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No.12938の一覧
[0] 【ネタ】鬼畜王じゃないランス【R‐15】[Shinji](2009/10/24 19:30)
[1] 鬼畜王じゃないランス2[Shinji](2009/10/27 07:37)
[2] 鬼畜王じゃないランス3[Shinji](2009/10/29 23:40)
[3] 鬼畜王じゃないランス4[Shinji](2010/06/20 06:32)
[4] 鬼畜王じゃないランス5[Shinji](2010/01/13 18:24)
[5] 鬼畜王じゃないランス6[Shinji](2010/06/20 06:24)
[6] 鬼畜王じゃないランス7[Shinji](2010/06/20 14:56)
[7] 鬼畜王じゃないランス8[Shinji](2010/09/03 02:55)
[8] 鬼畜王じゃないランス9[Shinji](2010/08/31 02:01)
[9] 鬼畜王じゃないランス10[Shinji](2011/11/18 05:32)
[10] 鬼畜王じゃないランス11[Shinji](2011/08/24 15:07)
[11] 鬼畜王じゃないランス12[Shinji](2011/11/16 01:02)
[12] 鬼畜王じゃないランス13[Shinji](2011/11/20 06:55)
[13] 鬼畜王じゃないランス14[Shinji](2011/12/10 03:59)
[14] 鬼畜王じゃないランス15[Shinji](2011/12/15 06:23)
[15] 鬼畜王じゃないランス16[Shinji](2012/02/23 05:10)
[16] 鬼畜王じゃないランス17[Shinji](2012/03/20 01:49)
[17] 鬼畜王じゃないランス18[Shinji](2012/07/10 21:32)
[18] 鬼畜王じゃないランス19[Shinji](2012/12/04 20:16)
[19] 鬼畜王じゃないランス20[Shinji](2013/04/29 03:22)
[20] 鬼畜王じゃないランス21[Shinji](2013/05/24 16:48)
[21] 鬼畜王じゃないランス22[shinji](2014/02/01 21:23)
[22] 鬼畜王じゃないランス23[shinji](2014/03/15 03:29)
[23] 鬼畜王じゃないランス24[shinji](2014/03/23 04:03)
[24] 鬼畜王じゃないランス25[shinji](2014/06/20 03:25)
[25] 鬼畜王じゃないランス26[shinji](2014/09/16 22:26)
[26] 鬼畜王じゃないランス27(2015/04/14 01:34)[shinji](2015/04/16 21:04)
[27] 鬼畜王じゃないランス28[shinji](2015/05/07 13:41)
[28] 登場人物紹介[Shinji](2011/12/20 10:52)
[30] 別に読まなくても良いキャラクター補足[Shinji](2015/04/18 00:57)
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[12938] 鬼畜王じゃないランス11
Name: Shinji◆b97696fd ID:1391bf9d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/24 15:07
鬼畜王じゃないランス11




=LP03年06月1週目=




「さて……どうしたモンかな?」


大きなクシャミの後。俺は その場で軽く鼻をコスると、歩み始めつつ今から何をするべきか考える。

時刻は大体 夕暮れに差し掛かると言う辺り。夕食までは時間が有るし休みたい気分でも無いのだ。

そんな中途半端な状況だったが、直ぐに俺は目的を思い浮かぶ。それは予想しての通りである。

前述の通り"見当 かなみ"の健康は問題無いので、次は"ウィチタ・スケート"のフォローに移ろう。

よって狭い宿の中を軽く歩き回って探してはみたが、見つからないので俺は彼女達の部屋を訪れた。

今更だが俺以外の4人は反対意見が無かったので相室で有り、現在かなみは新たに部屋を借りている。


≪――――コンコン≫


「悪い俺だ。入っても良いか?」

「良いわよ~?」

「……えッ!?」


≪――――ガチャッ≫


「何だ漫画読んでたのか? サイゼル」

「ぷっ……あはははは!! 面白ッ!」

「聞いちゃいねえ」


ノックしたらサイゼルの声(肯定)が聞こえたので、スケベな状況では無いと判断してドアを開く。

だが若干の間を置いてメルフェイスの焦った様な声もしたのだが、開いた直後だったので遅かった。

……とは言っても悪いタイミングでは無く、先ずサイゼルはリーザスから持って来た漫画を読んでいる。

只それダケなのだが、ベッドにうつ伏せに成っているので形の良い尻が揺れており目のやり場に困った。

一方メルフェイスも無理矢理 勧められたのか、サイゼルのベッドに腰掛けて漫画を読んでいた。

2巻目を読んでいた辺り内容に夢中に成っていたのか、恐らく俺に気付いたのが遅れたのだろう。

サイゼルは無意識で答えたのか今も俺を無視して漫画に没頭しているが、メルフェイスは逆である。

後ろめたさを感じているのか、漫画をパタンと勢い良く閉じると立ち上がってワタワタとしている。

普通に萌えた。特に閉じた漫画を地面に落としたと思うと、素早く拾って背後に隠した辺りが。


「ああああのッ! す、すみません王様……つい私は……」

「いや全く問題無いから気にするなよ? コイツ程まで夢中になるのも考えモノだけどな」

「は、はあ」

「ところで"スケさん"を見なかったか?」

「スケさん?」

「いやウィチタの事」

「ウィチタさん……ですか? さっき迄は此処に居たのですが……」

「何処へ行くとか言ってなかったか?」

「いえ特には……!? で、ですが王様ッ? 私は"その時"は――――」

「漫画は読んでなかったんだろ? 分かってるって」

「あうッ」

「まァ"コイツ"の空気に耐えれなかったりしたんだろ」


――――そう言って泳がせているサイゼルの翼を摘んで言うのだが、コイツは全く気付いていない。


「本当に すみません。最初は せめて笑うのは止めて貰おうとしたのですが、逆に勧められてしまって」

「だよなー」

「それを断っているウチにウィチタさんが出て行ってからは、結局 抗えずに私もコレを……」

「ふむ。そのギャグ漫画をメルフェイスが"どう言う顔"をして読んでたのかが気になるな」


――――恐る恐ると言った感じで漫画本を両手で顔の前に持って行くメルフェイスを軽くからかう。


「……ッ……」←本当に申し訳なさそう

「そ、それはともかくだ。分からないんだったら仕方無いか~」

「ですが王様……場所に関しては大丈夫だと思います」

「んっ? どう言う事だい?」

「彼女の魔力の波長は覚えていますので、王様を旨く誘導できるかと」

「そりゃ有り難い」


コレは後から聞いた話によると、原作でラガールが魔想さん送った波長の類(たぐい)の応用らしい。

そんな感じで"この世界"には魔法を色々と個人の見解で運用し、利用するケースが非常に多いのだ。

しかし挙げればキリが無いので省くが、魔法Lv2を持ち知的な彼女の活用の幅は広いとは言って置こう。

さて置き。サイゼルの笑い声を裏にメルフェイスが魔法を唱えると何となく位置が分かった気がした。

本当に"何となく"でしか無いのだが……信憑性は有るので、後は勘を頼りに探し出せば良いだろう。


「どうでしょうか? 王様」

「そう遠くへは行ってない感じか?」

「……その様ですね」

「有難う助かったよ」

「大した事はしていません……それよりも……」

「何だい?」

「私は かなみさんが大事無かったと聞いて安心出来ましたが、ウィチタさんは……」

「未だに責任を感じてたってか?」

「はい。ベッドに腰掛け只 項垂れているダケでしたから」

「若いのに真面目そうな娘だったしな。反面 優に1000歳 越えてるのに"見た通り"の奴も居るが」

「あはッ! アハハハハハ!! 傑作傑作!! 馬鹿 過ぎるわコイツ~!!」

「…………」

「と、とにかくウィチタさんを宜しく御願いします」

「任せてくれ」

「ヤバッ。お腹痛~……ねェ? メルフェイス。そろそろ読み終わるから次の巻 取ってくんない?」

「えっ? で、ですが今は――――」

「ヘイッ! 第9巻お待ち!!」


≪――――バシンッ!!!!≫


未だに全く自重しない……と言うか"その単語"の認識すら無いサイゼルは聞いての通りのダラけ振り。

よって立ち往生するメルフェイスの代わりに漫画本を手に取ると、それを彼女の尻に叩き付けた!!

思ってみればコイツの笑い声が五月蝿くて、メルファイスが波長の特定を難しそうにしていたのだ。

故にコレは当然の報い(大袈裟)だったのだが……思いの他 効果が有った様でサイゼルは飛び上がる。


「痛ァッ!! ち、ちょっと何すんのよ!?」

「何だオーバーな奴だな。サテラじゃ有るまいし」

「……ってアンタ何時の間に入って来たのよッ?」

「お前が"良い"って言うから入ったんだろうが!」

「あれっ? そうだったっけ?」

「やっぱり無意識だったんですね……」

「だ、だからと言ってもレディのヒップを叩くなんて失礼しちゃうわ!」

「あの馬鹿笑いの何処に年頃の女性らしい要素が有ったのか教えて欲しいぞ」

「うぐぐッ」

「それにな? サイゼルの言う"レディ"とはメルフェイスみたいな娘の事を言うんだからな?」

「あっ……」


そう言ってワザとらしい仕草でメルフェイスの金髪を撫でて見ると、幸い満更でも無かったらしい。

対して魔人は単純にも"ぐぬぬ"と何か言いたそうにしている。相変わらず精神年齢が釣り合って無いぜ。

しかしだ。からかい過ぎると面倒な事に成るので、俺はサイゼルに近付くと左手で相手の右手を引く。

そして漫画本(9巻)を握らせると氷の魔人(笑)は目をパチクリとさせた。どうした最低1020歳以上。


「ともかく。邪魔して悪かったな」

「全くよ! 折角ムカつく事 忘れて楽しんでたのにッ」

「それに関してはオマエの尻が全部 悪い」

「なっ!? 意味が分からな――――」

「ちなみに異論は認めない」

「……それでは王様……?」

「うむ。魔法が切れる前にウィチタを探し出して来るさ」

「御願いします」

「だからメルファイスは漫画でも読んで寛いでいてくれ」

「は、はあ」

「ちょっと! 何 無視してんのよ!?」

「(しまった……無駄口を叩き過ぎたか?)では邪魔したな」


≪――――バタンッ≫


「コラッ! 待ちなさい!!」

「あッ、サイゼルさん?」

「あたしの"お尻"が何が どうなのかハッキリ説明しなさいよォ!!」

「聞かなかった事にしてくれ~!」←遠くから


この後 部屋に取り残されたメルフェイスは右往左往した後、結局 漫画の続きを読む事にしたらしい。

それにしても"こっち"に来てからは王様としての役割と狩りで忙し過ぎて漫画すら読んで無かったぜ。

だけど正直 面白くは無いんだよな……それなら俺が現代のアイデアを肖れば大儲け出来るのだろうか?

案外"ルドラサウム"に何とかしてネタを挙げられれば"この世界"がどうなろうと満足するかもしれん。

しかしながら。魔人どもには"そんな事"は通用しないだろうし、やはり今はレベル上げが最優先だな。

そんな事を考えながら今現在の俺は宿の階段を駆け下りており……サイゼルから逃亡を図るのだった。




……




…………




……十数分後。ようやく氷の魔人を撒いた俺は(潔く宿に帰った事を願いつつ)一人で町中を歩いていた。

今更だが此処は原作では最寄の"ハンナの街"では無く"解呪の迷宮"付近の小さな町なのは さて置き。

時間の経過で今や僅かにしか感じなくなってしまった"波長"を頼りにウィチタを探し続ける事 暫くして。


「おっ?」

「…………」


見えない糸に引かれる様に(小さな)武器屋や防具屋や冒険者ギルド等が並ぶエリア迄やってくると……

何と俺達には縁が無いと思われた"レベル屋"から赤髪ポニーテールで制服を着た女性が姿を現した。

言う迄も無くウィチタで有り見た瞬間に声を掛け様としたのだが、彼女の様子に違和感を覚え中止する。

率直に述べればトボトボと肩を落として歩いていた故であり、声掛けれど良い言葉が浮かばなかった。

ソレと同時に"何故レベル屋に入っていたのか?"と言う疑問も浮上たので、つい姿を隠してしまう俺。

……とは言え偶然を装うより此処は正直に"探していた事"を告げ、此処に居た理由も普通に聞くべきだ。

とは言え……う~む。そう普通の考えに至る時点で俺って、やっぱランスらしく無いんだなと痛感する。

しかしながら。今更キャラを(原作基準に)戻すのも作るのも色々と面倒臭いので止めて置く事にしよう。

そんな脱線は良いとして。俺は目の前を通り過ぎ、宿の方向に歩き出したウィチタの背中に声を掛けた。


「おいッ! ウィチタ!!」

「!?!?」

「そんな所に居たのか? 探したぞ結構」

「ら、らららランス王……ッ……ど、どうして……?」

「それは此方の台詞だぞ? 今 君が"レベル屋"から出てきたのを見たんだが、一体全体――――」

「……っ……」

「――――何故レベル神が居るのに其処に行く必要が有ったんだ? ……って聞いてる?」

「も、もう……」

「もう?」


≪――――ばっ!!≫


「申し訳有りませんッ!!!!」

「ちょっ!?」

「すみませんッ! すみません!! すいません!! 本当に申し訳有りませんでした!!!!」

「な、何を言って――――」




言葉には多少 棘を感じたかもしれないが、口調はランス不相応に優しくはしたつもりだった。

だが……ウィチタは此方を見た直後 浮かなかった顔を更に青褪(ざ)めさせると、小刻みに震え始める。

対して"掛けた言葉"を理解して居ない事を察した俺は、無難に彼女を気遣おうとしていると……

まさかの"土下座"を披露され、流石に予想が出来なかった事態に俺は思わず一歩引いてしまう。

すると当然ながら"何だ何だ?"と周囲の注目を集めてしまい、流石は最も町で人通りの多い場所。

幾ら小さい町とは言え大きな迷宮の最寄の場所なので、ギルドの周辺は多少の人で賑わっていたのだ。

だが此処で俺が"ランスらしい思考"を持っていればカオスを振り回して野次馬を追い払えるのだが……

今は其処まで頭が回っていない以前に、ウィチタが頭を上げないまま謝り続けるので右往左往していた。


「おい、何やってるんだ? アレ」

「こんな町の"ド真ん中"で……」

「只事じゃ無さそうだな。衛兵でも呼ぶか?」

「それよりも、あの男の人は何処かで見た様な――――」


「……ッ!? ウィチタ、来い!!」

「えっ? きゃっ!」


≪だだだだだだっ!!!!≫


だが"最後の一言"を聞いた直後、このままではヤバいと判断しウィチタの両肩を掴むと立ち上がらせる。

そして左手で彼女の右手を握り引っ張る事で、半ば強制的に走らせ"この場"からの離脱を図った。

対して状況が掴めて無さそうなウィチタであったが、特に抵抗はせず俺の走るペースに合わせてくれた。

後々 自分でも結構な速さで走っていた事に気付いたが……やはりゲーム世界は身体能力の相場が違う。


「ありゃ? 行っちまったな」

「何だ。つまんねェの」

「そうよッ! あの人はリーザスの"王様"に似てた気がする!!」

「馬鹿言え。リーザス王がワザワザこんな田舎町に来るモンかよ」

「アハハハ……やっぱり?」

「確かに似てた気はしたけどな」




……




…………




……10分後。適当な喫茶店(の様な場所)にて。


「さっきは驚かせて すまなかったな」

「と、とんでもありません」

「腕とかは痛くなかったかい?」

「も……問題無いです」

「だったら早速 話を始める事にしよう」

「はい……」


チキンな俺は町の反対側の方にまでウィチタを連れて来ると、先ずは"周囲の空気"を確認する。

それにより完全に"撒いた"と判断した後、彼女が何か言おうとする前に手ごろな店へと直進した。

コレにもウィチタは何か思う所が有った様だが、今は押しが弱くなっているのか素直に付いて来た。

結果。今現在はテーブル越しに若干 浮かない顔をしているウィチタと向かい合っているのである。

まァ何はともあれ……こうして会話する機会を設けられたので、予定通り精神面のフォローに移るか。

よって相変わらずランスじゃね~ッ! ……と心の中でボヤきつつも真面目な表情と口調で喋る俺。


「先ずは かなみの怪我の件だが――――」

「……ッ……」

「――――気に病む必要は全く無いからな?」

「ですがッ!」

「待てって。店の中だぞ?」

「うッ……」


――――今の言葉に表情を一変させ立ち上がり出しそうな勢いの彼女だったが、手を仰いで制する。


「良いか? 俺達はダンジョンの攻略に当たって、十分 細心の注意を払っていたと思う。
 準備は万端だったし無理もしなかった。結果"あの人数"で解呪の迷宮の下層迄 潜れたのは間違いない」

「…………」

「しかしだ。信じられるか? 数は多けれど大した質のモンスターは居なかったって言うのに、
 奥には数百メートルにも及ぶ通路が有って、破壊光線クラスの大魔法を放つボスが待ち構えていた。
 それも無敵が無けりゃ"魔人"でも黒焦げに出来そうな威力だった。予想なんて出来るワケが無い。
 なのに全員の命が助かったんだ。此処は落ち込むよりも、素直に喜んで置くべきだろう?」

「そ、それでも一歩間違えれば……リーザスは"王を失う"と言う大きな犠牲を払うトコロでした」

「耳が痛い話だな。確かにアイツが一声 掛けてくれなかったら、メルフェイスを助けられたかどうか」

「恐らくは……魔人サイゼルも危なかったと思います」

「サイゼルの事だから避けれたかもしれないが、振り返れば滅茶苦茶危なかったのは間違いないな」

「私も同様でした。ランス王とは違い反応すら出来なかったので……彼女が庇ってくれなければ……」

「消し炭に成ってたのは確定的に明らかと」

「め、面目 有りません」

「まァ確かに朝から考え事してた様に見えたからな。それを特に気に病んでたんだろ?」

「は、はい」

「だったら"次"は汚名返上してくれよ? 反応の遅れ云々で俺が言いたいのはソレだけだ」

「そう……ですか(私に恩を売った様な感じは無い……やっぱりランス王の悪名は噂でしか無いの?)」


――――SEKKYOUの所為で思い出しちまった。怖くて眠れなかったら かなみに添い寝でもして貰おう。


「では話を移そう。先程レベル屋から出て来たのは何故なんだ?」

「!?!?」

「(何となく理由は察せるが)レベル神は俺が呼べた筈だろう? 行く意味は無いと思ったんだけど?」

「あッ、あれは何と申したら良いのか……」

「今日は"呼ぶ"つもりは無かったが、もしかすると"上がる"と思ったからか?」

「!? えっと……そ、そうですね。昨日かなみさんが"才能限界"だったと言うのに……」

「アイツのレベルが上がったって事は、日を跨(また)げば上がる気がしたんだな?」

「そ……その通りです。ランス王のレベル神は、何か特別な効果を与えてくれるのかと思いまして」

「ふ~む」

「ですから"恩恵"を受けた後で有れば店でもレベルを上げる事が出来ると踏んだのですが……」

「結果は聞くまでも無いか」

「…………」(コクリ)


話の流れ的に かなみの怪我の事よりも、此方のレベル云々の誤魔化しの方が難しいのかもしれない。

だが此処で納得して貰わなければウィチタは次も同じミスを"しでかす"かもしれんし、どうしたモンか。

リーザスに戻らせるのも気が引けるし、そうするとPT復帰は諦める事を意味するので勿体無さ過ぎる。

今は少数精鋭を実現させる為 候補の頭数を揃えている段階なので、可能性が有らば同行して欲しいのだ。

だが殆どの将軍が原作と違って多忙な所為で連れて行く者も限定されるので、彼女みたいな娘なら尚更。

よってガンジーやカクさんに疑われる様なチクりをさせない事を祈りつつ俺は言葉を選らんで口を開く。


「残念ながら……ウィリスに才能限界を伸ばす能力は無い」

「そ、そうなのですか?」

「ハイレベル神だったら話は別だが、色々と条件を出して来るんだっけか? 宝石とか」

「えっ? あ、あの……」

「悪い話が逸れたな。ともかくウィリスは関係ない」

「でしたら何の影響でッ? ま、まさか――――」

「うん?」

「――――ランス王が関わっているのでは?」

「そうなるな」

「ほ、本当なんですか!?」

「嘘を言っても仕方ないだろ?」

「では一体全体どの様にして"才能限界値"を……(方法によっては世界の常識を覆す事が……)」

「だが今の所"この方法"を明確に知っているのは俺と かなみダケだ。後メルフェイスが感付いてる程度」

「そ、そうなのですか?」

「だから分かっての通り、出会って間も無いウィチタに喋るのは躊躇われるってワケだ」

「……ッ……」


――――彼女は常識的な考えを持った人間なので、例え此処で話を締めても食い付いては来ないだろう。


「それでも聞きたいか?」

「ら、ランス王が宜しいので有れば是非ともですが……」

「そういう言い方なら、答えはNOと言わざるを得ない」

「うッ……」

「其処で誤解が無い様にフォローして置くが、なにもウィチタが"やらかした"事で教えないんじゃ無い。
 例え教えてもウィチタにその恩恵を受けさせる事は出来ないし、何より俺しか出来ない事なんだよ」

「ランス王にしか……出来ない……?」

「そう。だから情報を有効活用してくれるなら普通に教えたいんだが、生憎 無理なんだよコレが」

「そ、それでは私では何を どう足掻いても才能限界を伸ばす事は出来ないのですか?」

「君は確か……今はLv35だったよな? だが主人の存在を考えれば更に上を目指したいのは当然か」

「はいッ。いくら才能限界値に成ったとは言え、ガンジー様の力添えに十分とは感じませんので」

「う~む。只の勘でしか無いが、ガンジーは軽く70や80辺りまでレベルが伸びそうな気がするぞ」

「(ランス王の限界も気になるけど)……また今回の冒険で自分の不甲斐無さを痛感したのも有ります」

「成る程な……って、また話が逸れたな。今の質問に対しての答えも"NO"だ」

「!? ……と言う事は……?」

「ウィチタに遣ろうと思えば其処まで難しく無く上げる事はできる。かなみが一晩で伸びた程だしな」

「では何故 方法が分かったとしても恩恵を受けれないのですかッ?」

「方法が"ワケ有り"だからだ。今はソレしか言えない」

「其処を何とかと言うのは無粋なのでしょうか?」

「だとすれば先ずは覚悟して貰わなくちゃならん。君主を俺に乗り換える程の"覚悟"をな」

「なっ!?(でも……確かに才能限界値を伸ばすとすれば代償は必要かもしれない……)」

「しかしだ。先程メルフェイスが"感付いてる"と言ったろう?」

「は、はい」

「だから俺の口からは言わなくても、冒険を一緒に続けていれば嫌でも分かっちまうと思う」

「????」

「つまり"そのうち分かる"って事だ。後はウィチタ次第だな……願い下げかもしれんが」

「私 次第……?」

「ともかく。"遣らかした"からには汚名返上して欲しい所だが、今後も俺の護衛を頼んで構わないか?」

「!? それに関しては勿論ですッ! このまま帰ってはランス王 及びリーザスに示しがつきません!!」

「ならば特に かなみの居ない明日は期待させて貰うから、宜しく頼んだぞ?」

「か……畏まりました!!」


≪――――ギュッ≫


こうして俺はウィチタと握手を交わした。あの第一印象の様子を考えると、結構な進歩なんだと思う。

才能限界 関連の事に関しては生憎 旨く誤魔化して先送りにしたダケに過ぎないが……どうだろう?

彼女の表情は今は沈んでおらず、笑ってはいないが出会った時の様に"ヤル気"が戻った雰囲気である。

う~む。やはり帰還直後の"大丈夫! 大丈夫!"って気休めなんかより、しっかりと太鼓判を押される事。

つまり……真面目な彼女は今みたく、面と向かって許される事を俺の口から告げて欲しかったのだろう。

だが叶った故に安心した様で、俺とウィチタは その流れで喫茶店を出ると外で改めて向き直った。


「それではランス王。私は早速かなみさんに謝罪しに行こうと思います!」

「あァ。蟠りは早めに何とかするに限るしな」

「ランス王は どうされるのですか?」

「夕飯の時間も近いし、少しダケ時間を潰したら直ぐに戻るさ」

「そうですか」

「一応 俺も立ち会った方が良いかい?」

「いえ……コレに関しては自分で行わなければ意味が有りませんから」

「それもそうだな。じゃあ行って来ると良い」

「はいッ! この度は本当に有難う御座いました!!」

「ちょっ。声がデカ――――」


≪――――ダダダダダダッ!!!!≫


唐突の大声とオーバーなアクションの礼に驚いた俺を他所に、彼女は その場から走り去ってしまった。

う~む。原作をプレイするに、普段は冷静に努めているが熱く成り易いと言うイメージが有ったが……

どうやら予想通りだったらしく此の弄り易いキャラが不幸を招いて結局はランスの餌食となってしまう。

そう客観的に考えると不幸 極まりないが……ゲーム的には面白くなってしまうので同情せざるを得ない。

だが"今回"は敬愛するガンジーに仕え続けるか、或いは"俺達"と共に戦って才能限界を伸ばしてゆくか。

今のウィチタにとっては前者が最も幸せなんだけど、今回の冒険次第では変わる可能性も有る。

……とは言え無理に"伸ばす事"を勧める事は出来ないが……まさに前途多難と言わざるを得ない。


「ふぅ。さ~て……と」


故に俺は多少 注目を浴びてしまう中(先程よりマシ)、苦笑しながら頭を掻いて目的も無く歩き出す。

だが直ぐにサイゼルに追い駆けられていた事を思い出すと、本屋を探して町を彷徨う事にしてみた。

まぁソレが目的で無いとしても、一人で"この世界"の町中を見て回る機会は少ない上に楽しいのだ。

ちなみに。宿に戻るとサイゼルが絡んでは来ないがジト目だったが漫画(最神話)を渡せば機嫌は直った。


「(ランス王は噂と違って王に相応しい器を持った方だった……ガンジー様 程じゃないけど……
 だから今回の旅に同行できると言う事に、誇りを持って挑まないとッ! そして汚名返上よ!!)」




……




…………




……数時間後。


「その発想は無かった」


一日を終えようとしている俺は、今は自室のベッドの上でサイゼルが読んでいた漫画を眺めていた。

文字通り内容は頭に入れては居らず流し読みしているダケであり、就寝前の"何となく"ってヤツさ。

何と言うか……カオスなんだよな。ランス4の魔法ビジョンの内容を知っている人なら分かるが……

大衆が目にするモノで"あんな内容"を流している辺り漫画も似たように笑いドコロが分からなかった。

しかしサイゼルと話を合わせる為に"この世界"の本ならば漫画でも読んでおかないとダメかもしれん。


「……何でサイゼルは此処が面白かったのかねェ?」


ちなみにウィチタはアレから無事かなみへの謝罪を済ます事が出来た様で、直ぐ彼女より報告を受けた。

飯に来る時も足を動かしたいと言うアイツに肩を貸してたし……動くのは明日と言う話はどうなった?

まァそれダケ遣る気に成って貰えないと"これからの戦い"が厳しいとも言えるので、有難いんだけどね。

またサイゼルの機嫌も漫画パワーで直っており、明日もブツクサは言われそうだが戦ってくれるはず。

故に残る気掛かりはメルフェイスの事ダケなのだが……結局は彼女の気持ち次第なので小細工は無用だ。

彼女程の魔術師なら必死で射止めても良いのだが、リアや王と言う立場も有るので一人に固執できない。

逆に"ランス"の様にアソコまで極端で有れば問題無いみたいだけど、色々な意味で体が持たんだろう。

つまり基本的に俺のアピールには限界があり、相手に首を縦に"振って貰わなければならない"のである。

だとすれば一部のキャラなんぞは絶望的だろうが、全ては俺の要領と女性達の気持ち次第でしかない。

それと"ランス"の強運だな。と言うか彼の強運に則った行動をしなければ死んでしまう可能性もある。

特にカラーの森で"あんな事"が出来るか自身が無いが、その辺は己を捨てるしか無いのかも知れない。


≪――――コンコンッ≫


「んっ? 誰だ?」

「私だけど……」

「かなみか? 直ぐ開ける」


≪――――ガチャッ!≫


「あっ……」

「どうしたんよ? こんな時間に」

「ご、御免なさい」

「それより足は良いのか? 全く飯の時と言い無茶しやがる」

「無茶は承知です。そうは言うけど以前の戦いを考えれば、大怪我をした次の日も戦う時も有ったわ」

「……(強ちランス3や4を考えると間違いじゃ無いな……)」

「で、でも何度も心配してくれて有難う。直ぐに治して見せるからランスは迷宮攻略の事を考えて」

「分かったよ。じゃあ何の用だ? 俺に小言をいわれる為に来た訳じゃ無いだろ?」

「それなんだけど――――」

「ともかく肩を貸してやる。話はソレからだ」

「……うん」


寝ようと思った矢先。"あの状況"の かなみが訪れて来たので、咄嗟に駆けるとドアを開けてしまった。

すると目の前には聴こえた通り、松葉杖を付いた彼女が居り……俺のスピードに驚いている様子。

対して無茶を咎めたい気もした俺だったが、此処で立ち話は どうかと思うのでベッドに腰掛けさせる。

一方 俺はテーブルの傍に有る椅子に腰掛けており、腕を組みながら背を預け 浴衣姿の彼女に言う。


「良し話を聞こうか」

「えっと……今回の件なんだけど」

「色々有るが"何の件"だ?」

「私が怪我をした時の話」

「それに関してはウィチタも反省している様だし終わった筈だが?」

「うぅん。その時の私が取った行動について聞きたいの」

「もう少し詳しく頼む」

「その……私は"あの時"ウィチタさんを庇ったでしょ?」

「あァ」

「今思えば本当に"その判断"は正しかったのかなって」

「どういう意味だ?」

「もし"あの時"ランスが魔法に巻き込まれてたら、私は死んでも償う事が出来なかった」

「!? だが俺は咄嗟の声で回避 出来て、かなみは足を焼かれはしたが大事には至らなかっただろ?」

「それはそうなんだけど……本当なら守護を担うと誓ったランスの方を庇うべきだったのかもしれない。
 例えランスが避ける事が出来ると分かっていても、少しでも回避を完璧にする為に死ぬ事も考えた」

「な、何だって?」

「でも"あの時"は迷いが有って、ランスが素早くメルフェイス様を助ける事が出来たのを見て動いたの」

「……ッ……だから反応が遅れてウィチタを庇った結果、本来 平気な筈が足を焼かれたってか?」

「そう言う事です。でも真っ先に貴方を庇っていればメルフェイス様とウィチタさんが危なかった」

「……と言うか俺のガタイを考えたら かなみも危なかったんじゃないか?」

「その可能性も高いかも」

「…………」

「だから教えて欲しいの。あの時 私は何をするのが本当に正しかったのかって」

「それ以前に何故"そんな事を"と言わざるを得ない」

「私も そう思う……でも主君に仕える"一流の忍者"みたく務めるには どう遣れば良いのか分からない。
 幾ら強くなっても心構えを変えなきゃ意味がないし……こう言う気持ちで戦うのも初めてだったから」

「ふ~む……だったら……そうだなァ」


≪――――ギシッ≫


「あッ」

「細かい考えは抜きにして、これからも自分の思った様に行動すれば良いんじゃないか?」

「お、思った様に?」

「今迄お前が どんな判断による行動をして来ても、結局はマシな方向には進んでいた感じだったろう?
 だから先天性的な勘の良さは有るんだよ。そうじゃなきゃイラーピュどころか魔人と戦った時点で、
 とっくに命は無かった筈だ。つまり"あの判断"で かなみが皆の命を救えた事は間違い無いって事さ」

「褒めてくれるのは嬉しいけど……万が一ランスの命が……」

「それ以前に かなみは何か勘違いしてるぞ?」

「な、何を?」

「――――この"ランス様"が一つや二つの部下の判断ミスで死ぬ様な男だと思うか?」

「!?!?」

「要するに かなみの強運も中々だが"俺様"の悪運には及ばんのさ。だから思ったように遣ってれば良い。
 お前が"どんな判断"をしようと、悪い方向には転ばせないと俺様が今 此処で断言してやろう。OK?」

「……ッ……な~んだ、やっぱりランスね。良い答えを期待した私が馬鹿だったわ」

「今更 何を言うか」

「でも私がランスに"こんな事"を聞くなんて、本当な不思議な感じね」

「そうだな。自分でも言うのも何だが確かに"今の関係"は有り得んと思う」

「けど貴方は"ランス"でシィルちゃんを助けたいのよね?」

「あァ。ついでに世界統一して魔人とも戦う」

「……では……こんな私ですが引き続き御供させて下さい」

「引き続き歓迎するぞ? 盛大にな」

「――――♪ッ」


何時の間にか俺はかなみの横に腰掛けており、余り話は纏まっていなかったが彼女を抱き寄せた。

しかしランスの顔と声で"こんな台詞"言う俺って……正直 原作のファンとしては非常に複雑である。

だが現在の かなみには臭い内容で有れど前述の様な言葉を掛けてやるのが最も有効なのは分かる。

リア(我侭娘)に仕えていた彼女はランスとは言え"普通"の主君の側近として働ける事自体が嬉しいのだ。

故に松葉杖を付きながらも訪ねて来たもの頷けると言うモノで、当然 俺の方も彼女を大切に感じていた。


「……そんなワケで」

「はい?」

「部屋に戻るなら手を貸すが?」

「御言葉に甘えたいのも有るけど(他の皆の目も有るし)頑張って自力で戻ります」

「そうか」

「……とは言ったモノの……で、出来れば此処で休むのも良いかな~って」

「ほう?」

「ランスの手は借りれないのに、思ったより戻るのは しんどそうかも……困ったわ」

「だったら一緒に寝るか?」

「い、良いの?」

「うむ。立場からして無理に手を貸す訳にもイカんからなァ……今回ばかりは仕方ないな」

「じゃあ――――」

「しないぞ?(怪我人 相手だし)」

「しなくて良いです!」

「ならば今宵は添い寝を命ずる。近ゥ寄れ」

「畏まりました」

「(まァ……俺も正直"今日の件"は怖かったし、丁度良かったか)」

「(コレが私の求めていた"忍者"として担う役割だったのかもしれない……嬉しいな)」


こうして かなみが俺を慕っている事を再認識できたワケだが……やはり残る問題はメルフェイスだな。

しかしながら。この状況では既に どうする事も出来ないので何度も思ってる通り彼女に委ねるしかない。

メルフェイスの事を何度も想う自分の女々しさを痛感するが、流石に俺はランス程の神経は無い模様。

カラダが違おうと一度 肉体関係を持った女性を潔く諦めたくないと言う気持ちも有るのだ。情けないな。

そう考えるとランスは諦めの良さも天下一品かもしれない……事によっては鬼畜な行動に走るワケだが。

さて置き。俺は先にベットに潜り込むと かなみを引き寄せ、今日は また違った夜で締まる事と成った。


「すやすや……んン~……ハウゼルゥ……」

「(王様……やっぱり考えが纏まらない……でも"その時"が来れば分かるかもしれない……)」

「(ランス王と言い かなみさんと言い、皆 良い人だったのね……疑ってた自分が恥ずかしいわ)」


――――そして翌日。すっかり忘れていた悪魔を呼び出し、俺達は迷宮の奥に潜って行く事と成る。








■あとがき■
更新がアホみたいに遅れてしまったので、リハビリの意味合いで会話中心でストーリーが進んでません。
次回は成るべく早く更新したいと思います。そう言えば……明後日がランス・クエストの発売日ですね。








あと主人公が気持ち悪くてすみません。


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