出す。


≪――――コツッ≫


「その辺に しとけよ。それと久し振りだな」

「あ、あァ……久し振り……って違うだろッ! サテラの邪魔をするのか!? ランス!!」

「そうとも言うな」

「!? だったらリーザスの王とて容赦はしないぞッ」

「だが、その前にオマエは何か勘違いしてるぞ?」

「何だと?」

「実を言うと……コイツの目的はな? お前たちと"同じ"なんだ」

「なっ!?」

「妹とは喧嘩中だけど、やっぱケイブリスは気に入らないからリトルプリンセスの護衛をするとさ」

「……ッ……サイゼル。本当なのか?」

「ぅえ!? そ、そうそうッ。ハウゼルとはホトボリが冷めたら仲直りしてアゲようかなって」

「でもソレはサテラ達の仕事だ!! けどリトルプリンセス様には直ぐに戻って頂くッ!
 だからサイゼルは護衛なんかせず、早くホーネット様の所へ戻れば良いじゃないか!」

「そうはいかんな」

「ランス!?」

「生憎 魔人は貴重な戦力だ。リーザスの為にも易々 手放す訳にはいかん」

「クッ……サイゼルはソレで良いのか?」

「えっと、癪だけど仕方ないかなって。でも"こっち"の方が色々と面白いし食べ物も美味しいよ?」

「…………お前も城下で間食しなければ…………謁見の刻に間に合ったモノを…………」

「め、メガラス!?」

「なんだ そうだったのか? だったら"お互い様"じゃないか」

「うぐぐっ……そ、それよりも! サイゼルが居るならサテラ達の目的も分かっているだろう!?」

「勿論だ。おォ~いッ、かなみ!!」


≪――――っ≫


「何か御用でしょうか?」

「"来水 美樹"を大至急 此処に連れて来い」

「御意」


≪――――っ≫


「そう言う訳だから少し此処で待っていてくれ」

「仕方が無いな……」

「お待ちの間 何かメイドに飲み物でも持って来させましょう」

「勝手にしろッ」


――――ニコやかに告げて来るマリスの言葉に、サテラは不機嫌そうに腕を組んで距離を取る。


「(ら、ランス~……ありがとね?)」

「(良いって事よ。それよりもマリス)」

「(何でしょう?)」

「(コイツが此処を襲った事は、アイツらがサイゼルを仲間と認めるまで耳に入れさせるなよ?)」

「(ソレが賢明かもしれませんね)」

「(えぇ~ッ?)」

「(ちょっとリア、絶対に言わないでよ!? チクッたら王女だろうが氷付けだからねッ!)」

「(やれやれ。ガラスの修理が済んだ後で助かったな)」


コレから数分後 来水 美樹が現れると、サテラは当然の如く彼女を"リトルプリンセス様"と呼び、
一刻も早く自分と共にホーネットの元(魔人領)に帰って"魔王"になってくれる様に強気で促した。

対して当然 美樹が躊躇しているとサテラは、彼女が魔王に成る事を拒み逃げ続けている事で、
ドレだけ皆が苦労してるかを若干 興奮しつつアピールし出し、相手を涙目にさせてしまう。

……とは言え勝手に魔王として召喚された美樹も冗談ではなく、サテラの言葉を真っ向から否定。

ソレによりサテラが更にヒートアップすると思われた矢先。メガラスが仲介に入り美樹を説得する。

要はリトルプリンセス様 否"美樹様"が魔王に成る事を拒むので有れば"その意思"を尊重するので、
いつか気が変わって魔人領に戻って頂ける迄 不躾ながら護衛をさせて欲しいと切に申し出たのだ。

其処まで言われると流石に美樹は彼等を追い返せず、メガラスの言葉に首を縦に振るに至り、
今後 新たに2体の魔人がリトルプリンセスの護衛としてリーザスに留まる事に成ったのだった。

ちなみに以下の遣り取りは次の日 偶然 一人で廊下を歩いてた時サテラと鉢合わせた時の会話だ。


「ともかくサテラ。サイゼルとは仲良くしろよ?」

「言われなくても分かってる。昨日のサテラは少し苛立っていた みたいだ」

「まァ西の事を考えると早く連れ戻したい気持ちも察せるけどな」

「だけどアレはホーネット様の命に背いていた。反省しなければ」

「何だ思ったよりも素直なヤツだったんだな」

「き、貴様に測れる心など持っていないッ!」

『サテラ サマ、タオシマスカ?』

「何故そうなる……」

「止しなさいシーザー。サテラ達は喧嘩をしに来たワケじゃないんだ」

『ハイ。サテラ サマ』

「まァ早いうちに"カミーラ"とか言うヤツのアジトを叩いちまうに限るな」

「簡単に言うがランス……アイツは一筋縄でいく相手じゃないぞ?」

「百も承知だ。だから もっと鍛えないとな」

「ふん。精々ムダに足掻くが良いさ……それよりもランスッ」

「何だ?」

「今は美樹様の護衛をしてるけど、事が済めば必ずサテラが殺してやるからな!?」

「お前が俺様を殺るだと?」

「そうッ! サテラと強いガーディアンがだ!!」

「おォ、怖い怖い。だったら頑張って粘土コネとけよ?」


≪――――ぽんっ≫


「ひゃああああぁぁぁぁんっ!!!!」

「!? 逝った……だと?」

『キサマ、サテラ サマ ニ ナニヲスル!?』

「頭を撫でたダケですが何か?」

「……クッ……ふ、不意打ちとは卑怯だぞ……」

「そんな つもりは微塵にも無いが、ガーディアン云々よりソレを治した方が良いんじゃないか?」

「よ、余計な お世話だッ! 懲らしめろシーザー!!」

『ハイ。サテラ サマ』

「ちょっ!? さっきと言ってる事が違うじゃないかッ!」

「問答無用だ!!」

「だが断る」


≪――――パチンッ≫


「煙幕!!」

「GJかなみ……と言う訳で勝負は暫く お預けだサテラ!」

「なっ!? 巫山戯るなランスッ、逃げるなーっ!」




……




…………




=LP03年05月3週目=




サテラとメガラスが仲間として加入した次の週の冒頭。俺は予定通り午後の謁見を行っていた。

結局マリスに対して今週 頭にカスタムに行く件での決断は伝える事が出来ず、今に至っている。

さて置き考えるのは やはりサテラの事。原作は緑の軍を盾に戦っているが、ちょっと無理が有る。

だから もし戦うのであればサテラ&シーザーを俺一人で倒す必要が有り普通に勝てる気がしない。

レベル51じゃシーザーとのタイマンさえ厳しいと思うので、実はサテラと会話する時は怖かった。

別にサテラを抱く気は無いので戦う必要は無いんだが、信頼を得るのは勝つ事が最も近道だろう。

それに彼女のタッグを敗れない程度では、ケイブリス軍との戦いが厳しくのは間違い無い筈だしな。

よって2人の魔人が加入し次は健太郎の覚醒を待つ今、そろそろ次の冒険に出発する事を考えよう。

健太郎の復活を待ってからでも良いが、ソレが何時か定かでは無いので時間が勿体無いのである。

それで……次に攻略する迷宮としては、カスタムに隣接するデンジャラス・ホールが望ましいが、
最大5百匹の中尉ハニーの軍が出現する上に、50階にも及ぶ中級クラスのダンジョンなので、
ソレを目安に考えれば難易度が高そうな迷宮だ。駆け上がれたハイパービルよりも苦労するだろう。

そうなると頭数を揃えないと正直 短期攻略は難しい為、今迄は4人だったが後2~3人は欲しい。

其処で手に入る"幸福の指輪(経験値2倍)"も正直 喉から手が出る程 欲しい必須アイテムだし……

ならカスタムの娘達を旨く説得して仲間に入れればイケるか? でも迷宮は"もう一箇所"有ったな。

そんな事を考えつつ午前・午後 合わせて本日9人目となる貴族との謁見を終えつつ考えていると、
マリスが次の相手を招く前に人物の説明を行う。ちなみに今回もリアは職務の為 此処には居ない。


「お疲れ様でしたランス王。次の方の面会で本日は最後となります」

「ようやくだな。それで……今度は どんな相手だ?」

「報告によりますとリーザスの者では無く、身形からしてゼスの人間であると」

「ゼスって……あの魔法国家のゼスか?」

「はい」

「そりゃまた珍しいなァ」

「人数は3名。一人は大柄の男性で、残り2名は若い女性との事です」

「んなっ!?」

「キャンセルされますか? 衛兵によれば明らかに"何か"を隠している様子との話なので」

「い、いや……会おう」

「畏まりました。それでは御連れして下さい」

「ははっ!」


此処で考えても無かった展開が俺を待っていた! まだプアーの街で暴動が起きていないどころか、
ラジールで臨時徴収すら行っていないんだが……やはり原作とは色々と違う展開に成ってるな既に。

けど驚きはしたが願っても無いイベントなので、俺は期待をしつつ謁見に現れる者達を王座で待つ。

すると待つ事2~3分でマリスに指示された衛兵が、貴重な戦力となる魔法使い3名を連れて来た。

うち一人の大男は強烈な存在感を示しており……デザインはサイゼルと同様 鬼畜王に順ずる様子。

そう。身分を隠して世直しの旅をしているラグナロックアーク・スーパー・ガンジーの登場である。


≪ずぅんっ≫


「(あれがランス王……絶対的な存在とされる"魔人"を倒したと言う、人類を統べる救世主か)」

「(な、なんちゅうプレッシャーだ……こりゃ"あの時"のサイゼル以上だぞッ?)」


――――そんなゼス王+お供の仕官で、今後 更なる個人戦の充実を図る事が出来たのだった。




●レベル●
ランス   :51/無限
かなみ   :46/40(+6)
リック   :41/70
メナド   :37/46
ハウレーン :33/36
メルフェイス:43/48
レイラ   :37/52
ジュリア  :32/38
サテラ   :100/105
メガラス  :98/146
サイゼル  :87/120




●あとがき●
カスタム勢かと思ったか!? サテラだよッ! 次回はガンジーとの会話から始まる事になりそう。
スケさんカクさんは鬼畜王基準。スケさんは鬼畜王の彼女が2年経てばⅥの容姿になる気がします。
さてコレで次回どちらかがランスと共に迷宮に潜るフラグが立ちました。才能限界値が低いけど。
でもカクさんは どう考えてもランスに靡かないと思うのでスケさんかな……原作だと不幸ですし。


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