薬草を持って(といっても外見上は何も変わらないわけだが)診療所に戻った。
「おかえりなさ~い。どうでした?」
アンナさんはこちらを伺いながら言う。
「はい、今戻りました。それでですね…」
俺の苦笑にアンナさんは不安そうな顔だ。
「もしかして、駄目でしたか?」
「逆です。取りすぎました」
「あれ?でも何も持ってな…。あ…」
途中で気づいたようだ。
他の人に聞こえないように小声で会話する。
「えへへ、そうでした、仕舞っておけるんでしたね?」
「そうですよ。結構な量になりました」
「それじゃ、先生の手が空くまでこっちで私と受付してましょうね~」
…
……
診療所といっても先生は一人だ。
年齢のこともあるし、休憩を取らなくては体が持たない。
一旦診療所自体を閉めて、休む時間を作るんだそうだ。
受付の奥にある扉から、ミシェル先生の自宅へ。
「さ、見せとくれよ。アンタの今日の成果をさ?」
「はい、どうぞ」
取ってきた植物を片端から出していく…。
「おいおい、こんなに取ってきてどうする気だい?
よくもまぁ、こんなにいっぱい見つけたもんだよ…」
呆れ顔の先生。
「こんなに出されても困るよ。一種類ずつだしとくれ」
一種類につき一個を残してもう一度しまう。
「ふむ…。見つけにくい小さいものや球根類まであるね。
でも、食用だけの野菜や効果のない雑草は一つもない。どれも薬用効果や毒があるものだ。
これは、完全に薬として使えるか、そうじゃないかで判別してるようだね」
「で、コレだけかい?」
「え?」
「あそこは多くの種類の草花がある。それこそ20を超える種類があるのさ」
そうなのか。
全然わからなかった。
見付からなかった理由はスキル不足かな…?
「いえ、これ以外は全く…」
「ふぅん…ずいぶんと歪な能力だ」
同感だね。
「まぁいいさ。アンタが役に立つのはよくわかった。それと…」
「昨日の話しじゃ、アンタ、文無しだろ?とりあえず全部5個ずつ置いてっとくれ。
あたしが買い取ってやるからさ?」
おお、これは嬉しい。
取って来た草を売るってのも考えたが、
ちゃんと薬になっている状態ならともかく、草の状態のまま売れるとは限らない。
最悪路上で寝るとこだった。
「お願いできますか?」
「ああ、路上生活者を雇ってるって噂がでたら困るからね?
診療所は清潔でないと誰もこなくなっちまうよ」
あらら、ばれてら。
「買い取り金だけど…大体こんなトコかね?」
メディカルミント 5×5 25ガット
オレンジヒソップ 8×5 40ガット
マジックハーブ 25×5 125ガット
ヤドリニンニク 6×5 30ガット
トリニアの花 15×5 75ガット
白夢草 55×5 275ガット
インジャ草 100×5 500ガット
オトギリソウ 40×5 200ガット
「以上、合計1270ガットってとこだね」
うぁ、薬草って高いな…。
確か宿代が朝晩の食事代込みで200。
6日は泊まれる。
「先生、ギルドでの依頼の相場よりちょっと低いんじゃないですか~?
普通、これだけの採取依頼なら1500以上は…」
「これは依頼じゃないんだよ?必要じゃないのに買い取ってるんだ。
低いのは当然だよ。納得できないってんなら、その差額分だけサービスしてあげてもいいよ…?」
うお、悪寒がっ!
「え、遠慮しておきます…」
「あっはっは。冗談だよ、冗談。
明日、その分だけアンタの得になるようなこと教えたげるよ。楽しみにしといで」
冗談に聞こえなかったよ…。
それにしても特になるようなことか。
ふむ、なんだろう。
「それと、今日取って来たのは明日使うから売るんじゃないよ?」
「はい、わかりました」
お、薬草を使った治療の仕方かな?
「あの~、そろそろ…」
「もうそんなにたったかい。早く戻らなくちゃねえ」
「それじゃ~、診療所開けますね~」
アンナさんはそう言うと、先に診療所に戻った。
夕方までもう少し。俺も受付を手伝いに行こう。
…
……
日が暮れ、宿に戻った俺は宿屋の親父に今日から食事つきにしてくれるように頼む。
夕食を食べて、部屋に戻る。
そして昨日と同じようにステータスをチェックしながら魔法を…。
あれ?
なんかHP増えてないか?
現在HPが60になってる…。
最大値は50(+10)だ。
つまり何かの補正か?
特に装備品もアイテムも使ってない。
今日変化があったのは技能熟練度のみ。
…つまり技能補正か。
レベル以外に技能でもある程度ステータス補正があるみたい…。
薬草採取は最大HPみたいだな。
気を取り直して、MPが切れるまで魔法を使う。
熟練度は4.8まで上がった。
明日も今日と同じ時間に起きないとな…。
所持金変動
元所持金 20ガット
薬草販売金 1270
宿代 -200
残合計 1090ガット