重量については特筆すべきこともなく、小さい家を借りることができた。
ちなみに一月3000ガット。
前の住人の家具はそのまま残っていたのでそれ込みの料金だ。
最初は倉庫を借りようとしたんだが、個人で借りるような小さな倉庫なんてなかった。
商店で借りるようなのは大きすぎるし値もかかる。
現状ではそこまで荷物も無いし金もない。
そういうわけで今持ってるのは装備品ぐらいだ。
ところで、すでにギルドの地下には着いている。
ここで、今回取得する技能について考えていた。
すでに来るまでに2つは決めた。
肝心の近接戦闘が決まらないのだ。
…まずは他の二つを取るか。
間に合わせで決めるよりは後回しにした方がいい。
遠距離武器用の訓練場、いわゆる射場に入る。
既に何人も的に向かってそれぞれの武器を放っている。
教官はテストの時と同じくボルドーさんだ。
あ、こっちに気付いた。
「よ、坊主。合格おめでとう。
忠告どおりすぐに訓練に来たな、感心だ。
弱いヤツが考え無しに生き残れるほど世界は甘くねえぞ。
それがいやなら街の中に引き篭もってるしかねえ。
だが、そういうわけにも行かんのが世の仕組みだ。
ある程度は強くないとすぐにお陀仏だから、気ぃ付けろよ?
それでよ、坊主。自分の武器は決めたのか?」
「はい、一度使ったので弓がいいかと思ってるんですが」
俺の言葉にボルドーさんは眉をひそめながら言い辛そうに、
「あー、悪いが試験の様子を見るに、お前に弓のセンスがあるようには思えねえ。
他の武器にしといたほうが無難だぞ…?
そうだ、投げナイフとかどうだ?
試験の時とは違うからな、きちんと練習する時間がある。ちなみに俺の得意武器なんだが」
「…とりあえず遠慮しておきます。
もし今日一日練習して、それでも駄目そうならお願いします。」
弓のセンスが見つからなかった訳はなんとなくわかる。
教わってもいない武器は補正がないから才能を感じないのだろう。
もし本当にこれで才能、というか技能を得られないなら
忠告通り武器を変えるしかないんだが。
ショートボウを構え、ボルドーさんに一通りの講習を受ける。
こうしてきちんとやり方を教わると、さっきの試験での撃ち方がいかに間違っていて、
不恰好だったかに気付かされる。
矢を射りながら、少しずつ姿勢や構え方の矯正を受ける。
「弓術技能を習得、弓矢の命中率と矢を番える速度にボーナス。
熟練度上昇により、弓射程と命中率にボーナスがつきます」
来た!
「ボルドーさん、ちょっと一人で練習してみます。
ご指導、ありがとうございました。」
「ん、そうか。教えたとおりのやり方でやれよ?
間違ったやり方で覚えられたら洒落にならねえからな」
そういうと他の人を指導しに行った。
…よし、行ったな。
弓術か…。
魔法以来の実戦に使える技能だ。
命中だけでなく射程も延びるってことみたいだが…。
とりあえず現状で何処までできるのか、弓術の検証をしてみるか。
…
……
…………
だいたいこんなもんか。
わかったことは6つ。
1、当然ながら矢を持たないと何の意味もない。
弦を鳴らすだけじゃ熟練度は上がらない。
実際に撃たないと駄目。
2、現在射程は15Mくらいか。
検証している間に熟練度が5.3まで上がったのでもうちょっと伸びている可能性あり。
3、命中率は射程内で4割くらい。
近くで射ったとしても4割である。
ただし、これも熟練度が上がったのでだんだん上昇している。
狙ったものに当たった時のみ熟練度が上がる。
4、50センチ位の距離で射ったときは、熟練度は上がらなかった。
最低でも1M程度の距離がいるみたいだ。
5、射程距離外の物を射っても当たることがある。
ただし偶然の可能性大。熟練度も上がらなかった。
6、矢は再度利用できる。
ただし、折れている場合は無理。
現在はこんなところだ。
実際微妙な性能だが、技能があると無いとでは大違いだ。
……さっきまで教えてもらっても15Mで1~2本だったからな。
なるほど、センスが無いといわれるのも納得できた。
ただ、こんな低距離射程じゃとてもじゃないが実戦で使えない。
上げられるだけ熟練度を上げて、射程を伸ばそう。
魔法と違ってこっちはいくら使ってもMPは減らないからな。
ただひたすらに弓を引く。
矢が無くなったら的に刺さっているものを回収。
また延々と打ち続ける。
と、弦が切れた。
また張りなおさないと…。
そこで肩を掴まれた。
「おい小僧、ちと休めや。
さっきからどれだけ続けてやってた?」
ボルドーさんだった。
そういえば疲れないから忘れていたが、普通は腕が疲れるもんだ。
否応無く休む羽目になる。
「まったく、根を詰めすぎだ。
さっきから呼んでるってのに反応もしやしねえ」
そうなのか…。
時刻みの球を見ると既に午後8時を過ぎている。
「それにしても、一日で見違えるほど腕を上げたな?
才能が無いってのは俺の勘違いだったみてえだ」
技能補正のおかげで既に射程内なら5~6割は当てられる。
射程も長くなっていることだろう。
「そろそろ俺は帰るぜ。
つーわけで、ここも閉める。早く出てけ」
「あ、はい。それじゃ…」
「ちいと待て。
お前、どれだけ矢と弦使い潰した?
使った分だけ補充すっから、金置いてけよ」
「あ…」
考えてみれば当然のこと。
使うのは無料だけど、消耗品を使った分は払う必要があるのね…。
壊してしまった矢23本、弦7本の金額を払う。
しめて340ガット。
一度宿に行き、主人に家を借りたことを告げてから帰った。
寝る前に恒例の『ライト』を使い、魔法熟練度をあげてから寝る。
明日は先生に暫らく病院に行けなくなるかもしれない事を伝えないと…。
今日の技能成長
基本魔法熟練度は8.6まで上がった。
弓術熟練度が11.3まで上がった。
熟練度が10を超えたのでボーナス、器用さが1上がった。
スキル『ロックオンシュート』を覚えた。
所持金変動
元所持金 6890
家賃 -3000
武器使用料 -340
残合計 3550ガット